説明

トロンビン受容体拮抗薬の即放性錠剤製剤

【課題】許容される溶解特性を有するトロンビン受容体拮抗薬即放性製剤を提供すること。
【解決手段】いくつかの実施形態では、本発明は、経口投与用の固体薬剤製剤であって、化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも1つの崩壊剤を含み、化合物1の量は製剤の重量の約10%未満である薬剤製剤を対象にする。いくつかの実施形態では、製剤は錠剤である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は製剤の重量の約7%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期容量および維持用量のトロンビン受容体拮抗薬を送達するための即放性錠剤製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トロンビンは、様々な細胞型において種々の活性を有することが知られており、トロンビン受容体は、ヒト血小板、血管平滑筋細胞、内皮細胞、および線維芽細胞のような細胞型に存在することが知られている。したがって、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)拮抗薬とも呼ばれるトロンビン受容体拮抗薬は、血栓性、炎症性、アテローム硬化性、および線維増殖性障害、ならびにトロンビンおよびその受容体が病理学的役割を果たす他の障害の治療において有用であり得る。
【0003】
トロンビン受容体拮抗薬は、例えば血栓症、血管再狭窄、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、心疾患、播種性血管内凝固症候群、高血圧(Suzuki Shuichi、特許文献1、特許文献2、および特許文献3)、不整脈、炎症、狭心症、発作、アテローム性動脈硬化症、虚血病態(Zhang、Han−cheng、特許文献4、特許文献5、および特許文献6)を含めて、種々の心血管疾患または病態を治療するのに潜在的に有用であると文献に示唆されている。
【0004】
特許文献7は、実施例2として同定された特定のトロンビン受容体拮抗薬化合物を開示する。これは、本明細書で化合物1として同定される。化合物1は下記の構造を有する。
【0005】
【化1】


化合物1は、良好なトロンビン受容体拮抗薬活性(効力)および選択性を示し、化合物1の重硫酸塩は、現在Schering Corpによって開発中である。化合物1の重硫酸塩の結晶形は、特許文献8に開示されている。
【0006】
種々の病態および疾患を治療するためのトロンビン受容体拮抗薬の小さいサブセットの使用は、特許文献9に開示される。心肺バイパス手術に伴う合併症のトロンビン受容体拮抗薬の投与による予防は、特許文献10に教示される。置換トロンビン受容体拮抗薬は、特許文献11;特許文献12;および特許文献13、ならびに特許文献14;特許文献15;特許文献16;および特許文献17に開示される。本明細書に引用される参考文献はすべて、その全体が組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第0288092号パンフレット(2002年)
【特許文献2】国際公開第0285850号パンフレット(2002年)
【特許文献3】国際公開第0285855号パンフレット(2002年)
【特許文献4】国際公開第0100659号パンフレット(2001年)
【特許文献5】国際公開第0100657号パンフレット(2001年)
【特許文献6】国際公開第0100656号パンフレット(2001年)
【特許文献7】米国特許出願第10/412,982号明細書
【特許文献8】米国特許第7,235,567号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第04/0192753号明細書
【特許文献10】米国特許出願第11/613,450号明細書
【特許文献11】米国特許第6,063,847号明細書
【特許文献12】米国特許第6,326,380号明細書
【特許文献13】米国特許第6,645,987号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第03/0203927号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第04/0216437号(A1)明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第04/0152736号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第03/0216437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
化合物1のトロンビン受容体拮抗薬即放性製剤を含めて、許容される溶解特性を有する1組のトロンビン受容体拮抗薬即放性製剤を提供することは有益であろう。本発明は、説明が進むにつれて明らかになる上記その他の利点を提供しようと試みる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、経口投与用の固体薬剤製剤であって、化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも1つの崩壊剤を含み、化合物1の量は製剤の重量の約10%未満である薬剤製剤を対象にする。
【0010】
いくつかの実施形態では、製剤は錠剤である。
【0011】
いくつかの実施形態では、化合物1の量は製剤の重量の約7%未満である。
