説明

ナノ多孔質炭素材料及びそれを使用するシステム及び方法

ナノ多孔質炭素単独と比較した場合、硬度、耐磨耗性、及び靱性からなる群から選択される特徴について、複合体に強化した性質を与える材料で少なくとも一部が充填される多数の細孔を有する多孔質炭素複合体。多孔質炭素材料は、また塩素ガス用の貯蔵媒体とも、又は例えば、水素燃料電池用の水素貯蔵媒体とも呼ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] 本発明は、流体貯蔵/分配用途に使用することができるナノ多孔質炭素材料、及びそれを使用するシステム及び方法、並びにトライボロジー用途に有用で、また超靱性構造材料として有用な含浸ナノ多孔質炭素材料に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
[0001] 米国特許法119条の規定により、「CARBONACEOUS MATERIALS USEFUL FOR FLUID STORAGE/DISPENSING, DESULFURIZATION, AND INFRARED RADIATION EMISSION, AND APPARATUS AND METHODS UTILIZING SAME」に対するFrank Dimeo Jr.他の2006年1月30日付けの米国仮特許出願第60/763,258号の優先権を主張する。上記米国仮特許出願の開示の全文を、すべての目的のために参照により本明細書に組み込むものとする。
【0003】
[0003] 炭素質材料は、流体の浄化、流体の貯蔵分配、及び流体の濾過を含む多くの用途において流体吸着媒体として使用される。
【0004】
[0004] 商業上の重要な1つの特定の用途は、流体の貯蔵分配システムである。この場合、炭素質吸着剤は、吸着された状態で流体を吸着保持し、流体の熱的脱着を行うための加熱、流体の脱着を行うための減圧、及び/又は流体の脱着及びキャリア流体内にそれを飛沫同伴させるために、その上に吸着された流体を有する吸着剤と接触した状態でキャリア・ガスを流すこと等により、濃度勾配を引き起こして適当な分配状態で分配するためにこの流体を解放するために使用される。
【0005】
[0005] 「Gas storage and dispensing system with monolithic carbon adsorbent」という名称のJ.Donald Carruthersの2004年6月1日付けの米国特許第6,743,278号に、流体貯蔵及び分配システムが開示されている。その開示は、すべての目的のためにその全文を参照により本明細書に組み込むものとする。この特許は、下記の特徴、すなわち、(a)吸着剤のリットル当たり400グラムのアルシンより大きい25℃及び650トールの圧力でアルシン・ガスに対して測定した充填密度、(b)約0.3〜約0.72ナノメートルの範囲内のサイズ、及び2ナノメートル未満の直径のミクロ細孔を含む全体の細孔の少なくとも20%を有するスリット状の細孔を含む吸着剤の全体の細孔の少なくとも30%、(c)1000℃未満の温度で熱分解及び任意の活性化により形成され、立方センチメートル当たり約0.80〜約2.0グラムのかさ密度を有することのうちの少なくとも1つを特徴とするモノリシック炭素物理吸着剤について開示している。
【0006】
[0006] 流体の貯蔵分配システムの他に、炭素は従来補強媒体のような高強度複合体の構成要素として使用されてきた。さらに、炭素は、種々のトライボロジー用途に有用なガラス状炭素複合体中の連続媒体として、複合体用途に用いられているが、非常に脆いという固有の欠点を有するため、ひび割れを起こしたり、物理的な完全性を失ったりすることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] 本発明は、流体貯蔵/分配用途に使用することができるナノ多孔質炭素材料、及びそれを使用するシステム及び方法、並びにトライボロジー用途に有用で、また超靱性構造材料として有用な含浸ナノ多孔質炭素材料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 一態様においては、本発明は、硬度、耐磨耗性、及び靱性からなる群から選択される特性についてナノ多孔質炭素単独である場合と比べて強化した性質を複合体に与える材料で少なくとも一部が充填される多数の細孔を有するナノ多孔質炭素を含むナノ多孔質炭素複合体に関する。
【0009】
[0009] 他の態様においては、本発明は、このようなナノ多孔質炭素複合体を含む水素貯蔵システムに関する。
【0010】
[0010] さらに他の態様においては、本発明は、ナノ多孔質炭素複合体を含む水素燃料エネルギー生成システムに関する。
【0011】
[0011] さらに他の態様においては、本発明は、多孔質炭素を含む塩素ガス貯蔵システムに関する。
【0012】
[0012] 他の態様においては、本発明は、硬度、耐磨耗性、及び靱性からなる群から選択される特性についてナノ多孔質炭素単独である場合と比べて強化した性質を複合体に与える材料で、ナノ多孔質炭素の多数の細孔の少なくとも一部を充填する工程を含む複合体を製造するための方法に関する。
