説明

トロイダル型無段変速機

【課題】パワーローラ部に対する効率的な潤滑油供給を行なえるとともに、小型化および製造コストの低減を図れ、設計の自由度を広げることができるトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】このトロイダル型無段変速機では、スラスト玉軸受24に対して潤滑油を供給するためのポンプ210が、トラニオン15の支持板部16に内蔵されている。ポンプ210は、潤滑油路200a,200bが形成されたハウジング240内に配設され、一体のポンプユニット200としてポケット部Pに面する支持板部16の内面側に好ましくは着脱自在に組み付けられる。ポンプ210はパワーローラ11によって駆動されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図2および図3に示すように構成されている(図2に2つのキャビティ221,222が示される)。図2に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図3参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図2中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図2の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図3は、図2のE−E線に沿う断面図である。図3に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図3においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、パワーローラ11を支持する支持板部16の長手方向(図3の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された(パワーローラ11を回転可能に支持する)変位軸(支持軸)23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、ラジアルニードル軸受99を介して各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図3の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図2の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図3で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図3の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図3の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面(トラクション面)11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機において、パワーローラ11と入出力側ディスク2,3との間の動力伝達は、これらの部材表面の損傷を防止するべく、油膜を介したトラクション力により非接触で行なわれる(以下、油膜によって形成されるパワーローラ11と入出力側ディスク2,3との間の界面をトラクション面と称し、本明細書中では、便宜上、パワーローラ11の周面11aをトラクション面と称することがある)。そのため、パワーローラ11と入出力側ディスクとの間に形成されるトラクション面には、トルクを非接触で伝達するための油膜を形成できる十分な量の潤滑油(トラクション油)を供給する必要がある。
【0017】
さらに、このような油膜を介したディスク2,3とパワーローラ11との間の動力伝達では、ディスク2,3とパワーローラ11との接触部やパワーローラ11のベアリング部(例えば、スラスト玉軸受24等)で滑りが生じるため、熱が発生する。そのため、パワーローラ11のベアリング部にも潤滑油を十分に供給する必要がある。
【0018】
従来、スラスト玉軸受24等に対する潤滑油の供給は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されるように、エンジンの入力側回転によって駆動するポンプにより行なわれている。そして、このポンプにより供給される潤滑油は、制御バルブおよび変速制御バルブを経由して、トラニオン15および変位軸23に加工された油路を通じてスラスト玉軸受24等へと送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2002−327836号公報
【特許文献2】特開2000−9197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、エンジンの入力側回転によって駆動するポンプから潤滑油を制御バルブおよび変速制御バルブを経由してトラニオン15および変位軸(支持軸)23に加工された油路を通じてスラスト玉軸受24等へと送る潤滑油供給形態では、幾つかの問題が生じる。すなわち、変速制御バルブ等に油路を設ける必要があるため、制御ラインや油圧ローダラインの油圧ラインの設計の自由度が狭まる。また、変位軸23などに油路(穴)を形成する必要があるため、変位軸23の径も必然的に大きくなり、結果としてパワーローラ部のサイズも大きくなる。更に、そのような穴加工によってバリが発生するため、品質保証のために多大な労力を要する。また、油路が様々な部位にわたって長く形成されるため、シールリングやOリングなどの部品の点数が増大し、製造コストが増大する。
【0021】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたものであり、パワーローラ部に対する効率的な潤滑油供給を行なえるとともに、小型化および製造コストの低減を図れ、設計の自由度を広げることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するために、本発明は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持されるパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し且つ前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、前記パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ前記パワーローラの回転を許容する軸受とを備え、前記軸受が、前記パワーローラにより形成される内輪と外輪との間で保持器により転動自在に保持される複数の転動体を備えるトロイダル型無段変速機において、前記軸受に対して潤滑油を供給するためのポンプが前記トラニオンに内蔵され、前記ポンプが前記パワーローラによって駆動されるようになっていることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、潤滑油供給用のポンプがトラニオンに内蔵され、該ポンプがパワーローラによって駆動されるので、各種制御バルブに対する潤滑油路の穴加工が簡略化され、また、変速制御バルブに油路を設ける必要がなくなる。そのため、穴加工に伴うバリの発生を抑制でき、品質保証対策が簡略化されるとともに、制御ラインや油圧ローダラインの油圧ラインの設計の自由度が広がる。また、油路の削減などにより、シールリングやOリングなどの部品の点数が減少し(したがって、制御バルブ等を小型化(薄肉化)でき)、製造コストを低減できる。つまり、パワーローラ部に対する効率的な潤滑油供給を行なえるとともに、小型化および製造コストの低減を図れ、設計の自由度を広げることができる。
【0024】
また、上記構成において、前記ポンプは、潤滑油の供給のための油路を含むユニットとして構成されて前記トラニオンに着脱自在に組み込まれることが好ましい。このように構成すると、組み立て作業性が良好となり有益である。
また、上記構成において、前記外輪と当該外輪を貫いて前記パワーローラを回転自在に支持する支持軸との間に第2の軸受が設けられ、この第2の軸受が前記ユニットの油路と連通され、前記ユニットの油路から前記第2の軸受を通じて前記軸受に潤滑油が供給されるようになっていてもよい。これにより、支持軸などに油路(穴)を形成する必要がなくなるため、必然的に支持軸の径を小さくでき、結果としてパワーローラ部(バリエータ部)を小型化できる。
