説明

ドラムブレーキ装置

【課題】小型・軽量化を図る事ができ、しかも、制動に伴う反力がバックプレートに加わる事がない構造を実現する。
【解決手段】第一の拡張レバー33と第二の拡張レバー34とを、枢軸31を中心に揺動変位可能に支持する。又、この第一の拡張レバー33の先端部を一方のブレーキシュー4aのウェブ7aに、このウェブ7aを径方向外方に押圧可能な状態で係合する。又、前記第二の拡張レバー34の先端部をストラット32の基端部に、このストラット32を径方向外方に押圧可能な状態で係合する。そして、駆動装置27aを構成する伝達機構56により、前記第一の拡張レバー33と、前記第二の拡張レバー34とを互いに逆方向に揺動変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両(自動車)を停止状態に保つ為のドラムブレーキ装置の改良に関する。具体的には、制動力の反力を効率良く支承できる構造を採用して、しかも、ドラムブレーキ装置の小型・軽量化を図り易い構造の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動を行う為に、ドラムブレーキが広く使用されている。ドラムブレーキには、各種型式のものが知られている。このうちで、リーディング・トレーリング式のドラムブレーキが、前進時にも後退時にも安定した制動力を得られる事から、広く使用されている。図5〜7は、特許文献1に記載された、リーディング・トレーリング式のドラムブレーキの1例を示している。このドラムブレーキは、バックプレート1と、アンカ2と、ホイールシリンダ3と、一対のブレーキシュー4a、4bと、ドラム5とを備える。
【0003】
このうちのバックプレート1は、ナックル、アクスルハウジング等の懸架装置の構成部材に支持固定される。又、前記アンカ2は、前記バックプレート1の円周方向1箇所の径方向外寄り部分に支持固定されている。又、前記ホイールシリンダ3は、前記バックプレート1の外径寄り部分で、このバックプレート1の径方向に関して前記アンカ2と反対側位置に固定されている。前記ホイールシリンダ3は、シリンダ筒6の両端部に一対のピストンを油密に内嵌したもので、このシリンダ筒6の中央部内側に油圧を導入する事により、このシリンダ筒6の両端部からの前記両ピストンの突出量を増大させる(これら両ピストン同士の間隔を拡げる)様にしている。又、前記両ブレーキシュー4a、4bは、前記バックプレート1の径方向反対側2箇所位置で前記アンカ2と前記ホイールシリンダ3との間部分に、このバックプレート1の径方向に関する変位を可能に支持している。
【0004】
前記両ブレーキシュー4a、4bはそれぞれ、大略円弧形のウェブ7a、7bと、このウェブ7a、7bの外周縁部にそれぞれの幅方向中央部を溶接等により固定した裏板8a、8bと、この裏板8a、8bの外周面に添着固定したライニング9a、9bとから成る。そして、それぞれのウェブ7a、7bの周方向一端縁を前記アンカ2に突き当てると共に、周方向他端縁を前記両ピストンの先端部に形成した係合溝の底面に突き当てている。更に、前記ドラム5は、鋳鉄等によりシャーレ状に形成されており、前記両ブレーキシュー4a、4bを覆う状態で設けられて車輪と共に回転する。
【0005】
上述の様に構成するドラムブレーキにより制動を行う際には、ブレーキペダルの踏み込みによって前記ホイールシリンダ3内に油圧を導入し、前記シリンダ筒6からの前記両ピストンの突出量を増大させる。すると、これら両ピストンの先端部にそれぞれの周方向他端縁を突き当てた、前記両ウェブ7a、7b同士の間隔が拡がり、前記両ブレーキシュー4a、4bが、前記アンカ2を中心として径方向外方に揺動変位する。この結果、これら両ブレーキシュー4a、4bのライニング9a、9bの外周面が前記ドラム5の内周面に押し付けられて、制動が行われる。制動解除に伴って前記ホイールシリンダ3内の油圧を除くと、前記両ブレーキシュー4a、4bが、リターンスプリング10a、10bの弾力により、前記両ピストンを前記シリンダ筒6内に押し込みつつ、径方向内方に変位する。
【0006】
尚、図5〜7に示した従来構造の第1例の場合、自動間隙調整用のストラット11を設けて、前記ライニング9a、9bの摩耗に拘らず、非制動状態での、これら両ライニング9a、9bの外周面と前記ドラム5の内周面との間の隙間(間隙)を適正値に保てる様にしている。前記ストラット11は、主板部12と副板部13とを枢軸14により連結して成る。又、この枢軸14は、この副板部13に固定されると共に、前記主板部12に形成した長孔15に、この長孔15の長さ方向の変位を可能に係合している。制動に伴って前記両ウェブ7a、7b同士の間隔が拡がると、前記副板部13が前記枢軸14を中心として、図6の時計方向に揺動する。
【0007】
この副板部13の端縁のうちで前記主板部12の端縁と突き当たる部分は、この揺動方向に関して後方(図6の下方)に向かう程前記枢軸14の中心からの距離が長くなっている。この為、この枢軸14を中心とする前記副板部13の揺動変位に伴って、この副板部13の端縁と前記主板部12の端縁とが係合する(突き当たる)。そして、制動解除に伴って前記両ウェブ7a、7b同士の間隔が、前記両リターンスプリング10a、10bの弾力に基づいて収縮した場合でも、その収縮量は、制動の為の拡張量に比べて、前記副板部13の揺動変位に見合う分だけ縮まる。この為、前記両ライニング9a、9bの摩耗に拘らず、これら両ライニング9a、9bの外周面と前記ドラム5の内周面との間の隙間の大きさを適正値に保てる。
【0008】
走行中の車両を減速乃至は停止させる、所謂サービスブレーキの使用時の作用、並びに、自動間隙調整装置の作用は上述の通りであるが、ブレーキペダルを踏み込まずに車両を停止状態に維持する駐車ブレーキ装置を、上述の様なドラムブレーキに組み込む事も、広く行われている。又、サービスブレーキを油圧式に行い、駐車ブレーキを電動モータを駆動源とするリンク機構により機械的に行う事も、特許文献2〜3、7に記載される等により従来から知られており、一部の車両で実施されている。更に、油圧機構を省略し、電動モータを駆動源とする機械式の増力機構のみで、サービスブレーキと駐車ブレーキとの両方の機能を発揮させる電動式のブレーキ装置も、特許文献4〜6等に記載されて、従来から知られている。
【0009】
図8は、特許文献7に記載された、サービスブレーキを油圧式に、駐車ブレーキを電動モータを駆動源とするリンク機構により機械的に、それぞれ行う、ドラムブレーキの1例を示している。ドラムブレーキの基本的構造に関しては、前述の図5に記載した一般的な構造と同様であるから重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、駐車ブレーキ装置部分の構成及び作用を中心に説明する。
【0010】
一対のブレーキシュー4a、4b同士の間隔を拡縮する為の拡縮装置16を、これら両ブレーキシュー4a、4bを構成するウェブ7a、7bの内周縁同士の間に設け、駆動装置17により前記拡縮装置16を伸縮させる(駆動する)様にしている。
この拡縮装置16は、ストラット11bと、第一、第二の拡張レバー18、19と、これら第一、第二の拡張レバー18、19の中間部同士を連結する結合リンク20とを備えている。
【0011】
