説明

ナックルブラケット

【課題】溶接不良を抑制することが可能なナックルブラケットを提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するために、本発明における課題解決手段は、断面C型のブラケット本体2と、ブラケット本体2の両端から平行して延びてステアリングナックルに締結される一対の取付片3,4と、各取付片3,4の上端を内側へ曲げて形成される各支持片5,6とを備え、各支持片5,6とブラケット本体2とが緩衝器の外筒10に溶接されて緩衝器に固定されるナックルブラケット1において、支持片5,6は、上端面5a,6aがブラケット本体2の上端面2bと面一となるように曲げられて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器とステアリングナックルを連結するナックルブラケットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器、特に、ストラット型の緩衝器にあっては、その端部をステアリングナックルに連結するために外筒にナックルブラケットと言われるブラケットを備えている。
【0003】
このナックルブラケット100は、たとえば、図5に示すように、断面C型のブラケット本体101と、ブラケット本体101の両端から平行して延びて図示しないステアリングナックルに締結される一対の取付片102,103と、各取付片102,103の上端を内側へ折り曲げて形成される各支持片104,105とを備えて構成されている。
【0004】
そして、各支持片104,105とブラケット本体101との内縁で緩衝器の外筒106を抱持させ、支持片104,105とブラケット本体101とを緩衝器の外筒106に溶接することによって、ナックルブラケット100は緩衝器に固定されるようになっている(たとえば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2000−18309号公報
【特許文献2】特開2004−69019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のナックルブラケット100にあっては、一枚の金属板でなる母材Mを順次プレス加工することによって成形されるようになっており、支持片104,105の形成に際しては、図6に示すように、上記母材Mの取付部102,103となる部位aの上端部(斜線部分)をブラケット本体となる部位bの上端に沿う水平線で折り曲げて支持片104,105を形成する。
【0006】
すると、支持片104,105の上端面107,108は、図7に示すように、先端側ほど内側となる緩衝器側に向くように捻られた格好となる。
【0007】
また、支持片104,105の形成に際しては、上述したように折り曲げ加工を利用しているため、支持片104,105の折り曲げ部分を完全に塑性変形させるのは難しく、捻りが加わるブラケット本体101と支持片104,105の境の部分で緩衝器の外筒106との間に隙間が生じる場合がある。
【0008】
そして、支持片104,105の上端面107,108とブラケット本体101の上端面109に溶融した溶接材をのせつつ、これら上端面107,108,109および外筒106の側面を溶融して溶接することになるのであるが、支持片104,105の上端面が捻られているために溶融した金属がその場に留まり難く、また上記した隙間から溶融した金属が下方へ流れ落ちてしまう場合があり、従来のナックルブラケット100では溶接不良が発生しやすかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、溶接不良を抑制することが可能なナックルブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明における課題解決手段は、断面C型のブラケット本体と、ブラケット本体の両端から平行して延びてステアリングナックルに締結される一対の取付片と、各取付片の上端を内側へ曲げて形成される各支持片とを備え、各支持片とブラケット本体とが緩衝器の外筒に溶接されて緩衝器に固定されるナックルブラケットにおいて、支持片は、上端面がブラケット本体の上端面と面一となるように曲げられて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナックルブラケットによれば、支持片の上端面とブラケット本体の上端面は、水平で面一となる面を形成しているので、溶融した溶接材が溜まりやすく、また、支持片の上端面に捻りを生じていないため、支持片とブラケット本体との境で緩衝器の外筒との間に隙間を生じさせることが無いから、溶接不良の発生を防止することができる。
【0012】
さらに、溶接不良の発生を防止できるので、支持片とブラケット本体とを外筒の略全周に亘って均一に溶接することができ、溶接ムラを無くして外筒の一部のみに応力が集中して外筒の疲労が激しくなってしまうといった事態をも阻止することが可能で、緩衝器の耐久性が向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態におけるナックルブラケットの斜視図である。図2は、一実施の形態におけるナックルブラケットの平面図である。図3は、一実施の形態におけるナックルブラケットの側面図である。図4は、一実施の形態におけるナックルブラケットの母材の平面図である。
【0014】
図1から図3に示すように、一実施の形態におけるナックルブラケット1は、断面C型のブラケット本体2と、ブラケット本体2の両端から平行して延びて図示しないステアリングナックルに締結される一対の取付片3,4と、各取付片3,4の上端を内側へ曲げて形成される各支持片5,6とを備えて構成されている。
【0015】
そして、このナックルブラケット1は、各支持片5,6とブラケット本体2の内縁で緩衝器の外筒10の外周を抱持し、また、各支持片5,6とブラケット本体2とが上記外筒10に溶接されることによって、緩衝器に取付けられる。
【0016】
以下、各部について詳しく説明すると、ブラケット本体2は、断面C型であって、図3に示すように、背部に切欠2aが設けられている。この切欠2aは、ナックルブラケット1の軽量化のために設けられており、設けなくともよい。
【0017】
