説明

ドーパミンD2受容体遮断剤とノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびノルエピネフリンα2受容体遮断剤との組み合わせ

物質乱用/依存、特にアルコール乱用/依存を治療および/または予防する方法を開示する。薬剤の組み合わせも開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アルコールおよび/または他の物質乱用または依存の治療、ならびにそのような治療に用いる組成物に関する。
【0002】
関連出願
本発明者は、本発明者の以前に提出した特許出願である、2007年12月11日提出のUSSN 61/007,117および2007年2月1日提出のUSSN 60/887,657からの優先権を主張し、これらの内容はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
物質使用障害(すなわち、物質乱用または物質依存)は、統合失調症の患者でよく起こり、その臨床経過を悪化させる。一般に乱用される物質には、アルコール、大麻およびコカインが含まれ、そのような乱用は一般の集団で見られる率の3倍を超える率で発生する。さらに、喫煙は統合失調症患者の75%よりも多くで見られる。統合失調症を治療するためによく用いられる標準的または典型的な抗精神病薬は、この集団における物質の使用を減らす助けにはならないようである。しかし、本発明者らのグループおよび他のグループからのデータは、非定型的な抗精神病薬のクロザピンはこの集団におけるアルコール、大麻およびコカイン乱用を制限するようであるが、その毒性が広範な使用を制限することを示唆している。
Green, A.I., et al., Clozapine for comorbid substance use disorder and schizophrenia: do patients with schizophrenia have a reward-deficiency syndrome that can be ameliorated by clozapine? Harv Rev Psychiatry, 1999. 6(6): p. 287-96(非特許文献1); Green, A.I., et al., Substance abuse and schizophrenia: Pharmacotherapeutic intervention. J Subst Abuse Treat, 2008. 34(1): p. 61-71(非特許文献2);; Brunette, M.F., et al., Clozapine use and relapses of substance use disorder among patients with co-occurring schizophrenia and substance use disorders. Schizophr Bull, 2006. 32(4): p. 637-43(非特許文献3). Drake, R.E., et al., The effects of clozapine on alcohol and drug use disorders among patients with schizophrenia. Schizophr Bull, 2000. 26(2): p. 441-9(非特許文献4); Green, A.I., et al., Alcohol and cannabis use in schizophrenia: effects of clozapine vs. risperidone. Schizophr Res, 2003. 60(1): p. 81-5(非特許文献5); Zimmet, S.V., et al., Effects of clozapine on substance use in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder: a retrospective survey. J Clin Psychopharmacol, 2000. 20(1): p. 94-8(非特許文献6); US 2006-0189599(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2006-0189599
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Green, A.I., et al., Clozapine for comorbid substance use disorder and schizophrenia: do patients with schizophrenia have a reward-deficiency syndrome that can be ameliorated by clozapine? Harv Rev Psychiatry, 1999. 6(6): p. 287-96
【非特許文献2】Green, A.I., et al., Substance abuse and schizophrenia: Pharmacotherapeutic intervention. J Subst Abuse Treat, 2008. 34(1): p. 61-71
【非特許文献3】Brunette, M.F., et al., Clozapine use and relapses of substance use disorder among patients with co-occurring schizophrenia and substance use disorders. Schizophr Bull, 2006. 32(4): p. 637-43
