説明

ナノ結晶性ゼオライトYを使用する炭化水素の転化

【課題】長い寿命を有するナノ結晶性ゼオライト触媒による炭化水素のアルキル化反応特にオレフィン/パラフィンのアルキル化または芳香族のアルキル化方法が提供され、高いリサーチ法オクタン価(「RON」)を有するアルキル化生成物も提供される。
【解決手段】100nm以下の結晶サイズを有するゼオライトYを含む触媒を用意し、アルキル化反応条件下で該触媒の存在下でアルキル化可能な炭化水素とアルキル化剤とを反応させてアルキル化生成物を得る炭化水素化合物のアルキル化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素化合物を転化する方法に関し、そして特にオレフィン/パラフィンのアルキル化または芳香族のアルキル化用のゼオライト触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル化は、他の分子へアルキル基を化学的に付加してさらに大きな分子を形成することに関する。工業的なアルキル化方法は、一般に、芳香族のアルキル化またはオレフィン/パラフィンのアルキル化である。芳香族のアルキル化は、一般に、芳香族化合物(例えばベンゼン)をオレフィン(例えばエチレン、プロピレンなど)によりアルキル化することによるアルキル芳香族化合物(例えばエチルベンゼン、クメンなど)の生成を含む。オレフィン/パラフィンのアルキル化は、より高い分子量を有する非常に枝分かれした飽和炭化水素を生成する飽和炭化水素とオレフィンとの反応に関し、例えば高いオクタン価を有するガソリン製品を生成する2−ブテンによるイソブテンのアルキル化がある。
【0003】
高分子量の石油留分例えば軽油または石油残渣をクラッキングすることによるガソリンの製造とは異なり、アルキル化は、硫黄または窒素の不純物のないクリーンなガソリン製品を生ずる。その上、アルキル化ガソリンは、芳香族の含量がないかまたはほとんどなく、それはさらに環境上の利益となる。
【0004】
種々のアルキル化方法が周知であり、そして石油業界全体で使用されている。例えば、アルキル化は、液体酸触媒例えば硫酸または塩酸を使用することによって日常的に工業的に実施されている。別の方法として、固体のゼオライト触媒が使用されてきている。ゼオライトの使用は、非常に腐食性かつ毒性の液体酸を使用する不利益を避ける。しかし、ゼオライトの欠点は、コーキングにより生ずる不活性化である。ゼオライト含有触媒を使用して炭化水素をアルキル化する種々の方法が、特許文献1および2に開示されている。ゼオライトまたは非ゼオライト物質を使用する酸固体触媒を用いるアルキル化方法は、本明細書で参考として引用される特許文献3に開示されている。
【0005】
ゼオライトは、粒子状サイズおよび/または構造の超顕微鏡的のチャンネルを特徴とする多孔性の結晶性物質である。ゼオライトは、一般にアルミノシリケートからなるが、ゼオライト物質は、広範囲の他の成分から製造されている。後者は、普通、ミクロ細孔物質とよばれる。チャンネルすなわち孔は、配列されており、そして工業的なプロセスで触媒または吸収剤としてゼオライトを有用なものとする独特な性質を、そのままで有する。例えば、ゼオライトは、ゼオライトの孔に捕捉されるようになる小さい分子を濾去するのに使用できる。また、ゼオライトは、分子状の反応物または生成物の形状またはサイズに従って孔内での或る化学的転化を助ける形状選択性触媒として機能できる。ゼオライトは、また、イオン交換、例えば水の軟化および重金属の選択的回収にも有用である。
【0006】
合成ゼオライトは、非常にアルカリ性の条件を確実なものとする物質例えば水またはOHの存在下、互いに反応するシリカおよびアルミナの源(シリカおよびアルミナ「栄養素」)から従来製造されている。他のゼオライトは、ホウケイ酸塩、鉄ケイ酸塩などである。結晶化工程の多くは、無機指向剤または有機テンプレートの存在下で行われ、それは、指向剤またはテンプレートの不存在下では容易に形成できない特定のゼオライト構造を誘導する。有機テンプレートの多くは、第四級アンモニウム塩であるが、線状アミン、アルコールおよび種々の他の化合物も使用できる。