説明

ナノファイバー、およびこのナノファイバーの作製方法

ナノファイバー、およびこのナノファイバーの作製方法について開示する。多孔質の金属酸化物ナノファイバー、および、エレクトロスピニング法によって作製された、金属ナノ粒子を含む多孔質の金属酸化物ナノファイバーについてさらに開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2008年7月31日に出願された米国特許出願第12/183,464号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、ナノファイバー、およびこのナノファイバーの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロスピニングは、ポリマー、複合材、およびセラミックを含んだ種々の材料からファイバーを加工する、簡単かつ汎用的な方法を提供することができる。エレクトロスピニングは、溶液からポリマーファイバーを加工するために使用されてきた。エレクトロスピニングを従来のプロセスと比較すると、粘弾性ジェットまたはガラス質繊維の直径を連続的に減少させるために機械力またはせん断力ではなく表面電荷間の静電反発力を使用することを除けば、微小ファイバーを延伸する点で類似している。エレクトロスピニングによれば、機械的延伸によるものよりも直径の小さいファイバーを生成することができるが、これは外部電場の印加によって伸長を増大させることができるためである。
【0004】
エレクトロスピニングに対する関心は年々高まっており、これは1つには、幅広い範囲のポリマー材料および無機材料をエレクトロスピニングすることができる能力によるものである。エレクトロスピニングに対する関心は、例えば、エレクトロスピニングプロセスから、ろ過媒体、防護服の吸着層、および電子機器へと広がっている。
【0005】
ナノファイバーおよびナノチューブは、小型構造であるにも拘らず表面積が大きく、かつ固有の金属/担体相互作用を有し、活性炭のような従来の担体とは異なる触媒挙動を示すことから、担体、例えば触媒担体としての潜在的用途で注目を集めてきた。
【0006】
金属元素の中で金は最も不活性であると考えられるが、その粒子サイズがナノメートル領域であるときに触媒活性を示し得る。様々な基体、例えば、様々な合成経路(ゾルゲル、堆積/沈殿、無電解析出)を使用して作製された、ZrO2、Al23、ゼオライト分子ふるい、TiO2などがこれまで金触媒用の担体として使用されている。それにもかかわらず、金ナノ粒子の触媒作用における使用は未だ十分に調査されておらず、特に高度に単分散された金触媒の生成に関する調査は完全ではない。
【0007】
金属ナノ粒子を含有したナノファイバーを作製する従来の方法は、既に生成されたナノ粒子を湿式含浸のようなプロセスによって取り込むものを一般に含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1以上の金属酸化物を含むナノファイバーを、エレクトロスピニングを用いて作製する方法があると有利であろう。得られるナノファイバーが多孔質であるとさらに有利となる。さらに、エレクトロスピニングによって作られた細孔内に金属ナノ粒子を含む、多孔質の金属酸化物ナノファイバーが得られると有利である。また、ナノファイバー細孔内の金属ナノ粒子が触媒であれば有利になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態によれば、ナノファイバーを作製する方法が提供される。この方法は、金属酸化物前駆体および溶媒を含む溶液を提供する工程、金属ナノ粒子前駆体を含むエマルションを提供する工程、この溶液、エマルション、還元剤、および共溶媒を混合して、金属ナノ粒子を含む混合物を形成する工程、この混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および相分離された混合物からナノファイバーを形成する工程を含む。
【0010】
別の実施形態によれば、細孔を有する金属酸化物担体を含み、かつ細孔内に分散された金属ナノ粒子を含む、ナノファイバーが提供される。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、ナノファイバーを作製する別の方法が提供される。この方法は、溶媒、酸化ジルコニウム前駆体、および酸化鉄(III)前駆体を含む溶液を提供する工程、この溶液を共溶媒と混合させて混合物を形成する工程、この混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および相分離された混合物から酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーを形成する工程、を含む。
【0012】