【非特許文献4】Drake, R.E., et al., The effects of clozapine on alcohol and drug use disorders among patients with schizophrenia. Schizophr Bull, 2000. 26(2): p. 441-9
【非特許文献5】Green, A.I., et al., Alcohol and cannabis use in schizophrenia: effects of clozapine vs. risperidone. Schizophr Res, 2003. 60(1): p. 81-5
【非特許文献6】Zimmet, S.V., et al., Effects of clozapine on substance use in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder: a retrospective survey. J Clin Psychopharmacol, 2000. 20(1): p. 94-8
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明者らは、一連の動物実験に基づき、ドーパミンD2受容体遮断(典型的には弱い遮断)とノルエピネフリン再取り込み阻害(すなわち、ノルエピネフリン輸送体の阻害)との組み合わせを示す薬剤が、アルコールおよび/もしくは他の物質乱用/依存を有する、またはそのリスクが高い患者(アルコールおよび/または他の物質乱用/依存と、統合失調症または双極性障害などの併発する精神障害の両方を有する患者を含む)に対する有用な治療法であることを見いだした。そのような薬剤におけるノルエピネフリンα2受容体遮断(クロザピンの特性でもある)の存在(他の効果、すなわち、ドーパミンD2受容体遮断およびノルエピネフリン再取り込み阻害との組み合わせで)も、そのような個人におけるアルコール(または他の物質)乱用を制限する助けとなりうる。この文脈における乱用物質には、アルコールのみならず、ヘロインおよびoxyContin(商標)を含むオピオイド、大麻、コカイン、アンフェタミン、タバコなども含まれる。
【0007】
本発明のもう1つの局面は、前述の活性を示す薬剤の組み合わせを特徴とする。この組み合わせには下記が含まれる:(a)ドーパミンD2受容体アンタゴニスト活性のために、リスペリドン、パリペリドン、ハロペリドール、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、イロペリドン、デスメチルクロザピン、フルフェナジンまたはD2受容体遮断(拮抗)特性を有する他の薬物;(b)ノルエピネフリン再取り込み遮断(阻害)のために、デシプラミンもしくはレボキセチン、またはノルエピネフリン再取り込み阻害特性を有する他の薬物;(c)α2アンタゴニスト活性のために、イダゾキサンおよびヨヒンビン、またはノルエピネフリンα2受容体拮抗作用を有する他の薬物。
【0008】
薬剤の複数の活性が複数の特定の薬用化合物によって提供される、薬剤の組み合わせを有する組成物、ならびに薬剤の組み合わせを用いての治療法も特徴とする。
【0009】
したがって、本発明は一般には物質乱用/依存、特にアルコール乱用/依存を治療および/または予防する方法を特徴とする。本発明において用いる薬剤を上に記載している。本発明に従って治療する患者は、アルコールまたは物質乱用/依存の既往歴またはリスクを有するものである。
【0010】
投与する化合物は、公知の技術により適当な薬学的製剤、例えば、周知の錠剤およびカプセル製剤に製剤することができる。そのような製剤は典型的には活性物質(または塩の形の物質)および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」なる用語は、薬学的投与に適合性の、任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。薬学的活性物質のためのそのような媒質の使用は当技術分野において周知である。任意の通常の媒質または物質が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物中のその使用が企図される。補助的活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0011】
本発明の薬学的組成物を、その意図される投与経路に適合性であるように製剤する。投与経路の例には、経口、静脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜(例えば、鼻内)、および直腸が含まれる。
【0012】
格段に都合のよい投与経路は経口(摂取)である。経口組成物は一般に不活性希釈剤または食用担体を含む。これらはゼラチンカプセルに封入するか、または圧縮して錠剤とすることができる。経口による治療的投与のために、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル剤の形で用いることができる。薬学的に適合性の結合剤、および/または補助材料を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは任意の下記の成分、または同様の性質を有する化合物を含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、もしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などのすべり剤;ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの着香剤。
