説明

ニューブラスチンのポリマー結合体および同様の使用方法。

【課題】増大したバイオアベイラビリティを有するニューブラスチン改変体を同定する。
【解決手段】ポリアルキレングリコール部分を含むポリマーに結合された改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む結合体の形成に適切な改変体ニューブラスチンポリペプチドが、開示される。本結合体は、長期のバイオアベイラビリティーを有し、そして好ましい実施形態において、非修飾形態のニューブラスチンまたは野生型形態のニューブラスチンと比較して長期の生物学的活性を有する。本発明の結合体は通常、治療的適用および非治療的適用(例えば診断的適用)において有用に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、ポリペプチドに関し、そしてより詳細には、改変神経栄養ポリペプチドおよびこれらの改変ポリペプチドの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
神経栄養因子は、神経細胞および神経組織の生存を促進し、表現型分化を維持し、変性を予防し、そして活性を増強する、天然に存在するタンパク質である。神経栄養因子は、神経組織および神経系によって刺激される非神経組織から単離され、そして機能的に関連する群および構造的に関連する群(ファミリー、スーパーファミリー、またはサブファミリーとも称される)に分類される。神経栄養因子スーパーファミリーには、線維芽細胞増殖因子、ニューロトロフィン、およびトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)のスーパーファミリーがある。神経栄養因子の個々の種は、その物理的構造、その同族レセプターとのその相互作用、および種々の型の神経細胞に対するその影響によって識別される。TGF−βスーパーファミリー内に分類されるのは、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)リガンド(これは、GDNF、パーセフィン(persephin)(PSP)およびニューロチュリン(neurturin)(NTN)を含む)である。
【0003】
GDNFサブファミリーのリガンドは、共通して、RETレセプターチロシンキナーゼを介してシグナル伝達を誘導する能力を有する。GDNFサブファミリーのこれらの3つのリガンドは、神経栄養レセプターのファミリー(GFRαレセプター)に対するその相対的な親和性が異なる。
【0004】
最近記載された神経栄養因子は、「ニューブラスチン(neublastin)」、すなわち「NBN」である。ニューブラスチンは、GDNFサブファミリー内に分類される。なぜなら、ニューブラスチンは、他のGDNFリガンドと相同性の領域を共有し、そしてRETに結合し、そしてこれを活性化する能力を有するからである。他のGDNFリガンドと異なり、ニューブラスチンは、GFRα3−RETレセプター複合体に対して高度に選択性である。さらに、NBNは、そのアミノ酸配列に特有のサブ領域を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あいにく、ニューブラスチンは、体によって急速に清澄される。この急速なクリアランスは、治療適用におけるニューブラスチンの使用を阻止し得る。従って、増大したバイオアベイラビリティを有するニューブラスチン改変体を同定する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1のアミノ酸8〜113と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、
但し、その改変体ニューブラスチンポリペプチドは、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の14位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の39位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の68位がアルギニン以外のアミノ酸;および
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の95位がアスパラギン以外のアミノ酸;
からなる群から選択されるアミノ酸置換のうちの1つ以上を含み、
そのアミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチド配列に従って番号付けされる、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目2)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが配列番号1のアミノ酸1〜7をさらに含む、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目3)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、GFRα3に結合する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目4)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、RETポリペプチドのチロシンリン酸化を刺激する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目5)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、ニューロン生存を増強する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目6)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、感覚ニューロン生存を増強する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目7)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、ニューロンの病理学的変化を正常化する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目8)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、感覚ニューロンの病理学的変化を正常化する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目9)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、自律ニューロンの生存を増強する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目10)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、ドパミン作用性ニューロンの生存を増強する、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目11)
項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ポリペプチドが、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドの68位がアルギニン以外のアミノ酸;および
その改変体ポリペプチドの95位がアスパラギン以外のアミノ酸、
からなる群から選択されるアミノ酸置換のうちの2つ以上を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目12)
項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ポリペプチドが、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドの68位がアルギニン以外のアミノ酸;および
その改変体ポリペプチドの95位がアスパラギン以外のアミノ酸、
からなる群から選択されるアミノ酸置換のうちの3つ以上を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目13)
項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ポリペプチドが、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドの68位がアルギニン以外のアミノ酸;および
その改変体ポリペプチドの95位がアスパラギン以外のアミノ酸、
を含む、改変体ポリペプチド。
(項目14)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドの95位のアミノ酸が、アスパラギン以外である、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目15)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドの95位のアミノ酸がリジンである、項目14に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目16)
項目14に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドが、以下:
14位がアルギニン以外のアミノ酸;
39位がアルギニン以外のアミノ酸;および
68位がアルギニン以外のアミノ酸;
からなる群から選択される置換をさらに含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目17)
14位、39位または68位の上記置換がリジンである、項目16に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目18)
項目14に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドが、以下:
14位がアルギニン以外のアミノ酸;
39位がアルギニン以外のアミノ酸;および
68位がアルギニン以外のアミノ酸;
からなる群から選択される2つの置換をさらに含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目19)
上記2つの置換がリジンである、項目18に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目20)
項目14に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドが、以下のような3つの置換:
14位がアルギニン以外のアミノ酸;
39位がアルギニン以外のアミノ酸;および
68位がアルギニン以外のアミノ酸;
をさらに含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目21)
上記3つの置換がリジンである、項目20に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目22)
項目15に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113が、配列番号1のアミノ酸8〜94および96〜113と少なくとも90%同一である、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目23)
項目14に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113が、配列番号1のアミノ酸8〜94および96〜113と少なくとも95%同一である、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目24)
項目22に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列が、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113で、天然に存在するラット、ヒトまたはマウスのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目25)
項目23に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドであって、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113が、配列番号2、配列番号3、および配列番号4のアミノ酸8〜94および96〜113のアミノ酸配列からなる群から選択される、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目26)
上記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸8〜113を含む、項目15に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目27)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドが、融合タンパク質である、項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目28)
上記融合タンパク質が、上記改変体ニューブラスチンポリペプチドのインフレームで融合したヒト血清アルブミン配列を含む、項目27に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目29)
ヒト血清アルブミンタンパク質に作動可能に連結されたニューブラスチンポリペプチドを含む、融合タンパク質。
(項目30)
項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドをコードする、核酸分子。
(項目31)
項目30に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目32)
上記ベクターが発現ベクターである、項目30に記載のベクター。
(項目33)
項目32に記載のベクターを含む、細胞。
(項目34)
上記細胞が、哺乳動物細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および細菌細胞からなる群から選択される、項目33に記載の細胞。
(項目35)
上記哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目34に記載の細胞。
(項目36)
改変体ニューブラスチンポリペプチドを作製する方法であって、その方法は、改変体ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で、項目33に記載の細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目37)
上記改変体ニューブラスチンポリペプチドを回収する工程をさらに包含する、項目36に記載の方法。
(項目38)
項目36に記載の方法によって生成された、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目39)
項目28に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドをコードする、核酸分子。
(項目40)
項目39に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目41)
上記ベクターが発現ベクターである、項目40に記載のベクター。
(項目42)
項目41に記載のベクターを含む、細胞。
(項目43)
上記細胞が、哺乳動物細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および細菌細胞からなる群より選択される、項目42に記載の細胞。
(項目44)
上記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目43に記載の細胞。
(項目45)
