説明

トンネル掘削機のローラカッター固定装置

【課題】 ローラカッターの交換作業を簡単化し、交換作業の時間を短縮することができる、トンネル掘削機のローラカッター固定装置を提供する
【解決手段】 第1固定部材20が固定部材収容凹部13の軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着され、1対の第2固定部材25が固定部材収容凹部13に後側から着脱可能に且つ相離隔状に装着され、それらの係合部25aが1対の係合凹部14に後方移動不能に夫々係合され、第3固定部材30が固定部材収容凹部13のうちの1対の第2固定部材25の間に後側から着脱可能に装着されて締結部材45により第1固定部材20に締結され、1対の第2固定部材25に後方広がりの1対のテーパ面25bが形成され、第3固定部材30に1対のテーパ面25bに係合する1対のテーパ部30aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削機においては、胴体の前側にカッターヘッドが装備され、胴体と共にカッターヘッドが前進駆動され、カッターヘッドが回動されて、前方の地山を掘削してトンネルを掘削していく。固い地盤を掘削するトンネル掘削機では、複数のローラカッターを前面部に装備したカッターヘッドが適用され、トンネルの掘削途中に、ローラカッターが摩耗して掘削能力が低下した場合、その摩耗したローラカッターを新しいローラカッターに交換する必要が生じ、特に、長距離のトンネルを連続的に掘削するトンネル掘削機では、ローラカッターを交換する頻度が多くなる。
【0003】
ここで、カッターヘッドの前側からローラカッターを着脱可能に固定したものでは、ローラカッターを交換する場合に、カッターヘッドとその前方の地山(切羽)との間にカッター交換間隙を形成し、そのカッター交換間隙に作業者が入って交換作業を行う必要がある。しかし、こうしたローラカッターの交換作業の負荷は非常に大きく時間も長くなり、また、カッター交換間隙に作業者が入ることになるため危険を伴う虞がある。そこで、カッターヘッドの後側からローラカッターを交換する技術が実用に供されている。
【0004】
例えば、特許文献1の技術では、カッターヘッドに各ローラカッターに対応する1対の取付座が対向状に固定され、各取付座に前側から形成された半円弧部にロータディスクが係合されている。取付座の前端部に半円弧状の押え部材の両端部がボルトで固定され、この押え部材にロータディスクが係合されて、ロータディスクが回動可能に支持されている。ロータディスクには中心部から外周端まで延びる切欠部が形成され、この切欠部にローラカッターの支軸端部が係脱可能に係合される。
【0005】
トンネルを掘削可能な状態では、切欠部の内端部にローラカッターの支軸端部が係合され、切欠部の内端部以外の部分にスペーサが挿入され、切欠部の開放端をカッターヘッドの前側に向けて、前記ボルトを締めることで、ロータディスクが押え部材により押えられてローラカッターの支軸端部が固定される。ローラカッターの掘削反力はロータディスクを介して取付座の半円弧部で受け止められる。ローラカッターを交換する場合には、前記ボルトを弛めてロータディスクを180度回動させ、切欠部の開放端をカッターヘッドの後側に向け、切欠部を取付座に形成された挿入溝と連通させ、ローラカッターを後方へ移動させて取り外す。ローラカッターを取り付ける場合は、前記と逆の手順で作業を行う。
【0006】
一方、特許文献2のカッターヘッドでは、カッタースポークに各ローラカッターに対応する1対のサドルが対向状に固定され、各サドルには、略中心部に半円弧部が形成され、この半円弧部に連通する矩形切欠部が形成され、この矩形切欠部に連通し且つ後方へ開放されたテーパ切欠部が形成されている。トンネルを掘削可能な状態では、矩形切欠部に軸受金具が係合され、この軸受金具に形成された半円弧部とサドルの半円弧部からなる穴にローラカッターの支軸端部が内嵌される。
【0007】
また、テーパ切欠部に1対の軸受固定金具が挿入され、これら軸受固定金具のテーパ部がテーパ切欠部の1対のテーパ部に夫々係合され、1対の軸受固定金具の対向する内端部の間に凸形の押えフランジの凸部が挿入され、この押えフランジの両端部がサドルの後端部にボルトで締結されて、ローラカッターの支軸端部が固定される。ローラカッターの掘削反力は軸受金具と軸受固定金具を介してサドルのテーパ部と押えフランジの凸部で受け止められる。ローラカッターを交換する場合には、前記ボルトを弛めて、押えフランジ、1対の軸受固定金具、軸受金具を取り外してから、ローラカッターを後側へ取り外し、ローラカッターを取り付ける場合は、前記と逆の手順で作業を行う。
【0008】
【特許文献1】特開昭58−189497号公報
【特許文献2】特許第3649536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術では、ローラカッターを交換するために、作業者が工具等を使用して、ローラカッターと共に1対のロータディスクを180度回動させ、また、ローラカッターの交換後も、ローラカッターと共に1対のロータディスクを180度回動させなければならい。ローラカッターは非常に重く(例えば、約200kg)、また、ローラカッターを支持するロータディスクも重い(例えば、1個あたり約20kg)ため、ローラカッターと1対のロータディスクの回動作業が非常に時間のかかる大変な作業となり、その際、ローラカッターとロータディスクの軸心がずれると、この問題はより顕著になる。また、ロータディスクを回動させる機構や回り止めする機構が必要となり構造も複雑化する。
【0010】
一方、特許文献2の技術では、ローラカッターを交換するために、ローラカッターと共にロータディスクを回動させるという作業は不要である。しかし、サドルに装着された1対の軸受固定金具の対向する内端部は平行となり、それらの間に押えフランジの凸部が挿入され、この凸部に掘削反力を受けた1対の軸受固定金具が強力に係合して食い込み、ローラカッターを交換する場合、この押えフランジの凸部を1対の軸受固定金具の間から引き抜くことが困難になるという虞がある。
【0011】
また、ローラカッターを交換した後も、対向する内端部が平行となる1対の軸受固定金具の間に押えフランジの凸部を挿入しなければならないし、そのために、1対の軸受固定金具を相離隔状態で保持する構造となっていないため、1対の軸受固定金具の間に押えフランジの凸部を挿入することが困難になるという虞があり、結局、ローラカッターの交換作業が時間のかかる大変な作業になる。
