説明

ナイスタチン誘導体およびその抗菌剤としての使用

本発明は、C28とC29との間において存在する、追加された二重結合を有し、ナイスタチンに対して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上においてさらに改変されたナイスタチン誘導体である化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のナイスタチンの誘導体およびその調製方法に関する。特に、本発明は、医薬品における、特に抗真菌剤としてのナイスタチン誘導体の使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
ナイスタチンは、グラム陽性菌Streptomyces nourseiの特定系統によって産生される、抗真菌物質の天然複合物である。ナイスタチンの主要構成物は、ナイスタチンA1であり、下記に示される構造を有するポリエンマクロライドである。
【0003】
【化1】

【0004】
ナイスタチンは、多数の、皮膚および粘膜におけるカンジダ症の処置において使用するための専売薬(たとえば、Infestat、Nyspes、Nystamont、Nystan、MycostatinおよびNilstat)中に存在している活性剤 である。ナイスタチンは、胃腸管から、または皮膚や膜を介して、十分には吸収されないものの、通常、経口的または局所的に投与される。これは、非経口で投与された場合、ナイスタチンは毒性を有するためのである。
【0005】
ナイスタチンは、ポリエンマクロライド系抗生物質のファミリーの一部である。このファミリーの他の物の例としては、ピマリシン、リモシジン、カンジシジン、オーレオファシン、レボリンおよびアンホテリシンが挙げられる。アンホテリシンは、一般的に最も効果的であるものとされているので、抗真菌剤として、最も広く使用されているものである。これは、幅広い抗真菌活性のスペクトラムを有するが、ナイスタチンと同様に、使用可能な投与経路と服用量を制限するといった、毒性についての大きな欠点がある。
【0006】
そのため、マクロライドポリケチド系抗生物質における研究努力は、アンホテリシン、特に、毒性が低い新規アンホテリシン類似体の同定に傾注されている。2つの別個の手法が、一般的に採用されている。第一の手法においては、研究者は化学的改変を用いて、アンホテリシンの毒性を低減させ、および/または抗真菌活性を向上させようとする。しかしながら、アンホテリシンの全合成は採算性がないので、出発物質は、通常、Streptomyces nodosus培養から得られるアンホテリシンBである。結果として、化学的改変は、アンホテリシンのB環に存在する官能基の誘導体化に集中している。
【0007】
ごく近年では、研究者は、アンホテリシンの生合成経路を対象とした、異なる手法を採用している。この生合成経路は、異なる酵素による合成工程を含むものである。アンホテリシンの炭素鎖は、モジュラー(1型)ポリケチドシンターゼによって、酢酸単位およびプロピオン酸単位から合成され、次いで、得られたマクロライドは、酸化、グリコシル化およびヒドロキシル化を引き起こす、別の酵素によって改変される。この生合成に関与する酵素をコードする遺伝子は、同定されているので、研究者は、たとえば、遺伝子の削除、付加または修飾や、それによる上記合成に関与する酵素の削除、追加または改変によって、天然の生合成経路に変化を導入することができる。最終的な結果として、アンホテリシン分子が改変されることになる。
【0008】
そのため、非常に多くの、改変されたアンホテリシン分子、特に化学的に改変された誘導体が、製造され、評価されている。しかしながら、このような試行にも関わらず、薬理学的特性、すなわち高い抗菌活性、低い毒性および水溶性の良好なバランスを有するといった、有望な薬剤候補は、ほとんど同定されていない。そのため、依然として、感染症および、特に発生頻度が増加している急性全身性真菌感染を処置するための新規抗生物質が必要とされている。この要求は、既存の抗真菌剤に対する耐性が向上するに伴って、益々緊急を要するものになっている。
【0009】
おそらく、アンホテリシンよりも低い活性を有し、同様の毒性および水への不溶性を避けられないがために、ナイスタチンの改変に関する研究は、アンホテリシンに比べて、ほとんど実施されていなかった。結果として、このような研究のためには、ナイスタチンは魅力的な出発物質としてはみなされていなかった。
【0010】
近年の研究(Organic Letters, 2006, 8 (9), 1807-1809)において、2つのナイスタチン誘導体が、マイコサミンのアミノ基における還元的アルキル化によって調製された。得られた誘導体は、ナイスタチンよりも高い抗真菌活性を有することが見出されたものの、同様に調製されたアンホテリシンB誘導体よりも低い活性であった。そのために、アンホテリシンBの改変は、より有望なものであるとみなされ、評価されたこれらの誘導体の毒性は、親分子(parent molecule)と比べて、非常に低いことが示された。
【0011】
WO01/59126において、ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼおよびその他の酵素をコードする遺伝子群のクローニングおよび配列決定が開示されている。WO01/59126は、該遺伝子群に理論上実施でき、ナイスタチン構造を改変するような、多くの可能性がある操作も示唆している。この操作には、ナイスタチンのポリエン断片に由来する二重結合の削除または付加に関する改変、C16のカルボキシル基の削除または転移に関する改変、水酸基のさらなる付加に関する改変、およびマクロラクトン環の切除に関する改変が挙げられる。
【0012】
WO01/59126において提案された1つ以上の改変を実施することにより、莫大な数(およそ1017)の異なる改変されたナイスタチン構造が調製されうることは、上述のことからただちに明らかであろう。そして、さらなる化学的改変とともに遺伝子操作によって製造された化合物のうち何れかを、さらに改変することの可能性は、理論上、100京種類の化合物が可能であることを意味する。
しかしながら、ナイスタチンについては、ほとんどの研究が実施されていないので、これらの莫大な種類の化合物の何れが、ナイスタチンおよび/またはアンホテリシン(つまり、現在使用されている活性剤)に比べて、低い毒性を示すかを示唆するデータは、利用できるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、今回、驚くべきことに、特定のナイスタチンの誘導体は、アンホテリシンよりも顕著に低い毒性を有し、さらに有利なことに、同様の誘導体も有用な抗真菌活性を示すことが見出された。これまでに調製された改変アンホテリシン化合物の大多数のものとは違って、今回同定されたナイスタチン誘導体は、「第2世代」の誘導体である。換言すれば、これらの化合物は、ナイスタチンの誘導体の誘導体であり、ナイスタチンA1の構造に対して、2つ以上の改変を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の側面から見ると、本発明は、C28とC29との間において存在する、追加された二重結合を有し、ナイスタチンに対して、C5位、C9位、C10位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、さらに改変されたナイスタチン誘導体、あるいはその薬理学的に許容できる塩である化合物を提供する。
【0015】
別の側面から見ると、本発明は、C28とC29との間において存在する、追加された二重結合を有し、ナイスタチンに対して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、さらに改変されたナイスタチン誘導体、あるいはその薬理学的に許容できる塩である化合物を提供する。
【0016】
好ましい本発明に係る化合物は、式Iの化合物
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している(たとえば、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基を示すか、ともにカルボニル基を形成している。)。;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している(たとえば、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または水酸基示すか、ともにカルボニル基を形成している)。;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基(たとえば、水素原子または水酸基)を示す。;
は、水素原子、COOH、アルキル基、アルコキシ基、カルボン酸エステル基またはアミド基(たとえば、COOH、アルキル基、カルボン酸エステル基またはアミド基)を示す。;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルアミノ基、糖基またはアシル基を示す。;)
、あるいはそれらの薬理学的に許容できる塩である。
(ただし、前記化合物は、化合物(II)
【0019】
【化3】

【0020】
、または化合物マイコヘプチン(以下に示す。)
【0021】
【化4】

【0022】
ではない。)
さらに好ましい本発明に係る化合物は、上記の条件に従う化合物であって、式(I)の化合物であるが、式中、炭素7および/または炭素11におけるOH基は、たとえば、オキソ基に変換されている。該化合物は、式(I´)、すなわち
【0023】
【化5】

【0024】
である。
【0025】
式中、すべての置換基は、式(I)にて規定された通りであり、R1'、R2'、R3'およびR4'は、それぞれ独立して、各々R1〜R4にて規定された通りであり、さらに、ただし、式(I´)の化合物は、カンジジン(以下に示す。)ではない。)
【0026】
【化6】

【0027】
更なる側面からみると、本発明は、
(i)ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群を改変して、C28とC29との間において二重結合を有するナイスタチン誘導体を産生ことと、
(ii)さらに、前記遺伝子群を改変して、C16位において、C5位、C9位、C10位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、改変されたナイスタチン誘導体を産生するか、または
(iii)化学反応によって、C5位、C9位、C10位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、得られた誘導体を改変することと、を含む、上述するような化合物を製造する方法を提供する。
【0028】
さらなる態様から見ると、本発明は、
(i)ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群を改変して、C28とC29との間において二重結合を有するナイスタチン誘導体を産生することと、
(ii)さらに、前記遺伝子群を改変して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、改変されたナイスタチン誘導体を産生するか、または
(iii)化学反応によって、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、得られた誘導体を改変することと、を含む、上述するような化合物を製造する方法を提供する。
【0029】
また、さらなる側面から見ると、本発明は、上述するような化合物と、担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物を提供する。好ましい該組成物は、医薬組成物である。
【0030】
また、さらなる側面から見ると、本発明は、治療において使用するための、上述するような化合物を提供する。
【0031】
真菌感染の処置用の組成物の製造のための、上述するような化合物の使用は、本発明における更なる側面を形成するものである。
【0032】
上記に規定されるような化合物を動物に投与することを含む、動物(たとえばヒト)における真菌感染の処置方法は、本発明におけるまた更なる態様を形成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
ここで、後述の、非限定的な実施例および図面に照らし合わせて、本発明を説明する。
【図1】図1は、本発明に係る多くの化合物の構造を示す。
【図2】図2は、S44HP、および化合物1を産生するER5およびNysN が不活性化された変異体由来のDMSO抽出物のUVアイソプロットを示す。
【図3】図3は、ER5およびNysNが不活性化された変異体由来のDMSO抽出物に由来する主要なポリエンピークのTOFスペクトラムを示す。m/z=980および1034でのピークは内部標準である。
【図4】図4は、S44HPを産生するGG5073SP系統(標準系統)由来のDMSO抽出物、および化合物2を産生するER5およびKR17が不活性化された変異体由来のDMSO抽出物のUVアイソプロットを示す。
【図5】図5は、ER5およびKR17が不活性化された変異体由来のDMSO抽出物に由来する主要なポリエンピークのTOFスペクトラムを示す。
【図6】図6は、S44HPを産生するGG5073SP系統(標準系統)由来のDMSO抽出物、および化合物3を産生するER5、KR17およびNysNが不活性化された変異体由来のDMSO抽出物のUVアイソプロットを示す。
【図7】図7は、ER5、KR17およびNysNが不活性化された変異体由来のDMSO抽出物に由来する主要なポリエンピークのTOFスペクトラムを示す。m/z=980および1034でのピークは内部標準である。
【図8】図8は、S44HPを産生するGG5073SP系統(標準系統)由来のDMSO抽出物、および化合物4を産生するER5およびKR15が不活性化された変異体由来のDMSO抽出物のUVアイソプロットを示す。
【図9】図9は、化合物1および11におけるin vivoでの抗真菌活性評価の結果を示す。
【図10−16】図10〜16は、本発明における種々の化合物の調製についてのスキームである。
【図17】図17は、播種性カンジダ症の好中球減少マウスモデルにおける、本発明に係る新規化合物のin vivoでの評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において使用されるように、「ナイスタチン誘導体」との用語は、規定される特定の改変以外のナイスタチンAと同一の構造を有する化合物を包含することが意図されている。このように、好ましい誘導体は、C28〜C29における二重結合を除いて、ナイスタチンと同一のマクロラクトン環を有し、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上における変異を除いて、ナイスタチンと同一の機能性官能基 を有する。好ましい該誘導体は、以下に示されるような、グリコシル化されたマクロラクトン環骨格を含む。:
【0035】
【化7】

【0036】
これらの式において、C5位、C9位、C10位、C16位において、およびマイコサミンのN上において、改変があり得ることが理解されよう。そのため、示されているものは、存在しなければならない原子のみである。これらの形状は、存在し得る化学的な骨格を示す。
【0037】
本明細書において使用されるように、「ポリケチドシンターゼ系」との用語は、ポリケチド合成および改変を担う酵素の集合を指す。これには、たとえばポリケチドシンターゼ、モノオキシゲナーゼ、グリコシルトランスフェラーゼおよびアミノトランスフェラーゼが挙げられる。
【0038】
「アルキル基」との用語は、環状型または、直鎖型もしくは分岐型の非環状型の炭化水素基を示すために、本明細書において使用される。このような官能基 は、20までの炭素原子を含んでいてもよいが、1〜12の炭素原子、より好ましくは1〜6の炭素原子を含む官能基が好ましい。
【0039】
アルキル基は、非置換型であってもよいし、置換型であってもよい。置換型アルキル基において存在する置換基としては、たとえば水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基およびアミノ基が挙げられる。
【0040】
アルキル基は、1以上の官能基で、たとえば、アリル基(Phのような)、−O−、−NR12−または−S−で、割り込まれていてもよく、式中、R12は、水素原子またはC1−6のアルキル基を示す。
【0041】
「アルコキシ」との用語は、官能基−OR13を示すために、本明細書において使用され、式中、R13は、上記にて規定されるようなアルキル基である。好ましいアルコキシ基においては、R13が1〜6の炭素原子を、より好ましくは1〜4の炭素原子を含む。好ましいアルコキシ基は、−OC1−6であり、たとえば−OCHである。
【0042】
「アシルオキシ」との用語は、官能基−OCOR14を示すために、本明細書において使用され、式中、R14は、上記にて規定されるようなアルキル基である。好ましいアシルオキシ基においては、R14は、1〜6の炭素原子であり、より好ましくは、1〜4の炭素原子である。好ましいアシルオキシ基は、−OCOC1−6であり、たとえば−OCOCHである。
【0043】
「カルボン酸エステル基」との用語は、本明細書において、−COOR15を示すために使用され、式中、R15は、上記にて規定されるようなアルキル基である。好ましいカルボン酸エステル基においては、R15は1〜6の炭素原子であり、より好ましくは1〜4の炭素原子である。好ましいカルボン酸エステル基は−COOC1−6であり、たとえば−COOCHである。
【0044】
「アミド基」との用語は、式III:
【0045】
【化8】

