説明

トロパンの尿素誘導体、その調製およびその治療用途

本発明は、式(I)


(式中、R1a、1b、1c、1d、R2a、2b、R、R、p、rおよびXは、説明で定義されている通りである。)の化合物に関する。調製方法および治療用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロパンの尿素誘導体、その調製およびその治療用途に関する。本発明の化合物は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11βHSD1)の活性を調節し、そのような調節が有益である病状、例えば、代謝症候群またはインスリン非依存性2型糖尿病の場合の治療に役立つ。
【背景技術】
【0002】
11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11βHSD1)は、種々の組織および器官、主に肝臓および脂肪組織であるが、筋肉、骨、膵臓、内皮組織および眼組織ならびに中枢神経系の或る部分でも、不活性グルココルチコイド(ヒトにおけるコルチゾン)の活性グルココルチコイド(ヒトにおけるコルチゾール)への変換を局所的に触媒する。11βHSD1は、グルココルチコイドが発現する組織および器官でグルココルチコイド作用の調節剤として作用する(Tomlinsonら、Endocrine Reviews 25(5)、831頁−866頁(2004年)、Davaniら、J.Biol.Chem.275、34841頁(2000年);Moisanら、Endocrinology、127、1450頁(1990年))。
【0003】
グルココルチコイドおよび11βHSD1の阻害に関係する最も重要な病状は以下で示される。
【0004】
A.肥満症、2型糖尿病および代謝症候群
肥満症、2型糖尿病および、症状として、内臓型肥満、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、高血圧症、2型糖尿病および高脂血症が挙げられる代謝症候群(また、X症候群またはインスリン抵抗症候群としても知られている)での11βHSD1の役割(Reaven Ann.Rev.Med 44、121頁(1993年))は多数の刊行物に記載されている。ヒトでは、カルベノキソロン(11βHSD1の非特定阻害剤)での治療が、痩せたボランティア患者および2型糖尿病でインスリン感受性を改善する(Andrewsら、J.Clin.Endocrinol.Metab.88、285頁(2003年))。更に、11βHSD1遺伝子がノックアウトされているマウスは、ストレスおよび肥満症で誘発される高血糖症に抵抗性であり、肝臓グルコース新生酵素(PEPCKおよびG6P)の弱毒化誘発を示し、脂肪組織でインスリンに対して増加した感受性を示す(Kotelevstevら、Proc Nat Acad.Sci.94、14924頁(1997年);Mortonら、J.Biol.Chem.275、41293頁(2001年))。更に、11βHSD1遺伝子が脂肪組織で過剰発現した遺伝子移植マウスは、ヒト代謝症候群に似た表現型を示す(Masuzakiら、Science 294、2166頁(2001年))。観察された表現型は、全循環グルココルチコイドでは何らの増加もなく存在するが、脂肪堆積物では、活性グルココルチコイドの特定の増加によって誘発される点が注目されるべきである。
【0005】
更に、特定の11βHSD1阻害剤の新しい類が最近出現した:
アリールスルホンアミドチアゾールは、これらが、マウスが示す高血糖症でインスリン感受性を改善し、血糖値を低下させることを示した(Barfら、J.Med.Chem.45、3813頁(2002年))。更に、最近の研究では、このタイプの化合物は、肥満マウスで、食糧摂取量を減少させ、また、体重増加を低減することが示されている(Wangら、Diabetologia 49、1333頁(2006年));
トリアゾールは、これらが、マウスで、代謝症候群を改善しアテローム性動脈硬化症の進行を遅らせることを示した(Hermanowski−Vosatkaら、J.Exp.Med.202、517頁(2005年))。
【0006】
B.認知および認知症
僅かな認知問題は高齢者では普通の現象であり、その最後で、認知症の進行をもたらす可能性がある。加齢動物の場合と全く同様に高齢者の場合では、一般的な認知機能の個人差が、グルココルチコイドに対する長期暴露差に関連している(Lupienら、Nat.Neurosci.1、69頁、(1998年))。更に、グルココルチコイドに対する脳の或種の下部領域の慢性暴露をもたらす、HPA(視床下部−下垂体−副腎)軸の調節障害が、認知機能の衰退に寄与しているものとして提案されている(McEwenら、Curr.Opin.Neurobiol.5、205頁、1995年)。11βHSD1は脳に豊富に存在し、視床下部、前頭皮質および小脳を含めた多数の下部領域で発現する(Sandeepら、Proc.Natl.Acad.Sci.101、6734頁(2004年))。11βHSD1不足のマウスは、加齢に関連するグルココルチコイド随伴視床下部機能障害から守られる(Yauら、Proc.Natl.Acad.Sci.98、4716頁、(2001年))。更に、ヒトでの研究では、カルベノキソロンの投与が、高齢者の言葉の滑らかさおよび言葉の記憶を改善することが示されている(Yauら、Proc.Natl.Acad.Sci.98、4716頁、(2001年))、Sandeepら、Proc.Natl.Acad.Sci.101、6734頁、(2004年))。最後に、トリアゾールタイプの選択的11βHSD1阻害剤の使用は、これらが、老齢マウスで記憶保持を引き延ばすことを示した(Rochaら、Abstract 231 ACS meeting、Atlanta、2006年3月25日−30日)。
【0007】
C.眼圧
グルココルチコイドは、臨床眼科の広範囲にわたる病状に対して局所的にまたは全身的に使用することができる。これらの治療の1つの特定の合併症は、コルチコステロイドの使用により誘発される緑内障である。この病状は、上昇した眼圧(IOP)で特徴付けられる。最も深刻な場合で、未治療状態では、IOPは視野を部分的に失わせ、完全な失明さえもたらし得る。IOPは、房水の生成およびその排液との間の不均衡の結果である。房水は、非色素上皮細胞で生成され、排液は小柱網の細胞により行われる。11βHSD1は非色素上皮細胞に局在化し、その機能は、明らかに、これらの細胞でのグルココルチコイド活性の増幅である(Stokesら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.41、1629頁(2000年))。この考えは、房水での遊離コルチゾールの濃度がコルチゾンに対して大過剰(14/1比)で存在することの観察により確認される。眼での11βHSD1の機能的活性は、健康なボランティアでカルベノキソロンの作用を研究することにより評価された。カルベノキソロンでの治療の7日後に、IOPは18%減少した(Rauzら、Invest.Ophthamol.Vis.Sci.42、2037頁(2001年))。眼における11βHSD1の阻害は、したがって、グルココルチコイドの局所濃度およびIOPを減少させて、緑内障およびその他の視覚障害の治療に有益な効果を生み出すことが予測される。
【0008】
D.高血圧症
レプチンおよびアンギオテンシノゲン等の含脂肪細胞由来の高血圧性物質は、肥満症に関連した高血圧性病状で重要な要素として提案されている(Wajchenbergら、Endocr.Rev.21、697頁(2000年))。遺伝子移植aP2−11βHSD1マウスで過剰に分泌されるレプチン(Masuzakiら、J.Clinical Invest.112、83頁(2003年))は、動脈圧を調節するそれらを含めて、種々の交感神経系のネットワークを活性化することができる(Matsuzawaら、Acad.Sci.892、146頁(1999年))。更に、レニン−アンギオテンシン系(RAS)は、動脈圧の変動での決定経路であることが確認されている。肝臓および脂肪組織で産生されるアンギオテンシノゲンは、レニンにとって重要な物質であり、RASの活性に関与する。血漿アンギオテンシノゲン濃度は、アンギオテンシンIIおよびアルドステロンの濃度と同様に、遺伝子移植ap2−11βHSD1マウスで著しく上昇する(Masuzakiら、J.Clinical Invest.112、83頁(2003年));これらの要素は、上昇した動脈圧を生み出す。アンギオテンシンII受容体拮抗薬の低投与量でのこれらのマウスの治療は、この高血圧症を止める(Masuzakiら、J.Clinical Invest.112、83頁(2003年))。この情報は、脂肪組織および肝臓でのグルココルチコイドの局所活性化の重要性を例示し、この高血圧症が、これらの組織での11βHSD1の活性に起因し、または悪化され得ることを示唆する。11βHSD1の阻害および脂肪組織および/または肝臓でのグルココルチコイド濃度の減少は、したがって、高血圧症および随伴する心血管病状の治療に有益な役割を持つことが予測される。