【0012】
つまり、複数のローラカッターを交換するために長時間要するため、トンネル掘削工期が長くなり、特に、非常に固い地盤(硬岩部)掘削する場合、また、長距離のトンネルを連続的に掘削する場合には、ローラカッターを交換する頻度が高くなるため、こうした問題はより顕著になる。
本発明の目的は、ローラカッターの交換作業を簡単化し、交換作業の時間を短縮することができる、トンネル掘削機のローラカッター固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のトンネル掘削機のローラカッター固定装置は、トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定するローラカッター固定装置において、前記カッターヘッドに固定され、且つローラカッターの支軸端部が後側から係脱可能な軸受凹部が形成されたカッター取付部材と、前記カッター取付部材に形成された、前記軸受凹部の後端に連なり後方開放状の固定部材収容凹部および固定部材収容凹部の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部と、前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて前記軸受凹部にローラカッターの支軸端部を保持する第1固定部材と、前記第1固定部材が装着された固定部材収容凹部に後側から着脱可能に且つ相離隔状に装着されて第1固定部材を後側から支持する1対の第2固定部材であって、1対の係合凹部に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部を備えた1対の第2固定部材と、前記固定部材収容凹部のうちの1対の第2固定部材の間に後側から着脱可能に装着されて、締結部材により第1固定部材に締結される第3固定部材とを備え、前記1対の第2固定部材の相対向する面に後方広がりの1対のテーパ面を形成すると共に、前記第3固定部材に前記1対のテーパ面に係合する1対のテーパ部を形成したことを特徴とする。
【0014】
トンネルを掘削可能な状態では、ローラカッターの支軸端部がカッター取付部材の軸受凹部に係合され、第1固定部材がカッター取付部材の固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に装着され、1対の第2固定部材が固定部材収容凹部に相離隔状に装着され、1対の第2固定部材の係合部が固定部材収容凹部の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部に夫々係合される。また、第3固定部材が固定部材収容凹部のうちの1対の第2固定部材の間に装着されて、1対の第2固定部材の相対向する面に形成された後方広がりの1対のテーパ面に、第3固定部材に形成された1対のテーパ部が係合され、第3固定部材が締結部材により第1固定部材に締結される。
【0015】
1対の第2固定部材の係合部が固定部材収容凹部の1対の係合凹部に夫々係合されるので、1対の第2固定部材の前後方向の移動が規制され、第3固定部材が締結部材により第1固定部材に前後方向に締結されることで、1対の第2固定部材のテーパ面と第3固定部材の1対のテーパ部との楔作用により、1対の第2固定部材が固定部材収容凹部の側部に押圧されて一体化し、これら第2固定部材により第1固定部材が後側から支持され、この第1固定部材によりローラカッターの支軸端部が軸受凹部に保持される。ローラカッターの掘削反力は、第1固定部材と1対の第2固定部材を介してカッター取付部材で受け止められる。第1,第2固定部材を弛み防止のためにボルト部材で締結することが好ましい。
【0016】
ローラカッターを交換する場合には、先ず、(ボルト部材、)締結部材を弛めて、第3固定部材、1対の第2固定部材、第1固定部材を固定部材収容凹部から後側へ順次取り外す。この場合、固定部材収容凹部は後方開放状に形成されているため、第1〜第3固定部材を、ローラカッターと干渉することなく後側へ取り外しでき、また、1対の第2固定部材の後方広がりのテーパ面に第3固定部材の1対のテーパ部を係合させてあるため、1対の第2固定部材の間から第3固定部材を後側へ容易に取り外しできる。ここで、前記楔作用により第3固定部材の取り外しが容易でない場合には、第3固定部材にネジ穴を形成しておくことで、そのネジ穴に引抜部材を螺合させ第3固定部材を引抜部材を用いて引き抜くことが可能である。第1〜第3固定部材を取り外すと、ローラカッターの支軸端部を固定部材収容凹部を通過させて、ローラカッターを後側へ移動させ取り外しできる。
【0017】
次に、新たなローラカッターの支軸端部を固定部材収容凹部を通過させて、ローラカッターを前側へ移動させ、ローラカッターの支軸端部を軸受凹部に係合させる。その後、前記と逆の手順で、第1固定部材を固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に後側から装着し、1対の第2固定部材を第1固定部材が装着された固定部材収容凹部に後側から相離隔状に装着して、1対の第2固定部材の係合部を1対の係合凹部に夫々係合させ、第3固定部材を固定部材収容凹部のうちの1対の第2固定部材の間に後側から装着する。この場合、前記テーパ面とテーパ部により第3固定部材を1対の第2固定部材の間に簡単に挿入することができる。そして、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結し、その後、好ましくは、ボルト部材により第1,第2固定部材を弛み防止のために締結して、ローラカッターの交換作業が完了する。
【0018】
請求項1の発明においては、前記ローラカッターの支軸端部が前記軸受凹部に係合されて前後方向におけるローラカッターのハブの位置と前記係合凹部の位置とがラップした状態で、前記固定部材の固定部材収容凹部への着脱を可能に構成する(請求項2)、前記1対の第2固定部材のボルト挿通穴に後側から挿通され第1固定部材に螺合されて1対の第2固定部材を第1固定部材に固定する1対のボルト部材を設け、前記ボルト挿通穴をボルト部材よりも大径に形成し、第1,第2固定部材を固定部材収容凹部に装着した状態で、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結すると共にボルト部材により第1,第2固定部材を締結することで弛み防止を可能に構成する(請求項3)、前記第3固定部材に、第3固定部材を引っ張って1対の第2固定部材の間から引き抜く為の引抜部材が螺合し且つ前記締結部材が挿通可能に締結部材よりも大径のネジ穴を形成する(請求項4)等の構成を採用してもよい。