【0012】
いくつかの実施形態では、崩壊剤と化合物1の比は、重量/重量基準で約0.6〜約12である。いくつかの実施形態では、その比は約0.75〜約1.0である。いくつかの実施形態では、その比は約0.9である。いくつかの実施形態では、その比は約2.4である。
【0013】
いくつかの実施形態では、化合物1の重量は約10mgと約50mgの間であり、製剤の全重量は約200mgと約1500mgの間である。
【0014】
いくつかの実施形態では、化合物1の重量は約40mgであり、製剤の全重量は約400mgと約800mgの間である。
【0015】
いくつかの実施形態では、化合物1の重量は約40mgであり、製剤の全重量は約600mgである。
【0016】
いくつかの実施形態では、化合物1の重量は約0.5mgと約10mgの間であり、製剤の全重量は約100mgと400mgの間である。
【0017】
いくつかの実施形態では、化合物1の重量は約2.5mgであり、製剤の全重量は約100mgである。
【0018】
いくつかの実施形態では、化合物1は重硫酸塩である。
【0019】
いくつかの実施形態では、製剤は30分での溶解が少なくとも約80%である。いくつかの実施形態では、製剤は30分での溶解が少なくとも約85%である。
【0020】
いくつかの実施形態では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、および微結晶セルロースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。
【0021】
いくつかの実施形態では、製剤は、さらに少なくとも1つの希釈剤、少なくとも1つの結合剤、および少なくとも1つの滑沢剤を含む。いくつかの実施形態では、希釈剤は、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、マンニトール、ソルビトール、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、圧縮糖、デンプン、および硫酸カルシウムからなる群の1つまたは複数から選択される。いくつかの実施形態では、希釈剤は、ラクトース一水和物および微結晶セルロースからなる群の1つまたは複数から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、結合剤は、ポビドン、アカシア、トラガカント、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、スクロースやソルビトールなどの糖液、およびエチルセルロースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、結合剤はポビドンである。
【0023】
いくつかの実施形態では、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0024】
いくつかの実施形態では、製剤は、約40mgの化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも約5重量パーセントの崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、前記製剤の全重量は約100mgと約1000mgの間である。いくつかの実施形態では、前記製剤の全重量は約600mgである。
【0025】
いくつかの実施形態では、製剤は錠剤である。
【0026】
いくつかの実施形態では、製剤は下記を含む。
成分 量(mg)
化合物1重硫酸塩 40
ラクトース一水和物 383
微結晶セルロース 120
クロスカルメロースナトリウム 36
ポビドン 18
ステアリン酸マグネシウム 3。
【0027】
いくつかの実施形態では、製剤は、約2.5mgの化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも約5重量パーセントの崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、前記製剤の全重量は約50mgと約400mgの間である。いくつかの実施形態では、前記製剤の全重量は約100mgである。
【0028】
いくつかの実施形態では、製剤は下記を含む。
成分 量(mg)
化合物1重硫酸塩 2.5
ラクトース一水和物 68
微結晶セルロース 20
クロスカルメロースナトリウム 6
ポビドン 3
ステアリン酸マグネシウム 0.5。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明は、急性冠動脈症候群または末梢動脈疾患を治療する方法、またはこのような治療を必要とする患者に薬剤製剤を経口投与することによって、二次予防を必要とする患者を治療する方法を対象とする。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明は、30分での溶解が少なくとも約80%となるトロンビン受容体拮抗薬の即放性錠剤製剤であって、前記トロンビン受容体拮抗薬は下記からなる群から選択される即放性錠剤製剤を対象とする。
【0031】
【化2】


本発明は、下記の図面、説明、および特許請求の範囲からさらに理解されるであろう。
【0032】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの崩壊剤を含む経口投与用の固体薬剤製剤であって、化合物1の量は、製剤の重量の約10%未満である薬剤製剤。
(項目2)
