説明

ネジ山付留め具のための渦巻型駆動システム

【課題】ネジ山付留め具を駆動するシステムであって、従来技術によるものよりも相反する特性が妥協されることがより少なくしながらも、ネジ山付留め具用の駆動システムの望ましい特性の多くのものを確保できるシステムを提供する。
【解決手段】ネジ山付留め具10のためのスパイラル状の駆動システムであって、留め具10の頭部側の端16のどが係合できる表面を含むものであり、ドライバーにより係合できる表面の少なくとも1つは応力の大きな領域が発生するリスクを減少させるために駆動荷重をドライバーと留め具との間の広範囲の境界部分に分散させながらトルク伝達を最大にするような形状になったスパイラルの一部分により画成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ山付留め具のための駆動(回転させながら前進させたり後退させたりする)システム、これら留め具の製造のための道具、及び、これらの留め具を駆動するためのドライバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業分野で一般的に使用されるネジ山付留め具は、電動工具により、高スピードで、かつ、大きなトルク荷重の下に駆動されるのが典型的である。このような条件の場合には、設計上の困難な検討項目が提起され、これらは、特に、ここで使用される駆動システムに関して、更に具体的には、留め具の頭部に、ドライバーと噛み合う(係合する)ことのできるような凹部を有するネジ山付留め具に関してのものである。理想的には、このような駆動システムは、その製造が容易であるべきであり、この点は、凹部の形状と頭部の形状、更には、このような留め具の頭部及び凹部と噛み合うことのできるドライバーを作るための関連する道具に関するものである。この場合の留め具の頭部の強度は、かかる凹部により悪影響を受けるものであってはならない。この場合のドライバーは、このような凹部の中に容易に挿入でき、かつ、これから容易に抜き取ることができるものでなければならない。このドライバーと凹部とは、一方が他方の中に入り込んだときには、この凹部又はドライバー、又は、その両方が変形して、その結果、この場合の駆動システムが予想外に早く破壊してしまうような極めて局所的な応力集中の領域が形成されることを回避するために応力荷重を均一に分散させるべきである。この駆動システムは、留め具が回転しながら押し込められるときにその凹部からドライバーがカムの原理で外れる(cam−out)ことに対して抵抗すべきである。多くの用途では、部品(パーツ)を補修したり、若しくは、それを交換したり、又は、そのパーツを覆っているパネルを取り除いて取り替えたりするために留め具を取り除かなければならないような用途の場合のように、この留め具は、数回のサイクルに耐えられるものでなければならないことが非常に重要である。このような留め具駆動システム(留め具を回転させながら前進させたり後退させたりするシステム)は、このような繰り返しのサイクルができるものであるべきであり、このことは、使用中に凹部が汚れたり、ペンキが塗られたり、腐食したり、その他悪影響を受けたりするような環境下ではなおさらである。このような環境下では、このような駆動システムが留め具を取外す方向にトルクを加えているときに、駆動力が伝わるように係合(噛み合う)する状態を維持することが必須である。駆動システムは、留め具を取外すときには更に高いレベルのトルクを加えることができるようなものである必要があり、このことは、当初の組立時に留め具に過大なトルクが加えられたような場合、又は、組み立てられた構成部品が熱サイクルを受けた結果留め具に通常よりも大きな応力が加わるような場合に発生することがある。このような特徴又はその他の特徴の内の複数のことにより、相互に要因を有する検討事項が発生して、その結果、他方の事項のために一方の事項について妥協することもある。
【0003】
