説明

ドアボトムのシール装置

【課題】閉鎖状態のドアの下面と床面間の間隔がドアの幅方向中央部で小さく両端に至るに従って次第に大きくなるような場合でも、ドアの下面と床面間をドアの幅方向全体にわたって密封することができるようにしたドアボトムのシール装置を提供する。
【解決手段】ドア3の閉鎖時に、扉枠の縦枠内面に対する出没子34の当接により板ばね31を下向きに撓ませ、シール枠と共に下降動する弾性シール41を床面に接触させる。シール枠と弾性シール41の対向面間に、その弾性シール41が床面に接地する状態でシール枠のみの下降動を可能とするクリアランス部44を設け、そのクリアランス部44の両端部にスペーサ45を組み込んでシール枠と弾性シール41の両端部の相対的な移動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアの閉鎖状態において、そのドアの下面と床面間を密封するドアボトムのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖状態とされたドアの下面と床面間を密封するシール装置として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。このシール装置においては、ドアの下部に取付けられた案内枠内に弾性シールを下部に有するシール枠を昇降自在に設け、そのシール枠における長さ方向の中央上部に板ばねの長さ方向中央部を連結し、その板ばねの一端部を案内枠に固定し、他端部に連結された出没子をドアの吊元側端面から外部に突出させ、ドアの閉鎖時に、扉枠の縦枠内面に対する出没子の当接により板ばねを下向きに撓ませ、案内枠と共に下降動する弾性シールを床面に接触させてドアの下面と床面間を密封するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−13947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のドアボトムのシール装置においては、弾性シールが全長にわたってシール枠に非可動の支持とされ、そのシール枠の長さ方向中央部に板ばねの長さ方向の中央部が連結されているため、板ばねが弾性シールを床面に押し付ける押圧力は、そのシール部材の長さ方向中央部で大きく、両端に至るに従って次第に小さくなり、弾性シールの両端部を板ばねの弾性力のみで充分に弾性変形させることができない。
【0005】
このため、床面が閉鎖状態のドアの幅方向中央部で盛り上がりが生じるように反りが生じている場合のように、ドアの下面と床面間の間隔が中央部で小さく両端に至るに従って大きくなっている場合、弾性シールを全長にわたって床面に弾性接触させることができず、弾性シールの長さ方向の両端部で床面との間に隙間が生じ、ドアの左右幅方向の全体にわたって完全に密封することができないという問題があった。
【0006】
この発明の課題は、閉鎖状態のドアの下面と床面間の間隔がドアの幅方向中央部で小さく両端に至るに従って次第に大きくなるような場合でも、ドアの下面と床面間をドアの幅方向全体にわたって密封することができるようにしたドアボトムのシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明においては、扉枠の出入り口を開閉する開閉可能なドアの下部に、そのドアの左右幅方向に長く延びる断面コの字形の案内枠を、その開口部を下向きにして取付け、その案内枠内にシール枠を昇降自在に組込み、そのシール枠の下面長さ方向に沿って弾性シールを取付け、前記案内枠に一端部が固定された板ばねの長さ方向の中央部を前記シール枠における長さ方向の中央上部に連結し、板ばねの他端部に連結された出没子をドアの吊元側端面から外部に突出させ、ドアの閉鎖時に、扉枠の縦枠内面に対する出没子の当接により板ばねを下向きに撓ませ、シール枠と共に下降動する弾性シールを床面に接触させてドアボトムをシールするドアボトムのシール装置において、前記シール枠と弾性シールの対向面間に、その弾性シールが床面に接地する状態でシール枠のみの下降動を可能とするクリアランス部を設け、そのクリアランス部の両端部にスペーサを組み込んでシール枠と弾性シールの両端部の相対的な移動を防止するようにした構成を採用したのである。
【0008】
上記の構成からなるドアボトムのシール装置において、ドアを閉鎖方向に揺動すると、ドアが閉鎖される少し手前の状態で扉枠の縦枠内面に出没子が当接し、その当接状態からドアが閉鎖方向にさらに揺動されることにより出没子が押し込まれて板ばねが下向きに撓み、シール枠が下降する。