【0009】
E.骨粗鬆症
骨格の発達および骨の機能は、また、グルココルチコイドの作用により調節される。11βHSD1は、溶骨細胞および造骨細胞に存在する。カルベノキソロンでの健康なボランティアの治療は、骨形成マーカーで何らの変化もなしに骨吸収マーカーで増加を示した(Cooperら、Bone、27、375頁(2000年))。11βHSD1の阻害および骨でのグルココルチコイド濃度の減少は、したがって、骨粗鬆症の治療での保護メカニズムとして使用できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tomlinsonら、Endocrine Reviews 25(5)、831頁−866頁(2004年)
【非特許文献2】Davaniら、J.Biol.Chem.275、34841頁(2000年)
【非特許文献3】Moisanら、Endocrinology、127、1450頁(1990年)
【非特許文献4】Reaven Ann.Rev.Med 44、121頁(1993年)
【非特許文献5】Andrewsら、J.Clin.Endocrinol.Metab.88、285頁(2003年)
【非特許文献6】Kotelevstevら、Proc Nat Acad.Sci.94、14924頁(1997年);
【非特許文献7】Mortonら、J.Biol.Chem.275、41293頁(2001年)
【非特許文献8】Masuzakiら、Science 294、2166頁(2001年)
【非特許文献9】Barfら、J.Med.Chem.45、3813頁(2002年)
【非特許文献10】Wangら、Diabetologia 49、1333頁(2006年)
【非特許文献11】Hermanowski−Vosatkaら、J.Exp.Med.202、517頁(2005年)
【非特許文献12】Lupienら、Nat.Neurosci.1、69頁、(1998年)
【非特許文献13】McEwenら、Curr.Opin.Neurobiol.5、205頁、1995年
【非特許文献14】Sandeepら、Proc.Natl.Acad.Sci.101、6734頁(2004年)
【非特許文献15】Yauら、Proc.Natl.Acad.Sci.98、4716頁、(2001年)
【非特許文献16】Sandeepら、Proc.Natl.Acad.Sci.101、6734頁、(2004年)
【非特許文献17】Rochaら、Abstract 231 ACS meeting、Atlanta、2006年3月25日−30日)
【非特許文献18】Stokesら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.41、1629頁(2000年)
【非特許文献19】Rauzら、Invest.Ophthamol.Vis.Sci.42、2037頁(2001年)
【非特許文献20】Wajchenbergら、Endocr.Rev.21、697頁(2000年)
【非特許文献21】Masuzakiら、J.Clinical Invest.112、83頁(2003年)
【非特許文献22】Matsuzawaら、Acad.Sci.892、146頁(1999年)
【非特許文献23】Cooperら、Bone、27、375頁(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここに、11βHSD1活性を調節するトロパンの尿素誘導体が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、式(I):
【0013】
【化1】

(式中、
− Xは、炭素、酸素、硫黄もしくは窒素原子または−SO基のいずれかを表し、
− 破線結合は単結合または二重結合であり、
− R1a、b、c、dおよびR2a、bは同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素またはハロゲン原子;(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;(C−C)ハロアルキル、ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル;またはシアノ基;−COOR基;−NR基;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、−CONR−(C−C)アルキル基もしくは−SONR基を表し、
− (R2aまたは(R2bは、これらが結合する炭素原子と一緒になって、C=O基を形成してもよく、
− Rは、水素原子、フッ素原子、(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;アルコキシ(C−C)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル;(C−C)ハロアルキル;またはシアノ基;−COOR基;−NR基;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、もしくは−CONR−(C−C)アルキル基を表し、
− Rは:
水素原子または(C−C)アルキル基;
(C−C)シクロアルキル基;
複素環;
5から10個の炭素原子を含む単環式または二環式アリール基;
2から9個の炭素原子を含む単環式または二環式ヘテロアリール基;
を表し、
− アリールまたはヘテロアリール基は、ハロゲン原子および基:(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;(C−C)ハロアルキル、ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル;シアノ;場合によって置換されたフェニル;場合によって置換されたベンジル;−COOR;−NR;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、−CONR−(C−C)アルキル基、−SONR基、−NR−COR基から選択された1から4個の置換基で場合によって置換されており、
− pおよびrは、同じかまたは異なっていてもよく、1または2に等しい整数であり、
− Rは、水素原子、(C−C)アルキル基または(C−C)シクロアルキル基を表し、
− RおよびRは、同じかもしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、(C−C)アルキル基;(C−C)シクロアルキル基;(C−C)アルキルカルボニル基;ヒドロキシメチル(C−C)アルキル基;(C−C)アルコキシメチル(C−C)アルキル基;アリール基または−SO−R基を表し、またはこれらが結合する窒素原子と一緒になって、場合によって置換された複素環を形成し得る。)に相当する化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式(I)の化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を含み得る。したがって、これらは、鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態で存在し得る。ラセミ体を含むこれらの鏡像異性体およびジアステレオ異性体およびまたこれらの混合物は本発明の一部である。
【0015】
式(I)の化合物はエンド/エキソ立体異性体の形態で存在し得る。これらのエンド/エキソ立体異性体、およびまたこれらの混合物は、本発明の一部である。
【0016】
式(I)の化合物は、塩基の形態でまたは酸もしくは塩基、特に、薬剤として許容される酸もしくは塩基で塩化された形態で存在し得る。そのような付加塩は本発明の一部である。
【0017】
これらの塩は、薬剤として許容される酸で有利に調製されるが、その他の酸、例えば、式(I)の化合物の精製または単離に役立つ酸も本発明の一部である。
【0018】
式(I)の化合物は、また、水和物または溶媒和物の形態、即ち、1つ以上の水分子または溶剤との会合または組合せの形態で存在し得る。そのような水和物および溶媒和物もまた本発明の一部である。
【0019】
本発明の文脈において、別途本明細書で言及されない限り:
− 「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味するよう意図されており;
