説明

ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む抗炎症組成物

【課題】ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミン(Docosahexaenoyl lysophosphatidylamine)を有効成分として含む抗炎症組成物を提供する。
【解決方法】本発明は、多価不飽和リゾホスファチジルコリン類であるドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが細胞内で脂質多糖類由来NO生成を抑制して、生体内でザイモサンA誘導腹膜炎を阻害することによって抗炎症効能が優れ、細胞毒性がほとんどないので、炎症性疾患予防及び治療用製薬組成物、または健康食品の有効成分として有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミン(Docosahexaenoyl lysophosphatidylamine)の抗炎症効能を用いた抗炎症用製薬組成物、抗炎症用健康機能食品、及び抗炎症用化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎症反応は、組織(細胞)の損傷や外部感染原(バクテリア、かび、ウイルスまたは多様な種類のアレルギー誘発物質)に感染した時、局所血管と体液中の各種炎症媒介因子及び兔疫細胞が係わって酵素活性化、炎症媒介物質分泌、体液浸潤、細胞移動及び組織破壊など一連の複合的な生理的反応と紅班、むくみ、発熱及び痛症など外的症状を現わす。正常の場合、炎症反応は、外部感染原を除去して損傷された組織を再生して生命体機能回復作用をするが、抗原が除去されなかったり内部物質が原因になったりして、炎症反応が過度または持続的に起きると、むしろ粘膜損傷を促進し、その結果、一部では癌発生などの疾患を誘発する(非特許文献1)。
【0003】
炎症の発生原因としては、生体に多様な生化学的な現象が関与している。特に、一酸化窒素(NO)を発生させる酵素である一酸化窒素合成酵素(NOS)及びプロスタグランジン(prostaglandin)の生合成と係わる酵素は、炎症反応を媒介するにおいて重要な役割をしていることが知られている。したがって、L−アルギニンからNOを生成させる酵素であるNOS、またはアラキドン酸からプロスタグランジン類を合成するのに係わる酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)は、炎症を遮断するにおいて主な目標になっている。
【0004】
最近の研究結果によると、NOSは、何種類かが存在し、脳に存在する脳一酸化窒素合成酵素(bNOS)、神経系に存在する神経一酸化窒素合成酵素(nNOS)及び血管系に存在する内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)などは、体内にいつも一定の水準で発現されていて、これらによって少量生成されるNOは、神経伝達や血管拡張を誘導するなど、正常な身体の恒常性維持に重要な役割をするのに比べて、各種サイトカインや外部刺激物質によって誘導されるiNOS(induced NOS)によって急激に過量発生されるNOは、細胞毒性や各種炎症反応を起こすことが知られていて、慢性炎症は、iNOS活性の増加と関連あるという研究がある(非特許文献2)。また、COXも2種類のイソ型が存在し、COX−1は、細胞内にいつも存在して細胞保護作用に必要なプロスタグランジン(PGs)を合成する作用を示すのに対して、COX−2は、炎症反応時に細胞内で急激に増加して炎症反応を起こすに際して重要な役割を遂行することが知られている。NO及びPGsの程度を向上させるiNOS及びCOX−2を含む転写炎症因子は、多様な硬化、パーキンソン病、アルツハイマー病及び結腸癌を含む慢性疾患の病因に関連する(非特許文献3)。
【0005】
リポポリサッカライド(LPS)は、外部に分泌するバクテリアトキシンで、細胞の炎症反応を刺激して、一酸化窒素(NO)、サイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF−)、プロスタグランジンE2及び炎症反応を促進するエイコサノイド調節物質を含む様々の炎症調節物質を分泌する(非特許文献4)。一酸化窒素合成酵素は、二つのグループに分類されているが、cNOSは、様々な細胞(例えば、神経細胞及び内皮細胞)で一定に存在してカルシウムに依存的なカルモジュリンによって、転写水準が優先的に調節される。一方血管平滑筋細胞、大食細胞、肝細胞及び星状細胞は、炎症サイトカインとリポポリサッカライドなどに反応して誘導される。一酸化窒素合成酵素の活性化は、多様な炎症疾患の疾病で重要な役割をする、多量の一酸化窒素形成を促進する。ゆえに、一酸化窒素合成酵素によって誘導される一酸化窒素生成は、炎症の程度を示し、炎症進行を評価することができる指標になる。特異な細胞遺伝子などの発現は、COX−2及び誘導性一酸化窒素合成酵素だけではなく、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−6及び腫瘍壊死因子のような様々な炎症転写因子が含まれる(非特許文献5)。
【0006】
最近脂質誘導媒介体が、様々な炎症反応(喘息、リュウマチ関節炎または腸炎など)に関与することが知られている(非特許文献6〜11)。
【0007】
今まで炎症性媒介物質に対する研究が活発に行なわれてきたが、炎症反応に脂質媒介体が関与することは、最近理論的に定立されるようになった。例えば、酵素PLA2によってホスファチジルコリンから遊離されたアラキドン酸は、プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)及びリポキシン(LX)に転換される。ここで、プロスタグランジンとロイコトリエンは、強力な炎症性媒介体である一方(非特許文献12〜14)、リポキシンは、むしろ強い抗炎症性媒介体として知られるようになった(非特許文献15,16)。すなわち、炎症過程でアラキドン酸から生成されたエイコサノイドは、プロスタグランジンとロイコトリエンに転換される。ここで、5−リポキシゲナーゼは、ロイコトリエンとリポキシンの形成に重要である一方、12/15−リポキシゲナーゼは、リポキシンの形成に重要である(非特許文献15,16)。また、ドコサヘキサエン酸の場合、12/15−リポキシゲナーゼによって酸化時に結果的にプロテクチンDという脂質で代謝され、この物質は、リポキシンのように優秀な抗炎症作用を示す脂質媒介体として把握された(非特許文献17)。
【0008】
一方、PLA2加水分解過程で生成される飽和脂質リゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine,lysoPC)が炎症反応で炎症性または抗炎症性であることが明らかにされている(非特許文献8,11、18〜20)。また、炎症性リゾホスファチジルコリンの作用は、一酸化窒素(nitric oxide,NO)または活性酸素種(reactive oxygen species,ROS)の生成であることが報告された(非特許文献21〜25)。
【0009】
しかし、多価不飽和脂質を含む多価不飽和リゾホスファチジルコリン(polyunsaturated lysoPC)類が生体内嫌気反応に及ぼす影響に対しては、具体的に報告されたことがない。不飽和脂質を含む多価不飽和リゾホスファチジルコリンは、動物体内に相当量存在することが報告されたが、例えば、1−リノレオイルリゾホスファチジルコリン(linoleoyl lysoPC)と1−アラキドノイルリゾホスファチジルコリン(arachidonoyl lysoPC)が、血漿(非特許文献26〜28)から発見された。特に、1−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、鮫の肝の主要脂質に属する(非特許文献29)。さらに、心臓抽出物には、リゾホスファチジルコリン酸化物が存在する。したがって、不飽和脂質を含むリゾホスファチジルコリンは、リポキシゲナーゼによって代謝されると考えられたが、最近の研究でそれを立証した(非特許文献30〜32)。すなわち、リノレオイル、アラキドノイル及びドコサヘキサエノイルからなる群を含むリゾホスファチジルコリンは、網状赤血球15−LOX、または白血球12/15−LOX酵素によって酸化がよくおきることが報告された(非特許文献30〜32)。このように、リゾホスファチジルコリン類は、生体内で生物活性を有すると考えられるにもかかわらず、リゾホスファチジルコリン類の生理活性に対して報告されたことがない。
【0010】
それで、本発明者等は、不飽和脂質含有リゾホスファチジルコリン類の生理活性に対して研究した結果、不飽和脂質含有リゾホスファチジルコリン類が細胞内及び生体内(In vivo)で抗炎症効能があり、特に、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、他のリゾホスファチジルコリン類に比べて顕著にNO生成を抑制して、細胞毒性がほとんどなく、生体内でザイモサンA誘導腹膜炎を少ない濃度でも優秀に阻害して、前記抗炎症効果が、アラキドノイルリゾホスファチジルコリン(Arachidonoyl lysophosphatidylcholine)を含む他のリゾホスファチジルコリン類に比べて優れていることを確認することにより、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンを抗炎症用組成物の有効成分で使用することができることを明らかにして本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jonathan Cohen,Nature,2002年,第420,885−891頁
【非特許文献2】Jon O.Lundberg,等,Nature Reviews Drug Discovery,2008年
【非特許文献3】Bengt Samuelsson,等,Pharmacological Reviews,2007年,第59巻,207−224頁
【非特許文献4】Chen YC,等,Biochem.Pharmacol.,2001年,第61巻,1417−1427頁
【非特許文献5】Csaba Szabo,等,Nature Reviews Drug Discovery,2007年,第6巻,662−680頁
【非特許文献6】Daleau P.,J.Mol.Cell.Cardiol,1999年,第31巻;1391−1401頁
【非特許文献7】Fuchs B,等,Clin.Biochem,2005年,第38巻925−933頁
【非特許文献8】Muralikrishna Adibhatla,R.,等,Free adic.Biol.Med,2006年,第40巻,376−87頁
【非特許文献9】Triggiani M,等,Biochim Biophys Acta.,2006年第1761(11)巻,1289−300頁
【非特許文献10】Matsumoto,T.,等,Curr.Med.Chem.,2007年,第14巻,3209−3220頁
【非特許文献11】Shi Y,等,Atherosclerosis,2007年,第191巻,54−62頁
【非特許文献12】Serhan CN,等,Nat Immunol.,2005年,第6巻,1191−7頁
