説明

ドラム式洗濯乾燥機およびそのプログラム

【課題】乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができるドラム式洗濯乾燥機を提供すること。
【解決手段】水槽3内に溜まった水が洗濯槽4の内面側に入り込み、洗濯物へ吸水される速度により洗濯物の布質を検知する布質検知手段11bと、循環空気を前記洗濯槽に送る送風機9cと、循環空気を加熱する加熱手段と、布質検知手段11bの出力を入力し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各行程を逐次制御する制御手段11aを備え、制御手段11aは、布質検知手段による布質に応じて、乾燥工程の時間を変更する。これによって、布質に応じて必要最低限の乾燥工程の時間を設定することで乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性的に支持された水槽内に洗濯物を収容して回転可能な洗濯槽を備え、その洗濯槽内で洗濯物の洗い、すすぎ、脱水及び乾燥を行う洗濯機もしくは洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドラム式洗濯乾燥機の乾燥工程では、加熱した乾燥用空気を、風路を通して洗濯槽内に送風し、洗濯槽に投入された衣類に乾燥用空気を接触させて衣類から水分を奪い衣類を乾燥させる。また、それとともに、湿気を含んで高湿度となった乾燥用空気を洗濯槽外の風路に排出している。特に、限られた狭い洗濯槽の空間内で衣類の乾燥を行うことから、乾燥中に衣類同士が絡んで乾燥用空気が衣類の絡んだ部分に接触せず部分的に未乾燥(乾燥ムラ)になってしまうことがある。乾燥ムラを防ぐためには、乾燥用空気が全ての衣類と万遍なく接触させることが必要であり、乾燥用空気の温度を所定以上に保ちながら、やや長めの乾燥時間が必要とされる。このように、部分的に未乾燥(乾燥ムラ)になることを防ぐために、必要以上の加熱エネルギーや所要時間が必要となり、所要時間が増加してしまう問題があり、その解決に種々の方法が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来の衣類乾燥機は、洗濯槽と、空気循環装置と、ヒートポンプとを備えている。空気循環装置およびヒートポンプの運転により洗濯物の乾燥を行う衣類乾燥機であって、圧縮機は、周波数を制御することで回転速度が可変される。圧縮機の駆動周波数を変更することにより、洗濯物を比較的短時間で乾燥する速乾コース、または洗濯物を速乾コースより長時間で乾燥する節約コースのいずれかを選択して実行可能である。速乾コースは、ヒートポンプの圧縮機の駆動周波数を高くして実行される。これにより、圧縮機の回転速度が高くなり、ヒートポンプにおける冷媒の循環は盛んになる。そのため、洗濯物は短時間で乾燥される。一方、節約コースのとき、ヒートポンプの圧縮機の駆動周波数を低くして実行される。これにより、圧縮機の回転速度が低くなり、ヒートポンプにおける冷媒の循環は抑えられる。そのため、洗濯物は少ない消費電力で乾燥される。したがって、選択するコースごとに乾燥に必要な所要時間の短縮と消費電力の低減とを両立することができる。また、節約コースでは、圧縮機を成績係数の高い周波数帯で駆動することにより、効率の良い運転が可能となり、消費電力をより一層節約することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第10/010679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、成績係数の高い周波数帯で圧縮機を駆動するために、ユーザーが都度、節約コースを選択する手間が必要であること、また、節約コースを選択したとしても、投入された衣類の組み合わせによって成績係数の高い周波数帯は異なるため、節約度合いが限定されるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、乾燥工程において被乾燥衣類の布質構成比率を精度よく検知しながら、検知した布質構成比率に応じて乾燥工程の時間を変更することで、乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、乾燥の長時間化及び