水酸化物として、いくつかの指向剤は、ヒドロキシルイオンを反応系中に導入するが、しかし、アルカリ度は、通常、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などの量により支配される。反応は、一般に、転位および転移が生ずる液状のゲル相を含み、アルミナおよびシリカ栄養素間の再分布が生じ、そして特定のゼオライトに相当する分子構造が形成される。他の金属酸化物も含まれ、例えばチタニア−シリカ、ボリア−シリカなどがある。いくつかのゼオライトは、有機テンプレートによってのみ製造できる。他のゼオライトは、無機指向剤の手段によってのみ製造できる。さらに他のゼオライトは、親水性(例えば無機)指向剤または疎水性(有機に基づく)テンプレートの手段の何れかにより製造できる。
【0007】
現在の炭化水素処理技術の多くは、ゼオライト触媒に基づく。種々のゼオライト触媒が、当業者に周知であり、そして均一な孔のサイズを有する十分に準備された孔のシステムを有する。用語「中位の孔」は、ゼオライトに用いられるとき、通常、4−6オングストローム単位の孔のサイズを有するゼオライト構造をいう。「大きな孔」のゼオライトは、6オングストロームから上で約12オングストロームまでの孔のサイズを有する構造を含む。
【0008】
工業的に関連のある(すなわち高い)転化率での多くの炭化水素処理反応が質量移動(特に、粒子内拡散)により制限されるので、理想的な孔の構造を有する触媒粒子は、粒子内の活性触媒部位への反応物の移動および触媒粒子外への生成物の移動を助け、さらに所望の形状選択性触媒作用を達成する。ゼオライトの形態すなわち結晶のサイズは、拡散により制限される反応の他のパラメーターである。
【0009】
【特許文献1】米国特許3549557
【特許文献2】米国特許3815004
【特許文献3】米国特許5986158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
触媒は、例えばコーキングのために、制限された寿命を有する。触媒の不活性化は、通常、反応器の閉鎖および触媒の再生を必要とする。「交代(swing)モード」で操作される2つの反応器の使用(すなわち、1つがアルキル化のために操作され一方他のものは再生のために閉鎖されている反応器の交互の使用)は、連続生産を可能にするが、それにもかかわらず、反応器の閉鎖および触媒の再生により生ずる経済的な損失を最小にするように、長い寿命を有するゼオライト触媒によるアルキル化反応を行うことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
炭化水素化合物のアルキル化法が本発明により提供される。方法は、100nm以下の結晶サイズを有するゼオライトYを含む触媒を用意し、アルキル化反応条件下で該触媒の存在下でアルキル化可能な炭化水素とアルキル化剤とを反応させてアルキル化生成物を得ることからなる。
【0012】
本明細書に記載された方法は、高いリサーチ法オクタン価(「RON」)を有するアルキル化生成物並びにより長い運転時間を有するアルキル化反応を有利に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアルキル化法は、超極小すなわちナノ結晶性の結晶サイズ、すなわち約100nm以下の結晶サイズを有するゼオライトを使用する。ナノ結晶性のゼオライトは、或る炭化水素転化方法に関連していくつかの利点を有する。例えば、多くの反応物および生成物の有効な拡散率が増大する。
【0014】
第二に、生成物の選択率が、或る方法、特に中間体が望ましい逐次反応において増大する。例えば、超極小の結晶サイズは、(1)オーバークラッキングの量(例えば、蒸留物およびナフサ製品が所望の生成物である減圧軽油のクラッキングからのC/C軽質石油製品の製造)および(2)芳香族アルキル化プロセスにおける望まないポリアルキル化の量を減少できる。また、コーキングおよびそれに伴う触媒の不活性化は、逆行する縮合反応が生ずる前にコークス前駆物質を触媒から引き離すことによりナノ結晶性のゼオライトでは低下する。
【0015】
第三に、ナノ結晶性のゼオライト触媒の活性は、より大きなゼオライト結晶触媒よりも高い。それは、拡散の制限が、後者の場合には内部の活性部位への接近性を制限するが、ナノ結晶性のゼオライト触媒については触媒の重量あたりの活性部位の有効数を高めることになる。