更に、上記構成において、前記ポンプの上流側または下流側の油路にフィルタが設けられることが好ましい。これにより、汚染物質のない潤滑油を供給でき有益である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、パワーローラ部に潤滑油を供給するポンプがトラニオンに内蔵され、該ポンプがパワーローラによって駆動されるので、パワーローラ部に対する効率的な潤滑油供給を行なえるとともに、小型化および製造コストの低減を図れ、設計の自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の断面図である。
【図2】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の特徴は、潤滑油の供給形態にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用とほぼ同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図2および図3と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0028】
図1は本発明の実施形態を示している。図示のように、本実施形態のトロイダル型無段変速機では、スラスト玉軸受24に対して潤滑油を供給するためのポンプ210がトラニオン15の支持板部16に内蔵されている。特に、本実施形態において、ポンプ210は、潤滑油路200a,200bが形成されたハウジング240内に配設され、一体のポンプユニット200としてポケット部Pに面する(支持軸23の端部と対向する)支持板部16の内面側に好ましくは着脱自在に組み付けられる。なお、本例では、パワーローラ1を回転自在に支持する支持軸23は、パワーローラ11と一体的に形成され、外輪28を貫いている形式のものである。
【0029】
ここで、ポンプ210は、ハウジング240に設けられる第1の潤滑油路200aと第2の潤滑油路200bとの間に介挿された容積式ポンプとして構成されており、パワーローラ11によって駆動されるようになっている。具体的には、例えば、支持軸23の端部にポンプ210の駆動軸と連結する連結軸部23eが設けられ、この連結軸部23eがパワーローラ11の回転に伴って回転し、この回転によりポンプ210が駆動されるようになっている。なお、ポンプ210の吐出側に位置する第2の潤滑油路200bは、ラジアルニードル軸受99(より正確にはラジアルニードル軸受99が設けられる外輪28と支持軸23との間の間隙)に通じており、また、ポンプ210の吸入側に位置する第1の潤滑油路200aは、トラニオン15に設けられた第1の潤滑油供給路112に連通している。第1の潤滑油供給路112は、駆動ロッド29に形成される第2の潤滑油供給路110に連通しており、第2の潤滑油供給路110は図示しない潤滑油供給源に接続される。
【0030】
したがって、このような構成では、パワーローラ11によってポンプ210が駆動されると、図示しない潤滑油供給源からの潤滑油が、図1において矢印で示されるように、第1および第2の潤滑油供給路110,112を通じて、ポンプユニット200に流入し、ポンプユニット200の第1および第2の潤滑油路200a,200bを介して、ラジアルニードル軸受(第2の軸受)99の端部、より正確にはラジアルニードル軸受99が設けられる外輪28と支持軸23との間の間隙の端部に流入する。そして、ラジアルニードル軸受99の端部に流入した潤滑油は、ラジアルニードル軸受99を介してスラスト玉軸受24へと至る。この場合、ポンプ210の上流側または下流側の油路(例えば、潤滑油供給路110の端部(駆動ロッド(トラニオン軸)29側の端部))に、潤滑油中の汚染物質を除去するフィルタ(図示せず)が設けられることが好ましい。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、潤滑油供給用のポンプ210がトラニオン15に内蔵され、該ポンプ210がパワーローラ11によって駆動されるため、各種制御バルブに対する潤滑油路の穴加工が簡略化され、また、変速制御バルブに油路を設ける必要がなくなる。そのため、穴加工に伴うバリの発生を抑制でき、品質保証対策が簡略化されるとともに、制御ラインや油圧ローダラインの油圧ラインの設計の自由度が広がる。また、油路の削減などにより、シールリングやOリングなどの部品の点数が減少し(したがって、制御バルブ等を小型化(薄肉化)でき)、製造コストを低減できる。つまり、パワーローラ部に対する効率的な潤滑油供給を行なえるとともに、小型化および製造コストの低減を図れ、設計の自由度を広げることができる。
【0032】
また、本実施形態において、ポンプ210は、潤滑油の供給のための油路200a,200bを含むユニット200として構成されてトラニオン15に着脱自在に組み込まれるので、組み立て作業性が良好となり有益である。
【0033】
また、本実施形態では、外輪28とこの外輪28を貫いてパワーローラ11を回転自在に支持する支持軸23との間にラジアルニードル軸受(ラジアル軸受)99が設けられ、この第2の軸受が前記ユニットの油路と対向され、前記ユニットの油路から前記第2の軸受をラジアルニードル軸受99を通じてスラスト玉軸受24に潤滑油が供給されるようになっているので、支持軸23などに油路(穴)を形成する必要がなくなる。したがって、必然的に支持軸23の径を小さくでき、結果としてパワーローラ部を小型化できる。
【0034】
更に、本実施形態では、ポンプ210の上流側または下流側の油路にフィルタが設けられるので、汚染物質のない潤滑油を供給でき有益である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
14 枢軸
15 トラニオン
23 支持軸
24 スラスト玉軸受(軸受)
26 転動体
27 保持器
28 外輪
99 ラジアルニードル軸受(第2の軸受)
200 ポンプユニット
200a,200b 潤滑油路
210 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持されるパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し且つ前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、前記パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ前記パワーローラの回転を許容する軸受とを備え、前記軸受が、前記パワーローラにより形成される内輪と外輪との間で保持器により転動自在に保持される複数の転動体を備えるトロイダル型無段変速機において、
前記軸受に対して潤滑油を供給するためのポンプが前記トラニオンに内蔵され、前記ポンプが前記パワーローラによって駆動されるようになっていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記ポンプは、潤滑油の供給のための油路を含むユニットとして構成されて前記トラニオンに着脱自在に組み込まれることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記外輪と当該外輪を貫いて前記パワーローラを回転自在に支持する支持軸との間に第2の軸受が設けられ、この第2の軸受が前記ユニットの油路に連通され、前記ユニットの油路から前記第2の軸受を通じて前記軸受に潤滑油が供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記ポンプの上流側または下流側の油路にフィルタが設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108511(P2013−108511A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251384(P2011−251384)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】