【0013】
[0013] 他の態様においては、本発明は、ホウ素を含むナノ多孔質炭素を含む水素貯蔵媒体を使用することを含む、分配のために水素を貯蔵するための方法に関する。
【0014】
[0014] さらに他の態様においては、本発明は、ホウ素を含むナノ多孔質炭素を含む水素貯蔵媒体を使用することを含む、エネルギーを発生するための方法に関する。
【0015】
[0015] さらに他の態様においては、本発明は、多孔質炭素上に吸着された状態で塩素ガスを保持する工程を含む、塩素ガスを貯蔵するための方法に関する。
【0016】
[0016] 下記の開示及び添付の特許請求の範囲を読めば、本発明の他の態様、特徴及び実施形態をよりよく理解することができるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[0019] 本発明は、摩擦及び超靱性構造材料用途に適していて、流体貯蔵/分配用途に使用することができるナノ多孔質炭素材料に関する。本発明は、また、このようなナノ多孔質炭素材料を使用するためのシステム及び方法にも関する。
【0018】
[0020] ある態様においては、本発明は、例えば、高耐磨耗性特性のトライボロジー材料として、衝撃靱性材料として、また装甲及び装甲貫通材料として種々の目的に適した複合体を得るために、補助材料で含浸されているナノ含浸炭素複合材料に関する。
【0019】
[0021] 含浸剤は、所与の用途に望まれる特性を有する複合体を得るために、炭素材料の多数の細孔内に導入される任意の適切な種類のものであってもよい。そのような目的のために、炭素材料は、簡単で効率的な方法で含浸を行うことができるよう十分に深くて材料全体に分散している細孔を含む多孔性を有するものであることが望ましい。例えば、炭素は、平均の細孔の直径が10nm未満である細孔を含むナノ多孔性を有することができる。比細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔の曲がりなどを、本発明における一般的な方法によって種々様々に変えることができることが分かっている。
【0020】
[0022] 炭素材料の多数の細孔に含浸させるために使用することができる具体な技術としては、溶液蒸着、蒸気蒸着、イオン注入等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0021】
[0023] 一実施形態において、含浸剤は、ポリマーを含む。このようなポリマー含浸用途の一例として、非常に靱性の高い衝撃装甲を作るために、ナノ多孔質炭素材料を、高分子量シリコン又はポリエチレン・グリコールのようなポリマーで含浸することができる。このような含浸材料を使用すると、材料への衝撃が増大すると、ポリマーが黒鉛プレート間に長い連鎖を形成し、そのため破損に対して強靱になる。
【0022】
[0024] 別の方法としては、長鎖アラミド繊維又はKevlar、PBO,Zorlon及びSpectraの商標で市販されている繊維のようなポリマー繊維を、含浸剤として使用することができる。このような含浸の目的は、ナノ細孔へのポリマーの浸透を達成して、複数のアンカーポイントと高強度繊維の三次元アレイを提供し、破損に強い靱性を有する材料を得ることである。このように含浸された材料は、重量が軽減し、強度が増大し、未硬化の状態で成形構造体を形成することができ、これにより独自に成形された衝撃靱性材料を得ることができるという利点がある。
【0023】
[0025] 他の実施形態においては、含浸材料は、硬質材料から選択される。「硬質」という用語は、上記高分子及び繊維のような「軟質」材料とは異なる固有の硬度及び靱性特性を有する材料を意味する。
【0024】
[0026] このような用途における含浸剤は、所望の特性を有する炭化物及び/又は他の反応生成物を形成するために、その場で炭素と反応する前駆体材料であってもよい。一例を挙げて説明すると、タングステンを、有機タングステン前駆体の気化等の適切な気相堆積技術により、タングステンの蒸気が炭素材料の細孔内に浸透し、堆積中及び/又はその後の材料の熱処理により、炭化タングステンに変換されるように、炭素材料のナノ細孔内に含浸させることができる。
【0025】
[0027] 炭化タングステンは、非常に密度の高い材料で、現在知られている最も硬質材料のうちの1つである。機械加工が難しいために、その使用は、今まで制限されてきた。このような困難は、細孔内に炭化タングステンを形成した後に、所望の寸法及び構造を有する完成品を提供する、最終的な所望の形状に成形した多孔質炭素物品を提供することにより克服することができる。炭素の多数の細孔は、例えば、後に高温状態で炭化タングステンをその場(in situ)形成するために、反応するタングステン系堆積物を細孔内に提供するために、タングステン・カルボニル又はタングステン・ヘキサフルオライドを使用する化学蒸着技術により浸透させることができる。
【0026】
[0028] このような炭素/炭化タングステン複合体は、例えば、装甲貫通兵器として使用するための発射体のような劣化ウラニウムの代替材料を提供するために製造することができる。現在、劣化ウラニウムは、このような装甲貫通用途に使用されているが、劣化ウラニウムは、武器用の使用から除外するようにという国際的努力の焦点となっている有毒物質である。