別の実施形態によれば、酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による、ナノファイバー、およびナノファイバーを作製する方法は、以下の利点のうちの1以上を提供する。その利点は、多孔質の金属酸化物ナノファイバーを合成する能力;高表面積および高アスペクト比を有するナノファイバーを合成する能力;多孔質の金属酸化物ナノファイバー内に金属ナノ粒子を取り込む能力;多孔質の金属酸化物ナノファイバー上に金属ナノ粒子を分散させ、このときナノ粒子の移動および凝集が従来方法と比べて減少する能力;および多孔質のナノファイバーに沿って単分散ナノ粒子を生成する能力;である。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明の中で明らかにされるであろうし、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかであろうし、あるいは書かれた説明およびその請求項の他、添付の図面において説明されたように本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0015】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、単に本発明の例示であり、かつ請求される本発明の本質および特性を理解するための概要または構想を提供することを意図したものであることを理解されたい。
【0016】
添付の図面は、本発明をさらに理解することができるように含まれているものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は1以上の本発明の実施形態を示し、そしてその記述とともに、本発明の原理および動作を説明するのに役立つ。
【0017】
本発明は、以下の詳細な説明から、あるいは、以下の詳細な説明と添付の図面から、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施の形態によるナノファイバーの走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図2】一実施の形態によるナノファイバーの透過型電子顕微鏡(TEM)写真
【図3】一実施の形態によるナノファイバーの透過型電子顕微鏡(TEM)写真
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本発明の種々の実施形態を詳細に参照する。可能な限り図面を通じ、同一または同様の特徴には同じ参照番号を使用する。
【0020】
本発明の一実施の形態は、ナノファイバーを作製する方法である。この方法は、金属酸化物前駆体および溶媒を含む溶液を提供する工程、金属ナノ粒子前駆体を含むエマルションを提供する工程、この溶液、エマルション、還元剤、および共溶媒を混合して、金属ナノ粒子を含む混合物を形成する工程、この混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および相分離された混合物からナノファイバーを形成する工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、この溶媒は高誘電率を有するものであり、ギ酸、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、メタノール、アセトニトリル、硝酸、ニトロベンゼン、アセトン、エタノール、アセチルアセトン、酢酸メチル、硫酸ジメチル、クロロアセトン、水、およびこれらを組み合わせたものの中から選択することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、この共溶媒は高蒸気圧を有するものであり、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、硝酸、メチレンクロライド、メタノール、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、およびこれらを組み合わせたものの中から選択することができる。
【0023】
この溶液は、ポリマーと界面活性剤をさらに含み得る。エマルションは、界面活性剤、有機相、および水相をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、エマルションはマイクロエマルションでもよい。いくつかの実施形態において、有機相は、シクロヘキサン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、鉱油、モータ油、トルエン、ペンタン、クロロホルム、メチレンクロライド、ヘプタン、シリコーン油、またはこれらを組み合わせたものを含む。
【0024】
溶液およびエマルションの両方に使用される例示的な界面活性剤として、Dow(商標)fax 2A1、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、Pluronic(商標)123、Tergitol(商標)TMN10、Brij(商標)98、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、Triton(商標)X−100、Span(商標)80、およびTween(商標)20が挙げられる。
