説明

ナノインク調製方法及び装置

【課題】 印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含むナノインクを調製する。
【解決手段】 遠心分離処理した遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置を液面センシング手段4で計測する。次に、その計測結果を基に、コントローラ9にて遠心チューブ2内のナノインク1の液深dを求め、ナノインク1の液面位置及び液深と、予め試験によって同一の遠心処理条件の下で印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれない上澄み領域1aが形成される割合として利用可能割合設定部15に設定されている利用可能割合とから、上澄み領域下限高さ位置hを求める。次いで、吸出しノズル5を、その先端が遠心チューブ2内のナノインク1の液面に常に一定量潜るように昇降を制御しながら、上澄み領域下限高さ位置hよりも上方の上澄み領域1aに存在するナノインク1を、吸出しノズル5を通して液体吸出し容器7へ吸い出して回収させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な電子回路の導線等を印刷するために用いるナノインクの調製方法及び装置に関するもので、特に、印刷に不適正な大きな粒子径となるナノ粒子の凝集粒子を除去してなるナノインクを調製するために用いるナノインク調製方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性のナノ粒子を含んだナノインクを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の画像表示素子の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0003】
上記画像表示素子の電子回路を基板に形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがある。
【0004】
ところで、上記ナノインクに用いるナノ粒子は、ナノインクの製造時に粒子径をナノオーダーに揃えてあるとしても、その後、時間経過や、その他、何等かの要因によりナノ粒子同士が凝集して、粒子径の大きな凝集粒子が生じてしまうことがある。
【0005】
そのため、上記のようなナノ粒子同士の凝集による粒子径の大きな凝集粒子を含んだ状態のナノインクを用いて、上記電子回路等の線幅が微細な印刷パターンの印刷を行うと、印刷精度の低下や印刷パターンの乱れに繋がってしまうというのが実状である。
【0006】
そこで、微細な回路パターンの印刷を行うためのナノインクに用いる導電性のナノ粒子である銀ナノ粒子について、印刷に適正な粒子径のものから、印刷に不適正な大きな粒子径の凝集粒子を分離するための手法として、遠心分離機を用いて銀ナノ粒子の分散液を所定の条件で遠心分離処理し、次いで、上澄みを沈降物質より分離して回収することで、上澄み中に印刷に適正な粒子径の銀ナノ粒子のみを回収するようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この手法は、インクの成分を安定させ、品質のよい印刷をするのに有効であると考えられる。
【0007】
なお、遠心分離処理後の遠心チューブ内の上澄みを自動的に回収するための手法の一つとしては、たとえば、血液の遠心分離処理によって生じる上澄みとしての血清を、沈降物質としての血餅(血球)より分離して回収するために、血液の遠心分離処理後の試験管(遠心チューブ)を、投受光器の間で上方に移動させて、投光器より発した光の受光器での受光量の変化を基に、ほぼ透明な上澄みとなる血清と、色素を有している血餅との界面の検出を行い、この検出された界面よりも上側に存在する血清を、上記試験管に挿入したノズルで吸引して回収するようにする手法が考えられている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
又、遠心分離処理された後の遠心チューブ内の上澄みを自動的に回収するための別の手法としては、上下方向に伸縮可能な伸縮スタンドにピペットを下向きに保持させて、遠心分離処理後の遠心管(遠心チューブ)を所定個所に配置すると、上記伸縮スタンドの動作により上記ピペットの先端部に取り付けてあるピペットチップを、上記遠心管の内部の液体に、空気との界面より所要深さまで挿入してから、空気が吸込まれるようになるまで液体の吸引を行い、次いで、ピペットチップ内に吸い込まれた液体を別の個所に排出してから、上記ピペットチップを、再び上記遠心管の内部の液体に、空気との界面より所要深さまで挿入してから、空気が吸込まれるようになるまで液体の吸引を行うようにし、この動作を、上記ピペットチップの先端が遠心管の底部に生じたペレットに触れる直前の高さ位置まで複数回繰り返すことで、上澄みを回収するようにする手法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−190025号公報
【特許文献2】特開昭53−42796号公報
【特許文献3】特開2009−145260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、導電性のナノ粒子を含有するナノインク中に印刷に不適正な大きな粒子径の凝集粒子が存在しているとしても、該凝集粒子は絶対的なサイズが小さく、又、ナノインク自体が粘性を有しているために、ナノインクを遠心分離処理しても、印刷に適正な粒子径のナノ粒子と、上記凝集粒子との沈降速度の差があまり大きくならない。