消費電力量を抑えた省エネルギー性の高い乾燥運転を実現することができるドラム式洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のドラム式洗濯乾燥機は、洗濯物を収容して水平軸または前面側から背面側に向けて下向きに傾斜した回転軸を中心に回転自在で複数の透孔を有する洗濯槽と、前記洗濯槽を収容する水槽と、前記洗濯槽を駆動する駆動手段と、前記洗濯槽の外面と前記水槽の内面との間に形成される空間に給水する給水手段と、前記水槽内の水位を検知する水位検知手段と、前記水槽内に溜まった水が前記洗濯槽の内面側に入り込み、前記洗濯物へ吸水される速度により洗濯物の布質を検知する布質検知手段と、循環空気を前記洗濯槽に送る送風手段と、前記循環空気を加熱する加熱手段と、前記布質検知手段の出力を入力し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各行程を逐次制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記布質検知手段による布質に応じて、乾燥工程の時間を変更するようにしたものである。
【0008】
上記構成によれば、布質に応じて必要最低限の乾燥工程の時間を設定することで乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗濯機は、布質応じた乾燥に必要な最低限の乾燥工程の時間を設定することで、乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の概略構造を示す断面図
【図2】同ドラム式洗濯機の制御ユニット11の構成を示すブロック図
【図3】同ドラム式洗濯機の布質検知時のフローチャート
【図4】同ドラム式洗濯機の給水初期時における洗濯物の布質種別による水位遷移図
【図5】本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の概略構造を示す断面図
【図6】同ドラム式洗濯機の布質検知時のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明によれば、洗濯物を収容して水平軸または前面側から背面側に向けて下向きに傾斜した回転軸を中心に回転自在で複数の透孔を有する洗濯槽と、前記洗濯槽を収容する水槽と、前記洗濯槽を駆動する駆動手段と、前記洗濯槽の外面と前記水槽の内面との間に形成される空間に給水する給水手段と、前記水槽内の水位を検知する水位検知手段と、前記水槽内に溜まった水が前記洗濯槽の内面側に入り込み、前記洗濯物へ吸水される速度により洗濯物の布質を検知する布質検知手段と、循環空気を前記洗濯槽に送る送風手段と、前記循環空気を加熱する加熱手段と、前記布質検知手段の出力を入力し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各行程を逐次制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記布質検知手段による布質に応じて、前記乾燥工程の時間を変更するようにしたものである。
【0012】
このような構成によって、布質検知手段が検知した布質に応じて必要最低限の乾燥工程の時間を設定することで、乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明のドラム式洗濯乾燥機の前記布質検知手段は、前記洗濯物を構成する素材として吸水性の高い繊維と吸水性の低い繊維との割合を判断するものである。
【0014】
このような構成によって、布質検知手段によって、投入された洗濯物が「吸水性の高い素材で構成されている割合が大きい」、あるいは「吸水性の低い素材で構成されている割合が大きい」といった判断が適切に行うことができ、その布質特性に応じて必要最低限の乾燥工程の時間を設定することができる。このため、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明のドラム式洗濯乾燥機の前記制御手段は、前記布質検知手段により前記洗濯物が吸水性の低い繊維から構成される割合が大きいと検知した場合、前記割合が大きくなるほど、前記乾燥工程の時間を小さくするようにしたものである。