錠剤である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目3)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の量が、製剤の重量の約7%未満である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目4)
崩壊剤と化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物との比が、重量/重量基準で約0.6と約12の間である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目5)
前記比が約0.75と約1.0の間である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目6)
前記比が約0.9である、項目5に記載の薬剤製剤。
(項目7)
前記比が約2.4である、項目4に記載の薬剤製剤。
(項目8)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の重量が約10mgと約50mgの間であり、製剤の全重量が約200mgと約1500mgの間である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目9)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の重量が約40mgであり、製剤の全重量が約400mgと約800mgの間である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目10)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の重量が約40mgであり、製剤の全重量が約600mgである、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目11)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の重量が約0.5mgと約10mgの間であり、製剤の全重量が約100mgと400mgの間である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目12)
化合物1またはその薬剤として許容される塩もしくは溶媒和物の重量が約2.5mgであり、製剤の全重量が約100mgである、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目13)
化合物1が重硫酸塩である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目14)
化合物1の30分での溶解が少なくとも約80%である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目15)
化合物1の30分での溶解が少なくとも約85%である、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目16)
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、および微結晶セルロースからなる群から選択される、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目17)
前記崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目18)
少なくとも1つの希釈剤、少なくとも1つの結合剤、および少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む、項目1に記載の薬剤製剤。
(項目19)
前記希釈剤が、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、マンニトール、ソルビトール、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、圧縮糖、デンプン、および硫酸カルシウムからなる群の1つまたは複数から選択される、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目20)
前記希釈剤が、ラクトース一水和物および微結晶セルロースからなる群の1つまたは複数から選択される、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目21)
前記結合剤が、ポビドン、アカシア、トラガカント、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、スクロース、ソルビトール、およびエチルセルロースからなる群から選択される、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目22)
前記結合剤がポビドンである、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目23)
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクからなる群から選択される、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目24)
前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、項目18に記載の薬剤製剤。
(項目25)
約40mgの化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも約5重量パーセントの崩壊剤を含む経口投与用の固体薬剤製剤。