【0011】
そのため、上記導電性のナノ粒子を含有するナノインクについて、印刷に適正な粒子径のナノ粒子から、印刷に不適正な粒子径の凝集粒子を遠心分離処理によって分離するためには1万G以上の大きな遠心力を作用させる必要がある。
【0012】
しかも、上記導電性のナノ粒子として銀ナノ粒子を用いている場合は、該銀ナノ粒子が高価であることから、必要な量だけ効率的に調製して使用する必要がある。
【0013】
そのために、この種のナノインクの遠心分離処理は、小型バッチ式の遠心分離機を用いて行う必要がある。
【0014】
しかし、上記ナノインクは、たとえば、上記小型バッチ式の遠心分離機を用いて1万G、1時間の条件での遠心分離処理を施した後であっても、印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含む上澄みの領域と、印刷に不適正な大きな粒子径の凝集粒子を含む領域とは明確に分離せず、よって明確な界面も形成されないことから、現状では、ナノインクを遠心チューブに収納して小型バッチ式の遠心分離機で遠心分離処理した後、遠心チューブから、印刷に適正な粒子径の粒子を含む上澄みの領域と考えられる部分を、作業者が手作業で吸出して回収するようにしている。
【0015】
そのため、上記上澄みの領域の吸出し作業を手作業で行なうことに起因して、作業効率が悪いのはもとより、個々の作業者の技量の差に伴って、上澄みの領域として回収されるナノインクの量が変化するため、ナノインクの調製に要する作業の効率に個人差が生じると共に、回収後のナノインクの品質(分級品質)も均等にならないというのが実状である。
【0016】
なお、特許文献2に記載された手法は、血清による上澄みと、血餅による沈降物質との界面を光学的に検出する必要があるため、該界面で光の透過量が明らかに変化するという条件が必須である。これに対し、ナノインクは、上記したように、遠心分離処理後であっても印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含む上澄みの領域と、印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子を含む領域との間に明確な界面は形成されず、双方の領域で光の透過量にほとんど差が生じないため、ナノインクを収納して遠心分離処理した後の遠心チューブより、印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含む上澄みの領域を回収する場合に、特許文献2に示された手法を採用することはできない。
【0017】
又、特許文献3に記載された手法は、遠心管内の上澄みを、遠心管の底部に生じるペレットより分離して除去するためのものであるため、上記したような遠心分離処理後であっても印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含む上澄みの領域と、印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子を含む領域との間に明確な界面が形成されないナノインクから、上記上澄みの領域のみを回収する場合に適用することができるものではない。
【0018】
しかも、特許文献3に示された手法では、遠心管内の上澄みを回収するときに、空気が吸い込まれるようになるまで液体の吸入を行うようにしてあるが、この手法を遠心分離処理後のナノインクの上澄みの領域の回収に適用すると、回収されたナノインク中に気泡が混入されることになる。そのため、この気泡が混入された状態のナノインクを印刷装置におけるインキング装置で使用するときに、インク供給時に作用する供給圧力で気泡の体積が変化してしまう等の原因により、ナノインクの供給量を制御するときの制御性が悪くなる可能性も懸念される。
【0019】
そこで、本発明は、ナノ粒子を含んだナノインクを遠心分離処理した後の遠心チューブ内より、線幅を10μm程度とするような微細な印刷パターンの印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含んだ上澄みの領域を、印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子を含む領域より効率よく分離して自動的に回収することができるようにするためのナノインク調製方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブ内における液面位置を計測して、該遠心チューブ内におけるナノインクの液深を求め、次に、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と、液面位置を基に、該遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求め、次いで、上記遠心チューブに上方より挿入する吸出しノズルにより、上記上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸出して液体吸出し容器に回収するようにするナノインク調製方法とする。
【0021】
更に、上記構成において、吸出しノズルにより、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸い出すときに、吸出しノズルの先端が常に一定量ナノインクの液面下に潜るように吸出しノズルと遠心チューブの上下方向の相対変位を制御するようにする。