【0025】
エマルション、例えば、逆ミセル合成で形成されたマイクロエマルションは、金属イオンが還元剤と接触して金属ナノ粒子を形成するのを促進する。このような油中水滴型エマルションは、ナノサイズの水滴が、連続的非極性有機媒体中に分散された界面活性剤分子の単分子層に囲まれた、熱力学的に安定した混合物である。ナノ粒子は、イオン性界面活性剤ベースの液滴と同じ電荷であることにより、さらにゾルゲル溶液中のPVPポリマーの安定化力により、マイクロエマルションのコア中で容易に凝集しない。これは、単分散ナノ粒子の作製に最適な微環境を提供する。
【0026】
結合官能基を有するポリマーを選択して、エマルション内の金属イオンまたは金属ナノ粒子と結合させることができる。金属イオンまたは金属ナノ粒子に結合させる適切な官能基として、1以上の、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミン基、アミド基、アミノ酸基、チオール基、スルホン酸基、ハロゲン化スルホニル基、ハロゲン化アシル基、ニトリル基、自由孤立電子対を有する窒素(例えば、ピリジン)、またはこれらを組み合わせたもの、またはこれらの誘導体が挙げられる。同様に使用可能なPVP以外のこのようなポリマーの例としては、いくつかの実施形態によれば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニル−2−ピリジン)、およびポリ(ビニル−4−ピリジン)が挙げられる。
【0027】
油中水滴型マイクロエマルション中の水滴のサイズは、水と界面活性剤の比率および連続媒体の性質によって制御することができる。塩基性媒体から酸性媒体に変化すると、ナノ液滴サイズは減少し得る。液滴サイズは、例えばエレクトロスピニングの実行時にジェットを伸長および吹付けする際、さらに減少する可能性がある。エレクトロスピニング中に液滴により生成された空隙、およびファイバーの連続的な多孔性によって、金属ナノ粒子、例えば金ナノ粒子はナノファイバーの長さに沿って確実に単分散される。これは、触媒として作用し得る金ナノ粒子とCOガス流との間の接触を促進し、したがって酸化プロセスを促進することになる。
【0028】
金属酸化物前駆体、例えば酸化鉄前駆体は、いくつかの実施の形態によれば、鉄(III)アセチルアセトナート、炭素原子数1〜8の鉄の低級直鎖または分枝鎖アルコキシド、例えば、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド、またはこれらを組み合わせたものを含む。金属酸化物前駆体、例えば酸化ジルコニウム前駆体は、いくつかの実施形態によれば、第一級アルコキシド、第二級アルコキシド、第三級アルコキシド、またはこれらを組み合わせたものを含む。第二級および第三級アルコキシド、例えば、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、tert−ブトキシド、メトキシド、またはエトキシドは、有機溶媒中で溶解度が増大するという利点を有する。
【0029】
金属ナノ粒子前駆体は、いくつかの実施形態によれば、金前駆体、白金前駆体、銅前駆体、パラジウム前駆体、ニッケル前駆体、またはこれらを組み合わせたものを含む。金前駆体は、塩化金酸(HAuCl4)、テトラクロロ金(III)酸カリウム(KAuCl4)、チオ硫酸金(I)ナトリウム、金(I)−グルタチオンポリマー、ジメチルアセチルアセトナート金(III)、金(I)チオレート錯体、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)、またはこれらを組み合わせたものとすることができる。
【0030】
相分離は、−25℃〜0℃、例えば−20℃〜−5℃、例えば−15℃〜−10℃の温度で混合物を冷却することにより達成することができる。温度が低くなると、溶媒および/または共溶媒の溶解力が減少し、溶液、エマルション、および/または混合物の1以上の成分が溶媒および/または共溶媒から分離することにより、相分離を誘導することができる。相分離されると、混合物は目に見えて濁ってくることがある。
【0031】
相分離された混合物からナノファイバーを形成する工程は、いくつかの実施形態によれば、エレクトロスピニングを含む。エレクトロスピニングでは、相分離された混合物を収容している容器に接続されたキャピラリに静電場を印加する。静電場の影響下で、キャピラリ先端から垂下した溶液または溶融物の液滴が円錐形、例えばテイラーコーンに変形される。
【0032】