凹部の形状やドライバーの形状については、多様なものが一般的に使用されており、その中には、米国再発行特許第24,878号(Smith他)、米国特許第3,237,506号(Muenchingen)及び第2,474,994号(Tomalis)に記載されたような十字型の凹部がある。留め具のその他の形状には、例えば、米国特許第3,763,725号(Reiland)に記載されたようなタイプの複数の耳たぶを連ねたような形状のものや、米国特許第4,187,892号(Simmons)に記載されたような盛り上がった畝部のようなものが具備された駆動システム等がある。米国特許第5,598,753号(Lee)には、打撃に対して抵抗性がある留め具であって、頭部に切削加工により作られたものであって、対称位置に作られたチャネル状(通路状)の凹部が3つ具備され、このチャネル状のものには一対の壁が具備されているものが含まれている。これら壁の各々の形状は円形状である。
【0004】
更に、凹部の一般的な形状には、アレン・システムといわれるものであって、六角形の形状を有し、真直ぐな壁を有するソケット(穴)であって、同様な形状を有するドライバーを受け入れることのできるソケットから実質的に成るシステムがある。盛り上がった畝部のようなものが具備されたシステムの場合を除いて、ドライバーと凹部との壁と表面とは駆動する側の表面と駆動される側の表面とが表面対表面のコンタクト(接触)を得られるように、相互に密接に接触するように形作られているのが典型である。十字型の凹部を有する留め具の場合には、このような表面対表面の噛み合わせ(係合)は、たとえ起こったとしても、ドライバーが凹部と一直線上に整合して凹部の中に着座したときだけ起こり得るものである。しかしながら、実際には、ドライバーが凹部の中に挿入されるようになるためには、必然的にこれら2つのものの間には多少のギャップ(クリアランス)がなければならない。このようなギャップの必要性は、Reilandの’725特許に開示されているシステムや、アレン型の頭部を有するシステムの場合のように、駆動する側のほぼ垂直な壁を有する凹部の場合には更にもっと重要となる。これらのシステムの全ての場合においては、このようなギャップが必要とされる結果、実際上はドライバーの表面と凹部の表面との間のほぼ表面対表面のコンタクトであって、広い面の領域に亘るコンタクトは、たとえ得られたとしても滅多に得られないものである。ネジ山付留め具のための駆動システムの殆どの場合においては、ドライバーは、表面対表面の広い面の領域によるコンタクトではなく点によるコンタクト又は線によるコンタクトになってしまうような方法で、その頭部に具備された凹部と相互に噛み合う。実際の接触面積は、実質的には、表面対表面による全面接触よりも小さいのが典型である。その結果、ドライバーによりトルクが加えられると、このネジの頭部に加えられた力は、局部的な領域に集中して、その結果、局所的に大きな応力が発生する傾向がある。このような局所的な大きな応力は、凹部を塑性変形させて、ランプ(傾斜部)やその他の変形を作ることとなり、その結果、ドライバーがこの凹部から予期したタイミングより早いタイミングで予想外に外れてしまうこととなる。
【0005】
上述の困難な点は、当業界ではこれまでにも認識されて来ている。例えば、米国特許第2,248,695号(Bradshaw)には、ネジの頭部とドライバーとの組み合わせが開示されており、その場合には、ドライバーと留め具との双方の駆動する側の表面と駆動される側の表面とは、それぞれが曲面状になっていて、かつ、このネジの軸に対してその軸の中心とは異なる箇所に位置するものとなっている。Bradshaw特許に開示された留め具の場合には、「適切な曲面」であればどんなものでも、例えば円状のもの又はログ・スパイラル(log spiral)状のもの等であっても、摩擦による係合によって相互に結合したりロックし合ったりするようにその方向が向いていさえすれば使用することができる。このBradshaw特許による教示にもかかわらず、上述したようなものであってその後の留め具駆動システムは、摩擦による係合に依存するようなBradshaw特許の教示を採用しているようには見えない。
【0006】
本発明の全般的な目的の中には、ネジ山付留め具のための駆動システムであって、従来技術によるこれまでの場合よりも競合し合う特性についての妥協がより少ないもので、ネジ山付留め具のための駆動システムについての好ましい特性の内の多くの特性を達成するものを提供することが含まれている。
【0007】