【0022】
又、請求項3に対応して、ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブを立てて保持するチューブ保持手段と、該チューブ保持手段に保持された遠心チューブ内のナノインクの液面の位置を計測する液面センシング手段と、上記チューブ保持手段に保持する遠心チューブの上方位置に昇降動作可能に配置した吸出しノズルと、上記吸出しノズルに接続した液体吸出し容器と、上記吸出しノズルを通してナノインクを上記液体吸出し容器へ吸い出すための吸出し力を発生させる吸出し力発生手段を備え、更に、上記液面センシング手段により計測された遠心チューブ内のナノインクの液面位置の計測結果を基に該遠心チューブ内のナノインクの液深を求める機能、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と液面位置を基に、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求める機能、及び、該求められた上澄み領域下限高さ位置上側に存在する上澄み領域に応じて、上記吸出しノズルの昇降を制御する機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するナノインク調製装置とする。
【0023】
更に、上記構成におけるコントローラは、吸出しノズルにより、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸い出すときに、吸出しノズルの先端が常に一定量ナノインクの液面下に潜るように、遠心チューブ内のナノインクの液面位置の変化に応じて吸出しノズルの昇降を制御する機能を備えるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブ内における液面位置を計測して、該遠心チューブ内におけるナノインクの液深を求め、次に、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と、液面位置を基に、該遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求め、次いで、上記遠心チューブに上方より挿入する吸出しノズルにより、上記上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸出して液体吸出し容器に回収するようにするナノインク調製方法、及び、ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブを立てて保持するチューブ保持手段と、該チューブ保持手段に保持された遠心チューブ内のナノインクの液面の位置を計測する液面センシング手段と、上記チューブ保持手段に保持する遠心チューブの上方位置に昇降動作可能に配置した吸出しノズルと、上記吸出しノズルに接続した液体吸出し容器と、上記吸出しノズルを通してナノインクを上記液体吸出し容器へ吸い出すための吸出し力を発生させる吸出し力発生手段を備え、更に、上記液面センシング手段により計測された遠心チューブ内のナノインクの液面位置の計測結果を基に該遠心チューブ内のナノインクの液深を求める機能、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と液面位置を基に、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求める機能、及び、該求められた上澄み領域下限高さ位置上側に存在する上澄み領域に応じて、上記吸出しノズルの昇降を制御する機能を有するコントローラを備えてなる構成を有するナノインク調製装置としてあるので、印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含み、且つ印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれていない状態のナノインクを自動的に回収することができる。よって、印刷に適したナノインクの調製に要する作業の効率を高めることができると共に、品質の揃ったナノインクを調製することができる。
(2)したがって、精密な印刷パターンの印刷に適したナノインクを調製するのに有利なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のナノインク調製方法及び装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1のナノインク調製装置のコントローラの利用可能割合設定部おいて利用可能割合の設定を行うための根拠となる考えとして、遠心分離処理後の遠心チューブ内における凝集粒子の粒子径の深度方向の分布を示す図である。
【図3】図1のナノインク調製装置を用いたナノインク調製方法の手順を示すもので、吸出しノズルの先端を、或る一定量、遠心チューブ内のナノインクの液面下に潜らせて配置させた状態を示す概要図である。
【図4】図1のナノインク調製装置を用いたナノインク調製方法における図3に続く手順を示すもので、遠心チューブ内のナノインクを、吸出し容器へ吸い出す状態を示す概要図である。
【図5】図1のナノインク調製装置を用いたナノインク調製方法における図4に続く手順を示すもので、利用可能割合設定部で設定された位置までのナノインクの吸出しを終了した後、吸出しノズルを退避させた状態を示す概要図である。
