説明

ナノ粒子、ナノ結晶、ナノ結晶溶液、および水溶性ナノ粒子を作製する方法

【課題】ナノ粒子、ナノ結晶、ナノ結晶溶液、および水溶性ナノ粒子を作製する方法が提供される。
【解決手段】ナノ粒子は半導体ナノ結晶を含み得る。一部の実施形態において、アミンをナノ粒子と接触させてナノ粒子表面を修飾する工程、該ナノ粒子を非水中水性エマルジョンの水相中に懸濁させる工程、シリカ前駆体を該エマルジョンに導入する工程、およびシリカ前駆体を重合させてナノ粒子を少なくとも部分的に封入するシリカシェルを形成する工程を有する水溶性ナノ粒子を作製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ナノ粒子、ナノ結晶、ナノ結晶溶液、および水溶性ナノ粒子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の検討)
ナノ粒子は、ナノメートルスケールでの寸法を有する物質の微細な粒子である。特に興味深いのは、半導体ナノ結晶もしくは量子ドットとして公知の、種々の利用において特に有用となる特性を示す、ナノ粒子の種類である。量子閉じ込め効果のため、半導体ナノ結晶は、大きさに依存する光学的性質を示し得る。これらの粒子は、物質の分子形態およびバルク形態の両方の特性を含む特性の種類の物質を生じさせる。これらのナノ粒子が照射される場合、電子をより高い状態に昇位するためにより多くのエネルギーが必要とされ、光子の形態でのエネルギー放出の増加およびその物質の特徴である色での発光をもたらす。その結果放出される光子は、典型的にバルク形態の同じ物質から放出される光子よりも短い波長を示す。三次元における電子および正孔の量子閉じ込めが、ナノ結晶の大きさを縮小させて有効バンドギャップの増大に寄与する。したがって、より小さいナノ結晶は、典型的により短い放射光子の波長を示す。例えば、セレン化カドミウム(CdSe)のナノ結晶は、結晶の大きさを2〜6ナノメートルの範囲にわたり変化させる場合、可視スペクトル全体にわたり放射し得る。
【0003】
半導体ナノ結晶の別の局面において、一様な大きさの結晶は、励起波長に関わらず、狭くて対称的な発光スペクトルを典型的に放射し得る。したがって、異なる大きさのナノ結晶が使用される場合、異なる発光色が、共通の励起源から同時に得られ得る。これらの能力が、診断ツール(例えば、生物学的標識および生物学的診断法における蛍光プローブ)としてのナノ結晶の可能性に寄与する。これらのナノ結晶すなわち量子ドットは、長期間にわたる高い発光安定性を示し、したがって従来の生物学的プローブ色素(probing dye)よりも有利な点を提供する。半導体ナノ結晶の1つの種類に、カドミウムカルコゲナイドがある。これらは、例えば、セレン化カドミウムおよびテルル化カドミウムナノ粒子を含む。
【0004】
半導体ナノ結晶の改善した量子効率は、表面の非発光性再結合部位の事例(incident)を減少させてナノ結晶を不動態化させることにより得られ得る。表面不動態化は、例えば、ナノ結晶の周囲を物質で被覆することにより達成され得る。例えば、Alivisatosらによる特許文献1を参照されたい。これらの被覆は無機または有機であり得るが、無機的に被覆した量子ドットは、典型的に、有機的に不動態化した量子ドットよりも頑丈であり、溶液中で光ルミネセンスの量子効率のより小さな低下を示す。
【0005】
半導体ナノ結晶が生物学的利用において有用であるためには、これらの結晶が、水溶性、光安定性、かつ非毒性であることが好ましい。一部の量子ドットは、水溶性を示し得るが、典型的に、光安定性でなくかつ毒性である。他のナノ結晶は、例えば、短鎖の水溶性分子(例えば、チオール)で被覆されて、ナノ結晶を可溶性にした。しかしながら、初めから被覆されたこれらの量子ドットは不安定であり、かつ光輝性特性の低下を示すことが証明された。本明細書中に参考として援用される他の文献(例えば、Bawendiらによる特許文献2および特許文献3は、改善した水溶性を提供し得る親水基の付加のための結合基も含む有機層を有する半導体ナノ結晶を合成した。
【0006】
中には前駆体としてシリケートを使用してナノ結晶を被覆することを提案するものがある。これらの方法は、水中にシリカの薄いシェルを沈殿させるために、表面下塗剤としてシランを使用する。次いで、このシリカシェルは、Stober法を使用して厚くされる。しかしながら、これらの手順は、複雑でかつ時間がかかる。他には、シリカ被覆の技術としてミクロエマルジョンを使用したものもある。特に、逆ミクロエマルジョンを使用して、単分散シリカ粒子が合成され得る。シリカ内へのナノ粒子の封入は、化学安定性および光安定性の向上に繋がり得る。これは、硫化亜鉛(ZnS)コア/二光子色素/シリカ粒子を有するナノ粒子中で行われ、シリカシェル内に封入された色素は、向上したルミネセンスおよび寿命を示した。しかしながら、合成したTOPO半導体ナノ結晶は水不溶性であり、したがってシリカは、ミクロエマルジョンの水性領域内のナノ結晶と共に沈澱し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,255,198号明細書
【特許文献2】米国特許第6,319,426号明細書
【特許文献3】米国特許第6,444,143号明細書
【発明の概要】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、一部分、ナノ粒子、可溶性ナノ粒子、およびナノ粒子を作製するための方法に向けられる。
【0009】
1つの局面において、被覆ナノ粒子を提供し、このナノ粒子は、半導体物質を含むコア、このコアの少なくとも一部に接触する非半導体不動態化層、ならびに少なくとも一部のこのコアおよびこの不動態化層を封入する非有機シェルを含む。
【0010】
別の局面において、水溶性ナノ粒子を作製する方法を提供し、この方法は、アミンをナノ粒子と接触させてナノ粒子表面を改変する工程、非水中水性エマルジョン中にナノ粒子を懸濁させる工程、エマルジョンにシリカ前駆体を導入する工程、およびこのシリカ前駆体を重合させてシリカシェルを形成し、少なくとも部分的にナノ粒子を封入する工程を包含する。
【0011】
別の局面において、半導体ナノ結晶溶液を提供し、この溶液は、約8.0未満のpHを有する水溶液、この水溶液中に溶解した複数の半導体ナノ結晶を含み、この水溶液中で、少なくとも90重量%の半導体ナノ結晶が6時間を越えて溶解したままである。
【0012】
別の局面において、半導体ナノ結晶を提供し、このナノ結晶は、約8.0未満のpHにて水に可溶である。
別の局面において、ナノ粒子を提供し、このナノ粒子は、コアを封入するシリカシェルを含み、このシリカシェルは、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を含む。
【0013】