− 「(C−C)アルキル基」という用語は、1から5個の連続する炭素原子を含む、直鎖または分枝、飽和脂肪族基を意味するように意図されている。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル等の基が挙げられ得る;
− 「(C−C)シクロアルキル基」という用語は、3から6個の炭素原子を含む環状アルキル基を意味するように意図されている。例としては、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基が挙げられ得る;
− 「(C−C)アルコキシ基」という用語は、−O−(C−C)アルキル基(ここで、(C−C)アルキル基は、上記で定義された通りである。)を意味するように意図されている;
− 「アリール基」という用語は、5から10個の炭素原子を含む単環式または二環式芳香族基を意味するように意図されている。アリール基の例としては、フェニル基、チオフェン基、フラン基またはナフタレン基が挙げられ得る;
− 「ヘテロアリール基」という用語は、5から9個の炭素原子を含み、1から3個のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素または硫黄等を含む単環式または二環式芳香族基を意味するように意図されている。ヘテロアリール基の例としては、
ピリジン
ピラジン
ピリミジン
ピラゾール
オキサジアゾール
チアゾール
イミダゾール
ベンゾチオフェン
キノリン
インドール
の基が挙げられ得る。
【0020】
− 「(C−C)ハロアルキル基」という用語は、1から5個のハロゲン原子で置換された、上記で定義されたような(C−C)アルキル基を意味するように意図されている。例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチルまたはペンタフルオロエチルの基が挙げられる;
− 「ヘテロアリール」という用語は、4から10個の原子を含み、その内の少なくとも1つが酸素、窒素もしくは硫黄原子から選択される、場合によって結合したかもしくは架橋された単環式または二環式基を意味するように意図されている。例としては、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランおよび1,4−ベンゾジオキサンの基が挙げられる:
− 「場合によって置換されたフェニル基」、「場合によって置換されたベンジル基」または「場合によって置換された複素環」という用語は、以降の基の1つ以上で場合によって置換された、フェニル基またはベンジル基または複素環を意味するように意図されている:ハロゲン原子、基:(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;(C−C)ハロアルキル、ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル;シアノ;フェニル;ベンジル;−COOR;−NR;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、−CONR−(C−C)アルキル基または−SONR基。
【0021】
− R1a、b、c、dは、基R1a、1b、1cおよびR1dを表し、R2a、b、は、基R2aおよびR2bを表す。
【0022】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、特に好ましい化合物のサブグループとしては、Xが炭素または酸素であり、RからR、X、p、rおよび破線結合が上記で定義された通りである化合物が挙げられる。
【0023】
後者の化合物の中で、特に好ましい本発明の化合物は、式(I)(ここで、
pおよびrは1を表し;
破線結合は単結合または二重結合を表し;
1a、b、c、dは水素を表し、または基R1a、b、c、dの1つはハロゲンであり、その他は水素であり;
2a、bは水素を表し、または基R2a、bの1つは(C−C)アルキル基、好ましくはメチルであり、その他の基R2a、bは水素であり;
が水素を表し;
4位のRが、下記のアリールまたはヘテロアリール:
ピリジン
フェニル
ピラゾール
から選択される。)の化合物である。
【0024】
本発明の目的に特に好ましい化合物のその他の基は、式(I)(ここで、Xは炭素原子を表し、破線結合は二重結合を表し、Rは、フェニルまたはピリジンであり、R1a、b、c、d、R2a、b、R、RからR、pおよびrは、上記で定義された通りである。)の誘導体に相当する。
【0025】
本発明の目的に特に好ましい化合物のその他の基は、式(I)(ここで、Xは酸素原子を表し、破線結合は単結合を表し、Rは、フェニルまたはピリジンであり、R1a、b、c、d、R2a、b、R、RからR、pおよびrは、上記で定義された通りである。)の誘導体に相当する。
【0026】
本発明の目的に特に好ましい化合物のその他の基は、式(I)(ここで、Xは炭素原子を表し、破線結合は単結合を表し、Rは、フェニル、ピリジンまたはピラゾールであり、R1a、b、c、d、R2a、b、R、RからR、pおよびrは、上記で定義された通りである。)の誘導体に相当する。
【0027】
本発明による式(I)の化合物の中では、例としては、
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−((1S,3S,5R)−3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−((1S,5R)−3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−フェニル−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]メタノン
[3−(4−クロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−フルオロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−エチルフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
2−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]ベンゾニトリル
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(2−クロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
5−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]チオフェン−2−カルボニトリル
(3−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−m−トリル−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−イソプロピルフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
4−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]ベンゾニトリル
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−メトキシフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
3−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]ベンゾニトリル
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−メトキシフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
2−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]ベンズアミド
[3−(2−クロロチオフェン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−エチルフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(1H−インドール−4−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−キノリン−5−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−メトキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−メトキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(3−フルオロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−フルオロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−p−トリル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
