説明

ドアロック制御装置

【課題】防犯性を高めつつ、キー閉じ込め状態が発生した場合に、迅速にドアをアンロックすることができるドアロック制御装置を提供する。
【解決手段】車両のドアのロック又はアンロックを制御することが可能なドアロック制御装置において、ドア20がロック状態か否かを判定し、かつIDキー30が車両の車室内に存在するか否かを判定し、車両部材21、22が車両のユーザーであると認証するための操作がされたか否かを判定する。それぞれの判定の結果、ドア20が全てロック状態であり、かつIDキー30が車室内に存在し、かつ車両部材21、22の操作結果によりユーザー認証がされた場合は、ドア20をアンロックするよう制御する。また、ドア20がロック状態で、IDキー30が車室内にない場合には、ドア20のロックを継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内にキーを残したままドアがロックされるキー閉じ込め状態を防止できるドアロック制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キー閉じ込めのトラブルなどが発生した場合、ドアロック機構の解除を外部から遠隔操作することができるようにしたシステムが知られている。このシステムでは、自動車に無線信号受信手段を設け、管理会社にセキュリティ確認器を設けている。そして管理会社は、電話回線を通じて使用者から問い合わせを受けると、登録された確認事項の確認による使用者の特定を条件として自動車の無線信号受信手段にアンロック動作の駆動信号を送信させ、ドアロック機構を遠隔操作している。この構成により、自動車の車室内にエンジンキーやリモコンなどを閉じ込めてロックしてしまった場合でも、使用者であれば、電話回線網などの公衆通信網を利用することでアンロック動作させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また上述のキー閉じ込めのトラブルのように、何らかの理由でドアのキーが使用できない状況となった場合に、ドアノブを押したり引いたりする操作手順(入力順序及び入力回数)を履行することで、ドアロックを解除できる自動車のドアロック解除装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−324252号公報
【特許文献2】特開平01−310074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この上記特許文献1の技術では、次のような問題がある。例えば近くに公衆電話のない(及び携帯電話が使用できない)ような山奥などで、キーの閉じ込めを行ってしまった場合、すなわち公衆通信網が利用できないような場合は、上述の遠隔操作によってドアをアンロックすることができない。従ってこのような場合は、スペアキーを常に持ち歩いていない限り、ドアを迅速に開けることができない。
【0006】
また、特許文献2のような、車外のドアノブ操作を予め設定された操作手順で行う技術では、車両のユーザーが車両を駐車して離れている時に、第3者(つまり車両のユーザー以外)が長時間ドアノブ操作を繰り返し行うことで、いずれドアロックの解除方法が知られてしまう恐れもある。また、車両のユーザーがそのドアのアンロック操作を行っている際に、その操作手順を第3者に見られてドアロックの解除方法が知られてしまう恐れもある。その結果、車両のユーザーの許可無く、第3者に勝手にドアをアンロックされてしまうといった、防犯上の懸念がある。
【0007】
そこで本発明は上記問題に鑑み、防犯性を高めつつ、キー閉じ込め状態が発生した場合に、迅速にドアをアンロックすることができるドアロック制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、請求項1のドアロック制御装置は、車両のドアがロック状態において、ドアをロック又はアンロックすることが可能なキーが車両の車室内に存在すると判定し、かつ車両の車室外側に設けられた車両部材が操作されることによって車両のユーザーであると認証された場合は、ドアをアンロックするよう制御し、車両の車室内にキーが存在しないと判定された場合には、車両部材の操作に関わらず前記ドアのロック状態を継続するよう制御することすることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、ドアがロック状態で、キーが車室内にある場合に、車両部材の操作に基づいてユーザー認証を行うことで、迅速にドアをアンロックできると共に、第3者のような他人がユーザーの許可無く勝手にドアをアンロック状態にすることを抑制できる。