この様な構造の駐車ブレーキ装置により制動力を発生させる場合、前記第一、第二の拡張レバー18、19の基端部を、前記駆動装置16を構成する第一、第二の押圧部材21、22により、互いに反対側から押圧する。すると、前記第一の拡張レバー18が、前記結合リンク20の一端部(図8の右側)との枢支部23aを中心として揺動変位する一方で、前記第二の拡張レバー19が、前記結合リンク20の他端部(図8の左側)との枢支部23bを中心として前記第一の拡張レバー18と逆方向に揺動変位する。すると、前記第一の拡張レバー18の先端部が一方のブレーキシュー4aを径方向外方に押圧すると共に、前記第二の拡張レバー19の先端部が、前記ストラット11bを介して他方のブレーキシュー4bを径方向外方に押圧する。その結果、前記両ブレーキシュー4a、4bのライニング9a、9bをドラム5の内周面に押し付けて、制動を行わせる。
【0012】
この様な構造の場合、前記第一、第二の拡張レバー18、19、及び結合リンク20で構成するリンク式の増力機構は、伝達ロスが少ない為、比較的出力の小さい電動モータを使用して小型・軽量化を図る事ができる。又、制動に伴う反力を前記増力装置内(前記結合リンク20部分)で相殺して、前記駆動装置17を支持固定している前記バックプレート1にこの制動に伴う大きな反力が加わる事を防止できる。但し、前記第一、第二の拡張レバー18、19を、前記ストラット11bの配設方向(図8の左右方向)に隣り合う状態で配置している。この為、このストラット11bの配設方向に占める前記第一、第二の拡張レバー18、19の寸法を小さくする観点、或は、前記第一、第二の拡張レバー18、19の基端部の揺動量を大きく確保する観点から改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−168228号公報
【特許文献2】特開平8−244596号公報
【特許文献3】特開平11−105680号公報
【特許文献4】特開2003−28215号公報
【特許文献5】特開2006−336868号公報
【特許文献6】米国特許第5310026号明細書
【特許文献7】特開2011−99458号公報
【特許文献8】特開2003−314594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、伝達ロスが少ないリンク式の増力装置を採用する事により、比較的出力の小さな電動モータを使用でき、しかも、制動に伴う反力が前記増力装置、或は駆動装置を支持しているバックプレート等の部材に加わる事がない構造で、より一層の小型・軽量化を図るべく、前記増力装置の、ストラットの配設方向に関する寸法を小さくできる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のドラムブレーキ装置は、前述した従来から知られているドラムブレーキ装置と同様に、バックプレートと、一対のブレーキシューと、ドラムと、拡縮装置と、この拡縮装置を駆動する為の駆動装置とを備える。
このうちのバックプレートは、ナックル、アクスルハウジング等の懸架装置の構成部材に支持固定される。
又、前記両ブレーキシューは、前記バックプレートの径方向反対側2箇所位置に、このバックプレートの径方向に関する変位を可能に支持している。
又、前記ドラムは、前記両ブレーキシューを覆う状態で設けられて、車輪と共に回転する。
又、前記拡縮装置は、前記両ブレーキシュー同士の間隔を拡縮する為、これら両ブレーキシューを構成するウェブの内周縁同士の間に設けられている。
【0016】
特に、本発明のドラムブレーキ装置に於いては、前記拡縮装置は、枢軸と、ストラットと、第一、第二の拡張レバーとを備える。
このうちの枢軸は、これら第一、第二の拡張レバーを、この枢軸を中心とした揺動が可能な状態に支持するものである。
又、前記第一の拡張レバーは、前記枢軸を挿通する為の第一の通孔を有し、その先端部を、前記両ブレーキシューのうちの一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの一方の部材に、この一方の部材を径方向外方に押圧可能に係合させている。
又、前記第二の拡張レバーは、前記枢軸を挿通する為の第二の通孔を有し、その先端部を、前記一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの他方の部材に、この他方の部材を径方向外方に押圧可能に係合させている。
この為に、前記第一の拡張レバーの一部と、前記第二の拡張レバーの一部とを、前記枢軸の軸方向に関して重畳した状態で配置している。
又、前記ストラットの先端部は、前記両ブレーキシューのうちの他方のブレーキシューのウェブに、このウェブを径方向外方に押圧可能に係合させている。
【0017】
又、前記駆動装置は、伝達機構と、この伝達機構を駆動する為の駆動源とを備える。
このうちの伝達機構は、前記第一の拡張レバーと係合して、この第一の拡張レバーを、前記枢軸を中心として揺動させる第一の伝達部を有する。更に、前記第二の拡張レバーと係合して、この第二の拡張レバーを前記枢軸を中心として前記第一の拡張レバーと逆方向に揺動させる第二の伝達部を有する。
【0018】
上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記第一の拡張レバーを、互いに平行に離隔した状態で設けられた一対の板部と、これら両板部を連結する連結部とにより構成する。
又、前記第一の拡張レバーの両板部の互いに整合する位置に、一対の前記第一の通孔を形成する。又、これら両板部の先端部に、前記一方の部材と係合可能な一対の第一の係合部を設ける。
一方、前記第二の拡張レバーに前記第二の通孔を形成する。又、この第二の拡張レバーの先端部に、前記他方の部材と係合可能な第二の係合部を設ける。更に、この第二の拡張レバーを、前記第一の拡張レバーの両板部同士の間部分に配置する。そして、前記枢軸を、前記両第一の通孔と、前記第二の通孔とに挿通する。
【0019】
又、上述の様な請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記他方の部材と、前記第二の拡張レバーの第二の係合部との係合部を、前記第一の拡張レバーの両板部同士の間部分に配置する。
【0020】
上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に例えば、請求項4に記載した発明の様に、前記伝達機構を、その一部に雄ねじ部を有する雄ねじ部材と、この雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する雌ねじ部材とを備えた送りねじ機構とする。
又、前記第一の伝達部を、前記雄ねじ部材又はこの雄ねじ部材と連動してこの雄ねじ部材の軸方向に変位可能な部材に設ける。
又、前記第二の伝達部を、前記雌ねじ部材又はこの雌ねじ部材と連動して前記雄ねじ部材の軸方向に変位可能な部材に設ける。
そして、前記第一の拡張レバーと、前記第一の伝達部とを係合させる。
更に、前記第二の拡張レバーと、前記第二の伝達部とを係合させる。
【0021】
又、上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記雄ねじ部材の基端部に、前記駆動源の回転力を、この雄ねじ部材に伝達可能な連結部材を、この雄ねじ部材に対して揺動可能に係合する。
又、前記第一の拡張レバーと、前記送りねじ機構の第一の伝達部とを互いに揺動可能な状態に係合する。
更に、前記第二の拡張レバーと、この送りねじ機構の第二の伝達部とを互いに揺動可能な状態に係合する。
【0022】
上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した発明の様に、前記第一の通孔の中心から、前記第一の拡張レバーの先端部と前記一方の部材との係合部までの距離を、この中心から、この第一の拡張レバーと前記第一の伝達部との係合部までの距離よりも小さくする。
又、前記第二の通孔の中心から、前記第二の拡張レバーの先端部と前記他方の部材との係合部までの距離を、この中心から、この第二の拡張レバーと前記第二の伝達部との係合部までの距離よりも小さくする。