【0019】
請求項5のトンネル掘削機のローラカッター固定装置は、トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定するローラカッター固定装置において、前記カッターヘッドに固定され、且つローラカッターの支軸端部が後側から係脱可能な軸受凹部が形成されたカッター取付部材と、前記カッター取付部材に形成された、前記軸受凹部の後端に連なる固定部材収容凹部および固定部材収容凹部の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部と、前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて前記軸受凹部にローラカッターの支軸端部を保持する第1固定部材と、前記第1固定部材が装着された固定部材収容凹部にローラカッター側から着脱可能に装着されて締結部材により第1固定部材に締結され第1固定部材を後側から支持する第2固定部材であって、1対の係合凹部に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部を備えた第2固定部材とを備え、前記ローラカッターの支軸端部が前記軸受凹部に係合された状態で、前後方向におけるローラカッターのハブの位置が前記係合凹部の位置よりも前側に位置することを特徴とする。
【0020】
請求項1,5の発明においては、前記ローラカッターの1対の支軸端部に対応させて前記カッター取付部材と前記固定部材を夫々2組設ける(請求項6)、前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面を後方広がりのテーパ面に形成し、前記第1固定部材に前記1対のテーパ面に係合する1対のテーパ部を形成する(請求項7)、前記カッター取付部材の前部に着脱可能なサドルを設け、このサドルに前記軸受凹部を形成する(請求項8)、前記サドルの前面部分に複数の超硬チップを取付ける(請求項9)、等の構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、トンネルを掘削可能な状態では、1対の第2固定部材の係合部が固定部材収容凹部の1対の係合凹部に夫々係合されるので、1対の第2固定部材の前後方向の移動が規制され、第3固定部材が締結部材により第1固定部材に前後方向に締結されることで、1対の第2固定部材のテーパ面と第3固定部材の1対のテーパ部との楔作用により、1対の第2固定部材を固定部材収容凹部の側部に押圧して確実に一体化し、これら第2固定部材により第1固定部材を後側から確実に支持し、この第1固定部材によりローラカッターの支軸端部を軸受凹部に確実に保持して、ローラカッターを固定することができ、ローラカッターの掘削反力を、第1固定部材と1対の第2固定部材を介してカッター取付部材で受け止めることができる。
【0022】
ローラカッターを交換する場合には、締結部材を弛めて、第3固定部材、1対の第2固定部材、第1固定部材を、固定部材収容凹部からローラカッターと干渉することなく後側へ順次取り外しでき、この場合、1対の第2固定部材の後方広がりのテーパ面に第3固定部材の1対のテーパ部を係合させてあるため、1対の第2固定部材の間から第3固定部材を後側へ容易に取り外しでき、その後、ローラカッターの支軸端部を固定部材収容凹部を通過させて、ローラカッターを後側へ移動させて取り外しできる。その後、新たなローラカッターの支軸端部を固定部材収容凹部を通過させて、ローラカッターを前側へ移動させ、ローラカッターの支軸端部を軸受凹部に係合させてから、第1固定部材、1対の第2固定部材、第3固定部材を、固定部材収容凹部にローラカッターと干渉することなく後側から順次装着でき、この場合、前記テーパ面とテーパ部により第3固定部材を1対の第2固定部材の間に簡単に挿入することができる。そして、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結して、ローラカッターの交換作業が完了し、その結果、ローラカッターの交換作業を簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。また、従来のようにロータディスクを回動させる機構等や回り止めする機構が不要になるため、構造を簡単化することもできる。
【0023】
請求項2の発明によれば、ローラカッターの支軸端部が軸受凹部に係合されて前後方向におけるローラカッターのハブの位置と係合凹部の位置とがラップした状態で、固定部材の固定部材収容凹部への着脱を可能に構成したので、ローラカッターを交換する際、第1〜第3固定部材を固定部材収容凹部にローラカッター側から着脱すると、ローラカッターのハブと干渉するが、本案では、ローラカッターのハブと干渉させずに、第1〜第3固定部材を固定部材収容凹部に後側から着脱できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、1対の第2固定部材のボルト挿通穴に後側から挿通され第1固定部材に螺合されて1対の第2固定部材を第1固定部材に固定する1対のボルト部材を設け、ボルト挿通穴をボルト部材よりも大径に形成し、第1,第2固定部材を固定部材収容凹部に装着した状態で、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結すると共にボルト部材により第1,第2固定部材を締結することで弛み防止を可能に構成した。つまり、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結し、ボルト部材により第1,第2固定部材を締結することで確実に保持して弛み防止ができる。また、締結部材による第3固定部材の第1固定部材への締結・締結解除により、1対の第2固定部材は相接近・離隔する方向へ多少移動するが、その際、ボルト部材よりも大径に形成されたボルト挿通穴により、前記移動を許容して第2固定部材を第1固定部材に固定した状態を維持できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、第3固定部材に、第3固定部材を引っ張って1対の第2固定部材の間から引き抜く為の引抜部材が螺合し且つ締結部材が挿通可能に締結部材よりも大径のネジ穴を形成したので、ローラカッターを交換する場合に、引抜部材を第3固定部材のネジ穴に螺合させて引っ張ることで、第3固定部材を1対の第2固定部材の間から後側へ容易に取り外しでき、それ故、ローラカッターの交換作業の時間をより短縮することが可能になる。
