説明

トー角・キャンバー角可変機構

【課題】 トー角とキャンバー角の変更を簡単な構造で可能とするトー角・キャンバー角可変機構を提供する。
【解決手段】 ホイール6の回転中心と前記ホイール6の外周に設置されたタイヤ7の幅を二等分する面との交点をホイール中心Cとして、ホイール6のトー角及びキャンバー角を変更可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のトー角・キャンバー角を簡単に変更できるようにした機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータで各輪個別にキャンバー及びトーを制御することができるようにするために、車輪を支持するアクスル32を車体に対し1点で支持するボールジョイント33と、アクスル32におけるボールジョイント33による支持点の上側下側であり且つ車両前後方向の2点を支持し、この2点の支持点を、車幅方向に個別に変位させる第1及び第2のアクチュエータ34,35と、前記2点の支持点を車幅方向において相対的に変位させることで車輪のトーを変化させ、及び/又は前記2点の支持点を車幅方向において同一方向に変位させることで車輪のキャンバーを変化させるように、第1及び第2のアクチュエータ34,35を制御する制御手段とを備えたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−122932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の発明では、一つの車輪に対して二つのアクチュエータを使用してトー角とキャンバー角を変更しているので、構造が複雑で、重量が重くなるとともに、高いコストが必要となる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであって、トー角とキャンバー角の変更を簡単な構造で可能とするトー角・キャンバー角可変機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能なトー角・キャンバー角可変機構において、前記ホイールの回転中心と前記ホイールの外周に設置されたタイヤの幅を二等分する面との交点をホイール中心として、前記ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能であることを特徴とする。
【0006】
また、前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記ホイール中心を通る車体前後方向の軸線を中心に前記ホイールを回動可能なキャンバー角可変手段と、前記ホイール中心を通る車体上下方向の軸線を中心にホイールを回動可能なトー角可変手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記キャンバー角可変手段を車体に固着する固着手段と、一端部で前記キャンバー角可変手段の出力軸に接続し、他端部で前記トー角可変手段を支持する第一アームと、一端部で前記トー角可変手段の出力軸に接続し、他端部でホイールを相対回転可能に支持するホイール支持部材に結合する第二アームとを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記トー角可変手段を車体に固着する固着手段と、一端部で前記トー角可変手段の出力軸に接続し、他端部で前記キャンバー角可変手段を支持する第一アームと、一端部で前記キャンバー角可変手段の出力軸に接続し、他端部でホイールを相対回転可能に支持するホイール支持部材に結合する第二アームとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
それによって、本発明は、ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能なトー角・キャンバー角可変機構において、前記ホイールの回転中心と前記ホイールの外周に設置されたタイヤの幅を二等分する面との交点をホイール中心として、前記ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能なので、トー角とキャンバー角の変更を簡単な構造で可能とすることができる。また、ホイール中心でトー角とキャンバー角の変更できるので、精度が高くなる。また、モータにより作動可能なので、油圧のアクチュエータに比べてコンパクトになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はトー角・キャンバー角可変機構Sの本実施形態の側面図、図2はトー角・キャンバー角可変機構Sの本実施形態の断面図を示す。図1及び図2において、Sはトー角・キャンバー角可変機構、Tは車輪駆動伝達部、Aはトー角・キャンバー角可変部、Bは軸受、1は車体、2は駆動手段、3は第一車軸、4は第二車軸、5はユニバーサルジョイント、6はホイール、7はタイヤ、10は固着手段、11はブラケット、12はキャンバー角可変手段の一例としてのキャンバー角可変モータ、12aは本体、12bは出力軸、13は第一アーム、13aは一端部、13bは他端部、14はトー角可変手段の一例としてのトー角可変モータ、14aは本体、14bは出力軸、15は第二アーム、15aは一端部、15bは他端部、16はホイール支持部材である。