【0046】
の基を示すために、本明細書において使用され、式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、置換されてもよい下記に規定されるようなアルキル基を示すか、ともに上記にて規定されるようなアリル環を形成する。
【0047】
「アルキルアミノ基」との用語は、官能基−(CHNR1617を示すために本明細書において使用され、式中、xは1〜10、好ましくは2〜6(たとえば3)であり、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素原子またはC1−6のアルキル基である。
【0048】
本明細書において使用される「糖」との用語は、糖類、特にオリゴ糖および単糖を示すために本明細書において使用される。本発明に係る化合物おける、該化合物中に存在する糖は、任意の数の糖単位を含んでもよいが、好ましい該化合物は、1〜10の糖単位を、たとえば1または2の糖単位を含む。
【0049】
「アシル」との用語は官能基−COR18を示すために本明細書において使用され、式中、R18は、上記にて規定されるようなアルキル基である。好ましいアシル基においては、R18は置換されたアルキル基であり、たとえばアミノ置換アルキル基である。特に好ましいアシル基はアミノアシル基である。
【0050】
上述されるように、本発明に係る化合物は、C28とC29との間において存在する、追加された二重結合を有し、ナイスタチンに対して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、さらに改変されたナイスタチン誘導体である。
【0051】
好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C5において改変されたものである。ナイスタチンにおいては、C5は、水酸基および水素原子によって置換されており、R立体中心である。好ましい本発明に係る上記化合物においては、C5は水酸基および水素原子以外の官能基で置換され、および/またはC5はS立体中心である。好ましい上記化合物においては、C5において、異なる官能基が存在し、たとえば、C5が、2つの水酸基または2つの水素原子によって置換されていてもよい。特に、好ましい上記化合物においては、C5は、カルボニル基によって置換されている。
【0052】
別の好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C16において改変されたものである。ナイスタチンにおいて、C16は、カルボン酸および水素原子によって置換されており、R立体中心である。そのため、好ましい本発明に係る化合物においては、C16はカルボン酸基および水素原子以外の官能基によって置換されており、および/またはC16はS立体中心である。好ましい上記化合物においては、異なる官能基が、たとえばアルキル基(たとえばメチル)および水素原子が、またはアミド基および水素原子が存在している。特に好ましい上記化合物においては、C16は、メチル基および水素原子によって置換されている。好ましい上記化合物において、C16はR立体中心である。
【0053】
さらに好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C9において改変されたものである。ナイスタチンにおいては、C9は、2つの水素原子によって置換されている。そのため、本発明に係る化合物においては、C9は、2つの水素原子以外によって置換されている。好ましい上記化合物においては、異なる官能基が、たとえば、水酸基と、水素原子またはカルボニル基とが存在している。
【0054】
さらに好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C7において改変され得る。ナイスタチンにおいては、C7は水酸基によって置換されている。そのため、いくつかの本発明に係る化合物は、C7は水酸基以外の官能基によって置換されている。好ましい上記化合物においては、カルボニル基が存在している。ここで、カルボニルが存在する場合、上記にて示された化合物カンジジンを除くために、ナイスタチンに対して、存在しているC5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、該化合物のさらなる改変も必要とされる。
【0055】
さらに、好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C11において改変され得る。ナイスタチンにおいて、C11は水酸基によって置換されている。そのため、いくつかの本発明に係る化合物においては、C11は水酸基以外の官能基によって置換されている。好ましい上記化合物においては、カルボニル基が存在している。
【0056】
また、さらに好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、C10において改変されたものである。ナイスタチンにおいては、C10は水酸基および水素原子によって置換されており、R立体中心である。そのため、好ましい本発明に係る化合物は、C10は、水酸基および水素原子以外の官能基によって置換され、および/またはC10はS立体中心である。好ましい上記化合物においては、異なる官能基、たとえば2つの水素原子、またはカルボニル基が、存在している。特に、好ましい化合物においては、C10は2つの水素原子によって置換されている。
【0057】
また、さらに好ましい本発明に係る化合物は、ナイスタチンに対して、マイコサミンのアミノ基において改変されたものである。ナイスタチンにおいて、マイコサミンのアミノ基は、置換されていなく、すなわち、該アミノ基は−NH2である。そのため、好ましい本発明に係る化合物においては、マイコサミンのアミノ基は、たとえば、1つ以上のアルキルアミノ基または糖基によって置換されている。
【0058】
C5またはC7にてカルボニルを有する本発明に係る化合物においては、ナイスタチンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16において、またはマイコサミンのNにおいても、改変が存在する場合、該化合物は特に好ましい。たとえば、マイコサミンのアミンは、官能性を持され、水素以外である少なくとも1つの置換基R/Rを有し得る。
【0059】
本発明に係る化合物は、S44HPのような公知の材料に対して、1つだけの変化を有することができるが、理想的には、いかなる本発明に係る化合物においても、ナイスタチンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、2つの変化を含む。好ましい化合物は、ナイスタチンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、3つの変化を含み得る。さらに好ましい化合物は、S44HPに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、少なくとも2つの変化を含むだろう。その他の好ましい上記化合物は、マイコヘプチンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、少なくとも2つの変化を含むだろう。さらに好ましい化合物は、カンジジンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、少なくとも2つの変化を含むだろう。
【0060】
特に好ましい化合物は、ナイスタチン、S44HP、マイコヘプチンおよびカンジジンのすべてに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのNにおいて、少なくとも2つの変化を含むだろう。
【0061】
特に、好ましい本発明に係る化合物は、上記にて説明された、式(I)または(I´)の化合物である。
【0062】
好ましい式(I)の化合物においては、Rは水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示す。さらにより好ましくは、Rは、水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、官能基−OC1−6)を、特に、水素原子または水酸基(たとえば、水酸基)を示す。好ましい上記化合物においては、Rは水素原子である。別の好ましい上記化合物においては、RおよびRはともにカルボニル基を形成している。C5が立体中心である場合、そのC5はR中心であることが好ましい。
【0063】
好ましい式(I)の化合物は、Rが、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示す化合物でもある。さらにより好ましくは、Rは水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、−OC1−6)を、特に、水素原子または水酸基(たとえば、水素原子)を示す。好ましい上記化合物においては、Rは水素原子である。別の好ましい上記化合物においては、RおよびRはともにカルボニル基を形成している。C9が立体中心である場合、そのC9はR中心であることが好ましい。
【0064】
さらには、好ましい式(I)の化合物は、Rが水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示す化合物である。さらにより好ましくは、Rは、水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、−OC1−6)を、特に水素原子または水酸基(たとえば水酸基)を示す。好ましい上記化合物においては、Rは水素原子である。C10が立体中心である場合、そのC10はR中心であることが好ましい。
【0065】
また、さらに好ましい、式(I)の化合物は、RがCOOH、アルキル基、カルボン酸エステル基またはアミド基を示す化合物である。好ましいカルボン酸エステル基は、−COOC1−6であり、より好ましくは−COOC1−4であり、たとえば−COOCHである。
【0066】
特に好ましい、式(I)の化合物は、Rがアルキル基またはアミド基である化合物である。好ましいアルキル基は、C1−6アルキル、たとえば、メチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、特にメチルである。
【0067】
好ましいアミドは、上記に規定されるような式IIIのアミドである。特に好ましいアミドは、R10およびR11が、それぞれ独立して、水素原子、または、水酸基、カルボン酸エステル基またはアミノ基で置換されてもよく、酸素原子または窒素原子によって割り込まれていてもよい、C1−10の分枝型または非分枝型のアルキル基であるか、あるいはR10およびR11はともに、水酸基、カルボン酸エステル基アミノ基に置換されてもよく、酸素原子または窒素原子によって割り込まれていてもよい、C1−8の環状アルキル基を形成する。
【0068】
いくつかの好ましいアミドにおいては、R10は水素である。さらに好ましいアミドにおいては、R11は式IVの官能基:
【0069】
【化9】

【0070】
であり、
式中、R18は、水素または、6までの炭素原子を含むアルキル基(たとえば、メチルまたはCH(CH)であり、;
yは、1〜6、好ましくは2〜4、たとえば3であり;
Zは、OH、NR1920またはCOOR21であり、式中、R18、R19およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1−6のアルキル(たとえば、メチル)である。
【0071】
特に好ましいアミドにおいては、R18は水素である。
【0072】
他の好ましいアミドにおいては、R10およびR11はともに、環状アルキル基を、好ましくは、式Vの環状アルキル基
【0073】
【化10】

【0074】
を形成し、式中、a、bおよびcは、1〜6、好ましくは2〜4、たとえば2を示し、Zは、IV関して、上記にて記載されたものである。
【0075】
特に好ましい、式IIIのアミド基の代表的な例は、以下に示される基である。
【0076】
【化11】

【0077】
アミド基4,6,7,8および10が特に好ましく、とりわけアミド基7,10が好ましい。
【0078】
さらに好ましい式(I)の化合物は、Rが水素原子、アルキルアミノ基、糖基、またはアシル基を示す化合物である。好ましい化合物において、Rは、Rと同一であるか、または水素原子であり、たとえば、Rは水素原子である。
【0079】
好ましいアルキルアミノ基は、式中、xは2〜6(たとえば、3)である式−(CHNHの基であるか、あるいは−(CHNC1−6alkylのアルキル化類似体、たとえば−(CHNMeの基である。別の好ましい官能基は、リシン残基COCH[(CHNH]NHである。
【0080】
好ましい糖基としては、1〜5の糖単位を、より好ましくは2または3の糖単位を含む。
【0081】
糖基が単糖である場合、該糖基は、直線状、環状、または直線状および環状の配座異性体の混合物であってもよい。糖基が、1つより多くの単糖単位を含む場合、各単糖は、環状、直線状、または直線状および環状の配座異性体の混合物であってもよい。さらには、存在する単糖単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
式(1)の化合物においては、好ましい単糖は、ペントースおよびヘキソースであり、たとえば、グルコース、ガラクトース、グルコピラノース、マンノピラノース、ガラクトピラノース、フルクトピラノースおよびタガトピラノースである。好ましい二糖およびオリゴ糖としては、ラクトース、メリビオース、スクロース、マルトースおよびセロビオースが挙げられる。D-グルコース、D−ガラクトースおよびラクトースが、特に好ましい。
【0083】
さらに好ましいアシル基(Rにおける)は、−(CH)Ph(CHNHまたは−(CH)Ph(CHNMeであり、xは0または1である。
【0084】
特に好ましい本発明に係る化合物は、式Iの化合物であって、式中、RおよびRは、ともにカルボニル基を形成している。より好ましくは、RおよびRは、カルボニル基を形成し、R、RおよびRは水素原子であり、Rは水酸基である。このような化合物においては、好ましくは、RおよびRのすくなくとも1つ(たとえば、RおよびRの両方)が水素原子である。特に好ましくは、C10がR立体中心である。
【0085】
その他の特に好ましい本発明に係る化合物は、式Iの化合物であって、式中、Rは、C1−6のアルキル(たとえば、メチル)である。より好ましくは、RはC1−6のアルキル(たとえば、メチル)であり、RおよびRの少なくとも1つ(たとえば、RおよびRの両方)は、水素原子である。このような化合物においては、好ましくは、Rは水酸基であり、Rは水素原子である。さらに好ましくは、RおよびRは水素原子である。特に好ましくは、C10はR立体中心である。
【0086】
さらに別の好ましい本発明に係る化合物は、式Iの化合物であって、式中、Rはアミド基であり、好ましくは、上記にて規定されるような式IIIのアミド基である。より好ましくは、Rがアミド基である場合、すくなくともRおよびRの1つ(たとえば、RおよびRの両方)が水素原子である。このような化合物において、Rは、好ましくは水酸基であり、Rは水素原子である。さらにより好ましくは、RおよびRは水素原子である。特に好ましくは、C10はR立体中心である。
【0087】
より好ましい本発明に係る化合物は、式Iの化合物であって、式中、Rは、下記に規定されるような、糖基またはアルキルアミノ基である。より好ましくは、Rが糖基またはアルキルアミノ基である場合、Rは水素原子である。このような化合物において、Rは好ましくはCOOHである。さらにより好ましくは、Rは水酸基であり、Rは水素原子であり、および/またはRおよびRは水素原子である。特に好ましくは、C10はR立体中心である。
【0088】
式(I')の化合物について、好ましい任意事項は、式(I)と関連して、上記にて説明したものである。さらに、好ましい式(I')の化合物においては、R'は水酸基であり、R'は水素原子を示すか、あるいは、R'およびR'はともにカルボニル基を形成している。C7が立体中心である場合、そのC7はR中心であることが好ましい。
【0089】
好ましい式(I')の化合物も、R'が水酸基を、R4'が水素原子を示すか、あるいは、R'およびR'はカルボニル基を示す。C11が立体中心である場合、そのC11はR中心であることが好ましい。
【0090】
好ましくは、R'/R'またはR'/R'の一つだけが、ともに、カルボニルを示す。
【0091】
好ましい本発明に係る化合物の代表的な例は、図1に示される。特に好ましい化合物は、化合物番号1、2、9、11、12、13、14、15、16、17、18、21および22であり、特に、化合物番号1、2、9、11、12、13、14、21および22であり、たとえば化合物番号1および11である。
【0092】
さらにより好ましい化合物は、C16カルボキシ基がジメチルエチルアミドに変換されている化合物である。前記の同一のカルボキシ基がメチル基に変換されている化合物も好ましい。特に好ましい上記化合物としては、ポリオール領域(C5〜C11)における変化とともに、C16における1つの変更を有する化合物が挙げられる。
【0093】
上述のように、本発明に係る化合物は、薬理学的に許容できる塩の形態を採り得る。このような塩としては、生理学的に許容できる有機酸または無機酸との酸付加塩が挙げられる。このような塩の形成のための好適な酸の例としては、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カムシル酸、カルボン酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストリック酸、エシル酸、エシリック酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサミン酸、ヘキシルレソルシノイック酸、ヒドラバミック酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシリック酸、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、フタル酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸およびトルエンスルホン酸が挙げられる。グルタミン酸塩は特に好適である。代わりに、上記塩は、塩基で形成されてもよい。このような塩の形成のための好適な塩基の例としては、第一級、第二級、および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを包含する置換アミン、環状アミン、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N, N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミンエタノール、2−ジメチルアミンエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンおよびトリプロピルアミンが挙げられる。薬理学的に許容できる塩は、水和物であってもよい。このような塩への式Iの化合物からの変換の手順は、本技術分野における従来からあるものである。
【0094】
本発明に係る非常に好ましい化合物は、以下の骨格(16位におけるCOOH基またはアミノ基が、所望に応じた官能性を有している。たとえば、COOHは、R7に置換されている。)に由来するものである。なお、一般的には、水素原子は、これらの骨格には表記しないことを留意されたい。そして、これらの水素原子は、実際に存在している(すなわち、O原子においては、水酸基を形成する)旨が理解されるであろう。:
【0095】
【化12−1】