【0026】
請求項5の発明によれば、トンネルを掘削可能な状態では、第2固定部材の1対の係合部が固定部材収容凹部の1対の係合凹部に夫々係合されるので、第2固定部材の前後方向の移動が規制され、この第2固定部材により第1固定部材を後側から確実に支持し、この第1固定部材によりローラカッターの支軸端部を軸受凹部に確実に保持して、ローラカッターを固定することができ、ローラカッターの掘削反力を、締結部材に作用させずに、第1固定部材と第2固定部材を介してカッター取付部材で受け止めることができる。
【0027】
ローラカッターを交換する場合には、締結部材を弛めて、第2固定部材、第1固定部材を、固定部材収容凹部から順次取り外し、この場合、ローラカッターの支軸端部が軸受凹部に係合された状態で、前後方向におけるローラカッターのハブの位置が係合凹部の位置よりも前側に位置するので、固定部材収容凹部に第2固定部材をローラカッター側から着脱できる。第1,第2固定部材を取り外した後、ローラカッターの支軸端部を固定部材収容凹部を通過させて、ローラカッターを交換することができる。その結果、ローラカッターの交換作業を簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。また、部材数を低減でき、従来のようにロータディスクを回動させる機構等や回り止めする機構が不要になるため、構造を簡単化できる。
【0028】
請求項6の発明によれば、ローラカッターの1対の支軸端部に対応させてカッター取付部材と固定部材を夫々2組設けたので、ローラカッターを確実に着脱可能に固定できる。
【0029】
請求項7の発明によれば、固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面を後方広がりのテーパ面に形成し、第1固定部材に1対のテーパ面に係合する1対のテーパ部を形成したので、第1固定部材を固定部材収容凹部から容易に後側へ取り外すことができ、第1固定部材を固定部材収容凹部に装着した状態で確実に一体化させることが期待できる。
【0030】
請求項8の発明によれば、カッター取付部材の前部に着脱可能なサドルを設け、このサドルに軸受凹部を形成したので、このサドルについても摩耗等で損傷した場合に交換することができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、サドルの前面部分に複数の超硬チップを取付けたので、サドルの掘削土等による損傷を極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明のトンネル掘削機のローラカッター固定装置は、トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定するものであり、カッター取付部材の軸受凹部にローラカッターの支軸端部を後側から係脱可能に構成し、カッター取付部材の軸受凹部の後端に連なる固定部材収容凹部に複数の固定部材を着脱可能に装着して、ローラカッターの支軸端部を収容凹部に保持するように構成したものである。
【実施例1】
【0033】
図1に示すように、トンネル掘削機1には、胴体(図示略)の前側に、胴体に回動可能に支持されたカッターヘッド2が装備され、そのカッターヘッド2の前面部に複数のローラカッター3が装備されている。このトンネル掘削機1では、胴体と共にカッターヘッド2が複数の推進ジャッキ(図示略)により前進駆動され、カッターヘッド2が複数のモータ(図示略)により回動されて、前方の地山を掘削してトンネルを掘削していく。そして、このカッターヘッド2には、複数のローラカッター3を夫々カッターヘッド2の後側から着脱可能に固定する複数のローラカッター固定装置4が設けられている。
【0034】
ローラカッター固定装置4について説明する。
図2〜図7に示すように、各ローラカッター固定装置4は、ローラカッター3の角形の支軸の両端部(1対の支軸端部3a)を着脱可能に固定するものであり、1対の支軸端部3aに対応させて、カッター取付部材10と、第1固定部材20と、1対の第2固定部材25と、第3固定部材30と、固定プレート35と、1対のボルト部材40と、締結部材45とを夫々2組備えている。
【0035】
ここで、カッターヘッド2は、例えば、ヘッド中央部2aと、ヘッド中央部2aから放射状に延びる4本のスポーク部2bと、4本のスポーク部2bの外側端部に繋がる外周環状部2cとを有し、これら2a,2b,2cに、複数のローラカッター3が略一様に、且つ支軸を径方向に向けて取り付けられている(図1参照)。カッターヘッド2のうち各ローラカッター3を取り付ける部分には、ローラカッター3のカッターリング3bの直径よりも少し大きな間隔を隔てて対面状に1対の取付板部5が配設され、これら取付板部5の間にローラカッター固定装置4が設けられている。
【0036】
各ローラカッター固定装置4において、1対のカッター取付部材10は、1対の取付板部5の間において取付板部5と直交するように且つローラカッター3のハブ3cよりも少し大きな間隔を隔てて対面状に対称に配設され、これらカッター取付部材10にローラカッター3の1対の支軸端部3aが夫々着脱可能に固定されている。ここで、以下適宜、1対の取付板部5が対面する方向をローラ軸方向とし、1対の取付板部5が対面する方向をローラ軸直交方向(側方)として説明する。
【0037】
各カッター取付部材10は、ローラカッター3の支軸端部3aの長さの約2倍のローラ軸方向の厚さを有すると共に、ローラ軸方向から視て略矩形形状に形成され、側方両端部が1対の取付板部5の内側面に溶接等で固定され、前端部が取付板部5よりも少し前方へ膨出し、ローラカッター固定装置4で固定されたローラカッター3はカッター取付部材10よりも前方へ突出した状態になる。
【0038】