【0009】
このとき、閉鎖状態のドアの下面と床面との対向間隔がドアの幅方向全長にわたってほぼ一定である場合、シール枠の下降により、そのシール枠の下部に支持された弾性シールが下面の全長にわたって床面と当接する。その当接による弾性シールの停止状態から板ばねは弾性変形してシール枠を押し下げ、その板ばねの押圧力により弾性シールは下面全長にわたって床面に強く押し付けられて、ドアの下面と床面間がシールされる。
【0010】
一方、床面が閉鎖状態のドアの幅方向中央部で盛り上がりが生じる場合のように、ドアの下面と床面間の間隔がドアの幅方向中央部で小さく、両端部に至るに従って次第に大きくなるような場合、シール枠の下降により、弾性シールはその長さ方向の中央部が両端部より先に床面に接触して停止状態とされ、その状態からシール枠がさらに下降する。
【0011】
その時、シール枠と弾性シールはスペーサの組込みによって長さ方向の両端部が相対的に移動するのが防止されているため、シール枠の下降により弾性シールの両端部が押し下げられることになり、弾性シールは床面に沿うよう長さ方向に弾性変形する。
【0012】
弾性シールの長さ方向の弾性変形により、シール枠と弾性シールの長さ方向の中央部間に形成されたクリアランス部が次第に小さくなってついにはクリアランス部がなくなり、そのクリアランス部がない状態からシール枠がさらに下降することにより、弾性シールは高さ方向にも弾性変形して床面と強く弾性接触し、床面に対する弾性接触部位が長さ方向の中央部から両端部に波及して、ついには、弾性シールは全長にわたって床面と接触し、ドアの下面と床面間を全体にわたってシールする。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、上記のように、シール枠と弾性シールの対向面間に、その弾性シールが床面に接地する状態でシール枠のみの下降動を可能とするクリアランス部を設け、そのクリアランス部の両端部にスペーサを組み込んでシール枠と弾性シールの両端部の相対的な移動を防止するようにしたので、ドアの下面と床面間の間隔がドアの幅方向中央部で小さく、両端部に至るに従って次第に大きくなるような場合でも、弾性シールを長さ方向の全長にわたって床面に弾性接触させることができ、ドアの下面と床面間を確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係るドアボトムのシール装置の実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1のドア吊元側の部分を拡大して示す断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図1のドア戸先側の部分を拡大して示す断面図
【図6】ドアの下面と床面間のシール状態を示す縦断面図
【図7】(7A)、(7B)は、ドアボトムのシール装置の他の実施の形態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図6は、扉枠1に形成された出入り口2を開閉可能に設けられたドア3によって閉鎖している状態を示し、図1は、そのドア3の開放状態を示している。図3および図4に示すように、ドア3の下部に設けられた下桟4には、ドア3の幅方向に長く延びる取付孔5が形成され、その取付孔5内に案内枠11が嵌め合わされている。
【0016】
案内枠11は、断面がコの字形とされ、対向する一対の側板12のうち、一方の側板12の下端部には外向きに取付片13が形成されている。この案内枠11は、開口部を下向きとして取付孔5内に嵌合され、下桟4の下面に衝合する取付片13が下桟4にねじ止めされている。
【0017】
案内枠11は、ドア3の幅寸法にほぼ等しい長さとされ、その対向一対の側板12の内面には案内枠11の両端方向に長く延びる一対のリブ14が対向位置に形成されており、その一対のリブ14の上側の空間が上部案内溝15とされ、下側の空間が下部案内溝16とされている。
【0018】
下部案内溝16内には、その案内枠11とほぼ等しい長さのシール枠21が組み込まれている。シール枠21は、断面形状がH形とされて対向する一対の側板22の上部間に板ばね嵌合溝23が形成され、かつ、一対の側板22の下部間にシール取付溝24が設けられている。
【0019】
