説明

ドラム支持機構、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】浸漬塗布法により感光層が形成されている電子写真感光体ドラムの回転精度を向上させることによって、画像品質を向上させることを目的とする。
【解決手段】円筒形状の感光体ドラム7を支持するドラム支持機構であって、感光体ドラム7は、外周の感光層7aを、感光体ドラム7の軸心を略鉛直方向に向けた浸漬塗布により形成されているものであり、感光体ドラム7の一方の軸方向端部は、感光層7aの浸漬塗布時に下側に位置し感光層7aが厚くなっているものであり、感光体ドラム7の感光層7aが厚くなった軸方向端部の範囲fよりも軸方向内側を、感光体ドラム7の外周から支持するドラム軸受部材18を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム支持機構、これを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関するものである。
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、レーザビームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置等が含まれる。
ドラム支持機構とは、電子写真画像形成装置に用いられる電子写真感光体ドラムの支持機構を意味する。
プロセスカートリッジとは、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち少なくとも1つと、電子写真感光体ドラムと、を一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に着脱可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真複写機やレーザビームプリンタ等の電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置という)は、帯電手段によって一様に帯電させた電子写真感光体(以下、感光体という)に選択的な露光をして静電潜像を形成する。次に、現像手段によって静電潜像をトナーで顕像化する。そして、顕像化されたトナー像を記録媒体に転写及び定着することによって画像形成が行われる。尚、転写後に感光体上に残留したトナーはクリーニング手段によって清掃除去される。
このような画像形成装置において、感光体と、これに作用する帯電手段、現像手段、クリーニング手段等のプロセス手段と、を一体的にユニット化し、画像形成装置本体に対して着脱自在としたプロセスカートリッジ方式を採用したものが実用化されている。画像形成装置の小型化、メンテナンスの容易化を図るためである。
【0003】
電子写真感光体ドラム(以下、感光体ドラムという)の画像形成装置本体内での支持機構としては、感光体ドラムのシリンダ内周に取り付けられたストッパ部材を介して、感光体ドラムを支持する手法が一般的である。しかし、より感光体ドラムの回転精度を向上させるために、感光体ドラムの外周を直接支持する手法も提案されている(特許文献1参照)。
感光体ドラムの支持部の構成としては、感光体ドラムに当接する複数のプロセス手段からの合力を受け止めるように、感光体ドラムを支持する軸部が当接する2つの平面部を設け、感光体ドラムを支持する手法が提案されている(特許文献2参照)。こちらも同じく回転精度を向上させる目的である。
感光体ドラムへの感光層の塗布方法としては、一般に感光体ドラムの軸心を鉛直方向に向けた浸漬塗布法が用いられる(特許文献3参照)。この浸漬塗布法では、感光層の浸漬塗布時の下端部にあたる感光体ドラムの軸方向端部に、感光層の液ダレや剥離ムラによる僅かな段差が形成される。この段差を、クリーニング部材やその軸方向両端に配置されるシール部材から逃がすため、感光層の塗布領域をこれらの部材が接触する領域よりも軸方向外側まで広く設けるという提案も行われている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−149056号公報
【特許文献2】特許第4110128号公報
【特許文献3】特開2004−94108号公報
【特許文献4】特開平8−292642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術を更に発展させたものであり、浸漬塗布法により感光層が形成されている電子写真感光体ドラムの回転精度を向上させることによって、画像品質を向上させることを目的とする。