添付の図面は、原寸に比例して描かれることを意図されていない。これらの図面において、種々の図で図示される各々同一またはほぼ同一の構成要素を、同じ数字によって示す。明快にするために、必ずしもすべての構成要素を各図面中で表示し得るわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、シリカ被覆CdSe半導体ナノ結晶の略図である。
【図2】図2は、長鎖の親水性種を含むシェルで被覆されたナノ結晶の略図である。
【図3】図3は、1つのシェルおよび1つの不動態化層を含むナノ粒子の略図である。
【図4】図4は、アミノシラン表面キャップおよび界面活性剤と接触しているナノ粒子コアを図示している。
【図5】図5は、界面活性剤とシリカシェルとを交換したナノ粒子を図示している。
【図6】図6a〜6cは、2つの異なる界面活性剤(TOPOおよびIGEPAL)の親水基(極性末端)の相互作用を使用した、逆ミクロエマルジョンの水性領域内への親水性半導体ナノ結晶の封入を描写した略図を提供する。
【図7】図7a〜7cは、シリカシェル内への親水性半導体ナノ結晶(QD)の封入をもたらし得る工程を描写した略図を提供する。これらの工程は、ミセルの衝突、核形成、およびモノマーのポリマー成長を含む。
【図8】図8は、ミクロエマルジョン技術を使用した、約22nmのシリカシェル内に封入された約6nmの直径を有するCdSe/ZnS QD−シリカのコア−シェル構造の透過型電子顕微鏡写真(TEM)の複製写真である。大半の単一QDが、単一シリカシェル内に封入されている。
【図9】図9は、ミクロエマルジョン中の約100nmのシリカ内に封入された約6nmの直径を有するCdSe/ZnS QD−シリカのコア−シェル構造の透過型電子顕微鏡写真(TEM)の複製写真である。
【図10】図10は、シリカシェル厚および非被覆CdSe/ZnSナノ粒子に対する量子効率(QY)に及ぼすTEOS濃度の効果を、グラフを用いて示している。
【図11】図11は、CdSe/ZnS半導体ナノ粒子の吸収および発光スペクトルを、シリカ被覆を用いる場合および用いない場合について示している。
【図12】図12は、シリカ被覆CdSe/ZnS半導体ナノ結晶の光安定性を有機物被覆半導体ナノ粒子の光安定性と、グラフを用いて比較している。
【図13a】図13aは、種々のシリカ被覆時間を有するコア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図13b】図13bは、種々のシリカ被覆時間を有するコア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図13c】図13cは、種々のシリカ被覆時間を有するコア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図14】図14aは、コア半導体ナノ結晶について、種々のTEOS濃度における被覆時間に対する相対発光強度を示している。図14bは、コア半導体ナノ結晶について、種々のTEOS濃度における被覆時間に対する発光波長を示している。図14cは、コア半導体ナノ結晶について、2時間の被覆時間でのTEOS濃度に対する相対発光強度を示している。
【図15a】図15aは、APS改変コア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を、種々のシリカ被覆時間に関して示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図15b】図15bは、APS改変コア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を、種々のシリカ被覆時間に関して示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図15c】図15cは、APS改変コア半導体ナノ結晶の発光強度の変化を、種々のシリカ被覆時間に関して示している。ミクロエマルジョンに加えられたTEOS(VTEOS)の容量を表示する。
【図16】図16aは、APS−改変コア半導体ナノ結晶について、種々のTEOS濃度における被覆時間に対する相対発光強度を示している。図16bは、APS−改変コア半導体ナノ結晶について、種々のTEOS濃度における被覆時間に対する発光波長を示している。図16cは、APS−改変コア半導体ナノ結晶について、8時間の被覆時間でのTEOS濃度に対する相対発光強度を示している。
【図17】図17aは、水中のシリカ被覆CdSe半導体ナノ結晶の高分解能TEM顕微鏡写真の複製写真である。図17bは、水中のシリカ被覆CdSe半導体ナノ結晶のEDXマッピングを示す。
【図18】図18aは、PBS/HO中のシリカで被覆したCdSe半導体ナノ結晶の光安定性を、APSを用いる場合および用いない場合について示している。比較のために、トルエン中のコア半導体ナノ結晶を示す。図18bは、24時間365nmの励起で照射後の、トルエン中の非被覆CdSe半導体ナノ結晶に対するシリカ被覆CdSe半導体ナノ結晶について、量子効率の割合の増大を描いている。
【図19】図19は、CdSe/ZnS半導体ナノ結晶について、シリカ被覆時間に対する量子効率を、グラフを用いて示している。
【図20】図20は、約25nmの直径を有するシリカの単一のシェル内に封入されたCdSe/ZnSの単一のコアを示す顕微鏡写真の複製写真である。
【図21】図21は、ミクロエマルジョン中の異なる水濃度について、被覆時間に対する量子効率を、グラフを用いて示している。
【図22】図22aは、TEOSの増量ごとに、一貫したシェル厚、改善した真球度、および改善した単分散を示す顕微鏡写真の複製写真である。図22bは、TEOSの増量により改善された量子効率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明は、改善した量子効率および/または改善した水溶性および/または改善した光安定性および/または改善した光ルミネセンスを示し得る、ナノ粒子およびナノ粒子を作製する方法に関する。これらのナノ粒子は、非半導体および/または非金属および/または非無機不動態化層を含み得る。不動態化層は、無定型であり得る、すなわち結晶構造を欠いている。無形態不動態化層の1つの好ましい形態は、アミノシランなどの物質を含む形態である。さらに、ナノ粒子は、部分的もしくは全体的にナノ粒子コアを封入するシリカシェルを含み得る。場合により、シリカシェルを、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)または改善した特性(例えば、水溶性)を提供する他の物質で誘導体化し得る。量子効率、安定性、溶解性および/または生体適合性が改善されたナノ粒子は、方法改善(例えば、医学的診断など)に繋がり得る。
【0016】
用語「ナノ粒子」は、当該技術分野において公知であるように本明細書中で使用され、典型的に、100ナノメートル未満の寸法を有する粒子をいう。ナノ粒子の1つの種類は、1つには、特定の粒子の大きさに応じた固有の発光スペクトルを提供し得る「半導体ナノ結晶」または「量子ドット」である。