本発明の特徴は、ドライバーと留め具との双方の駆動する側の表面(駆動するときに力を加える表面)と駆動される側の表面(駆動するときに力が加えられる表面)とが、それぞれ1つのスパイラル(渦巻)の一部に合致するようになる、より具体的には、ドライバーを挿入したり取外したりするときには、ドライバーと凹部との間には実質的に余裕のあるギャップ(クリアランス)が生じるものの、完全に着座したドライバーが回転してこのギャップを取り去ってしまうことができるような渦巻状の形状を有するようになっていることである。ドライバーの駆動する側の壁と凹部の壁であってこのドライバーと係合することのできる壁との渦巻状の形状は、これらの渦巻状になった双方の壁が係合すると、この係合が比較的広い面積に亘って起こり、その結果、応力をこの広い面積に亘って加えて分散させることとなるようになっている。この場合の駆動する側と駆動される側との双方の渦巻状になった壁は、加えられたトルクの大部分を、その留め具の半径方向に対して、摩擦による係合であって留め具の半径が描く円の接線方向の係合にたとえ依存しても殆ど依存することなく、ほぼ垂直な方向に向けるようになっている。ドライバーの駆動する側の壁と凹部の壁であってこのドライバーと係合する壁とは、実際的に可能な限り垂直に近いものになるように形成されることもあるが、その場合には、数度の多少の抜きしろ角(draft angle)は許容されることもある。駆動する側の壁の形状により、軸に沿った方向に向かった力であってカム効果によって外そうとする実質的な力がドライバーを凹部からその外側へ向かって軸に沿って押し出すようにさせることなく、高いレベルのトルクを伝達することが可能となる。カム効果によって外れる傾向をこのようにして低減させることにより、凹部は比較的深さの浅いものとすることができて、その結果、従来の底の深い凹部の場合のものよりも強度の大きなネジ頭部が得られることもある。
【0008】
本発明を具現化している凹部は、好ましくは、中央部とほぼ放射状の複数の翼とを有し、これらの翼の内の少なくとも2つは、高さ方向に延びて渦巻状になった壁であってドライバーと係合することが可能な壁を少なくとも1つ有している。凹部は、駆動する側の渦巻状の壁が、留め具を取付ける場合の方向にだけ係合するか、留め具を取外す場合の方向にだけ係合するか、又は、留め具を取付ける場合の方向と取外す場合の方向との両方の方向に係合するように具備されることもある。更に、この渦巻状の表面は、異なるアーク長さと異なる方向を有するようにして、トルクに関する能力が一つの方向の場合において他の方向の場合よりも大きくなるようにすることもある。ネジは、このようにして、そのネジを取付ける場合の方向よりも取外す場合の方向の方がより大きなトルク荷重を伝達することができて、ネジを取付けるときに以前加えられたトルクを超えるような充分なトルクを加えることができる。
【0009】
本発明の別の観点においては、係合可能なドライバーと凹部との表面の渦巻状の形状は、所定の形状を有し、ネジの長軸から見て所定の位置に配置されて、ドライバーの面がそれと対応する凹部の面と噛み合うと、これら両面の係合し合う共通領域全体に亘って均一にそうなる傾向が生じる。ドライバーの面の渦巻状の形状は、好ましくは、凹部の面とほぼ同一である。その結果、ドライバーが回転されてその渦巻状の面が凹部の駆動される側の面と係合するようになると、このドライバーの全表面積がそれに対応する凹部の全表面積と係合するようになる。このように係合すると、トルクが連続的にドライバーから凹部に加えられるが、この場合、このトルク力の大半が留め具の半径にほぼ垂直な方向に加えられることになる。ドライバーの軸に垂直の面での断面に見られる輪郭は、凹部のそれよりも多少小さくて、ドライバーを凹部の中に挿入したり取外したりできる能力を向上させるような余裕のあるギャップを残すようにしてある。このドライバーの渦巻状の形状を有する表面により、このギャップがドライバーを回転させるときのその回転の最初の方の部分で吸収されて、ドライバーの壁と凹部の壁とが係合するときには、これらが表面対表面での広範囲の接触となるように係合することとなる。最も好ましい形態の場合には、ドライバーと凹部との相互に噛み合う渦巻状の面は、凹部の中でドライバーが自由に回転することを許容される範囲の全体に亘って相互にほぼ平行となるように形成されて、かつ、そのような方向を向いている。
【0010】
本発明の更なる観点においては、ドライバーと凹部との係合可能な渦巻状の壁は、渦巻の最も内側の部分での渦巻の領域に限られる。その渦巻の最初の点(始点)は、留め具の回転軸となる長軸から所定の半径の長さのところに配置されて、かつ、その渦巻の長さは最初の半径(上記の所定の半径の長さに相当)の倍数の所の点であって、最初の半径の約3倍から約3.5倍を上限とする点まで延びている。