また、本発明は電子写真感光体ドラムの支持機構を簡易なものとし、部品精度による電子写真感光体ドラムの回転精度への影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、
円筒部材の周面上に浸漬塗布法により形成された感光層を有する電子写真感光体ドラムを支持するドラム支持機構であって、
前記感光層を前記円筒部材に浸漬塗布する際に下側であった、前記電子写真感光体ドラムの軸方向における一端部の感光層よりも、前記軸方向において中央部に近い領域の感光層と接触して前記電子写真感光体ドラムを支持する軸受部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浸漬塗布法により感光層が形成されている電子写真感光体ドラムの回転精度を向上させることによって、画像品質を向上させることができる。
また、電子写真感光体ドラムの支持機構を簡易なものとし、部品精度による電子写真感光体ドラムの回転精度への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係る画像形成装置の概略構成図
【図2】実施例1に係るプロセスカートリッジの概略構成図
【図3】実施例1に係る非駆動側におけるドラム支持機構の概略構成図
【図4】実施例1に係る感光体ドラムに働く力の図
【図5】実施例1に係る非駆動側のプロセスカートリッジの装着を示す図
【図6】実施例1に係る駆動側のプロセスカートリッジの装着を示す図
【図7】実施例1に係る駆動側におけるドラム支持機構の概略構成図
【図8】実施例2に係るプロセスカートリッジの概略構成図
【図9】実施例2に係る駆動側におけるドラム支持機構の概略構成図
【図10】実施例2に係る非駆動側におけるドラム支持機構の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
<実施例1>
(電子写真画像形成装置)
まず、本発明の実施例1に係る電子写真方式の画像形成プロセスを用いて電子写真感光体(以下、感光体という)に画像を形成する電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置という)の全体構成について図1を用いて説明する。尚、図1(a)はプロセスカートリッジを画像形成装置に装着した状態を示す側断面図である。また、図1(b)はプロセスカートリッジを示す側断面図である。
【0011】
本例に係る画像形成装置の画像形成について説明する。まず、図1(a)に示すように
、円筒部材の周面上に浸漬塗布法で形成された感光層を有する電子写真感光体(以下、感光体ドラムという)7に、光学系1から画像情報に基づいたレーザ光像を照射する。それによって、感光体ドラム7に静電潜像が形成される。感光体ドラムが、本発明の電子写真感光体ドラムに対応する。
次に、現像剤tを担持する現像剤担持体としての現像ローラ13に電圧が印加されることにより、現像ローラ13から感光体ドラム7に現像剤tが移動する。これによって、電子写真感光体ドラム上に現像剤tの現像剤像が形成される。
また、現像剤像の形成と同期して記録媒体(記録シート、OHPシート等)としての記録材2がカセット3aから搬送手段3bによってガイド板3f1でガイドされて搬送される。
そして、プロセスカートリッジBとしてカートリッジ化された画像形成部において感光体ドラム7に形成された現像剤像が、転写手段としての転写ローラ4に電圧が印加されることによって、記録材2に転写される。
現像剤像が転写された記録材2は、ガイド板3f2でガイドされて定着装置5へと搬送される。定着装置5は、駆動ローラ5aと、ヒータ5bを内蔵する定着ローラ5dとを有する。定着装置5で記録材2が加熱及び加圧されることで、現像剤像が記録材2に定着される。
定着装置5を通過した記録材2は、排出ローラ対3dで搬送され、排出部6へと排出される。尚、この画像形成装置は図示しない手差しトレイ及びローラによって手差し給送も可能である。
【0012】
(プロセスカートリッジ)
電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジBについて説明する。プロセスカートリッジBは、感光体ドラム7と、感光体ドラム7上に現像剤による像を形成するための少なくとも一つのプロセス手段(部品)として、感光体ドラム7に形成された静電潜像を現像する現像ローラ13と、を有する。そして、感光体ドラム7と、現像ローラ13と、が一体的にカートリッジ化されたものである。