図1に示すように、板ばね嵌合溝23内には、板ばね31の長さ方向中央部が挿入され、その中央部がシール枠21に連結されている。板ばね31はドア3の幅方向に長く延びて両端部が案内枠11の上部案内溝15内に位置し、ドア3の戸先側に位置する一端部には、図5に示すように、固定座32が取り付けられ、その固定座32が案内枠11に連結されている。
【0020】
図2に示すように、板ばね31の他端部には連結座33が取り付けられ、その連結座33に出没子34が連結されている。出没子34は、連結座33に一端部が連結されたねじ軸35と、そのねじ軸35にねじ係合された調節筒36とからなり、その調節筒36がドア3の吊元側端面より外方に突出し、その突出部を押し込むことにより、板ばね31の中央部が下方に撓み、シール枠21が下降して、そのシール枠21の下部に連結された弾性シール41が床面Wに弾性接触するようになっている。
【0021】
ここで、上記ねじ軸35には、回り止めピース37と、その回り止めピース37を調節筒36に向けて付勢するスプリング38とが嵌合され、その回り止めピース37は上部案内溝15の断面形状と同形状とされて、その上部案内溝15に対する嵌め合いにより回り止めされており、上記回り止めピース37に形成された突起39と調節筒36の端面に設けられた円弧状の係合凹部40の係合によって調節筒36は回り止めされている。
【0022】
図1に示すように、弾性シール41は、ゴムの成形品とされて弾性を有し、シール枠21とほぼ等しい長さとされている。なお、ゴムに代えて軟質合成樹脂の成形品としてもよい。
【0023】
図3および図4に示すように、弾性シール41は、両側方に張り出すフランジ42を上部に有し、下部には薄肉の柔軟性を有するチューブ43が形成されている。
【0024】
弾性シール41は、その上部がシール枠21のシール取付溝24内に挿入されている。ここで、シール取付溝24の下部開口には弾性シール41のフランジ42と上下で対向する一対の内向き突条25が形成され、その内向き突条25によって弾性シール41はシール取付溝24から下方に抜け出るのが防止される。上記フランジ42が内向き突条25で支持される弾性シール41の抜け止め状態で、弾性シール41の上面とシール枠21の一対の側板22間にわたる水平板部26の下面間にクリアランス部44が形成され、そのクリアランス部44の範囲内においてシール枠21と弾性シール41は上下方向に相対的に移動し得るようになっている。
【0025】
図2、図3および図5に示すように、クリアランス部44の両端部には板状のスペーサ45が組み込まれ、そのスペーサ45によってシール枠21と弾性シール41の両端部が相対的に上下移動するのが防止されている。
【0026】
なお、図2および図3に示す27は、消音ゴムを示し、シール枠21が板ばね31の復元弾性により急激に上昇した際に、その消音ゴム27をリブ14に衝突させて、異音が発生するのを防止するようにしている。
【0027】
実施の形態で示すドアボトムのシール装置は上記の構造からなる。いま、図2に示すドア3の開放状態において、そのドア3を閉鎖方向に揺動すると、図6に示す扉枠1の縦枠1a内面に出没子34の先端が当接し、その当接状態からドア3が閉鎖方向にさらに揺動されることにより、出没子34が縦枠1aで押し込まれて、板ばね31が下向きに撓み、シール枠21が下降する。
【0028】
このとき、閉鎖状態のドア3の下面と床面Wとの対向間隔がドアの幅方向全長にわたってほぼ一定である場合、シール枠21の下降により、そのシール枠21の下部に支持された弾性シール41が下面の全長にわたって床面Wと当接する。その当接による弾性シール41の停止状態から板ばね31が弾性変形してシール枠21を押し下げ、その板ばね31の押圧力により弾性シール41が、図6に示すように、下面の全長にわたって床面Wに強く押し付けられて、ドア3の下面と床面W間がシールされる。
【0029】
一方、床面Wが閉鎖状態のドア3の幅方向中央部で盛り上がりが生じる場合のように、ドア3の下面と床面W間の間隔がドア3の幅方向中央部で小さく、両端部に至るに従って次第に大きくなるような場合、シール枠21の下降により、弾性シール41はその長さ方向の中央部が両端部より先に床面Wに接触して停止状態とされ、その状態からシール枠21が板ばね31の押圧によりさらに下降する。
【0030】
この時、シール枠21と弾性シール41はスペーサ45の組込みによって長さ方向の両端部が相対的に移動するのが防止されているため、シール枠21の下降により弾性シール41の両端部はシール枠21と共に下降動することになり、弾性シール41は床面Wに沿うよう長さ方向に弾性変形する。
【0031】