【0096】
【化12−2】

【0097】
【化12−3】

【0098】
本発明に係る化合物においては、多くの可変体(variable)があることも理解されよう。疑義を避けるために、可変体における定義についての各開示については、本出願におけるその他の可変体のすべての定義に関連して、開示されたものとみなされることに留意されたい。特に、各可変体の好ましい任意事項は、その他の可変体についての、あまり好ましくない、および好ましい任意事項に組込まれるものである。
【0099】
本発明に係る化合物は、好ましくは、従来の合成化学、遺伝子操作またはそれらの組み合わせを包含する当該技術において公知の手法を用いて調製され得る。上記にて述べたように、本発明の一側面は、上述した化合物を製造する方法であって、
(i)ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群を改変して、C28とC29との間において、二重結合を有するナイスタチン誘導体を産生することと;
(ii)さらに、前記遺伝子群を改変して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンアミノ基の一つ以上において、さらに改変されたナイスタチン誘導体を産生するか、
(iii)化学反応によって、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンアミノ基の一つ以上において、得られたナイスタチン誘導体を改変することと、
を含む。
好ましい本発明に係る製造方法は、工程(i)および(ii)を、すなわち、ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群を改変して、C28とC29との間において、二重結合を有するナイスタチン誘導体を産生することと、さらに、前記遺伝子群を改変して、ナイスタチンに対して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンアミノ基の一つ以上(たとえば、C5位、C9位、C10位またはC16位の一つ以上)において改変することを含むものである。
【0100】
二番目に好ましい本発明に係る製造方法は、工程(i)および(iii)を含む。ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群の改変は、たとえば、WO01/59126において記載されたように、従来の手法に準じて、実施されてもよい。ナイスタチン ポリケチドシンターゼ遺伝子群は、多くの繰返し単位(モジュール)をコードし、それぞれポリケチド鎖の合成における縮合サイクルを担っているものである。ポリケチド鎖の合成の開始のための「開始」単位(カルボン酸)の性状を決定するローディングモジュール(nysA )および、さらなる「伸長」単位(鎖上に付加される次のカルボン酸)を組込む(鎖上に縮合する)ための18個の「伸長」モジュールがある。このようなモジュールは、それぞれ、結果として前記分子の合成をもたらす多くの酵素活性(たとえば酵素)をコードする。かかるモジュールは、そのような活性を別個にコードするドメインを含むものである。モジュールとしては、典型的には、組込および伸長を担うアシルトランスフェラーゼ(AT)ドメイン、アシルキャリア蛋白質(ACP)ドメインおよびβケトアシルシンターゼ(KS)ドメインならびに、組込まれた開始単位/伸長単位の還元状態を決定するケトレダクターゼ(KR)、デヒドラターゼ(DH)およびエノイルレダクターゼ(ER)の各ドメインを含むものである。この遺伝子群は、さらに、ナイスタチンの生合成に関与するその他の酵素(または酵素活性)をコードする遺伝子(すなわち、オープンリーディングフレーム、ORF)を含む。例として、チオエステラーゼ(TE)は、PKSからのポリケチドの放出を可能にするものである。さらに、本遺伝子群における遺伝子または遺伝子配列は、たとえば、モノオキシゲナーゼ(たとえば、nysN またはnysL)によるヒドロキシル化、または、グリコシル化(たとえば、グルクロノシルトランスフェラーゼ活性、たとえば、nys DI)などによって、合成分子(ポリケチド鎖)をさらに改変し得る酵素または酵素活性をコードするものであってもよい。
【0101】
例として、PKSのモジュールおよび/またはドメインの遺伝子群は、たとえば、挿入、欠失または不活性化によって、ドメインまたはモジュールの置換によって、あるいはドメインまたはモジュールの活性を変化させる変異によって、改変されてもよい。たとえば、モジュールおよび/またはドメインの数を改変してもよいし、あるいはそれらを、変更して活性を変化させてもよい。その他の酵素活性、たとえば、モノオキシゲナーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼをコードする、その他の遺伝子または遺伝子配列も改変されてもよい。典型的には、「還元」ドメイン(たとえば、ER,DHおよび/またはKR)は、一つ以上のモジュールにおいて改変されても(たとえば、不活性化されても)よいし、あるいはモノオキシゲナーゼ活性をコードする遺伝子配列(たとえば、 NysL, NysN)が改変(たとえば、不活性化)されてもよい。
【0102】
二重結合C28とC29との間における二重結合は、WO01/59126の実施例2において記載されたように、たとえば、ポリケチドシンターゼのモジュール5におけるERドメインの不活性化によって、導入されてもよい。
【0103】
さらに、ポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群に対する他の改変によって、ナイスタチンに対して、たとえば、C5位、C9位、C10位、またはC16位の一つ以上における改変が、導入されてもよい。該遺伝子群への更なる改変がなされた場合、この改変は、好ましくは、ナイスタチンに対して、C5位、C9位、C10位、またはC16位の一つ以上において改変を生じさせるものである。
【0104】
C5におけるナイスタチン構造の改変は、ナイスタチンポリケチドシンターゼのモジュール17におけるケトレダクターゼドメインの不活性化によって、たとえば、実施例にて記載された方法によって、引き起こされるものでもよい。
【0105】
C9におけるナイスタチン構造の改変は、ナイスタチンポリケチドシンターゼのモジュール15におけるケトレダクターゼドメインの不活性化によって、たとえば、実施例にて記載された方法によって、引き起こされるものでもよい。
【0106】
C10におけるナイスタチン構造の改変は、C10のヒドロキシル化を担うNysLモノオキシゲナーゼの遺伝子の不活性化によって、たとえば、実施例にて記載された方法によって、引き起こされるものでもよい。
【0107】
C7におけるナイスタチン構造の改変は、KR16ドメインの不活性化によって、引き起こされるものでもよい。
【0108】
C11におけるナイスタチン構造の改変は、KR14ドメインの不活性化によって、引き起こされるものでもよい。
【0109】
C16におけるナイスタチン構造の改変は、P540モノヒドロゲナーゼをコードするnysNの不活性化によって、たとえば、実施例にて記載された方法によって、引き起こされるものでもよい。
【0110】
化学反応による、工程(i)および任意で工程(ii)から得られた化合物のC5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の一つ以上における改変は、公知の任意の手法によって実施されてもよい。従来の保護基化学法は、必要な際にはいつでも採用されてもよい。化学反応によって、更なる改変を導入する場合、化学反応は、好ましくはナイスタチンに対してC16位および/またはマイコサミンのアミノ基において、改変を生じさせるものである。
【0111】
好ましい化学反応は、C16におけるアミド形成である。ナイスタチンのCOOH基からアミドへの変更は、適当なアミン、任意で活性化剤(たとえば、PyBOP)の存在下にて、ナイスタチン誘導体を反応させることで実施されてもよい。
【0112】
また別の好ましい化学反応はマイコサミンのアミノ基における還元的アルキル化である。還元的アルキル化は、適当なアルデヒドでナイスタチン誘導体を反応させて、イミンを形成し、還元剤の添加によりそのイミンを、好ましくはin situで還元することで実施されてもよい。好ましい還元剤はNaBHCNである。
【0113】
さらに好ましい化学反応は、マイコサミンのアミノ基におけるアマドリ反応である。アマドリ反応は、適当な還元糖でナイスタチン誘導体を反応させることによって実施されてもよい。
【0114】
好ましい本発明に係る方法は、上述したような式(I)の化合物を与えることができる。このような方法において、C5位における改変は、ナイスタチンに対してRおよび/またはRを改変するものであり、C9位における改変は、ナイスタチンに対してRおよび/またはRを改変するものであり、C10位における改変は、ナイスタチンに対してRおよび/またはRを改変するものであり、さらに、C16位における改変は、ナイスタチンに対してRを改変するものである。マイコサミンのアミノ基における改変は、ナイスタチンに対してRおよび/またはRを改変するものである。式Iの化合物に関連して好ましいものであるように、上記の好ましい方法は、式中のR−R特異的な化合物を生産するものである。
【0115】
該化合物は、任意の従来技術、たとえば、結晶化、クロマトグラフィーなどによって精製されてもよい。本発明に係る式Iの化合物は多くのキラル中心を含み、そうしたものは異なる立体異性体を含むものである。特に好ましい化合物は、図1に示される。
【0116】
本発明に係る化合物は、真菌の増殖を阻止するために、または殺菌するために、広範な用途において使用されてもよい。たとえば、本発明に係る化合物は、殺菌剤または防腐剤として(たとえば、食料および化粧品中において)、使用されてもよい。殺菌剤または防腐剤としての本発明に係る化合物の使用は、本発明のさらに別の側面を形成するものである。
【0117】
殺菌剤または防腐剤としての使用のためには、本発明に係る化合物は、単独でまたは、他の抗真菌および/または抗菌剤とともに、使用されてもよい。本発明に係る化合物は、そのもの自体で使用されてもよいし、より好ましくは担体、希釈剤または賦形剤との混合物において使用されてもよい。
【0118】
本発明に係る化合物は、特に、真菌感染の処置または阻止に好適である。本発明の組成物および医薬組成物は、特に、身体の内部領域および外部領域における、真菌感染の処置または阻止に適している。処置され得る身体の領域の例としては、皮膚、口腔、膣腔および胃腸管が挙げられる。本発明の化合物および組成物は、特に、侵襲的な(たとえば浸透性の)真菌感染の処置に好適である。
【0119】
本発明に係る化合物は、理想的なことに広い活性スペクトラムを有するものであるが、特に、Candida種、Cryptococcus種、 Aspergillus種、Colletotrichum種、Geotrichum種、Hormonema種、Lecythophora種、Paecilomyces種、Penicillium種、Rhodotorula種、Fusarium種、Saccharomyces種、Trichoderma種、Trichophyton種およびScopularilopsis種、とりわけCandida種およびCryptococcus種(たとえば、Candida種)によって引き起こされる真菌感染の処置に好適なものである。
【0120】
このような処置における使用のために、本発明の化合物は、1つ以上の担体、賦形剤および/または希釈剤とともに、任意の従来の方法で、医薬組成物として調合されてもよい。具体的な医薬剤形は、所望の投与形態によるものであろうし、当業者により容易に決定されることであろう。好適な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、水、エタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、デオキシコレート酸ナトリウム、糖類(たとえば、グルコース、スクロース、ラクトース)、デンプン(たとえば、コーンスターチ、すなわちトウモロコシデンプン)、微結晶性セルロース、糊剤(たとえばトラガカント)、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、脂肪酸(たとえば、ステアリン酸)、油脂、ワックス、炭酸カルシウム、塩化カルシウムおよびクエン酸が挙げられる。
【0121】
このような医薬組成物は、追加的に、1種類以上の湿潤剤、甘味剤(たとえば、砂糖、アスパルテームまたはサッカリン)、平滑剤、安定剤、エマルション剤、懸濁剤、保存剤、香味剤(たとえば、バニリン、ペパーミントオイルまたは果物のフレーバー)および/または吸収促進剤を含んでいてもよい。
【0122】
本発明に係る化合物は、所望により、さらに別の(たとえば、1、2または3種類の)薬理学的活性物質とともに、 投与されてもよい。本発明に係る化合物と、さらに別の(たとえば、1種類の)活性物質との組み合わせでの使用に関する利点としては、上記組成物を薬剤として使用する上で適する疾患のスペクトルを拡大しうることである。追加的にまたは代わりに、本発明に係る化合物および/またはさらに別の活性物質の服用量の低減を、有利に達成することができる。このことは、このような別の活性物質が公知の副作用と関連している場合において、特に有利である。
【0123】
本発明に係る組成物において使用され得るさらなる活性物質としては、他の抗真菌剤および抗生物質が挙げられる。代表的な抗生物質としては、アゾール類およびエキノカンジン類が挙げられる。また、代表的な抗生物質としては、デメクロサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、硫酸ネオマイシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリンおよびエリスロシンが挙げられる。
【0124】
本発明に基づいて使用される医薬組成物は、経口的に、経腸的に(たとえば、坐薬を使用する。)、局所的にまたは全身的に投与されてもよい。経口投与または全身投与のための組成物であることが好ましいが、選ばれる経路は、たとえば、疾患および/または処置される対象によるだろう。とりわけ、全身投与のための組成物であることが特に好ましい。
【0125】
上記組成物は、選択された投与経路での使用に採用される、いかなる形態で提供されてもよい。経口投与に適した態様としては、たとえば、素錠またはコーティング錠、徐放錠、チュアブル剤、軟カプセル、硬カプセル、懸濁液およびシロップ剤が挙げられる。本発明による使用に好適な形態は、錠剤、懸濁液およびシロップ剤であり、特に錠剤である。
【0126】
全身投与に適した形態は、たとえば、皮内、腹腔内または静脈における注射または点滴のための調剤であってもよい。中でも、静脈注射のための調剤であることが特に好ましい。
【0127】
局所的投与のために採用される形態としては、皮膚および粘膜への投与のための組成物(たとえば、ゲル、クリーム、スプレー、ローション、軟膏、エアロゾル)が挙げられる。
前記化合物は、坐薬または停留性浣腸剤のような、直腸または膣用の組成物として製剤化されてもよい。
【0128】
各用途において使用される本発明に係る化合物の量は、当業者によって容易に決定されるものである。たとえば、殺菌剤または防腐剤としての使用には、必要とされる化合物の量は、標的とする真菌の増殖の阻害する量または致死する量である。実際の量は特定の標的とする真菌および用途によるものであるが、殺菌剤または防腐剤としての使用においては、本発明に係る化合物は、殺菌剤溶液または防腐処理されるべき物において、典型的には0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3%で使用される。
【0129】
真菌感染の処置での使用においては、混合物中における、本発明に係る化合物およびその他の任意の活性物質の量は、当業者によって容易に決定され得ることであり、任意のその他の活性物質の性状、投与の方法、処置されるべき疾患および対象の重量を含めた、いくつかの因子によるものである。しかしながら、一般的には、本発明に係る化合物は、組成物において、0.01〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の量で使用され得る。
【実施例】
【0130】
・ 化合物の準備
表1にリストされる化合物を調製した。これらの化合物の各々の正確な立体化学を、図1に示す。
【0131】
【化13】

【0132】
【表1】

*グルタミン酸として
【0133】
S44HPの合成
この化合物は、Borgos S.E. et al., Arch Microbiol. 2006 Apr; 185(3):165-71にて記載したようにして調製した。
【0134】
化合物1〜4の合成
化合物1〜4は、ナイスタチン生合成遺伝子群の部位特異的変異の以下の組合せを使用した遺伝子操作により調製された(配列−Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)
化合物1 ER5+NysNにおける変異;
化合物2 ER5+KR17における変異;
化合物3 ER5+KR17+NysNにおける変異;
化合物4 ER5+KR15における変異。

Borgos S.E. et al., Arch Microbiol. 2006 Apr; 185(3):165-71にて記載したようなER5不活性化ベクターを用いた。
【0135】
以下の構築物は、出願人により設計されて、準備された:
・ NysN:
nysNにおいて、それぞれ変異CL346STおよびCL346ASを導入するためのベクターpSOK201nysN4.1−CL346STおよびpSOK201nysN4.1−CL346AS
組換えλクロ−ンN95(Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)の4.1kbのNcoI/XbaI断片を、プラスミドpLITMUS28の対応する部位にクローニングした。得られた構築物から、全4.1kbの挿入断片をEcoRI/HindIIIにより切り出し、pGEM11zf(+)の対応する部位にクローニングした。得られたプラスミド(pGEM11nysN4.1と表す)から、NysN活性部位を含む1.5kbの領域を、以下のプライマを用いてPCR増幅した。
【0136】
【数1】