【0010】
また、ドアがロック状態で、キーが車室内にない場合には、ドアのロックを継続する。つまり、キー閉じ込めのような緊急時以外は、車両部材の操作によるユーザー認証を禁止することで、他人がドアをアンロックしてしまう可能性をより確実に防止することができ、防犯性をさらに高めることができる。すなわち、ユーザーがキーを車室外へ持ち出し、ドアをロックして駐車させる一般的な駐車の場合、車室内にキーが検出されないため、仮にユーザー認証が第3者に知られたとしてもドアのロックを継続させるため、防犯性を向上させることができる。
【0011】
従ってキー閉じ込め状態が発生した場合には、防犯性を高めつつ、迅速にドアをアンロックすることができる。
【0012】
また、請求項2のドアロック制御装置は、ドアの開閉データを入力するドア開閉データが入力され、その開閉データの入力により、ドアが全て閉状態であるか否かを判定し、ドアが全て閉状態であると判定した場合は、キーが車室内に存在するか否かに関わらず、ドアが全て閉状態とされてから一定時間経過した後に、ドアをロックするよう制御することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、キーが車室内に在るか否かに関わらず、ドアが閉状態となってから一定時間経過した場合は、ドアをロックすることで、他人が不用意に車室内へ侵入することを抑制することができ、防犯性をより高めることができる。
【0014】
また、請求項3のドアロック制御装置の予め決められた操作がされたか否かを検知するために用いられる車両部材は、ドアのドアノブ、ドアに設けられたスイッチ、又は開閉可動機能を有するドアミラーであることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、キーが車室内に閉じ込められていても、車両の車室外側のドアに設けられたドアノブやスイッチや、車両の車室外側のドア近くに設けられたドアミラーのような、車両に備わる機能をユーザー認証に利用することで、スペアキーを別途用意する等の手間をかけることなく、迅速にドアをアンロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態におけるドアロック制御システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係り、図1の照合ECUを詳細に説明したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係り、図2の照合ECUの記録部に用意された認証用テーブルである。
【図4】本発明の実施形態に係り、照合ECUにおいてドアの自動ロックを制御する制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における照合ECUの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るドアロック制御装置の実施形態を、図面に基づき説明する。図1はドアロック制御システム1の全体構成図を示す。
【0018】
以下、各構成要素の接続関係については、照合ECU(ECU:Electronic Control Unit)10を中心に説明する。
【0019】
照合ECU10(本発明のドアロック制御装置に相当する)は、車両のドア毎に用意されたボデーECU(FR、FL、RR、RL、トランク)11と、車載LAN(LAN:Local Area Network)40を介して所定の通信規格(例えばCAN(Controller Area Network)通信など)に基づき、それぞれ通信可能に接続されている。さらに照合ECU10は、車両の車室外側のドア(FR、FL、RR、RL、トランク)20の各ドアノブ21にそれぞれ備えられたタッチセンサ(非図示)及び、その各ドアノブ21の傍にそれぞれ備えられたトリガスイッチ22と、車載LAN40を介してそれぞれ通信可能に接続されている(ドアノブ21とトリガスイッチ22が、本発明の車両部材に相当する)。
【0020】
照合ECU10は、車室内やトランク(非図示)内等に複数設けられたチューナ31と通信線を介して通信可能に接続されている。また、照合ECU10は、車室内の中央付近やトランク内等に複数設置された車室内用発信機32と、各ドアのドアノブ21やリアバンパー中央部(非図示)等の付近に複数設置された車室外用発信機33とが通信線を介して通信可能に接続されている。
【0021】