【0027】
[0029] より一般的に言えば、このような炭素の多数の細孔への含浸は、多数の細孔が多孔質炭素のある深さ又は寸法まで含浸され、又は含浸剤が多孔質炭素材料のある深さ又は寸法にわたって濃度勾配を形成するように拡散特性が使用される構造的傾斜材料を形成するために使用することができる。
【0028】
[0030] 本発明の特定の実施形態で有用であると思われる他の硬質含浸剤としては、鉛、チタン、アルミニウム、酸化アルミニウム、シリコン、酸化シリコン等があるが、これらに限定されない。
【0029】
[0031] 多孔質炭素材料の少なくとも一部の細孔を充填するように含浸剤を使用すれば、未硬化状態において種々様々な形態及び構造の形を生成することのできる、新しい複合材料を作り出すことができ、これを例えば、高密度装甲に有用な超硬質及び/又は高密度材料のような所望の形状及び/又は特性を有する材料に変換することができる。
【0030】
[0032] 本発明の他の実施形態において、多孔質炭素は、多くの水素を蓄えることができる水素貯蔵媒体を提供するためにホウ素を含む。ホウ素を含む多孔質炭素は水素を取り込むことができるので、水素は多孔質炭素により貯蔵され、分配状態の下でそこから解放され、例えば、水素燃料電池又は他の水素を使用する装置又はプロセスのために水素を供給する。このようにして、ホウ素を含む多孔質炭素は、水素を動力源とする車両のような用途に有用な高い負荷能力を有する水素貯蔵媒体を供給する。
【0031】
[0033] ホウ素は、任意の適切な方法及び任意の適切な技術で、多孔質炭素材料内に貯蔵することができる。好ましい一実施形態においては、ホウ素の少なくとも一部は、イオン注入により多孔質炭素材料内に導入され、ホウ素のイオン注入及び蒸気蒸着又は溶液蒸着技術の組合せを、所望の特性のホウ素含有炭素材料を生成するために使用することができる。
【0032】
[0034] 他の態様においては、本発明は、大気圧以下の貯蔵状態での塩素貯蔵媒体としての多孔質炭素の使用に関する。今まで、多孔質炭素は、この材料に吸着することができる種々様々な流体及びガス用の貯蔵媒体として使用されてきたが、塩素はこのような貯蔵用途の対象に考えられたことはなかった。何故なら、液体は、通常ガスより遥かに少ない容積しか占めず、塩素は通常、加圧された液体の形で貯蔵され、輸送されるからである。
【0033】
[0035] しかし、このような加圧された液体の形の塩素は、特に関連する塩素の量が多い場合には、安全性及び毒性の問題を生じる。例えば、2005年1月6日に、化学薬品を運んでいたNorfolk Southern Corp.社の貨物列車が、米国サウスカロライナ州Graniteville所在のAvondale Mills Plant近くで停車中の列車に衝突した。貨物列車が運んでいた化学薬品は、加圧された液体の形の塩素を含んでいた。衝突のため、有毒な塩素ガスが、衝突場所の周囲の空気中に広がり、それにより10人が死亡し、5000人が近くの住居から避難しなければならなかった。
【0034】
[0036] 塩素を多孔質炭素上に吸着質としてガスの形で貯蔵することは、一見、塩素の梱包の方法としては経済的に実行できないし、実用的でないように思われるが、大気圧以下の圧力でその上に吸着している塩素ガスを含む等量の多孔質炭素の収容能力と、加圧された液体塩素の保持している閉じ込められた容積の収容能力とを比較した場合、多孔質炭素の実際の収容能力は、高圧液体格納容積の収容能力より約30%高いという驚くべきことが分かった。
【0035】
[0037] 米国サウスカロライナ州Granitevilleの衝突現場での大災害の塩素の放出に適用した場合、大気圧より低い圧力で多孔質炭素吸着剤を含むチューブ・トレーラ・タイプの鉄道車両内で(Norfolk Southern Corp.社の貨物列車が運んだのと)同じ量の塩素ガスを輸送すると、発生した死者及び損害を引き起こした高圧放出と比較すると、塩素の放出量は、約1/100,000に減少する。
【0036】
[0038] 加圧された液体塩素の対応する収容容積の能力と比較した場合に、多孔質炭素上でのガス状の塩素の貯蔵により達成することができる塩素貯蔵における収容能力が驚くほど改善するのは、収容容積が、貯蔵することができる加圧された液体塩素の量に限られるからである。というのも、収容容積の周囲温度の変化が、気化、ガス膨張、及び収容構造体の破裂を引き起こす恐れがあるからである。それ故、加圧された液体塩素を保持する収容容積は、収容容積を含んでいる環境の温度の上昇、並びに液体塩素による気化及びガス膨張に対応できるように設計し、使用しなければならない。
【0037】
[0039] しかし、大気圧以下で多孔質炭素上にガス状の塩素を貯蔵する場合には、塩素ガスは、物理吸着力により多孔質炭素吸着剤上に保持され、多孔質炭素吸着剤を含む容積を、加圧された液体塩素が保持される対応する容積により達成することができる容積よりも、大気圧以下において遥かに効率的に使用することができる。その結果、多孔質炭素上に吸着している塩素ガスの大気圧以下の圧力でのガス貯蔵状態の結果、高レベルの安全性の改善とともに、塩素の貯蔵能力の驚くべき及び予想もしなかった改善が達成される。