【0016】
このような構成によって、布質検知手段によって、投入された洗濯物が「吸水性の高い素材で構成されている割合が大きい」、あるいは「吸水性の低い素材で構成されている割合が大きい」といった判断が決定された後に、特に化繊の多い場合は乾燥時に必要な熱量が少なく乾燥工程の時間を短くすることができる。このため特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【0017】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明のドラム式洗濯乾燥機において、洗濯物の乾燥状態を検知する乾燥検知手段を有し、前記布質検知手段による検知内容によって吸水性の低い繊維が多いと判定し、かつ前記乾燥検知手段により洗濯物の乾燥状態が所定の乾燥度合いであると検知した際は、乾燥工程の時間を短くする。
【0018】
このような構成によって、洗濯前の初期の状態が濡れた衣類であった場合における布質検知手段の誤検知を補正することができる。
【0019】
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明のドラム式洗濯乾燥機において、少なくとも一つをコンピュータに実行させるためのプログラムを備えたものである。
【0020】
このような構成によって、プログラムであるのでマイコンなどを用いて本発明の洗濯機の一部あるいは全てを容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布が容易にできる。
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の概略構造を示す断面図で、図1を用いて構成を以下に説明する。
【0022】
洗濯機本体1の内部には揺動自在に水槽3が収納され、水槽3内には洗濯槽である回転ドラム4が回転軸4aを中心に回転自在に配設されている。回転ドラム4の回転軸4aは水槽3の背面外側に取り付けたモータ6が直結されており、このモータ6により回転ドラム4が回転駆動される。
【0023】
回転ドラム4には、その周壁4c全体に渡って複数の透孔4eが設けられ、水槽3内と回転ドラム4内とは通水および通気ができるようになっている。回転ドラム4の背面壁4dには円周方向に沿った複数の背面開口4fが形成されており、これら背面開口4fは水槽3の背面側上部に形成された導風口9eに対向するように配置されている。また、回転ドラム4の周壁4c内面には複数の撹拌突起4bが設けられており、回転ドラム4の回転により回転ドラム4内の洗濯物を持ち上げるようにしている。なお、透孔4eは回転ドラム4の周壁全体に渡り設けたが、回転ドラム4の周壁に部分的に形成してもよく、要は、
水槽3内と回転ドラム4内との通気性および通水性を確保でき、洗濯から乾燥に支障が出ないように設定すればよい。
【0024】
また、回転ドラム4の回転軸4aは、前面側から背面側に向かって下向きになるように傾斜しており、具体的には水平方向Xから例えば角度θ=20±10度下向き傾斜させて配置されている。このように回転軸4aを傾斜させることで、水槽3前面側の開口13を上側に配置することができるようになり、大きく屈む姿勢をとることなく水槽3の開口13を介して回転ドラム4内の洗濯物が取り出せるようになる。また、回転軸4aを水平方向とした場合に比べ、水槽3内に給水された水が背面側に溜まって少ない水量でも深い貯水状態が得られる、すなわち、少ない給水量でも水槽3内に溜まった水が回転ドラム4の透孔4eから入り込み、洗濯物を濡らし吸水速度を検知することができる。
【0025】
水槽3は回転ドラム4内の洗濯物に効率よく給水を行うために、回転ドラム4と同じ傾斜を持ってその近くに沿うように設けてある。回転ドラム4および水槽3を傾斜させることによって、水平に配置するよりも早くに洗濯物の外周側に水が接触し始めるので、布質検知を迅速に行うことができる。なお、給水量を考慮しなければ、回転ドラム4は水平であってもよいし、傾斜角度θが10度未満であってもよい。
【0026】
また、洗濯機本体1の前面側には水槽3の開口13を通して回転ドラム4内に通じる開口部を設け、その開口部には開閉扉5が開閉自在に設けられている。水槽3の開口13はその口縁に環状のシール材14を装着し、シール材14の前面側が開閉扉5の背面側に当接して密閉し、上下左右、前後に揺動する水槽3の開口が動いてもシール材14が変形し開閉扉5背面側へ押圧する形で密閉性を維持している。