また、シール枠21の下降により、そのシール枠21と弾性シール41の長さ方向の中央部間に形成されたクリアランス部44も小さくなってついには、図4の鎖線で示すように、弾性シール41の上面がシール枠21の水平板部26の下面に当接してクリアランス部44がなくなり、そのクリアランス部44がない状態からシール枠21がさらに下降することにより、弾性シール41は高さ方向にも弾性変形して床面Wと強く弾性接触し、床面Wに対する弾性接触部位が長さ方向の中央部から両端部に波及して、ついには、弾性シール41は全長にわたって床面Wと弾性接触し、ドア3の下面と床面W間が全体にわたってシールされる。
【0032】
このように、実施の形態では、シール枠21の水平板部26の下面と弾性シール41の対向面間に、その弾性シール41が床面Wに接地する状態でシール枠21のみの下降動を可能とするクリアランス部44を設け、そのクリアランス部44の両端部にスペーサ45を組み込んでシール枠21と弾性シール41の両端部の相対的な移動を防止するようにしたので、ドア3の下面と床面W間の間隔がドア3の幅方向中央部で小さく、両端部に至るに従って次第に大きくなるような場合でも、弾性シール41を長さ方向の全長にわたって床面Wに弾性接触させることができ、ドア3の下面と床面W間を確実にシールすることができる。
【0033】
ここで、床面Wが閉鎖状態のドア3の幅方向中央部で窪み、ドア3の下面と床面W間の隙間がドア3の幅方向中央部で大きく、両端に至るに従って次第に小さくなるような場合、出没子34の押し込みにより板ばね31が下向きに撓み、その板ばね31によりシール枠21が押し下げられると、弾性シール41は、下面の両端部が床面Wと接触して停止し、その状態からシール枠21がさらに押し下げられることにより、弾性シール41の下部に設けられたチューブ43の両端部が弾性変形し、その変形が弾性シール41の長さ方向に波及して、下面の全体が床面Wと接触する。その接触によって、ドア3の下面と床面W間が全体にわたってシールされる。
【0034】
図1乃至図5に示す実施の形態では、ドア3の下桟4に取付孔5を形成して、その取付孔5に案内枠11を取付けるようにしたが、図7(7A)に示すように、ドア3の片面の下部に幅方向に延びる切欠部6を形成し、その切欠部6に案内枠11を嵌合し、ドア3の下面に衝合される取付け片13をドア3にねじ止めしてもよい。あるいは、図7(7B)に示すように、ドア3の片面の下部に案内枠11の取付け片13を有する側板12を衝合し、ドア3の下面に衝合される取付け片13をドア3にねじ止めしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 扉枠
1a 縦枠
2 出入り口
3 ドア
11 案内枠
21 シール枠
31 板ばね
34 出没子
41 弾性シール
43 チューブ
44 クリアランス部
45 スペーサ
W 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠の出入り口を開閉する開閉可能なドアの下部に、そのドアの左右幅方向に長く延びる断面コの字形の案内枠を、その開口部を下向きにして取付け、その案内枠内にシール枠を昇降自在に組込み、そのシール枠の下面長さ方向に沿って弾性シールを取付け、前記案内枠に一端部が固定された板ばねの長さ方向の中央部を前記シール枠における長さ方向の中央上部に連結し、板ばねの他端部に連結された出没子をドアの吊元側端面から外部に突出させ、ドアの閉鎖時に、扉枠の縦枠内面に対する出没子の当接により板ばねを下向きに撓ませ、シール枠と共に下降動する弾性シールを床面に接触させてドアボトムをシールするドアボトムのシール装置において、
前記シール枠と弾性シールの対向面間に、その弾性シールが床面に接地する状態でシール枠のみの下降動を可能とするクリアランス部を設け、そのクリアランス部の両端部にスペーサを組み込んでシール枠と弾性シールの両端部の相対的な移動を防止するようにしたことを特徴とするドアボトムのシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184630(P2012−184630A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50201(P2011−50201)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000131511)株式会社シブタニ (88)
【Fターム(参考)】