【0011】
本発明の別の観点においては、加工前の留め具の頭部に凹部を形成するためにパンチ具(相手側の部品に押し当てて塑性変形を起こさせて穴をあけるような道具)が具備されており、この場合のパンチ具には、留め具の頭部の一部を形成するような形状をした端部が具備された本体部と、従来の方法による2段階式鍛造法により頭部を形成する技術でもって渦巻状の凹部を形成するようになった尖端部(nib)とが具備されている。この場合の尖端部の放射状に延びた翼(翼のようになった部分)には、この留め具の頭部の端にこの翼が衝撃的に押し当てられたときに渦巻状の補完的な(凹凸が丁度反対になるような状態を指す)表面を形成するようになった1つ又は2つの渦巻状の表面が含まれることもある。
【0012】
本発明の更なる別の観点においては、この駆動システムは、駆動側の(ドライバーの役割を呈する)道具が凹部を画成し、留め具の駆動される側の表面がその留め具の頭部の外周となる表面により画成されるようになった外周側から駆動力が伝達される留め具と共に使用することも可能である。
【0013】
本発明の目的の中には、ネジ山付留め具のための駆動システムであって、ネジの頭部とドライバーとに局所的な応力が生ずることを最小限にしながらトルク(又はトルク力)が効果的に伝達されるような駆動システムを提供することも含まれる。
【0014】
本発明の別の目的は、ネジ山付留め具のための駆動システムであって、その留め具に具備された表面であってドライバー(駆動させるための道具)と係合することができる表面が渦巻状の輪郭を有するように形成されて、かつ、この形状と同一の渦巻状の輪郭を有するドライバー部品と係合するようになっているような駆動システムを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、ネジ山付留め具のための駆動システムであって、ドライバー(駆動させるための道具)と留め具との駆動するときの側の面(駆動するときに力を加える面)と駆動されるときの側の面(駆動するときに力が加えられる面)とがそれぞれ、ドライバーが凹部の中に完全に挿入されたときにはこれら駆動を伝達する双方の表面の間に多少大きめのギャップを形成するようになっているが、それでも、ドライバーと凹部との駆動を伝達する双方の表面の間で面対面の形で広い面領域に亘って駆動力を伝達するようなコンタクト(接触)が得られるような駆動システムを提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、ネジ山付留め具用の駆動システムのための新規なツール(道具)を提供することである。
【0017】
図1には、一方の端部に形成されたネジ山14を有するシャンク12と、このシャンク12の他方の端部に形成された凹部18を有する頭部16とを有するネジ山付留め具10が例示的に示されている。この頭部16は、従来型の2段式鍛造機型の頭部作成機により作成することもできるが、その場合には、留め具を作成することとなるワイヤ又はその他の材料の端部をこの頭部作成機(header machine)のダイスの中に支持させて、その頭部側の端部に衝撃を加えるのであるが、このとき、パンチ具でもって最初にたたくとそれによって頭部の一部が形成され、次に、仕上げ用パンチ具でたたくとそれによって凹部が完成される。凹部18は、中央部20と、外側に向かって放射状に延びる複数の耳たぶ状のもの(翼)20とを有しているように図示されている。図1の実施態様における凹部は、その翼20の各々が、取付けるときに係合する壁(取付けるときに力が加わる壁)24(この場合、右利き用にネジ山14が付いていることを前提としている)と取外すときに係合する壁26とを有するように形成されている。この場合の取付けるときに係合する壁24と取外すときに係合する壁(取外すときに力が加わる壁)26とは、好ましくはほぼ垂直になっていて、ネジの長軸に対して平行な円筒状の表面を画成するか、又はそのような表面を忠実に近似するようなものとなっている。取付けるときに係合する壁と取外すときに係合する壁、及び、凹部のその他の表面は、多少正の値を有する抜きしろ角(draft angle)を含むように形成する。