【図6】図1のナノインク調製装置のコントローラよるノズル高さの制御と吸出し速さの制御の関連を示す図である。
【図7】本発明の実施の他の形態を示すもので、ナノインク調製装置における液面センシング手段の別の例として、(イ)は超音波センサを、(ロ)はフロートセンサを、(ハ)はレーザセンサを、(ニ)は画像処理装置を、それぞれ採用した場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1乃至図6は本発明のナノインク調製方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0028】
すなわち、本発明のナノインク調製方法の実施に用いるナノインク調製装置は、図1に示すように、ナノインク1を収納して図示しない遠心分離機にかけることができるようにしてある遠心チューブ2を立てて保持するためのチューブ保持手段3と、該チューブ保持手段3に保持された遠心チューブ2内のナノインク1の液面の位置を計測する液面センシング手段4と、上記チューブ保持手段3に保持する遠心チューブ2の上方位置に配置した吸出しノズル5と、該吸出しノズル5を昇降動作させるための昇降動作機構6と、上記吸出しノズル5に接続した液体吸出し容器7と、上記吸出しノズル5を通してナノインク1を上記液体吸出し容器7内へ吸い出すための吸出し力を発生させる吸出し力発生手段8を備え、更に、上記液面センシング手段4より入力される上記遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置の計測結果の信号を基に、上記昇降動作機構6を動作させて上記吸出しノズル5の高さ位置の制御を行なう機能と、上記吸出し力発生手段8を制御する機能を有するコントローラ9を備えてなる構成とする。
【0029】
詳述すると、上記液面センシング手段4は、たとえば、上記チューブ保持手段3に保持される遠心チューブ2を中心として水平方向に180度対向する位置に、上下方向に延びる一対の投光器10と受光器11を設けてなる構成としてある。これにより、上記投光器10より上記受光器11へ向けての投光を、両者間に上記遠心チューブ2を挟んだ状態で行なうと、上記遠心チューブ2内に収納されているナノインク1の液面位置が高い場合は、上記受光器11における受光量が少なくなり、一方、遠心チューブ2内に収納されているナノインク1の液面位置が低い場合は、上記受光器11における受光量が多くなる。よって、上記液面センシング手段4では、遠心チューブ2内のナノインク1の液面の位置の高さと、受光器11における受光量との間の上記したような負の相関性に基づいて、上記受光器11で検出される受光量から、上記チューブ保持手段3に保持した遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置を計測できるようにしてあり、その計測結果の信号を、上記コントローラ9へ出力できるようにしてある。
【0030】
上記液体吸出し容器7は、上記チューブ保持手段3に保持する遠心チューブ2の上方に配置して、該液体吸出し容器7の下端に、上記吸出しノズル5の上端側を気密に接続した構成としてある。
【0031】
更に、上記液体吸出し容器7は、上記昇降動作機構6として、たとえば、上下方向(鉛直方向)に延びるよう配置して図示しない固定部に設置してあるリニアステージ6(便宜上、昇降動作機構6と同一の符号が付してある)に取り付けた構成として、該リニアステージ6による上記液体吸出し容器7の昇降動作に伴って、該液体吸出し容器7の下端に取り付けてある上記吸出しノズル5を昇降動作させることができるようにしてある。
【0032】
上記リニアステージ6は、該リニアステージ6の駆動源となるパルスモータ12にエンコーダ13を装備してなる構成として、該エンコーダ13により上記パルスモータ12の回転数を検出して、上記コントローラ9へ出力できるようにしてあるものとする。これにより、上記コントローラ9にて、上記リニアステージ6のエンコーダ13より入力される信号を基に、該リニアステージ6で昇降させる上記液体吸出し容器7の上下方向位置を検出し、更に、該検出された液体吸出し容器7の上下方向位置と、液体吸出し容器7及びその下端に取り付けてある上記吸出しノズル5の既知の形状データ(幾何学的データ)とを基に、吸出しノズル5の先端(下端)の高さ位置を検出できるようにしてある。
【0033】
上記液体吸出し容器7の上端側には、上記吸出し力発生手段8として、たとえば、減圧用のポンプ8(便宜上、吸出し力発生手段8と同一の符号が付してある)が、減圧用配管14を介して接続してある。
【0034】
上記コントローラ9は、利用可能割合設定部15と、ノズル液面潜り深さ設定部16を備えてなる構成とする。
【0035】
ここで、遠心チューブ2に収納した状態で遠心分離処理された後のナノインク1中に存在する粒子の粒子径と、その液深d方向の分布との関係について述べると、遠心分離処理に伴って、粒子径の大きな粒子は沈降し、この際、通常は粒子径が大きいほど沈降速度が大きくなることから、図2に示すように、液深dが小さい領域には、粒子径の大きな凝集粒子は存在せず、液深dが深くなるにしたがって、粒子径の大きな凝集粒子が存在するようになる。
【0036】
