説明

ナノ微粒子複合体分散液の製造方法、及びナノ微粒子複合体分散液を含む樹脂組成物

【課題】ナノサイズの微粒子複合体が、高濃度で均一に分散され、かつ分散安定性が良好なナノ微粒子複合体分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の工程1〜工程4を有するナノ微粒子複合体分散液の製造方法。
工程1.第一の溶剤に、分散安定化剤として、特定の共重合体中に含まれるアミノ基と重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程;工程2.第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤で前記ナノ微粒子分散体を希釈する希釈工程;工程3.前記ブロック共重合体を架橋させてナノ微粒子複合体を形成させる複合体形成工程;工程4.前記ナノ微粒子複合体の第一の溶剤又は第二の溶剤を留去して分散液を濃縮させる濃縮工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ微粒子複合体分散液の製造方法、及び当該ナノ微粒子複合体分散液を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノサイズの微粒子が、その平均粒径に応じて様々な産業において用いられている。例えば、平均粒径が数nm〜数十nm程度の微粒子は、顔料、研磨剤、フィルム用フィラー、塗料用フィラー、磁性材料などに応用されている。このような産業において、微粒子の特性を有効に活用するためには、微粒子を凝集させないことが重要である。例えば、微粒子を他の材料で被覆した微粒子複合体として、マイクロカプセルが用いられている。
【0003】
従来、マイクロカプセルは、(i)化学的製造方法、例えば、(a)界面重合法(2種のモノマーもしくは反応物を分散相と連続相とに別々に溶解しておき、両者の界面において、モノマーを重合させて、壁膜を形成させる方法)、(b)懸濁重合法(水性媒体中で芯物質を溶解させた水媒体中に水不溶のモノマーを添加して、攪拌し、乳化剤のミセルにモノマーを取り込ませ、ミセル内でモノマーを重合して壁膜を形成させる方法)、(c)in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)や、(ii)物理化学的製造方法、例えば、(a)コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子溶液を高分子濃度の高い濃厚相と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)、(b)液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて複合エマルジョンとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)などによって製造されている。
【0004】
しかし、コアセルベーション法などの物理化学的製造方法では、化学的な架橋を利用せず、高分子化合物の溶解・析出を利用する製造方法であるため、耐熱性、耐溶剤性に劣るといった問題があった。また、化学的製造方法では、ナノオーダーでのカプセル化が難しく、粒径が100nm以下のものが得られない、主に水溶媒中で製造するため、溶媒の再置換、乾燥などの工程が付加的に必要となる、さらに重縮合反応、重付加反応などの反応条件が高温となる、といった問題があった。
【0005】
特許文献1では、分散剤が(A)含窒素マクロモノマー(N−アシルアルキレンイミン)、(B)窒素を含有しないマクロモノマー(PMMA等)、(C)溶媒との溶解度パラメータ差がΔsp>1.0のモノマー(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)からなる共重合体で、モノマー(C)が溶解する溶媒で顔料を分散し、モノマー(C)が溶解しない溶媒を添加しモノマー(C)が溶解する溶媒を留去して濃縮することで、分散剤の(C)ユニットを顔料表面に析出させることにより、顔料表面を樹脂被覆することが開示されている。しかしながら、化学的な架橋を利用せず物理的吸着を利用しているので、溶媒によっては顔料表面の樹脂が剥離して分散性が悪くなったり、形成される塗膜の耐溶剤性が低下したりする恐れがある。
【0006】
特許文献2では、界面重合法を改良し、非水媒体中で疎水性の繰り返し単位のブロックと親水性の繰り返し単位とを有するブロックポリマーを保護コロイドとして用いることで、2種類の反応性モノマーのうち、一方を芯物質と共に保護コロイド中に包含し、一方を上記保護コロイドが分散した溶媒中に添加することにより、上記保護コロイドの界面で、上記2種類の反応性モノマー同士を反応させる方法が開示されている。この方法によれば、上記反応性モノマーが上記保護コロイド内に包含されることにより、上述した化学的方法で見られるような粒径が大きくなりすぎるなどの問題を抑えることができる。しかしながら、上記方法では、非水媒体がアルカン類や芳香族炭化水素類に限られるといった問題があった。
また、上記以外の微粒子複合体の製造方法としては、微粒子表面にポリマーをグラフト重合したものが提案されている(特許文献3)。しかしながら、上記方法では、粒子表面に官能基を有している必要があるため、芯物質が限定される、あるいは芯物質の表面改質が必要といった問題があった。
【0007】
また、本発明者らにより、非水媒体中に、(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルと塩を形成したブロック共重合体を溶解させた分散用液に微粒子を添加してナノ微粒子分散体を形成した後、前記(メタ)アクリロイル基同士を重合させてナノ微粒子複合体を得る方法が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−277506号公報
【特許文献2】特開平7−246329号公報
【特許文献3】特開平8−302227号公報
【特許文献4】特開2008−207093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4において本発明者らにより、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させるナノ微粒子複合体の製造方法が見い出されたが、ナノ微粒子の濃度を高くすると、(メタ)アクリロイル基同士を重合させる工程においてゲル化してしまい良好に複合体が形成されないという問題があった。そのため、高濃度のナノ微粒子複合体を含む均一かつ安定な分散液のために、更なる改良が望まれた。
【0010】
本発明は、このような状況下になされたものであり、ナノサイズの微粒子複合体が、高濃度で均一に分散され、かつ分散安定性が良好なナノ微粒子複合体分散液の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ナノ微粒子の分散媒体として沸点が異なる溶剤を2種類用い、分散安定化剤として特定の構造を有するブロック共重合体を用いて、ナノ微粒子を分散させ、ナノ微粒子が低濃度の状態で該ブロック共重合体の重合性基を反応させてナノ微粒子複合体を形成した後に、2種類の溶剤のうち低沸点溶剤を留去して濃縮することで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の工程1〜工程4を有するナノ微粒子複合体分散液の製造方法を提供する。
工程1.第一の溶剤に、分散安定化剤として下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程
工程2.第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加する希釈工程
工程3.前記ブロック共重合体における重合性基を反応させてナノ微粒子複合体を形成させる複合体形成工程
工程4.前記第一の溶剤又は第二の溶剤を留去して分散液を濃縮させる濃縮工程
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

[式(I)〜(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基、R及びR2’は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。
及びR4’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、R4’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、R11は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。但し、R及びR4’のうちいずれかは、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、且つ、R4’’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