(項目26)
前記製剤の全重量が約100mgと約1000mgの間である、項目25に記載の製剤。
(項目27)
前記製剤の全重量が約600mgである、項目25に記載の製剤。
(項目28)
前記製剤が錠剤である、項目25に記載の製剤。
(項目29)
下記を含む経口投与用の固体薬剤製剤:
成分 量(mg)
化合物1重硫酸塩 40
ラクトース一水和物 383
微結晶セルロース 120
クロスカルメロースナトリウム 36
ポビドン 18
ステアリン酸マグネシウム 3。
(項目30)
約2.5mgの化合物1またはその薬剤として許容される塩、および少なくとも約5重量パーセントの崩壊剤を含む経口投与用の固体薬剤製剤。
(項目31)
前記製剤の全重量が約50mgと約400mgの間である、項目30に記載の製剤。
(項目32)
前記製剤の全重量が約100mgである、項目30に記載の製剤。
(項目33)
前記製剤が錠剤である、項目30に記載の製剤。
(項目34)
下記を含む経口投与用の固体薬剤製剤:
成分 量(mg)
化合物1重硫酸塩 2.5
ラクトース一水和物 68
微結晶セルロース 20
クロスカルメロースナトリウム 6
ポビドン 3
ステアリン酸マグネシウム 0.5。
(項目35)
トロンビン受容体拮抗薬の即放性錠剤製剤であって、前記トロンビン受容体拮抗薬の30分溶解が少なくとも約80%であり、前記トロンビン受容体拮抗薬が
【化8】


またはその薬剤として許容される異性体、塩、もしくは溶媒和物からなる群から選択される即放性錠剤製剤。
(項目36)
急性冠動脈症候群を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に項目1、3、5、9、12、25、30、および35のいずれかに記載の薬剤製剤を経口投与することによる方法。
(項目37)
二次予防を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に項目1、3、5、9、12、25、30、および35のいずれかに記載の薬剤製剤を経口投与することによる方法。
(項目38)
末梢動脈疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に項目1、3、5、9、12、25、30、および35のいずれかに記載の薬剤製剤を経口投与することによる方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】様々なAPI添加量の錠剤製剤の化合物1の溶解(パーセント)対時間のグラフである。
【図2】様々なプロトタイプ錠剤製剤の化合物1の30分間後の溶解(パーセント)のグラフである。
【図3】崩壊剤とAPIの比が制御されたプロトタイプ錠剤製剤の化合物1の溶解(パーセント)対時間のグラフである。
【図4】崩壊剤濃度が制御されたプロトタイプ錠剤製剤の化合物1の溶解(パーセント)対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
Schering Corp.は、急性冠動脈症候群を含めて、種々の心臓血管系への適用、および初期の冠動脈イベントの後に起こる後期の冠動脈イベントの予防(「二次予防」)において使用するためのトロンビン受容体拮抗薬を開発中である。活性薬剤成分(「API」)である化合物1は、第II相臨床試験で評価されている。商品化が考慮される投与計画には、経口投与用の固体即放性錠剤製剤において10、20および40mgの潜在的な初期用量、ならびに0.5、1、2.5、および5mgの維持用量が含まれる。即放性製剤は、患者へのトロンビン受容体拮抗薬の急速な送達を確実にするために求められている。急性冠動脈イベント(例えば、発作)を発症したばかりの可能性があり、したがって心血管の重篤で切迫したさらなる結果(例えば、冠動脈虚血)のリスクがある患者の場合は、初期用量のトロンビン受容体拮抗薬の急速な送達が重要であり得る。このような心血管性の結果のリスクは、このような患者に治療上有効量のトロンビン受容体拮抗薬を急速に送達することによって軽減することができ、これは、許容される薬剤特性を有する即放性製剤によって実現することができると考えられる。臨床データに基づいて、20または40mgの初期用量は、患者において所望の時間枠で化合物1の治療上有効な血中レベルを安全に実現するようである。したがって、適当な薬剤特性を有する製剤の開発は、このトロンビン受容体拮抗薬の商品化において必要なステップである。
【0035】
第II相臨床試験用の調製において(かつそれらの臨床試験の結果の検討から初期用量と維持用量は異なることが適切であると理解する前に)、複数の即放性製剤が調製された。処方箋は、製剤含量均一性/アッセイを裏付けるための製剤スクリーニング検査、活性剤/賦形剤の相溶性検査、および安定性スクリーニング試験の長期データからの溶解結果に基づいて選択された。これらの製剤の製造方法は、湿式造粒、乾燥、ブレンディング、および圧縮のステップと、その後に続く任意選択のフィルムコーティング操作を含む。表1は、化合物1重硫酸塩錠剤の用量が0.5、1、2.5、10、および20mgである製剤を示す。
【0036】
【表1】


これらのプロトタイプ錠剤を、標準的な薬剤品質特性、例えば溶解(適当な紫外分光光度計を装備したバスケット型溶解装置を用いて、0.05N HClを含有する酸性溶解試験媒体を用いて、50rpmで撹拌する)について試験した。
【0037】
急性冠動脈症候群の治療および二次予防における化合物1の評価のために計画された第III相臨床試験では、用量2.5mgの製剤1Cが、維持用量としての投与のために計画される。