改変体ニューブラスチンポリペプチドを生成する方法であって、その方法は、改変体ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で、項目42に記載の細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目46)
項目45に記載の方法であって、上記改変体ニューブラスチンポリペプチドを回収する工程をさらに包含する、方法。
(項目47)
項目46に記載の方法により生成された、改変体ニューブラスチンポリペプチド。
(項目48)
項目1に記載の改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む、多量体ポリペプチド組成物。
(項目49)
上記多量体ポリペプチド組成物が二量体である、項目48に記載の多量体ポリペプチド組成物。
(項目50)
上記多量体ポリペプチド組成物がホモダイマーである、項目49に記載の多量体ポリペプチド組成物。
(項目51)
上記多量体ポリペプチド組成物がヘテロダイマーである、項目48に記載の多量体ポリペプチド組成物。
(項目52)
天然に存在しないポリマーと結合された、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む、組成物。
(項目53)
項目52に記載の組成物であって、上記天然に存在しないポリマーが、上記ポリペプチドと、そのポリペプチドのうちの溶媒に露出したアミノ酸を介して結合している、組成物。
(項目54)
項目52に記載の組成物であって、その組成物は、配列番号1のアミノ酸8〜113と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む改変体ニューブラスチンポリペプチドを含み、
但し、その改変体ニューブラスチンポリペプチドは、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の14位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の39位がアルギニン以外のアミノ酸;
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の68位がアルギニン以外のアミノ酸;および
その改変体ポリペプチドのアミノ酸配列中の95位がアスパラギン以外のアミノ酸;
からなる群より選択されるアミノ酸置換のうちの1つ以上を含み、
そのアミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチドに従って番号付けされている、
組成物。
(項目55)
項目52に記載の組成物であって、上記ポリマーが、ポリアルキレングリコール部分を含む、組成物。
(項目56)
項目55に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、ポリエチレングリコール(PEG)部分を含む、組成物。
(項目57)
項目55に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、上記ニューブラスチンポリペプチドのアミン基にか、または改変体ニューブラスチンポリペプチドのリジン基もしくは他のアミン基に結合されている、組成物。
(項目58)
項目57に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステルにより結合されている、組成物。
(項目59)
項目58に記載の組成物であって、上記活性エステルが、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)、PEGスクシンイミジルブチレート(SPB−PEG)、およびPEGスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)からなる群より選択される、組成物。
(項目60)
項目57に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、およびPNPカルボネートからなる群より選択される、組成物。
(項目61)
項目55に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのシステイン基に結合されている、組成物。
(項目62)
項目61に記載の組成物であって、上記ポリアルキレングリコール部分が、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基、およびチオール基からなる群より選択される基により結合されている、組成物。
(項目63)
項目52に記載の組成物であって、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドが、グリコシル化されている、組成物。
(項目64)
項目63に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記グリコシル化ニューブラスチンポリペプチドまたはグリコシル化改変体ニューブラスチンポリペプチドの糖質部分に結合されている、組成物。
(項目65)
項目64に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記グリコシル化ニューブラスチンポリペプチドまたはグリコシル化改変体ニューブラスチンポリペプチドに、そのグリコシル化ニューブラスチンポリペプチドまたはグリコシル化改変体ニューブラスチンポリペプチドのヒドラゾール基もしくはアミノ基の酸化後に結合されている、組成物。
(項目66)
項目52に記載の組成物であって、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドが、1つ、2つ、3つ、または4つのPEG部分を含む、組成物。
(項目67)
項目52に記載の組成物であって、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドが、上記ポリマーの非存在下でのそのポリペプチドまたは改変体ポリペプチドの血清半減期と比較して、長い血清半減期を有する、組成物。
(項目68)
項目52に記載の組成物であって、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドが、二量体化した場合に、GFRα3結合、RET活性化、ニューロンの病理学的変化の正常化、およびニューロン生存の増強からなる群より選択される生理学的活性を有する、組成物。
(項目69)
項目68に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記ポリペプチドに、そのポリペプチドのN末端にて結合されている、組成物。
(項目70)
項目68に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記ポリペプチドに、そのポリペプチドの非末端アミノ酸にて結合している、組成物。
(項目71)
項目68に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの溶媒に露出したアミノ酸に結合されている、組成物。
(項目72)
項目68に記載の組成物であって、上記ポリマーが、上記ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドに、以下:
その改変体ポリペプチドのアミノ末端、そのニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の14位、そのニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の39位、そのニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の68位、およびそのニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の95位
からなる群より選択される残基にて結合されている、組成物。
(項目73)
薬学的組成物であって、生理学的に受容可能なビヒクルを含み、そのビヒクルは、そのビヒクル中に分散した項目68に記載の組成物を含む、薬学的組成物。
(項目74)
ポリエチレングリコール部分に結合されている二量体ニューブラスチンポリペプチドまたは二量体改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む、安定な水溶性結合体化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの複合体であって、そのニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドは、不安定な結合によってそのポリエチレングリコール部分に結合されている、複合体。
(項目75)
項目74に記載の複合体であって、上記不安定な結合が、生化学的加水分解、タンパク質分解、またはスルフヒドリル切断によって切断可能である、複合体。
(項目76)
項目75に記載の複合体であって、上記不安定な結合が、インビボ条件下で切断可能である、複合体。
(項目77)
二量体化した場合の野生型ニューブラスチンポリペプチドと比較して長期の活性を、インビトロまたはインビボで二量体化した場合に有する、修飾ニューブラスチンポリペプチドを生成するための方法であって、その方法は、
ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを提供する工程;および
そのポリペプチドまたは修飾改変体ニューブラスチンポリペプチドを、天然に存在しないポリマー部分に結合し、それにより、結合ポリマーニューブラスチンポリペプチド組成物を形成する工程;
を包含する、方法。
(項目78)
被験体における神経系障害を処置または予防する方法であって、その方法は、
その処置または予防を必要とする被験体に、治療上有効な量の、
項目1に記載のポリペプチドを含む二量体;項目52に記載の組成物であって、上記ニューブラスチンポリペプチド結合体もしくは改変体ニューブラスチンポリペプチド結合体の二量体を含む、組成物;項目69に記載の薬学的組成物;または項目74に記載の複合体;
を投与する工程を包含する、方法。
(項目79)
項目78に記載の方法であって、上記神経障害が、末梢神経障害である、方法。
(項目80)
項目78に記載の方法であって、上記障害が、末梢ニューロパシーである、方法。
(項目81)
項目78に記載の方法であって、上記障害が、ニューロパシー性疼痛症候群である、方法。
(項目82)
項目78に記載の方法であって、上記被検体がヒトである、方法。
(項目83)
項目78に記載の方法であって、上記投与が全身投与である、方法。
(項目84)
項目78に記載の方法であって、上記投与が局所投与である、方法。

(発明の要旨)
本発明は、一部、インビボにおいて増強した薬物動態学的(pharmokinetic)特性およびバイオアベイラビリティ特性を示す、新しい形態のニューブラスチンの発見に基づく。これらの新規形態としては、ポリマー分子に結合体化された改変ニューブラスチンポリペプチドが挙げられる。
【0007】
1つの局面において、本発明は、成熟ニューブラスチンダイマーの溶媒露出位置にて1つ以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチド、またはムテインニューブラスチンポリペプチドを特徴とする。この置換は、基材(例えば、天然に存在するポリマーまたは合成ポリマー)がポリペプチドに結合され得、インビボにおいてそのポリペプチドの可溶性を増強し、ゆえにそのポリペプチドのバイオアベイラビリティを増強する1つ以上の部位を、ネイティブなニューブラスチンポリペプチドに導入する。好ましくは、本改変体ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸8〜113に少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。この改変体ニューブラスチンポリペプチドは、以下のような1つ以上のアミノ酸置換を含む:アミノ酸の位置を配列番号1のポリペプチド配列に従って番号付けした場合、アルギニン以外のアミノ酸が改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位に生じる、アミノ酸置換;アルギニン以外のアミノ酸が改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位に生じる、アミノ酸置換;アルギニン以外のアミノ酸が改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の68位に生じる、アミノ酸置換;または、アスパラギン以外のアミノ酸が改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の95位に生じる、アミノ酸置換。
【0008】
本明細書中に使用される場合、「野生型ニューブラスチン」または「wt−NBN」は、天然に存在するニューブラスチンポリペプチド配列またはネイティブなニューブラスチンポリペプチド配列、例えば、ラットニューブラスチン、マウスニューブラスチン、またはヒトニューブラスチンのポリペプチド配列(例えば、配列番号2、3または4を参照のこと)をいう。特定の改変体ニューブラスチンポリペプチドは、本明細書中、「NBN−X」または「X−NBN」と称され、ここで、Xは、野生型ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸をいい、Nは、配列番号1に従って番号付けした場合の配列におけるXアミノ酸の位置番号をいう。Xは、配列中に示された位置番号における野生型アミノ酸に対するアミノ酸置換をいう。従って、例えば、NBN−N95Kは、95位におけるアスパラギンがリジンによって置換された改変体ニューブラスチンポリペプチドを同定する。
【0009】
改変体ニューブラスチンポリペプチドは、マルチマーポリペプチドとして提供され得る。例えば、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、少なくとも1つの改変体ニューブラスチンポリペプチドを含むダイマーとして提供され得る。いくつかの実施形態において、このダイマーは、改変体ニューブラスチンポリペプチドのホモダイマーである。他の実施形態において、このダイマーは、1つの改変体ニューブラスチンポリペプチドおよび1つの野生型ニューブラスチンポリペプチドを含む、ヘテロダイマーである。他のダイマーは、2つの異なる改変体ニューブラスチンポリペプチド形態を含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、アミノ酸8〜113に加え配列番号1のアミノ酸1〜7を含む。
【0011】
好ましい実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ダイマー化する場合、GFRα3に結合する。さらなる好ましい実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ダイマー化する場合、それ自体でかまたはGFRα3に結合した場合かのいずれかにて、RETポリペプチドのチロシンリン酸化を刺激する。
【0012】
なお他の好ましい実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ダイマー化する場合、ニューロンの生存を増強する(例えば、感覚ニューロンの生存を増強する)。
【0013】
なお他の好ましい実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ダイマー化する場合、ニューロン(例えば、感覚ニューロン)の病理学的な変化を正規化する。
【0014】
なおさらなる好ましい実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ダイマー化する場合、ニューロン(例えば、自律性ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロン)の生存を増強する。
【0015】