各カッター取付部材10は、その大部分を占める取付部材本体11と、取付部材本体11(カッター取付部材10)の前部に着脱可能に設けられたサドル15を有する。サドル15の前面部分には、複数の超硬チップ16が一様に取り付けられ、また、サドル15の後端部には、ローラカッター3の支軸端部3bが後側から係脱可能な軸受凹部17が形成されている。
【0039】
各取付部材本体11のうち内面側からローラカッター3の支軸端部3aの長さと略同じローラ軸方向の厚さ部分に、前部にサドル収容凹部12が形成され、このサドル収容凹部12の後端に連なり後方開放状の固定部材収容凹部13が形成され、この固定部材収容凹部13の側部に相対向状に相離隔状に1対の角溝状の係合凹部14が形成されている。サドル収容凹部12にサドル15が着脱可能に装着され、1対のボルト18が取付部材本体11に後側から挿通されてサドル15に螺合され、これらボルト18により取付部材本体11にサドル15が固定されている。サドル収容凹部12にサドル15が装着された状態で、サドル15の軸受凹部17の後端に固定部材収容凹部13が連なった状態になる。
【0040】
ローラ軸直交方向において、固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部(前端部)の長さは、サドル収容凹部12の長さの約半分弱であり、固定部材収容凹部13のうちの1対の係合凹部14の後側部分は、サドル収容凹部12の長さと略同じ長さを有する開口部13aとなっている。ここで、ローラカッター3の支軸端部3aが軸受凹部17に係合された状態で、前後方向におけるローラカッター3のハブ3cの位置は、固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部の位置、更には係合凹部14の位置とラップしている。
【0041】
第1固定部材20は、固定部材収容凹部13と略同じローラ軸方向の厚さを有し、固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて、ローラカッター3の支軸端部3aに後側から当接して、軸受凹部17にローラカッター3の支軸端部3aを保持する。第1固定部材20のローラ軸直交方向における長さは開口部13aよりも少し小さく形成され、それ故、第1固定部材20を固定部材収容凹部13の軸受凹部側端部に開口部13aを通過させて後側から着脱することができる。
【0042】
固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面は後方広がりのテーパ面13bに形成され、第1固定部材20には1対のテーパ面13bに係合する1対のテーパ部20aが形成されている。第1固定部材20には、ローラ軸直交方向における両端部に1対のボルト部材40が螺合する1対のネジ穴20bが形成され、中央部分に締結部材45が螺合するネジ穴20cが形成されている。
【0043】
1対の第2固定部材25は、固定部材収容凹部13と略同じローラ軸方向の厚さを有し、1対の係合凹部14に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部25aを備え、第1固定部材20が装着された固定部材収容凹部13に後側から着脱可能に且つ相離隔状に装着されて、1対の係合部25aが1対の係合凹部14に係合すると共に、第1固定部材20に後側から当接して、第1固定部材20を後側から支持する。各第2固定部材25のローラ軸直交方向における長さは開口部13aよりも小さく形成され、固定部材収容凹部13に一方の第2固定部材25を装着した状態で、他方の第2固定部材25を開口部13aを通過させて後側から着脱することができる。
【0044】
第3固定部材30は、固定部材収容凹部13と略同じローラ軸方向の厚さを有し、固定部材収容凹部13のうちの1対の第2固定部材25の間に後側から着脱可能に装着される。1対の第2固定部材25の相対向する面に後方広がりの1対のテーパ面25bが形成され、第3固定部材30に1対のテーパ面25aに係合する1対のテーパ部30aが形成されている。1対の第2固定部材25には1対のボルト挿通穴25cが形成され、このボルト挿通穴25cはボルト部材40よりも大径に形成され、第3固定部材30には挿通穴30bが形成され、この挿通穴30bは締結部材45よりも大径に形成されている。
【0045】
第1,第2固定部材20,25が固定部材収容凹部13に装着された状態で、締結部材45が第3固定部材30の挿通穴30bに後側から挿通され、第1固定部材20のネジ穴20cに螺合されて、この締結部材45により第3固定部材30が第1固定部材20に締結され、このとき、第1固定部材20と1対の第2固定部材25がテーパ面25aとテーパ部30aの楔作用により固定部材収容凹部13に押圧され一体化して固定される。第1,第2固定部材20,25が固定部材収容凹部13に固定された状態で、1対のボルト部材40が1対の第2固定部材25のボルト挿通穴25cに後側から挿通され、第1固定部材20の1対のネジ穴20bに螺合されて、これらボルト部材40により1対の第2固定部材25が第1固定部材20に固定され弛み防止がなされる。その後、ボルト18を締めてサドル15を後側に引き寄せてローラカッター3の支軸端部3aを最終的に固定する。
【0046】
固定プレート35には1対のボルト穴35aが形成され、これらボルト穴35aに1対のボルト部材40が挿通され、固定プレート35は1対のボルト部材40の鍔部と1対の第2固定部材25との間に挟まれる形で固定され、この固定プレート35により1対の第2固定部材25の後端部同士が連結された状態となる。尚、この固定プレート35については省略してもよい。
【0047】
次に、ローラカッター固定装置4によるローラカッター交換方法を含む作用・効果について説明する。
トンネルを掘削可能な状態では、ローラカッター3の支軸端部3aがカッター取付部材10の軸受凹部17に係合され、第1固定部材20がカッター取付部材10の固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部に装着され、1対の第2固定部材25が固定部材収容凹部13に相離隔状に装着され、1対の第2固定部材25の係合部25aが固定部材収容凹部13の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部14に夫々係合されている。
【0048】