そこで、本発明では、予め、ナノインク1を、形状が既知の所定の遠心チューブ2に収納して、所定の遠心力(G)、所定の遠心時間の或る遠心処理条件、たとえば、1万G、1時間の遠心処理条件で遠心分離処理を行った後、該遠心チューブ2内の遠心分離処理されたナノインク1について、遠心チューブ2の内底面から該ナノインク1の液面までの高さ(液深)を100%と設定した場合に、上方から数%の高さ寸法となる領域、たとえば、5%の高さ寸法となる領域ごとに、領域内に存在するナノインクを順次サンプリングし、サンプリングされた各分画のナノインクを用いて実際と同様の精密印刷処理を行う試験をし、その試験印刷結果を基に、適正な印刷結果が得られた分画、すなわち、実際の精密印刷処理に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれていない分画が、液面より何%までの領域に存在しているかを判断し、その割合(%)を、上記或る遠心処理条件に対応する利用可能割合として上記利用可能割合設定部15に設定するようにしてある。
【0037】
更には、遠心処理条件における遠心力(G)と、遠心時間の条件をそれぞれ変化させた場合についても、上記と同様の手順により、実際の精密印刷処理に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれていない分画が、液面より何%までの領域に存在しているかをそれぞれ試験印刷の結果を基に判断して、その割合(%)を、それぞれの遠心処理条件と個別に対応する利用可能割合として設定して、上記利用可能割合設定部15に、種々の遠心処理条件と、該各遠心処理条件に個別に対応する利用可能割合とを関連付けたテーブルを記憶(蓄積)しておき、実際にナノインク1を遠心分離処理した場合に、そのときの遠心処理条件に対応する使用可能割合を、上記記憶してあるテーブルを基に求める機能を、コントローラ9に備えるようにしてもよい。
【0038】
なお、上記利用可能割合設定部15で設定された遠心処理条件に対応する利用可能割合は、遠心分離処理に供するナノインクが同一であれば、同一の利用可能割合の値を使用できる。ナノインクのロットが変わる等、遠心分離処理に供するナノインクの成分や性状が変化する場合は、そのナノインクについて、上記と同様の遠心分離処理と、遠心分離処理後の遠心チューブ内のナノインクについての上下方向の領域ごとのサンプリングと、サンプリングされた各分画のナノインクを用いた精密印刷処理の試験を行なって、改めて利用可能割合を設定するようにすればよい。
【0039】
又、遠心チューブ2内のナノインク1を吸出しノズル5により吸い出すときに、該吸出しノズル5の先端部を液面に潜らせる深さが少ないと、ナノインク1の粘性により、吸出しノズル5付近の液面レベルが低下して、吸出しノズル5が容易に空気を吸い込むようになることが考えられる。
【0040】
この点に鑑みて、本発明では、予め、上記吸出しノズル5を用いて遠心チューブ2内のナノインク1を或る速度で実際に吸い出す試験を行い、空気を吸い込むことなくナノインク1を継続して吸い出すことができるようにするために、上記吸出しノズル5の先端部をナノインク1の液面下に潜らせることが必要とされる最低限の量(深さ)を求めて、該求められた吸出しノズル5のノズル先端部の潜り量を、上記ノズル液面潜り深さ設定部16に設定するようにしてある。
【0041】
更には、上記吸出しノズル5を用いて遠心チューブ2内のナノインク1を実際に吸い出すようにする試験を、吸出し速度を変化させた条件についても行なうことで、それぞれの吸出し速度条件と、該各吸出し速度条件の下で空気を吸い込まないようにするために必要とされる吸出しノズル5のノズル先端部の潜り量とを関連付けたテーブルを、上記ノズル液面潜り深さ設定部16に記憶(蓄積)しておき、実際に遠心チューブ2からのナノインク1の吸出し処理を開始させるときに、そのとき設定されている吸出し速度に対応する吸出しノズル5のノズル先端部の潜り量を、上記記憶してあるテーブルを基に求める機能を、コントローラ9に備えるようにしてもよい。
【0042】
以下、上記コントローラ9の処理手順に沿って、本発明のナノインク調製方法を説明する。
【0043】
遠心チューブ2に収納したナノインク1について、図示しない遠心分離機を用いて、或る遠心処理条件、たとえば、1万G、1時間の遠心処理条件で遠心分離処理を行った後、上記遠心チューブ2がチューブ保持手段3に保持されると、上記コントローラ9は、液面センシング手段4より入力される計測結果の信号から明らかとなる上記遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置と、上記チューブ保持手段3によって保持された状態の遠心チューブ2の内底面の高さ位置の既知のデータとの差から、上記遠心チューブ2内のナノインク1について、液深dを求めるようにする。
【0044】
次に、上記コントローラ9は、上記利用可能割合設定部15より、上記1万G、1時間の遠心処理条件に対応する利用可能割合を、たとえば、x%として求めた後、該求められた利用可能割合x%と、上記遠心チューブ2内のナノインク1の液深dと液面位置の情報を基に、液面位置よりd・x/100寸法分下方となる位置として、実際の精密印刷に適正な粒子径のナノ粒子を含む上澄みの領域1aの下限、すなわち、上記上澄みの領域1aと、実際の精密印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子を含む領域1bとの境界となる高さ位置(以下、上澄み領域下限高さ位置と云う)hを求める。
【0045】
上記のようにして上澄み領域下限高さ位置hが求められると、上記コントローラ9は、リニアステージ6のパルスモータ12へ指令を与えて、図3に示すように、該リニアステージ6により、液体吸出し容器7と吸出しノズル5を下降させて、該吸出しノズル5の先端が上記遠心チューブ2内のナノインク1の上澄み領域1aの液面に没するように配置させる。