【0013】
一つの態様において、活性化合物を、埋込物およびマイクロカプセル化送達系を含む、徐放製剤などの、体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体と共に調製する。酢酸エチレンビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生体分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製法は当業者には明らかであろう。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.からも市販されている。リポソーム懸濁液を薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは当業者には公知の方法に従って調製することができる。
【0014】
投与を容易にし、用量を均一にするために、経口組成物を用量単位剤形に製剤することは特に有益である。本明細書において用いられる用量単位剤形とは、治療する被験者のための単位用量として適した物理的に分離した単位を意味し;各単位は、必要とされる薬学的担体と合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された、活性化合物のあらかじめ決められた量を含む。本発明の用量単位剤形の規格は、活性化合物の特有の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに個人の治療のためにそのような活性化合物を配合する技術分野に固有の制限によって規定され、かつそれらに直接依存する。
【0015】
薬学的組成物は、投与のための説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサー内に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(先行技術)は、実施例1に報告する実験の結果を示すグラフである:Green, A.I., et al., Clozapine reduces alcohol drinking in Syrian golden hamsters. Psychiatry Res, 2004. 128(1): p. 9-20から抜粋した、ハムスターの飲酒に対するクロザピンおよびハロペリドール。
【図2】実施例2に報告する実験の結果を示すグラフである:ハムスターの飲酒に対する長期的クロザピン。
【図3】実施例3に報告する実験の結果を示すグラフである:P-ラットの飲酒の誘導に対するクロザピンおよびハロペリドール。
【図4】実施例4に報告する実験の結果を示すグラフである:P-ラットの飲酒の誘導に対するクロザピンおよびハロペリドール。
【図5】実施例5に報告する実験の結果を示すグラフである:ハムスターの飲酒の誘導に対するクロザピンおよびラクロプリド。
【図6】実施例6に報告する実験の結果を示すグラフである:ハムスターの飲酒に対するハロペリドールおよびデシプラミン。
【図7】実施例7に報告する実験の結果を示すグラフである:P-ラットの飲酒の誘導に対するハロペリドール、デシプラミンおよびイダゾキサン。
【図8】実施例8に報告する実験の結果を示すグラフである:P-ラットの飲酒の誘導に対するハロペリドール、デシプラミンおよびイダゾキサン。
【図9】実施例9に報告する実験の結果を示すグラフである:ハムスターの飲酒に対するリスペリドンおよびデシプラミン。
【図10】実施例10に報告する実験の結果を示すグラフである:ハムスターの飲酒に対するリスペリドンおよびデシプラミン。
【図11】実施例11に報告する実験の結果を示すグラフである:P-ラットの飲酒の誘導に対するリスペリドンおよびデシプラミン。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明の1つまたは複数の態様の詳細を添付の図面および以下の説明において示す。本発明の他の特徴、目的、および利点はこの説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0018】
以下の実施例は本発明の詳細な説明を提供するものである。
【0019】
一般的方法
本発明者らの実験において用いた動物モデルには、シリアンゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus, Harlan Inc.)およびアルコールを好むPラット(Indiana University)が含まれる。動物は両方とも2つの液体から選ばせると水よりもアルコール溶液を好み、1日に大量のアルコールを消費する。しかし、ハムスターはアルコールに対する生来の嗜好性を有する非近交系齧歯類であるが、Pラットは高いアルコール嗜好性を有するラットの選択的交配により多世代にわたって育種した。ハムスターおよびPラットは両方とも、アルコール中毒の治療薬をスクリーニングするためにアルコール研究者によって用いられてきた。Keung, W.M. and B.L. Vallee, Daidzin and daidzein suppress free-choice ethanol intake by Syrian golden hamsters. Proc Natl Acad Sci U S A, 1993. 90(21): p. 10008-12; McBride, W.J. and T.K. Li, Animal models of alcoholism: neurobiology of high alcohol-drinking behavior in rodents. Crit Rev Neurobiol, 1998. 12(4): p. 339-69.
