トンネル掘削機及びトンネル掘削機のローリング抑制方法
【課題】 ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消又は防止できるトンネル掘削機及びトンネル掘削機のローリング抑制方法を提供する。
【解決手段】 地山側に臨んだ先端部にカッタ部3を有する前胴5と、前胴5に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴6とを備えたトンネル掘削機1において、前胴5と後胴6とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴5と後胴6との間に前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7を設けたものである。
【解決手段】 地山側に臨んだ先端部にカッタ部3を有する前胴5と、前胴5に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴6とを備えたトンネル掘削機1において、前胴5と後胴6とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴5と後胴6との間に前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、前胴に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング修正又はローリング抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断面円形のシールド機が掘進中にローリングを起こした場合、特許文献1、2記載のようにセグメントを後方に押すための推進ジャッキを周方向に傾倒して伸張させ、シールド機を軸回りに回動させてローリングを修正したり、特許文献3記載のようにローリングを増長させる方向にカッタが揺動するときに推進ジャッキの伸張を止め、ローリングを減退させる方向にカッタが揺動するときに推進ジャッキを伸張させ、カッタが地山から受ける反力を利用してローリングを修正している。
【0003】
また、断面非円形のシールド機にあっては、径方向外方に突出する部分が邪魔となるため、この部分の周囲を余掘装置で余掘しながら掘進し、余掘した空間にシールドフレームを徐々に案内してローリングを修正している。具体的には、図13に示すように、断面矩形のシールド機40が正面視右側にローリングした場合、破線で示すように四隅の左回転側を余掘装置で余掘しながら掘進し、ローリングを修正している。
【0004】
【特許文献1】実公平5−12393号公報
【特許文献2】特開平9−151693号公報
【特許文献3】特開2001−262972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、推進ジャッキを傾倒させつつ伸張させて行うローリング修正は、推進ジャッキの傾倒角度と、推進ジャッキの伸張長さとで1ストローク当たりのローリング修正角度が決まるが、推進ジャッキを傾倒できる角度は僅かであり、修正に相当の距離掘進する必要があるという課題があった。このため、近接施工や到達点の近くでは対応困難であった。また、周囲を余掘して行うローリング修正にあっても、少なくとも機長と同じ距離掘進する必要があり、径方向外方に突出する部分の周囲を相当量余掘しなければならず、修正困難であるという課題があった。また、中折れ式のシールド掘進機にあっては、前胴と後胴とが分離されているため、前胴がローリングしやすかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消又は抑制若しくは防止できるトンネル掘削機及びトンネル掘削機のローリング抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設けたものである。
【0008】
上記前胴と後胴とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴と後胴との接合胴部の一方に他方の接合胴部内に嵌挿結合される嵌挿部を形成し、該嵌挿部の断面形状を被嵌挿接合胴部より角数の多い多角形状あるいは円形に近い形状に形成するとよい。
【0009】
上記被嵌挿接合胴部が断面矩形状に形成されると共に、上記嵌挿部が上記被嵌挿接合胴部のそれぞれの辺に角部を近接させて被嵌挿接合胴部内に収容される断面八角形状に形成され、上記角部に臨む辺の一方を上記被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置まで嵌挿部を被嵌挿接合胴部に対して揺動可能とするとよい。
【0010】
また、カッタ部を駆動する駆動装置にカッタ駆動時の負荷を検出する負荷検出手段を設け、該負荷検出手段と上記姿勢制御手段に、負荷検出手段で検出した負荷値より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続するとよい。
【0011】
また、前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、これらローリング計と上記姿勢制御手段に、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続してもよい。
【0012】
姿勢制御手段は、一端が前胴に、他端が後胴に連結されたジャッキを備えて構成され、該ジャッキは、少なくとも一端又は他端の一方を前胴又は後胴の軸方向にスライド自在に連結されるとよい。
【0013】
また、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング抑制方法において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設け、上記カッタ部を回転又は揺動させて地山を掘削したとき前胴にかかるローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段で前胴に回転力を付与させるものである。
【0014】
掘削時にカッタ部の駆動装置にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御するとよい。
【0015】
また、前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消又は抑制若しくは防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の好適実施の形態を示す推進工法用のトンネル掘削機の側面断面図であり、図2は前胴と後胴と姿勢制御手段の関係を示す正面説明図である。