電圧が閾値を上回ると、静電力が表面張力を超え、微粒子を充填したジェットが噴射される。ジェットは素早く動いて空気中を通り対電極に向かう。その高粘性および共重合体の相互作用により、ジェットは安定性を維持し、また円筒状の液糸に対して予想されるような球状の液滴に変化することはない。ジェットが空気中を進むと、溶媒が揮発し、帯電したナノファイバーが、対電極に位置付けられたコレクタ上に堆積されて残される。2以上のナノファイバーを形成してもよい。すなわち、1つの連続的なナノファイバーまたは複数のナノファイバーを堆積させて、不織布を形成することができる。いくつかの実施形態によれば、エレクトロスピニングは、帯電されたコレクタ上にナノファイバーを堆積させる工程を含む。コレクタは浮動的なコレクタでもよい。
【0033】
エレクトロスピニングプロセスにおいて、操作パラメータを変化させてもよく、例えば、ポンプ速度を0.06〜0.50mL/h;溶液温度を0℃〜−30℃;印加電圧(相分離された混合物および/またはコレクタに対する)を正極性5.0kV〜15kVおよび/または負極性1.0kV〜10.0kV;スピナレットと浮動コレクタとの距離を1.0cm/kVに調整;湿度を20%〜60%;およびノズルすなわちスピナレットの内径を150μm〜508μm、例えば30〜21ゲージとすることができる。
【0034】
一実施の形態において、この方法は、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変化させるため、相分離された混合物からナノファイバーを形成した後に、このナノファイバーを焼成する工程をさらに含む。焼成温度は、使用される有機物によって調整してもよい。いくつかの実施形態において、有機物は500℃前後で分解する。他の実施形態において、有機物は550℃前後で分解する。
【0035】
一実施の形態において、ナノファイバーは細孔を含み、かつ1以上の細孔の中に分散された金属ナノ粒子を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、この方法は、混合物を形成するために溶液、エマルション、および共溶媒を混合する前に、エマルションに、または溶液とエマルションとを合わせたものに、還元剤を加える工程をさらに含む。いくつかの実施の形態において、還元剤は、クエン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、尿素、ジボラン(B26)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、またはこれらを組み合わせたものを含む。
【0037】
別の実施形態は、ナノファイバーであり、このナノファイバーは、細孔を有する金属酸化物担体を含み、かつ細孔内に分散された金属ナノ粒子を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、このナノファイバーの直径は300nm以下、例えば200nm以下、例えば150nm以下である。いくつかの実施形態において、ナノファイバーの直径は10nm〜300nmであり、例えば40nm〜300nm、例えば40nm〜150nmである。ナノファイバーの直径は、その長さに沿って変化してもよいし、あるいは一定のままでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、金属酸化物担体は、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄(III)、またはこれらを組み合わせたものを含み、例えば、ナノファイバーは、酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態において金属ナノ粒子は、金、白金、銅、パラジウム、ニッケル、およびこれらを組み合わせたものの中から選択される。金属ナノ粒子は触媒活性を示すものでもよい。
【0041】
別の実施形態は、酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーである。このナノファイバーは、いくつかの実施形態ではエレクトロスピニングプロセスによって形成してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、このナノファイバーの直径は300nm以下、例えば200nm以下、例えば150nm以下である。いくつかの実施形態において、ナノファイバーの直径は10nm〜300nmであり、例えば40nm〜300nm、例えば40nm〜150nmである。ナノファイバーの直径は、その長さに沿って変化してもよいし、あるいは一定のままでもよい。
【0043】
多孔性、例えばナノファイバーのメソ多孔性は、熱的に誘発される相分離中の温度などのパラメータを調整することによって、また溶媒、共溶媒、界面活性剤および酸または塩基の合成の選択によって制御することができる。ナノファイバーのサイズは、高誘電率および高導電率を有する溶媒を用いることによって制御することができる。溶液成分の相対量の調整や成分選択は、ファイバーのモルフォロジー、例えばファイバサイズ、外部多孔性、および/または内部多孔性に影響を及ぼし得る。