また、ボデーECU(FR、FL、RR、RL、トランク)11はそれぞれ、ドア(FR、FL、RR、RL、トランク)20の内部に構成された、ドアのロック/アンロックを実行する駆動装置であるドアロックモータ(非図示)と通信線を介してそれぞれ接続されている。
【0022】
尚、ドアロック制御システム1には、車室内又は車室外へ持ち運び可能であってID(Identification:特定の個人を識別するための符号)通信を行うことのできるIDキー30がチューナ31、車室内用発信機32、及び車室外用発信機33と無線通信可能に構成されている。
【0023】
尚、上記説明で用いたFR、FL、RR、RLの略語について、本実施形態ではFR=Front Right(車両の前方右側)、FL=Front Left(車両の前方左側)、RR=Rear Right(車両の後方右側)、RR=Rear Left(車両の後方左側)の意味で用いている。
【0024】
次に各構成要素のそれぞれの機能について説明する。以下、特に断りのない限り、互いに機能が共通するボデーECU(FR、FL、RR、RL、トランク)11は、省略してボデーECU11と呼び、互いに機能が共通するドア(FR、FL、RR、RL、トランク)20は、省略してドア20と呼ぶ。
【0025】
照合ECU10は、IDキーのIDコード照合や位置確認を行うためのリクエスト信号を車室内用発信機32、又は車室外用発信機33を介して、IDキー30へ送信する。またチューナ31から受信したIDキー30のIDコードを判別・照合し、その結果に対応した命令信号をボデーECU11等の各ECUへ送信する。この照合ECU10の詳細については図2を用いて後述する。
【0026】
ボデーECU11は、ドアの開閉を検知するドアセンサーによりドア20の開閉状態を検知し、ドアのロック(施錠)状態/アンロック(解錠)状態を検知し、その検知結果を照合ECU10へ送信する。またボデーECU11は、照合ECU10より、ドア20をロック/アンロックするよう命令する命令信号を受信すると、ドアロックモータを駆動させて、ドア20のロック/アンロックを実行するように構成されている。
【0027】
IDキー30は、図示しないが無線通信機能を備えており、車室内用発信機32又は車室外用発信機33からリクエスト信号を受信すると、無線通信機能を用いてレスポンスコードを含むIDコードをチューナ31に送信する。また、このIDキー30は、無線通信機能によってドア20(トランク含む)をロック/アンロックを指示することができるスイッチ(非図示)が取り付けられており、そのスイッチの押下によってドア20のロック/アンロックの遠隔操作ができるよう構成されている。
【0028】
チューナ31は、無線通信機能を用いてIDキー30からのIDコードを受信し、照合ECU10へ送信する。
【0029】
車室内用発信機32は、照合ECU10から受信したリクエスト信号を、無線通信機能を用いて発信し、車室内(トランク内含む)に所定範囲(例えば発信機32から半径約0.5mの範囲)の検知領域を形成する。本実施形態では、この車室内用発信機32を複数車室内に設置することで、車室内の空間にIDキーが有るか否かを検知するように構成している。
【0030】
車室外用発信機33は、照合ECU10から受信したリクエスト信号を、無線通信機能を用いて発信し、車室外(トランク外含む)に所定範囲(例えば発信機33から半径約1.0mの範囲)の検知領域を形成する。
【0031】
尚、車室内用発信機32の検知領域及び車室外用発信機33の検知領域は、互いに交わらないように検知方向を制御(指向性を持たせる等)して発信している。
【0032】
ドアノブ21は、人が触れただけでドアをアンロックすることができるよう構成されている。具体的には図示しないタッチセンサがドアノブ21の裏面部に備えられている。そのタッチセンサは触れられたことを検知すると、その検知を示す検知信号を照合ECU10に送信する。詳細は後述するが照合ECU10はその検知信号に基づきドアをアンロックするよう制御する。
【0033】
トリガスイッチ22は、スイッチを押すとドアをロックすることができるように構成されている。具体的にはスイッチが押されたことを検知すると、その検知を示す検知信号を照合ECU10に送信する。詳細は後述するが照合ECU10はその検知信号に基づきドアをアンロックするよう制御する。
【0034】
また後述するが、ドアノブ21及びトリガスイッチ22は、予め決められた手順で操作されることによって、ドアをアンロックさせるためのパスワード入力用としても用いられ、そのパスワード操作に対応する検知信号(操作手順を示した操作データ)が、照合ECU10に送信される。
【0035】
次に図2の照合ECU10のブロック図を用いて、照合ECU10をより詳細に説明する。