【0016】
本発明の方法は、本出願人が所有するアルキル化触媒に関する米国特許出願10/067719に記載された方法により製造されるようなゼオライトYの使用に主として関連して以下に記述される。米国特許出願10/067719の方法に従って製造されたナノ結晶性ゼオライトYは、約7−8オングストロームの有効孔直径および25オングストロームより小さい単位格子サイズを有する立方晶系ホージャサイト構造を有する。合成されたままのゼオライトYは、また好ましくは、約10より小さいそしてしばしば約7より小さいシリカ/アルミナのモル比を有する。ナノ結晶性ゼオライトYの結晶サイズは、約100nm以下、好ましくは約50nm以下そしてさらに好ましくは約25nm以下である。
【0017】
ナノ結晶性ゼオライトYの合成は有機テンプレートの存在下で実施されるが、触媒製造のコストの点で好ましい方法は、無機指向剤の使用である。
ナノ結晶性ゼオライトYは、種々の炭化水素転化プロセス、例えばエチルベンゼンまたはクメンの製造における芳香族のアルキル化およびアルキル交換反応、高オクタン価ガソリンの製造のためのオレフィンによるパラフィンのアルキル化、輸送手段の燃料を製造するための減圧軽油の水素化分解、潤滑油に基づく原料油を製造する水素化処理、線状アルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンの製造、選択的水素化、芳香族のニトロ化などに有用である。
【0018】
ナノ結晶性ゼオライトYを製造する方法は、初期湿潤含浸による無機ミクロ細孔形成指向剤の濃水溶液による固体の多孔性シリカ−アルミナの粒子または構造の含浸を含む。多孔性のシリカ−アルミナ物質は、無定形または結晶性である。液体の量は、裸眼により見ることのできる表面のゲル化を生じさせる液体の量よりも少ない。固体の多孔性シリカ−アルミナの粒子または構造に加えられる液体は、後者の内部の孔に吸収されそして湿らせるが、その液体によりペースト様物質を形成しない。液体は、水、無機のミクロ細孔形成指向剤そしてまたもし必要ならば有機テンプレートを含む。
【0019】
有機テンプレートは、所望の製品に従って選択される。ゼオライト合成に有用な代表的な有機テンプレートは、第四級アンモニウム塩、線状アミンおよびジアミン並びにアルコールを含む。さらに特に、特別な有機テンプレートは、水酸化テトラメチルアンモニウムまたはその塩、水酸化テトラエチルアンモニウムまたはその塩、水酸化テトラプロピルアンモニウムまたはその塩、ピロリドン、ヘキサン−1,6−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジオール、ピペラジンおよび18−クラウン−6エーテルを含む。
【0020】
無機のミクロ細孔形成指向剤は、水酸化イオンを提供し、そしてアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基である。しかし、本発明のゼオライトYの製造に関して、好ましいミクロ細孔形成指向剤は、無機のアルカリ金属水酸化物、そして好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)である。有機テンプレートは使用されない。高いpHは、他の結晶性相よりもゼオライトY形成並びに急速な核形成および結晶化を助けるため、高濃度のアルカリ指向剤が要求される。例えば、20重量%以下の濃度のNaOHを使用して、他の結晶相例えばカンクリン石またはゼオライトPが形成されるとき、どんな転化も生ずることがなく、あまりに大きなゼオライトYが形成されるか、または転化が許容できないほど長い時間を要する。
【0021】
より高濃度の無機の指向剤が必要な反応時間を顕著に短縮することが、驚くべきことに分かった。水溶液中のNaOH濃度の好ましい範囲は、21−約60重量%であり、さらに好ましいのは、25−約60重量%のNaOH濃度である。最も好ましいのは、45−50重量%のNaOH濃度である。より高いNaOH濃度が非常に高い粘度および不完全な内部湿潤を生ずるため、中間の濃度範囲が最適なレベルであることが分かる。
【0022】