【0018】
図1に示すように、トンネル掘削機1は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部3を有する前胴5と、前胴5に屈曲自在又は伸縮自在に係合される後胴6とを備えて構成されており、図示しない発進立坑で元押し管2を継ぎ足しつつ元押し管2を元押しすることで推進力を得て、下水トンネル等のトンネル孔を掘削するようになっている。カッタ部3は、前胴5に軸回り揺動自在に設けられている。またさらに、前胴5と後胴6は、軸回りに揺動自在に係合されている。そして、前胴5と後胴6との間には、前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7が設けられている。
【0019】
図2に示すように、前胴5と後胴6とはそれぞれ断面非円形状、具体的には断面矩形状の筒体によって形成されている。前胴5と後胴6の接合胴部4は、後胴6に形成され前胴5内に嵌挿結合される嵌挿部4aと、前胴5に形成され嵌挿部4aを嵌挿させるための被嵌挿接合胴部4bとからなる。嵌挿部4aは、断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成されている。さらに具体的には、被嵌挿接合胴部4bは、断面矩形状に形成されており、嵌挿部4aは被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成されている。そしてこれにより、嵌挿部4aは、角部8に臨む辺8a、8bの一方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置まで被嵌挿接合胴部4bに対して揺動可能となっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前胴5と後胴6は、中折れジャッキ9を介して屈曲自在又は伸縮自在に連結されており、互いに軸回り揺動自在、かつ屈曲自在となっている。そして、前胴5と後胴6の隙間は変形可能なシール材10で液密に塞がれており、前胴5と後胴6の揺動及び屈曲を許容しつつ機外からの浸水を防ぐようになっている。
【0021】
図9に示すように、姿勢制御手段7は、一端が前胴5に、他端が後胴6に連結されたジャッキ11と、ジャッキ11に油圧を供給する油圧供給部24とからなる。油圧供給部24は、油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25とそれぞれのジャッキ11を接続する油圧配管26と、油圧配管26に設けられ油圧の供給側と排出側を切り替える電磁切替弁27とを備えて構成されている。具体的には、ジャッキ11は油圧ジャッキからなり、前胴5と後胴6の接合胴部4に周方向に離間して複数設けられている。また、図1及び図2に示すように、ジャッキ11は、少なくとも一端を軸方向にスライド自在に設けられており、前胴5と後胴6の屈曲を許容しつつ前胴5と後胴6に係合されるようになっている。具体的には、ジャッキ11は、一端を前胴5に回動自在に連結されると共に他端を後胴6に軸方向スライド自在に連結されており、前胴5と後胴6が屈曲するときに他端側をスライドさせることで前胴5と後胴6の屈曲を阻害しないようになっている。後胴6にジャッキ11を軸方向スライド自在に連結するスライド機構12は、後胴6の前端部に形成され前方へ延出するガイドレール部13と、ジャッキ11の他端に設けられガイドレール部13に沿って摺動する摺動部材14とからなる。摺動部材14は、ガイドレール部13と前胴5との間に配置される基板部15と、基板部15の両側に設けられガイドレール部13の周方向の両縁に係合される爪部16とを備えて構成されている。図9に示すように、油圧供給部24は、油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25とそれぞれのジャッキ11を接続する油圧配管26と、油圧配管26に設けられ油圧の供給側と排出側を切り替える電磁切替弁27とを備えて構成されている。
【0022】
また、カッタ部3を駆動する駆動装置21には、カッタ3駆動時の負荷を検出する負荷検出手段22が設けられており、負荷検出手段22と姿勢制御手段7には、負荷検出手段22で検出した負荷値より前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する制御装置23が接続されている。
【0023】
負荷検出手段22は、油圧センサ28からなり、カッタ部3の駆動装置21に接続される油圧配管系29に設けられている。
【0024】
制御装置23は、油圧センサ28に接続されると共に姿勢制御手段7の油圧ポンプ25に接続されており、予めカッタ部3の駆動装置21の油圧ジャッキ容量とジャッキ11の油圧ジャッキ容量とを記録した記憶部30を有する。
【0025】
次に本実施の形態の作用とローリング抑制方法とについて述べる。
【0026】
図5及び図6に示すように、トンネル掘削機1を掘進させる場合、トンネル掘削機1を元押ししてトンネル掘削機1に推進力を与えつつ、カッタ部3を揺動させる。このとき、カッタ部3は地山から反力を受け、この反力が前胴5に作用する。図5及び図7に破線で示すように、反力は前胴5をカッタ部3の揺動方向と反対に回動させるように作用する。そして、カッタ部3を揺動させ始めると同時に図9に示す駆動装置21にかかる負荷を検出する。駆動装置21の負荷は、油圧として油圧センサ28で検出する。この後、油圧センサ28で検出した油圧と、予め記憶部30に記録されたカッタ部3の駆動装置21の油圧ジャッキ容量とから前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する。すなわち、カッタのモーメントと、前胴のモーメントとが釣り合うようにジャッキに油圧を供給する。
【0027】
図8に示すように、カッタ部3が地山から受ける反力と、姿勢制御手段7で発生する力とが釣り合い、前胴5がローリングするのを未然に防ぐことができる。特に、揺動カッタ部3においては、揺動方向によって地山から受ける反力が異なることがあり、この反力の違いによって徐々にローリングを起こすことがあったが、揺動方向を転換する度にカッタ部3の駆動装置21に作用する負荷を測定し、前胴5に作用するローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御することで、ローリングを未然に防ぐことができる。
【0028】