【0036】
入出力インターフェース部10aは、車載LAN40を介してボデーECU11と通信するための通信ドライバや通信コントローラを有する通信I/F(通信インターフェース)や、チューナ31や車室内用発信機32又は車室外用発信機33と通信を行うためのI/O(入出力部)を主要とする構成部品を備えている。
【0037】
制御部10bは、周知のマイクロコンピュータとして構成されており、図示しないが処理内容を記述したプログラムを記録するメモリであるROM及びそのROMに記録されたプログラムを実行するCPU、さらに一時的に処理データを保存するRAM等が構成されている。
【0038】
記録部10cは、制御部10bと通信可能に接続されており、また記録部10c内には、認証用テーブルが用意されている。この認証用テーブルには、車両のユーザーのみが知っているドアノブ21やトリガスイッチ22の少なくとも何れか一方を用いた操作手順が予め登録されている。
【0039】
尚、ここで言うユーザーとは、車両の所有者、所有者の家族、所有者が許可した者など車両を正規に使用することができる人を言う。
【0040】
この認証用テーブルについて以下具体的に説明する。図3に示すように、記録部10cには2つのテーブル(10c(1)、10c(2))データが記録されている。このテーブル10c(1)、10c(2)は、ドア20がロックされており、かつIDキー30が車室内あると制御部10cが検知したときに用いられる。
【0041】
このテーブル10c(1)及び10c(2)は共に、ドアをアンロックするための、操作手順の番号順(1→2→3→・・・)に、ドアの位置(FR、RL、トランク等)に対応した車両部材(ドアノブ、トリガスイッチ)の選択された操作の手順がそれぞれ記録されている。より具体的に、テーブル10c(1)の操作手順を解錠操作順(1〜5)に以下説明する。
【0042】
番号1では、ドア(FR)に備わるドアノブを1回操作する。
【0043】
番号2では、ドア(RL)に備わるドアノブを1回操作する。
【0044】
番号3では、ドア(トランク)に備わるドアノブを1回操作する。
【0045】
番号4では、ドア(FR)に備わるトリガスイッチを1回操作する。
【0046】
番号5では、ドア(FL)に備わるトリガスイッチを1回操作する。
【0047】
もし所定の条件下で、予め記憶された解錠操作順と同じ操作手順でユーザーが操作すると、ドアはアンロックされる。
【0048】
また、もう一方のテーブル10c(2)の基本的な構成は、テーブル10c(1)と同様であるため詳細な説明は省略するが、ドアの位置は同じ場所に固定(FR)し、操作回数もテーブル10c(1)よりも少ない。これは簡易な操作手順でユーザーの認証を行いたい場合に用いる。
【0049】
つまり、上記テーブル10c(1)とテーブル10c(2)のどちらを用いてもユーザー認証は可能だが、本実施形態では、よりセキュリティ性の高いテーブル10c(1)を用いている。
【0050】
尚、この認証用テーブルに登録される操作データは、図示しない入力装置(タッチパネルなどを用いて認証用テーブルの各位置情報や各車両部材の操作などに対応した入力が可能で、照合ECU10と信号線を介して接続された装置)から、登録できるように構成されている。
【0051】
また、記録部10cは、後述する図5の制御処理がスタートしてから、車両部材(ドアノブ21又はトリガスイッチ22)の操作によって得られる操作データを記録することもできる(但し一時的な記録処理なのでRAMに記録しても良い)。
【0052】
ここで参考に照合ECU10において、ドアノブ21を用いたドア20のアンロック制御と、トリガスイッチ22を用いたドア20のロック制御の基本的な制御手段についてそれぞれ説明する。
【0053】
まずドア20のアンロック制御は、車室外にIDキー30がある場合に、ドアノブ21を操作されると、ドア20をアンロックさせる。
【0054】
まず照合ECU10が、ドア20の閉状態を示す信号を、それぞれのボデーECU11より受信する。次に照合ECU10は、ドアノブ21やリアバンパー中央部(非図示)等の付近に複数設置された車室外発信機33をそれぞれ起動させる。そしてそれぞれの車室外発信機33は間欠的に特定の周波数(百数十kHz)電波を出す。そしてIDキー30が車室外検知領域内に入り電波を受信すると、IDキー30から特定の周波数(数百MHz)の電波で車両へIDコードを返信する。照合ECU10は、チューナ31で受信したIDキー30のIDコードを判別・照合する。照合が一致すると、照合ECU10はタッチセンサ(非図示)を起動させ、ドア20のアンロックをスタンバイ状態とする。照合ECU20は、ドアノブ21が触れられたことをタッチセンサが検知し、その検知信号を受信すると、それぞれのボデーECU11へドア20をアンロックさせるためのアンロック信号を送信する。そしてそれぞれのボデーECU11はそのアンロック信号を受信すると、ドアロックモータをそれぞれ駆動させて、ドアをアンロックさせる。