「乾燥した」物質を維持するために、無機の指向剤の量は、多孔性の無機酸化物物質の孔体積の100%を超えてはならず、そして好ましくは孔体積の約80−約100%に及ぶ。
【0023】
含浸の均一性の程度は、ゼオライトYの結晶化を成功させるのに重要である。局在する非均一性は、非ゼオライトY副生物の形成をもたらす。スモールスケール(例えば、数gから100gの範囲)での好適な混合を行うためには、乳鉢を使用してシリカ−アルミナとミクロ細孔形成指向剤の溶液とを混合する。大きなスケールでは、噴霧器と組み合わせたミキサーを使用する。
【0024】
多孔性/無定形のシリカ−アルミナと指向剤(NaOH)とを組み合わせた合成混合物は、次に加熱媒体に置かれそして約50−約150℃、より好ましくは約70−約110℃の高温度に加熱される。合成混合物の均一な加熱が、大きなゼオライト結晶の形成を排除するのに望ましい。
【0025】
合成混合物は、有効量のシリカ−アルミナをゼオライトYに転化するのに十分な時間合成温度に維持される。結晶化後の最終の骨格構造は、実質的な結晶含量(重量)を含み、一般に少なくとも15%、好ましくは少なくとも50%そして最も好ましくは約75−100%のゼオライトを含む。合成時間は、合成温度に依存しており、より低い合成温度はより長い合成時間を要する。合成時間は、5分から150時間に及ぶが、より一般的には10分から48時間そして好ましくは約15分から約30時間である。
【0026】
必要な合成時間後、合成混合物は、好ましくは有効な冷却により急冷される。次に、ミクロ細孔形成指向剤は、後の処理工程でまたは貯蔵中のさらなる反応を防ぐために、生成物から除くべきである。次に、ナトリウムは、例えば当業者に周知のイオン交換技術を使用してアンモニウムとの交換により、ゼオライト骨格から除去すべきである。
【0027】
所望により、ゼオライトは、マトリックス、結合剤または触媒担体の物質と混合される。このような物質は、シリカ、アルミナ、アルミノシリカ、チタニア、ジルコニアなどを含む。好ましくは、本発明の触媒は、ナノ結晶性ゼオライトYおよび約5−40重量%の耐火酸化物結合剤例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニアなどを含む。
【0028】
イオン交換したゼオライトは、好ましくは、約0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下そしてなお好ましくは約0.05重量%以下のナトリウム含量を有する。
【0029】
本発明の方法により製造されたナノ結晶性ゼオライトYは、約0.2から約6.0に及ぶメソ細孔/ミクロ細孔の体積比、少なくとも約275m/gのBET表面積および約24.6−約24.9オングストロームの単位格子サイズを有する。
【0030】
所望により、触媒的に活性な金属が、例えばゼオライトのイオン交換または含浸によりまたはそれからゼオライトが製造される合成物質中に活性金属を配合することにより、ゼオライト中に配合できる。金属は、金属の形または酸素との組み合わせ(例えば金属酸化物)である。好適な触媒的に活性な金属は、触媒を使用することを目的とする特定のプロセスに依存し、そして一般に族VIIIの金属(例えば、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Os、Fe、Co、Ni)、希土類「ランタニド」の金属(例えば、La、Ce、Prなど)、族IVBの金属(例えば、Ti、Zr、Hf)、族VBの金属(例えば、V、Nb、Ta)、族VIBの金属(例えば、Cr、Mo、W)または族IBの金属(例えば、Cu、Ag、Au)を含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、触媒金属は、少なくとも約0.04好ましくは少なくとも約0.08の希土類金属/ゼオライトの質量比を有する希土類金属好ましくはランタン、または高いランタン含量を有する希土類金属の混合物である。他の触媒金属は、少なくとも約0.0001好ましくは少なくとも約0.001の金属/ゼオライトの質量比を有する貴金属好ましくは白金である。
【0031】