このように、前胴5と後胴6とを軸回りに揺動自在に係合すると共に、前胴5と後胴6との間に前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7を設けたため、後胴6に対して前胴5を揺動させることでローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消できる。
【0029】
また、前胴5と後胴6とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴5と後胴6との接合胴部4の一方に他方の接合胴部4内に嵌挿結合される嵌挿部4aを形成し、嵌挿部4aの断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成したため、前胴5と後胴6を簡易な構造で軸回り揺動自在に形成できる。
【0030】
そして、被嵌挿接合胴部4bが断面矩形状に形成されると共に、嵌挿部4aが被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成され、角部8に臨む辺8a、8bの一方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置まで嵌挿部4aを被嵌挿接合胴部4bに対して揺動可能としたため、断面矩形状の前胴5と後胴6を簡易な構造で軸回り揺動自在に形成できる。
【0031】
カッタ部3を駆動する駆動装置21にカッタ部3駆動時の負荷を検出する負荷検出手段22を設け、負荷検出手段22と姿勢制御手段7に、負荷検出手段22で検出した負荷値より前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する制御装置23を接続したため、簡易な構造で容易にトンネル掘削機1のローリングを抑制又は防止することができる。
【0032】
また、姿勢制御手段7は、一端が前胴5に、他端が後胴6に連結されたジャッキ11を備えて構成され、ジャッキ11は、少なくとも一端又は他端の一方を前胴5又は後胴6の軸方向にスライド自在に連結されるものとしたため、姿勢制御手段7を簡易な構造にでき、安価に製作できると共に、トンネル掘削機1の中折れを許容しつつ前胴5を揺動させることができる。
【0033】
そして、カッタ部3を回転又は揺動させて掘削したとき前胴5にかかるローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7で前胴5に回転力を付与させ、トンネル掘削機1のローリングを抑制するため、トンネル掘削機1のローリングを未然に防ぐことができ、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消できる。そして、ローリングを未然に防ぐことができるため、カッタ部3の外周側を余掘りする余掘装置(図示せず)を省くことができる。
【0034】
掘削時にカッタ部3の駆動装置21にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御するため、前胴5にかかるローリング力をほぼ完全に打ち消すことができ、容易にローリングを抑制若しくは防止できる。
【0035】
なお、揺動カッタ部3を有するトンネル掘削機1について説明したが、カッタ部3は、前胴5に回転自在に設けた回転カッタ部3であってもよい。
【0036】
トンネル掘削機1は、断面矩形状のものについて説明したが、トンネル掘削機1の断面形状は円形であってもよく、他の非円形状であってもよい。
【0037】
前胴5と後胴6は屈曲自在かつ揺動自在に係合されるものとしたが、前胴5と後胴6は互いに連結されるものであってもよく、角度に制限なく回動自在であってもよい。
【0038】
嵌挿部4aは、断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成するものとしたが、円形に近い形状に形成してもよい。
【0039】
姿勢制御手段7はジャッキ11を備えて構成されるものとしたが、ジャッキ11以外の他の駆動装置を備えて構成してもよい。
【0040】
そして、姿勢制御手段7を構成するジャッキ11は油圧式に限るものではなく、機械式であってもよく他の形式であってもよい。
【0041】
また、ジャッキ11は後胴6に軸方向スライド自在に連結されるものとしたが、前胴5に軸方向スライド自在に連結するものとしてもよく、前胴5と後胴6の双方に軸方向スライド自在に連結するものとしてもよい。またさらに、図11に示すように、ジャッキ11の両端を球面台座60を介して前胴5と後胴6とにそれぞれ設け、後胴6に対する前胴5の軸回りの回動を許容すると共に、前胴5と後胴6の屈曲又は伸縮を許容するように構成してもよい。
【0042】
元押し型のトンネル掘削機1について述べたが、トンネル掘削機1は後胴5に推進ジャッキ(図示せず)を有し、後胴5内でトンネル壁を構築すると共に推進ジャッキでトンネル壁を後方に押し、トンネル壁に反力を得て掘進力を得るシールド掘進機(図示せず)であってもよい。
【0043】
また、トンネル掘削機1は、セグメント組立と掘削を同時に行うことが可能なように前胴と後胴とを軸方向に伸縮自在に連結した複胴式同時掘進シールドであってもよい。この場合、図10に示すように複胴式同時掘進シールド50は、前胴51と後胴52との軸回りの回動を許容すると共に、前胴51と後胴52との間に姿勢制御手段53たるジャッキ54を設けて構成するとよい。カッタ部55の駆動装置(図示せず)にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴51にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段53を制御することで前胴51にかかるローリング力をほぼ完全に打ち消すことができ、容易にローリングを抑制又は防止できる。トンネル掘削機1は方向制御付推進機であってもよい。
【0044】
次にトンネル掘削機1が後胴6ごとローリングしてしまった場合のローリング修正について述べる。
【0045】
図3に示すように、トンネル掘削機1を掘進させているとき、ローリングが発生したら、まず、前胴5をローリング方向と逆の方向に回動させるようにそれぞれのジャッキ11を伸縮させる。これにより、図4に示すように前胴5の姿勢が元に戻る。このとき、被嵌挿接合胴部4bが断面矩形状に形成されると共に、嵌挿部4aが被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成されているため、前胴5と後胴6は互いに干渉することなく円滑に揺動できる。また、後胴6はセグメントに連結又はシールドジャッキを介して接触されているため、前胴5を確実に揺動することができる。