【0038】
[0040] それ故、貯蔵容積の単位当たりの塩素の収容能力の著しい改善とともに、加圧された液体塩素の従来技術の貯蔵及び輸送に関連する災害を避けるために、塩素ガスを、大気圧以下の圧力で吸着された状態で効率的に貯蔵することができる。使用する際には、適切な熱を媒介とする脱着技術、圧力勾配を媒介とする脱着技術、及び/又は濃度勾配を媒介とする脱着技術のうちのいずれかにより、塩素ガスが多孔質炭素吸着剤から容易に分配される。例えば、分配動作中に多孔質炭素から塩素を脱着するために真空ポンプを使用することができる。
【0039】
[0041] 塩素の他に、このような吸着剤ベースの貯蔵分配アプローチを、アンモニア、又はホスゲン、又は他の工業用ガスに適用することができる。
【0040】
[0042] ここで図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による含浸炭素構造部材10の斜視図である。含浸炭素構造部材10は、図の前表面14を有する本体部分12からなる。
【0041】
[0043] 含浸炭素構造部材10は、種々様々な種類の物品の構成部分であってもよい。このような部材は、例えば、長鎖アラミド繊維、又はKevler、PBO,Zorlon及びSpectraの商標で市販されている繊維、又は長鎖シリコーン又はポリエチレン・グリコール重合体、又は炭化タングステン又は他の金属炭化物で含浸される多孔質炭素から作ることができる。このような用途のための多孔質炭素は、構造部材の最終用途に適した、任意の適切な細孔サイズ、及び細孔サイズ分布の多数の細孔を有するように形成し、提供することもできる。
【0042】
[0044] 構造部材自身は、超靱性合成本体装甲、車両の装甲、バンパー部材又は衝撃要素のような種々様々な用途の任意のものに対して、又は軍需品の構造物又はコーティング用の密度の高い材料として、丈夫なノートブック・コンピュータ、携帯情報端末、極限スポーツ用時計、及び深海センサ組立体等用のケーシング材料として使用することができる。
【0043】
[0045] 含浸剤構成要素は、蒸気蒸着(化学蒸着、プラズマ接触等)、溶液蒸着、真空排気及び細孔の高圧含浸のような任意の適切な方法、又は多孔質炭素の多数の細孔内に補強成分又はその前駆体を効果的に導入する任意の他の技術により、多孔質炭素材料の多数の細孔内に蒸着することができる。
【0044】
[0046] 図2は、処理システム40内の流体使用施設50に流体を供給するように配置されている、本発明の一実施形態による流体貯蔵分配装置42の概略立面図である。
【0045】
[0047] 図に示した流体貯蔵分配装置42は、流体を使用する用途に対してガスのような流体を貯蔵分配する際に使用するための、煉瓦、ブロック、ディスク、シート又は他の形状の形をしていてもよい1つ又は複数の多孔質炭素吸着物品のような、不連続の形(例えば、ビーズ又はペレット)又はモノリシック・バルクの形に形成された多孔質炭素材料である吸着剤媒体48を含む流体貯蔵分配容器44を含む。
【0046】
[0048] 容器44は、容器44から流体を放出するために、ハンドホイール50の制御動作の下で、全開位置と全閉位置との間で並進することができる弁本体内の流れ制御弁要素(図示せず)を含む弁ヘッド組立体46にその上部のネック領域で接合している。弁ヘッドアセンブリの放出ポートに連結したライン52内の低圧力中に容器44の内部容積を露出するために弁を開くことにより、容器内の多孔質炭素吸着剤媒体上に吸着している流体は、脱着され、弁ヘッド内の弁と分配用の流体放出ライン52への放出ポートを通して流れる。
【0047】
[0049] 例えば、分配が、熱を媒介とする脱着、圧力勾配を媒介とする脱着、及び濃度勾配を媒介とする脱着からなる群から選択した少なくとも1つの分配様式を含む任意の適切な方法により流体を容器44から分配することができる。
【0048】
[0050] ライン52内の分配された流体は、流量制御ユニット54を通って流体使用施設56に流れる。流量制御ユニットは、例えば、レギュレータ、質量流量コントローラ、流量規制オリフィス、流量制御弁、ポンプ、コンプレッサ、ベンチュリ管、排出装置、流れ平滑サージ容器等のような任意の適切な流量制御装置又は流量変調要素を含むことができる。流量制御ユニットは、例えば、容器から流体を抽出するための真空ポンプを含むことができる。
【0049】
[0051] 流体使用施設56は、供給する特定の流体に適した任意の適切なタイプのものであってもよい。この施設は、例えば、製造プロセス施設、化学反応装置、分配又は混合施設等であってもよい。
【0050】
[0052] 本発明の一実施形態において、容器44内の多孔質炭素48は、例えば、ジボラン、ホウ化水素、又は他のホウ素源材料のような前駆体から多数の細孔内にホウ素をイオン注入することにより、炭素媒体の多数の細孔内に含浸したホウ素を含んでいて、水素ガス貯蔵媒体として機能する。分配条件下、水素は吸着剤媒体から脱着し、分配ライン52内に流れ、水素使用施設56に流れる。この水素使用施設は、水素燃料電池ユニットからできているものであってもよく、この場合、水素燃料は、例えば、車両推進のための電力出力を発生するために使用される。