1つの態様では、本発明の方法は、オレフィン/パラフィンのアルキル化用の触媒としてナノ結晶性ゼオライトYを用いる。100nm以下好ましくは50nm以下そしてさらに好ましくは25nm以下の結晶サイズを有するナノ結晶性ゼオライトYの使用が、従来のゼオライトYより長い触媒寿命をもたらし、さらに得られたガソリン製品が一般に少なくとも約99.5という高いRONを有することが、驚くべきことに分かった。
【0032】
本発明の触媒は、2−10個好ましくは2−6個さらに好ましくは3−5個の炭素原子を有するオレフィンによる、4−10個の炭素原子を有するイソアルカン例えばイソブタン、イソペンタンまたはイソヘキサンまたはこれらの混合物のアルキル化に使用するのに特に適している。ブテンまたはブテンの混合物によるイソブタンのアルキル化は、本発明によるプロセスの魅力的な態様を構成する。
【0033】
他の態様では、本発明の触媒は、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテンなど)により芳香族化合物例えばベンゼンをアルキル化して対応するアルキル芳香族化合物(例えば、エチルベンゼン、クメン、ジ−イソプロピルベンゼンなど)を生成するために使用できる。また、触媒は、置換していない環の芳香族(例えば、ベンゼン)によりポリアルキル化芳香族をアルキル交換反応してモノアルキル化芳香族を得るのに使用できる。
【0034】
当業者にとり明らかなように、本発明による方法は、流動床プロセス、スラリープロセスおよび固定床プロセスを含む任意の好適な形で利用できる。方法は、それぞれ別々のオレフィンを添加する多数の床で実施できる。このような場合、本発明の方法は、それぞれ別々の床で実施できる。
【0035】
オレフィン−パラフィンアルキル化方法は、少なくとも一部のアルキル化剤およびアルキル化可能な化合物が液相または超臨界相にある条件下で実施される。一般に、本発明による方法は、約−40℃から約250℃の範囲、好ましくは約50−約150℃の範囲、さらに好ましくは約75−約95℃の範囲の温度、そして1−100バール、好ましくは10−40バール、さらに好ましくは15−30バールの圧力で実施される。反応器中の全原料におけるアルキル化可能な化合物/アルキル化剤のモル比は、アルキル化剤1に対して化合物が5より大きく、さらに好ましくは50より大きい。アルキル化剤の供給速度(WHSV)は、一般に、毎時触媒1部あたりアルキル化剤0.01−5部の範囲、好ましくは0.05−0.5部の範囲、さらに好ましくは0.1−0.4部の範囲である。アルキル化可能な飽和炭化水素のWHSVは、好ましくは、0.1−500/時の範囲である。
【0036】
他の好ましい方法は、芳香族アルキル化例えばエチルベンゼンを製造するエチレンによるベンゼンのアルキル化、またはクメンを製造するプロピレンによるベンゼンのアルキル化であり、それらは、バッチ、半連続または連続の方式で実施できる。
【0037】
以下の実施例は、本発明の方法の種々の特徴を説明している。比較例は、本発明の例示ではないが、オレフィン/パラフィンのアルキル化特にガソリン製品を製造するシス−2−ブテンによるイソブタンのアルキル化に関して、本発明により達成される驚くべき改善を従来のゼオライトY触媒の使用と比較することにより示す目的で提供されている。すべての実施例において、オレフィンおよびパラフィンは、所望の温度を維持するために油浴に浸漬された固定床反応器中に供給された。反応器の流出物は、2つの部分に分割された。生成物の1つの部分は、その中にオレフィン/パラフィンの供給物が注入される再循環流として反応器に再循環された。他の部分である生成物の回収流は、アルキル化生成物の分離のために凝縮器に送られた。反応器の流出物のサンプルは、再循環流および生成物回収流への生成物の流れの分離前に、テストのために取り出された。
【0038】
1つのテストは、「オレフィン・ブレークスルー」、すなわち0.2%のオレフィンが転化されずに反応器を離れる点前に経過する運転時間を観察することにより、触媒の運転中の寿命を測定するために行われた。反応器の流出物は、クロマトグラフ分析によりモニターされてオレフィンのピークが現れるときを測定した。触媒の寿命は、触媒の寿命が良ければ良いほど、反応器は触媒の再生のためのオフラインを行う必要性が少ないために、重要な特徴である。