【0046】
この後、ジャッキ11の伸縮を自由とし、トンネル掘削機1を元押掘進させることで後胴6は地山に形成された前胴5の掘進軌跡に沿って回動され、元の姿勢に戻ることとなる。
【0047】
姿勢制御手段7の制御に変更を加えた他の実施の形態について述べる。なお、負荷検出手段22と制御装置23を他のものに変更する以外は上述と同様である。上述と同様の構成については説明を省き、同符号を付す。
【0048】
図12に示すように、前胴5と後胴6とのそれぞれにローリングを検出するローリング計65、66を設け、これらローリング計65、66と姿勢制御手段7に、前胴5と後胴6とを水平にするように姿勢制御手段7を制御する制御装置67を接続する。ローリング計65、66は、前胴5又は後胴6の水平度を検出する傾斜計からなる。制御装置67は、所定時間ごとにローリング計65、66からローリング情報(前胴5と後胴6の傾斜角度)を取得し、ローリングが検出されたとき姿勢制御手段7を制御するように構成されている。
【0049】
次にローリング計65、66と制御装置67を用いたローリング抑制方法について述べる。
【0050】
前胴5側のローリング計65でローリングを検出したとき、制御装置67はローリングを戻すように姿勢制御手段7たるジャッキ11を伸縮させ、前胴5を水平にする。また、前胴5側と後胴6側のローリング計65、66でそれぞれローリングを検出したとき、制御装置67はジャッキ11を伸縮させて前胴5のローリングを解消したのち、ジャッキ11の伸縮を自由とし、トンネル掘削機68を元押掘進させることで後胴6を地山に形成された前胴5の掘進軌跡に沿って回動させて後胴6のローリングを解消する。ローリング計65、66で逐次ローリングを検出しながらジャッキ11の制御ができるため、簡単かつ迅速にローリングを解消できる。そして、ローリング計の精度を高いものとすることで実質的にローリングを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す推進工法用トンネル掘削機の側面断面図である。
【図2】前胴と後胴と姿勢制御手段の関係を示す正面説明図である。
【図3】ローリングしたトンネル掘削機の正面説明図である。
【図4】ローリング修正中のトンネル掘削機の正面説明図である。
【図5】ローリング抑制中のトンネル掘削機の斜視説明図である。
【図6】カッタの揺動方向を示すトンネル掘削機の正面説明図である。
【図7】前胴に作用するローリング力の方向を示すトンネル掘削機の正面説明図である。
【図8】ローリング抑制中のトンネル掘削機の正面断面説明図である。
【図9】トンネル掘削機のローリング抑制装置を示す回路図である。
【図10】他の実施の形態を示すトンネル掘削機の側面説明図である。
【図11】他の実施の形態を示すトンネル掘削機の側面説明図である。
【図12】他の実施の形態を示す回路図である。
【図13】従来のローリング修正方法を示すシールド掘進機の正面説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 トンネル掘削機
3 カッタ部
4 接合胴部
4a 嵌挿部
4b 被嵌挿接合胴部
5 前胴
6 後胴
7 姿勢制御手段
11 ジャッキ
21 駆動装置
22 負荷検出手段
23 制御装置
65 ローリング計
66 ローリング計
67 制御装置
68 トンネル掘削機
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、前胴に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング修正又はローリング抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断面円形のシールド機が掘進中にローリングを起こした場合、特許文献1、2記載のようにセグメントを後方に押すための推進ジャッキを周方向に傾倒して伸張させ、シールド機を軸回りに回動させてローリングを修正したり、特許文献3記載のようにローリングを増長させる方向にカッタが揺動するときに推進ジャッキの伸張を止め、ローリングを減退させる方向にカッタが揺動するときに推進ジャッキを伸張させ、カッタが地山から受ける反力を利用してローリングを修正している。
【0003】
また、断面非円形のシールド機にあっては、径方向外方に突出する部分が邪魔となるため、この部分の周囲を余掘装置で余掘しながら掘進し、余掘した空間にシールドフレームを徐々に案内してローリングを修正している。具体的には、図13に示すように、断面矩形のシールド機40が正面視右側にローリングした場合、破線で示すように四隅の左回転側を余掘装置で余掘しながら掘進し、ローリングを修正している。
【0004】
【特許文献1】実公平5−12393号公報
【特許文献2】特開平9−151693号公報
【特許文献3】特開2001−262972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、推進ジャッキを傾倒させつつ伸張させて行うローリング修正は、推進ジャッキの傾倒角度と、推進ジャッキの伸張長さとで1ストローク当たりのローリング修正角度が決まるが、推進ジャッキを傾倒できる角度は僅かであり、修正に相当の距離掘進する必要があるという課題があった。このため、近接施工や到達点の近くでは対応困難であった。また、周囲を余掘して行うローリング修正にあっても、少なくとも機長と同じ距離掘進する必要があり、径方向外方に突出する部分の周囲を相当量余掘しなければならず、修正困難であるという課題があった。また、中折れ式のシールド掘進機にあっては、前胴と後胴とが分離されているため、前胴がローリングしやすかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消又は抑制若しくは防止できるトンネル掘削機及びトンネル掘削機のローリング抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設けたものである。
【0008】
上記前胴と後胴とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴と後胴との接合胴部の一方に他方の接合胴部内に嵌挿結合される嵌挿部を形成し、該嵌挿部の断面形状を被嵌挿接合胴部より角数の多い多角形状あるいは円形に近い形状に形成するとよい。
【0009】