【0055】
一方、ドア20のロック制御は、トリガスイッチ22が操作され、車室外にIDキー30がある(車室内にない)場合に、ドア20をロックさせる。
【0056】
まずエンジン(図示せず)がオフかつ、ドア20が全て閉状態のときに、ドア20の何れかのトリガスイッチ22を押下すると開始する。照合ECU10は、そのトリガスイッチ22の指示信号を受信すると、各車室内発信機32及び各車室外発信機33へリクエスト信号を送信する。照合ECU10からのリクエスト信号に基づき、各車室内発信機32及び各車室外発信機33は、IDキー30を検知するための検知領域を形成する。そして、照合ECU10はチューナ31で受信したIDキー30のIDコードを判別・照合する。この照合により、照合ECU10は車室外照合が一致し、車室内の照合が合わなかったことを検知することで、IDキー30が車室外にあることを確認する。そして照合ECU10は、ドア20をロックさせるためのロック信号をそれぞれのボデーECU11に送信する。ボデーECU11はそれぞれロック信号を受信すると、ドアロックモータをそれぞれ駆動させてドアをロックする。
【0057】
ところで上述したように、キー閉じ込めを防止するために、キーが車室内にある間に継続してロック信号を送信しないでおく(アンロック状態とする)と、車両のユーザーがその車両から離れた隙に、第3者のような他人に車室内へ侵入される恐れがある。そのため本実施形態では図4に示すような、自動ロック処理を施している。
【0058】
図4は照合ECU10においてドアを自動ロック制御するためのフローチャートである。まず、ドアが閉状態から開状態に変わったことを示す開閉データの信号が各ボデーECU11から入力されると処理が開始する。
【0059】
ステップS1では、開閉データの入力によりドアが全て閉状態となったか否かの判定を行う。ドアが全て閉状態になっていない場合は、ステップS1を繰り返し実行する。ドアが全て閉状態となった場合はステップS2に進む。尚、ここで言う「ドアが全て閉状態になっている」とは、「車室内に入ることができるドアが全て閉まっている」ことを意味する。
【0060】
ステップS2では、ドアをロックさせるまでの時間のカウントを開始する。
【0061】
ステップS3では、ドア20がアンロック状態か否かの情報を各ボデーECU11から受信し、ドア20のうち少なくとも1つのドアがアンロック状態であると判定(YES)されると、ステップS4に進む。一方、全てのドアがロック状態である(つまりドア20がアンロック状態でない)と判定(NO)されると、処理を終了する(エンド)。
【0062】
ステップS4では、ドアが閉ざされてから一定時間経過(例えば30秒)したか否かを判定する。一定時間経過していない場合はステップS3及びステップS4の処理を繰り返し実行する。また、一定時間経過した場合は、ステップS5に進む。
【0063】
ステップS5では、ドアをロックさせるために、ロック信号を各ボデーECU11に送信し、処理を終了する(エンド)。各ボデーECU11はその受信したロック信号に基づき、ドアロックモータをそれぞれ駆動させることで、ドア20の全てのドアがロックされる。
【0064】
上記のように、IDキー30が車室内又は車室外に有るか否か関わらず、一定時間経過したときにはドア20のロックを自動ですることによって、第3者のような他人に車室内へ侵入されることを抑制できる。
【0065】
次に図5のフローチャートを用いて、本実施形態の照合ECU10の制御処理(本発明のドアロック制御装置に相当する)を説明する。ここでは照合ECU10が、ドア20のうち1つのドア(ここではドア(FR)を指す)のドアノブ21のタッチセンサからの検知信号を受信したときを本処理のスタートとしている。ただ、本処理のスタートはこれに限ることなく、例えばドア(FR)のトリガスイッチ22の検知信号を受信したときであってもよい。
【0066】
ステップS10では、各ボデーECU11から受信したロック状態/アンロック状態を示す信号の入力に基づき、ドア20が全てロックされているか否かを判定する。全てロックされていると判定した場合(YES)はステップS11に進み、全てロックされていないと検知した場合(NO)は、少なくとも1部のドアがアンロック状態やドアが開状態など、直ぐにドアを開けられる状態であるとして処理を終了する(エンド)。尚、「ドア20が全てロックされている」とは、車両に備わるドアのうち、車室内に入ることができるドアが、全てロックされているという意味である。