図1(b)に示すように、本例のプロセスカートリッジBを用いて画像を形成する際には、感光体ドラム7が矢印R方向に回転する。回転する感光体ドラム7の表面は、帯電手段としての帯電ローラ8によって一様に帯電される。光学系1からのレーザ光は、感光体枠体としてのクリーニング枠体11の有する露光開口部9bを通過し、帯電した感光体ドラム7の表面を露光する。これにより、感光体ドラム7に静電潜像が形成される。また、現像容器10には、現像剤規制部材としての現像ブレード14と現像ローラ13とが配置されている。また、現像容器10は、現像ローラ13へ供給するための現像剤tを収納する現像剤収納部10fを有する。現像ローラ13上の現像剤tが現像ブレード14によって規制されることにより、現像ローラ13上に均一な現像剤層が形成される。この現像ローラ13に現像バイアスを印加することにより、現像剤tを静電潜像に応じて感光体ドラム7に転移させる。これによって、静電潜像に応じた現像剤像が感光体ドラム7上に形成される。この現像剤像が、転写ローラ4に転写バイアスが印加されることよって記録材2に転写される。一方、現像剤像が記録材2に転写された後に感光体ドラム7に残留した現像剤tは、クリーニング手段としてのクリーニングブレード12によって除去される。除去された現像剤tは、除去現像剤収納部11cに集められる。
【0013】
プロセスカートリッジBは、主にユニットとして、感光体ユニットvと、現像ユニットuとに分割される。感光体ユニットvは、クリーニング枠体11と感光体ドラム7と帯電ローラ8とクリーニングブレード12とを有する。現像ユニットuは、現像容器10と現像ローラ13と現像ブレード14とを有する。
【0014】
図2を用いて、プロセスカートリッジBの組立て構成について説明する。
感光体ユニットvに配置されるドラムユニット20は、外周に感光層7aの形成された
感光体ドラム7の軸方向端部に、ストッパ部材15,16が取り付けられ構成される。尚、軸方向とは、感光体ドラム7の軸心に沿った方向である。ストッパ部材15は、感光体ドラム7の外周端に嵌合され、例えば接着等による結合手段により結合される。また、ストッパ部材15には、画像形成装置本体からの駆動入力を受け、駆動伝達する継手形状部15aが形成される。一方、他端側のストッパ部材16は、感光体ドラム7の内周端に嵌合され、同じく接着等による結合手段により結合される。
ドラムユニット20のクリーニング枠体11への取り付けは、以下のように行われる。まず、クリーニング枠体11にクリーニングブレード12と帯電ローラ8とが取り付けられる。そして、図2(a)に示すように、ドラムユニット20のストッパ部材15をクリーニング枠体11の溝部11aに、図中P方向へと落としこむようにして組み付ける。
そして、図2(b)に示すように、クリーニング枠体11の軸方向両端に配置されるドラム軸受部材17,18により、ドラムユニット20と現像ユニットuをクリーニング枠体11に対して支持する。ドラム軸受部材17,18は、ドラムユニット20と現像ユニットuとの孔部17a,17b,18a(図3参照),18bとを夫々有する。現像ユニットuの支持軸21a,22aは、ドラム軸受部材17,18の孔部17b,18bにより夫々支持される。
現像ローラ13は、現像容器10に固定された現像ホルダ21と現像ローラ軸受25とによって、軸方向両端の軸を回転可能に支持される。現像ローラ13への駆動伝達は、現像ローラ13の端部に取り付けられた現像ローラギア23が、ストッパ部材15に形成されたギア15bと噛み合い駆動されることによって行われる。
現像ユニットuの組み付け後の感光体ドラム7に対する現像ローラ13の隙間保証は、加圧バネ19による付勢力によって現像ユニットuを付勢し、現像ローラ13の軸方向両端のスペーサコロ24を感光体ドラム7に当接させることで行われる。スペーサコロ24は、現像ローラ13と感光体ドラム7の間に挟まれ、その厚み分が、感光体ドラム7と現像ローラ13との間の隙間となる。以上のようにしてプロセスカートリッジBを構成する。
【0015】
(感光体ドラムの非駆動側におけるドラム支持機構)
感光体ドラム7の非駆動側におけるドラム支持機構を図3〜図5を用いて説明する。図3に示すように、感光体ドラム7の外周は、ドラム軸受部材18に形成された孔部18aに通され、支持される。