すなわち、凹部の底部から上部に向けて多少広がるようにすることもできる。一例として、正の値を有する抜きしろ角(draft angle)であって最大約6°までのものは各種の用途において本システムによるトルク伝達能力に悪影響を及ぼすようなものではないはずである。この凹部の底は、円錐状の形状をした底壁28により画成されることもある。各々の翼の半径に沿って外側に近い端は、この翼の壁であって取付けるときに係合する壁(取付け側の壁)32と取外すときに係合する壁(取外し側の壁)26との間において滑らかな曲面を描いて移行できるような形状となっている。この場合の凹部には、1つの翼22の取付けるときに係合する壁24と、その翼の隣の翼の取外すときに係合する壁26との間において過渡部分用の内部壁32が含まれることもある。本発明によるものは、多様な形状をして、ネジ山付留め具に組み込むことが可能であり、このような形状の中には、例えば、取付け側の壁24又は取外し側の壁26のいずれか一方にのみ渦巻状の形状を有する部分が具備されているような凹部もある。
【0018】
図2には、図1に図示されたように複数の翼の形をした渦巻状の凹部と係合するような形状のドライバー34が図示されている。このドライバー34には、シャンク(shank)36と、このシャンク36の端部に形成された尖端部であって複数の翼状のものを有する尖端部38が含まれている。この尖端部38には、複数の翼40が放射状に延びるときの根本の部分になる中央部42が含まれている。この場合のドライバーの端部壁42は、円錐状又はその他の形状に形成されることもある。好ましくは、この端部壁42は、ドライバー34が凹部18の中に充分着座したときには、この端部壁42の一部とこの凹部の底壁28との間において多少のクリアランスが残るような形状となっている。この翼の各々は、取付け側の壁46と取外し側の壁48とを有しているとも見なすことができる。
【0019】
全ての用途ではないにしても、殆ど全ての用途においては、複数の翼部を有する凹部とドライバーが使用されることが想定されてはいるが、本発明の原理は、図3と図4とにおいて概念的に示され、かつ、誇大されて示されるように、1つの単純化された耳たぶのような実施態様を参照しながら図示され、かつ、理解されるであろう。この場合のネジの頭部16には、ここではその平面図が示されているが、取付側の壁24Aと取外し側の壁26A(右利き用のネジ山付留め具を想定するとして)とを画成する耳たぶ状の凹部18Aが1つ具備されている。説明を簡単にするために、この取外し側の壁26は渦巻状の形となるように形成されており、この場合には、留め具の軸44に垂直な平面と交差する部分が1つの渦巻を画成するようになっている。この取付け側の壁24Aは、ほぼ平坦で、始点からこの渦巻の外側に近い端に向かって半径にほぼ沿って延びているように図示されている。ドライバー34Aは、留め具の軸44に対して垂直な平面に沿ってその留め具の頭部16の上部表面における断面が図示されている。単純化された1つの耳たぶ状のドライバー34Aは、取付け側の壁46Aと取外し側の壁18Aとを有し、これらの壁が共に、その断面形状は凹部18Aの取付け側の壁24Aと取外し側の壁26Aとに基本的に同じであると見なすこともできる。ドライバー34Aの取外し側の壁48Aは、凹部26Aの渦巻と実質的に同じ渦巻を画成するように形成されている。凹部により画成された輪郭の中に受け入れられたドライバー34Aの少なくとも尖端部の部分だけでも、凹部の対応する壁と平行になるような方向に向いた壁を有する。ドライバーは、凹部に対して、凹部の中に着座したときにはドライバーと凹部との相互に対応する取付け側の双方の壁の間にほぼ均一なクリアランス50が存在するような大きさになっている。凹部とドライバーとの間のクリアランス50は、凹部の中に例えば、汚染物質があったり、腐食があったり等の場合を含むような多様な操作条件の下でもドライバーが凹部の中に容易に挿入したり凹部から容易に取外したりすることができるように余裕のあるものであって、かつそのようなものを選択しなければならない。
【0020】