【0046】
この際、上記コントローラ9は、次の工程でナノインク1の吸出しを行なうときの吸出し速度に対応する吸出しノズル5のノズル先端部の潜り量の設定値を、上記ノズル液面潜り深さ設定部16で求める一方、上記遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置の情報と、前述したように、該コントローラ9にて上記リニアステージ6のエンコーダ13より入力される信号を基に検出できるようにしてある上記吸出しノズル5の先端(下端)の高さ位置の情報とから、吸出しノズル5の先端が上記遠心チューブ2内のナノインク1の液面に対して実際に没している潜り量を求めて、この実際の潜り量が、上記ノズル液面潜り深さ設定部16で求められた設定値と一致するように、リニアステージ6のパルスモータ12の運転制御を行って上記液体吸出し容器7及び吸出しノズル5の上下方向位置を制御するようにしてある。なお、上記コントローラ9は、上記リニアステージ6による上記液体吸出し容器7及び吸出しノズル5の上下方向位置の制御を行なう際、上記エンコーダ13より入力される信号に基づいて、リニアステージ6を常にフィードバック制御するようにしてあるものとする。
【0047】
次いで、上記コントローラ9は、上記吸出し力発生手段としてのポンプ8に指令を与えて運転を開始させることにより、該ポンプ8に減圧用配管14を介して接続してある上記液体吸出し容器7の内部を減圧させる。これにより、上記遠心チューブ2内のナノインク1を、上記吸出しノズル5を通して液体吸出し容器7の内部へ吸い出すようにさせる。
【0048】
この際、上記遠心チューブ2内では、上記吸出しノズル5によるナノインク1の吸出しに伴って、ナノインク1の液面位置が徐々に低下するようになる。このため、上記コントローラ9は、上記液面センシング手段4による遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置についてのリアルタイムの計測結果を基に、該遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置の低下に同期するように、図3に二点鎖線の矢印で示すように、上記リニアステージ6による上記液体吸出し容器7及び吸出しノズル5の下方への移動を行なわせるようにする。このことで、上記吸出しノズル5の先端が、上記ノズル液面潜り深さ設定部16で求められた設定値に一致する一定量で、ナノインク1の液面に常に潜る状態が維持されるようにする。これにより、上記遠心チューブ2内のナノインク1を、上記吸出しノズル5を通して液体吸出し容器7の内部へ吸い出す際に、空気を吸い込む虞が回避される。
【0049】
その後、上記のようにして遠心チューブ2内のナノインク1の上記吸出しノズル5による吸出しを継続して行うことに伴って、図4に示すように、該遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置の低下に応じて下方へ移動させるようにしてある上記吸出しノズル5の先端が、先に求めてある上澄み領域下限高さ位置hに近接するようになると、上記コントローラ9は、上記ポンプ8及びリニアステージ6のパルスモータ12に対して運転を停止させる指令を与えて、上記吸出しノズル5による遠心チューブ2内のナノインク1の吸出しを停止させると共に、該吸出しノズル5下方への移動も停止させる。
【0050】
なお、上記吸出しノズル5の先端が、上澄み領域下限高さ位置hに徐々に接近するときに、ナノインク1の吸出し速度が大きいと、該上澄み領域下限高さ位置hの下方に存在する粒子径の大きな凝集粒子を含む領域1bに存在しているナノインク1も吸出してしまう虞が大きくなる。この点に鑑みて、コントローラ9により、図6に示すように、吸出しノズル5の先端の高さ位置が、上記上澄み領域下限高さ位置hに或る程度近付くと、それ以降は、吸出しノズル5の先端の高さ位置が上記上澄み領域下限高さ位置hに近付くにしたがって、吸出しノズル5によるナノインク1の吸出し速度を徐々に低下させる制御を行なうようにすることが望ましい。
【0051】
これにより、上記遠心分離処理した後の遠心チューブ2内のナノインク1について、上記上澄み領域下限高さ位置hよりも上方となる上澄みの領域1aに存在するナノインク1のみが、自動的に上記吸出しノズル5を通して液体吸出し容器7内へ回収されるようになる。
【0052】
しかる後、上記コントローラ9は、リニアステージ6のパルスモータ12へ指令を与えて、リニアステージ6により上記液体吸出し容器7と吸出しノズル5を、上記チューブ保持手段3に保持してある遠心チューブ2に干渉しない上方位置へ退避させるようにしてある。
【0053】
したがって、その後は、上記チューブ保持手段3より上記上澄みの領域1aに存在していたナノインク1の回収が行なわれた遠心チューブ2を取り外した後、ナノインク1を収納した状態で図示しない遠心分離機にて遠心分離処理した後の別の遠心チューブ2を、上記チューブ保持手段3に新たに保持させると、上記と同様の手順により、チューブ保持手段3に新たに保持された遠心チューブ2内のナノインク1について、該遠心チューブ2内でのナノインク1の液面位置に応じて上澄み領域下限高さ位置hが定められた後、該上澄み領域下限高さ位置hよりも上方の上澄みの領域1aに存在するナノインク1のみが、吸出しノズル5を通して自動的に液体吸出し容器7内へ回収されるようになる。