【0023】
又、上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に例えば、請求項7に記載した発明の様に、前記第一、第二の拡張レバーの基端部を、前記バックプレートに形成した通孔を通じて、このバックプレートの両側面のうちで前記両ブレーキシューを設置した側と反対側の面である裏面から突出させる。
又、前記バックプレートの裏面で前記通孔を覆う部分に、駆動源である電動モータを設置する。
又、前記第一の拡張レバーの基端部と、前記第一の伝達部とを係合させる。
更に、前記第二の拡張レバーの基端部と、前記第二の伝達部とを係合させる。
【0024】
又、上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項8に記載した発明の様に、前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、非制動時の状態で、前記枢軸を挟み、このストラットの配設方向に関して互いに反対側に配置する。
【0025】
或は、請求項9に記載した発明の様に、前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、非制動時の状態で、前記ストラットの配設方向に関する前記枢軸の位置と、ほぼ同位置(例えば、制動に伴う変位方向に関して、1mmの範囲内)に配置する。
【0026】
又、上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項10に記載した発明の様に、前記第二の拡張レバーの先端部を、非制動時に前記一方の部材側への変位を規制した状態で、この一方の部材と係合させる。
【0027】
又、上述の様な本発明のドラムブレーキ装置を実施する場合に具体的には、請求項11に記載した発明の様に、前記伝達機構を不可逆性を有するものとする。
【発明の効果】
【0028】
上述した様に構成する本発明のドラムブレーキ装置は、次の様に作用して、制動力を発揮する。制動時には、駆動装置により拡縮装置を構成する第一、第二の拡張レバーが、枢軸を中心として互いに反対方向に揺動変位して、これら第一、第二の拡張レバーの先端部同士の間隔を拡げる。そして、前記第一の拡張レバーの先端部が一方のブレーキシューのウェブとストラットとのうちの一方の部材を直接又は他の部材を介して、前記第二の拡張レバーの先端部が前記一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの他方の部材を直接又は他の部材を介して、径方向外方に押圧する。その結果、前記両ブレーキシューが径方向外方に変位して、これら両ブレーキシューのライニングをドラムの内周面に押し付けて、制動を行わせる。
【0029】
この制動に伴って、前記第一、第二の拡張レバーの先端部に、互いに近づく方向の反力が加わる。この反力は、前記拡縮装置を構成する枢軸、及び第一、第二の拡張レバーの両基端部を介して前記駆動装置を構成する伝達機構に、互いに反対方向の力として加わる。この為、前記枢軸、及びこの伝達機構に加わった互いに反対方向の力は、前記拡縮装置及び伝達機構内で相殺される。その結果、バックプレート等、前記駆動装置を支持している部分に、制動に伴って大きな力が加わる事はない。
【0030】
前述の様な構成、及び作用を有する本発明のドラムブレーキ装置によれば、第一、第二の拡張レバー及び枢軸から成る、伝達ロスの少ないリンク式の増力装置を採用する事により、比較的出力の小さな電動モータを使用して小型・軽量化を図る事ができる。しかも、制動に伴う反力を前記拡縮装置及び駆動装置内で相殺して、この拡縮装置、或は駆動装置とバックプレートとの結合部に大きな力が加わる事のない構造を実現できる。この為、前記拡縮装置を構成する各部材(枢軸、第一、第二の拡張レバー等)、及び前記駆動装置を構成する各部材(後述する雄ねじ部材、雌ねじ部材等)にさえ、十分な剛性及び強度を持たせておけば、前記バックプレート等、前記拡縮装置、或は駆動装置を支持している部分の剛性及び強度を特に大きくする必要がない。これらにより、ドラムブレーキ装置の軽量化を図り易い。
【0031】
更に、本発明の場合、前記第一、第二の拡張レバーの一部同士を、前記枢軸の軸方向に関して重畳した状態で配置している。この為、前記ストラットの配設方向に占める、前記第一、第二の拡張レバーを組み合わせて成る、前記増力装置の寸法を小さく抑える事ができる。その結果、ドラムブレーキ装置の、より一層の小型・軽量化を図れる。又、前記第一、第二の拡張レバー同士が揺動する際、これら第一、第二の拡張レバー同士が、前記ストラットの配設方向に関して干渉し難い。この為、これら第一、第二の拡張レバーの揺動量を確保し易い。又、これら第一、第二の拡張レバーのそれぞれの先端部の、前記ストラットの配設方向に関する寸法を大きくして、これら先端部の剛性を確保し易い。更に、請求項2記載した発明の場合には、前記第一の拡張レバーの両板部の先端部に形成された一対の第一の係合部と前記一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの一方の部材とを、2箇所位置で係合させる為、前記第一の拡張レバーによりこの一方の部材に対して、安定した押圧力を付与できる。
【0032】
又、請求項3に記載した発明の場合、前記一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットのうちの他方の部材と、前記第二の拡張レバーの第二の係合部との係合部を、前記第一の拡張レバーの両板部同士の間部分に配置している。この為、前記他方の部材とこの第二の拡張レバーとの、前記ストラットの配設方向、及び、前記枢軸の軸方向に関する位置決めを図る事ができる。更に、前記ストラットの配設方向に関する寸法を小さく抑える事ができる。この為、ドラムブレーキ装置の小型・軽量化を、より一層図れる。
【0033】
又、請求項5に記載した発明の場合、送りねじ機構を構成する雄ねじ部材と、この雄ねじ部材の基端部に係合された連結部材とが揺動可能に係合されており、更に第一、第二の拡張レバーと、これら第一、第二の拡張レバーが係合する前記送りねじ機構の第一、第二の伝達部とが揺動可能な状態で係合している。この為、前記第一、第二の拡張レバーが前記枢軸を中心として揺動する際、この揺動に対応して前記送りねじ機構を構成する各部材も揺動する。その結果、駆動源からの回転力を、前記連結部材を介して前記送りねじ機構を構成する各部材に円滑に伝達できる。
【0034】
又、請求項6に記載した発明の場合、前記第一、第二の拡張レバーの揺動の中心を、出力側であるそれぞれの先端側に偏らせている。この為、比較的小型の駆動源を用いて、前記第一、第二の拡張レバーに揺動する為の駆動力を加えた場合でも、これら第一、第二の拡張レバーの先端部は大きな力で間隔が拡げられる。
【0035】
又、請求項8に記載した発明の場合、前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、前記枢軸を挟んで、前記ストラットの配設方向に関して互いに反対側に位置させている。この為、ドラムブレーキ装置が制動力を発生させる前後に於ける、前記第一、第二の拡張レバー同士のレバー比の変化が少なくなり、安定した制動力を発揮できる。
【0036】
又、請求項9に記載した発明の場合、前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、前記ストラットの配設方向に関する前記枢軸の位置と、ほぼ同位置に配置させている。この様な構造を採用しても、ドラムブレーキ装置が制動力を発生させる前後に於ける、前記第一、第二の拡張レバー同士のレバー比の変化を抑える事ができる。