いくつかの実施形態において、改変体ポリペプチドは、以下からなる群より選択される2、3またはそれより多くのアミノ酸置換を含む:改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位でのアルギニン以外のアミノ酸、改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位でのアルギニン以外のアミノ酸、改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の68位でのアルギニン以外のアミノ酸、および改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の95位でのアスパラギン以外のアミノ酸。
【0016】
好ましい実施形態において、14位、39位、68位および95位の1つ以上におけるアミノ酸は、リジンである。
【0017】
好ましくは、改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113は、配列番号1のアミノ酸8〜94および96〜113と少なくとも90%同一である。より好ましくは、このアミノ酸配列は、これらに対して少なくとも95%同一である。最も好ましくは、改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列は、天然に存在するラットニューブラスチンポリペプチド、ヒトニューブラスチンポリペプチドまたはマウスニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列を、改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113に含む。例えば、改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸8〜94および96〜113は、配列番号2、配列番号3、または配列番号4のアミノ酸8〜94および96〜113のアミノ酸配列を含み得る。
【0018】
改変体ニューブラスチンポリペプチドまたは野生型ニューブラスチンポリペプチドを含む融合タンパク質もしくは融合ポリペプチド、または2つのニューブラスチン融合タンパク質のダイマーであるタンパク質もまた、本発明によって提供される。ニューブラスチン融合タンパク質はまた、インビボにおいて増強された薬物動態学的特性およびバイオアベイラビリティ特性を有する。
【0019】
別の局面において、本発明は、改変体ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。改変体ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸は、好ましくは、ベクター(例えば、発現ベクター)中に提供される。改変体ニューブラスチン核酸またはこれを含むベクターは、細胞中に提供され得る。この細胞は、例えば、哺乳動物細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または細菌細胞であり得る。好ましい哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(「CHO細胞」)である。
【0020】
改変体ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で改変体ニューブラスチン核酸をコードする核酸を含む細胞を培養することによって、改変体ニューブラスチンポリペプチドを作製する方法もまた、本発明によって提供される。所望される場合、この改変体ニューブラスチンポリペプチドは、その後回収され得る。本発明はさらに、細胞によって産生される改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む。本発明の融合タンパク質(例えば、ニューブラスチン−血清アルブミン融合タンパク質)について、類似の核酸、ベクター、宿主細胞、およびポリペプチドの産生方法が、本明細書中に開示される。
【0021】
天然に存在するポリマーに結合体化されたニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む組成物もまた、本発明によって提供される。この組成物中の改変体ニューブラスチンポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸8〜113に少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含み、ただし、この改変体ニューブラスチンポリペプチドは、以下からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む:改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の14位でのアルギニン以外のアミノ酸、改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の39位でのアルギニン以外のアミノ酸、改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の68位でのアルギニン以外のアミノ酸、および改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の95位でのアスパラギン以外のアミノ酸(ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチド配列に従って番号付けされる)。
【0022】
好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリアルキレングリコール部分(例えば、ポリエチレングリコール部分(PEG))を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、このポリアルキレングリコール部分は、ニューブラスチンポリペプチドのアミン基に結合されるか、または改変体ニューブラスチンポリペプチドのリジンに結合される。
【0024】
カップリングは、N−ヒドロキシルスクシンイミド(NHS)活性エステルを介して生じ得る。この活性エステルは、例えば、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)、スクシンイミジルブチレート(SPB−PEG)、またはスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)であり得る。
【0025】
このポリアルキレングリコール部分は、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート(tresylate)、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、またはPNPカルボネートであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリアルキレングリコール部分は、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのシステイン基に結合される。例えば、カップリングは、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基、およびチオール基を介して生じ得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、組成物中のニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドは、グリコシル化される。ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ポリペプチドがグリコシル化される場合、ポリマーはグリコシル化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの糖質部分に結合され得る。例えば、グリコシル化ニューブラスチンポリペプチドもしくは改変体ニューブラスチンポリペプチドのヒドラゾール基もしくはアミノ基の酸化、またはポリマーの反応基の酸化の後、ポリマーがグリコシル化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドに結合され得る。
【0028】
種々の実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドは、1、2、3、または4つのPEG部分を含む。
【0029】
好ましい実施形態において、ニューブラスチンポリペプチド、改変体ニューブラスチンポリペプチド、またはポリマー結合体は、ポリマーの非存在下でのそのポリペプチドまたは改変体ポリペプチドの半減期と比較して、より長い血清半減期を有する。
【0030】
好ましい実施形態において、複合体中のニューブラスチンポリペプチド、改変体ニューブラスチンポリペプチド、またはポリマー結合体は、GFRα3結合、RET活性化、ニューロンの病理学的変化の正規化、またはニューロン生存の増強からなる群より選択される生理学的活性を有する。
【0031】
「ニューロンの病理学的変化の正規化」は、本結合体が、以下の細胞性パラメーター:構造タンパク質、神経栄養因子レセプター、イオンチャネル、もしくは神経伝達物質の発現レベル、のうちの1つ以上に変化を誘導するか、あるいは、細胞形態に変化を誘導して、各場合において、疾患、変性、傷害、または損傷による影響を受けていない同じまたは類似の表現型のニューロンにおけるこれらのレベルまで、このようなパラメーターを実質
的に回復させることを意味する。ニューロンの病理学的変化の正規化は、免疫組織化学的にモニターされ得るか、あるいは分泌もしくは流出された細胞生成物のレベルにおける変化を評価することによって、または冒されたニューロンの機能に生理学的に原因がある挙動におけるインビボ変化を評価することによってモニターされ得る。例えば、神経障害疼痛症候群と関連する病理学的変化の場合、、疼痛挙動(例えば、痛覚過敏、痛感鈍麻、または異痛)が、モニターされ得る。
【0032】
「ニューロン生存を増強する」は、同じ型の疾患、障害、傷害、または損傷によって冒されたが本発明のニューブラスチン結合体またはニューブラスチン融合タンパク質で処理されていない対応するニューロンにおいて観察される生存期間を超えた、冒されたニューロンの生存の延長を意味する。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、N末端のニューブラスチン(neublastin)上の部位で、このポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの非末端アミノ酸における部位で、このポリペプチドに結合される。
【0034】
好ましい実施形態において、ポリマーは、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの溶媒に露出されたアミノ酸に結合される。
【0035】
好ましい実施形態において、ポリマーは、以下からなる群より選択される残基で、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドに結合される:改変体ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の14位、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の39位、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の68位、およびニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ポリペプチドのアミノ酸配列の95位。
【0036】
本発明のニューブラスチンポリペプチド、改変体ニューブラスチンポリペプチドまたは結合体を含むかまたはその中に分散された生理学的に受容可能なビヒクルを含む、薬学的組成物もまた、本発明によって提供される。
【0037】
さらなる局面において、本発明は、安定な水溶性の結合体化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの複合体を包含し、この複合体は、ポリエチレングリコール部分に結合されたニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含み、ここで、このニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドは、不安定な結合によってポリエチレングリコール部分に結合されている。いくつかの実施形態において、この不安定な結合は、生化学的な加水分解、タンパク質分解、またはスルフヒドリル切断によって切断可能である。好ましい実施形態において、この不安定な結合は、インビボ条件下で切断可能である。
【0038】
野生型ニューブラスチンと比較して、インビトロまたはインビボで延長された活性を有する、改変ニューブラスチンポリペプチドを作製するための方法もまた、本発明によって提供され、これは、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを提供し、そしてこのポリペプチドまたは改変改変体ニューブラスチンポリペプチドを天然に存在しないポリマー部分に結合させ、それによって、結合されたポリマーニューブラスチンポリペプチド組成物を形成することによる。
【0039】
さらなる局面において、本発明は、被験体(例えば、ヒト)における神経系の障害を処置または予防する方法を提供し、この方法は、その処置が必要とされる被験体に、治療有効量の、改変体ニューブラスチンポリペプチド、ポリマーに結合されたニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む組成物、あるいは安定な水溶性の結合体化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドの複合体(ポリエチレングリコール部分に結合されたニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む)を含む複合体、を投与することによる。
【0040】
好ましくは、神経系の障害は、末梢神経障害(例えば、末梢ニューロパシーまたはニューロパシー性疼痛症候群)である。ヒトが、この処置に好ましい被験体である。
【0041】
投与は、例えば、全身的または局所的であり得る。
【0042】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料に類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、単なる例示であり、限定することを意図されない。
【0043】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
本発明は、その薬物動態特性およびバイオアベイラビリティ特性を増強するように改変され得る、新規改変体ニューブラスチンポリペプチドを提供する。好ましい改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ポリマー薬剤(例えば、ポリアルキレングリコールポリマー)への結合を容易にする、変更されたアミノ酸配列を有する。
【0045】
(改変体ニューブラスチンポリペプチド)
本発明は、野生型ニューブラスチンポリペプチド配列に対する改変体アミノ酸配列を有する、ニューブラスチンポリペプチドを提供する。ヒトおよびマウスのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列は、WO00/01815に開示される。本発明に従う改変体ニューブラスチンポリペプチドの例を、表1に示す。
【0046】
好ましくは、改変体ニューブラスチンポリペプチドの変更された残基は、改変されたアミノ酸の位置でのポリマー(例えば、ポリアルキレングリコールポリマー)の結合を容易にするように選択される。ニューブラスチンポリペプチドの好ましい改変部位は、ニューブラスチンポリペプチドにおける溶媒が接近可能な領域の部位である。このような部位は、関連する神経栄養因子であるGDNFの結晶構造の精査に基づいて選択され得、この結晶構造は、Nat.Struct.Biol.4:435−38,1997に記載される。部位はまた、パーセフィン(persephin)/ニューブラスチンのキメラタンパク質について提供された構造−機能情報に基づいて選択され得る。これらのキメラは、J.Biol.Chem.275:3412−20,2000に記載される。この方法によって同定された、溶媒が接近可能な、すなわち表面に露出された、ニューブラスチンアミノ酸の例示的列挙を、表2に示す。
【0047】