【0137】
プライマにはEcoRIおよびHindIII部位(下線部)が導入されており、その部位を、得られたPCR断片をpGEM11zf(+)の対応する部位にクローニングするために用いて、プラスミドpGEM11nysN1.5を産生した。後者のプラスミドを、以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いることにより、部位特異的変異のテンプレートとして使った(QuickCHaengeキット(ストラタジ−ン)を使用):
【0138】
【数2】

【0139】
配列中、変異したヌクレオチドを太字で示す とともに、導入された新たな制限サイト(変異CL346STのためのSalI、変異CL346ASのためのNheI)に下線を引いた。変異はSalIまたはNheI制限酵素解析により確認し、正しく変異したベクターの挿入断片全体をDNA塩基配列決定により検証した。得られたプラスミドに由来する、変異した1.3kbのFspAI/Bpu1102I断片を、プラスミドpGM11nysN4.1の対応する断片を置換するために用いて、プラスミドpGM11nysN4.1−CL346STおよびpGM11nysN4.1−CL346ASを産生した。後者の構築物から、変異したnysN遺伝子を含んでいる4.1kbの挿入断片をEcoRI/HindIIIにより切り出し、pSOK201の3.1kbのEcoRI/HindIIIバックボ−ンに連結した。そして、nysN不活性化プラスミドpSOK201nysN4.1−CL346STおよびpSOK201nysN4.1−CL346ASを産生した。
【0140】
化合物1を産生する株におけるnysNの不活性化のために、構築物pSOK201nysN4.1−CL346STを用いた。化合物3を産生する株のnysNの不活性化のために、構築物pSOK201nysN4.1−CL346ASを用いた。
・ KR17:
NysJのKR17に変異YA5145FEを導入するためのベクターpKR17m
プラスミドpL98E(Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)の4.0kbのPmlI/BamHI断片を切り出し、ベクターpGEM3zf(+)のHincII/BamHI部位に連結して、プラスミドpBB4.0を産生した。KR17活性部位領域を含む1.5kbのDNAフラグメントを、以下のプライマを用いて、pBB4.0からPCR増幅した。
【0141】
【数3】

【0142】
PCR産物をPstI(プライマ中、下線を引引いた認識部位)およびSacI(増幅されたDNAフラグメントの認識部位)によって端消化[end-digested]し、1.4kbの断片をpLITMUS28の対応する部位に連結した。得られたプラスミド(pLIT1.4)を、以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドとともに、部位特異的変異のテンプレートとして使った。
【0143】
【数4】

【0144】
配列中、変異したヌクレオチドを太字で示すとともに、導入された新たなBstBI制限サイトに下線を引いた。正しい変異はBstBI消化により検証し、変異したプラスミドの挿入断片全体をDNA塩基配列決定により検証した。得られたプラスミド(pLIT1.4m)から、1072bpのBclI/AccIII断片を切り出し、プラスミドpBB4.0の対応する断片を置換するために用いて、プラスミドpBB4.0mを産生した。pBB4.0mの4.0 の挿入断片全体をEcoRI+HindIIIにより切り出し、プラスミドpSOK201の3.0kbのEcoRI/HindIIIバックボ−ンと共に連結して、KR17不活性化ベクターpKR17mを産生した。
・ KR15:
NysJのKR15に変異YA1888FEを導入するためのベクターpKR15m
pL20X(Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)の3.6kbのKpnI/PmlI断片を切り出し、pGEM3zf(+)のKpnI/HincII部位に連結して、pKP3.6を産生した。後者のプラスミドを、以下のプライマを使用することにより、1.1kbのDNAフラグメントのPCR増幅のテンプレートとして使った。
【0145】
【数5】

【0146】
得られたPCR産物をEcoRI/HindIII(制限サイトには、プライマ中、下線を引いた)によって端消化し、pLITMUS28の対応する部位に連結して、pLIEH1.1を産生した。後者のプラスミドは、以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いた、部位特異的変異のテンプレートとして役立てた。
【0147】
【数6】

【0148】
変異したヌクレオチドを太字で示し、導入した新たなBstBI部位を下線で示した。正しい変異をBstBI消化により検証し、変異したプラスミドの挿入断片全体をDNA塩基配列決定により検証した。変異したプラスミドから、1045bpのFspA1/AccIII−断片を切り出し、pKP3.6の対応する領域を置換するために用いて、pKP3.6mutを産生した。その後、pKP3.6mutの3.6kbの挿入断片全体をEcoRI/HindIIIにより切り出し、pSOK201の3.2kbのEcoRI/HindIII断片に連結して、KR15不活性化ベクターpKR15mを産生した。
・ S.noursei株への置換ベクターの導入:
以前に記載したようにして(Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)、構築した全ての不活性化ベクターをEscherichia coli ET12567 (pUZ8002) に形質転換し、その結果生じた組換株をS. noursei株に不活性化ベクターを接合するために使った。
【0149】
−サザンブロット+PCRによる第1の組み換え〔crossover〕の検証
−第2の組み換え候補の選択(アプラマイシン感受性)
−サザンブロット+PCRによる第2の組み換え候補の遺伝的特徴分析[genetic characterization]
−pNA0による正しい第2の組み換え変異体の補完(Brautaset, T., et al., Chem Biol. 2000 Jun;7(6):395-403)
補完された組換株を発酵に供し、対応する分子の生産をHPLCおよびMS−TOF分析法を介して裏付けた。
・ 化合物1
UVアイソプロット
S44HP標準物、およびER5およびNysNが不活性化されたS. noursei変異体のDMSO抽出物を、図2のアイソプロットに示す。
・ LC−MSアイソプロット:
カラム:Zorbax SB−C18 2.1x100mm、3.5μm(Agilent Technologies)。
【0150】
移動相相A:10mM酢酸アンモニウム(Riedel−de−Haen#25006)、pH調整せず。移動相移動相B:100%アセトニトリル(Rathburn、HPLCグレード)
時間 %B
0.00 27
6.50 65
7.30 65
7.40 27
12.00 27
流速:0.22mL/分
カラム温度:室温
TOF−MSパラメ−タ:
負のAPI−ESイオン化
乾燥ガス:10l/分
ネブライザー圧力:40psig
乾燥ガス温度:350℃
キャピラリー電圧:3000V
フラグメンター:200V
・ TOF−MSスペクトル
TOF−MSスペクトルを図3に示す。m/zのピークは966および980であり、1034は内部質量標準である。化合物1(C4775NO15)の理論的なm/z(陰イオン)は892.5063である。このm/zは高い精度で観察され、ヘプタエン〔heptaene〕のUV−ピークとよく相関する。化合物1のイオン化の際の水(1および2分子)の損失は、質量ピークにそれぞれΔm/z=−18およびΔm/z=−36をもたらす。
・ 調製用LCによる精製
精製は、調製用の逆相カラムで行った。
調製方法:
カラム:Agilent Prep−C18 50x250mm、10μm(Agilent Technologies)。
【0151】
移動層:10mM酢酸アンモニウム(Riedel−de−Haen#25006)、酢酸(JTベ−カ−#6002)でpHを4.0に調整。移動相B:100%メタノール(Lab−Scan、HPLCグレード)
時間 %B
0.00 78
6.00 78
6.20 100
11.00 100
11.20 78
流速:85mL/分
カラム温度:室温
調製用LCによる精製の後、化合物1は、UVおよびMSデータによって決定されたように、サンプル中のポリエンマクロライドの>97%を構成することが示された。
・ LC−MS方法:
カラム:Zorbax Bonus−RP 2.1x50mm、3.5μm(Agilent Technologies)
移動相A:10mM酢酸アンモニウム(Riedel−de−Haen#25006)、酢酸(JTベ−カ−#6002)でpHを4.0に調整。移動相B:100%アセトニトリル(Rathburn、HPLCグレード)
時間 %B
0.00 27
10.00 53
10.10 27
15.00 27
流速:0.3mL/分
カラム温度:室温
カルボキシル基を有さないポリエン(特に化合物1)のために、移動相Aとして、酢酸(JTベ−カ−#6002)でpHを7.0に調整した20mM重炭酸アンモニウム(Fluka#09830)を用いて上記方法を行った。pHを上昇させることにより、イオン化しうるカルボキシル基を有するポリエンと有さないポリエンとを、いくらかより良好に分離することができたからである。
・ MSパラメ−タ:
負のAPI−ESイオン化
乾燥ガス:12l/分
ネブライザー圧力:35psig
乾燥ガス温度:350℃
キャピラリー電圧:3000V
・ 化合物2
UVアイソプロット
GG5073SP株(S44HPを産生する)のDMSO抽出物、およびER5およびKR17領域が不活性化された変異体のDMSO抽出物を、図4のアイソプロットに示す。
【0152】
LC−MS方法およびTOF−MSパラメ−タ:化合物1に関してと同じ。
【0153】
TOF−MSデータ
TOF−MSスペクトルを図5に示す。化合物2(C4771NO17)の理論的なm/z(陰イオン)は920.4649である。このm/zは許容される精度(<3ppmの誤差)で観察され、ヘプタエンのUV−ピークとよく相関する。
調製用LCによる精製
精製は、調製用の逆相カラムで行った。
調製方法:
カラム:Agilent Prep−C18 50x250mm、10μm(Agilent Technologies)
移動層:10mM酢酸アンモニウム(Riedel−de−Haen#25006)、酢酸(JTベ−カ−#6002)でpHを4.0に調整。移動相B:100%メタノール(Lab−Scan、HPLCグレード)
時間 %B
0.00 70
15.00 70
15.20 100
19.00 100
19.20 70
22.00 70
流速:100mL/分
カラム温度:室温
調製用LCによる精製の後、化合物2は、UVおよびMSデータによって決定された様に、サンプル中のポリエンマクロライドの>95.2%を構成することが示された。
・ 化合物3
UVアイソプロット
GG5073SP株(S44HPを産生する)のDMSO抽出物、およびER5およびKR17領域ならびにNysNが不活性化された変異体のDMSO抽出物を、図6のアイソプロットに示す。
【0154】
LC−MS方法:
カラム:Zorbax Bonus−RP 2.1x50mm、3.5μm(Agilent Technologies)
移動相A:10mM酢酸アンモニウム(Riedel−de−Haen#25006)、酢酸(JTベ−カ−#6002)でpHを4.0に調整。移動相B:100%アセトニトリル(Rathburn、HPLCグレード)
時間 %B
0.00 27
6.50 65
7.30 65
7.40 27
12.00 27
流速:0.3mL/分
カラム温度:室温
・ TOF−MSパラメ−タ:化合物1に関してと同じ。
【0155】
TOF−MSスペクトルを図7に示す。m/zのピークは980であり、1034は内部質量標準である。化合物3(C4773NO15)の理論的なm/z(陰イオン)は890.4907である。このm/zは、高い精度で観察され(質量スペクトラムを参照)、ヘプタエンのUV−ピークとよく相関する。化合物3のイオン化の際の水(1および2分子)の損失は、質量ピークにそれぞれΔm/z=−18およびΔm/z=−36をもたらす。また、カルボキシ化された類似体(示されたMSスペクトルのm/z=920.4644を有する)は、クロマトグラフィの共溶出の顕著な程度を示す。
カルボキシ化された化合物は負のMSモードで著しく高いイオン化効率を有することが知られているので、相対的な定量化は示されたMSスペクトル中の信号強度に基づいてはならない。
・ 化合物4
GG5073SP株(S44HPを産生する)のDMSO抽出物、およびER5およびKR15領域が不活性化された変異体のDMSO抽出物を、図8のアイソプロットに示す。
【0156】
LC−MS方法:化合物3に関してと同じ。
・ 化合物5〜23の合成
全般
CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)の溶媒系における、メルクSilica Gel 60F254プレート上でのTLCによって、反応をモニターした。得られた生成物の純度は、HPLCにより測定され、80〜90%であった。分析のための逆相HPLCは、島津HPLC計測器LC10シリーズにおいて、Kromasil 100−C18カラム(4×250mm、粒径6μm)、注入量20μLおよび波長408nmで実行した。溶媒系は、pH2.6の0.01MのH3PO4およびアセトニトリルを含有するものであった。アセトニトリルの比率は、1.0mL/分の流速で30分間かけて、30%から70%まで変化させた。
化合物5〜16の合成
S44HP(18mg、0.02mmol)と、0.3mLのDMSOに溶解した0.06mmolの適当なアミン塩酸塩との混合物に、分割しながら Et3Nを添加してpHを8〜8.5に調整し、その後15分間でPyBOP−試薬を添加した。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(〜3mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(3mL×2)で連続的に振盪した。この油に5mLのアセトンを添加したところ、アミドの黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥した。すべてのサンプルは、90%より高い収率で得られた。これらの化合物の分析データは、下記の表2にまとめられている。
化合物17〜19の合成
適当な単糖(D−グルコースもしくはD−ガラクトース)または二糖(ラクトース)(0.086mmol)を、S44HP(40mg、0.043mmol)のDMF(2mL)溶液に添加した。その反応混合物を20時間37℃に保ち、それからその溶液をジエチルエーテル(50mL)に滴下した。得られた沈殿物を濾過して取り除き、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥した。得られた黄色の沈殿物を、フラッシュクロマトグラフィ(CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1))により精製した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。すべてのサンプルは、40〜45%の収率で得られた。これらの化合物の分析データは下記の表2にまとめられている。
化合物20の合成
4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(0.065mmol)およびS44HP(20mg、0.022mmol)のDMF(2mL)溶液に、NaBH3CN(4.1mg、0.065mmol)を添加した。その反応混合物を20時間37℃に保持した。ジエチルエーテル(10mL)の添加により油状の残渣が生じ、それをジエチルエーテルで連続して(3mL×2)振盪した。黄色の沈殿物が、アセトン(10mL)を添加したところ形成された。その沈殿物を濾過して取り除き、ジエチルエーテルで洗浄し乾燥した。得られた固体を、カラムクロマトグラフィ用のメルクSilica Gel(0.040〜0.063mm)でのフラッシュクロマトグラフィ(CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1))により精製した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮 し、ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。
化合物21および22の合成
N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−アミノプロピオンアルデヒド(160mg、0.054mmol)およびS44HP(100mg、0.011mmol)のDMF(3mL)溶液を、NaBH3CN(34mg、0.054mmol)に添加した。その反応混合物を20時間37℃に保ち、それからジエチルエーテル(200mL)に滴下した。化合物の混合物である黄色の沈殿物を濾取し、直線濃度勾配システムCHCl3:MeOH:HCOOH(3:1:0.01)→CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)におけるカラムクロマトグラフィ用のメルクSilica Gel(0.040〜0.063mm)でのフラッシュクロマトグラフィにより、個々の化合物を分離および精製して、黄色の固体としてN−[N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−アミノプロピル]−S44HPおよびN,N−ジ−[N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−アミノプロピル]−S44HPを産生した。
【0157】
N−[N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−アミノプロピル]−S44HPまたはN,N−ジ−[N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−3−アミノプロピル]−S44HPのDMSO(3mL)溶液に、ピペリジン(0.1mL)を添加した。室温で2時間後、ジエチルエーテル(〜7mL)を添加した。油状の残渣が形成され、それをジエチルエーテルで連続して(7mL×2)振盪した。アセトン(10mL)を添加すると化合物21または化合物22の黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。得られた化合物21および22の分析データは下記の表2にまとめられている。
化合物23の合成
S44HP(100mg、0.11mmol)の乾燥したDMF(2mL)の溶液に、Nα、Nε−ジ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−リシンN−オキシスクシンイミドエステル(221mg、0.33mmol)およびEt3N(15.3μl、0.11mmol)を添加した。その反応混合物を1時間37℃に保ち、それからH2O(5mL)を添加した。その混合物を、n−BuOH(3×5mL)で抽出した。有機分画をあわせ、0.01NのHCl(1×5mL)およびH2O(3×5mL)で洗浄した。その溶液を濃縮し、ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができたので、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、シリカゲル(CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:4:0.5:0.01))でのフラッシュクロマトグラフィにより精製した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮し、ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。
【0158】
DMSO(3mL)中の単離された黄色の固体(30mg)に、ピペリジン(0.1mL)を添加した。室温で2時間後、ジエチルエーテル(〜7mL)を添加し、油状の残渣が形成され、ジエチルエーテルで連続して(7mL×2)振盪した。アセトン(10mL)を添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。
【0159】
【表2−1】