【0067】
ステップS11では、チューナ31の信号の入力に基づき、IDキー30が車室内にあるか否かを判定する。IDキー30が車室内にあると検知した場合は、ステップS12に進み、IDキー30が車室内にない(つまりIDキー30が検知できない)と検知した場合は、ステップS13に進む。
【0068】
ステップS12では、図3の認証用テーブルに「予め記録された操作手順」と、本処理スタート後にドアノブ20やトリガスイッチ22等の操作による検知信号(操作データ)の入力に基づき、「入力された車両部材の操作手順」と、を照合する(つまりパスワードで認証する)。照合の結果、同じ操作手順であると検知した場合は、特定の個人であると認証(車両のユーザーであると認証)し(YESと判定)、ステップS14に進む。また、同じ操作手順でないと検知した場合は、特定の個人でない(車両のユーザーでない)と認証(NO)し、ステップS13に進む。
【0069】
尚、ステップS12において、スタート後に入力操作された車両部材の操作手順は時間制限(例えば5分)を設けてあって、その時間が経過した際は処理を強制終了してもよい。さらに強制終了された場合や、同じ操作手順でない(NO)と検知した場合は、照合ECU10と通信線を介して接続されたクラクション(図示せず)に警告音を鳴らすよう照合ECU10が制御してもよい。
【0070】
ステップS13では、ドア20のアンロックをそれぞれのボデーECU11に指示せず(実際の処理としてはロック状態を継続するため何もしない)、処理を終了する(エンド)。
【0071】
ステップS14では、ドア20をアンロックするようそれぞれのボデーECU11に指示し(つまり照合ECU10がアンロック信号を送信し、ボデーECU11が受信する)、処理を終了する(エンド)。そしてアンロック信号を受信したボデーECU11は、それぞれのドア20をアンロックさせることにより、ドア状態はロック状態からアンロック状態に変わる。
【0072】
以下、本実施形態に係る効果について説明する。例えば、車両部材の操作によって認証を行う認証方法だけでドアをアンロック制御できるドアロック制御装置を考える。しかしそのような制御装置では、予め決められた操作を知らない第3者のような他人が長時間操作を繰り返し行うことで、いずれ予め決められた操作にたどり着き、ドアをアンロックされてしまう恐れがある。
【0073】
そこで本実施形態では、IDキー30が車両の車室内にある場合に限り、車両部材の操作によって認証を確認後に、ドアをアンロックできるように構成している。逆に言えば、IDキー30が車両の車室内にない場合は、IDキー30を持たない他人がユーザーの許可無く勝手にドアをアンロックすることを禁止できるため、キー閉じ込め等の緊急時に対応しつつ、防犯性もより高めることができる。
【0074】
また、このように予め車両に備わる車両部材を、ドア20をアンロックさせるための認証の手段に用いることで、IDキー30が車室内に残されて、そのままロックされた場合でも、スペアキーを自宅に取りに戻って用意する等の手間をかけることなく迅速にドアを開放することができる。
【0075】
また、IDキー30が車室内又は車室外に有るか否か関わらず、所定の条件(本実施形態では一定時間経過)を満たしたときにはドア20の全てのドアをロックすることを敢えてすると共に、車両に備わっている車両部材を用いた認証によってドア20をアンロックできることで、防犯性と利便性の両方を実現することができる。
【0076】
尚、IDキー30の閉じ込めをした場合でも、特定の個人だけが確実にドア20をアンロックできる他の認証方法として、例えば特許文献1記載のように携帯電話や公衆電話と車両のサービスセンターとのパスワード等の認証を行うための通信を行い、そのパスワード等の認証によって特定の個人と判断された場合は、車両を遠隔操作することによりドアをアンロックすることも考えられる。しかし、例えば公衆電話のないような山奥で、携帯電話とキーの閉じ込めを行ってしまった状況では、遠隔操作によってドアをアンロックすることができないため、ドアを迅速に開けることができない。本実施形態は予め車両に備わった車両部材を認証手段に用いることで、上述のような状況かつスペアキーを持ち歩いていない状況でもキー閉じ込め状態を早期に回避することができる。
【0077】