【0020】
2つのタイプの試験をハムスターおよびPラットで行った。第一のタイプの試験はこれらの動物における慢性的飲酒を低減させる薬物(または薬物の組み合わせ)の能力を評価した。これらの試験において、薬物治療は動物が数週間飲酒した後に始めた。第二のタイプの試験は飲酒を誘導する動物の能力に対する薬物(または薬物の組み合わせ)の効果を評価した。後者のタイプの試験における動物には、アルコールへの曝露前の数日間およびアルコールへの曝露開始後の数週間薬物治療を行った。すべての動物は2つの別の飲料瓶で10〜15%アルコールおよび水を1日24時間自由に摂取させた。動物群(n=6〜10/群)に4週間まで特定の薬物もしくは薬物の組み合わせまたは媒体を1日1回注射した。
【0021】
実施例1(先行技術)および2
1つの試験において、本発明者らはクロザピン(CLOZ)が媒体(VEH)よりもシリアンゴールデンハムスターの慢性的飲酒を劇的に低減させるが、典型的な抗精神病薬のハロペリドール(HAL)は低減させないことを示した(図1)。Green, A.I., et al., Clozapine reduces alcohol drinking in Syrian golden hamsters. Psychiatry Res, 2004. 128(1): p. 9-20. 試験したハロペリドールのどの用量も、ハムスターの飲酒に効果がなかった。さらに、データ未発表のもう1つの試験において、図2から明らかであるとおり、本発明者らはクロザピンのこの効果が長期的で、少なくとも1ヶ月間持続することを示した。
【0022】
実施例3および4
もう1つの試験において、本発明者らはクロザピン(CLOZ)が、媒体(VEH)およびハロペリドール(HAL)と比べて、アルコールを好むPラットの飲酒の誘導も低減させることを示した(図3)。これは、アルコール嗜好性(アルコールの瓶から消費した液体の%)を見ることにより最も劇的に認められる-図4。クロザピンは飲酒の誘導中のアルコール嗜好性を劇的に低減させる。
【0023】
実施例5
実施例5(図5)において、本発明者らはクロザピン(この場合は低用量)がハムスターの飲酒の誘導も鈍らせることを示した。本発明者らは図5に、低用量のクロザピンにラクロプリド(RACL、強力なD2/D3受容体アンタゴニスト)を加えることにより、ハムスターによる飲酒の誘導に対するクロザピンのこの効果が失われることも示した。この知見は、飲酒に対するクロザピンの効果がその弱いD2受容体遮断能力に少なくとも部分的に関連しているという本発明者らの主張と一致している。
【0024】
実施例6
ハムスターにおいて、前述のとおり、ハロペリドールは慢性飲酒に対してほんのわずかの効果しかない。しかし、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤のデシプラミン(DMI)を低用量ハロペリドール(HAL)に加えると、飲酒をデシプラミン単独よりも低減させる(図6)。このことは、弱いドーパミンD2受容体遮断剤にノルエピネフリン再取り込み阻害剤を加えると飲酒を低減させるという本発明者らの主張を裏付けている。
【0025】
実施例7および8
低用量ハロペリドールはPラットによる飲酒の誘導を鈍らせるのに最低限の能力しか有していない。しかし、α2受容体遮断剤のイダゾキサン(IDAZ)を低用量ハロペリドールに加えると、飲酒の誘導を鈍らせるハロペリドールの能力をわずかに増大させる。しかし、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤のデシプラミン(DMI)をこれら2つの薬物に加えると、飲酒およびアルコール嗜好性を低減させるそれらの能力を劇的に増大させる(図7および8)。この効果は、強力なノルエピネフリンα2受容体遮断剤およびノルエピネフリン再取り込み阻害剤と合わせた弱いドーパミンD2受容体遮断効果は飲酒を低減させるであろうという本発明者らの主張と一致している。
【0026】
実施例9〜11
最後に、本発明者らは、強力なドーパミンD2受容体遮断能力を有する薬物であるリスペリドン(RISP)の低用量が、ハムスター(慢性飲酒)およびPラット(飲酒の誘導)の両方で飲酒に対してわずかな効果しかないことを示した。本発明者らはさらに、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤のデシプラミン(DMI)をリスペリドンに加えると、リスペリドンの飲酒を制限する作用を引き出すことも示した。さらに、本発明者らがハムスターとPラットの両方で認めたこの効果は、デシプラミン単独よりも劇的である(図9、10、および11)。この効果は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤と合わせた弱いD2受容体遮断剤(低用量のリスペリドンであるがために弱い)は飲酒を低減させるであろうという本発明者らの主張と一致している。さらに、リスペリドンはノルエピネフリンα2受容体(D2受容体と同様)の遮断剤でもあるため、そのα2受容体の遮断(そのD2受容体遮断と組み合わせて)は、DMIがリスペリドンを飲酒を低減させる薬物に変換させる一因となっていると考えられる。