N−{4−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]フェニル}アセトアミド
4−[8−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イル]−N,N−ジメチルベンズアミド
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(1H−インドール−6−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−メトキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−イソキノリン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
[3−(2−クロロピリジン−4−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ナフタレン−1−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−チオフェン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
[3−(4−アミノフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−フルオロ−2−メチルピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(2−クロロ−6−メチルピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]−オクト−2−エン−8−イル−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2,6−ジメトキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−イソキノリン−5−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(8−メチルキノリン−5−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(6−エチオキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2−エトキシピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(2,6−ジフルオロピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
[3−(5−クロロ−2−メトキシピリジン−4−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
[3−(2,5−ジクロロピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3−ベンゾ[b]チオフェン−5−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(1−メチル−1H−インドール−2−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]メタノン
[3−(6−クロロ−4−メチルピリジン−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−(3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2H−ピラゾール−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−イル]メタノン
(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−[3−(2H−ピラゾール−3−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]メタノン
が挙げられ得る。
【0028】
以下において、「保護基」(Pg)という用語は、合成中にヒドロキシルまたはアミン等の反応性官能基を保護する一方で、合成の最後で無傷の反応性官能基を再生することのできる基を意味するように意図されている。保護基ならびにまた保護および脱保護の方法の例は、“Protective Groups in Organic Synthesis”、Greenら、3rd edition(John Wiley&Sons,Inc.、New York)に記載されている。
【0029】
以下において、「脱離基」(Lg)という用語は、一対の電子の離脱で異種結合を破壊することにより分子から容易に開裂できる基を意味するように意図されている。したがって、この基は、例えば、置換反応でその他の基で容易に置換することができる。そのような脱離基は、例えば、ハロゲンまたは活性化されたヒドロキシル基、例えば、メシル、トシル、トリフレート、アセチル、パラ−ニトロフェニル等である。脱離基の例およびその調製のための参照は、“Advances in Organic Chemistry”、J.March、3rd edition、Wiley Interscience、310頁−316頁に記載されている。
【0030】
本発明により、一般式(I)の化合物は、以降の方法により調製され得る。Xが窒素原子を表す場合、XはR2a、b(H以外)基または上記で定義したような保護基Pgのいずれかで置換されるべきである。
【0031】
【化2】

【0032】
スキーム1で、式(IV)の化合物は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルアミン等の塩基の存在下で、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン等の溶剤中で、周囲温度および80℃の範囲の温度で、式(II)の中間体および2つの脱離基Lg(例えば、塩素原子、トリクロロメトキシ基、パラ−ニトロフェニル基、イミダゾール基またはメチルイミダゾリウム基)を有する式(III)のカルボニルとの間の反応により調製することができる。式(I)の化合物は、トリエチルアミンまたは炭酸カリウム等の塩基の存在または不存在下で、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリルまたは水等の溶剤中で、周囲温度から100℃の範囲の温度で、活性化された誘導体(IV)およびアミン(V)との間のカップリングにより得られる。
【0033】
一般式(II)の複素環は市販されており、または文献(“Comprehensive heterocyclic chemistry”、Katritzkyら、2nd edition(Pergamon Press))に記載の方法で調製することができる。
【0034】
一般式(V)の複素環は市販されており、または文献(Sikazweら、Biorg.Med.Chem.Lett 14、5739頁(2004年);Gilbertら、Biorg.Med.Chem.Lett 14、515頁(2004年);Luら、Biorg.Med.Chem.Lett 13、1817頁(2003年))に記載の方法で調製することができる。
【0035】
スキーム2は、破線結合が二重結合であり、Rが、上記で定義されたようなアリールまたはヘテロアリール基を表す式(VI)の化合物の合成の詳細を示す。
【0036】
【化3】

【0037】