【0027】
水槽3の上部に配置された給水手段7は、給水弁7bと、給水弁7bの開閉によって給水される洗剤収容部7aと、洗剤収容部7a内の洗剤を給水とともに水槽3内面と回転ドラム4外面との間に形成された空間Yに供給する給水経路7cとを有している。このように水槽3内面と回転ドラム4外面との間に形成された空間Yに給水することにより、回転ドラム4内の洗濯物に直接水かかからず、水槽3底部に溜まった水が徐々に上昇していき、回転ドラム4の透孔4eを介して洗濯物に水が接触して洗濯物の吸水が開始されるので、布質により相違する吸水速度を検知することができる。なお、洗濯物に直接水がかからないように給水できればよいので、給水手段7は必ずしも上部に配置されている必要はなく、水槽3の背面側、側面側、底部側であってもよい。
【0028】
排水手段8は、水槽3の最底部に一端を接続した排水管8aと、排水弁8bとを有し、排水弁8bの開閉によって洗い工程終了後、すすぎ工程終了時など必要なときに水槽3内の水が排水管8aを介し排水されるようになっている。さらに排水管8aの下流側には洗濯機本体1の外部から取り外し可能な排水フィルタ15を配置し、排水に含まれる糸屑類を捕集するようになっている。
【0029】
乾燥手段9は、水槽3および回転ドラム4から空気を出す導出口9fと、導出口9fから空気を吸引する送風手段としての送風機9cと、導出口9fからの空気に含まれる糸屑類を捕集し除塵するフィルタ(図示せず)と、水槽3の背面側に設けられ、回転ドラム4内に送風機9cから吹き出される空気を入れる導風口9eと、送風機9cと導風口9eとを接続する送風経路9dと、加熱手段とを有している。加熱手段は、本実施の形態においてはヒートポンプサイクルであり、除湿部9gおよび加熱部9hからなる熱交換器と、圧縮機9iと、絞り手段(図示せず)とを有している。除湿部9gは、送風経路9d内に配され、導出口9fからの高湿空気を除湿する。加熱部9hは、送風経路9d内で、除湿部9gより下流側に配され、除湿後の空気を加熱して高温の空気とする。
【0030】
なお、ドラム式洗濯乾燥機はヒートポンプ方式の衣類乾燥を行う構成に限定されるものではない。例えば、除湿部9gは乾燥用空気に直接水を噴霧する水冷式でもよく、また、加熱部9hはヒータであってもよい。
【0031】
洗濯機本体1の前面上部には複数の入力キー及び設定内容等を表示する表示装置を有する操作パネル21が配され、この操作パネル21は制御ユニット11と接続され、入力キーからの信号を制御ユニット11に入力し、また、制御ユニット11が表示装置の表示状態を制御するようになっている。制御ユニット11はドラム式洗濯機を構成するモータ6、排水弁8b、給水弁7bの動作を制御し、操作パネル21の入力キーにより設定した洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の運転を実施する。また、制御ユニット11は水槽3内の水位を検知する水位検知手段10からの信号を入力して給水弁7bを制御することで、水槽3内への給水量(水位)を制御している。
【0032】
次に、制御ユニット11の詳細を図2により説明する。図2は本発明の実施形態1におけるドラム式洗濯機の制御ユニット11の構成を示すブロック図である。制御ユニット11は、マイクロコンピュータで構成される制御手段11aと、洗濯物の布質を検知する布質検知手段11bと、洗濯物の量を検知する布量検知手段11cとを備えている。
【0033】
以下に布量検知手段11cの一例について説明する。
【0034】
まず、モータ6を回転駆動する。このときの回転ドラム4の回転数は、洗濯物が回転ドラム4の内周壁に張り付く程度の回転速度、例えば100〜140r/min程度まで一旦立ち上げる。所定時間回転を維持した後、モータ6の通電をオフする。それにより、回転ドラム4の惰性回転が、逆にモータ6を回転させる状態になる。このとき、回転ドラム4の惰性回転力は摩擦トルクによりしだいに低下してやがて回転ドラム4は停止する。通電停止から回転ドラム4の停止までの時間は、洗濯物の量が多いときは長く、洗濯物の量が少ないときは短い。この停止に要する時間の違いが洗濯物の量に比例することを利用して洗濯物の量を検知する。