【0039】
また、生成物の全RONをモニターした。生成物の流れのそれぞれの成分は、それぞれのRONを特徴とする。好ましいアルキル化生成物はトリメチルペンタン(「TMP」)であり、それらは高いリサーチ法オクタン価(約100−110のRON)を有する。ガソリンの抗ノッキングの質を示すアルキル化生成物の全RONは、個々の生成物の成分のRONの加重平均を計算することにより決定された。
【0040】
[比較例1]
この比較例で評価されたゼオライト触媒は、アルミナ結合剤中70重量%のゼオライトHYを含む市販のゼオライトHYであった。このサンプルのゼオライト結晶サイズは、0.4−0.7ミクロン(すなわち、400−700nm)であった。ゼオライト触媒は、1/32インチ押し出し物から誘導され、−18メッシュから+25メッシュおよび562m/gのBET表面積を有した。テスト反応器は、15.9のイソブタン/オレフィン(I/O)比および毎時16.2部の供給速度でイソブタンおよびシス−2−ブテンを含む供給物による上記の系での再循環微分固定床反応器であった。4.6重量部のゼオライト触媒を反応器に導入した。触媒を2時間300℃で流れる窒素中で予備処理して、アルキル化テストが開始される前に水分を除いた。
【0041】
アルキル化は、毎時触媒1部あたり174部の反応流出物の循環速度で、400psigおよび80℃で行われた。テストは、オレフィン・ブレークスルーまで、GC分析のために45分毎に採取されたサンプルについて実施された。この市販のゼオライトY触媒に関する触媒寿命は、オレフィン・ブレークスルーにより測定されるとき、2.7時間であった。オレフィン・ブレークスルー前に測定されるとき、RONは99.1であると計算された。これらの結果は、表1に要約される。
【0042】
[比較例2]
この比較例で使用されるゼオライト触媒は、市販のゼオライトHY3.6部であり、そしてアルミナ結合剤中80重量%のゼオライトHYを含む1/16インチ押し出し物から誘導された。このサンプルのゼオライト結晶サイズは、0.4−0.7ミクロンであった。乾燥した触媒は、ふるいにかけられて−18メッシュから+25メッシュにされそして556m/gのBET表面積を有した。予備処理およびアルキル化反応および条件は、比較例1と同じ方法で行われた。結果は表1に示される。
【0043】
[比較例3]
この比較例で使用されるゼオライト触媒は、アルミナ結合剤中80重量%のゼオライトHYを含む1/16インチ押し出し物から誘導される市販のゼオライトHY3.6重量部であった。このサンプルのゼオライト結晶サイズは、0.4−0.7ミクロンであった。乾燥した触媒は、ふるいにかけられて−18メッシュから+25メッシュとされそして564m/gのBET表面積を有した。予備処理およびアルキル化反応および条件は、比較例1と同じ方法で行われた。結果を表1に示す。
【実施例1】
【0044】
この実施例は本発明を説明する。5.1のシリカ/アルミナ比(「SAR」)を有する多孔性のシリカ−アルミナ1部を、NaOH45重量部および蒸留水55部を含む溶液1.05部により含浸した。エージング後の含浸した物質をオートクレーブに入れそして24時間85℃で加熱した。物質を次に蒸留水により洗いそして120℃で乾燥して約25−100nmのサイズを有する95%より多いゼオライトY結晶を含む生成物を得た。
【0045】
合成されたナノ結晶性ゼオライトYは、4回LaClおよびNHNO溶液の混合物によりイオン交換されてナトリウムを除いて0.2重量%以下にした。濾過および洗浄後、LaNHYサンプルを120℃で乾燥した。乾燥した粉末を次に適切な量のNyacolアルミナゾルと混合して、最終のか焼した生成物は約80重量%のゼオライト濃度を含んだ。ペーストを1時間90℃で乾燥し、次に以下のプログラムに従ってか焼した。120℃で2℃/分、1時間保持、500℃へ2℃/分、2時間保持、室温に5℃/分で冷却。
【0046】
か焼したペーストを粉砕し、そしてふるいにかけて+20/−12メッシュサイズにし、乾燥基準でその4.0部を、性能の評価のためにアルキル化反応器に入れた。最終の触媒のBET表面積は416m/gであった。予備処理およびアルキル化反応条件は、上記と同じであった。このサンプルは、6.2時間のオレフィン・ブレークスルーを有しそしてアルキル化物は表1に示されるようにオレフィン・ブレークスルー前に100.2のRONを有した。