そして、第3固定部材30が固定部材収容凹部13のうちの1対の第2固定部材25の間に装着されて、1対の第2固定部材25の相対向する面に形成された後方広がりの1対のテーパ面25bに、第3固定部材30に形成された1対のテーパ部30aが係合され、第3固定部材30が締結部材45で第1固定部材20に締結され、弛み防止のために1対のボルト部材40で1対の第2固定部材25が第1固定部材20に固定されている。
【0049】
1対の第2固定部材25の係合部25aが固定部材収容凹部13の1対の係合凹部14に夫々係合されるので、1対の第2固定部材25の前後方向の移動が規制され、第3固定部材30が締結部材45により第1固定部材20に前後方向に締結されることで、1対の第2固定部材25のテーパ面25bと第3固定部材30の1対のテーパ部30aとの楔作用により、1対の第2固定部材25が固定部材収容凹部13の側部に押圧されて一体化し、これら第2固定部材25により第1固定部材20が後側から支持され、この第1固定部材20によりローラカッター3の支軸端部3aが軸受凹部17に保持される。ローラカッター3の掘削反力は、第1固定部材20と1対の第2固定部材25を介してカッター取付部材10で受け止められ、ボルト部材40と締結部材45には作用しない。
【0050】
ローラカッター3を交換する場合には、1対のボルト部材40を弛め、締結部材45を弛めて、第3固定部材30を固定部材収容凹部13から後側へ取り外し、1対の第2固定部材25、第1固定部材20を固定部材収容凹部13から後側へ順次取り外す。この場合、固定部材収容凹部13は後方開放状に形成されているため、第1〜第3固定部材20,25,30を、ローラカッター3と干渉することなく後側へ取り外しでき、また、1対の第2固定部材25の後方広がりのテーパ面25bに第3固定部材30の1対のテーパ部30aを係合させてあるため、1対の第2固定部材25の間から第3固定部材30を後側へ容易に取り外しできる。
【0051】
第1〜第3固定部材20,25,30を後側へ取り外す場合、第1〜第3固定部材20,25,30に、引抜部材(図示略)を連結し、その引抜部材を引っ張ることができる。この場合、引抜部材の先端部分が螺合するネジ穴として、第1固定部材20に形成されたネジ穴20b又は20c、第3固定部材30の挿通穴30bに形成した大径のネジ穴を利用できる。
【0052】
図7に示すように、第1〜第3固定部材20,25,30を取り外した後、レール48の前端部をカッター取付部材10のサドルの後端部にボルト49で連結し、このレール48の上面と軸受凹部17の底部の高さ位置を一致させ、ローラカッター3の支軸端部3aをレール48で支持してスライドさせ、固定部材収容凹部13を通過させて、ローラカッター3を後側へ移動させ取り外しできる。
【0053】
次に、新たなローラカッター3の支軸端部3aをレール48で支持してスライドさせ、固定部材収容凹部13を通過させて、ローラカッター3を前側へ移動させ、ローラカッター3の支軸端部3aを軸受凹部17に係合させる。その後、前記と逆の手順で、第1固定部材20を固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部に後側から装着し、1対の第2固定部材25を第1固定部材20が装着された固定部材収容凹部13に後側から相離隔状に装着し、1対の第2固定部材25の係合部25aを1対の係合凹部に夫々係合させる。
【0054】
次に、第3固定部材30を固定部材収容凹部13のうちの1対の第2固定部材25の間に後側から装着する。この場合、前記テーパ面25bとテーパ部30aにより第3固定部材30を1対の第2固定部材25の間に簡単に挿入することができる。そして、締結部材45により第3固定部材30を第1固定部材20に締結し、1対のボルト部材40で1対の第2固定部材25を第1固定部材20に固定し、その後、ボルト18を締めてサドル15を後側に引き寄せてローラカッター3の支軸端部3aを最終的に固定して、ローラカッター3の交換作業が完了する。
【0055】
このように、ローラカッター3の交換作業を簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、特に、非常に固い地盤(硬岩部)掘削する場合、また、長距離のトンネルを連続的に掘削する場合でも、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。また、従来のようにロータディスクを回動させる機構等や回り止めする機構が不要になるため、構造を簡単化することもできる。
【0056】
しかも、ローラカッター3の支軸端部3aが軸受凹部17に係合された状態で、前後方向におけるローラカッター3のハブ3cの位置と係合凹部14の位置とがラップした状態でも、ローラカッター3を交換する際、第1〜第3固定部材20,25,30を固定部材収容凹部13にローラカッター側から着脱すると、ローラカッター3のハブ3cと干渉するが、本案では、ローラカッター3のハブ3cと干渉させずに、第1〜第3固定部材20,25,30を固定部材収容凹部13に後側から着脱できる。
【0057】
1対の第2固定部材25のボルト挿通穴25cに後側から挿通され第1固定部材20に螺合されて1対の第2固定部材25を第1固定部材30に固定する1対のボルト部材40を設け、ボルト挿通穴25cをボルト部材40よりも大径に形成したので、1対の第2固定部材25を固定部材収容凹部13に相離隔状態に確実に保持して装着することができ、それ故、これら第2固定部材25の間に第3固定部材30を簡単に挿入して装着することができる。また、締結部材45による第3固定部材30の第1固定部材20への締結・締結解除により、1対の第2固定部材25は相接近・離隔する方向へ多少移動するが、その際、ボルト部材40よりも大径に形成されたボルト挿通穴25cにより、前記移動を許容して第2固定部材25を第1固定部材20に固定した状態を維持できる。
【0058】
固定部材収容凹部13のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面を後方広がりのテーパ面13bに形成し、第1固定部材20に1対のテーパ面13bに係合する1対のテーパ部20aを形成したので、第1固定部材20を固定部材収容凹部13から容易に後側へ取り外すことができ、第1固定部材20を固定部材収容凹部13に装着した状態で確実に一体化させることが期待できる。
【0059】