【0035】
さらに、本実施の形態に係るドラム式洗濯機には、回転ドラム4内に給水された水量を検知する水位検知手段10が設けられている。これは回転ドラム4の最低部近傍の所定位置に配設されたエアトラップ部と圧力検知部(図示せず)をホース接続したものである。圧力検知部は、圧力によって移動するベローズ部分に一体化されたフェライトと、その外周上を囲む固定側のコイルとで構成され、そのインダクタンス変化を利用して移動ストローク距離をトラップ内圧力に変換する。この水位検知手段10は、エアトラップ部に洗濯液がこないと大気開放状態となり、出力は一定となる。この検知下限水位を下回る水位の場合は、水量および水のありなしを検知することができない。このように、水位検知手段10はエアトラップ機構によるエア内圧計測によるセンシングが一般的であり、エア内圧が安定的な大気開放圧力から変化するまでの時間を計測するのが水位センサのばらつきに影響を受けない適切な算出方法である。また水位検知手段10の出力は、回転ドラム4の回転ありなしやその回転数など、洗濯動作中の回転ドラム4の回転によって出力が変化するため、回転ドラム4の回転数に応じて周波数と水位のテーブルを複数持っている。つまり回転ドラム4が静止中でも回転中でも水位を認識することができる。
【0036】
本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の制御手段11aは、モード設定や制御プログラムに従い、モータ6、給水弁7b、排水弁8b、送風機9c、圧縮機9iを自動制御して少なくとも洗浄工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を行う機能を有している。
【0037】
以上のように構成されたドラム式洗濯機の動作について布質を検知する工程を含めて説
明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の布質検知時のフローチャートである。図4は本発明の実施の形態1における洗濯機の洗濯物による給水初期時の水位遷移図を示すものである。
【0038】
図3において、洗濯物が投入されて運転を開始すると給水工程にて給水を開始する。ここで給水開始前に回転ドラムを所定回転数で一方向に回転させる(S1)。回転数は、例えば60r/minなど、洗濯物が回転ドラム4の内周壁に張り付くような回転数である。回転ドラム4がこのような速度で回転させながら給水することで、洗濯物の転動を防ぎ、洗濯物の濡らし方の条件を一意に合わせることが可能となる。また、洗濯物の量が変わった場合でも、洗濯物の張り付けによって同じような条件で濡らしていけるので、布量による依存性を抑え込むことができ、布質検知を精度よく行うことができる。また、回転ドラム4の回転開始は給水開始前に限られず、同時でもよい。
【0039】
次に、給水弁7bを開放して(S2)給水時間tのカウントを開始し、水槽3に所定水位Aになるまで給水を行う(S3)。所定水位Aは回転ドラム4内の洗濯物の外周側と接触できる水位である。
【0040】
本発明の実施の形態1の布質検知は、所定水位になるまでの時間をもとに布質検知を行う。すなわち、所定水位Aにおいて給水時間tをもとに洗濯物の布質が高吸水性であると判定すると、高吸水性である布質に応じて、乾燥行程の設定内容を増やす方向に変更する。
【0041】
図4に示すように、初期の吸水速度はポリエステルなどの化学繊維の方が早くに広範囲に浸透するため、綿よりも吸水が速く、つまり給水時間が長くなる。洗濯物が全て綿であれば、吸水速度が遅いので所定水位Aになる時間は速い。逆に、例えばポリエステルなどの化学繊維であれば、吸水速度が速いので所定水位Aになる時間は遅い。このような布質による吸水速度の違いを利用して、所定水位Aになる給水時間tを確認することで布質を検知することができる。具体的には、所定水位Aになった時点で(S3のYES)給水時間tが所定時間T1より短かったかを判断し(S4)、短い場合は(S4のYES)、乾燥工程の時間T(H)を例えば、5分長くして、十分な乾燥性能を確保する(S5)。
【0042】