は、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R5’で示される1価の基であり、且つ、R5’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
x及びaは1〜18の整数、y及びbは1〜5の整数、z及びcは1〜18の整数を示す。m及びnは1〜200の整数を示す。]
【0015】
本発明に係るナノ微粒子複合体分散液の製造方法においては、前記希釈工程により、ナノ微粒子分散体中の微粒子の濃度を10質量%以下とすることが、製造時のゲル化が抑制され、ナノ微粒子複合体が均一に高い安定性で分散されたナノ微粒子複合体分散液を得る点から好ましい。
【0016】
本発明に係るナノ微粒子複合体分散液の製造方法においては、前記第二の溶剤は、前記第一の溶剤と沸点が30℃以上異なるものであることが、濃縮しやすくなり、ナノ微粒子複合体が高濃度で均一に高い安定性で分散されたナノ微粒子複合体分散液を得る点から好ましい。
【0017】
本発明に係るナノ微粒子複合体分散液の製造方法においては、工程1における前記微粒子の平均粒径が、10〜100nmの範囲内であることが好ましい。上記微粒子の粒径が、10nm〜100nmの範囲内であることにより、上記ナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができるからである。上記ナノ微粒子複合体の粒径を微細なものとすることができる理由としては、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積し、安定なナノ微粒子分散体を形成することができ、さらにその状態で上記複合体形成工程を実施することが可能であるためである。
【0018】
本発明によれば、前記本発明に係るナノ微粒子複合体分散液の製造方法により製造されたナノ微粒子複合体分散液と、樹脂とを含む、樹脂組成物も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ナノサイズの微粒子複合体が、高濃度で均一に分散され、かつ分散安定性が良好なナノ微粒子複合体分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のナノ微粒子複合体分散液の製造方法は、
工程1.第一の溶剤に、分散安定化剤として下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程;
工程2.第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加する希釈工程;
工程3.前記ブロック共重合体における重合性基を反応させてナノ微粒子複合体を形成させる複合体形成工程;
工程4.前記第一の溶剤又は第二の溶剤を留去して分散液を濃縮させる濃縮工程を有する。
【0021】
本発明のナノ微粒子複合体分散液の製造方法において、工程2の第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加する希釈工程は、前記工程1の分散工程の後に行っても良いし、分散工程中に行っても良い。すなわち、工程1及び工程2を有する工程として、以下の工程1’であっても良い。
工程1’.第一の溶剤に、第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加し、分散安定化剤として下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程;
【0022】
本発明によれば、上記分散工程が、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、かつ上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いるものであることにより、上記ブロック共重合体が、上記微粒子表面に選択的に集積したものとすることができ、さらに上記微粒子表面の全体を覆うように存在するため、上記ナノ微粒子の分散性および分散安定性に優れたナノ微粒子分散体を形成することができる。
また、上記複合体形成工程において、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物の重合性基同士を架橋させることにより、上記ブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させることができるため、上記微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができ、上記ナノ微粒子分散体よりも上記微粒子の分散性および安定性により優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。また、重合性基同士の架橋によりブロック共重合体を上記微粒子表面に固定させるため、物理的吸着の場合と異なり耐溶剤性を有し、且つ、耐熱性も向上する。
【0023】
特に本発明においては、ナノ微粒子分散体の調製後に第一の溶剤とは沸点が異なる第二の溶剤でナノ微粒子の濃度を希釈するか、又は、ナノ微粒子分散体の調製時に第一の溶剤に沸点の異なる第二の溶剤を加えてナノ微粒子の濃度を希釈した状態で分散させ、ナノ微粒子が低濃度の状態で上記ブロック共重合体における重合性基を反応させる。ナノ微粒子が低濃度の状態で重合性基を反応させることにより分散液がゲル化することを防止できる。更に、重合性基を反応させてナノ微粒子複合体を形成した後に、2種類の溶剤のうち低沸点溶剤を留去することで、ナノ微粒子が高濃度でありながら、分散性と安定性が高いナノ微粒子複合体の分散液を得ることができる。
【0024】
なお、単一溶剤からなる希薄なナノ微粒子複合体分散液の溶剤の一部を留去して高濃度のナノ微粒子複合体分散液を得ることも、濃度調整は困難だが可能である。しかし、それに対し、本発明のように2種類の溶剤の溶剤を用いて低沸点溶剤を留去することにより高濃度のナノ微粒子複合体分散液を得る方法は、通常分散し難い溶媒であっても、分散し易い溶媒で分散してから上記工程によって分散し難い溶媒に溶媒置換することで安定な分散液が得ることができるというメリットがある。
以下、本発明のナノ微粒子複合体分散液の製造方法の各工程について説明する。
【0025】
[工程1.分散工程]
まず、本発明の工程1のナノ微粒子分散体を形成する分散工程について説明する。本工程は、第一の溶剤に、分散安定化剤として下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する工程である。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

[式(I)〜(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基、R及びR2’は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。
及びR4’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、R4’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、R11は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。但し、R及びR4’のうちいずれかは、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、且つ、R4’’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
は、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R5’で示される1価の基であり、且つ、R5’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
x及びaは1〜18の整数、y及びbは1〜5の整数、z及びcは1〜18の整数を示す。m及びnは1〜200の整数を示す。]
【0028】
<分散安定化剤>
本発明の分散工程に用いられる分散安定化剤は、前記特定のブロック共重合体である。以下本発明に用いられるブロック共重合体について説明する。
(ブロック共重合体)
本発明におけるブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに上記構成単位(1)が有するアミノ基と、上記一般式(III)及び/又は上記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体である。