カッター取付部材10の前部に着脱可能なサドル15を設け、このサドル15に軸受凹部17を形成したので、このサドル15についても摩耗等で損傷した場合に交換することができ、サドル15の前面部分に複数の超硬チップ16を取付けたので、サドル15の掘削土等による損傷を極力防止することができる。
【0060】
第3固定部材30に、第3固定部材30を引っ張って1対の第2固定部材25の間から引き抜く為の引抜部材が螺合し且つ締結部材45が挿通可能に締結部材45よりも大径の挿通穴30bにネジ穴30bを形成したので、ローラカッター3を交換する場合に、引抜部材を第3固定部材30のネジ穴に螺合させて引っ張ることで、第3固定部材30を1対の第2固定部材25の間から後側へ容易に取り外しでき、それ故、ローラカッター3の交換作業の時間をより短縮することが可能になる。
【実施例2】
【0061】
図8、図9に示すように、実施例2のローラカッター固定装置4Aは、ローラカッター3の1対の支軸端部3aを着脱可能に固定するものであり、1対の支軸端部3aに対応させて、カッター取付部材50と、第1固定部材60と、第2固定部材65と、締結部材70とを夫々2組備えている。
【0062】
各カッター取付部材50は、取付部材本体51と、取付部材本体51(カッター取付部材50)の前部に着脱可能に設けられたサドル55を有し、サドル55には複数の超硬チップ56が一様に取り付けられ、サドル55には軸受凹部57が形成されている。サドル55および軸受凹部57は実施例1と同様のものである。取付部材本体51には、前部にサドル収容凹部52が形成され、このサドル収容凹部52の後端に連なり後方開放状の固定部材収容凹部53が形成され、サドル収容凹部52にサドル55が着脱可能に装着され1対のボルト58で固定され、この状態で、サドル55の軸受凹部57の後端に固定部材収容凹部53が連なった状態になる。
【0063】
固定部材収容凹部53の側部に相対向状に相離隔状に1対の角溝状の係合凹部54が形成され、その後側に開口部53aが形成されている。固定部材収容凹部53のうちの軸受凹部側端部のローラ軸直交方向における長さは、サドル収容凹部52の約1/3弱である。ここで、ローラカッター3の支軸端部3aが軸受凹部57に係合された状態で、前後方向におけるローラカッター3のハブ3cの位置は、固定部材収容凹部53のうちの係合凹部54の位置よりも前側に位置している。
【0064】
第1固定部材60は、固定部材収容凹部53と略同じローラ軸方向の厚さを有し、固定部材収容凹部53のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて、ローラカッター3の支軸端部3aに後側から当接して、軸受凹部57にローラカッター3の支軸端部3aを保持する。第1固定部材60のローラ軸直交方向における長さは開口部53aよりも少し小さく形成され、それ故、第1固定部材60を固定部材収容凹部63の軸受凹部側端部に開口部63aを通過させて後側から着脱することができる。
【0065】
固定部材収容凹部53のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面は後方広がりのテーパ面53bに形成され、第1固定部材60には1対のテーパ面53bに係合する1対のテーパ部60aが形成されている。第1固定部材60には、中央部分に締結部材70が螺合するネジ穴60bが形成されている。
【0066】
第2固定部材65は、固定部材収容凹部53と略同じローラ軸方向の厚さを有し、第2固定部材65のローラ軸直交方向における長さは開口部53aよりも大きい。第2固定部材65は、1対の係合凹部54に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部65aを備え、第1固定部材60が装着された固定部材収容凹部53にローラカッター3側から着脱可能に装着されて、1対の係合部65aが1対の係合凹部64に係合すると共に、第1固定部材60に後側から当接して、第1固定部材60を後側から支持し、その後、ボルト58を締めてサドル55を後側に引き寄せてローラカッター3の支軸端部3aを最終的に固定する。
【0067】
このローラカッター固定装置4Aによれば、トンネルを掘削可能な状態では、第2固定部材65の1対の係合部65aが固定部材収容凹部53の1対の係合凹部54に夫々係合されるので、第2固定部材65の前後方向の移動が規制され、この第2固定部材65により第1固定部材60を後側から確実に支持し、この第1固定部材60によりローラカッター3の支軸端部3aを軸受凹部57に確実に保持して、ローラカッター3を固定することができ、ローラカッター3の掘削反力を、締結部材70に作用させずに、第1固定部材60と第2固定部材65を介してカッター取付部材50で受け止めることができる。
【0068】
ローラカッター3を交換する場合には、締結部材70を弛めて、第2固定部材65、第1固定部材60を、固定部材収容凹部53から順次取り外し、この場合、ローラカッター3の支軸端部3aが軸受凹部57に係合された状態で、前後方向におけるローラカッター3のハブ3cの位置が係合凹部54の位置よりも前側に位置するので、固定部材収容凹部53に第2固定部材65をローラカッター側から着脱することができる。
【0069】
第1,第2固定部材60,65を取り外した後、ローラカッター3の支軸端部3aを固定部材収容凹部53を通過させて、ローラカッター3を交換することができる。その結果、ローラカッター3の交換作業を簡単化し、交換作業の時間を著しく短縮することができ、トンネル掘削工期を短縮することが可能になる。また、部材数を低減でき、従来のようにロータディスクを回動させる機構等や回り止めする機構も不要になるため、構造を簡単化することができる。その他の関連する作用、効果は実施例1と同様である。
【0070】
尚、本発明のローラカッター固定装置においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示した事項以外に他の種々の変更を付加して実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1のトンネル掘削機のカッターヘッドの正面図である。
【図2】ローラカッターとローラカッター固定装置の正面図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】ローラカッター固定装置の分解状態の縦断面図である。
【図5】ローラカッター固定装置の斜視図である。
【図6】ローラカッター固定装置の分解状態の斜視図である。