図3を用いて、このドラム軸受部材18の孔部18aの孔形状について説明する。感光体ドラム7は、外周の感光層7aを、感光体ドラム7の軸心を略鉛直方向に向けて、塗料が入った塗布槽に浸漬塗布により形成されている。このため、感光層7aを浸漬塗布する際に鉛直方向において下側に位置した感光体ドラム7の軸方向における一端部は、感光層7aの液ダレ等により感光層7aが厚くなる。よって、感光体ドラム7の浸漬塗布の際に下側に位置した軸方向の一端部は、ストッパ部材16の取り付けのため、少なくともシリンダ端面から感光層7aを除去する必要があるので、浸漬塗布工程後に感光層7aが剥離される。このような工程を経ても、感光層7aの液ダレ、剥離ムラにより、感光体ドラム7の軸方向において一端部の端から5mm程度の範囲fで他の部分よりも数十μm程感光層7aの厚くなった段差を有する部分が残る場合がある。このため、ドラム軸受部材18の孔部18aの内接円(筒)の径(内径)φbは、感光層7aの範囲fにおける径φaよりも大きく設定される。これにより、ドラム軸受部材18の孔部18aは、一端部の感光層7aの領域である範囲fの部分と干渉しない。よって、容易に孔部18aに感光体ドラム7を通過させて、感光体ドラム7にドラム軸受部材18を組み付けることが可能となる。
【0016】
次に、ドラム軸受部材18の感光体ドラム7と当接し支持する2つの支持部である平面部18cの配置について述べる。まず、軸方向の配置については、図3(c)に示すように、感光体ドラム7を支持するための平面部18cは、液ダレ、剥離ムラによる感光層7
aに段差が生じる範囲fから外れた範囲fよりも軸方向内側の感光層7aと当接して支持するように配置される。即ち、平面部18cは範囲fよりも、軸方向において中央部に近い領域xの感光層7aと接触して感光体ドラム7を支持する。
次に、ドラム軸受部材18の2つの平面部18cの位相配置について図4を用いて説明する。図4(a)は、感光体ドラム7が駆動されず静止している場合に、感光体ドラム7に働く力を示したものである。図4(a)に示すように、感光体ドラム7には、現像ローラ13の軸方向の両端に配置されるスペーサコロ24からの力h、さらに、帯電ローラ8、クリーニングブレード12、及び転写ローラ4からの力i,j,gが働き、結果として矢印k方向の合力が働く。ここで、それぞれの矢印の長さは力の大きさを示している。
次に図4(b)を用いて、感光体ドラム7が駆動された場合に働く力について述べる。前述の静止時に働く合力kに加えて、駆動時に主に働く力は、クリーニングブレード12による摩擦力であり、矢印lで表される。よって、駆動時の合力としては、前述の静止時の合力kに合力lを加え、合力mの力が働く。即ち、感光体ドラム7には、感光体ドラム7を押圧している複数のプロセス手段(部品)の押圧力を合わせた合力kや合力mが働く。こうして求められた、感光体ドラム7の静止時と駆動時に働く複数のプロセス手段からの合力k又は合力mに対して、ドラム軸受部材18の感光体ドラム7と当接する2つの平面部18cは、これらの力を受け止める位置に配置される。そして、これらの力を利用して感光体ドラム7を、2つの平面部18cの間の位置に位置決めする。即ち、両条件下において感光体ドラム7は常にこの2つの平面部18cと当接し位置決めされることになる。
【0017】
次に図5を用いて、画像形成装置本体への位置決めについて述べる。プロセスカートリッジBは、画像形成装置本体に対して矢印s方向に、ドラム軸受部材18に形成された位置決め部18d,18eを、ガイド部材32の溝32aに通されて装着される。完全に装着された後、不図示の付勢部材により、矢印q方向に付勢され、位置決め部18dとガイド部材32の位置決め部32bが当接し、感光体ドラム7は画像形成装置本体内で位置決めされる。
【0018】
以上説明した構成による効果を述べる。まず、孔部18aの径φbを感光体ドラム7の浸漬塗布の際に鉛直方向において下側に位置した軸方向の一端部の径φaよりも大きくした。それによって、感光体ドラム7へのドラム軸受部材18の組み付け性が向上した。また、感光体ドラム7は複数のプロセス手段が作用することによって生じる合力によって、支持部である2つの平面部18cに押圧され位置決められる。このため、孔部18aの中で感光体ドラム7が位置変動することなく、回転精度を向上させることができる。
さらに上述のように、感光体ドラム7と当接して支持する2つの平面部18cは、感光層7aの軸方向の範囲fの領域よりも軸方向において中央部側に近い領域を支持する。このため、感光層7aの凹凸によって、感光体ドラム7の回転精度が影響を受けることがなく、回転精度を向上させることができる。