【0037】
又、請求項10に記載した発明の場合、前記第二の拡張レバーの先端部を、非制動時の前記一方の部材側への変位を規制した状態で、この一方の部材と係合している。この為、非制動時に於ける前記第二の拡張レバーの、前記ストラットの配設方向に関する位置決めを、この第二の拡張レバーの先端部と前記一方のブレーキシュー及び前記ストラットとの係合により図る事ができる。
【0038】
又、請求項11に記載した発明の場合、前記伝達機構を、不可逆性を有するものとしている。この為、電動モータ等の駆動源への通電を停止した場合でも、減速機等に別途のロック構造を設ける事なく、制動力を発揮した状態を維持する事ができる。その結果、ドラムブレーキ装置の低コスト化を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態の1例を示す、バックプレート及びホイールシリンダ及びアンカを省略した状態で示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態の1例を示す、正面図。
【図4】本発明の実施の形態の1例を示す、図3のA−A断面図。
【図5】従来構造の第1例を示す正面図。
【図6】従来構造の第1例を示す、図5のB−B断面図。
【図7】従来構造の第1例を示す、図5のC−C断面図。
【図8】従来構造の第2例を示す、ドラムブレーキの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1〜4は、請求項1〜8、10〜11に対応する、本発明の実施の形態の1例を示している。本例は、本発明のドラムブレーキ装置の構造を、駐車ブレーキ装置に適用したものである。尚、駐車ブレーキ装置以外の構造及び作用に就いては、前述の図5〜8に示した従来構造を含めて、従来から広く知られているリーディング・トレーリング式のドラムブレーキ装置と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。又、サービスブレーキの構造は、前述した従来構造と同様に、油圧機構により構成している。但し、本発明のドラムブレーキ装置の構造は、サービスブレーキ装置に適用する事もできる。
【0041】
本例のドラムブレーキ装置を構成する駐車ブレーキ装置は、前述した従来から知られているドラムブレーキ式駐車ブレーキ装置と同様に、バックプレート1と、一対のブレーキシュー4a、4bと、ドラム5(図8参照)と、拡縮装置16aと、この拡縮装置16aを駆動する為の駆動装置17aとを備える。
【0042】
特に、本例のドラムブレーキ装置を構成する駐車ブレーキ装置の場合、前記拡縮装置16aは、枢軸24と、ストラット25と、第一、第二の拡張レバー26、27とを備える。
このうちの枢軸24は、これら第一、第二の拡張レバー26、27の一部同士を、前記枢軸24の軸方向に関して互いに重畳した状態で、且つ、この枢軸24を中心とした揺動が可能な状態に支持するものである。
【0043】
又、前記ストラット25は、特許文献7に記載される等により広く知られている様に、保持筒28と、ねじ杆29と、ねじ筒30とを組み合わせて成る。ライニング9a、9bの磨耗時には、レバー31により前記ねじ杆29を回転させ、前記ストラット25を伸張させる。尚、本例の場合、前記ねじ筒30の基端部(図1〜4の右側端部)にプレス成形等を施す事により、第一係合平坦部32を形成している。又、前記保持筒28の先端部(図1〜4の左側端部)にプレス成形等を施す事により、第二係合平坦部33を形成している。又、この第二係合平坦部33の先端部に、前記両ブレーキシュー4a、4bのうちの他方のブレーキシュー4bのウェブ7bを径方向外方に押圧可能に係合できる切り欠き34を形成している。
尚、自動間隙調整装置の構造は、前述の図5〜8に記載した従来構造の自動間隙調整装置の構造を適用する事もできる。何れの構造を適用するにしても、この様な自動間隙調整装置の構造及び作用に就いては、前記特許文献6〜8に記載される等により従来から広く知られており、本発明の特徴部分でもない為、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0044】
又、前記第一の拡張レバー26は、板状の素材を曲げ形成する等して造り、互いに平行に、且つ、隔離した状態で設けられた一対の第一板部35、35と、これら両第一板部35、35の一部を連結する第一連結部36とから成る。
【0045】
このうちの両第一板部35、35の中間部のうちの互いに整合する位置に、これら両第一板部35、35を、厚さ方向に貫通した一対の第一の通孔37を、互いに同心に形成している。又、これら両第一板部35、35の先端部(図1〜2、4の上端部)に、前記両ブレーキシュー4a、4bのうちの一方のブレーキシュー4aのウェブ7aと、このウェブ7aを径方向外方に押圧可能な状態で係合可能な、一対の第一の係合部38、38を形成している。
【0046】
又、前記両第一板部35、35の中間部と基端部(図1〜2、4の下端部)とは、段差部39を介して、これら両第一板部35、35の基端部同士の間隔が、中間部同士の間隔よりも大きくなる状態で連続している。又、前記両第一板部35、35の基端部の前記一方のブレーキシュー4a側の端縁に、この一方のブレーキシュー4a側に開口した部分円弧状の一対の第一の切り欠き40を形成している。尚、前記両第一の通孔37の中心(組み付け状態に於ける、前記枢軸24の中心)と前記両第一の係合部38、38(組み付け状態に於ける、これら両第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合部)との距離を、この第一の通孔37の中心と前記両第一の切り欠き40(組み付け状態に於ける、これら両第一の切り欠き40と後述する軸受部材51の両第一の凸部60との係合部)との距離よりも十分に小さくして、前記第一の拡張レバー26の所謂レバー比を十分に大きく(1よりも大きく、例えば3〜6程度に)している。
又、前記第一連結部36は、前記両第一板部35、35の前記他方のブレーキシュー4b側の端面(図4の左端面)の中間部同士を連結している。尚、前記第一、第二の拡張レバー26、27が互いに揺動変位する際、これら第一、第二の拡張レバー26、27同士が干渉しない範囲で、前記第一連結部36を、前記両第一板部35、35の前記一方のブレーキシュー4a側の端縁(図4の右端縁)に設ける事もできる。
【0047】
一方、前記第二の拡張レバー27は、板状部材を曲げ形成する等して成り、後述する基端部を除いて互いに密に重ね合わされた一対の第二板部41、41と、これら両第二板部41、41の一部同士を連結する第二連結部42とから成る。
このうちの両第二板部41、41の中間部のうちの互いに整合する位置に、これら両第二板部41、41を、厚さ方向に貫通した一対の(但し、互いに連続する)第二の通孔43を形成している。又、これら両第二板部41、41の先端部(図1〜2、4の上端部)の前記ストラット25側の端面に、このストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32と、このストラット25を径方向外方に押圧可能な状態で係合可能な、一対の(但し、互いに連続する)第二の係合部44を形成している。又、図4に示す非制動時に於いて、前記両第二板部41、41の先端部の一部を、前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aに形成した係止溝45と係合させている。この様にして、非制動時に於ける、前記第二の拡張レバー27の前記一方のブレーキシュー4a側への変位を規制している。