【0017】
「不動態化」層は、結晶の表面におけるエネルギー準位を消去するために用いられ、ナノ結晶の発光特性を低下させる電子および正孔に対するトラップとして作用し得る、半導体ナノ結晶の表面と結合する物質である。1つの例には、CdSe半導体ナノ粒子を取り囲むZnS層がある。不動態化層は、未処理の粒子と比較した場合、改善した量子効率をもたらす。
【0018】
「エマルジョン」は、非水性溶媒および水性溶媒の分散物である。「逆エマルジョン」または「非水中水性エマルジョン」は、非水性溶媒中の水性溶媒(水相)の別個の領域の分散物である。
【0019】
「シェル」は、ナノ粒子コアを取り囲むあるいはナノ粒子を部分的に取り囲む層であり、場合により、ナノ粒子と(例えば、イオン結合または共有結合により)化学的に結合し得、他の場合には、ナノ粒子コアと結合していない。このシェルは、ナノ粒子の一部を形成する。
【0020】
「界面活性剤」は、両親媒性特性を示す物質であり、当該技術分野において一般に使用されているように(例えば、親水性環境に疎水性種を導入するために)本明細書中で使用される。
【0021】
用語「水溶性」は、当該技術分野において一般に使用されるように本明細書中で使用され、水性環境中のナノ粒子の分散をいう。「水溶性」は、例えば、各物質が分子レベルで分散することを意味していない。ナノ粒子は、数個の異なる物質からなり得、それでもなお一体化した粒子として「水溶性」である。
【0022】
「生体液」は、動物または植物中に存在する、あるいは動物または植物から得られる液体であり、典型的に自然界で水性である。生体液としては、例えば、血液、尿、リンパ液、唾液、汗および涙が挙げられる。
【0023】
「前駆体」は、第二の物質へと変換され得る物質であり、この第二の物質は第一の物質と異なる特性を示す。例えば、モノマーがポリマーへと変換され得る場合、モノマーはポリマー前駆体である。
【0024】
1つの局面において、ナノ粒子は、ナノ粒子を封入する、あるいは部分的に封入するシェルを含む。一部の実施形態において、このシェルは、ナノ粒子と化学的に結合していないが、それでも封入によりナノ粒子を含み得る。したがって、このナノ粒子およびシェルの2つの間に、イオン結合および/または共有結合は存在しなくてもよい。このシェルは、非有機であり得、シリカなどのシリコンポリマーであり得る。非有機シェルは、炭素および炭素のポリマーに基づかないシェルであるが、それにもかかわらず、場合によっては炭素原子を含み得る。
【0025】
図1
は、略図により、本発明の1つの実施形態を示している。ナノ粒子100は、コア110およびシェル120を含む。シェル120は、コア110に対し、化学的に結合または非結合であり得る。このコアは、半導体ナノ結晶(量子ドット)などの半導体物質であり得る。このシェルは、一般的に球状であり得、コアの直径の約1.5倍、2倍、5倍、10倍、または>10倍の平均粒径を有し得る。典型的に、単一のコアが、単一のシェルにより封入されるが、一部の実施形態において、2つ以上のコアが、単一のシェル内に含まれ得る。
【0026】
発明の別の実施形態において、半導体ナノ結晶は、不動態化層を含む。一部の実施形態において、不動態化層は、非伝導性および/または非半導体である物質からなり得る。例えば、不動態化層は、この不動態化層が取り囲むナノ結晶よりも高いバンドギャップを示さない物質からなり得る。特定の実施形態において、この不動態化層は、非イオン性および非金属性であり得る。非伝導性物質は、電位が物質を横切って適用される場合に、電子を輸送しない物質である。
【0027】
図3
は、略図(原寸に比例していない)により、コア210、表面不動態化層230、およびシェル220を含むナノ粒子200を示す。このシェルは、有機であるか非有機であり得、シリカなどの非有機ポリマーを含み得る。この実施形態において、不動態化層230は、非半導体であり、好ましくは、アミノ(NH)シラン(例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン(APS))である。この不動態化層の包含が、水性媒体中で約10%〜30%または10%〜20%の量子効率を提供することが示された。
【0028】
図4
は、略図により、ナノ結晶コアの表面を改変して不動態化層を形成するアミノシランを図示している。不動態化層は、アミンなどの窒素含有官能基を示す化合物からなり得、あるいは本質的にアミンなどの窒素含有官能基を示す化合物からなり得る。このアミンは、1つ以上のケイ素原子(例えば、シランまたは他のシリコンポリマーに存在するケイ素)と、直接的にまたは間接的に結合し得る。これらのシランは、任意のさらなる官能基(例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、硫黄含有基、または窒素含有基など)を含み得る。不動態化層を含む化合物は、任意の大きさからなり得るが、典型的に、約500未満または約300未満の分子量を有する。化合物の好ましい種類は、アミノシランであり、一部の実施形態において、アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)を使用し得る。半導体ナノ結晶中のAPSの使用が、不動態化を提供すること、そしてより高いバンドギャップの不動態化層(例えば、硫化亜鉛(ZnS)から作製される不動態化層によって得られる改善と同等レベルまで量子効率を改善することが示された。
【0029】
シリカシェルを含むナノ粒子は、当然ながら、シェルが存在しない類似のナノ粒子よりも寸法が大きい。例えば、本発明のナノ粒子は、100nm未満、50nm未満、または約25nm以下の平均粒径を示し得る。他の実施形態において、このシェルを含むナノ粒子の平均粒径は、5nmを上回るか、10nmを上回るか、20nmを上回るか、または約25nm以上であり得る。
【0030】
一部の実施形態において、シリカシェルを、化合物、原子、または特性(例えば、水溶性、水安定性、光安定性および生体適合性)を改変もしくは改善し得る物質を含むように官能化するかまたは誘導体化し得る。例えば、シリカシェルは、ポリエチレングリコール(PEG)および他のグリコールなどの部分を含み得る。これらのナノ粒子は、PEGの有無に関わらず、長期的に生細胞に対して非毒性であることが示され、これらのナノ粒子はまた少なくとも一部は、重合シリカシェル内の毒性コアの隔離により、インビボにおいて非毒性であると考えられる。
【0031】
図2
に示されるように、シェル120は、非有機であり得、ナノ粒子に対してより優れた親水性を提供し得る親水性種130を含み得る。親水性種130は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリエチレングリコールの誘導体であり得る。誘導体としては、これらに限定されないが、官能化PEG(例えば、アミン、チオール、およびカルボキシルで官能化したPEG)が挙げられる。親水性種130は、シェル120と結びつき、シェル120と化学的に結合し得、あるいは、例えば、シェルの物質により物理的にトラップされ得る。好ましくは、親水性種130は、シェルと化学的に結合し得る部分、および親水性を与え、シェルの表面から外へと延び得る第二部分を含む。