以上説明したように本実施形態によれば、車室内にキーが有ると検知した場合にドアをアンロック状態にできるドアロック制御装置において、防犯性を高めつつ、キー閉じ込め状態が発生した場合に迅速にドアをアンロックすることができる。
【0078】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り適用できる。
【0079】
例えば、照合ECU10の機能の一部又は全部は、ボデーECU11又は他のECUにより実現されていても良い。
【0080】
その他、車両部材(ドアノブ21とトリガスイッチ22)は上述したものに限ることは無く、例えば車両のドア付近に予め備えられているドアミラー(非図示)であってもよい。このドアミラーを車両部材として用いる場合は、そのドアミラーの折畳み状態又は開き状態をセンサーで検知して、その検知した信号を照合ECU10に送信するよう構成している。
【0081】
また、図3の「操作」項目で示すドアノブ21の操作は1回ノブを引く操作のことを定義しているが、これに限らず2、3回ノブを引く操作と定義しても良い。同様にトリガスイッチ22も1回スイッチを押す操作を意味しているが、2、3回スイッチを押す操作と定義しても良い。
【0082】
さらに本実施形態の車両部材は、本来の機能(本実施形態で説明したドアのロック/アンロック機能、他の例で示したドアミラーの開閉可動機能など)の他に、特定の個人であるか否かを認証する認証用の部材としても兼用して用いている。このように、車両に元々標準で備わっているドアノブ21、トリガスイッチ22、ドアミラー等の車両部材を、認証用と兼用して利用すれば、新たに認証用の専用部材を設けるコストを削減することができる。ただし、本発明の車両部材はこのような兼用に限定されなくても良く、認証専用の車両部材として、車両の車室外側に認証用の専用スイッチ等を新たに別途設けて利用してもよい。
【0083】
また、パスワード的操作を行って得られる操作データもこれに限ることは無く、ユーザーであるか否かが認証できればよい。例えば操作データに換えて指紋データ又は音声データを検知できる機能を車両部材として設け、その指紋データ又は音声データの入力結果に基づき、車両のユーザーであると認証するための操作がされたと判定してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ドアロック制御システム
10 照合ECU
11 ボデーECU(FR、FL、RR、RL、トランク)
20 ドア(FR、FL、RR、RL、トランク)
21 ドアノブ
22 トリガスイッチ
30 IDキー
31 チューナ
32 車室内発信機
33 車室外発信機
40 車載LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアをロック又はアンロックすることが可能なキーが、前記車両の車室内に存在するか否かを示すキーデータを入力されると共に、
前記車両の車室外側に設けられた車両部材が操作されることにより、前記車両のユーザーであるか否かを認証するための操作データが入力され、
前記車両のドアがロック状態において、
前記キーデータに基づき、前記車両の車室内に前記キーが存在すると判定され、
かつ前記操作データに基づき、前記車両部材が前記ユーザーであると認証された場合は、
前記ドアをアンロックするよう制御し、
前記キーデータに基づき、前記車両の車室内に前記キーが存在しないと判定された場合には、
前記車両部材の操作に関わらず前記ドアのロック状態を継続するよう制御すること
を特徴とするドアロック制御装置。
【請求項2】
前記ドアの開閉データを入力するドア開閉データが入力され、
前記開閉データの入力により、前記ドアが全て閉状態であるか否かを判定し、前記ドアが全て閉状態であると判定した場合は、前記キーが車室内に存在するか否かに関わらず、前記ドアが全て閉状態とされてから一定時間経過した後に、前記ドアをロックするよう制御することを特徴とする請求項1に記載のドアロック制御装置。
【請求項3】
前記車両部材は前記ドアのドアノブ、前記ドアに設けられたスイッチ、又は開閉可動機能を有するドアミラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のドアロック制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−167495(P2012−167495A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29898(P2011−29898)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】