尚、前記両第二板部41、41の先端部に、前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aと係合可能な係合部を設ける事もできる。
【0048】
又、前記両第二板部41、41の中間部と基端部(図1〜2、4の下端部)とは、段差部46を介して、これら両第二板部41、41の基端部同士の間隔が、中間部同士の間隔よりも大きくなる状態で連続している。この様な前記両第二板部41、41同士は、先端部から中間部同士が、互いに重ね合わされた状態で設けられている一方で、基端部同士が、互いに平行で、且つ、離隔した状態で設けられている。
【0049】
又、前記両第二板部41、41の基端部の前記他方のブレーキシュー4b側の端縁に、この他方のブレーキシュー4b側に開口した部分円弧状乃至はU字形の、一対の第二の切り欠き47を形成している。尚、前記両第二の通孔43の中心(組み付け状態に於ける、前記枢軸24の中心)と前記両第二の係合部44(組み付け状態に於ける、これら両第二の係合部44と前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部)との距離を、前記両第二の通孔43の中心と前記両第二の切り欠き47(組み付け状態に於ける、これら両第二の切り欠き47と後述するナット52の両第二の凸部65、65との係合部)との距離よりも十分に小さくして、前記第二の拡張レバー27のレバー比を十分に大きく(1よりも大きく、例えば3〜6程度に)している。本例の場合、前記第一の拡張レバー26のレバー比と、前記第二の拡張レバー27のレバー比とを、ほぼ同じにしている。
【0050】
又、前記第二連結部42は、前記両第二板部41、41の前記一方のブレーキシュー4a側の端面(図4の右端面)の中間部同士を連結している。尚、前記第二連結部42を、前記両第二板部41、41の前記他方のブレーキシュー4b側の端縁(図4の左端縁)に設ける事もできる。
この様な第一、第二の拡張レバー26、27は、この第一の拡張レバー26の両第一板部35、35の間部分に、この第二の拡張レバー27の両第二板部41、41を配置した状態に組み合わせている。又、前記両第一板部35、35の両第一の通孔37と、前記両第二板部41、41の両第二の通孔43とを整合した状態で、これら各第一、第二の通孔37、43に前記枢軸24を挿通して、前記両拡張レバー26、27を、揺動変位可能に組み合わせている。
【0051】
又、この様な組み合わせ状態に於いて、前記第一の拡張レバー26の両第一板部35、35の内側面と、これら両内側面と対向する前記第二の拡張レバー27の両第二板部41、41の外側面との間に、僅かな隙間を設けている。従って、組み合わせ状態に於いて、前記第一、第二の両拡張レバー26、27同士は、制動力を発揮、又は解除する際、所定の範囲内で、互いに干渉する事なく、前記枢軸24を中心とした揺動変位が可能である。
【0052】
又、前記第二の拡張レバー27の両第二の係合部44と、前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部を、前記第一の拡張レバー26の両第一板部35、35同士の間部分に位置させている。
【0053】
又、本例の場合、前記第一の拡張レバー26の第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合部イ(図4参照)と、前記第二の拡張レバー27の第二の係合部44と前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部ロ(図4参照)とを、図4にαで示す、前記ストラット25の配設方向に関する前記枢軸24の位置を挟んで、互いに反対側に、ほぼ同じ距離だけずらせて位置(反対向きに設置)させている。尚、前記第一の拡張レバー26の第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合部と、前記第二の拡張レバー27の第二の係合部44と前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部とを、前記ストラット25の配設方向に関する前記枢軸24の位置αと、ほぼ同位置に配置する事もできる。
【0054】
又、本例の場合、前記第一、第二の拡張レバー26、27の基端部を、前記バックプレート1に形成した、前記ストラット25の長さ方向に長い矩形の通孔48(図1参照)を通じて、このバックプレート1の両側面のうちで前記両ブレーキシュー4a、4bを設置した側と反対側の面である裏面(図1の下面)から突出させている。そして、これら第一、第二の拡張レバー26、27を、前記枢軸24を中心とした揺動変位をさせるべく、前記バックプレート1の裏面部分に、前記第一、第二の拡張レバー26、27の基端部同士の距離を拡縮させる為の、前記駆動装置17aを設けている。
【0055】
この駆動装置17aは、伝達機構49と、特許請求の範囲の駆動源に相当し、この伝達機構を駆動する為の電動モータ(図示省略)とを備えている。
このうちの伝達機構49は、特許請求の範囲の雄ねじ部材に相当し、前記電動モータの出力により回転駆動されるスクリュ50と、軸受部材51と、特許請求の範囲の雌ねじ部材に相当するナット52とを備えている。
【0056】
このうちのスクリュ50は、軸部53(図4参照)と、この軸部53よりも大径な大径部54とを有する。
このうちの軸部53は、中間部から先端部(図4の左端部)の外周面に雄ねじ部55が形成されている。
又、前記大径部54は、前記スクリュ50の基端部(図4の右端部)に設けられており、前記軸部53の一端(図4の右端)と段差部56を介して連続している。又、この大径部54の中心部に、軸方向一方に開口した六角孔57を形成しており、この六角孔57に、前記電動モータの出力を伝達可能な連結部材58の先端部を係合している。この様な組み付け状態に於いて、この連結部材58は前記スクリュ50に対して、軸方向に関する相対変位、及びこのスクリュ50に対する揺動変位が可能である一方、このスクリュ50に対する、相対回転を阻止され(このスクリュ50と同期して回転可能とし)ている。
【0057】
又、前記連結部材58と前記電動モータとの間に減速機(図示省略)を設ける事により、この電動モータの出力(回転力)を減速すると共に、増大したトルクを、前記連結部材58を介して前記スクリュ50に伝達する様にしている。尚、この連結部材58の基端部(図4の右端部)は、前記減速機の出力軸に対しても、軸方向変位及び揺動変位可能な状態で支持している。この様な電動モータ及び減速機の、構造及び設置方法に関しては、前記連結部材58を設けた点を除き、前記特許文献7に記載された構造と同様である為、図示並びに詳しい説明は省略する。
【0058】
又、前記軸受部材51は、例えば、滑り軸受等であり、含油メタル、高機能樹脂等の滑り易く、又、圧縮強度の大きな材料により造っている。この様な軸受部材51は、略直方体状の軸受本体59と、特許請求の範囲の第一の伝達部に相当する一対の第一の凸部60とを有する。このうちの軸受本体59は、一方の側面から他方の側面に貫通する状態で挿通孔61(図4参照)が形成されており、この挿通孔61の内周面は、前記スクリュ50の軸部53の外周面の基端寄り部分のうちの、前記雄ねじ部55が形成されていない部分と滑り接触可能である。
【0059】
又、前記両第一の凸部60は、それぞれが円柱状であり、前記軸受本体59の側面(前記挿通孔61が形成された側面以外の側面)のうちの、互いに反対側に位置する一対の側面に、これら両側面から突出した状態で、互いに同心に設けられている。
この様な軸受部材51は、前記挿通孔61に前記スクリュ50の軸部53を挿通すると共に、前記軸受本体59の一端面(図4の右端面)と前記スクリュ50の段差部56とを当接させた状態で組み立てられている。