スキーム2では、そのアミン官能基が、ビニルスルホネート−A基(例えば、Aは、トリフルオロメチル基またはノナフルオロブチル基であってもよい)を有する保護基Pg(例えば、BocまたはFmoc基)で保護されている複素環(VIII)は、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムヘキサメチルジシラザン等の塩基の存在下で、テトラヒドロフランまたはエチレングリコールジメチルエーテル等の溶剤中で、−78℃から周囲温度の範囲の温度で、トリフルオロスルホン酸無水物またはN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド等のスルホン化剤でケトン(VII)を変換することにより調製できる。複素環(X)は、適当な金属誘導体(例えば、パラジウム、亜鉛もしくは銅誘導体)の存在下で、炭酸カリウム、フッ化カリウムもしくはリン酸ナトリウム等の塩基の存在または不存在下で、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエンもしくは水等の溶剤または溶剤の混合物中で、周囲温度から120℃の範囲の温度で、化合物(VIII)および化合物(IX)(ここで、Yはホウ素(例えば、ホウ酸もしくはホウ酸エステル)の誘導体またはスズ(例えば、トリ(n−ブチル)スズ)の誘導体またはハロゲン原子(例えば、臭素またはヨウ素)である。)との間の有機金属カップリングで得られる。最終工程で、式(VI)のアミンは、当業者に公知のものから選択される方法により、式(X)の化合物のアミン官能基の脱保護により得られる。これらは、特に、−10から100℃の範囲の温度で、Boc基での保護の場合では、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフランもしくはジエチルエーテル中でトリフルオロ酢酸または塩酸の使用を、Fmoc基に対してはピペリジンの使用を含む。
【0038】
スキーム3は、破線結合が単結合であり、Rは、上記で定義された通りのアリールまたはヘテロアリール基を表す式(XI)の化合物の合成の詳細を示す。
【0039】
【化4】

【0040】
スキーム3では、複素環(XII)は、メタノールまたはエタノール中で、適当な金属触媒での複素環(X)の二重結合の水素化により得られる。第二段階で、式(XI)のアミンは、当業者に公知のものから選択される方法により、式(XII)の化合物のアミン官能基の脱保護により得られる。これらは、特に、−10から100℃の範囲の温度で、Boc基での保護の場合は、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフランもしくはジエチルエーテル中でトリフルオロ酢酸または塩酸の使用を、Fmoc基に対してはピペリジンの使用を含む。
【0041】
場合によっては、スキーム4で、エンド(XIII)/エキソ(XIV)立体異性体の混合物は、フラッシュクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーまたは再結晶化で分離することができ、またはそれは、そのまま使用され、混合物(XI)と称される。
【0042】
【化5】

【0043】
スキーム5は、破線結合が単結合であり、Rは、上記で定義された通りのアリールまたはヘテロアリール基を表す式(I)の化合物を調製するための別の経路を示す。これらの化合物は、以降では式(XV)の化合物として知られる。Xが窒素原子を表す場合では、R2a、b(H以外)基で、または上記で定義したような保護基Pgのいずれかで置換されるべきである。
【0044】
【化6】

【0045】
スキーム5では、アミン(XVI)は、当業者に公知のものから選択される方法により、式(VIII)の化合物のアミン官能基の脱保護によって得られる。これらは、特に、−10から100℃の範囲の温度で、Boc基での保護の場合は、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフランもしくはジエチルエーテル中でトリフルオロ酢酸または塩酸の使用を、Fmoc基に対してはピペリジンの使用を含む。式(XVII)の化合物は、トリエチルアミンもしくは炭酸カリウム等の塩基の存在または不存在下で、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリルまたは水等の溶剤中で、周囲温度から100℃の範囲の温度で、活性誘導体(IV)およびアミン(XVI)との間のカップリングで得られる。次の段階で、複素環(XVIII)は、適当な金属誘導体(例えば、パラジウム、亜鉛もしくは銅誘導体)の存在下で、炭酸カリウム、フッ化カリウムもしくはリン酸ナトリウム等の塩基の存在または不存在下で、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエンもしくは水等の溶剤中または溶剤の混合物で、周囲温度から120℃の範囲の温度で、化合物(XVII)および化合物(IX)(ここで、Yはホウ素(例えば、ホウ酸もしくはホウ酸エステル)の誘導体、またはスズ(例えば、トリ(n−ブチル)スズ基)の誘導体またはハロゲン原子(例えば、臭素またはヨウ素)である。)との間の有機金属カップリングで得られる。最終工程で、複素環(XVIII)の二重結合は、誘導体(XV)を与えるために、メタノールまたはエタノール中で適当な金属で水素化される。
【0046】
場合によっては、スキーム6で、エンド(XIX)/エキソ(XX)立体異性体の混合物は、フラッシュクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーまたは再結晶化で分離することができ、またはそれは、そのまま使用され、混合物(XV)として称される。
【0047】
【化7】

【0048】
以下の実施例は、本発明による或種の化合物の調製を説明する。これらの実施例は本発明を限定するものではなく単に例示するに過ぎない。例示されている化合物の番号は、本発明による幾つかの化合物の化学構造および物性を例示する以降の表で与えられる番号へ戻り参照する。
【実施例1】
【0049】
1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩(化合物4)
1.1:t−ブチル3−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレート
窒素下で500mlの3つ口フラスコ中で、10mlの、へキサン中の2.5Nのn−ブチルリチウム溶液を、−60℃に冷却した100mlのテトラヒドロフラン中のジイソプロピルアミンの3.73mlの溶液へ滴状添加する。1/4時間撹拌後、テトラヒドロフラン(50ml)中の5gのN−t−ブチルオキシカルボニルノルトロピノンを0℃で添加する。最後に、なお0℃で、8.32gのN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドを添加する。24時間周囲温度で撹拌後、テトラヒドロフランを蒸発させ、生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの2/1の混合物を溶出液として使用してアルミナ上記で急速濾過することにより精製する。6.13gのt−ブチル3−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレートを得る。
M+H=358
【0050】
1.2:8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメチル−スルホネート塩酸塩
13mlのジオキサン中の、2.76gのt−ブチル3−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレートを、100mlの丸底フラスコに入れる。次いで、ジオキサン中の4N塩酸溶液の12.8mlを慎重に添加する。反応混合物を3時間撹拌する。ジオキサンを蒸発させ、2.27gの8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメチル−スルホネート塩酸塩を得る。
M+H=258
【0051】
1.3:8−(3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメタンスルホネート
1.13gの1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、85mlのジクロロメタンおよび1.54mlのトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で250mlの3つ口フラスコへ入れる。0.834gのトリホスゲンを0℃で添加し、次いで、反応を、周囲温度で4時間撹拌するために放置する。2.27gの8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメチルスルホネート塩酸塩および1.19mlのトリエチルアミンを続いて添加し、次いで、反応混合物を18時間還流する。炭酸水素ナトリウムの200mlの飽和水溶液を添加し、水性相を、ジクロロメタンで3回抽出する。有機相を一緒にして、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させる。残渣を、ヘプタン/酢酸エチルの8/2の混合物で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。3.21gの8−(3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメタンスルホネートを得る。