本発明は、表1に示される、配列番号1のアミノ酸8〜113に少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、改変体ニューブラスチンポリペプチドを包含する。いくつかの実施形態において、このポリペプチドのアミノ酸配列の14位、39位、68位のアルギニンまたは95位のアスパラギンのうちの1以上が、アルギニンまたはアスパラギン以外のアミノ酸によって置換される。好ましくは、この野生型アミノ酸は、リジンまたはシステインと置換される。
【0048】
【表1】


表2は、表面に露出されることが予測される、ヒトニューブラスチンにおける残基および番号の列挙を提供する。表面に露出された残基は、鎖AおよびBによって形成されるラットGDNFダイマーの構造(PDBコード1AGQ)を試験して、そしてこの構造の表面上に残基が存在するか否かを決定することによって、決定される。次いで、この構造を、Balohら、Neuron、第21巻、1291頁、1998におけるGDNFおよびニューブラスチンの配列アライメントと比較して、ニューブラスチンにおける適切な残基を決定する。この番号付けスキームを、表1に示す。
【0049】
【表2】


n/aは、その残基がGDNFの構造に存在しないことを示す。これは、構造設計、可撓性領域、またはGDNFに対するニューブラスチンにおける挿入(残基68〜71)のいずれかに起因する。
−は、その残基が包埋されており、そして表面上にないか、またはジスルフィド結合に関与するシステイン残基であることを示す。このタンパク質がシステイン節である場合、これらの残基の大多数は、表面上に存在する。
+は、その残基がGDNF構造中で表面に露出されており、従って、ニューブラスチン中で表面に露出されることが推測されることを示すが、残基66〜75を含むループは、GDNFモノマーのうちの一方(おそらく可撓性)のみに見られ得る。このループはまた、GDNFに対するニューブラスチン中の4残基挿入を含む。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「同一性」および「相同」または「相同性」は、交換可能に使用され、2つのポリペプチド、分子または2つの核酸間の配列類似性をいう。2つの比較配列の両方におけるある位置が、同じ塩基またはアミノ酸のモノマーサブユニットによって占有される場合(例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置が、アラニンによって占有される場合か、または2つのポリペプチドの各々におけるある位置が、リジンによって占有される場合)、それぞれの分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性%は、その2つの配列によって共有される一致するかまたは相同な位置の数の関数であり、この数を、比較した位置の数で除算して100を掛けたものである。例えば、2つの配列中の10個の位置のうちの6個が、一致するかまたは相同である場合、2つの配列は、60%相同である。例として、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%の相同性を共有する(全6個の位置のうちの3個が一致する)。一般に、比較は、2つの配列を最大の相同性を与えるように整列された場合に行われる。このようなアライメントは、例えば、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムによって簡便に実行される、Needlemanら、J.Mol.Biol.48:443−453(1970)の方法を使用して提供され得る。「類似」の配列は、整列された場合に、同一および類似のアミノ酸残基を共有する配列であり、ここで、類似の残基は、その整列された参照配列中の対応するアミノ酸残基に対する保存的置換またはその対応するアミノ酸の「許容される点変異」である。この点において、参照配列中の残基の「保存的置換」は、対応する参照残基に物理的または機能的に類似する(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学特性(共有結合または水素結合を形成する能力を含む)などを有する)残基による置換である。従って、「保存的置換改変体」配列は、1以上の保存的置換または許容される点変異が存在するという点で参照配列または野生型配列と異なる配列である。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明に従うポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸8〜113に80%、85%、90%、95%、98%または99%同一である。いくつかの実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列は、その改変体ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸1〜94および96〜113で、天然に存在するラット、ヒトまたはマウスのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列を含み、例えば、このポリペプチドは、これらの位置で配列番号2、3または4のアミノ酸配列を有する。
【0052】
配列番号1〜4に開示されるポリペプチドと配列が異なる改変体ニューブラスチンポリペプチドは、1以上の保存的アミノ酸置換を含み得る。あるいは、またはさらに、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、1以上の非保存的アミノ酸置換によってか、あるいは欠失または挿入によって異なり得る。好ましくは、置換、挿入または欠失は、単離されたタンパク質の生物学的活性を消失しない。
【0053】
保存的置換としては、代表的に、以下のグループ内での置換のような、あるアミノ酸の、類似の特性を有する別のアミノ酸での置換が挙げられる:バリン、アラニンおよびグリシン;ロイシン、バリンおよびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリン、システインおよびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性の疎水性アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。上記の極性、塩基性または酸性のグループの1つのメンバーの、同グループの別のメンバーでの任意の置換は、保存的置換とみなされ得る。
【0054】
他の置換は、当業者に容易に同定され得る。例えば、アミノ酸アラニンについて、D−アラニン、グリシン、β−アラニン、L−システインおよびD−システインのいずれか1つで、置換がなされ得る。リジンについて、置換は、D−リジン、アルギニン、D−アルギニン、ホモ−アルギニン、メチオニン、D−メチオニン、オルニチン、またはD−オルニチンのいずれか1つであり得る。一般に、単離されたポリペプチドの特性において変化を誘導することが予測され得る機能的に重要な領域における置換は、(i)極性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)が、疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンまたはアラニン)の代わりに置換されるか、または極性残基が疎水性酸基によって置換される;(ii)システイン残基が、任意の他の残基の代わりに置換されるか、またはシステイン残基が、任意の他の残基で置換される;(iii)正に荷電した側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニンまたはヒスチジン)が、負に荷電した側鎖を有する残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)の代わりに置換されるか、または正に荷電した側鎖を有する残基が、負に荷電した側鎖を有する残基で置換される;あるいは(iv)かさ高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、このような側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)の代わりに置換されるか、またはかさ高い側鎖を有する残基が、このような側鎖を有さない残基で置換される、置換である。前述の非保存的置換の1つがタンパク質の機能的特性を変更し得る可能性はまた、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換位置に相関し:従って、いくつかの非保存的置換は、生物学的特性にほとんどまたは全く影響を有し得ない。
【0055】
改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む、マルチマーポリペプチドもまた、本発明によって提供される。マルチマーポリペプチドは、好ましくは、精製されたマルチマーポリペプチドとして提供される。マルチマー複合体の例としては、例えば、ダイマー複合体が挙げられる。マルチマー複合体は、ヘテロマーまたはホモマーの複合体として提供され得る。従って、マルチマー複合体は、1つの改変体ニューブラスチンポリペプチドおよび1つの非改変体ニューブラスチンを含むヘテロダイマー複合体であり得るか、または2以上の改変体ニューブラスチンポリペプチドを含むヘテロダイマー複合体であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、GFRα3に結合する。好ましくは、改変体ニューブラスチンポリペプチドの結合は、RETポリペプチドのリン酸化を刺激する。ポリペプチドがGFRα3に結合するか否かを決定するために、WO00/01815に記載されるようなアッセイを行い得る。例えば、CHO細胞株の培地上清中のニューブラスチンの存在は、Sanicolaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1997,94:6238)によって記載される三元複合体アッセイの改変形態を使用して示され得る。このアッセイにおいて、GDNF様分子の能力は、RETの細胞外ドメインと種々のコレセプターGFRα1、GFRα2およびGFRα3との間の結合を媒介するそれらの能力について評価され得る。RETの可溶性形態およびコレセプターは、融合タンパク質として生成される。ラットRETの細胞外ドメインと胎盤アルカリホスファターゼとの間の融合タンパク質(RET−AP)、およびラットGFRα−1の細胞外ドメイン(公開された出願WO9744356(1997年11月27日)(本明細書中に参考として援用される)に開示される)とヒトIgG1のFcドメインとの間の融合タンパク質(rGFR(α1−Ig)が、記載されている(Sanicolaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94:6238)。
【0057】
いくつかの実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ニューロンの生存を増強するか、またはニューロンの病理学的変化を正規化するか、あるいはその両方を行う。ポリペプチドが、ニューロンの生存を増強するか、またはニューロンの病理学的変化を正規化するかを決定するためのアッセイは、例えば、WO00/01815に記載される。好ましくは、ニューロンは、感覚ニューロン、自律ニューロンまたはドパミン作用性ニューロンである。
【0058】
(改変体ニューブラスチンポリペプチドの合成および単離)
改変体ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知の方法を用いて単離され得る。天然に存在するニューブラスチンポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームにより、細胞源または組織源から単離され得る。あるいは、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を用いて化学合成され得る。短いアミノ酸配列の合成は、ペプチド分野で十分に確立されている。例えば、Stewartら、Solid Phase Peptide Synthesis(第2版、1984)を参照のこと。
【0059】
別の実施形態において、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、組換えDNA技術により生成される。例えば、改変体ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子が、ベクター(例えば、発現ベクター)に挿入され得、そしてこの核酸は、細胞に導入され得る。適切な細胞として、例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞)、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および細菌細胞が挙げられる。組換え細胞中で発現される場合、細胞は、好ましくは、改変体ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養される。改変体ニューブラスチンポリペプチドは、所望の場合、細胞懸濁物から回収され得る。「回収する」は、改変ポリペプチドが、その回収プロセス前に存在する細胞または培養培地の成分から取り出されることを意味する。この回収プロセスは、1つ以上の再フォールディング工程または精製工程を含み得る。
【0060】
改変体ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかを用いて構築され得る。1つのこのような方法は、部位特異的変異誘発であり、この方法において、特定のヌクレオチド(または、所望の場合、少数の特定のヌクレオチド)が、コードされるニューブラスチンポリペプチド中の1つのアミノ酸(または、所望の場合、少数の予め決定されたアミノ酸)を変更するために変更される。当業者は、部位特異的変異誘発が慣用的であり、広く利用されている技術であることを認識している。実際、多くの部位特異的変異誘発キットが市販されている。1つのこのようなキットは、Clontech Laboratories(Palo Alto、Calif.)から販売されている「Transformer Site Directed Mutagenesis Kit」である。
【0061】
本発明の実施には、他に示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組替えDNA、タンパク質化学、および免疫学の従来技術を利用し、これらは当該分野の技術範囲内である。このような技術は、文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrook、FritschおよびManiatis編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989;DNA Cloning、Volume IおよびII(D.N.Glover編)、1985;Oligonucleotide Synthesis、(M.J.Gait、編)、1984;米国特許第4,683,195(Mullisら);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HainesおよびS.J.Higgins編)、1984;Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編)、1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney編).Alan R.Liss、Inc.、1987;Immobilized Cells and Enzymes、IRL Press、1986;A Practical Guide to Molecular Cloning(13.Perbal)、1984;Methods in Enzymology、Volume 154および155(Wuら編)、Academic Press、New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編)、1987、Cold Spring Harbor Laboratory;Immunochernical Methods in Cell and Molecular Biology(MayerおよびWalker編)、Academic Press、London、1987;Handbook of Experiment Immunology、Volume I−IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編)、1986;Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1986を参照のこと。