【0160】
【表2−2】

【0161】
上で述べた、または下に述べる合成原理に従い、化合物24〜29も
合成した。加えて、以下の更なる化合物は、図10〜16に述べられた合成プロトコルおよびそこでのスキームならびにそれに続く説明に基づいて調製した。
【0162】
【化14】

【0163】
【表3−1】

【0164】
【表3−2】

【0165】
【表3−3】

【0166】
【表4−1】

【0167】
【表4−2】

【0168】
【表4−3】

【0169】
更なるS44HP誘導体(化合物30〜48)の合成
全般
反応は、I−CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)、II−CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(7:1:0.01:0.01)、III−CHCl3:MeOH:H2O:濃NH4OH(13:7:1:0.1)、IV−AcOEt:n−ProOH:濃NH4OH(15:10:10)の溶媒系におけるメルクSilica Gel 60F254プレート上でのTLCによって、モニターした。
【0170】
分析のための逆相HPLCを、LC10シリーズの島津HPLC計測器、Kromasil 100−C18カラム(4×250mm、粒径6μm)、注入量20μL、波長408nmおよび流速1.0mL/分で実行した。溶媒系は、以下からなるものであった:
A−0.2%HCOONH4 pH4.5およびMeCN。MeCNの比率は30分で30%から70%に変化;B−0.2%HCOONH4 pH4.5およびMeCN:
25→65%、40分;C−0.2%HCOONH4 pH4.5およびMeCN、30→90%、30分、90→90%、10分;D−アイソクラチック・システム−35%MeCN;E−pH 2.6の0.01MのH3PO4およびMeCN、30→70%、30分;F−pH 2.6のH3PO4およびMeCN、40→80%、30分。
S44HPの二改変誘導体
N−フルクトシル S44HP N,N−ジメチルアミノプロピルアミド(DMAP)−ヒドロキシプロピルアミド(HP)もしくは−N,N−ジメチルアミノエチル(DMAE)アミド(それぞれ化合物30、36、41);N−タガトピラノシル〔tagatopyronosyl〕 S44HP DMAPアミド(化合物31)またはN−タガトピラノシル S44HP DMAEアミド(化合物42)(スキーム1、左側)。
【0171】
第1ステップ(アミド化)−S44HP DMAPアミド(化合物11)、HPアミド(化合物12)またはDMAEアミド(化合物48)。
【0172】
S44HP(36mg、0.04mmol)と、0.6mLのDMSOに溶解した0.12mmolの適当なアミン塩酸塩との混合物に、分割しながらEt3Nを添加してpHを8〜8.5に調整し、その後15分間で0.06mmolのPyBOP−試薬を添加した。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(〜5mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(5mL×2)で連続的に振盪した。この油に5mLのアセトンを添加したところ、アミドの黄色の沈殿物が形成された。その沈澱物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥した。粗製アミド(HPLCのデータで85〜90%の純度であり、塩を含有する)を、セファデックスG−25(ファルマシア・ファイン・ケミカルズAB、ウプサラ、スウェーデン)でのカラムクロマトグラフィにより精製した。カラムは水を使用して実行した。画分の純度をHPLCによって制御することで、標的とする適当なS44HPアミドの純度はHPLCで>92%になった。
・ 第2ステップ(アミドのアマドリ転位)
D−グルコースまたはD−ガラクトース(0.086mmol)を、適当なS44HPアミド(化合物11、12、48)(0.040mmol)のDMF(2mL)溶液に添加した。その反応混合物を20時間37度に保持した。それからその反応混合物をジエチルエーテル(50mL)に滴下した。得られた沈殿物を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥した。粗製化合物(HPLCデータによるところの純度は85〜90%であり、塩を含有する)を、セファデックスG−25(ファルマシア・ファイン・ケミカルズAB、ウプサラ、スウェーデン)でのカラムクロマトグラフィにより精製した。カラムは水を使用して実行した。画分の純度はTLC、系IVによって調節した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥した。化合物41を塩酸塩として得た。化合物41のメタノール溶液に、メタノール中0.1Nの塩酸を添加し、pHを〜4にした。ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。S44HPアミドのN−アルキル誘導体の純度は>92%であった。これらの化合物(30、36、41、31、42)の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N−(4−N,N−ジ−メチルアミノベンジル)S44HP DMAPアミド、−HPアミドまたは−DMAEアミド(それぞれ化合物32、37、43)(スキーム1(図10)、右側)
・ 第1ステップ(アミド化)
S44HP DMAPアミド(化合物11)、HPアミド(化合物12)またはDMAEアミド(化合物48)は、化合物30(第1ステップ)について上記したようにして得た。
【0173】
第2ステップ(アミドの還元N−アルキル化)
4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(0.065mmol)と適当なS44HPアミド(化合物11、12または48)(0.022mmol)とのDMF(2mL)溶液を2時間37℃に保ち、それからNaBH3CN(4.1mg、0.065mmol)を添加した。その反応混合物を20時間37℃に保持した。ジエチルエーテル(10mL)を添加すると油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテルで連続的に(10mL×2)振盪した。アセトン(10mL)を添加したところ、黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾取し、ジエチルエステル で洗浄し、乾燥した。塩を含有する粗製化合物を、CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)の系 を用いたメルクのシリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製した。画分の純度はTLC、系Iによって調節した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥した。適当なS44HPアミドのN−アルキル誘導体の純度は>92%であった。これらの化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N−(N,N−ジメチルグリシル)S44HP DMAEアミド、−HPアミドまたは−DMAPアミド(それぞれ化合物39、45、34)(アミドのN−アミノアシル化、スキーム2(図11、左側))
N,N−ジメチルグリシン(0.04mmol)と適当なS44HP DMAEアミド(化合物48)、−HPアミド(化合物12)または−DMAPアミド(化合物11)(スキーム1を参照)(0.02mmol)との0.5mLDMSO中の混合物に、pH8に調整するためのEt3Nを添加し、その後、0.03mmolのPyBOP−試薬を分割しながら15分間で添加した。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(〜3mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(3mL×2)で連続的に振盪した。この油に5mLのアセトンを添加したところ、アミドの黄色の沈殿物が形成された。その沈澱物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥して、N,N−ジメチルグリシン S44HP DMAEアミド、−HPアミドまたは−DMAPアミド(化合物39,45,34)を産生した。これらの化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N−(N−L−リジル)S44HP HPアミドおよび−DMAEアミド(それぞれ化合物38および44)(スキーム2、右側)
第1ステップ(N−[N−Fmoc−アミノ]アシル化) ―― N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP
〜+5℃まで冷却したNα,Nε−ジ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−リシン(180mg、0.33mmol)に、乾燥したDMF(1.2mL)DCC(62mg、0.3mmol)中のN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(54mg、0.4mmol)を添加し、その反応混合物を〜+5℃で1時間撹拌した。DCUの残渣をロシュし、得られた溶出液 をDMF(1.0)mL中のS44HP(184mg、0.2mmol)に添加した。それから、その反応混合物に(i−Pro)2EtN(0.1mL、0.81mmol)を10分間、撹拌下に滴下した。その反応混合物を室温で2時間、TLCの調節下 におけるCHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(6:1:0.01:0.02)の系で撹拌し、それから20mLのエチルエーテルを添加した。得られた沈殿物を濾取し、エチルエーテル:アセトンの混合物(1:1、10ml×3)で洗浄し、真空で乾燥し、202mgの黄色の粉末を産生した。粗製化合物をメルクのシリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製した。カラムはCHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(9:1:0.01:0.02→7:1:0.01:0.02)の系を用いて実行した。画分の純度は系IIにおけるTLCによって調節した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥し、60mgの純粋なN−[Nα,Nε−ジ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−リジル]S44HP(>96%、HPLC、Rt=22.80、系B)を産生した。MALDI質量スペクトル。 実測値:1500.542[M−H2O+Na]+1。C83105322 1495.72(精密質量 )と算出された。
・ 第2ステップ(N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HPのアミド化) ―― N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP HPアミドまたは−DMAEアミド)
N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP(0.02mmol)と0.06mmolの3−ヒドロキシプロピルアミン塩酸塩または4−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアミン二塩酸塩とを0.3mLのDMSOに溶解した混合物に、分割しながら、Et3Nを添加してpH7〜7.5に調整し、その後15分間で0.03mmolのPyBOP−試薬を添加した。その反応混合物を室温で1時間、TLCの調節下 におけるCHCl3:MeOH:H2O:濃NH4OH(5:1:0.01:0.01)の系で撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(〜3mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(3mL×2)で連続的に振盪した。この油に5mLのアセトンを添加したところ、アミドの黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾取し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥して、適当なN−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP HP−アミドまたは(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP−DMAEアミドを〜90%の純度で(HPLCデータ:それぞれRt=21.43(C)および20.39の(B)。TLCデータ:それぞれRf=0.47およびRf=0.43、CHCl3:MeOH:H2O:濃NH4OH(5:1:0.01:0.01)産生した。
・ 第3ステップ(Fmoc除去)
適当なN−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HPアミド(30mg)をDMSO(3mL)に溶解し、ピペリジン(0.1mL)を添加した 。室温で2次亜kんご、ジエチルエーテル(〜7mL)を添加し、油状の残渣が形成され、ジエチルエーテル(7mL×2)で連続的に振盪した。アセトン(10mL)を添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。化合物44を塩酸塩として得た。化合物44のメタノール溶液に、メタノール中0.1Nの塩酸を添加し、pH〜4にした。ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。これらの2つの化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N−(4−アミノメチルベンゾイル)S44HP DMAPアミド、−HPアミド、−DMAEアミド(それぞれ化合物35、40、46)(スキーム3、図12、左側)。
【0174】
第1ステップ(N−[4−Fmoc−アミノメチル]ベンゾイル化) ―― N−(4−Fmoc−アミノメチル・ベンゾイル)S44HP
この誘導体は、化合物38(第1ステップ)と同じ条件で得られた。4−N−Fmoc−アミノメチル安息香酸(80mg、0.022mmol)とS44HP(100mg、0.11mmol)とのDMSO(3mL)溶液に、pH7に調整するためのEt3N、およびPyBOP(90mg、0.165mmol)を添加した。その反応混合物を20時間室温で保ち、それからジエチルエーテル(200mL)を 滴下した。黄色の沈殿物を濾取し、CHCl3:MeOH:HCOOH(3:1:0.01)の系におけるカラムクロマトグラフィ用のメルクSilica Gel(0.040〜0.063mm)でのカラムクロマトグラフィにより精製して、N−(4−N−Fmoc−アミノメチル)ベンゾイルS44HP(化合物47)を、HPLCデータ(Rt=18.18、系B)、TLC(Rf=0.61、I)によるところの純度〜95%で産生した。
・ 第2ステップ(N−[4−Fmoc−アミノメチル]ベンゾイルS44HPのアミド化) ―― N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HP DMAPアミド、−HPアミドまたは−DMAEアミド
この誘導体は、N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HPおよび適当なDMAP−、HP−またはDMAEアミンから出発し、PyBOP試薬を用い、化合物38(第2ステップ)と同じ条件で得られた。その反応混合物を4時間撹拌した。HPLCデータ:N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HP DMAPアミド(Rt=15.88、B;Rf=0.25、I)、N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HP HPアミド(化合物12)(Rt=17.14、B;
Rf=0.60、I)、またはN−(4−Fmoc−アミノ・メチルベンゾイル)S44HP DMAEアミド(Rt=15.95、B;Rf=0.24、I)から、その純度は85〜93%であった。
・ 第3ステップ(Fmoc−除去)
この誘導体は、N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HP DMAPアミド、−HPアミドまたは−DMAEアミドから出発し、化合物38(第3ステップ)と同じ条件で得られた。これらの3つの化合物の分析データは、下記の表2にまとめられている。
・ N−L−リジルS44HP DMAP−アミド(化合物33)(スキーム3、右側)
第1ステップ(アミド化) ―― S44HP DMAP−アミド(化合物11)
S44HP DMAPアミドは、化合物33(スキーム1、左側)について得られた。純度は〜90%であった(HPLC)。
・ 第2ステップ(DMAPアミドのN−[N−Fmoc−アミノ]アシル化) ―― N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP DMAP−アミド
S44HP DMAPアミド(0.02mmol)のDMSO(0.5mL)溶液に、α,Nε−ジ−Fmoc−L−リシン(0.04mmol)およびEt3Nを添加し(pH7〜7.5)、その後15分間で0.03mmolのPyBOP−試薬を添加した。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(〜3mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、ジエチルエーテル(3mL×2)で連続的に振盪した。この油に5mLのアセトンを添加したところ、アミドの黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾取し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥して、N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)S44HP DMAPアミドを〜 95%の純度(HPLCデータ(Rt=22.01、系B)による)産生した。
・ 第3ステップ(Fmoc−除去)
この誘導体は、N−(Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−リジル)DMAPアミド(スキーム3,第1ステップにより得られた)から出発し、化合物38(第3ステップ)と同じ条件で得られた。これらの2つの化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
S44HPの一改変 誘導体
N−(4−アミノメチルベンゾイル)S44HP(化合物47)(スキーム4、図13、Fmoc−除去を参照)を、N−(4−Fmoc−アミノメチルベンゾイル)S44HP(スキーム3、第1ステップ)から出発し、化合物38(第3ステップ)と同じ条件で得た。これらの2つの化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N,N−ジメチルアミノエチル(DMAE)S44HPアミド(化合物48)(代替法、スキーム5、図14)