【0019】
(感光体ドラムの駆動側におけるドラム支持機構)
感光体ドラム7の駆動側におけるドラム支持機構を説明する。
まず、画像形成装置本体への装着について、図6を用いて説明する。駆動側でも非駆動側と同様に、プロセスカートリッジBは、ドラム軸受部材17に形成されたガイドボス17d,17eをガイド部材31のガイド溝31aに通して、矢印s方向に装着される。また駆動側には、図6(b)に示すように、プロセスカートリッジBの継手形状部15aと係合し、感光体ドラム7に駆動を伝達するための、継手部材30が設置される。ここで感光体ドラム7の画像形成装置本体との位置決めは、非駆動側とは異なり、ガイド部材31ではなく、継手部材30により行われる。
【0020】
図7(a)は、感光体ドラム7の駆動側におけるドラム支持機構を示す断面図である。
これを用いて、画像形成装置本体の継手部材30のプロセスカートリッジBの装着開始から、画像形成時に駆動されるまでの軸方向の動きについて説明する。はじめに、画像形成装置本体の継手部材30の先端は、プロセスカートリッジBの装着時に干渉しないよう、図中w1で示す退避した位置にある。
その後、プロセスカートリッジBが画像形成装置本体に完全に装着されると、継手部材30の先端は、図中w2からw3で示す線の間の位置まで移動する。継手部材30の先端は、例えば、画像形成装置本体に設けられるプロセスカートリッジBの装着時に開閉するドア(不図示)を閉じる動作と連動して移動する。この継手部材30が移動した図中w2からw3で示す線の間の位置は、継手部材30がプロセスカートリッジBの継手形状部15aと突き当たる位置である。このとき、継手部材30は不図示の付勢部材により矢印z方向に付勢されている。
次に、画像形成時に継手部材30が駆動されると、継手部材30と継手形状部15aとの位相が合い、付勢力により図中w3の位置まで継手部材30が移動し、継手形状部15aと係合する。この係合部の断面図を図7(b)に示す。ここで、継手部材30の矢印R方向の駆動力の作用によって、プロセスカートリッジBの三角形状をした継手形状部15aの中心は、継手部材30の同じく三角形状をした係合穴30aの中心と一致するように調心される。このように、両者の間で偏心を生じさせることなく、駆動が伝達される。
【0021】
以上の継手部材30と継手形状部15aとの作用による、感光体ドラム7から画像形成装置本体のカップリングまでの位置決め経路について、図7(a)を用いて説明する。感光体ドラム7は、その外周から、支持部材であるストッパ部材15の内周15cと嵌合して支持され、位置決めされる。そして上述のように、ストッパ部材15に形成された継手形状部15aが、画像形成装置本体の継手部材30の係合穴30aと係合し、駆動力により調心され、感光体ドラム7は画像形成装置本体に対して位置決めされる。
【0022】
次に、上述のプロセスカートリッジBを画像形成装置本体に装着する際のガイドボス17dとガイド溝31aの、継手部材30と継手形状部15aとの係合に関わる作用について図7(a)を用いて説明する。図7(a)は、駆動時における継手部材30と継手形状部15aとの調心作用により、感光体ドラム7が位置決められた状態を示している。ここでは、ドラム軸受部材17のガイドボス17dとガイド溝31aとの間には隙間が空いており、この状態では、位置決めの作用を持たない。両者が位置決めとして作用するのは、プロセスカートリッジBが装着されてから、駆動により継手部材30と継手形状部15aとが係合されるまでの、一時的な場合だけである。
この一時的な位置決めによって継手部材30と継手形状部15aの位置が半径方向にずれていても、図7(b)に示すように、継手部材30と継手形状部15aの間の内接円の半径の差dにより、係合時の半径方向の位置ずれは許容される。この半径の差dの量は、ガイドボス17dとガイド溝31aとによる一時的な位置決めによるずれ量よりも大きく設定されるため、駆動によって三角形の位相が合うと、継手部材30と継手形状部15aとは安定して係合することができる。
【0023】
以上説明した構成による効果を述べる。まず、感光層7aの液ダレや剥離ムラの無い、感光体ドラム7の浸漬塗布の際に鉛直方向において上側に位置した軸方向の他端部の外周面に、直接駆動伝達部材であるストッパ部材15を嵌合させる。これにより、画像形成装置本体の駆動伝達部材である継手部材30までの、感光体ドラム7への駆動伝達と支持に係る部材の部品点数を少なくすることができる。このため、ドラム支持機構を簡易なものにするとともに、部品精度による回転精度の影響を最小限とし、感光体ドラム7の回転精度を向上させることができる。