【0060】
又、前記ナット52は、略直方体状のナット本体62と、特許請求の範囲の第二の伝達部に相当する一対の第二の凸部65、65とを有する。このうちのナット本体62は、一方の側面から他方の側面に貫通し、その内周面に、前記スクリュ50の雄ねじ部55と螺合可能な雌ねじ部63を有するねじ孔64が形成されている。
又、前記両第二の凸部65、65は、それぞれが円柱状であり、前記ナット本体62の側面(前記ねじ穴64が形成された側面以外)のうちの、互いに反対側に位置する一対の側面に、これら両側面から突出した状態で、互いに同心に設けられている。この様なナット52は、前記雌ねじ部63と前記スクリュ50の雄ねじ部55とを螺合した状態で、このスクリュ50の先端部に組み付けられている。
【0061】
前述した様に構成される駆動装置17aは、前記軸受部材51の両第一の凸部60を、前記第一の拡張レバー26の両第一の切り欠き40に係合している。この様に組み付けた状態で、この第一の拡張レバー26と、前記軸受部材51とは、互いに前記第一の凸部60を中心とした揺動変位が可能である。又、前記スクリュ50の軸方向他方(図4の左方向)への変位は、このスクリュ50の段差部56、及び前記軸受部材51の両第一の凸部60を介して、前記第一の拡張レバー26に伝達する。
又、前記スクリュ50が軸方向一方(図4の右方向)に変位した場合は、前記軸受部材51は、リターンスプリング10a、10bの弾力により、前記第一の拡張レバー26の基端部と共に軸方向一方に変位する。この様にして、前記スクリュ50の段差部56と前記軸受本体59の一端面との当接状態、及び、前記軸受部材51の両第一の凸部60と、前記第一の拡張レバー26の両第一の切り欠き40との係合状態を維持する。
【0062】
一方、前記ナット52の両第二の凸部65、65を、前記第二の拡張レバー27の両第二の切り欠き47、47に係合して、前記ナット52の回り止めを図っている。又、この様に組み付けた状態で、前記第二の拡張レバー27と、前記ナット52とは、互いに前記両第二の凸部65、65を中心とした揺動変位が可能である。又、前記スクリュ50の回転運動に基づく前記ナット52の軸方向一方(図4の右側)への変位が、このナット52の両第二の凸部65、65を介して、前記第二の拡張レバー27に伝達される。又、前記ナット52が軸方向他方(図4の左側)に変位した場合、この第二の拡張レバー27の基端部は、前記リターンスプリング10a、10bの弾力により、軸方向他方に変位する。この様にして、前記ナット52の両第二の凸部65、65と、前記第二の拡張レバー27の両第二の切り欠き47、47との係合状態を維持する。
【0063】
この様な伝達機構49は、不可逆性(セルフロック機能)を有する通常の送りねじ機構としている。この為、前記電動モータへの通電を停止した場合でも、何れの部分にも通電する事なく、制動力を発揮した状態を維持する事ができる。尚、前記伝達機構49を、ボールナット式の送りねじ機構等、可逆性を有するものにする事もできる。但し、この場合には、前記電動モータへの通電を停止した後も前記制動力を確保する為のロック構造を、例えば、前記減速機等に別途設ける。
【0064】
前述の様に構成する本例のドラムブレーキ装置を構成する駐車ブレーキは、次の様に作用して、制動力を発揮する。制動時には、前記電動モータの出力を前記減速機、及び前記連結部材58を介して、前記スクリュ50に伝達し、このスクリュ50を所定の方向に回転させる。すると、このスクリュ50の雄ねじ部55と前記ナット52の雌ねじ部63との螺合に基づき、このスクリュ50が軸方向他方(図4の左側)へと変位する。このスクリュ50の軸方向他方への変位は、このスクリュ50の段差部56を介して前記軸受部材51に伝わり、更に、この軸受部材51の前記両第一の凸部60を介して前記第一の拡張レバー26に伝達する。その結果、この第一の拡張レバー26が前記枢軸24を中心に時計方向に揺動する。
【0065】
一方、前記ナット52は、前記スクリュ50の雄ねじ部55との螺合に基づき軸方向一方(図4の右側)に変位する。このナット52の軸方向一方への変位は、このナット52の両第二の凸部65、65を介して前記第二の拡張レバー27に伝わる。その結果、この第二の拡張レバー27が前記枢軸24を中心に反時計方向に揺動する。
【0066】
この様にして互いに逆方向に揺動変位した前記第一、第二の拡張レバー26、27の先端部は、互いに離れる方向に揺動し、これら先端部同士の間隔が拡がる。これら第一、第二の拡張レバー26、27の揺動中心(前記枢軸24)の位置は、出力側であるそれぞれの先端側に偏っている(それぞれのレバー比が大きい)為、これら第一、第二の拡張レバー26、27の先端部は大きな力で間隔が拡げられる。そして、本例の場合には、このうちの第一の拡張レバー26の先端部が前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aを直接、前記第二の拡張レバー27の先端部が前記他方のブレーキシュー4bのウェブ7bを前記ストラット25を介して、それぞれ径方向外方に変位させる。そして、前記両ブレーキシュー4a、4bのライニング9a、9bを前記ドラム5の内周面に押し付けて、制動を行わせる。この様な前記第一、第二の拡張レバー26、27、及び前記枢軸24から成る増力機構は、摩擦損失が少なく、優れた伝達効率を有する。本例の構造で使用する歯車式の前記減速機は、或る程度の摩擦損失を生じる事は避けられないが、前記第一、第二の拡張レバー26、27部分で増力する分、前記減速機部分での増力比を小さく抑えられ、その分、この減速機部分での摩擦損失も低く抑えられる。この為、比較的出力の小さな電動モータを使用して、小型・軽量化を図る事ができる。尚、前記第一の拡張レバー26の先端部と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの間に、押圧力を伝達可能な別部材を介在させる事もできる。
【0067】
本例のドラムブレーキ装置によれば、前記バックプレート1や基板等、前記駆動装置17aを支持している部分の剛性及び強度を特に大きくする必要がなく、ドラムブレーキ装置の軽量化を図り易い。
即ち、本例のドラムブレーキ装置を構成する駐車ブレーキ装置の場合、前述の様にして行う制動に伴って、前記第一、第二の拡張レバー26、27の先端部に、互いに近づく方向の反力が加わる。この反力は、前記枢軸24に互いに反対向きの力として加わる。更に、前記第一の拡張レバー26の先端部に加わった反力は、この第一の拡張レバー26の基端部から、前記駆動装置17a(軸受部材51の両第一の凸部60を介して前記スクリュ50)に軸方向一方(図4の右方向)の力として加わる。一方、前記第二の拡張レバー27の先端部に加わった反力は、この第二の拡張レバー27の基端部から、前記駆動装置17a(ナット52の両第二の凸部65、65を介して前記スクリュ50)に軸方向他方に向いた(図4の左方向の)力として加わる。
【0068】
そして、前記駆動装置17aに、前記第一、第二の拡張レバー26、27から加わった互いに逆方向の力は、この駆動装置17a内で(前記スクリュ50に、互いに反対方向に同じ大きさの力が加わる事で)打ち消し合う。従って、前記バックプレート1や基板等の、この駆動装置17aを支持している部分に、制動に伴って大きな力が加わる事はない。この為、前記拡縮装置16aを構成する枢軸24及び前記第一、第二の拡張レバー26、27、並びに、前記駆動装置17aを構成する前記スクリュ50及び前記軸受部材51及び前記ナット52にさえ、十分な剛性及び強度を持たせておけば、前記バックプレート1や基板等、前記駆動装置17aを支持している部分の剛性及び強度を特に大きくする必要がなく、ドラムブレーキ装置の軽量化を図り易い。