【0032】
これらのグリコールは、好ましくは、生体適合性でありかつ非毒性でありながら、優れた水溶性の特性をナノ粒子に与え得、場合により、溶液中のナノ粒子のより良い分散を提供し得る。例えば、PEGをシリカシェルと結びつけることにより、半導体ナノ結晶を、8未満、7.5以下、7以下または6.5以下のpHにて水溶性にし得る。したがって、これらのナノ粒子は、中性または中性より低いpHにて水溶性であり得、したがって、生体適合性でかつ、生体液(例えば、血液)およびインビボにおける使用に適切であり得る。一部の実施形態において、シリカシェルへのPEGの包含は、1時間より長い、6時間より長い、12時間より長い、または1日より長い時間、溶液中に存続し得るナノ粒子を提供する。さらに、シリカシェル中のPEGまたは関連する化合物の存在は、タンパク質、細胞、および他の生物学的物質に対する性向の低下を示す、ナノ粒子を提供し得る。このことは、例えばインビボで使用される場合、これらの粒子が類似の粒子よりも長時間、溶液中に留まり得、したがって、循環の増大および目的の標的への送達性の改善を可能とすることを意味する。
【0033】
図5
は1つの実施形態を示しており、CdSeコア110の周囲におけるシリカシェル120の形成を、略図により図示している。2つの界面活性剤、TOPO140およびIGEPAL150の部分が示される。TOPOは、親水基ホスフィンオキシドを含み、IGEPALは、親水基PEOを含む。IGEPAL150の原料は、逆ミクロエマルジョン(非水中水性)であり、TOPOの原料は、TOPOでキャップした半導体ナノ結晶である。図6
a〜図6
cは、逆ミセルがどのように、水/油インターフェースにおける封入をナノ結晶コアにもたらし得るかを図示している。したがって、これらのナノ結晶を水相に輸送し得る一方で、シリカポリマーの形成は、水性/非水性インターフェースにおけるナノ結晶の周囲に起こる傾向がある。図7
a〜7cは、油/水(シクロヘキサン/水)インターフェースにおける、ナノ粒子コアの周囲のシリカシェルの形成を図示している。
【0034】
非水中水性ミクロエマルジョンを、種々の非極性溶媒を使用して生成し得る。好ましい非極性溶媒は炭化水素であり、脂肪族炭化水素であり得、より好ましい実施形態においては、非芳香族環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはシクロヘプタン)である。
【0035】
1つの実施形態において、カドミウムカルコゲナイドのコアを含む半導体ナノ結晶を、アミンを含む不動態化層で被覆する。セレン化カドミウムまたはテルル化カドミウムを含み得るコアを、例えば、当業者に公知の方法を使用して作製し得る。非水中水性逆ミクロエマルジョンを、例えば、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を使用して調製し得る。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリフェニルエーテル(例えば、IGEPAL CO−520)が挙げられ、イオン性界面活性剤としては、例えば、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩(AOT)が挙げられる。従来的に調製されるように、カルシウムカルコゲナイドのコアに、典型的にトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)界面活性剤を与え得る。TOPOは、ホスフィンオキシドを含む親水性末端を含み、一方、IGEPALは、ポリオキシエチレン(PEO)を含む親水性末端を含む。TOPO半導体ナノ結晶の逆エマルジョンへの導入後、1つには、逆エマルジョン中のIGEPALの濃度をが大幅に高いために、TOPOをIGEPALと部分的にまたは完全に交換し得る。
【0036】
TOPOとIGEPALとの交換の際に、半導体ナノ結晶のコアは、逆エマルジョン中の水性領域の影響を受けやすく、ソル−ゲル前駆体(例えば、テトラエチルオルトシリコート(TEOS)を、当業者に公知の方法を使用して、コアの周囲で重合させてシリカシェルを生成し得る。得られたナノ構造は、カドミウムカルコゲナイドのコア、アミノシランの不動態化層(例えば、APS)および親水性シェル(例えば、重合シリカのシェル)を含む。IGEPAL以外の界面活性剤を使用し得、1つには、コア物質、どのようにナノ粒子コアがキャップされるか、および使用される逆エマルジョンに応じて変更し得る。好ましい界面活性剤は、TOPOと交換し得る界面活性剤、あるいは他の界面活性剤であって、コアをキャップするために使用され、また、ミクロエマルジョンの水性部分にコアを引き寄せるのに十分な親水性を提供し、したがって、シリカシェルの形成のための環境を提供する界面活性剤が好ましい。
【0037】
別の局面において、生体適合性および/または水溶性を改善するように改変したシリカシェルを含むナノ粒子を作製する方法を提供する。例えば、一部の実施形態において、PEGで改変したシリカシェルを、ナノ粒子の周囲に形成させ得る。ナノ粒子コアは半導体結晶または他のナノ粒子であり得る。上記のように、ナノ粒子コアを、逆ミクロエマルジョン(非水中水性エマルジョン)へ導入して封入に備え得る。別の工程において、グリコール(例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG−m)を含むアンモニア(NHOH)などの塩基を、ミクロエマルジョンに溶解させ得る。PEGは、任意の分子量であり得るが、1,000より大きく、20,000未満の分子量であることが好ましく、一部の実施形態においては、分子量が、5,000と10,000との間の範囲にある。次いで、ソル−ゲル前駆体(例えば、TEOS)を加え得、この混合物を攪拌して、形成されるシリカシェルへPEGを組み込ませ得る。PEGで誘導体化して得られたシリカシェルは、凝固への性向を低下させ、改善された量子効率、改善された水溶性、改善された生体適合性を提供し得る。
【0038】
1つの実施形態において、アンモニアとPEGとを攪拌してミクロエマルジョンを生成した後、ソル−ゲル前駆体(例えば、TEOS)を加える。ソル−ゲル前駆体の添加後、このミクロエマルジョンを、好ましい量のシリカ重合が生ずるまで、継続的に攪拌し得る。この間、PEGは、シリカシェルに組み込まれ、例えば、親水性を増すことにより、物質(例えば、細胞中のタンパク質)を吸収するナノ粒子の性向を改変して、シリカシェルの特性を改変し得、粒子間の反発力を増大させて合体することなく延長した粒子の懸濁時間を提供し得る。
【0039】