図4は、図3のドライバーと凹部を概念的に図示したものであって、ドライバーが反時計回りに回転させられて、ドライバーの取外し側の渦巻状の壁48Aが、この壁とほぼ平行な壁であって凹部の渦巻状の壁26Aと係合するようになったところが示されている。図4を見ると、ドライバーが回転させられてその渦巻状の表面が凹部のそれと係合するようになったときはドライバーの取外し側の渦巻状の壁と凹部の取外し側の渦巻状の壁との間のギャップ50は完全に吸収されるが、そのときには、ドライバーの取付け側の渦巻状の壁と凹部の取付け側の渦巻状の壁との間のギャップ52が大きくなって、ドライバーが凹部と完全に係合するようにこのドライバーを回転させるために必要な回転量に相当な角度θを画成する。従って、ドライバーがこの渦巻の半径が減少する方向に回転させられるにつれて、クリアランス50が無くなって、渦巻状の双方の壁が広い表面の領域に亘って完全に係合することとなる。本発明に従えば、渦巻状の曲線は、大きなトルクが伝達できるように選択され、かつ、そのような方向を向いている。理想的にはドライバーの渦巻状になった表面の全体が凹部の渦巻状の表面の全体と、その表面の部分のほぼ全域に亘って同時に係合する。このように係合すれば大きな応力集中の起こる点が発生することが回避されて、加えられた荷重が広範囲かつ均一に分散される。
【0021】
図3と図4の誇大的に図示された単一の耳たぶ状のものの概念図においては、この場合の渦巻は、図4の中の54で示された始点から図4の中の56で示された終点まで連続的に延びている。本発明に従えば、ドライバーと凹部との双方が噛み合う面は、この渦巻の終点により近く配置された部分よりもその始点により近く配置された部分に適合するようになっているが、この始点により近く配置された部分は、加えられた力のより多くの部分を、留め具を前進させる(駆動させる)ためにプラスにはならないような半径方向に沿って外向きの力ではなく、トルクとして伝達するからである。従って、図4から判るように、渦巻の始点により近く配置された部分、例えば58で示されたような部分は、60で示されたような部分であって渦巻の終点により近く配置された部分よりも加えられた力のより大きな部分を伝達して、そのトルクでもって留め具を回転させることとなるが、60で示されたような部分においては、この加えられた力の実質的により小さな成分(力の成分)がトルクとなる。本発明の1つの重要な点は、渦巻状の形状となった壁は、始点に近い領域がより多く使用されるようになっていることである。従って、実際に使う場合には、本発明に従って作成された留め具には、58で示された渦巻の部分が含まれていて、60で示された部分は使用されるべきではない。
【0022】
以下により詳細に述べるように、渦巻状の表面は、ドライバーから留め具に加えられたトルクの大部分が、半径に沿って外向きに向かった力を加えるのではなく、留め具を回転させるために役立つように、ネジの長軸44に対して配向されている。この図に示されるように、取外すときの場合の方向に伝達されるトルクは、取付けるときの場合の方向(時計回りの方向)に加えられるものより大きくなる。本発明に従えば、この渦巻状の面の向きは、留め具の特定の用途に応じて、取付けるときのトルク能力と取外すときのトルク能力との間で所定の比率が得られるように変化させることもある。
【0023】
図5は、極座標を使って図示したものであって、この中には、本発明において使用される望ましい特徴を有する理想的な渦巻が図示されており、この場合、この渦巻はネジ山付留め具の長軸に対する回転軸であって、かつ、例えば、角度θまで回転させられると、それが回転していない渦巻に対して平行で、かつ、それから離れた状態を保つようになっている。図5に示されているように、Aで示された位置の理想的な渦巻は、Bで示された位置まで角度θ分だけ回転させられると、Aで示された位置の渦巻と平行な状態を保ったままであっても、Cで示されたギャップ分だけAで示された位置から離れることとなる。このギャップCの大きさは、この回転角θが増大するにつれて増大するが、ある与えられた角度θに対しては、このギャップCは、この渦巻の全長に亘って一定となる。(以下、便宜上、このような特徴を有する渦巻を一定ギャップ渦巻と呼称する。)この一定ギャップ渦巻は、極座標を使って表すと、下記の式により画成される。
【0024】
【数1】

ここで、 θ=回転軸から測ったときの距離のところにおいて交差する放射状の線の回転角(ラジアンで測定したときの回転角)
距離: Ri=最初の半径であって、回転軸から渦巻の始点までを測ったもの R=回転角度がθのところにおける渦巻の半径であって、回転軸から測定したときのもの
【0025】