【0029】
上記塩型ブロック共重合体からなるブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位(1)と、上記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有するものである。
上記一般式(I)において、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R及びR2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましい。
本発明においては、上記R及びR2’は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0030】
Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基である。ここで、上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。本発明においては、x、y、及びzが、上記の範囲内にあれば、微粒子の分散性を優れたものとすることができる。
このAとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。炭素数が1〜8の範囲内であれば、微粒子の分散性を良好に保つことができる。
【0031】
上記一般式(II)において、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rを示す。尚、アルキル基、アラルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。上記アルキル基は置換基を有していても良く、当該置換基としては、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、ニトロ基、水酸基等が挙げられる。
【0032】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜15が好ましく、更に7〜12が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0033】
上記R及びRは、前記と同じであり、Rは水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記Rで示したとおりである。
上記Rにおいて、x、y及びzは、前記Aで説明したとおりである。
また、上記一般式(II)で表される構成単位(2)中のRは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0034】
本発明において、上記Rとしては、なかでも、後述する第一の溶剤及び第二の溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記ブロック共重合体を構成する構成単位等によっても異なるが、上記第一の溶剤及び/又は第二の溶剤が、テトラヒドロフラン、トルエン等である場合には、メチル基、エチル基、ベンジル基等を用いることが好ましく、上記第一の溶剤及び/又は第二の溶剤が、ペンタン、ヘキサン等のより極性の低いものである場合には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等を用いることが好ましい。
ここで、上記Rをこのように設定する理由は、上記Rを含む構成単位(2)が、上記第一の溶剤及び第二の溶剤に対して溶解性を有し、上記構成単位(1)のアミノ基と、後述する有機酸化合物とが形成する塩形成部位が微粒子に対して高い吸着性を有するものであることにより、微粒子の分散性、及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
さらに、上記Rは、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。
【0035】
本発明に用いられる構成単位(1)のユニット数m及び構成単位(2)のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.5の範囲内であることがより好ましい。比率m/nが上記範囲内にあれば、上記構成単位(1)が有するアミノ基が形成する塩形成部位の割合が適切となるので、後述する微粒子に対する吸着性が良好となり、上記構成単位(2)による第一の溶剤及び第二の溶剤との溶解性が低くなることがなく、微粒子の分散性、及び安定性が低下することがない。
【0036】
本発明に用いられるブロック共重合体における、上記構成単位(1)のユニット数m及び構成単位(2)のユニット数nは、それぞれ1〜200の整数であればよく、特に限定されないが、上記mとしては、2〜50の範囲内であることが好ましく、5〜30の範囲内であることがより好ましい。また、上記nとしては、20〜100の範囲内であることが好ましい。
さらに、上記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜15000の範囲内であることがより好ましく、3000〜12000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、微粒子を均一に分散させることが可能となる。
【0037】
なお、上記重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0038】
本発明に用いられるブロック共重合体の結合順としては、上記構成単位(1)及び上記構成単位(2)を有し、後述する微粒子を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、上記構成単位(1)が上記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが好ましい。すなわち、上記構成単位(1)と、上記構成単位(2)とが、構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものであってもよく、構成単位(1)−構成単位(2)−構成単位(1)の順で結合したものであってもよく、構成単位(2)−構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものであってもよく、構成単位(1)−構成単位(2)が繰り返し結合したものであってもよいが、本発明においては、なかでも構成単位(1)−構成単位(2)の順で結合したものが好ましい。その理由は、後述する微粒子に対する吸着性に優れ、さらにこのようなブロック共重合体を用いた微粒子分散体同士の凝集を効果的に抑えることができるからである。
【0039】
(有機酸化合物)
前述した一般式(I)で表される構成単位(1)と、一般式(II)で表される構成単位(2)とを有するブロック共重合体の構成単位(1)が有するアミノ基と、塩を形成する有機酸化合物は、上記一般式(III)及び上記一般式(IV)で表される構造を有する化合物である。
本発明においては、上記有機酸化合物を用いることにより、後述する微粒子の分散性及び安定性に優れたものとすることができる。さらに塩形成部位を有することで、例えば本発明のナノ微粒子複合体分散液をカラーフィルタ用レジスト組成物などに適用した場合には、アルカリ現像時のアルカリ水溶液に対して高い溶解性を有することから、アルカリ現像性に優れたものとすることができる。
【0040】
上記一般式(III)において、R及びR4’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、R及びR4’のうちいずれかは、重合性基である。
尚、R、R4’ 及びR4’’が炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基である場合、置換基を有していてもよい。
【0041】
上記炭素数1〜18のアルキル基は、前記Rで示したとおりである。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
【0042】
上記R4’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
上記R4’’のうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記Rで示したとおりである。また、上記R4’’のうちの炭素数2〜18のアルケニル基は、前記R及びR4’で示したとおりである。
【0043】