M+H=417
【0052】
1.4:1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
0.5gのジヒドロキノリン−1(2H)−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメタンスルホネート、0.419gの3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン、0.1gの塩化リチウム、0.765gのリン酸カリウム、0.067gの2’−(ジメチルアミノ)−2−ビフェニルパラジウム(II)クロリドジノルボルニルホスフィンおよび4.3mlのジオキサンを、10mlのガラス管内に導入する。管を密閉し、次いで、100℃で、マイクロ波放射下で50分間加熱する。水および酢酸エチルを添加する。水性相を酢酸エチルで3回抽出する。有機相を一緒にして、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧下で蒸発させる。残渣を、ヘプタン/酢酸エチルの3/7の混合物で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.3gの1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得る。
M+H=346
【0053】
1.5:1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
高圧反応器中で、窒素下で、0.148gの木炭担持5%パラジウムを、9mlのエタノールに溶解した0.240gの1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンに添加する。反応混合物を、3気圧の水素加圧下で、25℃で、15時間機械的に撹拌する。パラジウムをWhatman紙で濾過し、メタノールで洗浄する。溶剤を蒸発させ、次いで、残渣を、ヘプタン/酢酸エチル(3/7)からヘプタン/酢酸エチル(2/8)の溶出液勾配で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.146gの1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得る。
M+H=348.3
【0054】
1.6:1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩
0.146gの1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを、6mlのジクロロメタンに溶解し、4.2mlの、ジオキサン中の4N塩酸溶液を添加する。蒸発後、残渣を酢酸エチルに入れる。沈殿物を濾過し、次いで、真空下で乾燥する。0.122gの1−[(3−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩を得る。
融点=218−220℃
M+H=348.3
H NMR(DMSO,200MHz)、δ(ppm):1.4−2(m,9H);2.2−2.44(m,1H);2.6−2.78(t,2H);2.9−3.1(m,0.4H);3.2−3.45(m,0.6H);3.5−3.61(m,2H);4.1(sl,2H);6.78−6.98(m,1H);7−7.2(m,3H);7.8−7.96(m,1H);8.3−8.55(m,1H);8.64−8.9(m,2H)
【実施例2】
【0055】
1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン(化合物5)
2.1:1−[(3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
2.87gのトリ(n−ブチル)スズ2−ピリジン、0.6gの塩化リチウム、0.5gのジヒドロキノリン−1(2H)−イルカルボニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−3−イルトリフルオロメタンスルホネート、0.249gのジフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリドおよび19mlのテトラヒドロフランを、80mlのガラス管内に導入する。管を密閉し、次いで、140℃で、マイクロ波放射下で1時間加熱する。反応混合物を濾過し、次いで、酢酸エチルおよびフッ化カリウムの0.5N水溶液を添加する。混合物を続いて濾過し、次いで、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧下で蒸発させる。残渣を、ヘプタン/酢酸エチルの混合物で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.73gの1−[(3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得る。
M+H=346
【0056】
2.2:1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
高圧反応器中で、窒素下で、0.5gの木炭担持5%パラジウムを、29mlのエタノールに溶解した0.81gの1−[(3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンに添加する。反応混合物を、3気圧の水素加圧下で、25℃で、7時間機械的に撹拌する。パラジウムをWhatman紙で濾過し、メタノールで洗浄する。溶剤を蒸発させ、次いで、残渣を、ヘプタン/酢酸エチル溶出液勾配で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.221gの1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンおよび0.141gの1−{[(3−エキソ)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得る。
M+H=348.3
【0057】
2.3:1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩
0.221gの1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを、5.3mlのジクロロメタンに溶解し、6.4mlの、エーテル中の0.2N塩酸溶液を添加する。蒸発後、残渣を酢酸エチルに入れる。沈殿物を濾過し、次いで、真空下で乾燥する。0.161gの1−{[(3−エンド)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩を得る。
融点=161−163℃
M+H=348.3
H NMR(CDCl,200MHz)、δ(ppm):1.36−1.56(m,2H);1.67−1.8(m,2H);1.85−2.1(m,4H);2.24−2.4(m,2H);2.7(t,2H);3(q,1H);3.62(t,2H);4−4.12(m,2H);6.82(t,1H);6.93−7.09(m,3H);7.15−7.3(m,2H);7.43−7.59(m,1H);8.4−8.5(m,1H)。
【実施例3】
【0058】
1−{[(3−エキソ)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩(化合物6)
0.13gの、実施例2(2.2の部分)により得た1−{[(3−エキソ)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを、3.1mlのジクロロメタンに溶解し、3.7mlの、エーテル中の0.2N塩酸溶液を添加する。蒸発後、残渣を酢酸エチルに入れる。沈殿物を濾過し、次いで、真空下で乾燥する。0.101gの1−{[(3−エキソ)−3−ピリジン−2−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩を得る。
融点=178−180℃
M+H=348.3
H NMR(CDCl,200MHz)、δ(ppm):1.65−2(m,10H);2.7(t,2H);3.09−3.3(m,1H);3.2(t,2H);4−4.2、(t,2H);6.84(t,1H);6.95−7.23(m,5H);7.5−7.67(m,1H);8.45(d,1H)。