【0038】
「急性冠動脈症候群」としては、急性心筋虚血と適合する臨床症状の任意の群が挙げられる。急性心筋虚血は、冠動脈疾患(冠動脈心疾患とも呼ばれる)に起因する心筋への不十分な血液供給による胸痛である。したがって、急性冠症候群は、不安定狭心症から非Q波心筋梗塞およびQ波心筋梗塞に及ぶ一連の臨床状態を包含する。症状としては、胸痛、息切れ、悪心、嘔吐、発汗(diaphoresis)(発汗(sweating))、動悸、不安または切迫した破滅感、および急性に病気であるという感情を挙げることができる。
【0039】
「二次予防」は、心臓発作または発作などの著しい心血管イベントをすでに被っている患者の、将来の別の潜在的により重篤で、おそらく致命的な心血管または脳血管イベントを予防するための治療を意味する。
【0040】
トロンビン受容体拮抗薬が有用であり得る別の心血管病態は、動脈内側に斑を形成し、動脈が狭くなり、詰まる、コレステロールおよび瘢痕組織が蓄積される場合発症する末梢血管疾患(「PVD」)とも呼ばれる末梢動脈疾患(「PAD」)である。動脈が詰まると、脚への血流が低減し、歩行するときに疼痛を生じ、最終的には壊疽および切断を招く恐れがある。
【0041】
経口投与製剤において常に重要である一薬剤特性は、溶解速度である。典型的な即放性製剤の規格では、75〜80%以上の活性成分が30分以内に溶解することが求められている。表1に列挙するものに類似しているいくつかの製剤では、安定性評価にかけられた後、一部の製剤された錠剤に関して、溶解速度の望ましくない低下が検出された。特に、溶解速度プロファイルの著しい変化は、初期と1か月の安定性10mg(全製剤重量100mgに対して製剤された)バッチ間で認められた。
【0042】
固体剤形中の活性成分の溶解に影響を及ぼす可能性がある1つのパラメータは、API添加量(すなわち、APIと全錠剤コアの重量比)である。API添加量が一部の化合物1錠剤で示された溶解の低下の要因であるかどうかを判定するために、様々なAPI添加量の複数の製剤を調製し、次いで新しいバッチと様々な安定性状態であったバッチとについて溶解を測定した。その結果を図1および2に示す。溶解データから、高温/高湿度条件では、API添加量は、80%溶解の基準を満たすためには10%未満とするべきであることが示唆される。API添加量が8%と高い場合、この基準を満たすことが判明し、データは、80%溶解の基準から外れることなく、必要に応じて8%を超えることが可能であることを示唆している。賦形剤およびそのレベルをさらに調査して、10%を超える、おそらく約12%までのAPI添加量を、満足な溶解特性を示すであろう錠剤に設計できることが結論であった。
【0043】
第II相臨床試験からの薬物動態データを検討した後、ある初期用量の化合物1が適切であり得ること、およびこの初期用量は20〜40mgの範囲であり得ることが確定された。第III相臨床試験の評価のために、初期用量40mgが計画される。製剤者が直面している問題は、具体的には40mgの製剤にはどのようなサイズの錠剤が必要とされるかであった。より高い用量の錠剤のためには、妥当な錠剤サイズを実現し、含量均一性の問題を回避し、販売商品のコストを制御するためにより高いAPI添加量が望ましい可能性がある。したがって、40mgの製剤のためには、化合物1の溶解特性をさらに理解することが求められた。
【0044】
溶解データは、API添加量が、観察された溶解の減速の唯一の要因ではなかったことも示唆する。溶解の減速は、崩壊剤とAPIの比および水分に関係すると仮定されていた。したがって、溶解は、製剤中の崩壊剤とAPIの比を調整することによって制御することができる。
【0045】
崩壊剤とAPIの比および含水率の効果の初期評価のために、3種類の予備製剤プロトタイプ錠剤を最初に開発した。錠剤はそれぞれ、40mgの化合物1重硫酸塩を含有し、錠剤の重量はそれぞれ、合計400、600、および800mgであった。これらのプロトタイプはそれぞれ、同一の百分率の下記の不活性賦形剤を含有した:希釈剤として微結晶セルロース(20%)、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(6%)、結合剤としてポビドン(3%)、および滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム(0.5%)。希釈剤としてのラクトース一水和物の量は、それぞれの製剤において、全錠剤重量および上記に列挙した個々の賦形剤量の総計に応じて様々であった。表2は、これらの3種類のプロトタイプ製剤を示す。
【0046】
【表2】


これらのプロトタイプ錠剤を、標準的な薬剤品質特性、例えば溶解(適当な紫外分光光度計を装備したDistek 2100/5100パドル型溶解装置を用いて、0.01N HClを含有する酸性溶解試験媒体を用いて、50rpmで撹拌する)について試験した。
【0047】
さらに、錠剤試料を、またストレス条件下(すなわち、温度40℃および相対湿度75%)で貯蔵し、溶解について試験した。3種類の初期プロトタイプ製剤それぞれの標準試料とストレスをかけた試料の両方の溶解速度の分析の結果を図3に示す。後半の時点に関連する溶解データの一部が、理論表示量の100%より高い値を示すことは注目すべきである。これは、製造方法と溶解試験方法における可変性に起因する。参照として、即放性薬剤品の大部分は、市販のアッセイ規格範囲が、記載された表示量の95〜105%である。
【0048】