非水中水性(逆)ミクロエマルジョン中の水量(29.5%NHOH水)を、所望される特定の反応に基づき変更し得る。例えば、一部の実施形態において、逆ミクロエマルジョン中の水量は、0.2容量%と0.5容量%との間である。好ましい実施形態において、この水量は、0.3容量%と0.4容量%との間であり、一部の実施形態において、逆ミクロエマルジョン中の水量が約0.3容量%である場合に、量子効率を最大化し得ることが見出された。
【0040】
ミクロエマルジョンに加えられるソル−ゲル前駆体の量はまた、ナノ粒子の特性に影響し得る。例えば、見たところ、ソル−ゲル前駆体の量の増加はシェル厚を増大しないようであるが、ソル−ゲル前駆体の量の増加は粒子の真球度および単分散度を改善するようである。一部の実施形態において、量子効率はまた、より高い濃度のソル−ゲル前駆体を用いて改善される。例えば、図20
Aおよび図20
Bを参照されたい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
(逆ミクロエマルジョン(非水中水性エマルジョン)中のZnSでキャップしてシリカで被覆したCdSeナノ結晶(CdSe/ZnS/SiO)の調製)
CdSe/ZnS半導体ナノ結晶を、過剰TOPOを用い、表面修飾を全くせず、文献の手順(Hines et al.,“Synthesis and Characterization of Strongly Luminescing ZnS−Capped CdSe Nanocrystals”J.Phys.Chem.100,468−471,1996.Dabbousi et al.,“(CdSe)ZnS Core−Shell Quantum Dots:Synthesis and Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Nanocrystallites”J.Phys.Chem.B 101,9463−9475,1997.)に従って調製した。これらの粒子は、10%〜25%のルミネセンスの量子効率および625nm(FWHM=30nm)での発光を有した。これらの粒子を、一旦メタノールから沈殿させて、過剰TOPOおよびトリオクチルホスフィンオキシド(TOP)を除去した。逆ミセルを、Igepal CO−520などの非イオン性界面活性剤、および溶媒としてシクロヘキサンを使用して調製した。
【0042】
図6
および図7
は、それぞれ疎水性半導体ナノ結晶の逆ミクロエマルジョンの水性領域への転換スキーム、およびシリカ被覆スキームを描写している。典型的に、TOPOで不動態化し、ブタノールかまたはn−ヘキサンに溶解させたコア−シェル半導体ナノ結晶を、逆ミセルに注入した。これに続き、TEOSを加え、1時間攪拌させた。アンモニアの添加により、安定した油中水逆ミクロエマルジョンを得た。この得られた溶液を、24時間攪拌して、均質なシリカ沈殿物を得た。過剰なIgepalのために、TOPOリガンドは、シクロヘキサン中のIgepalと交換され、これらの半導体ナノ結晶は、親水性を増した。次いで、Igepalでキャップした半導体ナノ結晶をIgepalでキャップした水性領域と交換して、水により、これらのナノ結晶を可溶化した。
【0043】
(実施例2)
(逆ミクロエマルジョン中のZnSでキャップしてシリカで被覆したCdSeナノ結晶(CdSe/ZnS/SiO)のTEM特性評価)
電子顕微鏡法により、ナノ結晶の大半(>90%)がシリカシェル内に単一粒子として封入されることが示された(図8
)。ナノ結晶/シリカの平均総直径は、約22nmである。図9
は、逆ミクロエマルジョン中の100nm(計測値)のシリカ内へのナノ結晶の封入を示す。ミクロエマルジョン中の水およびアンモニアの量を変更すると、水性領域の大きさが変更されるので、シェル厚にも影響する。図10
に示されるように、TEOS濃度を高めることにより、このシリカシェル厚を増大し得る。TEOSの濃度が高まれば高まるほど、シリカの粒径は大きくなる。シリカの大きさの増大は、発光強度およびQYを低下させる。被覆ナノ結晶の総直径が、非被覆ナノ結晶に対するQYに影響することもまた、図10
に示される。
【0044】
(実施例3)
(水中のZnSでキャップしてシリカで被覆したCdSeナノ結晶(CdSe/ZnS/SiO)の発光特性評価)
ミクロエマルジョン中のシリカで被覆したナノ結晶を、18000rpmにて30分間、遠心分離機で分離し、このペレットをシクロヘキサンで2回洗浄し、pH8〜9のアルカリ水溶液中に分散させた。水中のシリカ被覆ナノ結晶を、UV−可視吸収分光法および蛍光分光法により特徴付けた。図11
は、シリカ被覆前後のCdSeナノ結晶の吸収および蛍光スペクトルを示している。UV−可視スペクトルおよび光ルミネセンススペクトルは、親溶液であるブタノール中のCdSe/ZnSナノ結晶と比較すると、水中のCdSe/ZnS/SiOには5nmの赤方偏移があることを示す。水中のシリカで被覆した半導体ナノ結晶は、数ヶ月にわたり、顕著なコロイド安定性を示した。
【0045】
シリカで被覆したナノ結晶は、顕著な光安定性を示した。水中およびブタノール中のナノ結晶を、UV照射(335nm遮断フィルター)に曝露した。水中の被覆された粒子について、約85%の量子効率が24時間後に保持されたのに対し、親半導体ナノ結晶溶液は、実質的に全てのルミネセンスを24時間後に失った。また、これらの結果をメルカプトウンデカン酸(MUA)によりキャップされた水中のドットと比較した。水中のMUAでキャップした半導体ナノ結晶は、最初は光輝(photo−brightening)を示し、次いで24時間にわたり、光溶解を示した。図12
に、励起吸収ピーク位置が、光分解の時間に対してプロットされている。ピーク位置は、シリカ被覆半導体ナノ結晶について616nmにて一定のまま変化せず、これらのドットが、長時間の光分解時間にわたり光安定性であることを示している。対照的に、MUAでキャップされたナノ結晶は、24時間の光分解にわたり、励起位置における青方変異により説明されるように光分解を示す。
【0046】
(実施例4)
(TOPOでキャップしたCdSe半導体ナノ結晶の調製およびIGEPAL逆ミセル中の表面活性剤の相互作用)
以下の実験を、TOPOでキャップしたナノ結晶上のTOPOを、ナノ粒子の親水性を改変し得るより優れた親水性の界面活性剤と交換し得ることを証明するために行った。
【0047】
過剰TOPOを用い、表面修飾を全くせず、CdSe半導体ナノ結晶を、文献の手順(Peng et al.,“Formation of High−Quality CdTe,CdSe,and CdS Nanocrystals Using CdO as Precursor”J.Am.Chem.Soc.123,183−184,2001)に従って調製した。これらの粒子は、10%〜20%のルミネセンス量子効率、および550nm〜600nm(FWHM=30nm〜40nm)における発光を有した。これらの粒子を、一旦メタノールから沈殿させて、過剰TOPOおよびトリオクチルホスフィンオキシド(TOP)を除去した。逆ミセルを、非イオン性界面活性剤IGEPAL CO−520(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を5重量%で、そして溶媒としてシクロヘキサンを使用して調製した。