【実施例4】
【0059】
1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩(化合物1)
4.1:t−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレート
1gのt−ブチル3−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレート、0.975gの4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン、0.24gの塩化リチウム、1.78gのリン酸カリウム、0.157gの2’−(ジメチルアミノ)−2−ビフェニルパラジウム(II)クロリドジノルボルニルホスフィンおよび10mlのジオキサンを、80mlのガラス管内に導入する。管を密閉し、次いで、100℃で、マイクロ波放射下で30分間加熱する。水および酢酸エチルを添加する。水性相を酢酸エチルで3回抽出する。有機相を一緒にして、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧下で蒸発させる。残渣を、ヘプタン/酢酸エチルの混合物で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.458gのt−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレートを得る。
M+H=387
【0060】
4.2:t−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]−オクタン−8−カルボキシレート
高圧反応器中で、窒素下で、0.17gの木炭担持5%パラジウムを、20mlのメタノールに溶解した0.46gのt−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−8−カルボキシレートに添加する。反応混合物を、3気圧の水素加圧下で、25℃で、2時間半機械的に撹拌する。パラジウムをWhatman紙で濾過し、メタノールで洗浄する。溶剤を蒸発させ、0.46gのt−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボキシレートを得る。
M+H=289
【0061】
4.3:3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン二塩酸塩
2.76gのt−ブチル3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボキシレートおよび4mlの、ジオキサン中の4N塩酸溶液を、10mlの丸底フラスコに入れる。反応混合物を1時間半撹拌する。ジオキサンを蒸発させ、0.341gの3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン二塩酸塩を得る。
M+H=189
【0062】
4.4:1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
0.241gの1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、20mlのジクロロメタンおよび0.24mlのトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mlの丸底フラスコに入れる。0.178gのトリホスゲンを0℃で添加し、次いで、反応混合物を、周囲温度で3時間撹拌するために放置する。0.34gの3−ピリジン−4−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン二塩酸塩および1.19mlのトリエチルアミンを続いて添加し、次いで、反応混合物を3時間還流する。炭酸水素ナトリウムの200mlの飽和水溶液を添加し、次いで、水性相を、ジクロロメタンで3回抽出する。有機相を一緒にして、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させる。残渣を、ジクロロメタン/メタノールの9/1の混合物で、シリカゲルでのクロマトグラフに掛ける。0.04gの1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得る。
M+H=348
【0063】
4.5:1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩
0.04gの1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを、1.15mlの、エーテル中の0.2N塩酸溶液に溶解する。蒸発後、残渣を酢酸エチルに入れる。沈殿物を濾過し、次いで、真空下で乾燥する。0.004gの1−[(4−ピリジン−3−イル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン塩酸塩を得る。
融点=216−222℃
M+H=348.2
H NMR(DMSO,200MHz)、δ(ppm):1.65−1.95(m,10H);2.65(t,2H);3.2−3.4(m,1H);3.45(t,2H);4.05(sl,1H);6.75−6.9(m,1H);6.95−7.2(m,2H);7.78(d,2H);8.64(d,2H)。
【0064】
次の表は、本発明による化合物の幾つかの実施例の化学構造および物性を例示する。この表で、
「塩」の欄の「−」は、遊離塩基の形態にある化合物を表し、一方、「HCl」は、塩酸塩形態での化合物を表す。
【0065】
【表1】












【0066】
本発明の化合物を、脂質代謝またはグルコース代謝に含まれる酵素である11ベータ−HSD1酵素についてのその阻害活性を決定するために薬理試験に掛けた。
【0067】
これらの試験は、384のウエル形式でSPA(Scintillation Proximity Assay)(シンチレーション近傍アッセイ)により、本発明の化合物のインビトロ阻害活性を測定することに在る。組換え11ベータ−HSD1タンパク質を、イースト菌セレビシアエ(S.cerevisiae)で産生した。反応を、阻害剤の濃度増加の不存在下または存在下で、H−コルチゾンおよびNADPHの存在下で酵素を培養することにより行った。SPAビーズを、反応の経過中に形成されるコルチゾールの量を測定することを可能とする、抗コルチゾール抗体で予備培養された抗マウス抗体へ結合させた。
【0068】
11ベータ−HSD1酵素に関する阻害活性は、11ベータ−HSD1の活性の50%を阻害する濃度(IC50)で与えられる。
【0069】
本発明による化合物のIC50値は1μM未満である。例えば、化合物番号4、7、13、28および55IC50値は、それぞれ、0.019μM、0.004μM、0.122μM、0.19μMおよび0.534μMである。
【0070】
したがって、本発明による化合物は11ベータ−HSD1酵素について阻害活性を有することが明らかである。したがって、本発明による化合物は、医薬の調製のため、特に、11ベータ−HSD1酵素を阻害する医薬のために使用することができる。
【0071】
したがって、本発明のその他の態様によれば、本発明の対象は、式(I)の化合物、または薬剤として許容される酸を伴うその化合物の付加塩、または式(I)の化合物の水和物または溶媒和物を含む医薬である。
【0072】
これらの医薬は、治療、特に、肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群、クッシング症候群、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、認知障害および認知症、緑内障、骨粗鬆症ならびに免疫系の有効性を増加することによる或種の感染症の治療に役立つ医薬である。
【0073】
本発明のその他の態様によれば、本発明は、活性成分として本発明による化合物を含む薬剤組成物に関する。これらの薬剤組成物は、本発明による少なくとも1つの化合物または前記化合物の薬剤として許容される塩、水和物または溶媒和物、およびまた少なくとも1つの薬剤として許容される賦形剤の有効投与量を含む。
【0074】
前記賦形剤は、当業者に公知の通常の賦形剤から、薬剤形および所望の投与方法によって選択される。
【0075】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、局部、気管内、鼻腔内、経皮または直腸の投与のための本発明の薬剤組成物では、上記式(I)の活性成分、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物は、上記状態または疾患の予防または治療のために動物および人間に、従来の薬学的賦形剤との混合物として、単位薬剤形で投与され得る。