【0051】
[0053] 本発明の他の実施形態においては、容器44内の多孔質炭素48は、塩素を貯蔵し、容器から塩素を選択的に分配するために、その上に吸着された塩素ガスを含む。図に示されたガス供給シリンダの代わりの容器を、塩素を動力で輸送するためのチューブ・トレーラ容器、又は鉄道車両用容器として構成することができる。多孔質炭素吸着剤媒体上に吸着状態で塩素をこのように収着により保持することにより、塩素は、従来技術の高圧ガス容器よりも、本質的により安全な状態に維持される。
【0052】
[0054] すでに説明したように、このような吸着剤ベースの貯蔵分配装置は、ホスゲン、アンモニア、又は他の工業用ガスを従来技術の高圧収容構造体よりも本質的により安全な形で貯蔵し、輸送するために、このようなガスに適用することができる。
【0053】
[0055] 本発明の特定の態様、機能及び例示としての実施形態を参照しながら今まで本発明を説明してきたが、本発明の使用はこれに制限されるものではなく、それどころか本発明の分野の通常の当業者であれば理解することができると思うが、本明細書内の開示に基づいて多数の他の修正実施形態、修正及び他の実施形態にも適用することができ、これらのものを含むことができることを理解することができるだろう。それに応じて、添付の特許請求の範囲に記載するように、本発明は、本発明の精神及び範囲内において、すべてのこのような修正実施形態、修正及び他の実施形態を含むものとして、広義に解釈すべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】[0017] 本発明の一実施形態による含浸炭素構造部材の斜視図である。
【図2】[0018] 流体使用施設に流体を供給するように配置されている、本発明の一実施形態による流体貯蔵分配装置の概略立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ多孔質炭素複合体であって、該複合体に、硬度、耐磨耗性、及び靱性からなる群から選択される特性について、ナノ多孔質炭素単独と比較して強化された特性を与える材料で少なくとも一部が充填される細孔を有するナノ多孔質炭素を含むナノ多孔質炭素複合体。
【請求項2】
前記強化された特性が、衝撃靱性を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項3】
前記細孔が、10ナノメートル未満の平均細孔直径を有する、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項4】
前記材料が、高分子材料を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項5】
前記高分子材料が、粘弾性材料を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項6】
前記粘弾性材料が、シリコーン類及びポリエチレン・グリコール類からなる群から選択される、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項7】
前記ナノ多孔質炭素が、全細孔の少なくとも30%が約0.3〜約0.72ナノメートルの範囲のサイズを有するスリット形状の細孔により構成され、全細孔の少なくとも20%が2ナノメーター未満の直径を有する細孔を含み、立方センチメートル当たり約0.80〜約2.0グラムのかさ密度を有するPVDC炭化材を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項8】
前記材料が、高分子繊維を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項9】
前記高分子繊維が、アラミド繊維を含む、請求項8に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項10】
前記強化された特性が、破壊靱性を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項11】
前記材料が、前記細孔内でその場(in situ)形成された反応生成物である、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項12】
前記材料が、炭化物材料を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項13】
前記炭化物材料が、炭化タングステンを含む、請求項12に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項14】
前記複合体が、勾配を有する、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項15】
前記複合体が、前記多孔質炭素中の深さ又は寸法方向に前記材料の存在に勾配を有する、請求項14に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項16】