【実施例2】
【0047】
実施例1で合成されたナノ結晶性ゼオライトYをイオン交換して上記のようにLaNHyを得た。結合、予備処理およびテスト条件は、実施例1と同じであった。このサンプルの表面積は409m/gであった。粒子サイズが−18メッシュから+25メッシュの乾燥した触媒4.0部を反応器に入れた。サンプルは、6.0時間のオレフィン・ブレークスルーを有し、そしてアルキル化生成物は、表1に示されるようにオレフィン・ブレークスルー前に100.3のRONを有した。
【実施例3】
【0048】
実施例1で合成したナノ結晶性ゼオライトYをイオン交換して上記のようにLaNHYを得た。結合および予備処理は、実施例1とおなじであった。このサンプルの表面積は389m/gであった。アルキル化反応条件は実施例1とおなじであったが、ただし供給速度は毎時21.3部であった。粒子サイズが−18メッシュから+25メッシュの乾燥した触媒4.0部を反応器に入れた。サンプルは、3.6時間のオレフィン・ブレークスルーを有し、そしてアルキル化生成物は、表1に示されるようにオレフィン・ブレークスルー前に100.4のRONを有した。
【実施例4】
【0049】
実施例1で合成したナノ結晶性ゼオライトYをイオン交換して上記のようにLaNHYを得た。結合、予備処理およびテスト条件は、実施例1とおなじであった。このサンプルの表面積は413m/gであった。粒子サイズが−18メッシュから+25メッシュの乾燥した触媒4.0部を反応器に入れた。サンプルは、8.0時間のオレフィン・ブレークスルーを有し、そしてアルキル化生成物は、表1に示されるようにオレフィン・ブレークスルー前に99.5のRONを有した。
【実施例5】
【0050】
実施例1で合成したナノ結晶性ゼオライトYを、希土類塩化物(「RECL」)および硝酸アンモニウム(NHNO)を含む溶液により数回イオン交換して、ナトリウム含量を0.2重量%以下にしてREYを得た。結合、予備処理およびテスト条件は、実施例1とおなじであった。このサンプルの表面積は396m/gであった。粒子サイズが−18メッシュから+25メッシュの乾燥した触媒3.6部を反応器に入れた。サンプルは、3.4時間のオレフィン・ブレークスルーを有し、そしてアルキル化生成物は、表1に示されるようにオレフィン・ブレークスルー前に100.5のRONを有した。
【0051】
【表1】

【0052】
テストの結果は、本発明のナノ結晶性触媒の予想されない優越性を示す。例えば、毎時触媒1部あたりのオレフィン約0.25部の平均WHSVでの比較例1−3(従来のゼオライトY)の平均触媒寿命は、3.9時間であり、そしてオレフィン・ブレークスルー前の平均RONは約98.8であった。毎時触媒1部あたりのオレフィン約0.26部の平均WHSVでの実施例1−5(ナノ結晶性ゼオライトY)の平均触媒寿命は、5.36時間であり、そしてオレフィン・ブレークスルー前の対応する平均RONは約100.2であった。
【0053】
上記の記述は、多くの細目を含んでいるが、これらの細目は、本発明の範囲を制限するものと考えてはならず、その好ましい態様の例示としてのみ考えるべきである。当業者は、請求の範囲により規定されるような本発明の範囲および趣旨内で多くの他の可能性を考えることができるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)100nm以下の結晶サイズを有するゼオライトYを含む触媒を用意し、
b)アルキル化反応条件下で該触媒の存在下でアルキル化可能な炭化水素とアルキル化剤とを反応させてアルキル化生成物を得る
ことからなることを特徴とする炭化水素化合物のアルキル化方法。
【請求項2】
アルキル化方法が、オレフィン/パラフィンのアルキル化である請求項1の方法。
【請求項3】
アルキル化可能な炭化水素がイソブタンであり、そしてアルキル化剤がブテンである請求項2の方法。
【請求項4】
アルキル化生成物が、少なくとも99.5のリサーチ法オクタン価を有するガソリンを含む請求項3の方法。
【請求項5】