また、感光体ドラム7への駆動伝達部材をストッパ部材15として、ストッパ部材15が画像形成装置本体からの駆動伝達を受けるようにしている。これにより、継手形状部15aに調心機能を持つ形状を形成することができ、継手形状部15aでの安定した係合と
、調心による位置決めの作用を実現することができる。
【0024】
以上説明したように、浸漬塗布法により感光層を形成した感光体ドラム7について、感光体ドラム7の内周面を使わず、外周面を直接支持する。それによって、感光体ドラム7のシリンダ(円筒部材)の偏肉精度にかかわらず、感光体ドラムを精度良く支持することができる。また、感光体ドラム7の浸漬塗布時に下側に位置した軸方向の一端部の、液ダレや剥離ムラによって感光層7aが厚くなっている範囲fを、ドラム軸受部材18は支持しない。以上の2つの作用によって、感光体ドラム7の回転精度を向上させることができる。
さらに、感光体ドラム7の浸漬塗布時に上側に位置した軸方向の他端部においても、感光体ドラム7の外周を直接支持する。これにより、感光体ドラム7を精度良く支持できると共に、感光体ドラム7の回転精度を向上させることができる。また、感光体ドラム7の軸方向両端部の支持に内周を使用しない。それによって円筒部材の偏肉精度の工程管理を厳しくする必要がなくなり、感光体ドラム7のシリンダ部品の低コスト化を図ることができる。
また、ドラム軸受部材18の孔部18aの内径を、感光層7aが厚くなった範囲fの外径よりも大きくした。これにより、孔部18aが感光体ドラム7の範囲fに干渉することなくので、ドラム軸受部材18を感光体ドラム7に通過可能にして、容易に感光体ドラム7のドラム支持機構を組み立てることができる。さらに、感光体ドラム7に対して働く複数のプロセス手段による押圧力の合力kや合力mを受け止める2つの平面部18cをドラム軸受部材18の孔部18aの内周面に設けている。これにより、ドラム軸受部材18の孔部18aの内径が感光体ドラム7の外径よりも大きいにもかかわらず、常に感光体ドラム7はこの2つの平面部18cと当接することで位置決められる。このため、感光体ドラム7は、孔部18aの中で位置変動することなく、回転精度を向上させることができる。
【0025】
また、感光体ドラム7のドラム軸受部材17を、同時に感光体ドラム7へ駆動力を伝達する駆動伝達部材としている。これにより、駆動伝達と支持に係る部材の部品点数を少なくすることができ、部品精度による回転精度の悪化を最小限とし、感光体ドラム7の回転精度を向上させることができる。
【0026】
<実施例2>
本発明の実施例2について説明する。図8は、本例に係るプロセスカートリッジBの斜視図である。本例が前述の実施例1と異なるのは、感光体ドラム7の浸漬塗布の際に鉛直方向において下側に位置した軸方向の一端部に取り付けられたストッパ部材16に、画像形成装置本体からの駆動入力を受ける継手形状部16aが設けられることである。以下の説明ではこちら側を駆動側と呼び、ドラム支持機構について説明する。
【0027】
(感光体ドラムの駆動側におけるドラム支持機構)
図9(a)は、感光体ドラム7の駆動側におけるドラム支持機構の断面図である。ここで、感光体ドラム7の画像形成装置本体に対する位置決めは、以下のように行われる。即ち、上述の実施例1の場合と同様に、まず、軸受部材であるドラム軸受部材18の孔部18aの2つの平面部18cが感光層7aの表面に当接する。そして、ドラム軸受部材18の位置決め部18dとガイド部材32の位置決め部32bが当接する。
ここで、感光体ドラム7の軸方向の一端部に取り付けられたストッパ部材16には、感光体ドラム7を駆動するための継手形状部16aが配置されている。しかし本例では、継手形状部16aは、上述の実施例とは異なり、感光体ドラム7の画像形成装置本体に対する位置決めの作用は持たない。これは、ストッパ部材16の継手形状部16aと、継手部材30の係合穴30aとは、図9(b)に示すように駆動伝達のみの機能を持った形状をしており、上述の実施例のような調心作用は持たないためである。
【0028】
(感光体ドラムの非駆動側におけるドラム支持機構)
次に、図10を用いて感光体ドラム7の非駆動側におけるドラム支持機構について説明する。ここでは、上述の実施例と同様に、感光体ドラム7の外周に、ストッパ部材15が嵌合して取り付けられ、ストッパ部材15の軸部15dがドラム軸受部材17の孔部17aに大きな隙間無く挿通されて位置決め固定される。