前記材料が、鉛、チタン、アルミニウム、酸化アルミニウム、シリコン及び酸化シリコンからなる群から選択された材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項17】
前記複合体が、所定の成形又は機械加工された形状を有する、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項18】
前記材料が、イオン注入された材料を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項19】
前記イオン注入された材料が、水素と可逆的に相互作用する材料を含む、請求項18に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項20】
前記イオン注入された材料が、ホウ素を含む、請求項18に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項21】
請求項20に記載のナノ多孔質炭素複合体を含む水素貯蔵システム。
【請求項22】
請求項20に記載のナノ多孔質炭素複合体を含む水素燃料エネルギー発生システム。
【請求項23】
前記材料が、ホウ素を含む、請求項1に記載のナノ多孔質炭素複合体。
【請求項24】
多孔質炭素を含む塩素ガス貯蔵システム。
【請求項25】
その中に前記多孔質炭素を保持する内部容積を有する容器を含む、請求項24に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項26】
前記容器が、携帯容器である、請求項25に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項27】
前記容器が、動力車両用容器を含む、請求項25に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項28】
前記動力車両用容器が、鉄道コンテナ車を含む、請求項27に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項29】
前記動力車両用容器が、チューブ・トレーラ容器を含む、請求項27に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項30】
塩素ガスが、前記多孔質炭素上に吸着保持される、請求項24に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項31】
前記塩素ガスが、大気圧以下で保持される、請求項30に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項32】
塩素ガスの分配に適合した、請求項24に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項33】
前記分配が、熱を媒介とする脱着、圧力勾配を媒介とする脱着、及び濃度勾配を媒介とする脱着からなる群から選択される少なくとも1つの分配様式を含む、請求項32に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項34】
前記分配中に前記多孔質炭素からの脱着を生じさせる真空ポンプをさらに含む、請求項32に記載の塩素ガス貯蔵システム。
【請求項35】
複合体を製造するための方法であって、該複合体に、硬度、耐磨耗性、及び靱性からなる群選択される特性について、多孔質炭素単独と比較して強化された特性を与える材料でナノ多孔質炭素の細孔の少なくとも一部を充填する工程を含む方法。
【請求項36】
前記強化された性質が、衝撃靱性を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記多数の細孔が、10ナノメートルの未満の平均細孔直径を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記材料が、高分子材料を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記高分子材料が、粘弾性材料を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記粘弾性材料が、シリコーン類及びポリエチレン・グリコール類からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ多孔質炭素が、全細孔の少なくとも30%が約0.3〜約0.72ナノメートルの範囲のサイズを有するスリット形状の細孔により構成され、全細孔の少なくとも20%が2ナノメーター未満の直径を有する細孔を含み、立方センチメートル当たり約0.80〜約2.0グラムのかさ密度を有するPVDC炭化材を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記材料が、高分子繊維を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記高分子繊維が、アラミド繊維を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記強化された特性が、破壊靱性を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記細孔内部で反応生成物を形成するために、前記細孔内でその場(in