【0011】
トー角・キャンバー角可変機構Sは車輪駆動伝達部Tとトー角・キャンバー角可変部Aとを有し、その間にボールベアリング等の軸受Bを有する。車輪駆動伝達部Tは、駆動手段2、第一車軸3、第二車軸4、ユニバーサルジョイント5、ホイール6、タイヤ7を有し、車体1の駆動手段2から車軸3,4及びユニバーサルジョイント5を介してホイール6及びタイヤ7までの回転を伝達する機構である。車軸3,4は、車体側の第一車軸3とホイール側の第二車軸4に分割され、ユニバーサルジョイント5により連結される。ホイール6は、第二車軸4に接続され、ホイール6の外周にはタイヤ7が設置されている。
【0012】
トー角・キャンバー角可変部Aは、固着手段10、ブラケット11、キャンバー角可変モータ12、第一アーム13、トー角可変モータ14、第二アーム15、ホイール支持部材16を有し、図示しないバッテリ等の動力手段でキャンバー角可変モータ12及びトー角可変モータ14を作動させることによりタイヤ7のトー角・キャンバー角を変更する部分である。
【0013】
ブラケット11は、一端を固着手段10により車体に結合され、他端にキャンバー角可変モータ12を支持する部材である。キャンバー角可変モータ12は、本体12aをブラケットに支持され、出力軸12bを第一アーム13に結合する。出力軸12bの延長線はホイール中心C及びユニバーサルジョイント5の中心を通るように設置する。
【0014】
第一アーム13は、一端部13aをキャンバー角可変モータ12の出力軸12bと結合し、他端部13bの上面でトー角可変モータ14を載置すると共に、該他端部にはトー角可変モータ14の出力軸を貫通させる穴を有し、キャンバー角可変モータ12の出力軸を中心に回転可能な部材である。
【0015】
トー角可変モータ14は、本体14aが第一アーム13の他端部13b上面に載置されると共に、出力軸14bが第一アーム13を貫通して第二アーム15の一端部15aに結合している部材であり、出力軸14bの延長線はホイール中心C及びユニバーサルジョイント5の中心を通るように設置する。
【0016】
第二アーム15は、一端部15aをトー角可変モータ14の出力軸14bに、他端部15bをホイール支持部材16にそれぞれ結合し、トー角可変モータ14の出力軸14bを中心に回転可能な部材である。
【0017】
なお、キャンバー角可変モータ12の出力軸12bの延長線と、トー角可変モータ14の出力軸14bの延長線との交点がホイール中心Cに配置されるように設定する。また、ホイール中心Cはタイヤ7の幅の中心に配置する。
【0018】
続いて、この実施形態の作動を説明する。作動は図示しない入力手段を操作することで行われる。入力手段を操作すると、図示しない制御手段によりキャンバー角可変モータ12とトー角可変モータ14が作動し、タイヤ7のトー角及びキャンバー角を変更することができる。
【0019】
図3はトー角・キャンバー角可変部Aのブロック図を示す。Iは入力手段、Cは制御手段、Aはトー角・キャンバー角可変部、Sは検出手段を示す。まず、入力手段Iを操作することで、制御手段Cに信号が入力され、制御手段Cから入力手段Iの操作量に応じた信号が出力され、トー角・キャンバー角可変部Aを制御し、その制御量であるキャンバー角可変モータ12とトー角可変モータ14の回転角度や回転角速度等を検出手段Sで検出し、制御手段Cに検出値を出力する。制御手段Cは入力手段Iの入力信号と検出手段Sの検出値を比較してトー角・キャンバー角可変部Aを制御する。
【0020】
図4はキャンバー角可変モータ12を作動させた時の状態を示す図である。キャンバー角可変モータ12を作動させると、キャンバー角可変モータ12の出力軸12bが回転し、該出力軸12bに結合した第一アーム13が、キャンバー角可変モータ12の出力軸12bを中心に回転し、それに伴いトー角可変モータ14、第二アーム15、ホイール支持手段16、ホイール6及びタイヤ7もキャンバー角可変モータ12の出力軸12bの延長線の周りに回転する。このようにキャンバー角を変更することができるようになる。
【0021】
図5はトー角可変モータ14を作動させた時の状態を示す上面図である。トー角可変モータ14を作動させると、トー角可変モータ14の出力軸14bに結合した第二アーム15が、トー角可変モータ14の出力軸14bを中心に回転し、それに伴いホイール支持手段16、ホイール6及びタイヤ7もトー角可変モータ14の出力軸14bの延長線の周りに回転する。このようにトー角を変更することができる。
【0022】