溶解データの検査によって、下記の観察が得られる。400mg錠剤(1A)は、加速された温度および湿度条件に曝露された後、すなわち増加した水分量の取り込み時に、溶解の大幅な低下を示した。ストレスをかけた400mg製剤は、他の試料すべてから>95%のAPIが30分以内に溶解していたのに比べて、約68%のAPIが30分以内に溶解していた。ストレスをかけた400mg製剤は、30分75〜80%溶解の規格を満たすことができなかった唯一の製剤である。ストレスをかけた40/400mg試験試料の目視観察によって、錠剤顆粒の主成分のAPIおよび賦形剤粒子への崩壊が不十分であることが明らかになった。さらに、ゲル様層が、錠剤顆粒の表面上に存在することが判明し、吸湿性に関係すると理論付けられた。これらの観察に基づいて、錠剤の崩壊剤とAPIの比および含水率の組合せが、これらの化合物1製剤における溶解速度に影響を及ぼすという仮説は、さらに裏付けられた。
【0049】
この仮説を検証するために、正と負の両方の対照を含む一連の実験を考案した。3種類の追加のプロトタイプ錠剤を以下の通り製剤した。
・崩壊剤を10%レベルで含有し、崩壊剤とAPIの比が1:1である400mg錠剤。このプロトタイプは、正の対照として、すなわち崩壊剤とAPIの比は増大させ、他の要因はすべて等しくすることによって、以前に「不合格の」試料の溶解速度を増大させることができるかどうかを評価するために機能した。
・崩壊剤を公称6%レベルで含有し、崩壊剤とAPIの比が0.75である500mg錠剤。
・崩壊剤を3%レベルで含有して、崩壊剤とAPIの比が0.6とする800mg錠剤。このプロトタイプは、負の対照として、すなわち崩壊剤とAPIの比を低減することによって、以前に「合格」となった試料の溶解速度を低減させることができるかどうかを評価するために役に立った。
【0050】
表3は、これらの3種類の追加のプロトタイプ製剤を3A、3B、および3Cとして示す。
【0051】
【表3A】

【0052】
【表3B】


上記に示すように、これらの追加のプロトタイプを、また標準および加速条件下で貯蔵した。3種類のプロトタイプすべての溶解プロファイルを図4に示す。データから、ストレスをかけた40/400mg錠剤の溶解速度は、崩壊剤とAPIの比を1:1に増大させることによって著しく改善されたことが明らかである(図3および4を比較)。逆に、ストレスをかけた40/800mg錠剤の崩壊剤とAPIの比を低減することによって、溶解速度は著しく遅延した。これらのデータは、錠剤の含水率および製剤内の崩壊剤とAPIの比の操作が錠剤溶解速度に影響を及ぼすことを示唆する。
【0053】
上述する試験の結果に基づいて、結論としては、標準医薬品貯蔵条件下で水分によって媒介される溶解の低下を最小限に抑えるために、用量40mg製剤について崩壊剤とAPIの閾値比が保証された。図4に示されるように、400および500mg製剤(それぞれ、3Aおよび3B)は、30分後にそれぞれ95%および90%を超える溶解を示す十分に確固とした溶解プロファイルを有する。上記および妥当なサイズの錠剤において優れた溶解特性を実現する要望に基づいて、600mg錠剤の重量(表2の製剤2B)が、急性冠動脈症候群の治療および二次予防における化合物1の評価のために計画された第III相臨床試験で投与するための用量40mg製剤として選択された。
【0054】
一連の製剤は、本発明の範囲内である。化合物1の維持用量は、約0.5〜約10mg、好ましくは約1〜約2.5mgの範囲内で変わり得る。化合物1の初期用量は、約10〜約50mg、好ましくは約20〜約40mgの範囲内で変わり得る。このような錠剤の全重量は、約200mg〜約1500mg、好ましくは約200mg〜約800mgである。崩壊剤とAPIの比は、約0.6(製剤番号2A)〜約12(製剤番号1A)である。初期用量製剤のためには、約0.75〜約1.0の一連の崩壊剤とAPIの比が好ましいようである。維持用量製剤のためには、約1〜約3の一連の崩壊剤とAPIの比が好ましいようである。製剤中の個々の賦形剤の量は、当業者によって理解される許容される範囲内で調整することができる。
【0055】
これらの錠剤は、水性ポビドン溶液を用いて高せん断湿式造粒し、流動床処理装置中で造粒物を最終含水率0.5〜2.0%に乾燥し、タンブルブレンダまたは等価物中で記載された滑沢剤とブレンドし、ロータリー式打錠機で所望の重量の錠剤に圧縮することを含む方法により製造される。
【0056】
例として、1mg製剤(1B)の製造方法は以下の通りである。
1.ポビドンを精製水に溶解する。透明溶液が得られるまで混合する。
2.化合物1重硫酸塩、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムを適当なサイズのふるいに通す。
3.ステップ2でふるいにかけた成分を適当なサイズの造粒機に投入し、ブレンドする。
4.このブレンド物にステップ1のポビドン溶液を噴霧する。追加の水を添加して、満足な造粒を実現する。造粒機で湿式造粒物を混合する。
5.造粒物をふるいに通して、適当なサイズの流動床処理機に入れる。
6.適当な乾燥減量に達するまで、造粒物を乾燥する。
7.乾燥した造粒物をふるいに通して、適当なサイズのタンブルブレンダに入れる。
8.ステアリン酸マグネシウムをふるいに通して、適当なサイズのふるいに入れ、ステップ7のブレンダに入れ、ブレンドする。
9.ステップ9の錠剤を適当なサイズのパンコーティング装置に圧縮する。
10.精製水中Opadry II懸濁液を調製する。
11.ステップ11の懸濁液を使用して、錠剤をコーティングする。
【0057】