【0069】
又、前記伝達機構49を構成するスクリュ50と、このスクリュ50の基端部に係合された前記連結部材58とが互いに揺動可能に係合されている。又、前記第一の拡張レバー26と前記軸受部材51とが互いに揺動可能に係合されている。更に、前記第二の拡張レバー27と前記ナット52とが互いに揺動可能に係合されている。この為、前記枢軸24を中心とする前記第一、第二の拡張レバー26、27の揺動に対して、前記伝達機構49を構成する各部材(スクリュ50、軸受部材51、ナット52)が揺動変位する事により追従できる。その結果、前記電動モータからの回転力を、前記連結部材58を介して、前記スクリュ50に円滑に伝達する事ができる。
【0070】
又、前記第一、第二の拡張レバー26、27の揺動中心である前記枢軸24の位置は、出力側であるそれぞれの先端側に偏っている。この為、これら第一、第二の拡張レバー26、27の基端部に加わる力が小さい場合でも、これら第一、第二の拡張レバー26、27の先端部は大きな力で間隔が拡げられる。その結果、これら第一、第二の拡張レバー26、27を揺動変位させる為に比較的出力の小さな電動モータを使用する事ができ、小型・軽量化を図る事ができる。
【0071】
又、前記第二の拡張レバー27を、前記第一の拡張レバー26の両第一板部35、35同士の間部分に配置する事で、これら第一、第二の拡張レバー26、27の一部同士を、前記枢軸24の軸方向に関して重畳した状態で配置している。この為、前記ストラット25の配設方向に占める前記第一、第二の拡張レバー26、27の寸法を小さく抑える事ができて、ドラムブレーキ装置の、より一層の小型・軽量化を図る事ができる。
又、前記第一、第二の拡張レバー26、27が揺動する際、これら第一、第二の拡張レバー26、27同士が、前記ストラット25の配設方向に関して干渉し合う事がない。この為、これら第一、第二の拡張レバー26、27の揺動量を確保し易く、これら両拡張レバー26、27の増力比を大きくしても、前記両ブレーキシュー4a、4bの変位量を確保し易い。
更に、前記第一、第二の拡張レバー26、27のそれぞれの先端部の、前記ストラット25の配設方向に関する寸法を比較的大きくしても、前述した図8に示した構造の様に、第一、第二の拡張レバー24、25をストラット11bの配設方向に隣り合う状態で配置している場合と比べて、前記配設方向に占める前記第一、第二の拡張レバー26、27の寸法を小さく抑えられる。その結果、ドラムブレーキ装置の小型・軽量化を図ると共に、前記第一、第二の拡張レバー26、27のそれぞれの先端部の剛性を確保する事ができる。
【0072】
又、前記第一の拡張レバー26の両第一板部35、35の先端部には一対の第一の係合部38、38が形成されている。そして、これら両第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとを、2箇所位置で係合させている。そして、前記第二の拡張レバー27の第二の係合部44と前記ストラット25との係合部は、この2箇所位置の間部分に存在する。この為、制動時に、前記両拡張レバー26、27を傾斜させる方向のモーメントが発生する事はなく、これら両拡張レバー26、27の姿勢が安定し、これら両拡張レバー26、27が、前記両ウェブ7a、7bに対して安定した押圧力を付与する事ができる。
【0073】
又、前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32と、前記第二の拡張レバー27の両第二の係合部44との係合部を、前記第一の拡張レバー26の両第一板部35、35同士の間部分に配置している。この為、前記ストラット25とこの第二の拡張レバー27との、このストラット25の配設方向、及び、前記枢軸24の軸方向に関する位置決めを図る事ができる。更に、前記ストラット25の配設方向に関する寸法を小さく抑える事ができて、ドラムブレーキ装置の、より一層の小型・軽量化を図れる。
【0074】
又、前記第一の拡張レバー26の第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合部と、前記第二の拡張レバー27の第二の係合部44と前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部とは、前記枢軸24を挟んで、前記ストラット25の配設方向に関して互いに反対側に、ほぼ同じ距離だけずらせて位置させている。この為、これら第一、第二の拡張レバー26、27が制動力を発揮する前後に於ける、レバー比の変化が少なくなり、安定した制動力を発揮する事ができる。尚、前記第一の拡張レバー26の第一の係合部38、38と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合部と、前記第二の拡張レバー27の第二の係合部44と前記ストラット25を構成するねじ筒30の第一係合平坦部32との係合部とを、前記ストラット25の配設方向に関して前記枢軸24とほぼ同位置に配置する事もできる。この様な構造の場合も、本例の構造程ではないにしても、前記第一、第二の拡張レバー26、27が制動力を発揮する前後に於ける、レバー比の変化を少なく抑える事ができる。
【0075】
更に、前記第二の拡張レバー27の先端部を、非制動時にこの第二の拡張レバー27が、前記一方のブレーキシュー4a側に変位する事を阻止された状態で、前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aと係合している。この為、非制動時に於ける、この第二の拡張レバー27の前記ストラット25の配設方向に関する位置決めを、この第二の拡張レバー25の先端部とこのストラット25の基端部との係合、及び、この第二の拡張レバー25の先端部と前記一方のブレーキシュー4aのウェブ7aとの係合により図る事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のドラムブレーキ装置の構造は、駐車ブレーキだけでなく、サービスブレーキに適用する事もできる。
又、本発明の拡縮装置を構成する第一、第二の拡張レバーの構造は、前述した実施の形態の1例の構造に限定されるものではない。例えば、第一の拡張レバー、及び第二の拡張レバーを、それぞれ一枚の板状部材により構成し、これら第一、第二の拡張レバー同士を、枢軸を中心に揺動可能な状態、且つ、この枢軸の軸方向に関して重畳した状態で支持する様な構造とする事もできる。又、第一の拡張レバーの先端部をストラットの基端部に、このストラットを径方向外方に押圧可能に係合し、第二の拡張レバーの先端部を一方のブレーキシューのウェブに、このウェブを径方向外方に押圧可能に係合する事もできる。
【符号の説明】
【0077】
1 バックプレート
2 アンカ
3 ホイールシリンダ
4a、4b ブレーキシュー
5 ドラム
6 シリンダ筒
7a、7b ウェブ
8a、8b 裏板
9a、9b ライニング
10a、10b リターンスプリング
11、11b ストラット
12 主板部
13 副板部
14 枢軸
15 長孔
16、16a 拡縮装置
17、17a 駆動装置
18 第一の拡張レバー
19 第二の拡張レバー
20 結合リンク
21 第一の押圧部材
22 第二の押圧部材
23a、23b 枢支部
24 枢軸
25 ストラット
26 第一の拡張レバー
27 第二の拡張レバー
28 保持筒
29 ねじ杆
30 ねじ筒
31 レバー
32 第一係合平坦部
33 第二係合平坦部
34 切り欠き
35 第一板部
36 第一連結部
37 第一の通孔
38 第一の係合部
39 段差部
40 第一の切り欠き