上記R及びR10は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。Rは水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ビフェニル基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、R11は水素原子又は炭素数が1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基である。
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基は、前記Rで示したとおりである。上記炭素数2〜18のアルケニル基は、前記R及びR4’で示したとおりである。
【0044】
また、式(III)の有機酸化合物は重合性基を有するため、上記R及びR4’のうちいずれかは、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、且つ、R4’’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
上記R、R4’及びR4’’において、aは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、bは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。cは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0045】
上記一般式(IV)において、Rは、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R5’で示される1価の基であり、且つ、R5’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、前記R及びR4’で示したとおりである。また、上記R及びR10は、前記と同じである。
上記R及びR’において、a、b、及びcは、前記R、R4’、及びR4’’で説明したとおりである。
【0046】
上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物は、R及び/又はR4’、並びにRが重合性基であり、なかでもビニル基、アリル基あるいは−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、−O−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−O−[(CH−O]−Rであり、且つ、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが好ましく、特に、R及び/又はR4’、並びにRが、それぞれ独立にビニル基、アリル基、2−メタクリロイルオキシエチル基、2−アクリロイルオキシエチル基であるものが好ましい。
【0047】
本発明においては、上記有機酸化合物におけるR及び/又はR4’、並びにRが、重合性基を有するため、微粒子を分散後に、後述する複合体形成工程において、該有機酸化合物が有する重合性基同士を微粒子の近傍で架橋させることができる。その結果、微粒子の周囲にブロック共重合体が固定化され、微粒子がより均一かつ安定的に分散し、かつ分散時の微粒子複合体の平均粒径を小さく保つことが可能となる。
尚、上記一般式(III)及び一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明で用いられるグラフト共重合体における該有機酸化合物の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般に前記一般式(I)で表される窒素含有モノマー由来の構成単位に含まれるアミノ基に対して、0.05〜5.0モル当量程度であり、より好ましくは0.2〜2.0モル当量であることが好ましい。尚、上記有機酸化合物を2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。
【0049】
(塩型ブロック共重合体の製造)
本発明において、塩型ブロック共重合体の製造方法としては、前記の構成単位(1)と、構成単位(2)とを有し、かつ構成単位(1)が有するアミノ基と、前記の一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したものを製造することができる方法であればよく特に限定されない。本発明においては、例えば、前記の構成単位(1)および構成単位(2)を公知の重合手段を用いて重合した後、後述する第一の溶剤中に溶解または分散し、次いで該第一の溶剤中に上記有機酸化合物を添加し、攪拌することにより製造することができる。
上記重合手段としては、前記の構成単位(1)および構成単位(2)を所望のユニット比で重合し、所望の分子量とすることができる手段であればよく、特に限定されず、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を採用することができ、例えば、アニオン重合やリビングラジカル重合などを用いることができる。本発明においては、なかでも、「J.Am.Chem.Soc.」105、5706(1983)に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。この方法によると、分子量、分子量分布などを所望の範囲とすることが容易であるので、該分散剤溶液の分散性などの特性を均一にすることができる。
【0050】
分散体中における上記塩型ブロック共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる微粒子の種類などに応じて適宜選定されるが、後述する微粒子100質量部に対して、通常、5〜200質量部の範囲であり、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。塩型ブロック共重合体の含有量が上記範囲内にあれば、微粒子を均一に分散させることができる。
【0051】
<第一の溶剤>
本発明で用いられる第一の溶剤は、当該工程において少なくとも微粒子を分散させるのに用いられる溶剤である。本発明で用いられる第一の溶剤としては、上記ブロック共重合体の構成単位(2)が可溶性を示す媒体であれば特に限定されるものではないが、通常、非水媒体であり、比較的極性の低い媒体が用いられる。具体的には、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのジエチレングリコールアルキルエーテル類や、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジプロピレングリコールアルキルエーテル類などのジアルキレングリコールアルキルエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類や、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類などのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−3−メトキシブチルなどのエステル類;ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン類などが挙げられ、なかでもジエチレングリコール類、アルキレングリコールアルキルエーテル類、ジアルキレングリコールアルキルエーテル類、及びアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0052】
また、本工程に用いられる第一の溶剤は、溶解性の指標であるSP値(Solubility Parameter)が7〜12の範囲内であるものが好ましく、7〜11の範囲内であるものがより好ましく、9〜10の範囲内であるものがさらに好ましい。SP値が上記範囲内にあれば、上記ブロック共重合体においてアミノ基と、上記有機酸化合物とが形成している塩が、解離することがなく、上記第一の溶剤中で上記ブロック共重合体が完全に溶解することがない。その結果、後述するブロック共重合体の微粒子表面への選択的な集積する特性が低くなることもない。
ここで、SP値(単位:(J/m1/2)とは、お互いの分子間の引き合う力、すなわち凝集エネルギー密度CED(Cohensive Energy Density)の平方根で表されるものである。ここで、CEDの定義は、1cmのものを蒸発させるのに要するエネルギー量(単位:J/m)である。
【0053】
<微粒子>
本発明で用いられる微粒子としては、上記第一の溶剤及び第二の溶剤に対して不溶であるものであれば特に限定されるものではない。このような微粒子としては、例えば、無機・有機の顔料、金属粉末、樹脂製造用のモノマー成分、化粧品、医薬品、微生物、細胞などが挙げられる。
【0054】