【図7】ローラカッター固定装置のローラカッター交換時の縦断面図である。
【図8】実施例2ローラカッター固定装置の縦断面図である。
【図9】ローラカッター固定装置の分解状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 トンネル掘削機
2 カッターヘッド
3 ローラカッター
3a 支軸端部
3c ハブ
4,4A ローラカッター固定装置
10,50 カッター取付部材
13,53 固定部材収容凹部
13b,53b テーパ面
14,54 係合凹部
15,55 サドル
16,56 超硬チップ
17,57 軸受凹部
20,60 第1固定部材
20a,60a テーパ部
20b,20c,60b ネジ穴
25,65 第2固定部材
25a,65a 係合部
25b テーパ面
25c ボルト挿通穴
30 第3固定部材
30a テーパ部
40 ボルト部材
45,70 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定するローラカッター固定装置において、
前記カッターヘッドに固定され、且つローラカッターの支軸端部が後側から係脱可能な軸受凹部が形成されたカッター取付部材と、
前記カッター取付部材に形成された、前記軸受凹部の後端に連なり後方開放状の固定部材収容凹部および固定部材収容凹部の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部と、
前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて前記軸受凹部にローラカッターの支軸端部を保持する第1固定部材と、
前記第1固定部材が装着された固定部材収容凹部に後側から着脱可能に且つ相離隔状に装着されて第1固定部材を後側から支持する1対の第2固定部材であって、1対の係合凹部に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部を備えた1対の第2固定部材と、
前記固定部材収容凹部のうちの1対の第2固定部材の間に後側から着脱可能に装着されて、締結部材により第1固定部材に締結される第3固定部材とを備え、
前記1対の第2固定部材の相対向する面に後方広がりの1対のテーパ面を形成すると共に、前記第3固定部材に前記1対のテーパ面に係合する1対のテーパ部を形成したことを特徴とするトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項2】
前記ローラカッターの支軸端部が前記軸受凹部に係合されて前後方向におけるローラカッターのハブの位置と前記係合凹部の位置とがラップした状態で、前記固定部材の固定部材収容凹部への着脱を可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項3】
前記1対の第2固定部材のボルト挿通穴に後側から挿通され第1固定部材に螺合されて1対の第2固定部材を第1固定部材に固定する1対のボルト部材を設け、前記ボルト挿通穴をボルト部材よりも大径に形成し、第1,第2固定部材を固定部材収容凹部に装着した状態で、締結部材により第3固定部材を第1固定部材に締結すると共にボルト部材により第1,第2固定部材を締結することで弛み防止を可能に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項4】
前記第3固定部材に、第3固定部材を引っ張って1対の第2固定部材の間から引き抜く為の引抜部材が螺合し且つ前記締結部材が挿通可能に締結部材よりも大径のネジ穴を形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項5】
トンネル掘削機のカッターヘッドの前面部に装備されるローラカッターを、カッターヘッドの後側から着脱可能に固定するローラカッター固定装置において、
前記カッターヘッドに固定され、且つローラカッターの支軸端部が後側から係脱可能な軸受凹部が形成されたカッター取付部材と、
前記カッター取付部材に形成された、前記軸受凹部の後端に連なる固定部材収容凹部および固定部材収容凹部の側部に相対向状に相離隔状に形成された1対の角溝状の係合凹部と、
前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部に後側から着脱可能に装着されて前記軸受凹部にローラカッターの支軸端部を保持する第1固定部材と、
前記第1固定部材が装着された固定部材収容凹部にローラカッター側から着脱可能に装着されて締結部材により第1固定部材に締結され第1固定部材を後側から支持する第2固定部材であって、1対の係合凹部に後方移動不能に夫々係合される1対の係合部を備えた第2固定部材とを備え、
前記ローラカッターの支軸端部が前記軸受凹部に係合された状態で、前後方向におけるローラカッターのハブの位置が前記係合凹部の位置よりも前側に位置することを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項6】
前記ローラカッターの1対の支軸端部に対応させて前記カッター取付部材と前記固定部材を夫々2組設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項7】
前記固定部材収容凹部のうちの軸受凹部側端部の相対向する1対の面を後方広がりのテーパ面に形成し、前記第1固定部材に前記1対のテーパ面に係合する1対のテーパ部を形成したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項8】
前記カッター取付部材の前部に着脱可能なサドルを設け、このサドルに前記軸受凹部を形成したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。
【請求項9】
前記サドルの前面部分に複数の超硬チップを取り付けたことを特徴とする請求項8に記載のトンネル掘削機のローラカッター固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−70825(P2007−70825A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256405(P2005−256405)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】