41 第二板部
42 第二連結部
43 第二の通孔
44 第二の係合部
45 係止溝
46 段差部
47 第二の切り欠き
48 通孔
49 伝達機構
50 スクリュ
51 軸受部材
52 ナット
53 軸部
54 大径部
55 雄ねじ部
56 段差部
57 六角孔
58 連結部材
59 軸受本体
60 第一の凸部
61 挿通孔
62 ナット本体
63 雌ねじ部
64 ねじ穴
65 第二の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架装置の構成部材に支持固定されるバックプレートと、
このバックプレートの径方向反対側2箇所位置に、このバックプレートの径方向に関する変位を可能に支持した一対のブレーキシューと、
これら両ブレーキシューを覆う状態で設けられて車輪と共に回転するドラムと、
これら両ブレーキシュー同士の間隔を拡縮する為、これら両ブレーキシューを構成するウェブの内周縁同士の間に設けられた拡縮装置と、
この拡縮装置を駆動する為の駆動装置と
を備えたドラムブレーキ装置に於いて、
このうちの拡縮装置は、枢軸と、ストラットと、第一、第二の拡張レバーとを備えたものであって、
このうちの枢軸は、前記第一、第二の拡張レバーを、この枢軸を中心とした揺動が可能な状態に支持するものであり、
前記第一の拡張レバーは、前記枢軸を挿通する為の第一の通孔を有し、その先端部を、前記両ブレーキシューのうちの一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの一方の部材に、この一方の部材を径方向外方に押圧可能に係合しており、
前記第二の拡張レバーは、その一部が前記第一の拡張レバーの一部と、前記枢軸の軸方向に関して重畳した状態で配置されていて、前記枢軸を挿通する為の第二の通孔を有し、その先端部を、前記一方のブレーキシューのウェブと前記ストラットとのうちの他方の部材に、この他方の部材を径方向外方に押圧可能に係合されており、
このストラットの先端部は、前記両ブレーキシューのうちの他方のブレーキシューのウェブに、このウェブを径方向外方に押圧可能に係合されており、
前記駆動装置は、伝達機構と、この伝達機構を駆動する為の駆動源とを備えたものであり、
前記伝達機構は、前記第一の拡張レバーと係合して、この第一の拡張レバーを前記枢軸を中心として揺動させる第一の伝達部と、
前記第二の拡張レバーと係合して、この第二の拡張レバーを前記枢軸を中心として前記第一の拡張レバーと逆方向に揺動させる第二の伝達部とを備えている事を特徴とするドラムブレーキ装置。
【請求項2】
前記第一の拡張レバーは、互いに平行に離隔した状態で設けられた一対の板部と、これら両板部同士を連結する連結部とを備え、
前記第一の拡張レバーの両板部の互いに整合する位置に、一対の前記第一の通孔が形成されており、先端部に、前記一方の部材と係合可能な一対の第一の係合部を有し、
前記第二の拡張レバーは、前記第二の通孔が形成されており、先端部に前記他方の部材と係合可能な第二の係合部を有し、前記第一の拡張レバーの両板部同士の間部分に配置されており、
前記枢軸が、前記両第一の通孔と、前記第二の通孔とを挿通している、請求項1に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項3】
前記他方の部材と、前記第二の拡張レバーの第二の係合部との係合部が、前記第一の拡張レバーの両板部同士の間部分に配置されている、請求項2に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項4】
前記伝達機構が、その一部に雄ねじ部を有する雄ねじ部材と、この雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する雌ねじ部材とを有する送りねじ機構であり、
前記第一の伝達部が、前記雄ねじ部材又はこの雄ねじ部材と連動してこの雄ねじ部材の軸方向に変位可能な部材に設けられており、
前記第二の伝達部が、前記雌ねじ部材又はこの雌ねじ部材と連動して前記雄ねじ部材の軸方向に変位可能な部材に設けられており、
前記第一の拡張レバーと、前記第一の伝達部とが係合しており、
前記第二の拡張レバーと、前記第二の伝達部とが係合している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項5】
前記雄ねじ部材の基端部に、前記駆動源の回転力をこの雄ねじ部材に伝達可能な連結部材が、この雄ねじ部材に対して揺動可能に係合されており、
前記第一の拡張レバーと、前記送りねじ機構の第一の伝達部とが互いに揺動可能な状態に係合しており、
前記第二の拡張レバーと、この送りねじ機構の第二の伝達部とが互いに揺動可能な状態に係合している、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項6】
前記第一の通孔の中心から、前記第一の拡張レバーの先端部と前記一方の部材との係合部までの距離が、この中心から、この第一の拡張レバーと前記第一の伝達部との係合部までの距離よりも小さく、
前記第二の通孔の中心から、前記第二の拡張レバーの先端部と前記他方の部材との係合部までの距離が、この中心から、この第二の拡張レバーと前記第二の伝達部との係合部までの距離よりも小さい、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項7】
前記第一、第二の拡張レバーの基端部が、前記バックプレートに形成した通孔を通じて、このバックプレートの両側面のうちで前記両ブレーキシューを設置した側と反対側の面である裏面から突出しており、
前記バックプレートの裏面で前記通孔を覆う部分に、駆動源である電動モータが設置されており、
前記第一の拡張レバーの基端部と、前記第一の伝達部とが係合しており、
前記第二の拡張レバーの基端部と、前記第二の伝達部とが係合している請求項1〜6のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項8】
前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、
前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、
非制動時の状態で、前記枢軸を挟み、このストラットの配設方向に関して互いに反対側に配置している、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項9】
前記第一の拡張レバーと前記一方の部材との係合部と、
前記第二の拡張レバーと前記他方の部材との係合部とを、
非制動時の状態で、前記ストラットの配設方向に関する前記枢軸の位置と、ほぼ同位置に配置している、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項10】
前記第二の拡張レバーの先端部が、非制動時に前記一方の部材側への変位を規制された状態で、この一方の部材と係合している、請求項1〜9のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。
【請求項11】
前記伝達機構が不可逆性を有している、請求項1〜10のうちの何れか1項に記載したドラムブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50137(P2013−50137A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187408(P2011−187408)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】