第1ステップ(Fmoc導入) N−Fmoc−S44HP
500mg(0.5mmol)の粗製S44HPの、6mLのDMF:MeOH(5:1)の撹拌溶液に、0.057mL(0.65mmol)のピリジンおよび360mg(1.0mmol)のFmocOSuを分割しながら添加した。その反応混合物を室温で4時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(20mL)の反応混合物への添加により、N−Fmoc−S44HPの黄色の沈殿物が生じた。その沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥した。粗製のN−Fmoc−S44HPを、CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.05)の系におけるメルク・シリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製して、〜30%のN−Fmoc−S44HPを、HPLC(Rt=20.49、系:pH2.6の0.01MのH3PO4およびMeCN、40→80%、30分、TLC0.39(III))によるところの純度94%で産生した。
・ 第2ステップ(アミド化) N−Fmoc−S44HP DMAEアミド
115mg(0.10mmol)のN−Fmoc−S44HPの、2mlのDMSOの撹拌溶液に、pH7〜7.5に調整した、37mg(0.30mmol)のN,N−ジメチルアミノエチルアミン塩酸塩およびEt3Nを添加し、78mg(0.15mmol)のPyBOPを分割しながら添加した。その反応混合物のpHは、Et3Nの添加により7〜7.5に保持した。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。つづく、ジエチルエーテル(5mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、ジエチルエーテル(5mL)で連続的に振盪した。アセトン(10mL)の添加により黄色の沈殿物が生じたので、それを濾取し、アセトンで洗浄し、乾燥して、HPLCデータ(Rt=14.50、系A)によるところの純度〜92%のN−Fmoc−S44HP DMAEアミドができた。
・ 第3ステップ(Fmoc−除去)
この誘導体(化合物48)は、N−Fmoc−S44HP DMAEアミドから出発し、化合物38(第3ステップ)と同じ条件で得られた。この化合物の分析データは、上記の表4にまとめられている。
純粋な化合物1:粗製化合物1のサンプルから出発した化合物1の精製(スキーム6、図15)
第1ステップ(Fmocの導入および精製) N−Fmoc−化合物1
2000mg(2.0mmol)の粗製化合物1(HPLCデータ(系B)により、化合物1−81.5%、S44HP−8.27%および同定されていない不純物〜10%を含む)の、40mLのDMSOの撹拌溶液に、Et3Nを添加してpH7〜7.5に調整し、1400mg(4.0mmol)のFmocOSを分割しながら添加したが、その反応混合物のpHは、Et3Nの添加により7〜7.5に保持した。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。つづく、ジエチル・エーテル(200mL)の反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、ジエチルエーテル(150mL×3)で連続的に振盪した。50mLのアセトンをこの残渣に添加した後、ジエチルエーテル(50mL)を添加すると、黄色の沈殿物ができた。この沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥して、2200mgの粗製N−Fmoc−化合物1を産生し、これをCHCl3:MeOH:H2O:25%NH4OH(13:6:1:0.05)の系におけるメルク・シリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製して、HPLC(Rt=18.44、系C)によるところの純度86%の、650mg(〜30%)のN−Fmoc−化合物1を産生した。
・ 第2ステップ(Fmoc−除去)
Fmoc−化合物1(400mg)をDMSO(60mL)に溶解し、15℃のピペリジン(0.2mL)を添加した。15℃で2時間後、ジエチルエーテル(〜50mL)を添加した;油状の残渣が形成され、ジエチルエーテル(50mL×3)で連続的に振盪した。アセトン(10mL)およびジエチルエーテル(20mL)を添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥して、300mgの純粋な化合物1を産生した。HPLC用のその純粋な化合物1の一部を、塩酸塩として得た。化合物1(塩基)のメタノール溶液に、pH〜4のための、メタノール中0.1NのHClを添加した。ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物が生じ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥し、HPLCデータ(塩酸、Rt=11.37、系A)によるところの純度は92.1%であった。
化合物1の一改変誘導体(スキーム7、図16)
N−フルクトピラノシル−化合物1(化合物49)(アマドリ転位)
D−グルコース(0.086mmol)を化合物1(0.040mmol)のDMF(2mL)溶液に添加した。その反応混合物を20時間37℃に保持した。それから、その反応混合物にジエチルエーテル(50mL)を滴下した。得られた沈殿物を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥した。粗製化合物(HPLCデータによるところの純度は85〜90%であり、塩を含有する)を、セファデックスG−25(ファルマシア・ファイン・ケミカルズAB、ウプサラ、スウェーデン)でのカラムクロマトグラフィにより精製した。カラムは水を使用して実行した。画分の純度はTLC、系IVによって調節した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥した。化合物41を塩酸塩として得た。化合物49のメタノール溶液に、pH〜4のための、メタノール中0.1NのHClを添加した。ジエチルエーテルを添加すると黄色の沈殿物が生じ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。N−フルクトピラノシル−化合物1(化合物49)の分析データは、下記の表2にまとめられている。
・ N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジル)化合物1(化合物50)(還元的N−アルキル化)
4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(0.065mmol)および化合物1(0.022mmol)のDMF(2mL)溶液を2時間37℃に保ち、それからNaBH3CN(4.1mg、0.065mmol)を添加した。その反応混合物を20時間37℃に保持した。ジエチルエーテル(10mL)を添加すると油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(10mL×2)で連続的に振盪した。アセトン(10mL)を添加したところ、黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾取し、ジエチルエステルで洗浄し、乾燥した。塩を含有する粗製化合物を、CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)の系を用いたメルク・シリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製した。画分の純度はTLC、系IVによって調節した。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮した。アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥した。N−(4−N,N−ジ−メチルアミノベンジル)化合物1(化合物50)の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N−L−リジル−化合物1(化合物51)
第1ステップ(N−[N−Fmoc−アミノ]アシル化)
化合物1(50mg、0.55mmol)の乾燥したDMF(1mL)の溶液を10℃に冷却し、それからEt3N(7.5μl、0.055mmol)およびNα,Nε−ジ−Fmoc−L−リシン N−オキシスクシンイミドエステル(57mg、0.083mmol)を添加した。その反応混合物をこの温度で1時間撹拌した。反応の流れは、CHCl3−MeOH(6:1)の溶媒系におけるTLCによって調節した。ジエチルエーテル(〜5ml)を反応混合物に添加すると黄色の沈殿物が生じたので、これを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥し、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィにより精製した(MeOH 0→10%の勾配を伴うCHCl3−MeOH系)。所望の化合物を含んでいる画分を収集し、その溶液を濃縮し、アセトンを添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、アセトンで洗浄し、真空で乾燥した。TLC:Rf=0.6(CHCl3−MeOH 6:1)。HPLC:Rt=13.08(0.2%HCOONH4 pH4.5およびMeCN:75→90%、20分、90→90%、10分)。
・ 第2ステップ(Fmoc−除去)
DMSO/MeOH 10:1(1mL)中の単離した黄色の固体(22mg、0.015mmol)に、ピペリジン(4.5μl、0.045mmol)を添加した。室温で30分間撹拌した後に、ジエチルエーテル(〜3mL)を添加した;油状の残渣が形成され、ジエチルエーテル(3mL×2)で連続的に振盪した。アセトン(2mL)を添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。N−L−Lysyl−化合物1(化合物51)の分析データは、上記の表4にまとめられている。
・ N,N−ジ−(3−アミノプロピル)−化合物1(化合物52)
第1ステップ(還元的N−アルキル化)
N−Fmoc−3−アミノプロピオンアルデヒド(160mg、0.054mmol)および化合物1(100mg、0.011mmol)のDMF(3mL)溶液に、NaBH3CN(34mg、0.054mmol)を添加した。その反応混合物を20時間37℃に保ち、それからジエチルエーテル(200mL)に滴下した。黄色の沈殿物を濾取し、直線濃度勾配システムCHCl3:MeOH:HCOOH(3:1:0.01)→CHCl3:MeOH:H2O:HCOOH(13:6:1:0.1)におけるカラムクロマトグラフィ用のメルクSilica Gel(0.040〜0.063mm)でのフラッシュクロマトグラフィにより精製し、N,N−ジ−(N−Fmoc−3−アミノプロピル)化合物1の黄色の沈殿物を産生した。HPLCデータ:Rt=27.43(C)。
・ 第2ステップ(Fmoc−除去)
N,N−ジ−[3−(N−Fmoc)−アミノプロピル]−S44HPのDMSO(3mL)溶液に、ピペリジン(0.1mL)を添加した。室温で2時間後、ジエチルエーテル(〜7mL)を添加し、油状の残渣が形成され、それをジエチルエーテル(7mL×2)で連続的に振盪した。アセトン(10mL)を添加すると黄色の沈殿物ができ、それを濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥した。N,N−ジ−(3−アミノプロピル)化合物1(化合物52)の分析データは、上記の表4にまとめられている。
化合物1の塩
L−アスパラギン酸塩(55)、化合物1 L−グルタミン酸塩(29)、D−グルタミン酸塩(54)
化合物1(13mg、0.015mmol)を0.2mlのDMSOに溶解し、それから対応するアミノ酸(0.015mmol)の0.1mlの水溶液を添加した。その反応混合物を室温で15分間保持した。ジエチルエーテル(〜2ml)を反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(2ml×2)で連続的に振盪した。3mlのアセトンをこの油に添加すると塩の黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥した。
・ メチルスルホン酸塩(56)、ジクロロ酢酸塩(57)
対応する酸(0.015mmol)を0.1mlのDMSOに溶解し、それから化合物1(13mg、0.015mmol)の0.1mlのDMSO溶液に添加した。その反応混合物を室温で5分間保持した。ジエチルエーテル(〜2ml)の反応混合物への添加により油状の残渣を生じたので、それをジエチルエーテル(2ml×2)で連続的に振盪した。3mlのアセトンをこの油に添加すると塩の黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥した。
・ 化合物1の塩酸塩(53)
化合物1(13mg、0.015mmol)の0.2mlのDMSOの溶液に、0.15ml(0.015mmol)の0.1N HClの水溶液を添加した。その反応混合物を室温で5分間保持した。ジエチルエーテル(〜2ml)を反応混合物への添加により油状の残渣が生じたので、それをジエチルエーテル(2ml×2)で連続的に振盪した。3mlのアセトンをこの油に添加すると塩の黄色の沈殿物が形成された。その沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、その後真空で乾燥した。
【0175】
すべてのサンプルは、約90%の収率で得られ、水溶性であった。
・ 変化させたおよび毒性の測定
抗真菌性感受性研究(1)
酵母および糸状菌(カビ)の抗真菌性感受性テストは、それぞれ、NCCLS文書M27−A[Reference method for Broth Dilution Antifungal Susceptability Testing of Yeasts、ISBN 1-56238-328-0、ペンシルバニア、1997年]およびM38−A[Reference method for Broth Dilution Antifungal Susceptability Testing of Filamentous Fungi: Approbed Standard、ISBN 1-56238-470-8、ペンシルバニア、2002年]を用いて測定された。
・ 媒体およびバッファ この研究では、L−グルタミンおよびフェノールレッドを含み、重炭酸ナトリウムを含まず、0.2%グルコース(ICN Biomedicals社、オハイオ、米国)を補充し、0.165Mのモルフォリンプロパンスルホン酸(MOPS;ACROS ORGANICS、ニュージャージー、米国)で緩衝した、pH7.0のRPMI 1640培地を用いた。
・ 抗真菌剤 まず最初に、化合物を初期濃度1600μg/mLでジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化した。同じ溶媒の原液から希釈液の系列(1600〜3.13μg/mL)を調製した。それから、これらのDMSO溶液を試験液で50倍(最初に10倍、それから5倍)に希釈した。最後に、それらを接種するときに2倍に稀釈して、最終的な溶媒濃度を1%にした(抗真菌剤の最終的な濃度は16〜0.13μg/mLであった)。溶液は使用の直前に調製した。
・ 微生物 感受性テストに用いた微生物は以下の通りだった:Candida albicans ATCC 14053、Cryptococcus humicolus ATCC 9949、Aspergillus niger ATCC 16404およびFusarium oxysporum VKM F-140 (=CMI, IMI 90473)。微生物は、ジャガイモ・グルコース寒天斜面上、50%のグリセリン溶液中、−70℃で保管した。短時間の保管の後、保存株を寒天斜面上に4℃で保管した。酵母の培養物 を、サブロー・グルコース(SAB)寒天上で二次培養し、24時間35℃で(Candida albicans)または48時間25℃で(Cryptococcus humicolus)培養して、新たに育成した純粋な培養物を得た。カビの培養物は、ジャガイモ・グルコース寒天上で二次培養し、7日間35℃で(Aspergillus niger)または2日間35℃、その後5日間25℃で(Fusarium oxysporum)培養し、最大の胞子形成を確実なものとした。
植菌物の調製
酵母用に、無菌の0.85%の食塩水に培養物のコロニーを懸濁して、出発植菌物を調製した。得られた懸濁液をボルテックスし、530nmにおける分光光度計の、0.5マクファーランド(1×106〜5×106 CFU/mL)の濁度に一致するよう調整した。保存酵母懸濁液を培地で1:1000に稀釈して、2回の試験の植菌物を得た(1×103〜5×103 CFU/mL)。
【0176】
カビ用に、成熟した菌類のコロニーを無菌の0.85%の食塩水で覆い、穏やかにこすって、保存懸濁液を調製した。1%(v/v)の湿潤剤Tween 20を、Aspergillus inoculumの調製用の食塩水に添加した。最後に、その懸濁液を15秒間ボルテックスして細胞のかたまりを破壊し、それから4層の滅菌ガーゼを通して濾過した。分生胞子の懸濁液の密度を530nmで測定し、Aspergillus nigerは0.09〜0.11に、Fusarium oxysporumは0.15〜0.17に調節した。これらの懸濁液を標準培地で1:50に稀釈した。その1:50の植菌物希釈液は、2×およそ0.4×104〜5×104 CFU/mLに必要な密度に相当した。
【0177】
植菌物定量化は、植菌物の希釈液をサブロー・グルコース寒天上に撒いて、ミリリットル当たりCFUの生存数を決定することにより行った。
微量希釈テクニック
無菌96穴平底のマイクロ滴定プレートを試験に用いた。100μmの稀釈した植菌物を、100μlの化合物の二重希釈液が入っている各微量希釈のウェルに分配した。薬剤フリーおよび酵母/カビフリーのコントロールも含まれていた。微量希釈トレイを、かき混ぜずに35度℃(Candida albicansおよびカビ)または25度℃(Cryptococcus humicolus)でインキュベートし、目視可能な増殖の有無を観察した。以下の基準を用いて、価格ウェルについて0から4の数字のスコアを付けた:0=光学的に清澄または増殖なし、1=わずかに増殖(増殖コントロールの25%)、2=増殖の顕著な低下(増殖コントロールの50%)、3=増殖のわずかな低下(増殖コントロールの75%)、4=増殖の低下なし。最小阻害濃度(MICs)は48時間の時点で読み取った。
・ 試験した化合物の各々のMICは、微生物のいかなる目視可能な増殖をも抑制しうる抗真菌剤の最低濃度として定義した。場合によっては剤の間のわずかな違いを説明するために、カビのMICは追加的に、スコア=1(増殖コントロールの25%)についての最低限の濃度として定義した。結果を下記の表5に示す。
【0178】
【表5】