【0027】
本発明者らは、弱いドーパミンD2受容体遮断剤(アンタゴニスト)と強力なノルエピネフリン再取り込み阻害剤との組み合わせは、飲酒を制限する能力をクロザピンと共有する薬物を生じうると結論する。本発明者らはさらに、ノルエピネフリンα2受容体遮断剤(アンタゴニスト)の追加は、これらの特徴を有する組成物の飲酒を制限する能力に寄与しうるとも結論する。本発明者らの知見は、これらの特性を有する薬剤を、統合失調症およびアルコールまたは物質乱用/依存の患者における治療薬として提唱するものである。本発明者らが試験した薬剤はアルコール中毒の動物モデルにおいて飲酒を制限するため、またさらに、アルコール使用障害および物質使用障害の患者は統合失調症の患者といくつかの生物学的特徴(すなわち、脳報酬回路の障害)を共有していることがあるため、本発明者らはこれらの特徴を有する薬剤は統合失調症を伴わないアルコール使用障害および/または物質使用障害の患者においても有効であるはずだと結論する。
【0028】
本発明のいくつかの態様を記載してきた。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変を行いうることが理解されるであろう。したがって、他の態様は添付の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の組み合わせを示す組成物を患者に投与することにより、アルコールもしくは他の物質の乱用もしくは依存を有するかまたはそのリスクを有する患者を治療する方法:
(a)ドーパミンD2受容体遮断(拮抗作用);および
(b)ノルエピネフリン再取り込み阻害。
【請求項2】
組成物がノルエピネフリンα2受容体遮断(拮抗作用)をさらに示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
乱用物質に下記の1つまたは複数が含まれる、請求項1記載の方法:アルコール、1つまたは複数のオピオイド、大麻、コカイン、アンフェタミン、タバコ。
【請求項4】
オピオイドがヘロイン、oxyContin(商標)、または両方である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
D2受容体遮断が、弱いドーパミンD2受容体アンタゴニスト(遮断剤)である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項6】
患者が統合失調症または双極性障害などの併発する精神障害を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項7】
患者が統合失調症または双極性障害などの併発する精神障害を示す、請求項1記載の方法。
【請求項8】
組成物が、ドーパミンD2受容体アンタゴニスト活性として、リスペリドン、パリペリドン、ハロペリドール、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、イロペリドン、デスメチルクロザピン、フルフェナジン、クロルプロマジン、トリフルオペリジン、モリンドン、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、ラクロプリド、スルピリド、アミスルピリドからなる群より選択される薬物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
組成物が、ノルエピネフリンα2受容体アンタゴニストとして、イダゾキサン、ヨヒンビン、アチパメゾール、ミルタザピン、ミアンセリン、メトキシイダゾキサン、フェノキシベンザミン、ブスピロン、ミアンセリンを含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
組成物が、ノルエピネフリン再取り込み阻害として、デシプラミン、レボキセチン、ノルトリプチリン、アタモキセチン、マプロチリン、ニソキセチン、ノミフェンシン、イミプラミン、ブプロピオン、ケタミン、ビシファジン、n-デスアルキルクエチアピンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
(a)ドーパミンD2受容体遮断(拮抗作用);および(b)ノルエピネフリン再取り込み阻害を含む、薬剤。
【請求項12】
ノルエピネフリンα2受容体遮断(拮抗作用)をさらに含む、請求項11記載の薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−518023(P2010−518023A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548470(P2009−548470)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/052811
【国際公開番号】WO2009/014770
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509217378)
【Fターム(参考)】