上記被嵌挿接合胴部が断面矩形状に形成されると共に、上記嵌挿部が上記被嵌挿接合胴部のそれぞれの辺に角部を近接させて被嵌挿接合胴部内に収容される断面八角形状に形成され、上記角部に臨む辺の一方を上記被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置まで嵌挿部を被嵌挿接合胴部に対して揺動可能とするとよい。
【0010】
また、カッタ部を駆動する駆動装置にカッタ駆動時の負荷を検出する負荷検出手段を設け、該負荷検出手段と上記姿勢制御手段に、負荷検出手段で検出した負荷値より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続するとよい。
【0011】
また、前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、これらローリング計と上記姿勢制御手段に、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続してもよい。
【0012】
姿勢制御手段は、一端が前胴に、他端が後胴に連結されたジャッキを備えて構成され、該ジャッキは、少なくとも一端又は他端の一方を前胴又は後胴の軸方向にスライド自在に連結されるとよい。
【0013】
また、地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング抑制方法において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設け、上記カッタ部を回転又は揺動させて地山を掘削したとき前胴にかかるローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段で前胴に回転力を付与させるものである。
【0014】
掘削時にカッタ部の駆動装置にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御するとよい。
【0015】
また、前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消又は抑制若しくは防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の好適実施の形態を示す推進工法用のトンネル掘削機の側面断面図であり、図2は前胴と後胴と姿勢制御手段の関係を示す正面説明図である。
【0018】
図1に示すように、トンネル掘削機1は、地山側に臨んだ先端部にカッタ部3を有する前胴5と、前胴5に屈曲自在又は伸縮自在に係合される後胴6とを備えて構成されており、図示しない発進立坑で元押し管2を継ぎ足しつつ元押し管2を元押しすることで推進力を得て、下水トンネル等のトンネル孔を掘削するようになっている。カッタ部3は、前胴5に軸回り揺動自在に設けられている。またさらに、前胴5と後胴6は、軸回りに揺動自在に係合されている。そして、前胴5と後胴6との間には、前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7が設けられている。
【0019】
図2に示すように、前胴5と後胴6とはそれぞれ断面非円形状、具体的には断面矩形状の筒体によって形成されている。前胴5と後胴6の接合胴部4は、後胴6に形成され前胴5内に嵌挿結合される嵌挿部4aと、前胴5に形成され嵌挿部4aを嵌挿させるための被嵌挿接合胴部4bとからなる。嵌挿部4aは、断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成されている。さらに具体的には、被嵌挿接合胴部4bは、断面矩形状に形成されており、嵌挿部4aは被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成されている。そしてこれにより、嵌挿部4aは、角部8に臨む辺8a、8bの一方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置まで被嵌挿接合胴部4bに対して揺動可能となっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前胴5と後胴6は、中折れジャッキ9を介して屈曲自在又は伸縮自在に連結されており、互いに軸回り揺動自在、かつ屈曲自在となっている。そして、前胴5と後胴6の隙間は変形可能なシール材10で液密に塞がれており、前胴5と後胴6の揺動及び屈曲を許容しつつ機外からの浸水を防ぐようになっている。
【0021】
図9に示すように、姿勢制御手段7は、一端が前胴5に、他端が後胴6に連結されたジャッキ11と、ジャッキ11に油圧を供給する油圧供給部24とからなる。油圧供給部24は、油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25とそれぞれのジャッキ11を接続する油圧配管26と、油圧配管26に設けられ油圧の供給側と排出側を切り替える電磁切替弁27とを備えて構成されている。具体的には、ジャッキ11は油圧ジャッキからなり、前胴5と後胴6の接合胴部4に周方向に離間して複数設けられている。また、図1及び図2に示すように、ジャッキ11は、少なくとも一端を軸方向にスライド自在に設けられており、前胴5と後胴6の屈曲を許容しつつ前胴5と後胴6に係合されるようになっている。具体的には、ジャッキ11は、一端を前胴5に回動自在に連結されると共に他端を後胴6に軸方向スライド自在に連結されており、前胴5と後胴6が屈曲するときに他端側をスライドさせることで前胴5と後胴6の屈曲を阻害しないようになっている。後胴6にジャッキ11を軸方向スライド自在に連結するスライド機構12は、後胴6の前端部に形成され前方へ延出するガイドレール部13と、ジャッキ11の他端に設けられガイドレール部13に沿って摺動する摺動部材14とからなる。摺動部材14は、ガイドレール部13と前胴5との間に配置される基板部15と、基板部15の両側に設けられガイドレール部13の周方向の両縁に係合される爪部16とを備えて構成されている。図9に示すように、油圧供給部24は、油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25とそれぞれのジャッキ11を接続する油圧配管26と、油圧配管26に設けられ油圧の供給側と排出側を切り替える電磁切替弁27とを備えて構成されている。
【0022】
また、カッタ部3を駆動する駆動装置21には、カッタ3駆動時の負荷を検出する負荷検出手段22が設けられており、負荷検出手段22と姿勢制御手段7には、負荷検出手段22で検出した負荷値より前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する制御装置23が接続されている。