【0048】
発光実験は、TOPOでキャップしたナノ結晶がIGEPALにより交換されたことを示した。IGEPALミセル中のナノ粒子についての発光強度および発光波長の変化は、シクロヘキサン中のナノ結晶と比較すると、TOPOとIGEPALとの間の表面リガンド交換反応によるものである。
【0049】
(実施例5)
(IGEPAL逆ミクロエマルジョン(非水中水性エマルジョン)中のシリカ被覆ナノ結晶(CdSe/SiO)の調製)
TOPOで不動態化したCdSeナノ結晶を、一旦メタノールで沈殿させ、メタノールを除去するために、沈殿物を窒素下で乾燥させた。この沈殿物にシクロヘキサンを加え、溶液が透き通るまでボルテックスした。これらの半導体ナノ結晶を、0.5gのIGEPALおよび10mlのシクロヘキサンで作製した非水中水性エマルジョンの逆ミセルに導入し、30分間攪拌した。ついで、29.5%の100μlのNHOHを加え、さらに1時間攪拌した。最後にTEOSを異なる濃度で加え、攪拌を24時間続けた。サンプルの部分標本を、1時間〜24時間の範囲の異なる被覆時間で取り、発光スペクトルを記録した。
【0050】
図13a〜13cは、TEOS濃度およびシリカ被覆時間の発光特性に対する効果を描写している。比較のために、IGEPALミセル(シリカ被覆なし)中のナノ結晶の発光スペクトルを示す。発光ピークの半値全幅(FWHM)が、被覆時間の増加と共に増大することは明らかである。図14
aでは、相対発光強度が、種々のTEOS濃度での被覆時間に対してプロットされている。発光強度はシリカ被覆1時間で最初の低下後、シリカ被覆2時間で上昇し、被覆時間をさらに拡大して4時間で発光強度を低下させ、被覆時間をさらに拡大しても飽和したまま変化しないという結果を示している。2時間での強度の最初の上昇は、明らかに、アンモニア吸着がナノ結晶の表面部位で起こる際の、シリカ形成のためである。発光強度の低下は、おそらく、より長い被覆時間での吸着プロセスにより、アンモニア塩基性を消滅させるシラノール基の酸性のためである(図14
a)。
【0051】
図14
bは、異なるTEOS濃度および異なる粒径での発光波長に対する被覆時間の効果を示している。全ての場合において、シリカ被覆ナノ結晶は、裸の(非被覆)ドットと比較すると、青方偏移を示す。これは、IGEPALでキャップしたナノ結晶が、シリカ被覆ナノ結晶と交換されることを含意している。表面交換反応が、青方偏移の原因となる。シリカ被覆にとっての最善の条件は、総容量10mlのミクロエマルジョン中の5μlTEOS、および2時間の被覆時間を使用することであると見出される(図14
c)。
【0052】
(実施例6)
(アミノ、シラン、APSを加えたIGEPAL逆ミクロエマルジョン中のシリカ被覆ナノ結晶(CdSe/SiO)の調製)
TOPOで不動態化したCdSe半導体ナノ結晶を一旦メタノールで沈殿させ、メタノールを除くためにこの沈殿物を窒素下で乾燥させた。この沈殿物に2μLのAPSを加え、1mlのシクロヘキサンに溶解させ、溶液が透き通るまでボルテックスした。APS改変ナノ結晶を、逆ミセルに導入し、30分間攪拌した。100μlの29.5%NHOHを加え、さらに1時間攪拌した。最後に、5μl〜20μlのTEOSを加え、攪拌を24時間続けた。サンプルの部分標本を、1時間〜24時間の範囲の異なる被覆時間で取り、各部分標本からのサンプルについての発光スペクトルを記録した(図15a〜15c)。
【0053】
これらの結果は、APS改変が、裸のドットにおいて見出されるよりも優れた表面不動態化を提供することを示している。APS改変は、IGEPAL逆ミセルへとナノ結晶を注入する前になされることが好ましい。シリカ被覆を伴う場合、より低いTEOS濃度における発光強度の最初の低下はないが(図15aおよび図15b)、より高い濃度においては低下がある(図15c)。被覆時間8時間で、発光強度は、24時間までの他の全ての被覆時間よりも高いままである。8時間と24時間における発光強度の比較は、TEOS濃度に関係なくごく僅かな低下を示している(図16
a)。これは、APS改変が存在しない類似のナノ結晶と比較すると、APS改変ナノ結晶に対し、アミン基がさらなる表面不動態化を提供するために起こると考えられる。さらに、長時間のシリカ被覆の間に形成するシラノール基の酸性は、アミンがナノ結晶の表面を保護するので、発光特性に影響するとは思えない。
【0054】
図16
bは、発光波長に対する被覆時間の効果を、異なるTEOS濃度およびAPS改変ナノ結晶の異なる粒径について示している。異なる被覆時間および種々のTEOS濃度における裸の(非被覆)ナノ結晶と比較すると、シリカ被覆ナノ結晶は青方偏移(5〜10nm)を示すが、この観測された青方偏移は、図13bに示されるような非改変ナノ結晶についての青方偏移(10〜20nm)と比較すると小さい。このデータから、シリカ被覆にとって好ましい条件は、2μlのTEOSおよび8時間の被覆時間であることが見出される(図16
c)。
【0055】
(実施例7)
(水中のシリカ被覆ナノ結晶(CdSe/SiO)のTEM特性評価)
シリカで被覆したコロイド溶液を、12000rpmにて20分間、遠心分離機で分離し、得られたペレットを脱イオン水で2回洗浄し、水とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)との混合物中に分散させた。図17
aは、水中のシリカ被覆ナノ結晶のHRTEM画像を示している。CdSeの格子縞を、矢印で示す。エネルギー分散型X線分析(EDX)マッピング(図17
b)が、予測される全ての元素の存在を裏付ける:CdSe半導体ナノ結晶コアからのCd、Se、SiOシェルからのSi、O、およびTOPOからのP。硫黄の不純物(界面活性剤からのものと思われる)も見受けられる。
【0056】
(実施例8)
(水中のシリカ被覆ナノ結晶(CdSe/SiO)の光安定性)
図18
aは、3種の異なる半導体ナノ結晶の光安定性を示している。APSを用いないシリカ被覆ナノ結晶およびAPSを用いるシリカ被覆ナノ結晶が共に、水とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)との混合物中に含まれる。第三のナノ結晶は、トルエン中の非被覆ナノ結晶(シリカなし)である。示されるように、被覆ドットは、非被覆ドットよりも優れた光安定性を示した。トルエン中の非被覆ナノ結晶に対するQYの上昇は、シリカ被覆ナノ結晶の光輝のためであると思われる。これは、ナノ結晶の光イオン化によって生じ得る。APSで改変していないシリカ被覆ナノ結晶と比較し、被覆前にAPSで改変したシリカ被覆ナノ結晶についてのQYの約3倍の上昇が、図18
bに明らかに見受けられる。
【0057】
(実施例9)