【0076】
適当な単位薬剤形は、例えば、錠剤、軟質もしくは硬質ゲルカプセル、粉末、顆粒および経口溶液または懸濁液等の経口投与剤形、舌下、口腔、気管内、眼内、または鼻腔内の投与剤形、吸入による投与のための剤形、局所、経皮、皮下、筋肉内または静脈内の投与剤形、直腸投与剤形、ならびにインプラントを含む。局所用途に対しては、本発明による化合物は、クリーム、ゲル、軟膏またはローションで使用され得る。
【0077】
例として、錠剤形態の本発明による化合物の単位投与剤形は以下の成分を含んでもよい:
本発明による化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
ナトリウムクロスカルメロース 6.0mg
トウモロコシデンプン 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
本発明のその他の態様によれば、本発明は、また、本発明による化合物または薬剤として許容されるその塩もしくは水和物もしくは溶媒和物の有効投与量を患者に投与することを含む、上記で示した病状を治療するための方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化8】

(式中、
− Xは、炭素、酸素、硫黄もしくは窒素原子または−SO基を表し、
− 破線結合は単結合または二重結合であり、
− R1a、b、c、dおよびR2a、bは同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素またはハロゲン原子;(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;(C−C)ハロアルキル、ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル;もしくはシアノ基;−COOR基;−NR基;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、−CONR−(C−C)アルキル基または−SONR基を表し、
− (R2aまたは(R2bは、これらが結合する炭素原子と一緒になって、C=O基を形成してもよく、
− Rは、水素原子、フッ素原子、(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;アルコキシ(C−C)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル;(C−C)ハロアルキル;もしくはシアノ基;−COOR基;−NR基;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、または−CONR−(C−C)アルキル基を表し、
− Rは:
水素原子または(C−C)アルキル基;
(C−C)シクロアルキル基;
複素環;
5から10個の炭素原子を含む単環式または二環式アリール基;
2から9個の炭素原子を含む単環式または二環式ヘテロアリール基
を表し、
− アリールまたはヘテロアリール基は、ハロゲン原子および基:(C−C)アルキル;(C−C)アルコキシ;(C−C)ハロアルキル、ヒドロキシル;ヒドロキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル;シアノ;場合によって置換されたフェニル;場合によって置換されたベンジル;−COOR;−NR;−COOR−(C−C)アルキル基、−NR−(C−C)アルキル基、−CONR基、−CONR−(C−C)アルキル基、−SONR基、−NR−COR基から選択される1から4個の置換基で場合によって置換されており、
− pおよびrは、同じかまたは異なっていてもよく、1または2に等しい整数であり、
− Rは、水素原子、(C−C)アルキル基または(C−C)シクロアルキル基を表し、
− RおよびRは、同じかまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基;(C−C)アルキルカルボニル基;ヒドロキシメチル(C−C)アルキル基;(C−C)アルコキシメチル(C−C)アルキル基;アリール基もしくは−SO−R基を表し、またはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によって置換された複素環を形成し得る。)に相当する化合物、その塩、溶媒和物および水和物、ならびにラセミ体混合物を含むその鏡像異性体およびジアステレオ異性体。
【請求項2】
Xが炭素または酸素であり、RからR、X、p、rおよび破線結合が請求項1で定義されている通りである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
pおよびrが1を表し、
破線結合が、単結合または二重結合を表し、
1a、b、c、dが水素を表し、またはR1a、b、c、d基の1つがハロゲンであり、その他のR1a、b、c、d基が水素であり、
2a、bが水素を表し、またはR2a、b基の1つが(C−C)アルキル基、好ましくはメチルであり、その他の基が水素であり、
が水素を表し、
4位のRが、次のアリールまたはヘテロアリール:
ピリジン
フェニル
ピラゾール
から選択される、請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Xが炭素原子を表し、破線結合が二重結合を表し、Rがフェニルまたはピリジンであり、R1a、b、c、d、R2a、b、RからR、pおよびrが、請求項1で定義された通りである、請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
Xが酸素原子を表し、破線結合が単結合を表し、Rがフェニルまたはピリジンであり、R1a、b、c、d、R2a、b、RからR、pおよびrが、請求項1で定義された通りである、請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Xが炭素原子を表し、破線結合が単結合を表し、Rが、フェニル、ピリジン、またはピラゾールであり、R1a、b、c、d、R2a、b、RからR、pおよびrが、請求項1で定義された通りである、請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
式(IV)
【化9】

(式中、
1a、b、c、d、R2a、b、pおよびrは、式(I)の化合物に対して請求項1で定義された通りであり、
Lgは脱離基である。)の化合物を、式(V)
【化10】

(式中、
およびRは、式(I)の化合物に対して請求項1で定義された通りである。)の化合物と反応させ、場合によって、そのようにして得られた化合物をその塩の1つに変換することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の調製方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、または薬剤として許容される酸とこの化合物の付加塩、または式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含むことを特徴とする医薬。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはこの化合物の薬剤として許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの薬剤として許容される賦形剤を含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項10】
肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群、クッシング症候群、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、認知障害および認知症、緑内障、骨粗鬆症および免疫系の活性化を必要とする或種の病的状態の治療での使用のための医薬の調製のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−541464(P2009−541464A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517319(P2009−517319)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001070
【国際公開番号】WO2008/000951
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】