【0023】
負荷検出手段22は、油圧センサ28からなり、カッタ部3の駆動装置21に接続される油圧配管系29に設けられている。
【0024】
制御装置23は、油圧センサ28に接続されると共に姿勢制御手段7の油圧ポンプ25に接続されており、予めカッタ部3の駆動装置21の油圧ジャッキ容量とジャッキ11の油圧ジャッキ容量とを記録した記憶部30を有する。
【0025】
次に本実施の形態の作用とローリング抑制方法とについて述べる。
【0026】
図5及び図6に示すように、トンネル掘削機1を掘進させる場合、トンネル掘削機1を元押ししてトンネル掘削機1に推進力を与えつつ、カッタ部3を揺動させる。このとき、カッタ部3は地山から反力を受け、この反力が前胴5に作用する。図5及び図7に破線で示すように、反力は前胴5をカッタ部3の揺動方向と反対に回動させるように作用する。そして、カッタ部3を揺動させ始めると同時に図9に示す駆動装置21にかかる負荷を検出する。駆動装置21の負荷は、油圧として油圧センサ28で検出する。この後、油圧センサ28で検出した油圧と、予め記憶部30に記録されたカッタ部3の駆動装置21の油圧ジャッキ容量とから前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する。すなわち、カッタのモーメントと、前胴のモーメントとが釣り合うようにジャッキに油圧を供給する。
【0027】
図8に示すように、カッタ部3が地山から受ける反力と、姿勢制御手段7で発生する力とが釣り合い、前胴5がローリングするのを未然に防ぐことができる。特に、揺動カッタ部3においては、揺動方向によって地山から受ける反力が異なることがあり、この反力の違いによって徐々にローリングを起こすことがあったが、揺動方向を転換する度にカッタ部3の駆動装置21に作用する負荷を測定し、前胴5に作用するローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御することで、ローリングを未然に防ぐことができる。
【0028】
このように、前胴5と後胴6とを軸回りに揺動自在に係合すると共に、前胴5と後胴6との間に前胴5の軸回りへの回動に対して後胴6より反力を与えて前胴5のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段7を設けたため、後胴6に対して前胴5を揺動させることでローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消できる。
【0029】
また、前胴5と後胴6とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴5と後胴6との接合胴部4の一方に他方の接合胴部4内に嵌挿結合される嵌挿部4aを形成し、嵌挿部4aの断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成したため、前胴5と後胴6を簡易な構造で軸回り揺動自在に形成できる。
【0030】
そして、被嵌挿接合胴部4bが断面矩形状に形成されると共に、嵌挿部4aが被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成され、角部8に臨む辺8a、8bの一方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部4bの辺18に当接させる位置まで嵌挿部4aを被嵌挿接合胴部4bに対して揺動可能としたため、断面矩形状の前胴5と後胴6を簡易な構造で軸回り揺動自在に形成できる。
【0031】
カッタ部3を駆動する駆動装置21にカッタ部3駆動時の負荷を検出する負荷検出手段22を設け、負荷検出手段22と姿勢制御手段7に、負荷検出手段22で検出した負荷値より前胴5にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御する制御装置23を接続したため、簡易な構造で容易にトンネル掘削機1のローリングを抑制又は防止することができる。
【0032】
また、姿勢制御手段7は、一端が前胴5に、他端が後胴6に連結されたジャッキ11を備えて構成され、ジャッキ11は、少なくとも一端又は他端の一方を前胴5又は後胴6の軸方向にスライド自在に連結されるものとしたため、姿勢制御手段7を簡易な構造にでき、安価に製作できると共に、トンネル掘削機1の中折れを許容しつつ前胴5を揺動させることができる。
【0033】
そして、カッタ部3を回転又は揺動させて掘削したとき前胴5にかかるローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7で前胴5に回転力を付与させ、トンネル掘削機1のローリングを抑制するため、トンネル掘削機1のローリングを未然に防ぐことができ、ローリング修正のための掘進をほとんどせずとも容易にローリングを解消できる。そして、ローリングを未然に防ぐことができるため、カッタ部3の外周側を余掘りする余掘装置(図示せず)を省くことができる。
【0034】
掘削時にカッタ部3の駆動装置21にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段7を制御するため、前胴5にかかるローリング力をほぼ完全に打ち消すことができ、容易にローリングを抑制若しくは防止できる。
【0035】
なお、揺動カッタ部3を有するトンネル掘削機1について説明したが、カッタ部3は、前胴5に回転自在に設けた回転カッタ部3であってもよい。
【0036】
トンネル掘削機1は、断面矩形状のものについて説明したが、トンネル掘削機1の断面形状は円形であってもよく、他の非円形状であってもよい。
【0037】
前胴5と後胴6は屈曲自在かつ揺動自在に係合されるものとしたが、前胴5と後胴6は互いに連結されるものであってもよく、角度に制限なく回動自在であってもよい。
【0038】
嵌挿部4aは、断面形状を被嵌挿接合胴部4bより角数の多い多角形状に形成するものとしたが、円形に近い形状に形成してもよい。
【0039】
姿勢制御手段7はジャッキ11を備えて構成されるものとしたが、ジャッキ11以外の他の駆動装置を備えて構成してもよい。
【0040】
そして、姿勢制御手段7を構成するジャッキ11は油圧式に限るものではなく、機械式であってもよく他の形式であってもよい。
【0041】
また、ジャッキ11は後胴6に軸方向スライド自在に連結されるものとしたが、前胴5に軸方向スライド自在に連結するものとしてもよく、前胴5と後胴6の双方に軸方向スライド自在に連結するものとしてもよい。またさらに、図11に示すように、ジャッキ11の両端を球面台座60を介して前胴5と後胴6とにそれぞれ設け、後胴6に対する前胴5の軸回りの回動を許容すると共に、前胴5と後胴6の屈曲又は伸縮を許容するように構成してもよい。