【非特許文献13】Farooqui AA,等,J Neurochem.,2007年,第101(3)巻,577−99頁
【非特許文献14】Funk,C.D.,Science,2001年,第294巻,1871〜5頁
【非特許文献15】Schwab JM,等,Curr Opin Pharmacol.,2006年,第6(4)巻,414−20頁
【非特許文献16】Kuhn H,等,Prog Lipid Res.,2006年Jul,第45(4)巻,334−56頁,Epub 2006M
【非特許文献17】Serhan CN & Chiang N.Br J Pharmacol.,2008年,第1巻,S200−215頁
【非特許文献18】Daleau P.,J.Mol.Cell.Cardiol,1999年,第31巻,1391−1401頁
【非特許文献19】Fuchs B,等,Clin.Biochem,2005年,第38巻,925−933頁
【非特許文献20】Fuentes L,等,Circ Res,2002年,第91巻,681−688頁
【非特許文献21】Colles,S.M.等,Journal of Lipid Research,2000年,第41巻, 1188−1198頁
【非特許文献22】Matsubara,M.,等,Atherosclerosis,2005年,第178巻,57−66頁
【非特許文献23】Takeshita S,等,J.Atheroscler.Thromb,2000年,第7巻,238−246頁
【非特許文献24】Silliman CC,等,J.Leukoc.Biol,2003年,第73巻,511−524頁
【非特許文献25】Cheon Ho Park,等,lysophosphatidylcholine exhibits a selective cytotoxicity,accompanied by ROS formation,in RAW 264.7 macrophages,Lipids,in press,2009年
【非特許文献26】Okita,M.等,Int.J.Cancer.,1997年,第71巻,31−34頁
【非特許文献27】Croset,M.等,Biochem.J.2000年,第345巻,61−67頁
【非特許文献28】Adachi,J.等,Kobe.J.Med.Sci.,2006年,第52巻,127−140頁
【非特許文献29】Chen,S.,等,J.Agric.Food.Chem.,2007年,第55巻,9670−9677頁
【非特許文献30】Huang,L.S.等,Arch.Biochem.Biophys.,2006年,第455巻,119−126頁
【非特許文献31】Huang,L.S.等,Lipids,2007年,第42巻,981−990頁
【非特許文献32】Huang,L.S.等,J.Agric.Food.Chem.,2008年,第56巻,1224−1232頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む抗炎症用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、炎症性疾患の予防及び治療用製薬組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを炎症性疾患にかかった個体に投与する工程を含む、炎症性疾患治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを個体に投与する工程を含む、炎症性疾患予防方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、炎症性疾患の予防及び改善用健康食品を提供する。
【0017】
また、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、抗炎症用皮膚または鼻腔用外用剤を提供する。
【0018】
同時に、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、抗炎症用化粧料組成物を提供する。
【0019】
以下、本発明で使用する用語を定義する。
【0020】
本発明で使用する用語「炎症」は、身体局所に起きた傷害に対する生体組織の防御反応である。すなわち、各種の有害な刺激に応答して刺激による傷害を除去し、本来の状態に回復しようとする生体防御反応が炎症反応である。炎症の刺激には、感染あるいは化学的、物理的刺激などがある。炎症反応に係わる生体構成因子は、自由ラジカル、タンパク質、糖質、脂質などの低分子や高分子の化学物質と、血漿、血球、血管及び結合組織などがある。炎症の過程は、普通2つに分けられ、急性と慢性炎症に分けることができる。急性炎症は、数日以内の短期的な反応であり、血漿成分や血球などが微少循環系を通じて異物除去に関連する。慢性炎症は、持続時間が長くて、組織の増殖などが見られる。
【0021】
本発明で使用する用語「予防」は、本発明の組成物の投与により炎症性疾患の発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0022】
本発明で使用する用語「治療」及び「改善」は、本発明の組成物の投与により前記疾患の症状が好転または良い方向に変更されるすべての行為を意味する。
【0023】
本発明で使用する用語「投与」は、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0024】
本発明で使用する用語「個体」は、本発明の組成物を投与して症状が好転し得る人間、猿、犬、山羊、豚または鼠などすべての動物を意味する。
【0025】
本発明で使用する用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な量または危険の比率で疾患を治療するに十分な量を意味して、これは個体の炎症性疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他医学分野でよく知られた要素によって決定することができる。
【0026】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0027】
本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、炎症性疾患の予防及び治療用製薬組成物を提供する。
【0028】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(Docosahexaenoyl lysophosphatidylcholine)、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン(docosahexaenoyl lysophosphatidylethanolamine)及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(2−Docosahexaenoyl lysophosphatidylcholine)からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
前記ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、下記の化学式1で表わされることが好ましいが、これに限定されない。
【0030】
【化1】

【0031】
前記炎症性疾患は、喘息、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎、肝炎及び退行性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、喘息、腹膜炎、腸炎及びリュウマチ関節炎からなる群から選択されるいずれか一つであることがさらに好ましく、腹膜炎であることが最も好ましいが、これに限定されない。
【0032】
本発明では、リゾホスファチジルコリン類の細胞内での抗炎症効能を調べるため、脂質多糖類由来NO生成に及ぼす影響を分析した結果、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが、少ない濃度でも明確にNO生成阻害効果を示し、他のリゾホスファチジルコリン類と比較して顕著な阻害効果を示した(図1参照)。
【0033】
本発明では、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの生体内での抗炎症効能を調べるため、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの静脈注射が、ザイモサンAによって誘導されたマウス腹腔内炎症反応に対する阻害効果を分析した結果、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが少ない濃度でも優秀な阻害効果を示し、これは、アラキドノイルリゾホスファチジルコリンを含む他のリゾホスファチジルコリン類と比較して顕著な阻害効果を示した(図2ないし図4参照)。
【0034】
本発明では、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの抗炎症効能が自体効能であることを調べるため、代謝産物であるドコサヘキサエン酸及び17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(17(S)−ヒドロペルオキシ−4,7,10,13,15,19−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン)のザイモサンA誘導腹腔内炎症反応に対する阻害効果を分析した結果、静脈注射でドコサヘキサエン酸は、効果がほとんどないことを示し、17−HPDHAリゾホスファチジルコリンは、多少弱い抗炎症効果を示した。一方、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン自体が力強い抗炎症効果を示すことを確認した。これは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが、中間産物として17‐HPDHAリゾホスファチジルコリンを媒介して抗炎症代謝産物に変換し得ることを提示するものであることが分かる(図5参照)。
【0035】
本発明では、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの生体内での抗炎症効能を調べるため、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの腹腔注射がザイモサンAによって誘導されたマウス腹腔内炎症反応に対する阻害効果を分析した結、図6に見られるように腹腔に投与されたドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、15μg/kg以上で有意性ある阻害効果を示し、このような効果は、150μg/kg量の範囲に至るまで濃度依存的に阻害することを確認した(図6参照)。すなわち、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、腹腔内注射でも少ない用量でザイモサンAによって誘導された血漿流入を効果的に阻害する効果を示すので、優秀な抗炎症効果があることが分かった。