【0062】
(改変体ニューブラスチン融合タンパク質)
所望の場合、改変体ニューブラスチンポリペプチドは、融合タンパク質として提供され得る。本発明のタンパク質の融合ポリペプチド誘導体はまた、生物学的活性を保持する種々の構造形態の主要タンパク質を含む。本明細書中で使用する場合、「融合」は、2つ以上のタンパク質またはそれらのフラグメントの、それらの個々のペプチド骨格を通じた同一直線上の共有結合を意味し、最も好ましくは、同一のリーディングフレームにそれらのタンパク質をコードする(すなわち、「インフレーム」の)ポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通じた同一直線上の共有結合である。タンパク質またはそれらのフラグメントが、異なる供給源由来であることが好ましい。従って、好ましい融合タンパク質として、第2の部分(改変体ニューブラスチンではない)に共有結合された改変体ニューブラスチンタンパク質またはフラグメントが挙げられる。好ましくは、第2の部分は、モノマーとして存在し、ニューブラスチンポリペプチドに増強された溶解性および/または生物学的利用性(バイオアベイラビリティー)を付与するのに十分なポリペプチドから獲得される。
【0063】
例えば、「改変体ニューブラスチン/ヒト血清アルブミン融合体」は、本発明の改変体ニューブラスチンポリペプチドまたはそのフラグメントのN末端またはC末端が、ヒト血清アルブミンポリペプチドにインフレームで連結された本発明の改変体ニューブラスチンポリペプチドまたはそのフラグメントを含むタンパク質である(例えば、Syedら、Blood、1997、89:3243およびYehら、P.N.A.S. USA 1992、89:1904)ならびに米国特許第5,876,969号および同第5,302,697号を参照のこと。用語「融合タンパク質」は、さらに、改変体ニューブラスチンタンパク質ではなく、以下に記載されるような精製タンパク質からデノボ合成された第2の部分に、単機能分子または複機能分子を介して化学的に連結された改変体ニューブラスチンを含む。
【0064】
ニューブラスチン−血清アルブミン融合体は、当該分野で公知の方法を用いて構築され得る。対応するアミノ反応基およびチオール反応基を含む多くの架橋剤のいずれかが、ニューブラスチンを血清アルブミンに連結するために使用され得る。適切なリンカーの例として、チオール反応性マレイミドを挿入するアミン反応性架橋剤が挙げられる。これらとして、例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBSが挙げられる。他の適切なリンカーは、チオール反応性ハロアセテート基を挿入する。これらとして、例えば、SBAP、SIA、SIABが挙げられ、スルフヒドリル基と反応して還元性連結を提供するための保護チオールまたは非保護チオールを提供するものは、SPDP、SMPT、SATA、またはSATPであり、これらは全て、市販されている(例えば、Pierce Chemicals)。当業者は、ニューブラスチンのN末端と血清アルブミンを連結する代替のストラテジーを同様に想到し得る。
【0065】
当業者が、NBNのN末端または血清アルブミンのチオール部分に標的化されない血清アルブミンとの結合体を作製し得ることもまた想到される。所望の場合、NBN−血清アルブミン融合体は、遺伝子工学技術を用いて作製され得る。ここで、NBNは、そのN末端、C末端または両末端で血清アルブミン遺伝子と融合される。
【0066】
動物(ヒトを含む)中で延長された半減期を有する生成物を生じる任意のNBN結合体が、類似のストラテジーを用いて作製され得ることが、さらに企図される。
【0067】
改変体ニューブラスチンの他の誘導体として、改変体ニューブラスチンまたはそのフラグメントと、他のタンパク質またはポリペプチドとの(例えば、さらなるN末端またはC末端としての組換え培養物中での合成による)共有結合性結合体または凝集性結合体が挙げられる。例えば、結合体化されるペプチドは、細胞膜または細胞壁の内側または外側でその合成部位から機能部位への移動を同時翻訳によるかまたは翻訳後に指向する、タンパク質のN末端領域のシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列(例えば、酵母α因子リーダー)であり得る。ニューブラスチンレセプタータンパク質は、ニューブラスチンの精製または同定を容易にするために付加されたペプチドを含み得る(例えば、ヒスチジン/ニューブラスチン融合体)。ニューブラスチンのアミノ酸配列はまた、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)に連結され得る(Hoppら、Biotechnology 6:1204、1988)。後者の配列は、非常に抗原性であり、そして特異的なモノクローナル抗体により可逆的に結合され、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にするエピトープを提供する。
【0068】
この配列はまた、Asp−Lys対の直後の残基で、ウシ粘膜エンテロキナーゼにより特異的に切断される。
【0069】
(ポリマーに結合体化された改変体ニューブラスチンポリペプチド)
所望の場合、1つのポリマー分子が、ニューブラスチンポリペプチドとの結合体化のために使用され得るが、1つより多いポリマー分子が同様に結合され得ることもまた企図される。本発明の結合体化ニューブラスチン組成物は、インビボ適用および非インビボ適用の両方において有用性を見出し得る。さらに、結合体化ポリマーは、最終用途の適用に適切なように、任意の他の基、部分、または他の結合体化された種を使用し得ることが認識される。例として、そのポリマーに対してUV分解耐性または抗酸化性あるいは他の特性または特徴を付与する官能部分をそのポリマーに共有結合させることが、いくつかの適用において有用であり得る。さらなる例として、結合体化物質全体の種々の特性または特徴を増強するようにそのポリマーを反応性または架橋可能にするために、そのポリマーを官能化することが、いくつかの適用において有利であり得る。従って、ポリマーは、その意図する目的のための結合体化ニューブラスチンムテイン組成物の効果を妨げない任意の官能基、反復基、連結、または他の構成性構造を含み得る。
【0070】
これらの所望の特徴を達成するために有用に使用され得る例示的なポリマーは、例示的な反応スキームにおいて本明細書中以下に記載される。共有結合したペプチドの適用において、ポリマーは官能化され得、次いで、このペプチドの遊離アミノ酸に連結されて不安定な結合を形成し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、ポリペプチドの末端反応基を通じてポリマーに連結される。あるいは、またはそれに加えて、ニューブラスチンポリペプチドは、内部リジン残基(例えば、天然に存在するニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列に導入されたリジン残基)の側鎖アミノ基を通じて連結され得る。従って、結合体はまた、非末端反応基から分枝され得る。反応基を有するポリマーは、本明細書中で「活性化ポリマー」として表される。この反応基は、タンパク質中の遊離アミノ基または他の反応基と選択的に反応する。
【0072】
結合は、活性化ポリマーにおいて、任意の利用可能なニューブラスチンアミノ基(例えば、リジン残基またはニューブラスチンポリペプチドもしくはその改変体のアミノ酸配列に導入された残基のαアミノ基またはεアミノ基)で生じ得る。ニューブラスチンの遊離のカルボキシル基、適切に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル、グアニジル、イミダゾール、酸化糖質部分、およびメルカプト基(利用可能な場合)もまた、結合部分として使用され得る。
【0073】
一般的に、タンパク質濃度に依存して、1モルのタンパク質あたり約1.0〜約10モルの活性化ポリマーが使用される。最終量は、反応の程度を最大にしつつ生成物の非特異的修飾を最小限に抑えることと、同時に最適な活性を維持する化学特性を規定しつつ同時に、可能な場合、タンパク質の半減期を最適化することとの間の釣り合いである。好ましくは、そのタンパク質の生物学的活性の少なくとも約50%が保持され、そして最も好ましくは、ほぼ100%が保持される。
【0074】
この反応は、反応基がN末端のαアミノ基上に存在する場合、好ましくは、約pH5〜8(例えば、pH5、6、7、または8)にて、生物学的に活性な物質と不活性ポリマーとを反応させるために使用される任意の適切な方法により行われ得る。一般的に、このプロセスは、活性化ポリマーを調製する工程、およびその後にこの活性化ポリマーとタンパク質を反応させて処方に適した可溶性タンパク質を生成する工程を包含する。上記の修飾反応は、1つ以上の工程を包含し得るいくつかの方法により実施され得る。
【0075】
ポリマーは、当該分野で公知の方法を用いて改変体ニューブラスチンポリペプチドに連結され得る。例えば、1つの実施形態において、ポリアルキレングリコール部分が、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのリジン基に連結され得る。リジン基への連結は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル(例えば、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)およびスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG))を用いて実施され得る。適切なポリアルキレングルコール部分として、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、およびPNPカルボネートが挙げられる。
【0076】
さらにアミン反応性PEGリンカーが、スクシンイミジル部分と置換され得る。これらとして、例えば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカルボネート、エポキシド、およびベンゾトリアゾールカルボネートが挙げられる。条件は、好ましくは、選択性および程度または反応を最大にするよう選択される。直鎖形態または分枝形態のPEGは、他のアルキル形態と同様に使用され得る。PEGの長さは変更され得る。最も一般的な形態は、2K〜100Kの大きさで変更され得る。本実施例は、N末端での標的化されたペグ化が薬物動態特性に影響を及ぼさないこと、生理学的機能を保持する物質は、本明細書中で開示される部位での修飾が有害でないことを示すという事実を報告する。従って、リジン残基の挿入を通じた結合のさらなる部位を提供し得る変異形態のNBNを作製する上で、これらの形態はリジンおよびN末端の両方でペグ化されるという起こり得る結果が、容認可能であるとみなされる。
【0077】
所望の場合、ニューブラスチン(neublastin)改変体ポリペプチドは、タグ(例えば、その後のタンパク質分解によって放出され得るタグ)を含み得る。従って、リジン部分は、ヒスタグ改変体を、リジンおよびN末端の両方と反応する低分子量リンカー(例えば、Traut試薬(Pierce))と最初に反応させ、次いで、このヒスタグを放出することによって、選択的に改変され得る。次いで、このポリペプチドは、チオール反応性ヘッド基(例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基または遊離SHもしくは保護SH)を含むPEGで選択的に修飾され得る遊離SHを含む。
【0078】
Traut試薬は、PEG結合についての特定の部位を構築する任意のリンカーで置換され得る。例として、Traut試薬は、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(全てPireceから入手可能)で置換され得る。同様に、このタンパク質を、マレイミド(例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUSまたはGMBS)、ハロアセテート基(SBAP、SIA、SIAB)またはビニルスルホン基を挿入するアミン反応性リンカーと反応させ得、そして得られた生成物を、遊離SHを含むPEGと反応させ得る。使用されるリンカーのサイズに対する唯一の制限は、N末端タグの引き続く除去をブロックできないことである。
【0079】
従って、他の実施形態において、ポリアルキレングリコール部分は、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドのシステイン基とカップリングされる。カップリングは、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基およびチオール基を使用して、もたらされ得る。
【0080】
改変体ニューブラスチンポリペプチド上の1以上の部位は、ポリマーとカップリングされ得る。例えば、1、2、3、4、または5個のPEG部分が、ポリマーに結合され得る。いくつかの実施形態において、PEG部分は、表1に示されるように番号付けされたニューブラスチンポリペプチドのアミノ末端および/またはアミノ酸14、39、68および95で結合される。
【0081】
好ましい実施形態において、組成物中の改変体ニューブラスチンポリペプチドは、ポリマーの非存在下での改変体ニューブラスチンポリペプチドの半減期と比較して、より長い半減期を有する。あるいは、またはさらに、組成物中の改変体ニューブラスチンポリペプチドは、GFRα3に結合し、RETを活性化し、ニューロンの病理学的変化を中和するか、またはニューロンの生存を増強するか、あるいはこれらの生理学的機能の組み合わせを実行する。
【0082】
好ましい実施形態において、この組成物は、安定な水溶性結合体化ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチド複合体(これは、ポリエチレングリコール部分とカップリングされたニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドを含む)として提供され得る。所望の場合、ニューブラスチンポリペプチドまたは改変体ニューブラスチンポリペプチドは、不安定な結合によってポリエチレングリコール部分とカップリングされ得る。この不安定な結合は、例えば、生化学的加水分解、タンパク質分解またはスルフヒドリル切断によって、切断され得る。例えば、この結合は、インビボ(生理学的)条件下で切断され得る。
【0083】
(改変体ニューブラスチン−ポリマー結合体を含む薬学的組成物)
本発明の改変体ニューブラスチン−ポリマー結合体を含む薬学的組成物がまた、提供される。「薬学的組成物」は、本明細書中で使用される場合、本発明のニューブラスチンタンパク質または結合体を含み、生理学的に受容可能なビヒクル中に分散され、必要に応じて1以上の他の生理学的に適合性の成分を含むとして定義される。従って、薬学的組成物は、賦形剤(例えば、水、1以上のミネラル、糖、界面活性剤)および1以上のキャリア(例えば、不活性タンパク質(例えば、ヘパリンまたはアルブミン))を含み得る。
【0084】
本発明のポリマー−ニューブラスチン結合体は、それ自体で、ならびに薬学的に受容可能なエステル、塩および他の生理学的に機能的な誘導体の形態で、投与され得る。このような薬学的処方物または医学的処方物において、改変体ニューブラスチン結合体は、好ましくは、1以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要に応じて任意の他の治療成分と共に使用される。
【0085】
キャリアは、処方物の他の成分と適合性であり、そしてそのレシピエントに対して過度に有害でないという意味で、薬学的に受容可能でなければならない。改変体ニューブラスチンは、本明細書中に記載されるような所望の薬理学的効果または医学的に有利な効果を達成するに有効な量で、そして所望の生物利用可能なインビボ用量または濃度を達成するに適切な量で提供される。