微粒子の平均粒径は、用途などに応じて適宜選択しうるものであるが、本発明のナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させるという効果を有効に活かす観点から、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上記微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0055】
<その他の成分>
ナノ微粒子分散体を形成する際には、必要に応じて本発明の効果を妨げない範囲において、分散補助樹脂や、他の成分を含んでいても良い。添加剤として、ナノ微粒子複合体の用途に応じて適宜選択され、例えば界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
分散補助樹脂とは、微粒子の分散性を補助する機能を有する樹脂をいう。例えば、分散補助樹脂の立体障害によって微粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することや、その分散安定化効果によって分散安定化剤としての上記ブロック共重合体を減らす効果がある場合がある。分散補助樹脂としては、エポキシ基や重合性基などの反応性基を含まないものであれば適宜選択して使用することができ、例えば、アルカリ可溶性樹脂などを挙げることができる。
【0056】
<ナノ微粒子分散体の形成>
前記第一の溶剤に、必要に応じて後述する第二の溶剤を添加し、前記分散安定化剤である塩型ブロック共重合体を用いて、前記微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する。上記第一の溶剤に、必要に応じて添加する第二の溶剤と、前記分散安定化剤と、前記微粒子とを順次又は同時に添加して、その後微粒子を分散しても良いが、上記第一の溶剤中に前記分散安定化剤を均一に溶解または分散した分散剤溶液を調製し、その後当該分散剤溶液に必要に応じて後述する第二の溶剤を添加し、微粒子を添加して分散することが好ましい。上記分散剤溶液の調製方法としては、前記分散安定化剤を均一に溶解または分散することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば(i)第一の溶剤中に上記塩型ブロック共重合体を添加した後、分散を行う方法、(ii)第一の溶剤中に、上記構成単位(1)および上記構成単位(2)を重合したもの(上記ブロック共重合体)を溶解させて、次いで、上記有機酸化合物を添加し、塩を形成させることにより塩型ブロック共重合体を形成させる方法、などが挙げられる。
【0057】
工程1で形成されるナノ微粒子分散体は、少なくとも第一の溶剤中で、微粒子の表面にブロック共重合体が集積したものである。本発明においては、ブロック共重合体が有する構成単位(2)が上記第一の溶剤に可溶性を有し、構成単位(1)に含まれるアミノ基と有機酸化合物とが形成する塩形成部位が第一の溶剤に対して不溶であるため、微粒子を分散剤溶液に添加した際に、ブロック共重合体が微粒子の表面に選択的に集積することができる。そのため、微粒子の分散性及び安定性に優れたナノ微粒子分散体が形成される。
【0058】
ナノ微粒子分散体は、公知の攪拌・分散手段によって、微粒子を分散することにより形成することができる。攪拌、あるいは分散において採用される分散機としては、例えば2本ロール、3本ロールなどのロールミル、ボールミル、振動ボールミルなどのボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミルなどのビーズミルなどが挙げられる。ビーズミルを用いる場合、使用するビーズ径は、0.03mm〜2.0mmが好ましく、より好ましくは0.1mm〜1.0mmである。
【0059】
ナノ微粒子分散体中のナノ微粒子の平均分散粒径は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。後述するナノ微粒子複合体の平均粒径を小さいものとすることができるため、上記微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。
なお、上記ナノ微粒子分散体のナノ微粒子の平均分散粒径は、レーザ散乱法により測定した値である。具体的には、ナノ微粒子分散体にレーザ光線を当てて得られた散乱光を捕捉し、演算することにより、平均粒径を測定する。
【0060】
当該分散工程における微粒子のナノ微粒子分散体中の含有量は、上記第一の溶剤、及び必要に応じて添加された第二の溶剤中で均一に分散することができれば特に限定されるものではなく、用途などによって異なるものであるが、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、1〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。微粒子の含有量が上記範囲内にあることにより、微粒子を均一に分散することが可能となる。
【0061】
[工程2.希釈工程]
本工程は、第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加する工程であり、当該工程により、微粒子濃度を希釈することができる。後述する複合体形成工程の重合性基を互いに架橋させる時に、ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度を低くすることを目的とするので、当該希釈工程は、後述の複合体形成工程の前に行うことが好ましい。複合体形成工程の前であれば、当該希釈工程は、ナノ微粒子分散体を形成する分散工程の後であっても、ナノ微粒子分散体を形成する分散工程中に行われても良い。更に、当該希釈工程は、ナノ微粒子分散体を形成する分散工程中と、ナノ微粒子分散体を形成する分散工程後の両方に行われても良い。
【0062】
本発明で用いられる第二の溶剤は、第一の溶剤と沸点が異なる溶剤の中から適宜選択されるものであり、第一の溶剤及び第二の溶剤のいずれかのうち、より低沸点の溶剤を留去してナノ微粒子複合体を形成後に微粒子濃度を高くするために用いられるものである。従って、第二の溶剤としては、少なくとも微粒子の分散性を妨げない溶剤である必要があり、第一の溶剤と同様に微粒子を分散させるのに適した溶剤を用いることが好ましい。
本発明で用いられる第二の溶剤としても、上記ブロック共重合体の構成単位(2)が可溶性を示す媒体であれば特に限定されるものではないが、通常、非水媒体であり、比較的極性の低い媒体が用いられ、上記第一の溶剤で挙げたものから適宜選択して用いることができる。
【0063】
第二の溶剤は、前記第一の溶剤と沸点が30℃以上異なるものであることが好ましく、更に50℃以上異なるものであることが好ましい。第一の溶剤と第二の溶剤の沸点の差が小さすぎると、いずれかの溶剤の留去を安定的に行うことが困難になる恐れがある。
【0064】
第一の溶剤と第二の溶剤のどちらをより低沸点溶剤とするかや、第一の溶剤と第二の溶剤の使用量は、最終的に得るナノ微粒子複合体分散液の濃度等により、適宜選択される。例えば、分散体を形成するのに好適な濃度よりも更に高濃度としたい場合には、第一の溶剤として、第二の溶剤よりも低沸点溶剤を用いて、第二の溶剤を第一の溶剤より少量添加し、第一の溶剤を後述の濃縮工程で留去するようにする。また、例えば、極性がやや高い溶媒の場合は、塩形成部位の微粒子表面へ吸着力が弱くなるので、まず極性の低い溶媒で分散して、重合により固定化させてから溶媒置換することで、極性溶媒中での分散剤の離脱による分散安定性の低下を抑制できる。
【0065】
当該希釈工程により、微粒子濃度を希釈する程度は、上記ブロック共重合体の重合性基の含有量によっても異なり、適宜選択することが好ましい。例えば、後述の複合体形成工程を行う際のナノ微粒子分散体中の微粒子濃度は10質量%以下とすることが好ましく、更に8質量%以下とすることが好ましい。このような微粒子濃度の場合には、重合性基を反応させる際にゲル化が起こり難くなり、良好なナノ微粒子複合体を形成することができる。
【0066】
[工程3.複合体形成工程]
本工程においては、前記ブロック共重合体における重合性基を反応させることにより、ブロック共重合体を微粒子表面に固定させることができるため、ナノ微粒子分散体と比べて分散性と安定性とに優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
【0067】
また、上記ナノ微粒子分散体を形成するブロック共重合体が、微粒子表面に選択的に集積し、かつ微粒子表面の全体を覆うように存在することから、ナノ微粒子複合体の粒径を小さくし、かつ微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。このことから、本発明で得られるナノ微粒子複合体は、例えば、複合体分散液から取出し、乾燥した後に、用途に応じた溶媒に再分散させることもできる。