【0044】
さらに別の実施形態は、ナノファイバーを作製する方法である。この方法は、溶媒、酸化ジルコニウム前駆体、および酸化鉄(III)前駆体を含む溶液を提供する工程、この溶液を共溶媒と混合させて混合物を形成する工程、この混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および相分離された混合物から酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーを形成する工程、を含む。
【実施例1】
【0045】
400mgの鉄(III)アセチルアセトンを量り、6.5mLのDMFを収容しているバイアルに入れた。これに2重量%のジルコニウム(IV)プロポキシド(65mg、鉄塩の重量基準)を加え、続いて100mgのPluronic123を加えた。最後に1200mgのPVPを計量して加えた。成分が溶解されるまで攪拌した(約2時間攪拌)。この溶液に1.5mLの共溶媒THFを計量して加え、その後さらに1.0時間攪拌して混合物を形成した。この混合物を−15℃に設定されたフリーザー内に12時間入れて相分離を熱的に誘導し、その後エレクトロスピニングを実行した。
【0046】
エレクトロスピニングのパラメータは以下のようであった。ノズルからコレクタまでの距離が15.0cm;印加電圧が10.0kV(正)および5.0kV(負)(相分離された混合物は正に帯電され、かつコレクタは負電圧であった);ポンプ速度が0.2mL/h;湿度が22%;温度が26℃;およびノズルの針サイズが25.0ゲージ。ナノファイバーの焼成(熱処理)を、室温から開始し10℃/minの速さで、空気中で500℃まで上昇させて実行した。温度を500℃で2時間保持し、その後10℃/minの速さで50℃に冷却した。得られたナノファイバーを、SEMを用いて分析した。実施例1において説明した方法に従って作製された、本発明の一実施の形態によるジルコニア安定化酸化鉄(III)ナノファイバー10を図1に示す。
【0047】
高誘電率を有する溶媒、すなわち本実施例ではDMFと、高蒸気圧を有する共溶媒、すなわち本実施例ではTHFが使用された。高誘電率溶媒は、金属酸化物前駆体溶液中のイオン電荷を安定させ(イオン凝集を抑圧し)、またジェットの伸長を高めて直径の小さいファイバーを生じさせる。この実施例において、ナノファイバーの平均直径は40nm〜140nmであった。
【0048】
表1は、ジルコニア安定化酸化鉄(III)ナノファイバーのN2脱離/吸着表面積の測定結果を示している。対応するポロシメトリー分析によれば、ジルコニア安定化酸化鉄(III)ナノファイバーは多孔質であり、BJH法による脱離の累積表面積は109.5m2/g、および細孔直径は128.8Åであることが示される。
【表1】

【実施例2】
【0049】
400mgの鉄(III)アセチルアセトンを量り、6.5mLのDMFを収容しているバイアルに入れた。これに2重量%のジルコニウム(IV)プロポキシド(65mg、鉄塩の重量基準)を加え、続いて100mgのPluronic123を加えた。最後に1200mgのPVPを計量して加えた。成分が溶解されるまで攪拌し(約2時間攪拌)溶液を形成した。
【0050】
金塩を含むエマルションを以下のように準備した。マイクロエマルションをH2O:シクロヘキサン:AOT(ジオクチルスルホコハク酸塩、ナトリウム塩)の重量比10:60:30で作製し、さらに20mgのHAuClを加え、その後1150rpmで攪拌した。
【0051】
得られたエマルションを溶液と混合させ、均質になるまでさらに攪拌した。還元剤である0.1Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を0.1mL加えることにより、エマルション内の金イオンを減少させた。これに1.5mLの共溶媒THFを計量して加え、その後さらに1.0時間攪拌して混合物を形成した。この混合物を−15℃に設定されたフリーザー内に12時間入れて相分離を熱的に誘導し、その後エレクトロスピニングを実行した。
【0052】
エレクトロスピニングのパラメータは以下のようであった。ノズルからコレクタまでの距離が15.0cm;印加電圧が10.0kV(正)および5.0kV(負);ポンプ速度が0.2mL/h;湿度が20%;温度が27℃;およびノズルの針サイズが25.0ゲージ。ナノファイバーの焼成(熱処理)を、室温から開始し10℃/minの速さで、空気中で500℃まで上昇させて実行した。温度を500℃で2時間保持し、その後10℃/minの速さで50℃に冷却した。得られたナノファイバーを、TEMを用いて分析した。
【0053】
図2は、実施例2において説明した方法に従って作製された、本発明の一実施の形態によるナノファイバー14を示したものであり、このナノファイバー14は、細孔を有する金属酸化物担体を含み、かつ細孔内に分散された金属ナノ粒子12を含む。この実施例では、細孔内に分散された金を有している、多孔質の酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーが図示されている。