また、キャンバー角可変モータ12及びトー角可変モータ14を同時に作動させることで、キャンバー角及びトー角の両方を変更することができる。
【0023】
このように本実施形態の構造により、トー角とキャンバー角の変更を簡単な構造で可能とすることができ、ホイール中心でトー角とキャンバー角の変更できるので、精度が高くなる。また、モータにより作動可能なので、油圧のアクチュエータに比べてコンパクトになる。
【0024】
さらに、他の実施形態として、トー角可変モータ14を固着手段10及びブラケット11により車体1に固定し、トー角可変モータ14の出力軸14aを第一アーム13の一端部13aに接続し、第一アーム13の他端部13bでキャンバー角可変モータ12を支持し、第二アーム15の一端部15aをキャンバー角可変モータ12の出力軸12bに接続し、他端部15bをホイール支持部材16に結合することで、第二アーム15の回動に伴いキャンバー角可変モータ12の軸線を回動させる構造とすることも可能である。
【0025】
また、本実施形態では車軸動力伝達方式の車両を用いて説明したが、トー角・キャンバー角可変機構Sはインホイールモータ方式の車両に用いても良い。
【0026】
さらに、本実施形態のトー角・キャンバー角可変機構Sは、ホイールアライメント設定時にのみ使用するのではなく、車両走行時の走行制御装置や旋回時の操舵装置として使用可能にすることができる。その場合、本実施形態の入力手段Iとして車両の走行状態検出手段やステアリング等の操舵装置を適用し、トー角・キャンバー角可変機構Sを該走行状態検出手段や操舵装置と連動して作動するように制御手段Cで制御する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す図
【図2】本発明の一実施形態の断面図
【図3】本発明の一実施形態のブロック図
【図4】本発明の一実施形態の作動状態を示す図
【図5】本発明の一実施形態の作動状態を示す図
【図6】従来の技術を示す図
【符号の説明】
【0028】
S…トー角・キャンバー角可変機構、T…車輪駆動伝達部、A…トー角・キャンバー角可変部、B…軸受、1…車体、2…駆動手段、3…第一車軸、4…第二車軸、5…ユニバーサルジョイント、6…ホイール、7…タイヤ、10…固着手段、11…ブラケット、12…キャンバー角可変手段の一例としてのキャンバー角可変モータ、12a…本体、12b…出力軸、13…第一アーム、13a…一端部、13b…他端部、14…トー角可変手段の一例としてのトー角可変モータ、14a…本体、14b…出力軸、15…第二アーム、15a…一端部、15b…他端部、16…ホイール支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能なトー角・キャンバー角可変機構において、前記ホイールの回転中心と前記ホイールの外周に設置されたタイヤの幅を二等分する面との交点をホイール中心として、前記ホイールのトー角及びキャンバー角を変更可能であることを特徴とするトー角・キャンバー角可変機構。
【請求項2】
前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記ホイール中心を通る車体前後方向の軸線を中心に前記ホイールを回動可能なキャンバー角可変手段と、前記ホイール中心を通る車体上下方向の軸線を中心にホイールを回動可能なトー角可変手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のトー角・キャンバー角可変機構。
【請求項3】
前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記キャンバー角可変手段を車体に固着する固着手段と、一端部で前記キャンバー角可変手段の出力軸に接続し、他端部で前記トー角可変手段を支持する第一アームと、一端部で前記トー角可変手段の出力軸に接続し、他端部でホイールを相対回転可能に支持するホイール支持部材に結合する第二アームとを有することを特徴とする請求項2に記載のトー角・キャンバー角可変機構。
【請求項4】
前記トー角・キャンバー角可変機構は、前記トー角可変手段を車体に固着する固着手段と、一端部で前記トー角可変手段の出力軸に接続し、他端部で前記キャンバー角可変手段を支持する第一アームと、一端部で前記キャンバー角可変手段の出力軸に接続し、他端部でホイールを相対回転可能に支持するホイール支持部材に結合する第二アームとを有することを特徴とする請求項2に記載のトー角・キャンバー角可変機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−112186(P2007−112186A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302827(P2005−302827)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】