ここで、所定時間T1は全て綿タオルである場合に給水開始から所定水位Aになるまでの時間と、綿と化学繊維が混在している場合に所定水位Aになるまでの時間との間で設定する時間である。例えば、洗濯物の全量のうち綿が7割含まれる時に所定水位Aまで給水するのにかかる時間をT1とする。
【0043】
一方で、制御手段11aは所定水位Aにおいて給水時間tをもとに洗濯物の布質が低吸水性であると判定すると、低吸水性である布質に応じて乾燥行程の設定内容を変更する。具体的には、所定水位Aになった時点で給水時間tが所定時間T1より長い場合は(S4のNO)、給水時間tが所定時間T2より短かったかを判断し(S6)、短い場合は(S6のYES)、乾燥工程の時間T(H)をそのままにする(S7)。ここで、所定時間T2は全てポリエステルなどの化学繊維である場合に給水開始から所定水位Aになるまでの時間と、綿と化学繊維が混在している場合に所定水位Aになるまでの時間との間で設定する時間である。例えば、洗濯物の全量のうちポリエステルが7割含まれる時に所定水位Aまで給水するのにかかる時間をT2とする。
【0044】
所定水位Aになった時点で給水時間tが所定時間T2より長い場合は(S6のNO)、未乾燥にならない程度に、例えば、3分程度、乾燥工程の時間T(H)を短く設定する(S8)。
【0045】
洗い行程を終え(S9)、すすぎ行程(S10)、脱水行程(S11)を経て、乾燥行程(S12)に入ると、上記にて設定変更した乾燥時間、乾燥動作を行う。上記で設定した設定した乾燥時間が経過すると(S13のYES)、乾燥行程を終え、全ての運転を終了する。
【0046】
なお、所定時間T1、T2を決定するのに用いた洗濯物による給水初期時の水位遷移図は、同様の吸水特性を示すものであればポリエステルや綿に限られるものではない。また、本実施の形態1では綿と、化学繊維と、綿および化学繊維の混合との、3種類の吸水特性により設定水位のランク決定をしているが、これに限られるものではなく、化学繊維としてナイロンなどの他の繊維も用いてランク分けを細かくしてもよい。また、綿および化学繊維の混合において、その混合比率を1:2、1:1、2:1と変化させるなどして、ランク分けしてもよい。
【0047】
ここで、布質に応じた乾燥時間の設定について補足する。上記したように、洗濯物は大別すると綿繊維と化学繊維に分けられるが、綿繊維は化学繊維よりも、水を含むと形成する繊維自身が膨張することで繊維間が密になる。よって、衣類に熱を与えて乾燥させる場合、衣類からの水分が蒸発するのに要する時間は、綿繊維の方が化学繊維よりも長い。これは、化学繊維の方が、繊維間が疎であるため繊維の奥に熱が届きやすく、さらに水をあまり吸収しないためである。すなわち、乾燥時に水分を奪って乾燥させるための必要加熱量は、綿繊維では多い。一方で、布質が化繊の割外が多い場合には吸水性が低いため、乾燥させるための必要加熱量は比較的少なくて済む。このため、従来のように、布質が不明な場合の乾燥方式では、全ての衣類について未乾燥がなく乾燥の仕上がりを満足させようとすると、綿繊維が乾く時間にあわせることになり、化学繊維は過乾燥の状態となる。よって化学繊維に対する熱ストレスが懸念される。これに対して、今回の乾燥方式の場合では、綿および化学繊維の混合比率を1:1程度である条件を標準の乾燥設定とすることで、その比率に応じて±10分程度の時間を変更すれば乾燥性能を満足しつつ、衣類に対する過度な熱ストレスを避けることも可能である。
【0048】
以上のように、本実施の形態によれば、洗濯槽に収容した衣類の綿と化繊の構成比率を検知する布質検知手段が設けられ、吸水性の高い繊維から構成される割合が大きいのか、吸水性の低い繊維から構成される割合が大きいのかを判断することができる。さらに、布質検知手段11bによる結果に応じて、必要最低限の乾燥工程の時間を設定することで、乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【0049】
また、本実施の形態ではドラム式洗濯機を例に上げ説明しているが、水槽3と洗濯槽の間に給水する構成とした場合、パルセータ撹拌式やアジテータ式など縦型洗濯機においても同様の効果が得られる。縦型式洗濯機において、水を均一に浸透させるために、洗濯槽の外側に設けられたシャワーなどを用いて洗濯物の外周側から均一に濡れていく構成にしてもよい。また、給水中に洗濯槽を回転させる場合には、パルセータと洗濯槽が一体に動くようにすることで、洗濯物を傷みにくくすることができる。