【実施例3】
【0054】
500mgのアルミニウムトリ-sec-ブトキシドを量り、6.5mLのギ酸を収容しているバイアルに入れた。これに100mgのPluronic123を加えた。最後に1200mgのPVPを計量して加えた。成分が溶解されるまで攪拌した(約2時間攪拌)。
【0055】
金塩を含むエマルションを以下のように準備した。マイクロエマルションをH2O:シクロヘキサン:AOT(ジオクチルスルホコハク酸塩、ナトリウム塩)の重量比10:60:30で作製し、さらに20mgのHAuClを加え、その後1150rpmで攪拌した。
【0056】
得られたエマルションを溶液と混合させ、均質になるまでさらに攪拌した。還元剤である0.1Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を0.1mL加えることにより、エマルション内の金イオンを減少させた。これに1.5mLのTHFを計量して加え、その後さらに1.0時間攪拌して混合物を形成した。この混合物を−15℃に設定されたフリーザー内に12時間入れ、その後エレクトロスピニングを実行した。
【0057】
エレクトロスピニングのパラメータは以下のようであった。ノズルからコレクタまでの距離が15.0cm;印加電圧が10.0kV(正)および5.0kV(負);ポンプ速度が0.2mL/h;湿度が24%;温度が26.8℃;およびノズルの針サイズが25.0ゲージ。ナノファイバーの焼成(熱処理)を、室温から開始し10℃/minの速さで、空気中で500℃まで上昇させて実行した。温度を500℃で2時間保持し、その後10℃/minの速さで50℃に冷却した。得られたナノファイバーを、TEMを用いて分析した。
【0058】
図3は、実施例3において説明した方法に従って作製された、本発明の一実施の形態によるナノファイバー18を示したものであり、このナノファイバー18は、細孔を有する金属酸化物担体を含み、かつ細孔内に分散された金属ナノ粒子16を含む。この実施例では、金ナノ粒子が酸化アルミニウムナノファイバーに沿って極わずかに凝集して均一に分散される。
【0059】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかであろう。すなわち、本発明の改変および変形が添付の請求項およびその同等物の範囲内であれば、本発明はこのような改変および変形を含むと意図されている。
【符号の説明】
【0060】
10 ナノファイバー
12 金属ナノ粒子
14 ナノファイバー
16 金属ナノ粒子
18 ナノファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバーを作製する方法であって、
金属酸化物前駆体および溶媒を含む溶液を提供する工程、
金属ナノ粒子前駆体を含むエマルションを提供する工程、
前記溶液、前記エマルション、還元剤、および共溶媒を混合して、金属ナノ粒子を含む混合物を形成する工程、
該混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および、
前記相分離された混合物からナノファイバーを形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ナノファイバーを形成する工程が、エレクトロスピニングを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ナノファイバーであって、細孔を有する金属酸化物担体を含み、かつ該細孔内に分散された金属ナノ粒子を含み、前記ナノファイバーの直径が300nm以下であることを特徴とするナノファイバー。
【請求項4】
酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーであって、該ナノファイバーの直径が300nm以下であることを特徴とするナノファイバー。
【請求項5】
ナノファイバーを作製する方法であって、
溶媒、酸化ジルコニウム前駆体、および酸化鉄(III)前駆体を含む溶液を提供する工程、
該溶液を共溶媒と混合させて混合物を形成する工程、
該混合物の相分離を熱的に誘導する工程、および、
該相分離された混合物から酸化ジルコニウム安定化酸化鉄(III)ナノファイバーを形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−529437(P2011−529437A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521102(P2011−521102)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004208
【国際公開番号】WO2010/014158
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】