アルキル化方法が、芳香族のアルキル化である請求項1の方法。
【請求項6】
アルキル化可能な炭化水素がベンゼンであり、そしてアルキル化剤が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブテンからなる群から選ばれる請求項5の方法。
【請求項7】
アルキル化方法がアルキル交換反応からなり、アルキル化可能な炭化水素が置換していない環の芳香族化合物であり、そしてアルキル化剤がポリアルキル化芳香族化合物である請求項1の方法。
【請求項8】
置換していない環の芳香族化合物がベンゼンであり、そしてポリアルキル化芳香族化合物が、ジエチルベンゼンおよびジ−イソプロピルベンゼンからなる群から選ばれる請求項7の方法。
【請求項9】
触媒を用意する段階が、
a)多孔性の無機酸化物を用意し、
b)水酸化イオンをもたらす無機のミクロ細孔形成指向剤を含む液体溶液により多孔性の無機酸化物を含浸し、ここで液体溶液の量は、無機酸化物の孔体積の約100%以下でありそして液体溶液中のミクロ細孔形成指向剤の濃度は、約25重量%から約60重量%の範囲であり、そして
c)ゼオライト含有生成物を形成するのに十分な時間と合成温度で、含浸した多孔性の無機酸化物を加熱する
ことからなる請求項1の方法。
【請求項10】
無機のミクロ細孔形成指向剤の液体溶液が、水酸化ナトリウムの水溶液である請求項9の方法。
【請求項11】
ゼオライトYが約50nm以下の結晶サイズを有する請求項1の方法。
【請求項12】
ゼオライトYが約25nm以下の結晶サイズを有する請求項1の方法。
【請求項13】
ゼオライトYが約0.2重量%以下のナトリウム含量を有する請求項1の方法。
【請求項14】
ゼオライトYが約0.1重量%以下のナトリウム含量を有する請求項1の方法。
【請求項15】
ゼオライトYが約0.05重量%以下のナトリウム含量を有する請求項1の方法。
【請求項16】
触媒が耐火酸化物結合剤を含む請求項1の方法。
【請求項17】
耐火酸化物結合剤が、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニアおよびジルコニアからなる群から選ばれる1つ以上の酸化物を含む請求項16の方法。
【請求項18】
ゼオライトYが、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Os、Fe、Co、Ni、La、Ce、Pr、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、AgおよびAuからなる群から選ばれる1つ以上の金属を含む請求項1の方法。
【請求項19】
ゼオライトYがランタンを含み、そしてランタン/ゼオライトの質量比が少なくとも約0.04である請求項1の方法。
【請求項20】
ゼオライトYが、約0.2から約0.6のメソ細孔/ミクロ細孔の体積比を有する請求項1の方法。
【請求項21】
触媒が、少なくとも約275m/gのBHT表面積を有し、そしてゼオライトYが、少なくとも0.04の希土類金属/ゼオライトの質量比を有する希土類金属成分を有し、ゼオライトが、約0.2から約6.0のメソ細孔/ミクロ細孔の体積比そして約24.6オングストロームから約24.9オングストロームの単位格子サイズを有する請求項1の方法。
【請求項22】
アルキル化反応条件が、約−40℃から約250℃の温度、約1バールから100バールの圧力そして約0.1/時から約500/時のWHSVを含む請求項1の方法。

【公表番号】特表2007−523075(P2007−523075A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552246(P2006−552246)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003469
【国際公開番号】WO2005/077866
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500443589)エイビービー ラマス グローバル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】