さらに、本工程においては、ブロック共重合体が架橋することでナノ微粒子複合体を形成するものであり、溶媒への溶解度の差を利用して析出させることによるものではないため、その後用いる溶媒や組み合わせる成分によって微粒子表面の高分子が剥離したりすることもなく安定した複合体であり、耐溶剤性や耐熱性が向上することが期待できる。
【0068】
本工程において、ブロック共重合体中の重合性基を反応させる方法としては、光開始剤の存在下での光の照射あるいは、熱開始剤の存在下での加熱により架橋させる方法が挙げられる。本工程においては、いずれの方法も好適に用いることができるが、例えば、ナノ微粒子分散体の透明度が低く、光の照射で十分なラジカルを生じさせて、架橋を進行させることができないような場合は、加熱により重合する方法を用いることが好ましく、一方、微粒子の耐熱性が低い場合は、光の照射により架橋させる方法を用いることが好ましい。
また、本架橋工程は30〜150℃の温度条件が好ましく、30〜50℃がより好ましい。架橋工程の温度条件が上記範囲内にあれば、加熱条件による微粒子の再凝集などを防止することができる。
【0069】
<開始剤>
本工程において用いられる開始剤としては、従来知られている各種光開始剤、熱開始剤の中から適宜選択して用いることができる。光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンなどの芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾイン;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのハロメチルオキサジアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジンなどのハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。これらの光開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本工程においては、上記光開始剤の使用量は、上記塩型ブロック共重合体の有機酸化合物の重合性基に対して、0.0005〜0.1モル当量が好ましく、0.001〜0.05モル当量がより好ましい。光開始剤の使用量が上記範囲内にあれば、十分に架橋させることができ、架橋した塩型ブロック共重合体の分子量が低くなることがないので、良好なナノ微粒子複合体の強度が得られる。
【0071】
熱開始剤としては、例えば、アルキル過酸化物、アシル過酸化物、ケトン過酸化物、アルキルヒドロ過酸化物、ペルオキシ2炭酸塩、スルホニル過酸化物などの有機過酸化物類、無機過酸化物類、アゾニトリルなどのアゾ化合物類、スルフィン酸類、ビスアジド類、ジアゾ化合物などが挙げられる。具体例としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硼酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾイソビスブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2炭酸塩、アゾビスシアノ吉草酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、p−トルエンスルフィン酸ナトリウムなどが好適に挙げられる。なかでも、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)は、30〜50℃程度の低温でも十分な効果を発揮し、加熱条件による微粒子の再凝集を防止できる点で好ましい。これらの熱開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
本工程における、上記熱開始剤の使用量は、上記塩型ブロック共重合体の有機酸化合物の重合性基に対して0.0005〜0.1モル当量が好ましく、0.001〜0.05モル当量がより好ましい。熱開始剤の使用量が上記範囲内にあれば、十分に架橋させることができ、架橋した塩型ブロック共重合体の分子量が低くなることがないので、良好なナノ微粒子複合体の強度が得られる。
【0073】
本工程における光開始剤及び熱開始剤の添加時期は、重合性基を反応させる前であれば特に限定されるものではなく、上記した分散工程前であってもよく、分散工程後であってもよく、光開始剤及び熱開始剤の安定性などに応じて適宜設定することができる。
【0074】
微粒子の分散体中の濃度が高い場合、本工程は超音波処理をしながら行うことが好ましい。超音波処理を行うことで、上記分散体のゲル化を防止することができ、あるいは微粒子の分散性が悪い場合でも、架橋が速やかに進行するので得られるナノ微粒子複合体の平均粒径を小さくすることができ、また安定的な分散が得られる。超音波処理は、光開始剤又は熱開始剤の添加時期と同時に、あるいは該添加時期よりも前に行うことが好ましい。
【0075】
<ナノ微粒子複合体>
このようにして得られたナノ微粒子複合体は、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるものである。ナノ微粒子複合体の平均粒径は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。ナノ微粒子複合体の平均粒径が上記範囲内にあれば、微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。なお、ナノ微粒子複合体の平均粒径は、上記したナノ微粒子分散体の平均分散粒径と同様にして測定することができる。
【0076】
[工程4.濃縮工程]
本工程は、前記第一の溶剤又は第二の溶剤を留去して分散液を濃縮させる工程である。前記第一の溶剤又は第二の溶剤のいずれを、どの程度留去するかは、最終的に得たいナノ微粒子複合体分散液の濃度や用途により、前述のように第一の溶剤又は第二の溶剤の種類と量を適宜選択することにより調整する。
第一の溶剤又は第二の溶剤を留去する方法としては、常圧蒸留、減圧蒸留等が挙げられるが、減圧蒸留が低温で溶媒を留去できるため、高温加熱による微粒子の劣化等を防ぐという点から好ましい。
【0077】
当該濃縮工程を経ることによって、従来は複合体形成工程においてゲル化が起こるため得ることができなかった高濃度のナノ微粒子複合体分散液を得ることができる。例えば、ナノ微粒子複合体分散液中のナノ微粒子の含有量を、13質量%以上とすることが可能となる。
【0078】
以上のようにして、本発明の製造方法で得られたナノ微粒子複合体分散液は、微粒子の分散性および安定性を保持した状態で用いることが要求される用途において特に好適に用いることができる。例えば、ナノサイズの微粒子を用いることが要求される分野である、印刷用インク、医療材料、塗料、記録材料、化粧品、半導体基板などに用いることができる。
また、近年のパーソナルコンピューター、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイの需要が増加している。そして最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、ますます液晶ディスプレイの市場は拡大しつつあり、さらにその大画面化の傾向が強まっている。このような中、液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタの製造に用いられるネガ型レジスト組成物やインクジェットインクに適用される顔料にも好適に適用することができる。
高濃度のナノ微粒子複合体分散液を得ることができると、例えば、従来よりも顔料濃度が高い印刷用インク、カラーフィルタ用インクジェットインク、カラーフィルタ用ネガ型レジスト、塗料が得られ、少量で所望の色濃度が得られ、生産性が向上したり、インクの設計幅が広がるなどのメリットがある。
【0079】
本発明は、前記本発明に係るナノ微粒子複合体分散液の製造方法により製造されたナノ微粒子複合体分散液と、樹脂とを含む、樹脂組成物も提供する。当該樹脂組成物も、ナノサイズの微粒子を用いることが要求される分野である、印刷用インク、医療材料、塗料、記録材料、化粧品、半導体基板、カラーフィルタ用ネガ型レジストなどに用いることができる。当該樹脂組成物に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等、その用途において使用されている公知の樹脂を適宜選択して用いることができる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0081】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0082】