【0050】
なお、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録、もしくはインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0051】
また、加熱手段は、加熱部としてヒータ、除湿部として水冷方式または空冷方式として
もよい。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態のドラム式洗濯乾燥機は、洗濯槽内の洗濯物の乾燥状態を検知する乾燥検知手段をさらに備え、布質検知手段による検知内容によって吸水性の低い繊維が多いと判定し、かつ乾燥検知手段により洗濯物の乾燥状態が所定の乾燥度合いであると検知した際は、乾燥工程の時間を短くするものである。その他の構成は、実施の形態1を援用する。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の概略構造を示す断面図、図6は、本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の布質検知時のフローチャートである。
【0054】
乾燥手段9は、水槽3および回転ドラム4から空気を出す導出口9fと、導出口9fから空気を吸引する送風手段としての送風機9cと、導出口9fからの空気に含まれる糸屑類を捕集し除塵するフィルタ(図示せず)と、水槽3の背面側に設けられ、回転ドラム4内に送風機9cから吹き出される空気を入れる導風口9eと、送風機9cと導風口9eとを接続する送風経路9dと、加熱手段とを有している。加熱手段は、本実施の形態においてはヒートポンプサイクルであり、除湿部9gおよび加熱部9hからなる熱交換器と、圧縮機9iと、絞り手段9jとを有している。除湿部9gは、送風経路9d内に配され、導出口9fからの高湿空気を除湿する。加熱部9hは、送風経路9d内で、除湿部9gより下流側に配され、除湿後の空気を加熱して高温の空気とする。
【0055】
なお、ドラム式洗濯乾燥機はヒートポンプ方式の衣類乾燥を行う構成に限定されるものではない。例えば、除湿部9gは乾燥用空気に直接水を噴霧する水冷式でもよく、また、加熱部9hはヒータであってもよい。
【0056】
乾燥検知手段20は、衣類接触前空気温度検知部20aと衣類接触後空気温度検知部20bとで構成され、乾燥の検知は、衣類を乾燥する空気の温度を検知することで行われる。衣類を乾燥するための高温で乾いた空気の温度は、送風機9cとドラム4との間に設けられた衣類接触前空気温度検知部20aによって監視されている。また、衣類と接触し、多湿になった空気の温度は、導出口9fと除湿部9gとの間に設けられた衣類接触後空気温度検知部20bによって監視されている。制御手段11aは、両温度の温度差Tsを監視しながら、乾燥運転を行っている。
【0057】
乾燥工程が進行するにしたがって、ドラム4内に高温の乾燥用空気が吹き出されると、ドラム4内の湿った衣類と接触し、徐々にドラム4内の衣類の温度が上昇する。衣類と接触した高温の空気は熱が奪われ、衣類接触前よりも温度が低くなった状態でドラム4外へ排出される。
【0058】
乾燥の進行とともに、衣類の温度が徐々に上昇するため、衣類接触後の空気温度も上昇する。衣類に含まれる水分が少なくなると、衣類接触後の空気温度が衣類接触前に近づく。このように衣類接触前の乾燥用空気温度と、衣類接触後の空気温度との温度差をモニターしながら、温度差が所定値まで縮まれば、衣類に含まれていた水分がほとんど除湿され、衣類の乾燥が完了したことが分かる。
【0059】
以上の構成をさらに備えたドラム式洗濯乾燥機について、以下に動作を説明する。
【0060】
図6に示すように、S1〜S12までは実施の形態1と同様である。S13において、布質検知結果に基づいて設定された乾燥工程の時間T´(H)が経過すると(S13のYES)、乾燥検知手段20により、洗濯物の乾燥状態が所定の乾燥度合いであるかを判断
する(S14)。所定の乾燥度に達していれば(S14のYES)、布質検知結果に基づいて設定された乾燥工程の時間T´(H)の通りに乾燥を終了する。所定の乾燥度に達していない場合(S14のNO)、所定の乾燥度になるまで、乾燥を続ける。すなわち、布質検知結果に基づいて設定された乾燥工程の時間T´(H)を過ぎても乾燥を続ける。