【0086】
処方物としては、非経口投与ならびに経口投与および特異的投与様式(経口、直腸、頬、局所、鼻、眼、皮下、筋内、静脈内、経皮、髄腔内、関節内、動脈内、クモ膜下、気管支、リンパ、膣、および子宮内投与を含む)に適切な処方物が挙げられる。エアロゾルおよび非経口投与、局所的投与および全身投与の両方に適切な処方物が好ましい。
【0087】
改変体ニューブラスチンが、液体溶液を含む処方物中で使用される場合、この処方物は、経口的、気管支的または非経口的に、有利に投与され得る。ニューブラスチンが、液体懸濁処方物中で、または生物適合性のキャリア処方物中の粉末として使用される場合、この処方物は、経口的、直腸的または気管支的に有利に投与され得る。あるいは、この処方物は、適切な噴霧デバイスを備える呼吸回路から患者により吸入される粉末の気体分散物を形成する、キャリア気体中の粉末の噴霧を介して、経鼻または気管支的に投与され得る。
【0088】
本発明のタンパク質を含む処方物は、単位投薬形態で簡便に提供され得、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。このような方法は、一般に、活性成分を、1以上のアクセサリ成分を構成するキャリアと結合させる工程を包含する。
【0089】
代表的に、この処方物は、活性成分を、液体キャリア、微細に分割された固体キャリアまたはこれら両方と均一かつ密に関連させ、次いで必要な場合には、生成物を所望の処方物の投薬形態へと成形することによって、調製される。
【0090】
経口投与に適切な本発明の処方物は、別個の単位(例えば、カプセル、カシェ剤、錠剤またはロゼンジ(各々、粉末または顆粒として所定量の活性成分を含む))として提供され得るか;または水性溶液もしくは非水性溶液中の懸濁物(例えば、シロップ、エリキシル剤、エマルジョンまたは一回分)として提供され得る。
【0091】
非経口投与に適切な処方物は、簡便には、活性結合体の滅菌水性調製物(これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張である(例えば、生理学的食塩水))を含む。このような処方物は、懸濁剤および増粘剤、または化合物を血液成分もしくは1以上の器官へと標的化するために設計される他の微粒子系を含み得る。この処方物は、単位用量または単位投薬形態で提供され得る。
【0092】
鼻スプレー処方物は、保存剤および等張剤と共に活性な結合体の精製水溶液を含む。このような処方物は、好ましくは、鼻粘膜に適合性のpHおよび等張状態に調整される。
【0093】
直腸投与のための処方物は、適切なキャリア(例えば、ココアバター、水素付加脂肪、または水素付加脂肪カルボン酸)を用いて、坐剤として提供され得る。pHおよび等張因子が、好ましくは、眼のpHおよび等張に調整される点を除いて、点眼剤のような眼処方物は、鼻スプレーと類似の方法により調製される。
【0094】
局所的処方物は、1以上の媒体(例えば、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール)または局所的薬学的処方物のために使用される他の基剤中に、溶解または懸濁された本発明の結合体を含む。
【0095】
上記の成分に加えて、本発明の処方物は、希釈剤、緩衝液、香味剤、崩壊剤、界面活性剤、増粘剤、潤沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択される1以上のアクセサリ成分をさらに含み得る。上記の考慮はまた、本発明のニューブラスチン融合タンパク質(例えば、ニューブラスチン−HSA融合物)にも適用される。
【0096】
従って、本発明は、本発明の好ましい例示的な適用として、溶液中の改変体ニューブラスチン結合体のインビトロ安定性に適切な融合タンパク質の提供を意図する。融合タンパク質は、例えば、酵素的分解に対する改変体ニューブラスチンポリペプチドの耐性を増大し、そして有効期限、室温での安定性などを改善する手段を適用するために、使用され得る。上記の考慮はまた、本発明のニューブラスチン−血清アルブミン融合タンパク質(ヒトニューブラスチン−ヒト血清アルブミン融合タンパク質を含む)にも適用されることが理解される。
【0097】
(処置方法)
改変体ニューブラスチンポリペプチドならびにその融合タンパク質または結合体は、生きている動物体(好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトを含む霊長類)の障害または疾患を処置または改善するために使用され得、この障害または疾患は、神経栄養剤の活性に応答性である。
【0098】
本発明の組成物は、例えば、注射、移植または摂取された薬学的組成物を介して、直接的に、ニューブラスチンポリペプチドに対して応答性の病理学的プロセスを処置するために使用され得る。この組成物は、生きている動物体(ヒトを含む)の障害または疾患を処置または改善するために使用され得、この障害または疾患は、神経栄養剤の活性に応答性である。この障害または疾患は、特に、外傷、手術、虚血、感染、代謝疾患、栄養欠乏、悪性疾患または毒性因子、および遺伝的プロセスまたは特発性プロセスによって引き起こされる神経系の損傷であり得る。
【0099】
この損傷は、特に、脊髄の背側神経節中、または以下の組織:膝神経節、下神経節および結節神経節;8番目の脳神経の聴覚前庭複合体;三叉神経節の上下顎葉の腹側外側局;ならびに中脳三叉核のいずれか中のニューロンを含む、感覚ニューロンもしくは網膜神経節細胞に対して生じたものであり得る。
【0100】
本発明の方法の好ましい実施形態において、この疾患または障害は、病変したニューロンまたは外傷性ニューロンを含む神経変性疾患(例えば、末梢神経、髄質および/または脊髄の外傷性病変、大脳虚血神経損傷、ニューロパシーおよび特に末梢ニューロパシー、末梢神経外傷または損傷、虚血発作、急性脳損傷、急性脊髄損傷、神経系腫瘍、多発性硬化症、神経毒への曝露、代謝疾患(例えば、糖尿病もしくは腎機能不全)、ならびに感染性因子によって引き起こされる損傷、神経変性障害(アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、パーキンソン−プラス(Parkinson−Plus)症候群、進行性核上麻痺(スティール−リチャードソン−オルスゼフスキー症候群)、オリーブ橋小脳萎縮(OPCA)、シャイ−ドレーガー症候群(多発性系萎縮症)、ゴム腫振せん麻痺痴呆複合症、筋萎縮性側索硬化症、または任意の他の先天性疾患もしくは神経変性疾患、および痴呆に関連する記憶障害)である。
【0101】
好ましい実施形態において、感覚ニューロンおよび/または自律神経系ニューロンが、処置され得る。特に、侵害受容ニューロンおよび機械的受容ニューロン、より具体的にはデルタ線維ニューロンおよびC−線維ニューロンが、処置され得る。さらに、自律神経系の交感ニューロンおよび副交感ニューロンが、処置され得る。
【0102】
別の好ましい実施形態において、運動神経疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(「ALS」))および脊髄筋萎縮症が処置され得る。なお別の好ましい実施形態において、本発明のニューブラスチン分子は、外傷性損傷後の神経回復を増強するために使用され得る。あるいは、またはさらに、改変体ニューブラスチンポリペプチド、または改変体ニューブラスチンポリペプチドの融合物もしくは結合体を含むマトリックスを有する神経ガイダンスチャネルが、本明細書中に記載される方法において使用され得る。このような神経ガイダンスチャネルは、例えば、米国特許第5,834,029号(本明細書中で参考として援用される)に開示される。
【0103】
好ましい実施形態において、本明細書中に開示される組成物(および同じものを含む薬学的組成物)は、末梢ニューロパシーの処置において使用される。本発明の分子を用いる処置について意図される末梢ニューロパシーのなかでも、外傷誘導性のニューロパシー(例えば、物理的損傷状態もしくは疾患状態、脳に対する物理的損傷、脊髄に対する物理的損傷、脳損傷に関連する発作および神経変性に関連する神経学的障害によって引き起こされるニューロパシー)である。感染、毒素曝露、および薬物曝露に二次的なニューロパシーもまた、本明細書に含まれる。全身疾患または代謝疾患に二次的なニューロパシーもまた、なおさらに本明細書中に含まれる。本明細書中で開示される組成物はまた、化学療法誘導性のニューロパシー(例えば、化学療法剤(例えば、タキソールまたはシスプラチン)の送達により引き起こされるニューロパシー);毒素誘導性ニューロパシー、薬物誘導性ニューロパシー、ビタミン欠乏誘導性ニューロパシー;特発性ニューロパシー;および糖尿病性ニューロパシーを処置するために使用され得る。例えば、米国特許第5,496,804号および同第5,916,555号(各々、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0104】
本明細書中に記載される組成物を使用して処置され得るさらなる状態は、軸索のニューロパシーおよび脱髄性ニューロパシーを含む、モノニューロパシー、モノ複合型(multiplex)ニューロパシーおよび多発性ニューロパシーであり、本明細書中に記載される組成物を使用する。
【0105】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物(およびニューロブラスチンを含む薬学的組成物)は、黄斑変性、色素性網膜炎、緑内障および類似の疾患に罹患した患者の網膜における光受容体の損失を含む、眼における種々の障害の処置において使用される。
【0106】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例において例証される。
【実施例】
【0107】
(実施例1−N末端ペグ化されたニューブラスチン(neublastin)のバイオアベイラビリティ)
ラットの静脈内に投与された場合、CHO細胞から得られた組換えヒトニューブラスチンが、循環から迅速に取り除かれることが観察された。皮下の投与のあとには、いかなるタンパク質も、血清中に検出されなかった。ニューブラスチンのバイオアベイラビリティーを増加するために、ペグ化形態を、構築した。
【0108】
NBN配列中にはリジンが存在しないので、アミン特異的ペグ化化学は、アミノ末端で、NBNポリペプチドのペグ化を生じる。従って、ニューブラスチンの2量体の各々について、2つのPEG部分が、結合されるはずである。従って、アミン特異的化学によって、PEG形態を、N末端に対して、はじめに直接的に標的化する。驚くべきことに、2つのペグ化でも、結合した20K PEGは、半減期に対する利益をほとんど有さず、クリアランス経路に基づく機構が、ペグ化によって達成されると期待された半減期の増強より優先したことを示す。
【0109】
(実施例2−ペグ化ニューブラスチンN95Kムテインの構築)
内部のアミノ酸残基がペグ化されたNBN変異体形態のバイオアベイラビリティーを、次に試験した。配列中の選択された部位にリジンを挿入するため、天然に存在する残基を14位、39位、68位および95位で置換する一連の4つの変異体を、設計した。これらのリジンは、PEG結合のための代替部位を提供する。表面残基を同定するための枠組みとして、GDNFの結晶構造(Nat.Struct.Biol.4:435−8,1997)を用いて、そして、回避されるべき機能的に重要な領域を構造において同定するために、パーセフィン(persephin)/ニューブラスチンキメラ変異誘発研究(J.Biol.Chem.275:3412−20,2000)を用いて、これらの部位を選択した。
【0110】
2つの変異(R39およびR68)を、ヘパリン結合部位(その迅速なクリアランスにおそらく寄与するそのタンパク質の特性)を示し得る、表面上の正電荷の分布に基づく領域において標的化した。第3の部位を、野生型NBNにおける天然のグリコシル化部位であるN95で標的化した。この部位を、複雑な糖質構造を用いて天然に改変される。従って、この部位におけるPEGを用いる改変は、機能に影響するとは予測されない。第4の部位(R14)を、いずれの他の改変によってもカバーされない領域において、選択した。95位のアスパラギン残基がリジンで置換された変異体(N95K変異体)を、本明細書中に開示される研究のために選択した。
【0111】
ラットニューブラスチンポリペプチドの野生型配列において1つ以上の変更を有する、4つの異なるラットニューブラスチンムテインを構築した。これらのムテインとしては、単一のN95Kムテインならびにラットニューブラスチンのアミノ酸配列中の他の部位に単一の置換を有するムテイン:R14K;R68KおよびR39Kが挙げられる。「X」という名称において、Xは、野生型ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸をいい、Nは、配列番号1に従い番号付けされた、配列中におけるXアミノ酸の数値的な位置をいう。Xは、配列中の示された数値的な位置における、野生型アミノ酸を置換したアミノ酸をいう。
【0112】
ラットN95Kニューブラスチン変異を構築するために、部位特異的変異誘発を、野生型ラットニューブラスチンをコードするプラスミド、pCMB020に対して行った。野生型ラットニューブラスチン核酸配列およびこれによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を、以下に示す:
【0113】
【表3】



【0114】
オリゴヌクレオチドKD2−310およびKD3−211:
【0115】
【表4】

を使用するpCM020の変異誘発によって、プラスミドpCMB027の形成を生じた。
【0116】
pCMB027において、95位でアスパラギンをコードするコドンを、リジンをコードするコドンで置換した。
【0117】
pCMB020のニューブラスチンコード配列中の14位でアルギニンをコードするコドンを、リジンをコードするコドンで置換することによって、R14Kニューブラスチンムテインを形成した。オリゴヌクレオチドKD3−254およびKD3−255:
【0118】
【表5】

を使用して、部位特異的変異誘発を、pCMB020に対して行った。
【0119】
得られた構築物を、pCMB029と名付けた。
【0120】
pCMB020のニューブラスチンコード配列中の68位でアルギニンをコードするコドンを、リジンをコードするコドンで置換することによって、R68Kニューブラスチンムテインを形成した。オリゴヌクレオチドKD3−258およびKD3−259:
【0121】
【表6】

を使用して、部位特異的変異誘発を、pCMB020に対して行った。
【0122】
得られた構築物を、pCMB030と名付けた。
【0123】
pCMB020のニューブラスチンコード配列中のアミノ酸39位のアルギニンを、リジンで置換することによって、R39Kニューブラスチンムテインを形成した。オリゴヌクレオチドKD3−256およびKD3−257:
【0124】
【表7】

を使用して、部位特異的変異誘発を、pCMB027に対して行った。
【0125】
発現および精製のために、ラットNBN N95Kムテインをコードするプラスミドを、成熟した113アミノ酸のNBN配列の開始部位に直ぐ隣接するエンテロキナーゼ切断部位を有するHisタグ融合タンパク質として、E.coliにおいて発現させた。E.coliを、500Lの発酵槽で増殖させ、そして凍結した細胞ペーストを、提供した。E.coli細胞を、Manton Gaulin Pressにおいて溶解し、ラットNBN NKを、洗浄された不溶性ペレット画分から回収した。
【0126】
塩酸グアニジンを用いて、ペレットからNBNを抽出し、リフォールディング(refolding)し、そしてエンテロキナーゼを用いてヒスチジンタグを除去した。次いで、産物を、Ni NTAアガロース(Qiagen)およびBakerbond WP CBXカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィーに供した。
【0127】
ヒスタグ産物のエンテロキナーゼ処理は、成熟配列中のアルギニン7でのタンパク質の異常な切断を起こした。得られたdes1−7 NBN産物は、KIRA ELISAにおいて十分に活性であり、そしてグアニジン誘導性の変性に対する感受性において成熟形態と構造的に識別できなかったので、引き続く作業に使用した。
【0128】