本例が上述の実施例と異なるのは、ガイド部材31が、感光体ドラム7の位置決めの作用を持つことである。図10に示すように、ガイド部材31の溝部31bとドラム軸受部材17の位置決め部17dの間に大きな隙間は設けられておらず、この部分によって感光体ドラム7を画像形成装置本体に対して位置決めしている。
【0029】
以上説明した構成においても、浸漬塗布法により感光層7aを形成してある感光体ドラム7のドラム支持機構において、外周を直接支持することによって、感光体ドラム7のシリンダの偏肉精度にかかわらず、回転精度を向上させることができる。
また、液ダレや剥離ムラによって感光層7aが厚くなった範囲fから中央部側に外れた位置で感光体ドラム7を支持するので、範囲fが感光体ドラム7の回転精度へ影響するが防止でき、これによっても感光体ドラム7の回転精度を向上させることができる。
また、感光体ドラム7を支持するドラム支持機構を簡易なものにでき、部品精度による感光体ドラム7の回転精度の影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
7…感光体ドラム、7a…感光層、18…ドラム軸受部材、f…範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部材の周面上に浸漬塗布法により形成された感光層を有する電子写真感光体ドラムを支持するドラム支持機構であって、
前記感光層を前記円筒部材に浸漬塗布する際に下側であった、前記電子写真感光体ドラムの軸方向における一端部の感光層よりも、前記軸方向において中央部に近い領域の感光層と接触して前記電子写真感光体ドラムを支持する軸受部材を備えたことを特徴とするドラム支持機構。
【請求項2】
前記軸受部材は、前記電子写真感光体ドラムに取り付ける際に前記一端部の感光層を通過可能な孔部と、前記孔部の内周面に設けられた、前記中央部に近い領域の感光層と接触する支持部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のドラム支持機構。
【請求項3】
前記支持部は、前記電子写真感光体ドラムを押圧している複数の部品の押圧力を合わせた合力を受け止めることで、前記電子写真感光体ドラムを位置決めする2つの平面部であることを特徴とする請求項2に記載のドラム支持機構。
【請求項4】
前記感光層を前記円筒部材に浸漬塗布する際に上側であった、前記電子写真感光体ドラムの軸方向における他端部を、前記電子写真感光体ドラムの外周から支持する支持部材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドラム支持機構。
【請求項5】
前記電子写真感光体ドラムは、前記一端部において前記円筒部材の内周面と嵌合する駆動伝達部材であって、電子写真画像形成装置本体からの駆動力が入力されて前記電子写真感光体ドラムに前記駆動力を伝達する駆動伝達部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のドラム支持機構。
【請求項6】
電子写真画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体ドラムと、
前記電子写真感光体ドラムに作用するプロセス手段と、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドラム支持機構と、
を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する電子写真画像形成装置であって、
前記電子写真感光体ドラムと、
前記電子写真感光体ドラムに作用するプロセス手段と、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドラム支持機構と、
を備えたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体に画像を形成する電子写真画像形成装置であって、
請求項6に記載のプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−164589(P2011−164589A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291339(P2010−291339)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】