(IGEPAL逆ミクロエマルジョン中のPEG−シリカ被覆ナノ結晶(CdSe/ZnS/SiOおよびCdSe/SiO)のAPSを加えない調製)
TOPOで不動態化したCdSe/ZnSおよびCdSeナノ結晶を、一旦メタノールで沈殿させ、メタノールを除くためにこの沈殿物を窒素下で乾燥させた。この沈殿物に、シクロヘキサンを加え、溶液が透き通るまでボルテックスした。ナノ結晶を、上記のように非水中水性エマルジョンへ導入し、30分間攪拌した。NHOH1mlあたり0.05gの濃度のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG−m)を含む50μlのNHOHを加え、さらに1時間攪拌した。最後に、TEOSを異なる量で加え、攪拌を144時間続けた。サンプルの部分標本を、24時間〜144時間の範囲の異なる被覆時間で取った。次いで、これらのサンプルを水に移した。得られた懸濁液は、3週間後であっても依然として安定していた。向上した溶解性は、PEGにより与えられる反発力および溶媒和層に起因する。異なる被覆時間と関連した量子効率も記録した。
【0058】
図19
は、サンプルの量子効率に対するCdSe/ZnSナノ結晶のシリカ被覆時間の効果を示している。量子効率は、被覆時間に対してプロットされている。これらの結果は、発光強度が、90時間のシリカ被覆後、最大まで上昇することを示している。達成された最大量子効率(17%)は、予め被覆したCdSe/ZnSの量子効率(10%)よりも大きい。これは、シリカ被覆層の表面部分によって向上した表面不動態化に起因する。
【0059】
図20
は、CdSe/ZnSが、直径約25nmのシリカシェル内に単一粒子として封入されることを示す電子顕微鏡写真を提供する。ミクロエマルジョン中の水量の変更(0.3%〜0.4%)は、見たところ、シェル厚に影響しないようであるが、量子効率を低下させる(図21
)。加えられるTEOSの容量の変更(20μl〜60μl)は、見たところ、シェル厚に影響しないようであるが、図22
aおよび図22
bにより明示されるように、粒子の真球度および単分散度、ならびに量子効率を改善すると思われる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書中で説明かつ例示したが、当業者は、本明細書中に記載される機能を実行するためならびに/または本明細書中に記載される結果および/もしくは1つ以上の利点を得るための種々の他の手段そして/あるいは機構を容易に想到する。そのような変更および/または改変は、それぞれ本発明の範囲内にあると考えられる。より一般的に、本明細書中に記載される全てのパラメータ、寸法、物質、および配置は例示であることが意図され、実際のパラメータ、寸法、物質、および/または配置は、特定の利用または本発明の技術が使用される利用に左右されることを、当業者は容易に理解する。当業者は、精々ルーチン実験を使用して、本明細書中に記載される発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、あるいは確かめ得る。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示され、本発明を具体的に説明かつ請求される以外に、添付される特許請求の範囲およびそれらに対する等価物の範囲内で、実施し得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される、それぞれ個々の特徴、システム、物品、物質、道具一式、および/または方法に向けられる。さらに、そのような特徴、システム、物品、物質、道具一式、および/または方法が互いに調和する場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、物質、道具一式、および/または方法の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0061】
本明細書中に規定かつ使用されるような全ての定義が、辞書の定義、参考文献として援用される文書中の定義、および/または定義される用語の通常の意味を支配することが理解されるべきである。
【0062】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、変更が明確に示されない場合、「少なくとも1つ」を意味することが理解されるべきである。
【0063】
語句「および/または」は、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、そのように等位接続される要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味することが理解されるべきである。他の要素は、「および/または」の節により具体的に同定される要素以外に、それらの具体的に同定される要素との関連に関わらず、必要に応じて存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、1つの実施形態において、Aのみ(必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態において、Bのみ(必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(必要に応じて他の要素を含む);などを表し得る。
【0064】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、変更が明確に示されない場合、「または」は、上記に規定されるような「および/または」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「または」および「および/または」の各々は、包括的である、すなわち、多数の要素またはリストの要素、そして必要に応じてさらにリストに未掲載の項目のうちの少なくとも1つの包含であるが、1つより多くの包含でもあると解釈されるべきである。一般に、用語「または」は、本明細書中で使用される場合、「〜のうちの1つのみ」または「〜のうちの正確に1つ」などの排他性の用語が続く際には、単に排他的な二者択一(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示していると解釈されるべきである。