【0036】
これは、本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが、症抑剤と関連していると報告された既存のドコサヘキサエノンサンに比べて、顕著に高い炎症阻害効能があることを示すものである。
【0037】
したがって、本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、細胞内で脂質多糖類(LPS)由来酸化窒素(NO)生成を抑制し、生体内でザイモサンA誘導腹膜炎を抑制し、優れた抗炎症効能を有しており、細胞毒性がほとんどないので、炎症性疾患予防及び治療用組成物の有効成分として有用に使用できることが分かった。
【0038】
本発明では、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンの生体内での抗炎症能を調べるため、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンの静脈注射がザイモサンAによって誘導されたマウス腹腔内炎症反応に対する阻害効果を分析した結果、図7に見られるように、腹腔に投与されたドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンは、50μg/kg以上で有意性ある阻害効果を示した。このような効果は、150μg/kg量の範囲に至るまで濃度依存的に阻害することを確認した(図7参照)。すなわち、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンは、静脈内注射で少ない用量でザイモサンAによって誘導された血漿流入を効果的に阻害する効果を示すので、優れた抗炎症効果を有することが分かった。
【0039】
本発明の化合物を含む組成物は、通常の方法による適切な担体、賦形剤または希釈剤を追加的に含むことができる。
【0040】
本発明の組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。
【0041】
本発明の化合物を含む組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、座薬または滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。
【0042】
より詳細には、製剤化する場合には普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような滑剤も使用することができる。経口のための液状製剤では、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤では、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレイン酸のような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤では、ハードファット(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどを使用することができる。
【0043】
本発明の化合物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。しかし、好ましい効果を得るため、本発明の化合物の投与量は、0.005〜0.05mg/kgで、好ましくは0.015〜0.15mg/kgの量を一日1回ないし数回に分けて投与することができる。本発明の化合物は、全体組成物総重量に対して0.001〜20重量%の含量で配合することができる。
【0044】
また、本発明の化合物の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態でも使用することができ、単独でまたは他の薬学的活性化合物と結合のみならず適当な集合体で使用することができる。
【0045】
本発明の薬学組成物は、鼠、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に多様な経路に投与することができる。様々な投与方式が予想可能で、例えば、経口、直腸、静脈、腹腔、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与することができる。
【0046】
本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを炎症にかかった個体に投与する工程を含む、前記個体の炎症抑制方法を提供する。
【0047】
前記炎症性は、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎及び肝炎からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、腹膜炎、腸炎及び関節炎からなる群から選択されるいずれか一つであることがさらに好ましく、腹膜炎であることが最も好ましいが、これに限定されない。
【0048】
前記投与は、同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。投与のためには、追加で薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含むことができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコール及びこれら成分の中から1成分以上を混合して使用することができ、必要によって抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、散剤、錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒または注射液剤に製剤化できる。さらに、当分野の適正な方法、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990)に開示されている方法を使用して各疾患によって、または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0049】
前記投与は、投与方法によって非経口投与(例えば静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与したりすることができ、投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度等によってその範囲が多様である。本発明の化合物の一日投与量は、0.005〜0.5mg/kgで、好ましくは0.015〜0.15mg/kgの量を一日に1回ないし数回に分けて投与することができる。
【0050】
また、本発明は、薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを炎症性疾患にかかった個体に投与する工程を含む炎症性疾患治療方法を提供する。
【0051】
また、本発明は、薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを個体に投与する工程を含む炎症性疾患予防方法を提供する。
【0052】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0053】
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、細胞内で低い濃度で炎症を抑制して、細胞毒性がほとんどなく、生体内で少ない濃度で炎症を阻害するので、炎症性疾患予防及び治療に使用できることが分かる。
【0054】
前記炎症性疾患は、喘息、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎、肝炎及び退行性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、喘息、腹膜炎、腸炎及びリュウマチ関節炎からなる群から選択されるいずれか一つであることがさらに好ましく、腹膜炎であることが最も好ましいが、これに限定されない。
【0055】
前記投与は、同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。投与のためには、追加で薬剤学的で許容可能な担体を1種以上含むことができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコール及びこれら成分の中で1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、散剤、錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒または注射液剤に製剤化できる。さらに当分野の適正な方法、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990年)に開示されている方法を使用して、各疾患にしたがってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
【0056】
前記投与は、投与方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与したりすることができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度等によってその範囲が多様である。本発明の化合物の一日投与量は、0.005〜0.5mg/kgで、好ましくは0.015〜0.15mg/kgの量を一日に1回ないし数回に分けて投与することができる。
【0057】
また、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む炎症性疾患の予防及び改善用健康食品を提供する。
【0058】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0059】
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが細胞内で脂質多糖類由来NO生成を抑制して、生体内でザイモサンA誘導腹膜炎を阻害することにより、抗炎症効能が優れ細胞毒性がほとんどないので、炎症性疾患予防及び改善用健康食品の有効成分として有用に使用することができることが分かる。
【0060】
前記ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを添加することができる食品としては、例えば、各種食品類、乳製品、飲料、ガム、お茶、ビタミン単一剤、健康補助食品類などがあり、粉末、顆粒、錠剤、カプセルまたは飲料の形態で使用することができる。
【0061】
ここで、食品または飲料の中で前記ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンの量は、全体食品または飲料重量の0.0001ないし15重量部で加えることができる。
【0062】