上記に列挙する特定の希釈剤、崩壊剤、結合剤、および滑沢剤は、化合物1の製剤の許容される薬剤特性を提供するのに排他的に適用されるものとは考えられておらず、それら列挙するものの代わりに他の機能性等価物を使用してもよい。好ましい希釈剤には、ラクトース一水和物(微粉末)を含めて、ラクトース、微結晶セルロース(例えば、Avicel PH 102)、マンニトール、ソルビトール、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、圧縮糖、デンプン、および硫酸カルシウムが含まれる。ラクトース一水和物は供給源であるウシに由来し、Foremost Farmsから入手することができる。好ましい結合剤は、ポビドン(例えば、PVP K−30)、アカシア、トラガカント、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、スクロースやソルビトールなどの糖液、およびエチルセルロースを含む。熟練の製剤者に周知の追加の作用剤、具体的には希釈剤、流動促進剤、着色剤などを、上記に列挙する成分と組み合わせてもよい。シールコート(例えば、Opadry II Blue)を錠剤コアに塗布することができる。
【0058】
本発明の固体経口剤形のために本明細書では、粉末製剤に関連して用語「希釈剤」は、通常、製剤または剤形の大部分を構成する物質を意味する。適当な希釈剤としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールなどの砂糖;小麦、トウモロコシ、米、および馬鈴薯に由来するデンプン;ならびに微結晶セルロースなどのセルロースが挙げられる。製剤1A−3Dで例示するように、1つを超える希釈剤を単一製剤で使用してもよい。製剤中の希釈剤の全量は、全製剤の約60%〜約95重量%、好ましくは約80%〜約90%とすることができる。
【0059】
本発明の固体経口剤形のために本明細書では、用語「崩壊剤」は、剤形の分裂(崩壊)および薬用物質の放出に役立つように、剤形に添加された物質を意味する。適当な崩壊剤としては、微結晶セルロースおよび架橋セルロース、具体的にはクロスカルメロースナトリウム;デンプン;「冷水可溶性」加工デンプン、具体的にはデンプンカルボキシメチルナトリウム;天然および合成のゴム、具体的にはイナゴマメ、カラヤ、グアー、トラガカント、および寒天、セルロース誘導体、具体的にはメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アルギナート、具体的にはアルギン酸およびアルギン酸ナトリウム;粘土、具体的にはベントナイト;および発泡性混合物が挙げられる。好ましい崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、およびクロスカルメロースナトリウム、ならびに微結晶セルロースが含まれる。製剤中の崩壊剤の量は、製剤の約2%〜約12重量%、より好ましくは約3.5%〜約6重量%とすることができる。
【0060】
本発明の固体経口剤形のために本明細書では、用語「滑沢剤」は、摩擦または磨耗を低減することによって、錠剤が圧縮された後に金型またはダイから剥離されるように、剤形に添加された物質を意味する。適当な滑沢剤としては、金属性ステアリン酸塩、具体的にはステアリン酸マグネシウム(植物グレード)、ステアリン酸カルシウム、またはステアリン酸カリウム;ステアリン酸;高融点ワックス;および水溶性滑沢剤、具体的には塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、およびd’l−ロイシンが挙げられる。好ましい滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクが含まれる。製剤中の滑沢剤の量は、製剤の約0.1%〜約2重量%、好ましくは約0.5重量%とすることができる。
【0061】
本発明の固体経口剤形のために本明細書では、用語「流動促進剤」は、流動が滑らかで均一であるように固化を防止し、造粒物の流動性を改善する物質を意味する。適当な流動促進剤としては、二酸化ケイ素およびタルクが挙げられる。製剤中の流動促進剤の量は、全製剤の約0.1%〜約5重量%、好ましくは約0.5%〜約2重量%とすることができる。
【0062】
本発明の固体経口剤形のために本明細書では、句「着色剤」は、製剤または剤形に着色する物質を意味する。このような物質としては、食品用染料、および粘土や酸化アルミニウムなど適当な吸着剤に吸着させた食品用染料が挙げられる。着色剤の量は、製剤の約0.1%〜約5重量%、好ましくは約0.1%〜約1%で変わり得る。
【0063】
本発明は、任意のトロンビン受容体拮抗薬の即放性錠剤を包含する。種々の化合物は、トロンビン受容体拮抗薬として活性を示すと実証されており、多くはヒンバシン類似体である。米国特許出願公開第04/0152736号明細書に開示されるように、式Iの特に好ましい化合物のサブセットは、以下の通りである。
【0064】
【化3】

【0065】
【化4】


ならびにそれらの薬剤として許容される異性体、塩、溶媒和物、および多形体。米国特許出願公開第03/0216437号明細書は、特に活性でかつ選択的でもある式IIのトロンビン受容体拮抗薬のサブセットを開示する。これらの化合物は、以下の通りである。
【0066】
【化5】


ならびにそれらの薬剤として許容される異性体、塩、溶媒和物、および多形体。
【0067】
下記の化合物は、それらの薬物動態学および薬力学的特性に基づいて特に好ましい。
【0068】
【化6】


ならびにそれらの薬剤として許容される異性体、塩、溶媒和物、および多形体。化合物1の重硫酸塩は、現在Schering Corp.によってトロンビン受容体拮抗薬として開発中である。その合成は、2003年11月20日公開の米国特許出願公開第03/0216437号明細書に開示され、この公報は化合物3も開示する。化合物2は、米国特許第6,645,987号明細書に開示される。