【0179】
・ この結果は、本発明の化合物が抗真菌活性を有することを示してる。より具体的には、これらの試験は、多くのナイスタチン誘導体がアンホテリシンBおよびS44HPに匹敵する抗真菌活性を有することを示唆している。
・ 抗真菌性感受性の研究(2)
いくつかのナイスタチン誘導体の変化させたをさらに調査した。研究(1)において用いた方法は、変化させたの試験について国際的に認められている方法であるが、あまり感度は高くないため、互角の活性を有する化合物を容易には区別できない。したがって、多くのナイスタチン誘導体の変化させたを、より感度が高くなるよう設計した方法で決定した。
・ ポリエンマクロライドの生理活性を更に試験するために用いた供試生物は、NaClを含まない(1ウェルにつき1000cfuの植菌物を含む)120μlの標準M19培地および30μlの希釈したポリエンマクロライド・サンプルで増殖させた、Candida albicans ATCC 10231である。抗生物質を、供試生物の増殖を完全に抑制する結果から全く抑制しない結果までを生み出す濃度範囲を確保する系列で、MeOHで希釈した。抗生物質の希釈液を含む供試生物培養物を、30℃で振盪せずに96穴マイクロタイタープレート中でインキュベートし、12、14および16時間後に、Spectra Max Plusマイクロタイタープレートリーダー上で、OD490として増殖を測定した。ODを抗生物質の濃度に対してプロットし、回帰曲線の50%成長阻害からMIC50を推定した。
【0180】
結果を下記の表6に示す。
【0181】
【表6】

【0182】
・ この結果から、多くの本発明のナイスタチン類似体が、アンホテリシンBおよびS44HPの両方と比較して、改良された変化させたを実際に有することが確認できる。
・ 化合物1の塩の変化させた(表7)
以下の水溶性塩が試験された:
化合物1の塩酸塩(53)、
化合物1のL−グルタミン酸塩(29)、
化合物1のD−グルタミン酸塩(54)、
化合物1のL−アスパラギン酸(55)、
化合物1のジクロロ酢酸塩(57)。
【0183】
【表7】

【0184】
・ 化合物誘導体の抗真菌活性(表8および9)
【0185】
【表8】

【0186】
化合物51は、親の抗生物質よりわずかに高い抗真菌活性を有する、この系統で最も有効な誘導体である。
【0187】
【表9】

【0188】
in vitroでの毒性の研究
さまざまなナイスタチン誘導体の毒性を、2および5μg/mL、ならびに25μMで試験した。
【0189】
化合物を5mg/mLの濃度でDMSOに溶解し、DMSO中で異なる濃度を有する0.1mLのサンプルを調製した。そのサンプルを、2.5%のウマ血液を含有する0.9mLのPBSバッファ(PBS−HB、氷上に保持)と混合し、かき混ぜずに30分間37℃でインキュベートした。
【0190】
細胞を5000rpmで5分間の遠心分離によりペレット化し、溶血をOD545の測定により評価した。100%の溶血を、蒸留水中2.5%のウマ血液の懸濁液から得られたOD545値として定義した。
【0191】
結果を下記の表10〜12に示す。
【0192】
【表10】

【0193】
【表11】

【0194】
【表12】

【0195】
これらの結果は、本発明の化合物がS44HPおよびアンホテリシンBよりも毒性が著しく低いことを示す。したがって、本発明の化合物が副作用を起こすことなくより多い量で使用することができるため、非常に有利である。
・ 化合物1および11などのin vivoでのテスト
動物.ロシア医科学アカデミー(Russian Academies of Medical Science: RAMS)の中央農場”Kryukovo”から譲り受けた、体重20〜22gの、雑種第一代(C57Bl/6xDBA/2)F1 B6D2F1の雄のマウスを用いた。動物は、プラスチック・ケージ内の飼育場で〔vivarium〕(硬材の寝床を備え、環境調整された条件にある:24±1℃、12/12時間の明/暗サイクル)、容易に近づける飲料水(自由に)とともに、レンガ状の飼料の標準的な食餌により維持した。2週間の検疫期間の後、健康な動物を実験研究に用いた。
感染因子.Candida albicans(14053 ATCC株)を用いた。
抗真菌剤.化合物1および11(ならびにその他の化合物)の溶液を即座に調製し、光の進入を避けるために、濃色のガラス・バイアル内で保持した。溶液は、以下の通りに調製した:乾燥した抗生物質(5mg)を、無菌のガラス・バイアル内で、乾燥したデオキシコール酸ナトリウム(4.1mg)と混合した。10mLのリン酸緩衝液(NaH2PO4−1.59g;Na2HPO4−0.96g;H2O−100mLまで)をその混合物に添加し、その懸濁液を直ぐに、均一の懸濁液が形成されるまで、10分間激しく振盪した。得られた懸濁液(2mL)を新しい無菌のガラス・バイアルに入れ、6mLの5%の中性無菌グルコース溶液を添加し、得られた溶液(0.125mg/mL)を静脈内投与に用いた。
【0196】
アンホテリシンBおよびS44HPの製剤も、同様に調製した。
・ 急性毒性
化合物1および11(ならびにその他の化合物)の急性毒性を、アンホテリシンBおよびS44HPとともに、測定した。
【0197】
抗生製剤を、溶液の調製後1〜1.5時間以内に、マウスの尾静脈に単独で注射した。注入の速度は、1分につき0.5mLを超えないものとした。各抗生物質は、0%〜100%の致死性および3つの中間投与量の最小値の結果となる投与量の範囲内で用いた。動物はランダムにグループ分けして、各群6匹のマウスを含むようにした。毒性を特徴付ける投与量MTDおよび50%致死量(LD50)は、統計分析プログラム「StatPlus−3.5.0.−2005」で、リッチフィールド−ウィルコクソン(J Pharmacol Exp Ther 96:99)による「プロビット分析」の方法により算出した。結果を下記表13に示す。
【0198】
【表13−1】

【0199】
・ in vivoでの抗真菌活性
動物を、100万CFU/マウス(体積0.1mL)の投与量で、Candida albicans培養物を静脈を通じて感染させた。感染から30分後に、抗真菌剤を、0.2mLの体積で(0.2mL/30秒の速度で)様々な投与量で、静脈からマウスに導入した。各投与量は、感染の日を含む4日間(0、1、2および3日)、毎日投与した。
・ コントロールとして、無処理マウス群(同じ方法でCandida albicansに感染している)が含まれている。また、(抗真菌剤製剤と同じ量である)0.2mLの溶媒(リン酸緩衝液+5%グルコース(1:1))を静脈内に投与した、非感染動物の「プラセボ」群も含まれている。
・ 「プラセボ」群のいずれにも活性は確認されなかった。また、非感染動物からはCandida albicansは全く見つからなかった。
・ 実験の5日目に、マウスを計量し、安楽死させた(殺した)。ついで、無菌条件で、各マウスにおけるCandida albicansの負荷を、腎臓由来の生育可能なホモジネートを計数することにより、決定した。腎臓は、無菌的に取り出して計量してから、磁器製の乳鉢内で無菌の綱玉ですりつぶした。得られた懸濁液の希釈液を調製し、寒天サブローを入れたペトリ皿上に撒いて、35℃の温度で24時間インキュベートした。発生したCandida albicansのコロニーを計数してから、1gの腎臓組織に基づいてその量を算出した。
・ 統計分析を、Microsoft Office Excel 2003を用いて行った。Studentのt−基準〔t-criterion〕による比較においてP≦0.05を有意差とした。
・ 結果を下記表14および図9に示す。
【0200】
【表14】

【0201】
マウスのカンジダ血症モデルにおける化合物29,51,41,48の特異的活性の研究
動物.実験において、ロシア医科学アカデミー(Russian Academies of Medical Science: RAMS)の中央農場”Kryukovo”から譲り受けた、体重18〜20gの、雑種第一代(C57Bl/6xDBA/2)F1(B6D2F1)の雌のマウスを用いた。動物は、プラスチック・ケージ内の研究所の飼育場で(硬材の寝床を備えた、環境調整された室内:24±1℃、12/12時間の明/暗サイクル)、容易に接近できる飲料水(自由に)とともに、レンガ状の飼料の標準的な食餌により維持した。2週間の検疫の後、健康な動物を実験研究に用いた。
・ 感染因子 としてCandida albicans(14053 ATCC株)を用いた。試験した製剤 は、化合物29、51、41、48であった。比較した製剤は、アンホテリシンB(準ピン)であった。試験した製剤の溶液は、顧客が指定した手法で即座に調製した。
・ 実験の記載
動物は3匹のマウスを収容し、0.1mlの体積中100万CFU/マウスの投与量で、Candida albicans培養物を静脈を通じて感染させた。全ての実験において、Candida albicansの投与量は一定に保たれていたことに留意する必要がある。感染後30分以内に、マウスに、0.2mlの体積中(0.2mL/30秒の速度で)対応する投与量で、試験する製剤の最初の静脈内への導入を行った。
・ 実験は、各実験で一回の投薬(アンホテリシンおよび試験する製剤の両方について用いた)、感染の日から4日間の間(0,1,2および3日目)毎日投薬が入るように計画した。各実験には、無処理の、Candida albicansに感染した動物群が含まれている。また、健全な(感染していない)動物の「プラセボ」群も含まれており、それらには(医薬製剤 と同じ量である)0.2mLの溶媒(リン酸緩衝液+5%グルコース(1:1))を静脈内に注射した。「プラセボ」の活性に関するデータは、いかなる活性をも示さなかった。非感染動物からはCandida albicansは全く見つからなかった。
・ 曝露後 の実験の5日目に、マウスを計量し、安楽死させた(殺した)。ついで、無菌条件で、Candida albicansの負荷を、腎臓由来の生育可能なホモジネートを計数することにより決定した。無菌的に取り出して計量した腎臓を、磁器製の乳鉢内で無菌の綱玉ですりつぶし、得られた懸濁液の稀釈を行い、寒天サブローを入れたペトリ皿上に撒き、35℃の温度で48時間インキュベートし、その後、発生したCandida albicansのコロニーを計数し、1gの腎臓組織に基づいてその量を算出した。第1の希釈液は10-1であった。この培養において0の結果は5CFU/gまで認容する。
・ 調査する製剤の評価の基礎となる基準は、アンホテリシンBの最大効果が担った。
・ コンピュ−タプログラムMicrosoft Office Excel 2003の助けを借りて統計処理を行った。Studentのt−基準による比較においてP≦0.05を、平均値に有意と認められる差があるとした。
・ 受け取った結果を表15に示す。アンホテリシンBは、研究された投与量の最も高いところ(1. 25mg/kg/d、MTDからおよそ 62%)。で、活性の基準により認められる最大活性を示した
【0202】
【表15】

【0203】
遺伝子操作に基づく更なる化合物の合成
さまざまに更に操作可能な主鎖構造を調製した。上記の化学的作用を用いて、さまざまな異なる官能基を、遊離COOHおよびアミン基に取り付けられることができる。これらのベ−ス構造はすべて、本発明のさらに好ましい化合物を形成する(水素原子は示されていない)。
【0204】
【化15】

【0205】
ナイスタチンPKSのER5およびDH15領域の不活性化、C−10ヒドロキシル化なし
【0206】
【化16】

【0207】
ナイスタチンPKSのER5およびKR16領域の不活性化
【0208】
【化17】

【0209】
ナイスタチンPKSのER5およびDH15領域ならびにNysNモノオキシゲナーゼの不活性化、C−10ヒドロキシル化なし
【0210】
【化18】

【0211】
ナイスタチンPKSのER5領域ならびにNysNおよびNysLモノオキシゲナーゼの不活性化、C−10ヒドロキシル化なし
【0212】
【化19】

【0213】
ナイスタチンPKSのER5およびKR14領域ならびにNysNモノオキシゲナーゼのの不活性化
【0214】
【化20】

【0215】
ナイスタチンPKSのER5領域およびNysLモノオキシゲナーゼの不活性化
【0216】
【化21】

【0217】
ナイスタチンPKSのER5およびKR16領域ならびにNysNモノオキシゲナーゼの不活性化
・ 変異体B2の構築
KR16不活性化のための遺伝子置換ベクターの構造
組換えファ−ジN20(Brautaset et al., 2000)の全14kbの挿入断片をXbaIにより切り出し、プラスミドpGEM−3zfにクローニングして、pL20Xを産生した。このプラスミドから、3.7kbのBamHI断片を切り出し、pGEM−3zfに連結して、プラスミドpGEMB3.7とした。そして、0.8kbのDNA断片(KR16活性部位残基Y3404を含む)を、以下のプライマを用いてpGEMB3.7からPCR増幅した。
【0218】
【数7】

【0219】
PCR産物は、PstIおよびHindIII(2つのPCRプライマにおいて下線が引かれている新たな認識部位)によって末端消化し、pLITMUS28の対応する部位にクローニングして、pLITPH0.8を産生した。後者のプラスミドは、以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いた、KR16活性部位の部位特異的変異のテンプレートとして役立てた。

【数8】

【0220】
・ 変異したヌクレオチドを太字で示し、導入された新たなBstBI認識部位に下線を引いた。これらの2つのオリゴヌクレオチドを用いて、KR16活性部位のTyrをPheに置換し、同時に次の下流のAlaをGluで置換して、二重変異体YA3404FEを産生する。正しい変異を有するプラスミドをBstBI消化により確認し、クローニングされた挿入断片全体の配列決定をして、他のいかなる望ましくない変異をも解明した。正しく変異したプラスミドから、627bpのBpu102I/Bpu10I断片を切り出し、プラスミドpGEMB3.7の対応する断片を置換するために用いて、プラスミドpGEMB3.7mを産生した。後者のプラスミドから、3.7kbの挿入断片全体をEcoRI/HindIIIにより切り出し、pSOK201の3.1kbのEcoRI/HindIIIバックボ−ンと共に連結して、遺伝子置換ベクターpKR16mを産生した。
・ 遺伝子置換
後者のベクターを、二重相同組み換えによって、nysA欠損S.noursei変異体GG5073SP(Borgos et al., 2006)に導入した。他で記載したように(Brautaset et al., 2003)、in transでnysA遺伝子を導入することによりポリエンの生産を回復させる前に、正しい染色体KR16変異を、サザンブロットとともにPCR+BstBI消化を用いて検証した。得られた変異体をB2と命名した。
・ 変異体B7の構築
プラスミドpKOnysN−CL346AS(PNAS−manus参照)を、二重相同組み換えによって、nysA欠損B2に導入した。他で記載したように(Brautaset et al., 2003)、in transでnysA遺伝子を導入することによりポリエンの生産を回復させる前に、正しい染色体nysN変異を、サザンブロットとともにPCRおよびNheI消化を用いて検証した。得られた変異体をB7と命名した。
・ 変異体B5の構築
KR14不活性化のための遺伝子置換ベクターの構築
プラスミドpL20Xの4.0のBclI/EcoRI断片(上記の計画B2参照)を切り出し、BamHI/EcoRIにより消化したpGEM−3zfに連結して、pBE4.0を産生した。1kbの断片を、以下のプライマを用いて、後者のプラスミドからPCR増幅した。
【0221】
【数9】