本発明の健康飲料組成物は、必須成分として前記ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを含む以外に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など、ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど、及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどの通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジン等)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。
【0063】
前記の外に本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他に、本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は、独立的にまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミン100重量部当り0.1ないし20重量部の範囲で選択することが一般的であるが、これに限定されない。
【0064】
また、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む抗炎症用皮膚または鼻腔用外用剤を提供する。
【0065】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0066】
本発明の化合物を皮膚外用剤に使用する場合、追加で脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型またはノニオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小嚢または皮膚用外用剤に通常使用される任意の異なる成分で、皮膚科学分野で通常使用される補助剤を含むことができる。また、前記成分は、皮膚科学分野で一般的に使用される量で導入することができる。
【0067】
同時に、本発明は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む抗炎症用化粧料組成物を提供する。
【0068】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0069】
本発明の化粧料は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草エキスからなる群から選択された組成物を含むが、これに限定されない。
【0070】
前記水溶性ビタミンとしては、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、好ましくは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ピリドキシン、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、パントテン酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビタミンC、ビタミンHなどを挙げることができ、それらの塩(チアミン塩酸塩、アスコルビン酸ナトリウム塩など)や誘導体(アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩など)を含むが、これに限定されない。
【0071】
前記油溶性ビタミンとしては、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、好ましくは、ビタミンA、カロチン、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE(d1−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール)及び、そらの誘導体(パルミチン酸アスコルビン、ステアリン酸アスコルビン、ジパルミチン酸アスコルビン、酢酸−dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロールビタミンE、DL−パントテニルアルコール、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテルなど)を含むが、これに限定されない。
【0072】
前記高分子ペプチドとしては、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、加水分解エラスチンまたはケラチンが好ましいが、これに限定されない。
【0073】
前記高分子多糖としては、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸またはその塩(ナトリウム塩など)が好ましいが、これに限定されない。
【0074】
前記スフィンゴ脂質としては、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、セラミド、フィトスフィンゴシン、スフィンゴ糖脂質が好ましいが、これに限定されない。
【0075】
前記海草エキスでは、化粧品に配合可能なものならどんなものでも可能であるが、褐藻エキス、紅藻エキスまたは緑藻エキスが好ましく、これらの海草エキスから精製されたカラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムが好ましいが、これに限定されない。
【0076】
本発明の化粧料には、前記必須成分と共に必要によって通常化粧料に配合される他の成分を配合することができる。前記他の成分としては、乳脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤または精製水が好ましいが、これに限定されない。
【0077】
前記油脂成分としては、エステル系油脂、炭化水素系油脂、シリコン系油脂、フッ素系油脂、動物油脂または植物油脂が好ましいが、これに限定されない。
【0078】
エステル系油脂としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアルキル、トリ(カプリル.カプリン酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル.カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアルキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリルまたは 12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリルなどのエステル系が好ましいが、これに限定されない。
【0079】
前記炭化水素系油脂としては、スクアレン、流動パラフィン、α−オレフインオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックスまたはワセリンなどの炭化水素系油脂が好ましいが、これに限定されない。
【0080】
前記シリコン系油脂としては、ポリメチルシリコン、メチルフェニルシリコン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルシクロシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アルキル変性シリコン油またはアミノ変性シリコン油が好ましいが、これに限定されない。
【0081】
前記フッ素系油脂としては、パーフルオロポリエーテルが好ましいが、これに限定されない。
【0082】
前記動物または植物油脂としては、アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、ゴマ油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、杏仁油、パーム核油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ヤシ油、ククイナッツ油、小麦胚芽油、米胚芽油、シアバター、月見草オイル、マカデミアナッツ油、メドホーム油、卵黄油、牛脂、馬油、ミンク油、オレンジラフィー油、ホホバ油、キャンデリラワックス、カルナバワックス、液状ラノリンまたは硬化ヒマシ油等の動物または植物油脂が好ましいが、これに限定されない。
【0083】
前記保湿剤としては水溶性低分子保湿剤、脂溶性低分子保湿剤、水溶性高分子または脂溶性高分子が好ましいが、これに限定されない。水溶性低分子保湿剤としては、セリン、グルタミン、ソルビトール、マンニトール、ピロリドン−カルボン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールB(重合度n=2以上)、ポリプロピレングリコール(重合度n=2以上)、ポリグリセリンB(重合度n=2以上)、乳酸または乳酸塩が好ましいが、これに限定されない。
【0084】
脂溶性低分子保湿剤としては、コレステロールまたはコレステロールエステルが好ましいが、これに限定されない。
【0085】
水溶性高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアスパラギン酸塩、トラガカント、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性キチン、キトサンまたはデキストリンが好ましいが、これに限定されない。
【0086】
脂溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン・エイコセン共重合体、ポリビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体、ニトロセルロース、デキストリン脂肪酸エステルまたは高分子シリコンが好ましいが、これに限定されない。
【0087】
エモリエント剤しては、長鎖アシルグルタミン酸コレステリルエステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ロジン酸またはラノリン脂肪酸コレステリルエステルが好ましいが、これに限定されない。
【0088】
前記界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤が好ましいが、これに限定されない。
【0089】
ノニオン性界面活性剤としては、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE(ポリオキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POP(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコン、ラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドまたは水素添加大豆リン脂質が好ましいが、これに限定されない。
【0090】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、α−アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸ナトリウム、アシル化加水分解コラーゲンペプチド塩またはパーフルオロアルキルリン酸エステルが好ましいが、これに限定されない。