【0054】
一方、上記チューブ保持手段3より取り外された上澄みの領域1aに存在していたナノインク1の回収が行なわれた後の遠心チューブ2は、そのまま図示しない遠心分離機により、たとえば、1万G、1時間の遠心処理条件で再び遠心分離処理にかけると、該遠心チューブ2内に残っているナノインク1中で、図2に示したと同様の粒子径に応じた沈降速度の差に基づいて、液深方向に粒子径の大きな凝集粒子の偏在が生じるようになる。したがって、この遠心分離処理後に、上記遠心チューブ2を、上記本発明のナノインク調製装置におけるチューブ保持手段3に再度保持させることで、残っているナノインク1の液面位置と、液深と、利用可能割合設定部15で求められる利用可能割合x%とから、上澄み領域下限高さ位置hが新たに設定された後、該新たに設定された上澄み領域下限高さ位置hよりも上方の上澄みの領域1aに存在するナノインク1を、吸出しノズル5を通して自動的に液体吸出し容器7内へ回収することができるようになる。したがって、1つの遠心チューブ2に収納されたナノインク1について、遠心分離処理と、上記本発明のナノインク調製装置による上澄みの領域1aに存在するナノインク1の回収とを交互に繰り返して行なうことにより、上記1つの遠心チューブ2に収納されたナノインク1より、遠心分離処理によって、上澄みの領域1aに存在するようになるナノインク1、すなわち、精密印刷に適正な粒子径のナノ粒子のみを含み、且つ精密印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれていないナノインク1を、効率よく回収することができるようになる。
【0055】
このように、本発明のナノインク調製方法及び装置によれば、精密印刷に適正な粒子径のナノ粒子のみを含み、且つ精密印刷に不適正な粒子径の大きな凝集粒子が含まれていないナノインク1を自動的に回収することができるため、上記精密印刷に適したナノインク1の調製に要する作業の効率を高めることができると共に、品質(分級品質)の揃ったナノインク1を調製することができる。
【0056】
よって、本発明のナノインク調製方法及び装置により調製したナノインクを、精密な印刷パターンの印刷に適したナノインクとすることができる。
【0057】
しかも、上記吸出しノズル5によって遠心チューブ2内のナノインク1の吸出しを行なうときには、該吸出しノズル5の先端が、遠心チューブ2内のナノインク1の液面に対し、上記ノズル液面潜り深さ設定部16で設定される潜り深さに潜るように保持されるため、上記吸出しノズル5を通して吸い出すナノインク1に気泡が混入する虞を低減できる。よって、本発明のナノインク調製方法及び装置により調製したナノインクを印刷装置のインキング装置に供することで、ナノインクの供給量を制御するときの制御性が悪くなる虞を回避する効果も期待できる。
【0058】
更に、上記液体吸出し容器7として、印刷装置のインキング装置におけるナノインク1のディスペンサ容器やナノインク1用のインクカートリッジを用いる構成とすることがより望ましい。かかる構成とすれば、本発明のナノインク調製装置で回収するナノインク1を、上記印刷装置のインキング装置で使用するときに、ナノインク1の詰め替え作業に要する手間を省くという効果が得られると共に、詰め替え時に生じる容器に残留するナノインク1のような無駄を抑制する効果も期待できる。
【0059】
上記実施の形態においては、液面センシング手段4として、投光器10と受光器11を備えた形式のものを使用する例を示したが、たとえば、図7(イ)に示すように超音波センサ17を用いて遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置を計測する構成、図7(ロ)に示すようにフロート式のレベルセンサ18を用いる構成、図7(ハ)に示すように、吸出しノズル5挿通用の穴を備えた反射板19を、遠心チューブ2内のナノインク1の液面に浮かべて、該反射板19までの距離をレーザセンサ20で検出することで、上記ナノインク1の液面位置を計測する構成、又は、図7(ニ)に示すように、チューブ保持手段3に保持させた遠心チューブ2をカメラ(CCDカメラ)21で撮影した画像を基に、図示しない画像処理装置で遠心チューブ2内のナノインク1の液面を求めるようにする構成としてもよい。更には、遠心チューブ2内におけるナノインク1の液面の位置を計測することができるようにしてあれば、いかなる形式の液面センシング手段4を採用してもよい。
【0060】
又、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、液体吸出し容器7として、吸出し力発生手段としての減圧用のポンプ8に接続する形式のものを示したが、下端に吸出しノズル5を接続したシリンジ型の液体吸出し容器7を採用してもよい。この場合、吸出し力発生手段8としては、上記シリンジ型の液体吸出し容器7内でプランジャ(ピストン)をスライドさせることができればよいため、たとえば、上記プランジャに連結したアクチュエータ等を吸出し力発生手段8として採用すればよい。
【0061】
液体吸出し容器7は、液体吸出し用の配管を介して、吸出しノズル5と接続した構成としてもよい。かかる構成とする場合は、昇降動作機構6に吸出しノズル5を取り付けて、該吸出しノズル5を昇降動作機構6により昇降させるようにすればよい。
【0062】