【0222】
PCR断片をSacIおよびHindIII(新たな認識部位はプライマにおいて下線が引かれている)により消化し、LITMUS28に連結して、pLITHS1.0を産生した。後者のプラスミドは、以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドを使用した、KR14活性部位の部位特異的変異のテンプレートとして用いた。

【数10】

【0223】
・ 変異したヌクレオチドを太字で示し、導入された新たなBstBI認識部位に下線を引いた。これらの2つのオリゴヌクレオチドを用いて、KR14活性部位のTyrをPheに置換し、同時に次の下流のAlaをGluで置換して、二重変異体YA9197FEを産生する。正しい変異を有するプラスミドをBstBI消化により確認し、クローニングされた挿入断片全体の配列決定をして、他のいかなる望ましくない変異をも解明した。正しく変異したプラスミドから、0.7kbのFseI/AscI断片を切り出し、プラスミドpBE4.0の対応する断片を置換するために用いて、pBE4.0mutを産生した。後者のプラスミドから、4.0kbの挿入断片全体をEcoRI/HindIIIにより切り出し、pSOK201の3.1kbのEcoRI/HindIIIバックボ−ンと共に連結して、遺伝子置換ベクターpKR14mを産生した。
・ 遺伝子置換
後者のベクターを、二重相同組み換えによって、nysA欠損S.noursei変異体GG5073SP(Borgos et al., 2006)に導入した。他で記載したように(Brautaset et al., 2003)、in transでnysA遺伝子を導入することによりポリエンの生産を回復させる前に、正しい染色体KR16変異を、サザンブロットとともにPCR+BstBI消化を用いて検証した。得られた変異体をBSG015と命名した。
【0224】
次に、nysN不活性化ベクターpKOnysN−CL346AS(PNAS−manus参照)を、二重相同組み換えによって、nysA欠損BSG015に導入した。他で記載したように(Brautaset et al., 2003)、in transでnysA遺伝子を導入することによりポリエンの生産を回復させる前に、正しい染色体nysN変異を、サザンブロットとともにPCRおよびNheI消化を用いて検証した。得られた変異体をB5と命名した。
・ 変異体B4の構築
nysL不活性化のための遺伝子置換ベクターの構築
nysL遺伝子置換インフレーム欠失プラスミドpNLD1はすでに記載されており(VolokHaen et al., 2006)、このプラスミドの4.2kbのクローニングされた挿入断片は、S. nourseiのnysN翻訳領域を含む。nysL変異をnysN−CL346ST変異のバックグラウンドに導入するため、我々は、このプラスミドも同様にこのnysN変異を含むように改変しなければならなかった。これは次のようにして行った:プラスミドpSOK201nysN4.1−CL346STの1011bpのAgeI/FspaI断片(2007年5月のBiosergenの特許出願を参照)を切り出し、プラスミドpNLD1の対応する断片を弛緩するために用いて、遺伝子置換プラスミドpNLD2を産生した。
遺伝子置換
プラスミドpNLD2を、二重相同組み換えによって、nysA−欠損化合物1に導入した。他で記載したように(Brautaset et al., 2003)、in transでnysA遺伝子を導入することによりポリエンの生産を回復させる前に、正しい染色体nysL変異を、サザンブロットとともにPCRおよびNheI消化を用いて検証した。得られた変異体をB4と命名した。
・ B1およびB3
NysJのDH15活性部位His966の不活性化:
目的:nysJ DH15活性部位に部位特異的変異を導入して、DH15領域に置換変異H966Fをもたらす。
手順:
− pL20XをBclI+SphIで消化し、BamHI/SphIで消化したpGEM11−zfに3.33kbの断片をクローニングする=pDH15−A。
【0225】
− pDH15−AをEcoRI+HindIIIで消化し、対応する部位pGEM3−zfに3.34kbの断片をクローニングする=pDH15−B。
【0226】
pDH15−Bテンプレートおよび以下の変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いて、部位特異的変異を成し遂げる。
【0227】
【数11】

【0228】
− 変異したヌクレオチドを太字で示す。この変異はこの位置において天然のBtrI部位を破壊する。
【0229】
− BrtI消化およびDNA塩基配列決定により正しい変異を確認する=pDH15−Bmut。
【0230】
− pDH15−Bの1.6kbのEcoRI/SacI断片−1、pDH15−B由来の1.1kbのHindIII/BglII断片−2およびpDH15−Bmut由来のSacI/BglII断片−3を単離し、3つの断片全てを、3.1kbのpSOK201のEcoRI/HindIIIバックボ−ンと共に連結する;pDH15−123。
・ − S.nourseiに対する遺伝子置換を続行。
【0231】
− 正しいS.nourseiのDH15変異の検証。
【0232】
− 第1の組み換えは、全DNAをNotIで消化した後に、pDH15−Aの標識化した3.33の挿入断片をプローブとして用いたサザンブロットにより、検証することができる。野生型は5.2+8kbのシグナルをもたらす一方、正しい第1の組み換え変異体(両方の理論上の異型)は5.2+6.4+8kbのシグナルをもたらすだろう。
【0233】
− 第2の組み換え変異体は、以下のプライマを用いたPCRにより分析することができる。
【0234】
【数12】

【0235】
上記PCRは、817bpの産物をもたらすだろう。親株由来のそのPCR産物はBtrIにより消化することができ、392bpおよび425bpの断片をもたらすが、その一方で、変異体由来のPCR産物はBtrIで切断することができない。加えて、第2の変異体は、標識化した817bpのPCR産物をプローブとして用いたサザンブロットにより検証することができる。BtrIにより消化した親株のDNAは、0.95kb+0.45kbのハイブリダイズした断片をもらすが、その一方で、変異体由来のBtrI消化DNAは、1.4kbのハイブリダイズした断片をもたらすだろう。
・ 変異体B1の構造
DH15変異体をnysA欠損GG5073SP株に導入し、正しい変異体はその後、nysA遺伝子をin transで補完した。
・ 変異体B3の構造
nysN−CL346ST変異体をnysA欠損B1−S1の遺伝子のバックグラウンドに導入し、得られた正しい変異体株はnysA遺伝子をin transで補完して、変異体B3−1Sを産生した。
・ 播種性カンジダ症の好中球減少マウスモデルにおけるアンホテリシンBおよび新規S44HP類似体のin vivoでの有効性
マウスは、シクロホスファミド一水和物(Fluka、BioChemika、シグマアルドリッチ、スイス)を腹膜内に2×100mg/kg体重で、感染の1日前に注射することにより、好中球減少性にした。
【0236】
Candida albicansの播種感染は、3×105CFU/mlの植菌物を、好中球減少マウスの側方の尾静脈を介して、抗生物質の処置の開始の2時間前に注射することにより達成した。C. albicansの感染の排除における抗生物質の有効性を、4日間の処置(1日につき1回分)の後に、腎臓の真菌の負荷の評価により判定した。結果を図17に示す。
・ アンホテリシンBは、最大2mg/kg(MTDのすぐ下)の量で投与された。これらの結果は、化合物28および化合物29がアンホテリシンBよりかなり良好なものであることを明らかに示している。なぜならば、
1)それらは、約5〜7倍低い急性毒性を示し、
2)それらは、好中球減少マウスモデルにおける播種性カンジダ症の処置において5〜10倍の良好な有効性を示し、
3)アンホテリシンBの溶解性が<1mg/mlであるのに対し、それらは5%のグルコースに溶解する(>10mg/ml)一方、アンホテリシンBの溶解性は<1mg/mlであるためである。
・ 化合物25および化合物26は、カンジダ症の好中球減少マウスモデルにおいて、アンホテリシンBよりも活性が低いが、それらは非常に低い急性毒性を示すため(アンホテリシンBより約20倍低い)、依然として興味深い候補と考えられる。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C28とC29との間において存在する、追加された二重結合を有し、ナイスタチンに対して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上においてさらに改変されたナイスタチン誘導体あるいはその薬理学的に許容できる塩である化合物
(ただし、当該化合物は、化合物(II)
【化1】

、マイコヘプチン化合物(以下に示す。)
【化2】

またはカンジジン化合物(以下に示す。)
【化3】

ではない。)。
【請求項2】
C5位において改変された、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
C16において改変された、先行請求項の何れか一項に記載の化合物。
【請求項4】
C9において改変された、先行請求項の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
C10において改変された、先行請求項の何れか一項に記載の化合物。
【請求項6】
マイコサミンのアミノ基において改変された、先行請求項の何れか一項に記載の化合物。
【請求項7】
ナイスタチンに対して、C5、C7、C9、C10、C11、C16またはマイコサミンのアミノ基の、少なくとも2つにおいて改変された、先行請求項の何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式I´の化合物、
【化4】

好ましくは、式(I)の化合物。
【化5】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している。;
'およびR'は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している。:
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している。;
'およびR'は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示すか、ともにカルボニル基を形成している。;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を示す。;
は、水素原子、COOH、アルキル基、アルコキシ基、カルボン酸エステル基またはアミド基を示す。;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキルアミノ基、糖基、またはアシル基を示す。)
、あるいはそれらの薬理学的に許容できる塩
(ただし、前記化合物は、化合物(II)
【化6】

もしくはマイコヘプチン化合物(以下に示す。)
【化7】

またはカンジジン化合物(以下に示す。)
【化8】

ではない。)。
【請求項9】
は、水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、−OC1−6)を示し、Rは水素原子を示し、あるいはRおよびRは、ともにカルボニル基を形成している、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は、水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、−OC1−6)を示し、Rは水素原子であり、あるいはRおよびRは、ともにカルボニル基を形成している、請求項7〜9の何れか一項に記載の化合物。
【請求項11】
は、水素原子、水酸基またはアルコキシ基(たとえば、−OC1−6)を示し、Rは水素原子である、請求項7〜10の何れか一項に記載の化合物。
【請求項12】
はCOOH、アルキル基、カルボン酸エステル基またはアミド基である、請求項7〜11の何れか一項に記載の化合物。
【請求項13】
は、水素原子、アルキルアミノ基、糖基またはアシル基を示し、Rは、Rと同一であるか、あるいは水素原子であり、たとえば、Rは、水素原子である、請求項7〜12の何れか一項に記載の化合物。
【請求項14】
はアルキル基(たとえばメチル)またはアミド基、たとえば式IIIのアミドである、請求項7〜13の何れか一項に記載の化合物。
【化9】

(式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、または、水酸基、アシルオキシ基またはアミノ基で置換されてもよく、酸素原子または窒素原子によって割り込まれていてもよい、C1−10の分岐または非分岐型のC1−10のアルキル基を示し、あるいはsR10およびR11は、ともに水酸基、アシルオキシ基またはアミノ基で置換されていてもよく、酸素原子または窒素原子によって割り込まれていてもよい、C1−8の環状アルキル基を形成している。)
【請求項15】
は、CONH(CHN(CHまたはCONH(CHOH(式中、nは2または3である。)である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
は、式−(CHNHまたは−(CHN(C1−6アルキル)(式中、xは2〜6である。)のアルキルアミノ基であるか、グルコース、ガラクトース、グルコピラノース、マンノピラノース、ガラクトピラノース、フルクトピラノースおよびタガトピラノースから選択される単糖、またはラクトース、メリビオース、スクロース、マルトースおよびセロビオースから選択されるオリゴ糖である、請求項7〜15の何れか一項に記載の化合物。
【請求項17】
およびRは、ともにカルボニル基を形成し、R、RおよびRは、水素原子であり、Rは、水酸基である、請求項8〜16何れかに記載の化合物。
【請求項18】
はC1−6のアルキル基(たとえばメチル)であり、RおよびR の少なくとも1つ(たとえば、RおよびRの両方)は水素原子である、請求項8〜17何れかに記載の化合物。
【請求項19】
は、アミノ基、好ましくは以下に規定される式IIIのアミノ基であり、RおよびRの少なくとも1つ(たとえば、RおよびRの両方)は、水素原子である、請求項8〜18何れかに記載の化合物。
【請求項20】
は、糖基またはアルキルアミノ基であり、R は水素原子である、請求項8〜19に記載の化合物。
【請求項21】
以下の骨格を含み、16位のCOOHは、Rについて規定されるような、アミドまたはカルボキシエステル基であってもよい、請求項8〜20何れかに記載の化合物。
【化10−1】

【化10−2】

【化10−3】

【化10−4】

【化10−5】

【化10−6】

【化10−7】

【化10−8】

【化10−9】

【請求項22】
図1において示される化合物から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項23】
化合物番号1、2、9、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、28、29、41、48および51から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項24】
化合物番号1、2、9、11、12、13、14、21および22から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項25】
グルタミン酸塩の形態である、先行請求項の何れかに記載の化合物。
【請求項26】
(i)ナイスタチン合成を担うポリケチドシンターゼ系をコードする遺伝子群を改変して、C28とC29との間において、二重結合を有するナイスタチン誘導体を産生することと;
(ii)さらに、前記遺伝子群を改変して、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、改変されたナイスタチン誘導体を産生するか、または
(iii)化学反応によって、C5位、C7位、C9位、C10位、C11位、C16位またはマイコサミンのアミノ基の1つ以上において、得られた誘導体を改変することと、
を含む、先行請求項の何れかに記載の化合物を製造する方法。
【請求項27】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物と、担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物。
【請求項28】
医薬品である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
治療において使用するための、請求項1〜25の何れか一項に記載の化合物。
【請求項30】
真菌感染の処置用の組成物の製造のための、請求項1〜25の何れか一項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
請求項1〜25の何れか一項に規定された化合物を動物に投与することを含む、動物における真菌感染の処置の方法。
【請求項32】
殺菌剤または防腐剤としての、請求項1〜25の何れか一項に記載の化合物の使用。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−531865(P2010−531865A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514116(P2010−514116)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002238
【国際公開番号】WO2009/004322
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004789)
【Fターム(参考)】