(評価方法)
1.平均粒径の測定
各実施例及び比較例で得られたナノ微粒子複合体分散液を40℃で1週間静置する保存安定性試験を行った。試験前後における、ナノ微粒子複合体の平均粒径を、日機装(株)社製「マイクロトラック粒度分布計UPA−EX150」を用いて測定した。測定結果を第1表に示す。
2.せん断粘度の測定
各実施例及び比較例で得られたナノ微粒子複合体分散液について、上記保存安定性試験前後のせん断速度6rpm及び60rpmにおけるせん断粘度を日本シイベルヘグナー社製、「MCR301(型番名)」を用いて測定した。また、チキソトロピックインデックス(TI値)をせん断粘度(せん断速度:6rpm)/せん断粘度(せん断速度:60rpm)により算出した。これらの測定値と算出値を第1表に示す。チキソトロピックインデックス(TI値)は1に近いほど安定であり、1より大きくなると不安定となることを示す。
【0083】
製造例1 ブロック共重合体の製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)300質量部および開始剤のジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール2.68質量部を添加用ロートを介して加え、充分に窒素置換を行った。触媒のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1モル/Lのアセトニトリル溶液0.40質量部をシリンジを用いて注入し、第1モノマーとしてメタクリル酸メチル50質量部、メタクリル酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸ベンジル20質量部、を添加用ロートを用い、60分かけて滴下した。反応フラスコを氷浴で冷却することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、第2モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル45質量部を20分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール1質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、ブロック共重合体を得た。このようにして得られたブロック共重合体を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01モル/Lの臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量Mw:9250、数平均分子量Mn:7850、分子量分布Mw/Mnは1.18であった。
【0084】
製造例2 分散剤溶液Aの調製
300mL丸底フラスコ中で、第一溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)48.32質量部に、製造例1で調製したブロック共重合体10質量部を溶解させ、塩形成成分であるジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)社製「ライトエステルP−2M」)を2.08質量部(ブロック共重合体のDMAEMAユニットに対し、0.5当量)加え、反応温度40℃で2時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体Aを含む分散剤溶液Aを調製した。
【0085】
製造例3 分散剤溶液Bの調製
300mL丸底フラスコ中で、第一溶剤であるPGMEA45.44質量部に、製造例1で調製したブロック共重合体10質量部を溶解させ、塩形成成分であるジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)社製「ライトエステルP−2M」)を1.36質量部(ブロック共重合体のDMAEMAユニットに対し、0.3当量)加え、反応温度40℃で2時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体Bを含む分散剤溶液Bを調製した。
【0086】
製造例4 分散剤溶液Cの調製
製造例2においてPGMEAを用いる代わりにBCAを用いた以外は、製造例2と同様にして、分散剤溶液Cの調製を行った。
【0087】
実施例1
(ナノ微粒子分散体Aの製造)
製造例2で得られた分散剤溶液A 15.6質量部(固形分量:3.12質量部)、微粒子として市販のピグメントレッド242(平均一次粒径:50nm)3.9質量部、第一溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.5質量部、2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ30質量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子分散体Aを得た。
【0088】
(ナノ微粒子分散体Aの希釈)
上記で得られたナノ微粒子分散体A15質量部に、第二溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を15質量部添加して、ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度を6.5質量%とし、希釈されたナノ微粒子分散体(A−1)を得た。
【0089】
(ナノ微粒子複合体Aの製造)
50mlのナスフラスコ中に、上記で得られた希釈されたナノ微粒子分散体(A−1)30質量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70:和光純薬社製)0.016質量部を加えて、超音波処理を行いながら50℃で6時間反応させることでナノ微粒子複合体Aを含有するナノ微粒子複合体分散液Aを得た。
【0090】
(ナノ微粒子複合体分散液Aの濃縮)
上記で得られたナノ微粒子複合体分散液Aに対して、減圧蒸留を行うことで、MEKのみを留去した。これにより、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子複合体分散液A’を得た。
【0091】
実施例2
(ナノ微粒子分散体Bの製造)
製造例3で得られた分散剤溶液B 4.875質量部(固形分量:0.975質量部)、微粒子として市販のピグメントグリーン58(平均一次粒径:30nm)1.95質量部、第一溶剤であるPGMEA11.10質量部、第二溶剤であるBCA12.075質量部、2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて2時間分散を行い、分散液中の微粒子濃度が6.5質量%のナノ微粒子分散体Bを得た。
【0092】
(ナノ微粒子複合体Bの製造)
50mlのナスフラスコ中に、上記で得られたナノ微粒子分散体B 30質量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70:和光純薬社製)0.008質量部を加えて、超音波処理を行いながら50℃で6時間反応させることでナノ微粒子複合体Bを含有するナノ微粒子複合体分散液Bを得た。
【0093】
(ナノ微粒子複合体分散液Bの濃縮)
上記で得られたナノ微粒子複合体分散液Bに対して、減圧蒸留を行うことで、PGMEAのみを留去した。これにより、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子複合体分散液B’を得た。
【0094】
実施例3
(ナノ微粒子分散体Cの製造)
製造例3で得られた分散剤溶液B5.85質量部(固形分量:1.17質量部)、アクリル樹脂としてメタクリル酸メチル/メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(45/35/10/10)共重合体(分子量:8000)を1.56質量部、微粒子として市販のピグメントグリーン58(平均一次粒径:30nm)3.9質量部、第一溶剤であるPGMEA18.69質量部、2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子分散体Cを得た。
【0095】
(ナノ微粒子分散体Cの希釈)
上記で得られたナノ微粒子分散体C15質量部に、第二溶剤としてBCAを15質量部添加して、ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度を6.5質量%とし、希釈されたナノ微粒子分散体(C−1)を得た。
【0096】
(ナノ微粒子複合体Cの製造)
50mlのナスフラスコ中に、上記で得られた希釈されたナノ微粒子分散体(C−1)30質量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.015質量部を加えて、超音波処理を行いながら50℃で6時間反応させることでナノ微粒子複合体Aを含有するナノ微粒子複合体分散液Cを得た。