また、取付片3,4には、それぞれ2つのボルト挿入孔3a,4aが設けられ、この取付片3,4の間に図外のステアリングナックルの取付部を挿入し、ボルト挿入孔3a,4aに挿入されるステアリングナックルの取付部を貫通する図示しないボルトとナットによって、取付片3,4と上記取付部をボルト締結して、このナックルブラケット1で緩衝器とステアリングナックルを連結できるようになっている。
【0018】
また、取付片3,4の下端は、外方へ折り曲げられてフランジ部3b,4bが設けられ、取付片3,4の強度向上が図られている。
【0019】
さらに、取付片3,4の上端を曲げ加工によって内側に曲げて支持片5,6を形成しており、この支持片5,6は、図1および図3に示すように、取付片3,4の上端をブラケット本体2側へ、つまり、ナックルブラケット1の内方へ向けて窄ませるように曲げて形成されることで、支持片5,6の上端部とブラケット本体2の上端部で首部7が設けられ、当該首部7の端面となる支持片5,6の上端面5a,6aおよびブラケット本体2の上端面2bは、面一となって途中で捩れないようになっている。
【0020】
上述のようなナックルブラケット1の各部を形成するに当たっては、具体的には、図4に示すように、一枚の金属板でなる母材Pをプレス加工することによって行われ、まず、母材Pのうち取付片3,4に対応する部位c,dに台形状のリブ3c,4cを形成する加工が行われ、フランジ部3b,4bも同時に加工される。
【0021】
その後、母材Pのうち部位c,dの上端であって上方側へ山型に突出した部位e,f(図中斜線部分)を曲げ線g,hにて曲げて支持片5,6を形成する。この曲げ線g,hは、母材Pの両端から図4中斜め上方へ向かって伸び途中から彎曲して山型の部位e,fを囲むように母材Pの上端へ通じており、この曲げ線g,hにて部位e,fを曲げることで、図1に示すように、支持片5,6が曲げ線g,hの彎曲部分に沿って内側に凸となる曲面部分Wを形成しつつ支持片5,6の上端面5a,6aを外筒10の外周に倣うように円弧状に曲げることができ、ブラケット本体2に対応する部位iの上端面と支持片5,6の上端面とが面一とされる。
【0022】
なお、山形の部位e,fの内側の形状は、上記の如く曲げた際に、支持片5,6の上端面5a,6aが円弧状となるとともにブラケット本体2の上端面2bとが面一となるように設定される。
【0023】
そして、このように部位e,fを曲げて、つづくブラケット本体2の加工が終了すると、支持片5,6が曲面部分Wを形成してナックルブラケット1の内方に向けて窄められるため、支持片5,6の上端とブラケット本体2の上端とで首部7が形成されることになる。
【0024】
最後に、ブラケット本体2に対応する部位iをC型に加工し、ボルト挿入孔3a,4aを穿設してナックルブラケット1の各部すべてが形成される。
【0025】
そして、このように構成されたナックルブラケット1は、支持片5,6の内縁とブラケット本体2の内縁で外筒10を抱持させ、支持片5,6とブラケット本体2を外筒10に溶接する。
【0026】
この溶接の際には、支持片5,6の上端面5a,6aとブラケット本体2の上端面2bは、水平で面一となる面を形成しており、溶融した溶接材が溜まりやすく、また、支持片5,6の上端面5a,6aに捻りを生じていないため、支持片5,6とブラケット本体2との境で外筒10との間に隙間を生じさせることが無いから、溶接不良の発生を防止することができる。
【0027】
さらに、溶接不良の発生を防止できるので、支持片5,6とブラケット本体2とを外筒10の略全周に亘って均一に溶接することができ、溶接ムラを無くして外筒10の一部のみに応力が集中して外筒10の疲労が激しくなってしまうといった事態をも阻止することが可能で、緩衝器の耐久性が向上することになる。
【0028】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施の形態におけるナックルブラケットの斜視図である。
【図2】一実施の形態におけるナックルブラケットの平面図である。
【図3】一実施の形態におけるナックルブラケットの側面図である。
【図4】一実施の形態におけるナックルブラケットの母材の平面図である。
【図5】従来のナックルブラケットの斜視図である。
【図6】従来のナックルブラケットの平面図である。
【図7】従来のナックルブラケットの母材の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ナックルブラケット
2 ブラケット本体
2a ブラケット本体における切欠
2b ブラケット本体における上端面
3,4 取付片
3a,4a 取付片におけるボルト挿入孔
3b,4b 取付片におけるフランジ部
3c,4c 取付片におけるリブ
5,6 支持片
5a,6a 支持片における上端面
7 首部
10 緩衝器の外筒
c,d 母材における取付片に対応する部位
e,f 母材における支持片に対応する山型の部位
g,h 曲げ線
i 母材におけるブラケット本体に対応する部位
P 母材
W 支持片における曲面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面C型のブラケット本体と、ブラケット本体の両端から平行して延びてステアリングナックルに締結される一対の取付片と、各取付片の上端を内側へ曲げて形成される各支持片とを備え、各支持片とブラケット本体とが緩衝器の外筒に溶接されて緩衝器に固定されるナックルブラケットにおいて、支持片は、上端面がブラケット本体の上端面と面一となるように曲げられて形成されることを特徴とするナックルブラケット。
【請求項2】
取付片の上端をブラケット本体側へ窄ませるように曲げて支持片を形成して、支持片とブラケット本体の上端とで首部を形成することで、支持片の上端面とブラケット本体の上端面とを面一としたことを特徴とする請求項1に記載のナックルブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216129(P2009−216129A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58245(P2008−58245)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】