【0069】
本発明の組合せで使用するための他の化合物は、米国特許第6,063,847号明細書および同第6,326,380号明細書、米国特許出願公開第03/0203927号明細書、同第03/0216437号明細書、同第04/0192753号明細書、および同第04/0176418号明細書のいずれかに開示され、これらはすべて、参照によりその全体が組み込まれる。現在Eisaiによって開発中のE5555を含めて、トロンビン受容体拮抗薬として活性を示す1つまたは複数の他の作用剤を含む組合せも、本発明の範囲内である。
【0070】
【化7】


別段の指定のない限り、用語「トロンビン受容体拮抗薬」、および化合物1を含めて、そのように同定された任意の化合物は、その化学的に安定で薬剤として許容される遊離塩基、塩、異性体、または溶媒和物の形をいずれも包含することが理解されよう。本明細書では、用語「塩」は、無機酸および/または有機酸で形成された酸性の塩を意味する。他の塩も有用であるが、薬剤として許容される(すなわち、無毒性で生理的に許容される)塩が好ましい。上記活性剤の化合物の塩は、例えば上記活性剤を等量の酸または塩基と、媒体、具体的には塩が沈殿する媒体中または水性媒体中で反応させ、続いて凍結乾燥することによって生成することができる。
【0071】
酸付加塩としては、例えば酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩とも呼ばれる)などが挙げられる。さらに、一般に薬剤として有用な塩を塩基性薬剤化合物から形成するのに適しているとみなされる酸は、例えばS. Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977年)66巻(1号)1〜19頁;P. Gould、International J. of Pharmaceutics(1986年)33巻 201〜217頁;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996年)、Academic Press, New York;およびThe Orange Book(Food & Drug Administration, Washington, D.C.、ウェブサイト上)に記載されている。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
このような酸の塩はすべて、本発明の範囲内の薬剤として許容される塩であるよう意図され、酸および塩基の塩はすべて、本発明において対応する化合物の遊離の形と等価であるとみなされる。
【0073】
ジアステレオマーおよび回転異性体を含めて、異性体はすべて、本発明の一部であると考えられる。本発明には、(+)−および(−)−異性体が純粋な形でも、ラセミ混合物を含めて混合物でも含まれる。本化合物のすべての立体異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(本化合物の塩および溶媒和物の立体異性体を含む)、具体的には鏡像異性体(不斉炭素がない場合でさえ、存在する可能性がある)、回転異性体、アトロプ異性体、およびジアステレオマーの形を含めて様々な置換基上の不斉炭素のため存在する可能性がある立体異性体が、本発明の範囲内であると考えられる。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば他の異性体を実質的に含むことがなく、あるいは例えばラセミ化合物として、またはすべての他の立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合されている可能性がある。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって定められるSまたはR立体配置を有することができる。用語「塩」、「溶媒和物」、「プロドラッグ」などの使用は、本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ラセミ化合物、またはプロドラッグの塩、溶媒和物、およびプロドラッグに等しく適用されるよう意図されている。
【0074】
用語「溶媒和物」は、水和物を包含するものと理解される。
【0075】
操作例に記載される以外または別段の記載のない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表す数はすべて、すべての場合に用語「約」で修飾されていると理解される。上記の説明は、本発明のすべての修正形態および変形形態を詳述するものではない。本発明の概念から逸脱することなく、上述する実施形態に変更を行うことができることは、当業者によって理解されよう。したがって、本発明は、上述する特定の実施形態に限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲の言語によって定められる本発明の趣旨および範囲内である修正形態を包含するよう意図されていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−126752(P2012−126752A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−82021(P2012−82021)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2009−518301(P2009−518301)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】