【0097】
(ナノ微粒子複合体分散液Cの濃縮)
上記で得られたナノ微粒子複合体分散液Cに対して、減圧蒸留を行うことで、PGMEAのみを留去した。これにより、分散液中の微粒子濃度が12.8質量%のナノ微粒子複合体分散液C’を得た。
【0098】
実施例4
実施例3で得られたナノ微粒子分散体C15質量部に、第二溶剤としてブチルカルビトール(BCA)を9.68質量部添加して、ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度を7.9質量%とし、希釈されたナノ微粒子分散体(C−2)を得た。当該希釈されたナノ微粒子分散体(C−2)を用いて実施例3と同様にして、ナノ微粒子複合体分散液Dを得た。当該ナノ微粒子複合体分散液Dに対して、減圧蒸留を行うことで、PGMEAを留去した。
これにより、分散液中の微粒子濃度が14.7質量%のナノ微粒子複合体分散液D’を得た。
【0099】
実施例5
実施例3で得られたナノ微粒子分散体C15質量部に、第二溶剤としてブチルカルビトール(BCA)を7.52質量部添加して、ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度を8.66質量%とし、希釈されたナノ微粒子分散体(C−3)を得た。当該希釈されたナノ微粒子分散体(C−3)を用いて実施例3と同様にして、ナノ微粒子複合体分散液Eを得た。当該ナノ微粒子複合体分散液Eに対して、減圧蒸留を行うことで、PGMEAを留去した。これにより、分散液中の微粒子濃度が17.5質量%のナノ微粒子複合体分散液E’を得た。
【0100】
なお、以上に用いた溶剤の沸点は以下のとおりである。
MEK:79.5℃
PGMEA:146℃
BCA:246.8℃
【0101】
比較例1
実施例1で得られたナノ微粒子分散体A(ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度は13質量%)を希釈することなく用いて、実施例1と同様にして、開始剤を加えてナノ微粒子複合体を得るための反応を行った。しかしながら、反応中にゲル化が起こり、ナノ微粒子複合体分散液を得ることができなかった(複合体A”)。
【0102】
比較例2
実施例1で得られたナノ微粒子分散体A(ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度は13質量%)を用いた。
【0103】
比較例3
(ナノ微粒子分散体B’の製造)
製造例4で得られた分散剤溶液C9.75質量部(固形分量:1.95質量部)、微粒子として市販のピグメントグリーン58(平均一次粒径:30nm)3.9質量部、溶媒としてBCA16.35質量部、2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子分散体B’を得た。
【0104】
比較例4
比較例3で得られたナノ微粒子分散体B’(ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度は13質量%)を希釈することなく用いて、実施例2と同様にして、開始剤を加えてナノ微粒子複合体を得るための反応を行った。しかしながら、反応中にゲル化が起こり、ナノ微粒子複合体分散液を得ることができなかった(複合体B”)。
【0105】
比較例5
(ナノ微粒子分散体C’の製造)
製造例4で得られた分散剤溶液C5.85質量部(固形分量:1.17質量部)、アクリル樹脂としてメタクリル酸メチル/メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(45/35/10/10)共重合体(分子量:8000)を1.56質量部、微粒子として市販のピグメントグリーン58(平均一次粒径:30nm)3.9質量部、溶媒としてBCA18.69質量部、2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、分散液中の微粒子濃度が13質量%のナノ微粒子分散体C’を得た。
【0106】
比較例6
比較例5で得られたナノ微粒子分散体C’(ナノ微粒子分散体中の微粒子濃度は13質量%)を希釈することなく用いて、実施例3と同様にして、開始剤を加えてナノ微粒子複合体を得るための反応を行った。しかしながら、反応中にゲル化が起こり、ナノ微粒子複合体分散液を得ることができなかった(複合体C”)。
【0107】
【表1】

【0108】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1〜3で得られた複合体分散液は、同じ組成の比較例2,3,5よりも低粘度となり、平均粒径が小さくなり、分散性が良好になることが明らかになった。また比較例1,4,6では、希釈せずに高濃度で複合化を行うとゲル化が起こることが明らかになった。また、実施例3〜5の結果から、微粒子濃度が高濃度化しても、粒径に変化がなく経時安定性も良好であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1〜工程4を有するナノ微粒子複合体分散液の製造方法。
工程1.第一の溶剤に、分散安定化剤として下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)及び/又は下記一般式(IV)で表される重合性基を有する有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて、微粒子を分散することによりナノ微粒子分散体を形成する分散工程
工程2.第一の溶剤と沸点が異なる第二の溶剤を添加する希釈工程
工程3.前記ブロック共重合体における重合性基を反応させてナノ微粒子複合体を形成させる複合体形成工程
工程4.前記第一の溶剤又は第二の溶剤を留去して分散液を濃縮させる濃縮工程
【化1】

【化2】

[式(I)〜(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基、R及びR2’は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。
及びR4’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、R4’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、R11は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。但し、R及びR4’のうちいずれかは、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R4’’で示される1価の基であり、且つ、R4’’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
は、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−R5’で示される1価の基であり、且つ、R5’が、炭素数2〜18のアルケニル基、−[CH(R)−CH(R10)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基、及び、Rが、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
x及びaは1〜18の整数、y及びbは1〜5の整数、z及びcは1〜18の整数を示す。m及びnは1〜200の整数を示す。]
【請求項2】
前記希釈工程により、ナノ微粒子分散体中の微粒子の濃度を10質量%以下とする、請求項1に記載のナノ微粒子複合体分散液の製造方法。
【請求項3】
前記第二の溶剤は、前記第一の溶剤と沸点が30℃以上異なるものである請求項1又は2に記載のナノ微粒子複合体分散液の製造方法。
【請求項4】
工程1における前記微粒子の平均粒径が、10〜100nmの範囲内である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナノ微粒子複合体分散液の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに一項に記載のナノ微粒子複合体分散液の製造方法により製造されたナノ微粒子複合体分散液と、樹脂とを含む、樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−74146(P2011−74146A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225114(P2009−225114)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】