【0091】
カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアムモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドまたはラノリン誘導体第4級アンモニウム塩が好ましいが、これに限定されない。
【0092】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型またはアミドアミン型などの両性界面活性剤が好ましいが、これに限定されない。
【0093】
前記有機及び無機顔料としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン及びこれらの複合体等の無機顔料;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ等の有機顔料;及びこれらの無機顔料と有機顔料の複合顔料が好ましいが、これに限定されない。
【0094】
前記有機粉体としては、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;セチルリン酸亜鉛ナトリウム、ラウリルリン酸亜鉛、ラウリルリン酸カルシウム等のアルキルリン酸多価金属塩;N−ラウロイル−β−アラニンカルシウム、N−ラウロイル−β−アラニン亜鉛、N−ラウロイルグリシンカルシウムなどのアシルアミノ酸多価金属塩;N−ラウロイル−タウリンカルシウム、N−パルミトイル−タウリンカルシウム等のアミドスルホン酸多価金属塩;Nε−ラウロイル−L−リジン、Nε−パルミトイルリジン、Nα−パルミトイルオルニチン、Nα−ラウロイルアルギニン、Nα−硬化牛脂脂肪酸アシルアルギニン等のN−アシル塩基性アミノ酸;N−ラウロイルグリシルグリシン等のN−アシルポリペプチド;α−アミノカプリル酸、α−アミノラウリン酸等のα−アミノ脂肪酸;またはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、四フッ化エチルレンが好ましいが、これに限定されない。
【0095】
前記紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサングリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジンまたは2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましいが、これに限定されない。
【0096】
前記殺菌剤としては、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、感光素301号、モノニトログアヤコールナトリウムまたはウンデシレン酸が好ましいが、これに限定されない。
【0097】
前記酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピルまたはエリソルビン酸が好ましいが、これに限定されない。
【0098】
前記pH調製剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはリン酸一水素ナトリウムが好ましいが、これに限定されない。
【0099】
前記アルコールとしては、セチルアルコール等の高級アルコールが好ましいが、これに限定されない。
【0100】
また、他に加えても良い配合成分は、これに限定されるものではなく、また、前記いずれの成分も本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で配合可能であるが、全重量に対して、0.01〜5重量%で配合することが好ましく、0.01〜3重量%で配合することがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0101】
本発明の化粧料は、溶液、乳化物または粘性型混合物の形状をとることができるが、これに限定されない。本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として本発明の化合物以外に化粧料組成物に通常的に使用される成分を含むことができ、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常的な補助剤及び担体を含むことができるが、これに限定されない。
【0102】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形でも製造することができ、乳液、クリーム、化粧水、パック、ファンデーション、ローション、美容液または毛髪化粧料に製造することができるが、これに限定されない。具体的に、本発明の化粧料組成物は、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼン、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローションまたはボディクレンザーの剤形を含むが、これに限定されない。
【0103】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルの場合には、担体成分として動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛を使用することができるが、これに限定されない。
【0104】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーの場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーを使用することができる。特に、スプレーの場合には、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含むことができるが、これに限定されない。
【0105】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合には、担体成分として溶媒、溶媒化剤または乳濁化剤が使用され、水、エチルアルコール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセタート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルを使用されることができるが、これに限定されない。
【0106】
本発明の剤形が懸濁液の場合には、担体成分として水、エチルアルコールまたはプロピレングリコールのような液状希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微少結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントを使用することができるが、これに限定されない。
【0107】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングの場合には、担体成分として脂肪族アルコールスルファート、脂肪族アルコールエーテルスルファート、スルホコハク酸モノエステル、イソシアナート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルファート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、リノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルを使用することができるが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0108】
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、NO生成を抑制しかつ細胞毒性がほとんどなく、生体内で少ない濃度で腹膜炎を阻害することにより、炎症性疾患予防及び治療のための抗炎症用組成物として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】多価不飽和リソポリファチジルコリン類の細胞内抗炎症効果を確認するために、RAW264.7細胞を多様な濃度の多価不飽和リソポリファチジルコリン(リノレオイルリゾホスファチジルコリン、アラキドノイルリゾホスファチジルコリン及びドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン)とともに反応させた後、LPSによって誘導された炎症反応で細胞生存率(A)とNO生成程度(B)を測定した結果を示すグラフである(◆:リノレオイルリゾホスファチジルコリン;■:アラキドノイルリゾホスファチジルコリン;及び▲:ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン)。前記各実験は、3回反覆し、実験結果は、平均値±標準偏差で表示した(LPS処理群に対する*P<0.05;**P<0.01)。
【図2】ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの濃度による生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンを尾静脈に前投与した後、30分後にザイモサンAを投与して腹腔内炎症を誘発させて、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入程度を測定した結果を示すグラフである。各実験群は、10匹で構成され、実験結果は、平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【図3】リノレオイルリゾホスファチジルコリン及びアラキドノイルリゾホスファチジルコリンの濃度による生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにリゾホスファチジルコリン(A)及びアラキドノイルリゾホスファチジルコリン(B)をそれぞれ尾静脈に前投与した後、ザイモサンAを投与して腹腔内炎症を誘発させて、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入程度を測定した結果を示すグラフである。各実験群は、10匹で構成され、実験結果は、平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【図4】ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの投与時間別生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンを投与した後、多様な時間間隔でザイモサンAを投与して腹腔内炎症を誘発させて、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入程度を測定した結果を示すグラフである。