昇降動作機構6は、吸出しノズル5の先端部の高さ位置を、チューブ保持手段3に保持させた遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置に対応して制御できるようにしてあれば、アクチュエータや、その他、リニアステージ以外のいかなる形式の昇降動作機構6を採用してもよい。
【0063】
遠心チューブ2内からのナノインク1の吸出しを行なう際、該遠心チューブ2内におけるナノインク1の液面位置の変化を、液面センシング手段4により検出するものとして示したが、たとえば、図4に二点鎖線で示すようなナノインク1の吸出しを行なう液体吸出し容器7の近傍位置等、液体吸出し容器7側に、遠心チューブ2内より吸出しノズル5を通して該液体吸出し容器7へ吸出されたナノインク1の量をセンシングするための吸出し量センシング手段22を備えて、コントローラ9にて、該吸出し量センシング手段22によって検出される遠心チューブ2内より吸出しノズル5及び液体吸出し容器7内へ吸出されたナノインク1の量と、遠心チューブ2内の水平方向の断面積とを基に、該遠心チューブ2内で変化するナノインク1の液面位置を、演算によって求めるようにしてもよい。
【0064】
上記においては、吸出しノズル5を昇降可能に備えた形式について説明したが、吸出しノズル5の高さ位置を固定とし、チューブ保持手段3に保持した遠心チューブ2を昇降させることで、該遠心チューブ2内のナノインク1の液面に、上記吸出しノズル5を相対的に差し込むことができるようにした構成としてもよい。
【0065】
チューブ保持手段3は、遠心チューブ2を立てて保持することができると共に、液面センシング手段4による遠心チューブ2内のナノインク1の液面位置の計測に支障が生じないようにしてあれば、該チューブ保持手段3の形状やサイズ、遠心チューブ2を保持する部分の形状や保持形式は自在に変更してよい。
【0066】
銀ナノ粒子以外の導電性のナノ粒子を含んだナノインク1に適用してもよい。
【0067】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 ナノインク
1a 上澄み領域
2 遠心チューブ
3 チューブ保持手段
4 液面センシング手段
5 吸出しノズル
7 液体吸出し容器
8 ポンプ(吸出し力発生手段)
9 コントローラ
15 利用可能割合設定部
d 液深
h 上澄み領域下限高さ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブ内における液面位置を計測して、該遠心チューブ内におけるナノインクの液深を求め、次に、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と、液面位置を基に、該遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求め、次いで、上記遠心チューブに上方より挿入する吸出しノズルにより、上記上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸出して液体吸出し容器に回収するようにすることを特徴とするナノインク調製方法。
【請求項2】
吸出しノズルにより、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸い出すときに、吸出しノズルの先端が常に一定量ナノインクの液面下に潜るように吸出しノズルと遠心チューブの上下方向の相対変位を制御するようにする請求項1記載のナノインク調製方法。
【請求項3】
ナノインクを収納して遠心分離処理した遠心チューブを立てて保持するチューブ保持手段と、該チューブ保持手段に保持された遠心チューブ内のナノインクの液面の位置を計測する液面センシング手段と、上記チューブ保持手段に保持する遠心チューブの上方位置に昇降動作可能に配置した吸出しノズルと、上記吸出しノズルに接続した液体吸出し容器と、上記吸出しノズルを通してナノインクを上記液体吸出し容器へ吸い出すための吸出し力を発生させる吸出し力発生手段を備え、更に、上記液面センシング手段により計測された遠心チューブ内のナノインクの液面位置の計測結果を基に該遠心チューブ内のナノインクの液深を求める機能、上記遠心分離処理の処理条件に対応させてナノインク中で印刷に不適正となる粒子径の凝集粒子が含まれない上澄み領域が形成される割合として予め定めてある利用可能割合と、上記遠心チューブ内のナノインクの液深と液面位置を基に、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置を求める機能、及び、該求められた上澄み領域下限高さ位置上側に存在する上澄み領域に応じて、上記吸出しノズルの昇降を制御する機能を有するコントローラを備えてなる構成を有することを特徴とするナノインク調製装置。
【請求項4】
コントローラは、吸出しノズルにより、遠心チューブ内のナノインクにおける上澄み領域下限高さ位置よりも上側に存在する上澄み領域のナノインクを吸い出すときに、吸出しノズルの先端が常に一定量ナノインクの液面下に潜るように、遠心チューブ内のナノインクの液面位置の変化に応じて吸出しノズルの昇降を制御する機能を備えるようにした請求項3記載のナノインク調製装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−61437(P2012−61437A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208736(P2010−208736)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】