【0061】
このような構成によって、洗濯前の初期の状態が濡れた衣類であった場合、布質検知結果に吸水速度が反映されないことに起因する、布質検知手段11bの誤検知を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、洗濯槽に収容した衣類の綿と化繊の構成比率を検知する布質検知手段が設けられ、布質検知手段が検知した布質が綿の割合が大きい場合は吸水性が高いため乾燥時に水分を奪って乾燥させるための必要加熱量が多く、一方で、布質が化繊の割外が多い場合には吸水性が低いため、つまり乾燥させるための必要加熱量は比較的少なくて済むので、布質に応じて必要最低限の乾燥工程の時間を設定することで乾き不十分や乾燥ムラが発生することなく、特定の時間内で省エネルギー性の優れた乾燥運転を実現することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 洗濯機本体
3 水槽
4 回転ドラム(洗濯槽)
6 モータ(駆動手段)
7 給水手段
7b 給水弁
8 排水手段
8b 排水弁
9c 送風機(送風手段)
9d 送風経路
9e 導風口
9f 導出口
9g 除湿部
9h 加熱部
9i 圧縮機
9j 絞り手段
10 水位検知手段
11 制御ユニット
11a 制御手段
11b 布質検知手段
19 ヒータ
20 乾燥検知手段
20a 衣類接触前空気温度検知部
20b 衣類接触後空気温度検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容して水平軸または前面側から背面側に向けて下向きに傾斜した回転軸を中心に回転自在で複数の透孔を有する洗濯槽と、
前記洗濯槽を収容する水槽と、
前記洗濯槽を駆動する駆動手段と、
前記洗濯槽の外面と前記水槽の内面との間に形成される空間に給水する給水手段と、
前記水槽内の水位を検知する水位検知手段と、
前記水槽内に溜まった水が前記洗濯槽の内面側に入り込み、前記洗濯物へ吸水される速度により洗濯物の布質を検知する布質検知手段と、
循環空気を前記洗濯槽に送る送風手段と、
前記循環空気を加熱する加熱手段と、
前記布質検知手段の出力を入力し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各行程を逐次制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記布質検知手段による布質に応じて、前記乾燥工程の時間を変更するようにしたドラム式洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記布質検知手段は、前記洗濯物を構成する素材として吸水性の高い繊維と吸水性の低い繊維との割合を判断する請求項1に記載のドラム式洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記布質検知手段により前記洗濯物が吸水性の低い繊維から構成される割合が大きいと検知した場合、前記割合が大きくなるほど、前記乾燥工程の時間を短くするようにした請求項1または2に記載のドラム式洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記洗濯槽内の洗濯物の乾燥状態を検知する乾燥検知手段をさらに備え、
前記布質検知手段による検知内容によって吸水性の低い繊維が多いと判定し、かつ前記乾燥検知手段により洗濯物の乾燥状態が所定の乾燥度合いであると検知した際は、乾燥工程の時間を短くする請求項1から3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のドラム式洗濯乾燥機にて、少なくとも一つの手段をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94622(P2013−94622A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243290(P2011−243290)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】