ラットNBN N95Kを、反応物として10,000Daの分子量を有するメトキシルポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)を使用して、平均3.3PEG部分/1分子で、ペグ化した。得られたペグ化産物を、SDS−PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、逆相HPLC、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALD/IMS)、ペプチドマッピング、KIRA ELISAにおける活性の評価および内毒素含有量の決定による分析を含む、大規模な特性付けに供した。ペグ化に先立って、SDS−PAGEおよびSECによって測定された、NBN N95K産物の純度は、95%より高かった。非還元条件の下で、2量体として移動したNBN N95K産物は、予想された構造と一致する。ペグ化の後、得られた産物は、2PEG/分子が産物の5%、3PEG/分子が産物の60%、4PEG/分子の産物の30%およびより高い質量のいくつかの微量形態を含む一連の修飾された付加物からなった。ペグ化されたサンプルにおいて、凝集の証拠はなかった。産物における未修飾NBNの残留レベルは、定量の限界を下回った。材料の内毒素含有量は、通常1EU/mg未満である。KIRA ELISAにおけるペグ化されたNBNの比活性は、10nMである。このペグ化産物を、pH6.5のPBS中に1.1mg/mLで処方した。wt−NBNと類似の効力である材料を、凍結した液状物として提供し得、これを−70℃で保存する。
【0129】
R14Kムテイン、R39KムテインおよびR68Kムテインを、E.coliにおいて発現させ、N95K−NBNについて上記のように、精製、ペグ化および機能の評価について同一の方法に供し得る。
【0130】
(ペグ化NBNの調製)
E.coliにおいて産生され、そしてを含む5mM リン酸ナトリウム(pH6.5)、100mMのNaCl中で4℃で保管した、230mLのリフォールディング(refolding)されたラットNBN N95K(2.6mg/mL)を、77mLの水、14.4mLの1M HEPES(pH7.5)、および2.8g(10mg/mL最終濃度)のPEG SPA 10,000 Da(Shearwater Polymers,Inc.)を使用して希釈した。サンプルを、遮光して、室温で4時間インキュベートし、次いで5mMのイミダゾール(最終濃度)で処置し、濾過し、そして4℃で一晩保管した。2つのバッチ(1つは130mLのNBN N95Kバルクを有し、もう1つは100mLのバルクを有する)で、産物を生成した。ペグ化NBNを、Fractogel EMD S0(M)(EM Industries)上で、反応混合物から精製した。このカラムを、室温で流した。全ての緩衝液を、発熱物質を含まないように調製した。塩化ナトリウムを、最終濃度87mMとなるように、反応混合物に加え、サンプルを、45mLのFractogelカラム(内径5cm)にロードした。
【0131】
このカラムを、1カラム容量の5mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、80mM NaClで洗浄し、次いで、1カラム容量アリコートの、50mM NaClを含む5mMリン酸ナトリウムで3回洗浄した。この樹脂を、直径2.5cm径のカラムに移し、そしてペグ化NBNを、5mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、400mMのNaClを含む10mLの工程を6回、500mLのNaClを含む工程を3回、600mMのNaClを含む10mLの工程を6回使用して、カラムから溶出した。溶出画分を、280nmの吸光度を用いて、タンパク質含量について、分析し、次いでSDS−PAGEによって修飾の程度について分析した。選択された画分をプールし、0.2μmのフィルタを通して濾過し、そして水を用いて1.1mgのペグ化ラットNBN/mLに希釈した。個々のバッチ中の内毒素レベルの評価の後、これらをプールし、そして0.2μmの膜を通して再濾過した。最終物質を、等分し、そして−70℃で保存した。
【0132】
(精製されたペグ化NBN NKのUVスペクトル)
ペグ化NBN NKのUVスペクトル(240〜340nm)を、ニートなサンプルにとった。サンプルを、3連で分析した。ペグ化サンプルは、275〜277nmに吸収極大を、そして247〜249nmに吸収極小を示した。この結果は、未修飾NBNバルク中間体について観測された結果と一致した。このペグ化産物のタンパク質濃度を、Σ2800.1%=0.50である吸光率を使用してスペクトルから評価した。ペグ化NBNバルクのタンパク質濃度は、1.1mg/mLである。320nmに吸収を欠くことによって明らかなように、サンプル中に濁りは存在しなかった。
【0133】
(SDS−PAGEによるペグ化NBN NKの特徴付け)
3、1.5、0.75および0.3μgの産物を含有するペグ化NBNのアリコートを、4〜20%のゲル勾配(Owl)でのSDS−PAGEに供した。このゲルを、クマシーブリリアントブルーR−250で染色した。分子量マーカー(GIBCO−BRL)を、並列して流した。
【0134】
非還元条件下でのペグ化NBN NKのSDS−PAGE分析は、一連のバンドが、2、3、4および4より多くのPEG/分子を有する改変に対応することを明らかにした。98kDaの見掛けの分子量を有する主要なバンドは、3 PEG/分子を含む。精製において、ペグ化産物である未修飾NBNは、検出されなかった。2、3または4つのPEGが結合した産物の混合物の存在を、MALDI質量分析法によって立証した。2、3および4つのPEGを含有する産物の比を、デンシトメトリーによって決定し、そしてそれぞれ全体で、7%、62%および30%であることを決定した。
【0135】
(ペグ化NBNのサイズ除外クロマトグラフィーによる特徴付け)
ペグ化NBNを、5mM MES(pH6.5)、300mM NaClを移動相として使用して、分析用Superose6 HR1O/30FPLCカラムでのサイズ除外クロマトグラフィーに供した。カラムを、20mL/時間で流した。溶出分画を、280nmでの吸光度について、モニタリングした。約200kDaの見かけの分子量を有する単一のピークとして溶出されたペグ化NBNは、PEGの大きな流体力学的容積と一致する。凝集の証拠は観察されなかった。約30kDaの見かけの分子量を有して溶出する遊離のNBNは、調製物中に検出されなかった。
【0136】
(逆相HPLCによるペグ化(pegylated)NBNの分析)
ペグ化NBN NKをVydac C(5μm、1x250mm)カラムの逆相HPLCに供した。このカラムを、40〜60%B(緩衝液A:0.1%TFA、緩衝液B:75%アセトニトリル/0.085TFA)の60mm勾配を用いて展開した。このカラム溶出液を、214mmの吸収についてモニターし、そして画分を引き続く分析のために収集した。ペグ化NBN NKを、Cカラムの逆相HPLCにより、その種々のジペグ化成分(60.5mm)、トリペグ化成分(63.3mm)、およびテトラペグ化成分(67.8mm)に分画した。ピークの相対強度は、この成分の比率が、それぞれ、5.4%、60.5%、および30.1%であることを示唆する。ピーク同定を、MALDI−MSにより検証した。この生成物における非ペグ化NBN NK(5〜15mmで溶出する)の証拠はなかった。
【0137】
(質量分析によるペグ化NBNの分析)
ペグ化NBN NKを、CZip Tipにより脱塩し、そしてマトリクスとしてシナピン酸を用いる、Voyager−DETMSTR(PerSeptive Biosystems)マトリクスアシスティドレーザーデソープション/イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析計での質量分析により、分析した。精製したタンパク質の0.5μLを、標的プレート上の0.5μLのマトリクスと混合した。ペグ化NBNの質量分析は、これらの付加物の一重および二重に荷電した形態を示した。43803Da、54046Da、および64438Daの観察された質量は、2PEG、3PEG、および4PEG/分子の修飾と一致する。
【0138】
(ペプチドマッピングによるペグ化NBNの分析)
ペグ化反応の特異性を、ペプチドマッピングにより評価した。ペグ化NBNを、ジペグ化成分、トリペグ化成分、およびテトラペグ化成分に分離し、次いで、これらを、還元し、アルキル化し、そして、さらに、CカラムのHPLCにより、それらの単鎖成分へと分離した。これらの成分、および、コントロールとして、還元しそしてアルキル化した未修飾NBN NKを、Asp−Nプロテイナーゼを用いて消化し、そして得られた切断生成物を、Vydac C18(5μm、1x250mm)カラムにおいて、0〜60%B(緩衝液A:0.1%TFA、緩衝液B:75%アセトニトリル/0.085TFA)の60mm勾配を用いる逆相HPLCにより分画した。このカラムの溶出液を214mmの吸収についてモニターした。
【0139】
ラットNBN配列は、4つの内部アスパラギン酸を含み、従って、エンドプロテイナーゼAsp−Nを用いて消化した場合、単純な切断プロフィールを生じることが予想された。ラットNBN NKのAsp−N消化由来のピークの全てを、質量分析および/またはエドマンN末端配列決定により同定し、従って、ペプチドマッピングを、単純なツールとして用いて、ピークの存在または不在により修飾部位を精査し得る。種々のピークの正体を、以下の表3にまとめる。
【0140】
【表8】

(M):モノアイソトピック質量
:MALDIのメチオニン含有ペプチドの酸化に起因する
NBNは、ホモ二量体として存在するので、ラットNBN NK産物は、ペグ化について4つの潜在的部位(鎖の各々に由来する2つのN末端アミンおよびこの構築物へと操作される2つのN95K部位)を含む。ジペグ化鎖のペプチドマップにおいて、NK変異を有するペプチドを含むピークのみが、PEG修飾により変化された。他のピークは、PEG修飾による影響を受けなかった。従って、このマッピングデータは、PEG部分が、このペプチドに特異的に結合し、そしてスクリーニングされた他のペプチドには結合しないことを示す。付着の第2の潜在的部位は、わずかに3つのアミノ酸長であり、そしてペプチドマップにおいて検出されないペプチドのN末端ある。さらなるPEG付着がこの部位で起こることが推測される。この考えと一致して、わずかな割合のラットNBN NKは、短縮化されず、そして成熟Ala−1配列を含む。このペプチドは、30μmで溶出し、そして非ペグ化消化由来のペプチドマップにおいて出現するが、ペグ化NBN NK消化由来のペプチドマップには存在しない。
【0141】
(実施例3.キナーゼレセプター活性化(KIRA)ELISAにおける内部ペグ化ニューブラスチン(neublastin)の効力の評価)
ペグ化ラットNBNの効力を、リン酸化RETの存在に特異的である、ELISAにおけるNBN活性についてのレポーターとして、c−RetのNBN依存活性化/リン酸化を用いて測定した。NB41A3−mRL3細胞(RetおよびGFRα3を発現する付着性マウス神経芽細胞腫細胞株)を、10%ウシ胎仔血清を補充した、Dulbecco改変イーグル培地(DMEN)中の24ウェルプレートの1ウェルあたり2×10細胞でプレートし、そして37℃および5%COで、18時間培養した。
【0142】
細胞をPBSで洗浄し、そして0.25mLのDMEM中のNBNの連続希釈物を用いて、37℃および5%COで、10分間処理した。各サンプルを二連で分析した。細胞を1mLのPBSで洗浄し、そして0.30mLの10mM Tris HCl(pH8.0)、0.5%Nonidet P40、0.2%デオキシコール酸ナトリウム、50mM NaF、0.1mM NaVO、1mMフェニルメチルスルホニルフルオライドを用いて、プレートを穏やかに振盪させながら、4℃にて1時間溶解した。溶解物を、さらに、ピペッティングを繰り返すことによりアジテートし、そして0.25mLのサンプルを、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)中の5μg/mLの抗Ret mAb(AA.GE7.3)を用いて、4℃にて18時間コートした、96ウェルELISAプレートに移し、そしてブロック緩衝液(20mM Tris HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween−20(TBST)(1%正常マウス血清および3%ウシ血清アルブミンを含む))を用いて、室温で1時間ブロックした。
【0143】
室温にて2時間のインキュベーションの後、ウェルをTBSTで6回洗浄した。リン酸化Retを、ブロック緩衝液中の2g/mLの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPR)−結合体化抗ホスホチロシン4G10抗体と共に、ウェルを室温で2時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄し、そして比色検出試薬を用いて450nmでHPR活性を測定することにより検出した。溶解物または溶解緩衝液で処理したウェルからの吸光度の値を測定し、そしてバックグラウンドを較正したシグナルを、活性化混合物中に存在するNBNの濃度の関数としてプロットした。KIRA ELISAにおけるペグ化NBNの効力は、10nMであり、これは、NBN NK開始物質の効力と区別不可能である。効力に対する2回の凍結−解凍サイクルの影響はなく、そしてこの処置後に、サンプルの濁度における有意な増加はなかった。このことは、サンプルが研究のために安全に解凍され得ることを示す。3つおよび4つの10kDa PEG/分子を別々に用いて、生成物の活性を入手する独立した研究において、3つのPEGを有する付加物は完全に活性であり、一方、4つのPEG産物は低下した活性を有していたことを測定した。
【0144】
(実施例4.ラットおよマウスにおける内部ペグ化ラットニューブラスチンの薬物動態学的研究)
ラットモデルおよびマウスモデルにおける、種々のペグ化NBN生成物および非ペグ化NBN生成物の薬物動態学的特性を試験した。
【0145】
データは、3.3,10000Da PEGを有する、ラットNBN NKのペグ化が、ニューブラスチンの半減期およびバイオアベイラビリティーに対して有意な影響を生じたことを示した。Sprague Dawleyラットにおける1mg/kg IV投与の後、3000ng/mLのペグ化NBNのピークレベルを7分後に検出し、そして700ng/mLのレベルを24時間後に、200ng/mLのレベルを48時間後に、および100ng/mLのレベルを72時間後に検出した。1mg/kg IV投与後の非ペグ化NBNとは対照的に、1500ng/mLのレベルを7分後に検出したが、次いで、このレベルは、3時間後に70ng/mLへと急速に低下し、そして7時間後には検出されなかった。ペグ化の効果は、皮下投与によりペグ化NBNを用いて処置した動物において、さらにより明白になった。
【0146】
1mg/kg s.c.投与の後、ペグ化NBNの循環レベルは、24時間後に最大の200ng/mLに達し、そして3日間の研究期間の間このレベルを維持した。対照的に、非修飾NBNの投与の後のどの時点でも、検出可能なNBNは観察されなかった。
【0147】
ペグ化NBNサンプルの分析は、1分子あたり2つ、3つ、および4つのPEGを含む付加物の存在により複雑化する。これらの付加物の各々は、異なるPKプロフィールを表す。初期のPK研究において、種々の候補および投与の経路を介してスクリーニングを容易にするために、マウスを用いた。このマウスの研究は、候補のバイオアベイラビリティーにおいて劇的な差異を示した。しかし、3.3 10K PEG付加物をラットにおいて評価した場合、マウスにおけるバイオアベイラビリティーよりも、ラットにおけるバイオアベイラビリティーが低いことを見出した。バイオアベイラビリティーにおけるこの差異は、i.p.投与の後に特に明確である。マウスにおけるレベルは、7時間後に1600ng/mLに達し、そして24時間後に400ng/mLを維持した。対照的に、ラットのレベルは、4〜48時間の間、100ng/mLで一定であった。
【0148】