各実験群は10匹で構成され、実験結果は平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【図5】ドコサヘキサエン酸及びドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン過酸化物の生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(1)、ドコサヘキサエン酸(2)、及び17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(3)をそれぞれ前投与した後、ザイモサンAを投与して腹腔内炎症を誘発させて、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入程度を測定した結果を示すグラフである。各実験群は10匹で構成され、実験結果は平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【図6】ドコサヘキサエノイルリソホスファチジルコリンまたは17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(リゾホスファチジルコリンの酸化物)の用量による生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(■)または17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(□)を15〜150μg/kgで腹腔投与2時間後に、ザイモサンAを投与して腹腔内炎症を誘発させた後、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入程度を測定した結果を示すグラフである。各実験群は5〜10匹で構成され、実験結果は平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【図7】ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンの用量による生体内抗炎症効果を確認するために、マウスにリゾホスファチジルエタノールアミンを15〜150μg/kgで静脈投与30分後にザイモサンAを投与して、腹腔内炎症を誘発させた後、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入(plasma leakage)程度を測定した結果を示すグラフである。各実験君は、5〜10匹で構成され、実験結果は、平均値±標準偏差で表示した(ザイモサンAのみ処理された陽性対照群に対する*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;生理食塩水を投与した陰性対照群に対する###P<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下、本発明の実施例及び製造例によって詳しく説明する。
【0111】
但し、下記実施例及び製造例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記実施例及び製造例に限定されるものではない。
<実施例1>ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの細胞内抗炎症効果の調査
大食細胞は、炎症反応と生体防御において重要な役割をすることが知られている。大食細胞を脂質多糖類(LPS)で活性化させると、誘導性酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導を通じて多量の酸化窒素(NO)を生成するようになる。
【0112】
それで、本発明者等は、RAW264.7細胞内でLPSによって誘導される炎症媒介体NOの生成に対する不飽和脂肪酸含有リゾホスファチジルコリン(lysoPC)類の影響を観察した。具体的に、RAW264.7細胞(5×10/well)をそれぞれの多価不飽和リゾホスファチジルコリンであるリノレオイルリゾホスファチジルコリン、アラキドノイルリゾホスファチジルコリン及びドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン[ジアシルホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids,Alabaster,AL,米国)とホスホリパーゼ(PLA2)(Sigma−Aldrich Corp,St.Louis,MO,米国)を一緒に処理して製造(非特許文献27−31)](0〜60μM)と37℃で2時間事前培養した後、LPS(1μg/ml)を入れて同一条件下で20時間培養した。前記培養した細胞余液にグリース試薬(Griess reagent)[2.5%HPO中、1%スルファニルアミド,0.1%N−(1−ナフチル)エチレンジアミドジヒドロクロライド]を入れて常温で15分間反応させた後に540nmで吸光度を測定して、前記過程で生成されたNOの量を測定した(Green LC,等,Anal Biochem.,1982年10月,第126(1)巻:131−8頁)。
【0113】
その結果、図1Bに見られるようにアラキドノイルリゾホスファチジルコリンは、60μMでLPS誘導NO形成を一部阻害する傾向を示したが、20%以上の阻害度を示さなかった。一方、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの場合、12μM以上の低濃度でも明らかな阻害効果を示した。ここで、50%保護用量(EC50)値は、18.2±2.1μMで算出された。一方、リノレオイルリゾホスファチジルコリンは、60μMに至るまで有意的な阻害効果を示さなかった(図1B)。
<実施例2>ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの細胞毒性の調査
本発明者等は、三種類の多価不飽和リゾホスファチジルコリンの細胞毒性をMTT分析法を用いて測定した。具体的に、RAW264.7細胞をペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)と熱によって非活性されたFBS(10%v/v)含有DMEM培地で37℃、5%CO条件下で培養した。細胞(6ないし13パッセージ(passage))を回収した後、96ウェルプレート(5×10/well)に分取培養した。各多価不飽和リゾホスファチジルコリン(0〜60μM)を入れた後、2時間静置した後、LPS(1μg/ml)存在下に前記条件で20時間培養した。細胞死率は、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド)法に基づいて570nmでの吸光度を690nmでの吸光度と比較して評価した(Lin WW.等,Br.J.Pharmacol,1998年,第125巻,1601−1609頁;Mosmann,T.,J.Immunol.Methods,1983年,第65巻,55−63頁)。
【0114】
その結果、図1Aに見られるようにアラキドノイルリゾホスファチジルコリンは、濃度による細胞毒性が多少有意的に示された一方、リノレオイルリゾホスファチジルコリンまたはドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの場合、有意的な細胞毒性が示されなかった(図1A)。
【0115】
したがって、アラキドノイルリゾホスファチジルコリンのNO生成阻害効果は、細胞毒性による結果でも推論することができるが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンによるNO生成阻害効果は、細胞毒性とは無関係な濃度で成り立ったものと見られる。これは、NO生成に対するドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの選択的阻害効果と認められる。
<実験例3>ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの静脈注射を通じた生体内抗炎症効果の調査
<3−1>リゾホスファチジルコリン類のザイモサンA誘導血漿流入阻害効果の調査
5−リポキシゲナーゼ(5−LOX)は、アラキドン酸から炎症媒介体であるロイコトリエンの生成に重要な役割をすることにより、5−LOXの阻害を通じて炎症反応の減少をもたらすことができることが報告されたことがある。また、ザイモサン誘導腹膜炎は、5−LOXによって生成されるロイコトリエンによって媒介されることが知られている(RaoTS,等,J Pharmacol Exp Ther.,1994年6月,第269(3)巻,917−25頁;Doherty N S,等,Prostaglandins.,1985年11月,第30(5)巻,769−89頁)。
【0116】
それで、本発明者等は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンのザイモサン誘導腹膜炎に対する阻害効果を調べるために、マウスにザイモサンA(saccharomyces cerevisiae)(Sigma−Aldrich Corp,St. Louis,MO,米国)を投与して腹腔内炎症を誘発させた後、各リゾホスファチジルコリン類を投与して抗炎症効果を評価した。具体的に、SPF条件下で飼育されたマウス(6週齢、雄)を搬入12時間後、薬学大学内動物保存室で12時間明暗サイクル条件下に維持した後、腹腔内炎症反応実験を実施した。まず、各マウス5〜10匹で構成された各群マウスの尾静脈に、試験群に各リゾホスファチジルコリン類10〜500μg/kg用量で注射して、対照群に生理食塩水を50〜100μl用量で注射した。続いて、30分後に、0.5%エバンスブルー染色溶液(0.2ml)で尾静脈注射した後、腹腔内に生理食塩水に溶かしたザイモサンA(1mg/ml)溶液100μlを投与した。前記投与30分後に軽微な痲酔[エーテルまたはフルオラン(fluorane)]下に頚部切断した後、腹腔内に氷冷PBSを4ml投与した後、腹腔液をプラスチック注射器で回収して遠心分離した(3,000rpm,10分)。前記遠心分離して得た上澄み液を分光光度計を使用して620nmでエバンスブルーの滲出(exudation)程度を測定することで、抗炎症効果を評価した(Arita M,等,Proc Natl Acad Sci USA.,2005年5月24日,第102(21)巻,7671−6頁;Takenaka M,等,Biol Pharm Bull.,2005年7月,第28(7)巻,1291−3頁)。
【0117】
その結果、図2に見られるようにドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、15μg/kgで有意性ある阻害効果を示した。このような効果は、500μg/kg量の範囲に至るまで濃度依存的にザイモサン誘導血漿流入を減少させた(図2)。一方、アラキドノイルリゾホスファチジルコリンを静脈注射した30分後にザイモサン(5μl/30分)を腹腔内に投入時、アラキドノイルリゾホスファチジルコリンは、50μg/kgで血漿流入を有意的に低下させた。このような阻害現象は、150μg/kgで明らかだったが、500μg/kgに増加させた時にさらに増加する傾向を示すことができなかった。一方、リノレオイルリゾホスファチジルコリンは、濃度500μg/kgに至るまで何の阻害効果も示さなかった(図3)。
【0118】