【0065】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、リストの1つ以上の要素に関して語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の任意の1つより多くの要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト中に具体的に掲載される、1つ1つの要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含んでおらず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除していないと理解されるべきである。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内に具体的に同定される要素以外の要素が、それらの具体的に同定される要素との関連に関わらず、必要に応じて存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同義に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、もしくは同義に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、少なくとも1つのAを表し得、必要に応じて1つより多くのA(および、必要に応じてB以外の要素)を含み、Bは存在しない;別の実施形態において、少なくとも1つのBを表し得、必要に応じて1つより多くのB(および、必要に応じてA以外の要素)を含み、Aは存在しない;さらに別の実施形態において、少なくとも1つのAおよび少なくとも1つのBを表し得、必要に応じて1つより多くのAおよび必要に応じて1つより多くのB(および、必要に応じて他の要素)を含む。
【0066】
また、変更が明確に示されない場合、1つより多くの行為を含む本明細書中で請求される任意の方法において、この方法の行為の順序は、方法の行為が記載される順序に必ずしも限定されない。
【0067】
特許請求の範囲、ならびに上記明細書において、「を含む(comprising)」「を含む(including)」「を有する(carrying)」「を有する(having)」「を含む(containing)」「を含む(involving)」「を有する(holding)」などの全ての移行句は、開放的である、すなわち、含む(including)を意味するが、それに限定されないことが理解されるべきである。移行句「〜からなる(consisting of)」および「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」だけは、それぞれUnited States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に提示されているように、制限的語句または半制限的語句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性のナノ粒子を作製する方法であって:
アミンをナノ粒子と接触させてナノ粒子表面を修飾する工程;
該ナノ粒子を非水中水性エマルジョンの水相中に懸濁させる工程;
シリカ前駆体を該エマルジョンに導入する工程;および
シリカ前駆体を重合させてナノ粒子を少なくとも部分的に封入するシリカシェルを形成する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記非水中水性エマルジョンが、非イオン性界面活性剤を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ナノ粒子が、界面活性剤でキャップされる、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、さらに、前記界面活性剤をエマルジョン中の第二界面活性剤と交換する工程を包含する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記アミンが、アミノシランである、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記アミノシランが、アミノプロピルトリメトキシシランである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、さらに、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を前記エマルジョンに導入する工程を包含する、方法。
【請求項8】
半導体ナノ結晶溶液であって:
8.0未満のpHを有する水溶液;
該水溶液中に溶解させた複数の半導体ナノ結晶であって、少なくとも90重量%の半導体ナノ結晶が、6時間を超えて溶解したままである、複数の半導体ナノ結晶
を含む、半導体ナノ結晶溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体ナノ結晶溶液であって、前記水溶液が、生体液である、半導体ナノ結晶溶液。
【請求項10】
請求項8に記載の半導体ナノ結晶溶液であって、前記水溶液が、哺乳動物の血液である、半導体ナノ結晶溶液。
【請求項11】
請求項8に記載の半導体ナノ結晶溶液であって、前記水溶液が、7.0以下のpHを有する、半導体ナノ結晶溶液。
【請求項12】
請求項8に記載の半導体ナノ結晶溶液であって、前記半導体ナノ結晶が、ポリエチレングリコールを含む、半導体ナノ結晶溶液。
【請求項13】
半導体ナノ結晶であって、8.0未満のpHにて水に可溶である、半導体ナノ結晶。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体ナノ結晶であって、該ナノ結晶が、シリカを含むシェルを含む、半導体ナノ結晶。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体ナノ結晶であって、前記シェルが、ポリエチレングリコールを含む、半導体ナノ結晶。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体ナノ結晶であって、前記ポリエチレングリコールが、5,000〜10,000の分子量を有する、半導体ナノ結晶。
【請求項17】
ナノ粒子であって、コアを封入するシリカシェルを含み、該シリカシェルが、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を含む、ナノ粒子。
【請求項18】
請求項17に記載のナノ粒子であって、前記ポリエチレングリコールが、5,000〜10,000の分子量を有する、ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図8】
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【図9】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−251283(P2011−251283A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151865(P2011−151865)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2007−524838(P2007−524838)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】