situ)で、前記充填材料を反応させる工程を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記材料が、炭化物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記反応生成物が、炭化物を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記反応生成物が、炭化タングステンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも一部を充填する工程が、前記細孔内におけるタングステンの化学蒸着を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
勾配を有する複合体を形成する工程を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
前記複合体が、前記多孔質炭素中の深さ又は寸法方向に勾配を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記材料が、鉛、チタン、アルミニウム、酸化アルミニウム、シリコン及び酸化シリコンからなる群から選択されり材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項53】
所定の形状にするために、前記複合体を成形又は機械加工する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項54】
前記材料のイオン注入を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項55】
イオン注入された材料が、水素と可逆的に相互作用する材料を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
イオン注入された材料が、ホウ素を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ホウ素を含むナノ多孔質炭素を含む水素貯蔵媒体を使用する工程を含む、分配するために水素を貯蔵する方法。
【請求項58】
前記ホウ素が、前記ナノ多孔質炭素内にイオン注入される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ホウ素を含むナノ多孔質炭素を含む水素貯蔵媒体の使用を含むエネルギーを発生するための方法。
【請求項60】
塩素ガスを多孔質炭素に吸着状態で保持する工程を含む塩素ガス貯蔵方法。
【請求項61】
塩素ガスの保持を行うために、容器の内部容積内に前記多孔質炭素を配置する工程を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記容器が、携帯容器を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記容器が、動力車両用容器を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記動力車両用容器が、鉄道コンテナ車を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記動力車両用容器が、チューブ・トレーラ容器を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記塩素ガスが、大気圧以下で保持される、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記容器から前記塩素ガスを分配する工程をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記分配が、熱を媒介とする脱着、圧力勾配を媒介とする脱着、及び濃度勾配を媒介とする脱着からなる群から選択される少なくとも1つの分配様式を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記分配中に前記塩素ガスを真空排気する工程をさらに含む、請求項67に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−525258(P2009−525258A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553460(P2008−553460)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061256
【国際公開番号】WO2007/136887
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】