したがって、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、他のリゾホスファチジルコリン類に比べて、ザイモサンAによって誘導された血漿流入を阻害する効果がずっと優れていることが分かった。
<3−2>リゾホスファチジルコリン類のザイモサンA誘導血漿流入阻害効果の経時別調査
本発明者等は、各リゾホスファチジルコリンの抗炎症効果(ザイモサンA誘導血漿流入の阻害)を経時別に測定した。具体的に、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(50μg/kg)をマウスの尾静脈に投与時、15分から120分に至るまで経時別に投与時間を異ならせて投与(ザイモサンA投与10分前、30分前、60分前及び120分前にそれぞれ投与)した後、ザイモサンA(100mg/kg)を腹腔投与した後、エバンスブルーを投与した後、腹腔液内での血漿流入を測定した。
【0119】
その結果、図4にみられるように、10分前投与でドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの阻害効果は、明確ではなかったが、30分または60分前投与では、顕著な阻害効果を示した。一方、120分前投与で、阻害効果が若干増加した(図4)。
<3−3>ドコサヘキサエン酸またはその過酸化物のザイモサンA誘導血漿流入阻害効果の調査
前記実施例<2−1>で長期間間隔(120分前投与)過程で他の機序が追加的に関与するものと思慮される。ゆえに、長期間間隔では少なくとも二つのザイモサンA誘導血漿流入の短時間効果機序と長期間効果機序が一緒に関与するものと思慮される。
5−リポキシゲナーゼの直接的な抑制によるものと推定されるザイモサンA誘導血漿流入に対するドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの短時間抑制効果は、ロイコトリエンC誘導血漿流入が、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンによって妨害されたためであると思慮される。
【0120】
それで、本発明者等は、前記長期効果が代謝を通じた代謝物の効果なのかどうかを調べるため、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサエン酸及び17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(17(S)−ヒドロペルオキシ−4,7,10,13,15,19−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン)をそれぞれ使用して、腹腔液内での血漿流入程度を観察した。ドコサヘキサエン酸及び17−HPDHAリゾホスファチジルコリンのドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンとの関係は、下記のようである:
【0121】
【化2】

【0122】
具体的に、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(50μg/kg)、ドコサヘキサエン酸(50μg/kg)及び17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(17(S)−ヒドロペルオキシ−4,7,10,13,15,19−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン)[ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(20μM)を含んだホウ砂緩衝液(borax buffer)(50mM,pH9.0)に大豆リポキシゲナーゼ(大豆LOX−1)(200ユニット/ml)を入れて、25℃で30分間反応させた後に、C18カラム(2×1cm)を通過させてメタノールで溶出させることで製造(Huang LS,等,J Agric Food Chem.,2008年,9月10日,第56(17)巻,7808−14頁)]の一定量(50μg/kg)をザイモサンA投与(100mg/kg)の投与30分前にそれぞれ投与した後、30分後に腹腔液内での血漿流入を測定した。
【0123】
その結果、図5にみられるように、ドコサヘキサエン酸は、血漿流入で有意な阻害効果を示さず、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン過酸化物は、一部阻害効果を示したが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの阻害効果に比べて多少低かった(図5)。
【0124】
したがって、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの血漿流入の阻害効果は、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの酸化によるものであることが分かる。
<実験例4>ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの腹腔注射を通じた生体内抗炎症効果の調査
本発明者等は、各試験群マウスの腹腔内にドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンまたは17−HPDHAリゾホスファチジルコリン(ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの酸化物)を15〜150μg/kg用量で注射して、対照群に生理食塩水を50〜100μl用量で投与した。続いて、2時間後に、0.5%エバンスブルー染色溶液(0.2ml)で尾静脈注射した後、腹腔内に生理食塩水に溶解したザイモサンA(1mg/ml)溶液100μlを投与した。前記投与30分後に軽微な痲酔[エーテルまたはフルオラン(fluorane)]下に頚部切断した後、腹腔内に氷冷PBSを4ml投与した後、腹腔液をプラスチック注射器で回収して遠心分離した(3,000rpm,10分)。前記のようにエバンスブルーの滲出程度を測定することで、抗炎症効果を評価した。
【0125】
その結果、図6にみられるように、腹腔に投与されたドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンは、15μg/kg以上で有意性ある阻害効果を示した。このような効果は、150μg/kg量の範囲に至るまで濃度依存的にザイモサン誘導血漿流入を減少させた(図6)。一方、17−HPDHAリゾホスファチジルコリンも濃度にしたがって血漿流入を低下させた。このような阻害現象は、15μg/kgでも明確であり、150μg/kgに至るまで濃度による増加傾向を示した。結論的に、17−HPDHAリゾホスファチジルコリンは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンより多少効果があった。これは、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンが17−HPDHA誘導体を通じて生物活性代謝産物に変換したものと思慮される。
【0126】
したがって、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンや17−HPDHAリゾホスファチジルコリンは、腹腔内注射でも少ない用量でザイモサンAによって誘導された血漿流入を効果的に阻害する効果を示すので、抗炎症効果が優れていることが分かった。
<実験例5>ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンの静脈注射を通じた生体内抗炎症効果の調査
本発明者等は、各試験群マウスの静脈にドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンを15〜150μg/kg用量で注射して、対照群で生理食塩水を50〜100ul用量で投与した。続いて、0.5%エバンスブルー染色溶液(0.2ml)で尾静脈注射した後、静脈内に生理食塩水に溶解したザイモサンA(1mg/ml)溶液100ulを投与した。前記投与後に前記のようにエバンスブルーの滲出(exudation)程度を測定することで、抗炎症効果を評価した。
【0127】
その結果、図7に見られるように、腹腔に投与されたドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミンは、50μg/kg以上で有意性ある阻害効果を示した。このような効果は、150μg/kg量の範囲に至るまで濃度依存的にザイモサン誘導血漿流入を減少させた(図7)。
【0128】
下記には、本発明の組成物のための製造例を例示する。
<製造例1>製薬製剤の製造
<1−1>散剤の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 20mg
乳糖 20mg
前記の成分を混合した後、気密包に充填して散剤を製造した。
<1−2>錠剤の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 10mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造した。
<1−3>カプセル剤の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 10mg
結晶性セルロース 3mg
ラクトース 14.8mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法にしたがってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
<1−4>液剤の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 20mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させてレモン香を適量加えた後、前記の成分を混合した後、精製水を加えて全体を100mlに調節した後、茶色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造する。
<1−6>注射剤の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 10mg/ml
薄い塩酸BP pH7.6になるまで
注射用塩化ナトリウムBP 最大1ml
適当な容積の注射用塩化ナトリウムBPの中にドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンを溶解させて、生成された溶液のpHを薄い塩酸BPを使用してpH7.6に調節して、注射用塩化ナトリウムBPを使用して容積を調節して充分に混合した。無菌フィルターを通過させた溶液を透明ガラス製の5mlタイプIアンプル中に充填して、上部ガラスを溶解させることで封入して、UV殺菌条件下で注射液剤を製造した。
<製造例2>食品の製造
本発明の抽出物またはその分画物を含む食品を次のように製造した。
<2−1>小麦粉食品の製造