【0042】
元押し型のトンネル掘削機1について述べたが、トンネル掘削機1は後胴5に推進ジャッキ(図示せず)を有し、後胴5内でトンネル壁を構築すると共に推進ジャッキでトンネル壁を後方に押し、トンネル壁に反力を得て掘進力を得るシールド掘進機(図示せず)であってもよい。
【0043】
また、トンネル掘削機1は、セグメント組立と掘削を同時に行うことが可能なように前胴と後胴とを軸方向に伸縮自在に連結した複胴式同時掘進シールドであってもよい。この場合、図10に示すように複胴式同時掘進シールド50は、前胴51と後胴52との軸回りの回動を許容すると共に、前胴51と後胴52との間に姿勢制御手段53たるジャッキ54を設けて構成するとよい。カッタ部55の駆動装置(図示せず)にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴51にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように姿勢制御手段53を制御することで前胴51にかかるローリング力をほぼ完全に打ち消すことができ、容易にローリングを抑制又は防止できる。トンネル掘削機1は方向制御付推進機であってもよい。
【0044】
次にトンネル掘削機1が後胴6ごとローリングしてしまった場合のローリング修正について述べる。
【0045】
図3に示すように、トンネル掘削機1を掘進させているとき、ローリングが発生したら、まず、前胴5をローリング方向と逆の方向に回動させるようにそれぞれのジャッキ11を伸縮させる。これにより、図4に示すように前胴5の姿勢が元に戻る。このとき、被嵌挿接合胴部4bが断面矩形状に形成されると共に、嵌挿部4aが被嵌挿接合胴部4bのそれぞれの辺18に角部8を近接させて被嵌挿接合胴部4b内に収容される断面八角形状に形成されているため、前胴5と後胴6は互いに干渉することなく円滑に揺動できる。また、後胴6はセグメントに連結又はシールドジャッキを介して接触されているため、前胴5を確実に揺動することができる。
【0046】
この後、ジャッキ11の伸縮を自由とし、トンネル掘削機1を元押掘進させることで後胴6は地山に形成された前胴5の掘進軌跡に沿って回動され、元の姿勢に戻ることとなる。
【0047】
姿勢制御手段7の制御に変更を加えた他の実施の形態について述べる。なお、負荷検出手段22と制御装置23を他のものに変更する以外は上述と同様である。上述と同様の構成については説明を省き、同符号を付す。
【0048】
図12に示すように、前胴5と後胴6とのそれぞれにローリングを検出するローリング計65、66を設け、これらローリング計65、66と姿勢制御手段7に、前胴5と後胴6とを水平にするように姿勢制御手段7を制御する制御装置67を接続する。ローリング計65、66は、前胴5又は後胴6の水平度を検出する傾斜計からなる。制御装置67は、所定時間ごとにローリング計65、66からローリング情報(前胴5と後胴6の傾斜角度)を取得し、ローリングが検出されたとき姿勢制御手段7を制御するように構成されている。
【0049】
次にローリング計65、66と制御装置67を用いたローリング抑制方法について述べる。
【0050】
前胴5側のローリング計65でローリングを検出したとき、制御装置67はローリングを戻すように姿勢制御手段7たるジャッキ11を伸縮させ、前胴5を水平にする。また、前胴5側と後胴6側のローリング計65、66でそれぞれローリングを検出したとき、制御装置67はジャッキ11を伸縮させて前胴5のローリングを解消したのち、ジャッキ11の伸縮を自由とし、トンネル掘削機68を元押掘進させることで後胴6を地山に形成された前胴5の掘進軌跡に沿って回動させて後胴6のローリングを解消する。ローリング計65、66で逐次ローリングを検出しながらジャッキ11の制御ができるため、簡単かつ迅速にローリングを解消できる。そして、ローリング計の精度を高いものとすることで実質的にローリングを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す推進工法用トンネル掘削機の側面断面図である。
【図2】前胴と後胴と姿勢制御手段の関係を示す正面説明図である。
【図3】ローリングしたトンネル掘削機の正面説明図である。
【図4】ローリング修正中のトンネル掘削機の正面説明図である。
【図5】ローリング抑制中のトンネル掘削機の斜視説明図である。
【図6】カッタの揺動方向を示すトンネル掘削機の正面説明図である。
【図7】前胴に作用するローリング力の方向を示すトンネル掘削機の正面説明図である。
【図8】ローリング抑制中のトンネル掘削機の正面断面説明図である。
【図9】トンネル掘削機のローリング抑制装置を示す回路図である。
【図10】他の実施の形態を示すトンネル掘削機の側面説明図である。
【図11】他の実施の形態を示すトンネル掘削機の側面説明図である。
【図12】他の実施の形態を示す回路図である。
【図13】従来のローリング修正方法を示すシールド掘進機の正面説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 トンネル掘削機
3 カッタ部
4 接合胴部
4a 嵌挿部
4b 被嵌挿接合胴部
5 前胴
6 後胴
7 姿勢制御手段
11 ジャッキ
21 駆動装置
22 負荷検出手段
23 制御装置
65 ローリング計
66 ローリング計
67 制御装置
68 トンネル掘削機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設けたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
上記前胴と後胴とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴と後胴との接合胴部の一方に他方の接合胴部内に嵌挿結合される嵌挿部を形成し、該嵌挿部の断面形状を被嵌挿接合胴部より角数の多い多角形状あるいは円形に近い形状に形成した請求項1記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
上記被嵌挿接合胴部が断面矩形状に形成されると共に、上記嵌挿部が上記被嵌挿接合胴部のそれぞれの辺に角部を近接させて被嵌挿接合胴部内に収容される断面八角形状に形成され、上記角部に臨む辺の一方を上記被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置まで嵌挿部を被嵌挿接合胴部に対して揺動可能とした請求項2記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