野生型ラットニューブラスチン(wt−NBN)および95位にAsnからLysへの置換を有するニューブラスチン(NK−NBN)の両方をリフォールディングさせ、そしてSTZ糖尿病ラットニューロパシーモデルにおける効力試験にのために95%より高く精製した。Wt−NBNを、動物試験を直接行えるように処方し、一方、NK−NBNを、10kDa PEG−SPAを用いるペグ化のために調製した。リフォールディングおよび精製の目的を達成するために、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用するリフォールディング方法を開発した。これは、大量かつ高濃度のE.coli封入体由来のNBNの再生を可能にした。SECに加えて、Ni−NATカラムクロマトグラフィー工程およびCMシリカカラムクロマトグラフィー工程の両方を用いて、最終タンパク質純度を増加させた。タンパク質を、SDS−PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー、ESMSによる分析、KIRA、ELISAによる活性の評価、およびエンドトキシン含有量の測定を含む、広範な特徴づけに供した。最終タンパク質生成物のSDS−PAGEおよびSECは、95%を超える純度を示した。各生成物のエンドトキシンレベルは、0.2EU/mg未満であった。KIRA ELISAにおける両方のタンパク質の比活性は、約10nMである。Wt−NBNを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH6.5)中で、1.0mg/mlで処方し、そしてNK−NBNを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH6.5)中で、2.6mg/mlで処方した。wt−NBNを、15mlチューブへと等分し、そして−70℃で冷凍し、一方、NK−NBNを、当分および冷凍する前に、ペグ化に供した。
【0149】
(実施例5.野生型ニューブラスチンおよびNK95ニューブラスチンムテインのリフォールディング)
両方のNBN形態を、成熟113アミノ酸配列の開始位置の直ぐ後に隣接するエンテロキナーゼ切断部位を有する、Hisタグ化融合タンパク質として、E.coli中で発現させた。Wt−(1.8kgペレット)またはNK−NBN(2.5kgペレット)のいずれかを発現する細菌を、Gaulinプレスを用いて、2リットルのPBS中で溶解に供した。封入体をペレットになるまで遠心分離(10,000rpm)した後、各調製物由来の上清を破棄した。封入体ペレットを緩衝液(0.02M Tris−HCl(pH8.5)、0.5mM EDTA)で二回洗浄し、次いで、Triton X−100(2%、v/v)を含む同じ緩衝液を用いて2回洗浄し、次いで、界面活性剤なしで、2回さらに緩衝液洗浄した。両方のペレットを、6Mグアニジン塩酸、0.1M Tris(pH8.5)、0.1M DTT、および1mM EDTAを用いて可溶化した。可溶化プロセスを補助するために、各ペレットを、ポリトロン(polytron)ホモジナイザーを用いるホモジネーションに供し、次いで、室温で一晩攪拌した。可溶化タンパク質を、遠心分離により清澄化した後、20ml/分のSuperdex 200(0.05Mグリシン/HPO(pH3.0)および2Mグアニジン−HClで平衡化した5.5リットルカラム)を介する変性クロマトグラフィーに供した。
【0150】
変性したNBNを、SDS−PAGEにより同定した。Wt−NBNまたはNK−NBNのいずれかを含む画分をプールし、そしてAmicon2.5リットル攪拌細胞濃縮器を用いて約250mLまで濃縮した。任意の沈殿物を取り除くためのろ過の後、濃縮したタンパク質を、0.1M Tris−HCl(pH7.8)、0.5Mグアニジン−HCl、8.8mM還元型グルタチオンおよび0.22mM酸化型グルタチオンで平衡化した、Superdex 200を介する再生サイズ排除クロマトグラフィーに供した。このカラムを、20mL/分で0.5Mグアニジン−HClを用いて展開した。再生したwt−NBNまたはNK−NBNを含む画分を、SDS−PAGEにより同定し、プールし、そしてHisタグ除去が必要となるまで4℃で保存した。
【0151】
(Ni−NTAクロマトグラフィーによるNBNの濃縮(TR5919−138))
再生したNBNを、NBNモノマー間のジスルフィド形成を促進させるために、精製を進める前に、少なくとも24時間4℃で貯蔵した。この期間に、沈殿物が形成し、そしてこの沈殿物を0.2μPESフィルターユニットを通じる濾過により除去した。非特異的な結合を減少させるために、このタンパク質溶液を、20mMイミダゾールとした後、1分あたり50mlでカラム緩衝液(0.5Mグアニジンおよび20mMイミダゾール(irnidazole))を用いて平衡化した100ml Ni−NTA(Qiagen)カラム上にロードした。タンパク質のアプライに続き、このカラムを、同一の緩衝液を用いてベースラインまで洗浄した。NBNを、0.5Mグアニジン−HClおよび0.4Mイミダゾールを含有する約300mLの溶出緩衝液を使用して樹脂から溶出した。溶出後、NBNを10容量の5mM HClに対して室温で一晩(10kDa透析チューブを用いて)透析した。透析は、混入する物質の加水分解を促進し、そしてグアニジン−HClおよびイミダゾールの濃度をそれぞれ0.05Mおよび0.04Mまで減少させた。
【0152】
(リシルエンドペプチダーゼまたはエンテロキナーゼによるHisタグの切断)
次の日、透析の間に形成される任意の沈殿物も、濾過により除去した。このタンパク質サンプルを、残留するグアニジン−HClを含有する約150mMの最終塩濃度にするための5Mストックの添加によって、0.1M NaClに調整した。この濃度を、導電率計を使用して確認した。さらに、1M HEPES pH8を、25mMの最終濃度にするために添加した。タグを切断するために、両方ともにプロテアーゼ:NBNが約1:300の比率で、リシルエンドペプチダーゼを、wt−NBNに添加し、そしてエンテロキナーゼを、NK−NBNに添加した。Lys95で変異したタンパク質におけるさらなるプロテアーゼ切断部位に起因して、エンテロキナーゼを、リシルエンドペプチダーゼの代わりにNK−NBNに使用した。このサンプルを、室温で2時間攪拌し、そして消化物をSDS−PAGEによってモニターした。
【0153】
(Ni−NTAクロマトグラフィーによるHisタグの除去)
プロテアーゼ処理したNBNを、1分あたり50mLで0.5Mグアニジン−HClおよび20mMイミダゾールで平衡化した100mL Ni−NTAカラムにアプライした。このカラムを、同一の緩衝液でベースラインまで洗浄した。カラムから洗い出される任意のタンパク質を、HisタグのないNBNを含有する貫流した(flow−through)タンパク質と共にプールした。
【0154】
(CMシリカクロマトグラフィー)
Ni−NTAクロマトグラフィーに続いて、このタンパク質を、直ちにCMシリカ樹脂を通じるさらなる精製に供した。ローディング緩衝液(5mMホスフェートpH6.5、150mM NaCl)で平衡化した20mL CMシリカカラムに、1分あたり20mLでNBNをロードした。このカラムを、20カラム容量の洗浄緩衝液(5mMホスフェートpH6.5、400mM NaCl)で洗浄し、そしてタンパク質を、5mMホスフェートpH6.5を含有するが1M NaClも含む溶出緩衝液で段階的に溶出させた。溶出したタンパク質を、ホスフェートのみに対して一晩透析して、NK−NBNについて100mMおよびwt−NBNについて150mMまで塩濃度を低下させた。両方のサンプルを、0.2μPESフィルターユニットを通じて濾過し、SDS−PAGEによって分析し、そしてさらなる特徴付けおよび/またはペグ化(pegylation)に必要とされるまで4℃で貯蔵した。
【0155】
Wt−NBNおよびNK−NBNを、UVスペクトル分析に供して、これらの280での吸光度を評価した。マイクロ石英キュベットを使用して、そして緩衝液のみをブランクとして、wt−NBNまたはNK−NBNのいずれかの100μlを、Beckman分光光度計を使用して230〜330nmまで連続的に走査した。この分析に基づいて、Wt−NBNを、1.1mg/mlの濃度であることを決定し、そしてNK−NBNを、2.6mg/mlの濃度であることを決定した(それぞれのタンパク質についてA280nm−E0.1%=0.5を用いた)。1%未満の沈殿物質を、330nmの吸光度に基づいて同定した。
【0156】
両方のタンパク質調製物の純度を評価するために、それぞれのサンプル(0.5mg)を、16/30Superdex75カラムを通じるサイズ排除クロマトグラフィーに供した。このカラムを、400mM NaClを含有する5mMホスフェートpH6.5を用いて平衡化し、そして1分あたり1.5mLの流速で展開した。280nmの吸光度に基づいて、wt−NBNおよびNK−NBNの両方は、予想される分子量(23〜24kDa)で単一のピークとして移動し、そしてこれらは有意なタンパク質の混入物を含まなかった。
【0157】
wt−NBNおよびNK−NBNの両方を、2.5Mグアニジン−HCl、60mM Tris pH8.0および16mM DTT中で還元した。還元されたサンプルを、ショートCカラムを通じて脱塩し、そして三連四重極装置を使用するESMSによってオンラインで分析した。ESMSの生データを、MaxEntプログラムによってデコンボリュートして、質量スペクトルを生成した。この手順は、複数の荷電したシグナルをキロダルトン(kDa)の分子量に直接対応する1ピークに崩壊(collapse)させ得る。wt−NBNについてのデコンボリュートした質量スペクトルは、12046kDaである優勢な化学種を示し、これは、このタンパク質の113個のアミノ酸形態について推定される分子量の12046.7kDaに一致する。微量成分もまた観察され(12063kDa)、これは、酸化生成物の存在を示唆する。3本のピークを、NK−NBNサンプルにおいて同定した。主成分は、このタンパク質の106個のアミノ酸形態について推定される質量と一致する11345kDaの見かけの分子量を示した。他の2本のピークは、11362kDaおよび12061kDaの質量を有し、これらは、それぞれNK−NBNの酸化および113個のアミノ酸形態の存在を示唆する。
【0158】
NK−NBN調製物における106個および113個のアミノ酸形態の存在は、エンテロキナーゼを用いる消化に起因し得る。ビオザイム(Biozyme)由来のこのプロテアーゼは、仔ウシの腸管粘膜から精製された天然酵素調製物であり、そしてわずかなトリプシンの混入物(エンテロキナーゼ1μgあたりトリプシン0.25ng)を含むことが報告されている。従って、トリプシンは、NK−NBNのカルボキシ末端側のArg7に
作用して、優勢な106個のアミノ酸形態を生成し得る。一方、Wt−NBNを切断するために使用したリシルエンドペプチダーゼは、Hisタグ内に含有されるカルボキシ末端側のリシン残基に作用して、成熟した113個のアミノ酸NBN形態を生成する、単一のプロテアーゼ活性である。NBNの106個および113個のアミノ酸形態の両方は、試験した全てのアッセイにおいて同等に活性であり、そしてグアニジン−HCl安定性試験において同様に挙動する。
【0159】
実施例3に記載されるKIRA ELISAを用いるNB41A3−mRL3細胞におけるc−Retリン酸化を刺激するその能力によって、NBN活性を決定した。リン酸化されたRetを、HRPを結合体化したホスホチロシン抗体(4G10;1ウェルあたり0.2μg)を用いて捕捉されたレセプターをインキュベートする(2時間)ことによって検出した。インキュベーションに続いて、このウェルを、TBSTで6回洗浄し、そしてHRP活性を、比色定量アッセイを使用して450nmで検出した。溶解物または溶解緩衝液単独で処理したウェル由来の吸光度の値を測定し、バックグラウンド補正し、そしてデータを、活性化混合物中に存在するニューブラスチン(neublastin)の濃度の関数としてプロットした。このデータは、精製されたNBNが、リン酸化されたRETの出現をもたらすことを示し、このことは、精製されたNBNが、このアッセイにおいて活性であることを示す。
【0160】
(実施例6.血清アルブミン−ニューブラスチン結合体の調製)
PBS中1mg/mlの濃度の野生型ラットニューブラスチンを、1mMスルホ−SMCC(Pierce)で処理し、そして過剰な架橋剤を除去するために脱塩した。野生型NBNタンパク質は、そのN末端に単一のアミンのみ含み、そして遊離のスルフヒドリル基を持たないので、SMCCを用いる反応は、そのN末端に結合したSMCCによるNBNの部位特異的な修飾を生じることが予想された。
【0161】
60μgのNBN−SMCC結合体を、120μgのウシ血清アルブミンと共にインキュベートし、そしてSDS−PAGEによる架橋の程度について分析した。BSAは、単一の遊離のSH基を含有し、従ってNBN−SMCC結合体との反応は、SMCC上のマレイミドを介してこの部位に修飾をもたらすと予想される。これらの条件下で、より高い分子量の2つのさらなるバンドを観察し、これらは、単一のBSA部分および2つのBSA分子を有するNBNの修飾を有する質量と一致する。なぜなら、各NBN分子は、反応を受け得る2つのN末端を含有し、従ってこの考えと一致するからである。これらのバンドの形成と同時に、NBN−SMCCおよびBSAのバンドの強度が減少した。残存するNBNのバンドの強度に基づいて、この反応が完了の70〜80%まで進行したと考えた。
【0162】
この物質を、本質的に上記で議論されるペグ化研究について記載されるように、Superdex200カラム(Pharmacia)によるカチオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーに供して、一置換生成物を、反応混合物から精製した。ゲル濾過実行由来のカラム画分を、SDS−PAGEにより分析し、そして一置換生成物を含有するカラム画分を、280nmの吸光度によってタンパク質含量について分析した。BSAの質量は、ニューブラスチンの質量の約2倍であるので、見かけの濃度を、3で割ってNBN当量を得た。この画分を、KIRA ELISAにおける機能について分析に供した。wt−結合体化NBNおよびBSA−結合体化NBNの両方についてのIC50値は、3〜6nMであり、このことはBSAに対する結合体化が機能を損なわないことを示唆した。
【0163】
これらの予備的な研究は、BSAでもたらされたが、ラットおよびヒト由来の対応する血清アルブミンタンパク質もまた、遊離のSHを含有する。従って、同様のアプローチを、ラットにおいてPKおよび効力の研究を実施するためのラット血清アルブミン−ラットNBN結合体、ならびに臨床試験を実施するためのヒト血清アルブミン−ヒトNBNの生成に適用し得る。同様にSMCCを、一方でアミノ反応性基および他方にチオール反応性基を含有する多数の架橋剤のいずれかで置換し得る。チオール反応性−マレイミドを挿入するアミン反応性架橋剤の例としては、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBSが挙げられ、チオール反応性−ハロアセテート基を挿入するアミン反応性架橋剤の例としては、SBAP、SIA、SIABが挙げられ、そして還元可能な架橋を生成するようなスルフヒドリル基と反応させるための保護チオールまたは非保護チオールを提供するアミン反応性架橋剤の例としては、SPDP、SMPT、SATA、またはSATP(これらの全てはPierceから入手可能である)が挙げられる。このような架橋剤は、単なる例示であり、そして多数の代替的なストラテジーが、NBNのN末端と血清アルブミンとの架橋について予想される。当業者はまた、NBNのN末端または血清アルブミン上のチオール部分を標的化しない血清アルブミンに対する結合体を生成し得る。NBN−血清アルブミン融合物は、遺伝子工学を使用して作製し、ここでNBNは、血清アルブミン遺伝子に対して、機能性であることがまた予想される、そのN末端、C末端、または両末端で融合される。
【0164】
この方法は、動物において、従ってヒトにおいて延長された半減期を有する生成物を生じる任意のNBN−血清アルブミン結合体に対して慣用的な適応を通じて拡張され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2009−39135(P2009−39135A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277469(P2008−277469)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【分割の表示】特願2002−561497(P2002−561497)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】