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン0.005〜0.5重量部を小麦粉に添加して、その混合物を使用してパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して健康促進用食品を製造した。
<2−2>乳製品の製造
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン0.01〜0.1重量部を牛乳に添加して、前記牛乳を使用してバター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
<2−3>禅食の製造
玄米、麦、もち米、鳩麦を公知の方法でα化させて乾燥させたものを倍前した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
【0129】
黒豆、黒ごま、えごまも公知の方法で蒸して乾燥させたものを倍前した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
【0130】
本発明のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンを真空濃縮機で減圧濃縮して、噴霧、熱風乾燥器で乾燥して得た乾燥物を粉砕機で粒度60メッシュに粉砕して乾燥粉末を得た。
【0131】
前記で製造した穀物類、種実類及びドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンの乾燥粉末を次の割合で配合して製造した。
【0132】
穀物類(玄米30重量部、鳩麦15重量部、麦20重量部)、
種実類(えごま7重量部、黒豆8重量部、黒ごま7重量部)、
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(0.1重量部)、
霊芝(0.5重量部)、
地黄(0.5重量部)
<2−4>健康補助食品の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 0.5mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
無機質混合物 適量
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1リン酸カリウム 15mg
第2リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
前記のビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に相応しい成分を好ましい実施例として混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても構わず、通常の健康食品製造方法によって前記の成分を混合した後、顆粒を製造して、通常の方法によって健康食品組成物製造に使用することができる。
<製造例3>健康飲料の製造
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン 1mg
クエン酸 100mg
オリゴ糖 100mg
梅濃縮液 2mg
タウリン 100mg
精製水を加えて全体 500ml
通常の健康飲料製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱した後、できた溶液をろ過して滅菌された1l容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管した後、本発明の健康飲料組成物製造に使用する。
【0133】
前記組成比は、比較的に嗜好飲料に相応しい成分を好ましい実施例として混合組成したが、需要階層、需要国家、使用用途など地域的、民族的嗜好によってその配合比を任意に変形実施してもかまわない。
<製造例4>化粧品の製造
<4−1>乳化剤形の化粧品製造
表1に記載した組成で乳化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
【0134】
1)1〜9の原料を混合した混合物を65〜70℃に加熱した。
【0135】
2)10の原料を前記工程1)の混合物に投入した。
【0136】
3)11〜13の原料の混合物を65〜70℃に加熱して完全に溶解させた。
【0137】
4)前記工程3)を経て、前記2)の混合物を徐々に添加して8,000rpmで2〜3分間乳化させた。
【0138】
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記工程4)の混合物に添加して2分間さらに乳化させた。
【0139】
6)15〜17の原料をそれぞれ計量した後、前記工程5)の混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
【0140】
7)前記工程6)の混合物を乳化後、脱気過程を経て25〜35℃に冷却させることで、乳化剤形の化粧品を製造した。
【0141】
【表1】

【0142】
<4−2>可溶化剤形の化粧品製造
表2に記載した組成で可溶化剤形の化粧品を製造した。製造方法は、下記のとおりである。
【0143】
1)2〜6の原料を1の原料(精製水)に入れてミキサーを使用して溶解させた。
【0144】
2)8〜11の原料を7の原料(アルコール)に入れて完全に溶解させた。
【0145】
3)前記工程2)の混合物を前記工程1)の混合物に徐々に添加しながら可溶化させた。
【0146】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0147】
上述したように、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンは、炎症性疾患治療剤開発、炎症性疾患改善用健康食品開発、及び抗炎症用化粧品開発などに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミン(Docosahexaenoyl lysophosphatidylamine)を有効成分として含む炎症性疾患の予防及び治療用組成物。
【請求項2】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(Docosahexaenoyl lysophosphatidylcholine)、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン(docosahexaenoyl lysophosphatidylethanolamine)及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン(2−Docosahexaenoyl lysophosphatidylcholine)からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1記載の炎症性疾患予防及び治療用組成物。
【請求項3】
前記炎症性疾患が、喘息、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎、肝炎及び退行性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1記載の炎症性疾患予防及び治療用組成物。
【請求項4】
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを炎症にかかった個体に投与する工程を含む、前記個体の炎症抑制方法。
【請求項5】
薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを炎症性疾患にかかった個体に投与する工程を含む、炎症性疾患治療方法。
【請求項6】
薬学的に有効な量のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを個体に投与する工程を含む、炎症性疾患予防方法。
【請求項7】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項4ないし請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記炎症性疾患が、喘息、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎、肝炎及び退行性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項5または請求項6記載の方法。
【請求項9】
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、炎症性疾患の予防及び改善用健康食品。
【請求項10】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項9記載の炎症性疾患予防及び改善用健康食品。
【請求項11】
前記炎症性疾患が、喘息、腹膜炎、胃炎、腸炎、関節炎、腎臓炎、肝炎及び退行性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項9記載の炎症性疾患予防及び改善用健康食品。
【請求項12】
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、抗炎症用皮膚外用剤。
【請求項13】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項12記載の抗炎症用皮膚外用剤。
【請求項14】
ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンを有効成分として含む、抗炎症用化粧料組成物。
【請求項15】
前記のドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルアミンが、ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリン、ドコサヘキサノイルリゾホスファチジルエタノールアミン及び2−ドコサヘキサエノイルリゾホスファチジルコリンからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項14記載の抗炎症用化粧料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260843(P2010−260843A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234979(P2009−234979)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(509282608)ジ インダストリー アンド アカデミック コーオペレイション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】THE INDUSTRY & ACADEMIC COOPERATION IN CHUNGNAM NATIONAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】79 DAEHANGNO, YUSEONG−GU DAEJEON 305−764, REPUBLIC OF KOREA
【Fターム(参考)】