カッタ部を駆動する駆動装置にカッタ駆動時の負荷を検出する負荷検出手段を設け、該負荷検出手段と上記姿勢制御手段に、負荷検出手段で検出した負荷値より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続した請求項1〜3いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、これらローリング計と上記姿勢制御手段に、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続した請求項1〜3いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
姿勢制御手段は、一端が前胴に、他端が後胴に連結されたジャッキを備えて構成され、該ジャッキは、少なくとも一端又は他端の一方を前胴又は後胴の軸方向にスライド自在に連結される請求項1〜5いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング抑制方法において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設け、上記カッタ部を回転又は揺動させて地山を掘削したとき前胴にかかるローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段で前胴に回転力を付与させることを特徴とするトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【請求項8】
掘削時にカッタ部の駆動装置にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する請求項7記載のトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【請求項9】
前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する請求項7記載のトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【請求項1】
地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設けたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
上記前胴と後胴とをそれぞれ断面非円形状の筒体によって形成すると共に、前胴と後胴との接合胴部の一方に他方の接合胴部内に嵌挿結合される嵌挿部を形成し、該嵌挿部の断面形状を被嵌挿接合胴部より角数の多い多角形状あるいは円形に近い形状に形成した請求項1記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
上記被嵌挿接合胴部が断面矩形状に形成されると共に、上記嵌挿部が上記被嵌挿接合胴部のそれぞれの辺に角部を近接させて被嵌挿接合胴部内に収容される断面八角形状に形成され、上記角部に臨む辺の一方を上記被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置から他方を被嵌挿接合胴部の辺に当接させる位置まで嵌挿部を被嵌挿接合胴部に対して揺動可能とした請求項2記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
カッタ部を駆動する駆動装置にカッタ駆動時の負荷を検出する負荷検出手段を設け、該負荷検出手段と上記姿勢制御手段に、負荷検出手段で検出した負荷値より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続した請求項1〜3いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、これらローリング計と上記姿勢制御手段に、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する制御装置を接続した請求項1〜3いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
姿勢制御手段は、一端が前胴に、他端が後胴に連結されたジャッキを備えて構成され、該ジャッキは、少なくとも一端又は他端の一方を前胴又は後胴の軸方向にスライド自在に連結される請求項1〜5いずれかに記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
地山側に臨んだ先端部にカッタ部を有する前胴と、該前胴に屈曲自在又は伸縮自在に係合乃至連結される後胴とを備えたトンネル掘削機のローリング抑制方法において、上記前胴と後胴とを軸回りに揺動乃至回動自在に係合乃至連結すると共に、前胴と後胴との間に前胴の軸回りへの回動に対して後胴より反力を与えて前胴のローリングを規制乃至抑制する姿勢制御手段を設け、上記カッタ部を回転又は揺動させて地山を掘削したとき前胴にかかるローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段で前胴に回転力を付与させることを特徴とするトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【請求項8】
掘削時にカッタ部の駆動装置にかかる負荷を検出し、この負荷より前胴にかかるローリング力を求め、そのローリング力を打ち消すように上記姿勢制御手段を制御する請求項7記載のトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【請求項9】
前胴と後胴とのそれぞれにローリングを検出するローリング計を設け、前胴と後胴とを水平にするように上記姿勢制御手段を制御する請求項7記載のトンネル掘削機のローリング抑制方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−104840(P2006−104840A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295020(P2004−295020)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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