上述のことから、一定ギャップ渦巻が具備されたドライバーが形成されて、そのドライバーが回転させられて凹部の渦巻状の壁と係合すると、このドライバーの取付け側の渦巻状の壁は、凹部の対応する取付け側の渦巻状の壁と完全に、かつ、一斉に係合する(噛み合う)。図4に関連して上述したように、図5の極座標で表した図には、渦巻が回転させられたときの双方の位置の間に発生するギャップの幅が一定で、2つの渦巻が相互に平行であると見なせるような理想的な渦巻を図示するためだけのものであることを理解されるべきである。
【0026】
本発明に従えば、凹部の翼の取付け側の壁の渦巻状の面(複数の面)には、その渦巻の始点54の位置が凹部の中心軸44から半径Riだけ半径に沿って離れているように配置されている。本発明に従えば、この始点54により近い位置にある部分であって、渦巻状の面の一部の部分は、この始点からより遠い位置に配置された部分よりも、加えられたトルクのより大きな部分をネジを回転させて駆動させるような方向に伝達する。ドライバーの渦巻状の面と、ドライバーが係合することのできる凹部とは、始点54により近い位置に配置された渦巻の部分に合致するようにこれらの面の形状を決めることにより、トルクを伝達する上で最も効果的となる。本発明に従えば、このような力を伝達する壁は、図5の中のR=1のところからR=約3.5以下のところ(62により示された点)まで、より好ましくは、R=1からR=約2のところまで延びる渦巻の部分に合致するような曲面となっている。渦巻の前記両端の間の望ましい部分に対応する弧の角度を見てみると、この角度は最大限の場合には約125°であり、より好ましくは約90°以下であり、最適なものは約45°以下である。
【0027】
図6及び図7は、力線図であって、ドライバーと凹部との係合した双方の壁の曲面上の任意の点において作用している力の成分を図示したものである。図6は、本発明の場合の1つの力線図を図示したものである。図6には、取外すときに機能する壁48Bが、曲面状の境界面68に沿って、留め具の凹部を有する頭部16Bの取外すときに機能する壁26Bと面対面の形で係合しているところが図示されている。図6は、70で示された反時計回りのトルクが、ネジの軸44Bの回りに加えられたときの力のベクトルを概念的に示したものである。選択されたある点72においては、ドライバー34Bは力74を境界面68に垂直な方向に沿って凹部の面26Bに加える。この垂直方向の力74は、ネジにトルクだけを加える成分76と、トルクではなく半径に沿って外向きの圧縮力を発生させる成分78とに分解される。更に、垂直の方向の力74により、境界面68の接線方向82に沿った方向を向いた摩擦力80が発生する。この摩擦力80は、外向きの成分78に対して反対向きになっていて相殺することとなる成分86とに分解される。この摩擦力80とこの垂直方向の力74との比率は、ネジの表面の滑らかさ、ネジの潤滑性、ネジの材料等により当然のことながら変化する摩擦係数に依存する。この摩擦係数は、例えば、約0.1から約0.4の間で変化することもあり、図6と図7とにおける力の分解図を作るに当たっては、0.4の摩擦係数が採用されている。従って、図6は本発明の回転力を加える側の壁の形状と回転力が加えられる壁の形状とにあっては、説明のために想定された大きな摩擦係数の場合であっても、主に垂直方向の力の成分108によりトルクが発生する。本発明を具現化した留め具によりトルクが伝達される能力は、この摩擦力のベクトル成分84には、その影響が重要になる程度には全くもって左右されない。
【0028】
図7は、力線図を示すものであって、図6の場合と同じものであるが、ここでは点72’において曲面状の境界68’に対する接線82’が、ネジの軸44B’から点72’まで引っ張った半径に垂直により近くなるように配向されたドライバー/凹部間の曲面状の境界領域68’による影響が描かれている。このような配置は、Bradshaw特許第2,2248,695号に記載されたものであっても典型的なものとなっている。この図7と図6とを比較すると、従来技術による形状においては、ベクトル成分78’と86’との間の長さの違いからも判るとおり、ネジの頭部に対して、半径に沿って外向きの実質的により大きな荷重が発生することとなり、かつ、従来技術による形状においては、トルクを発生させるに当たって変動し、かつ、しばしば予想できない摩擦現象に主に左右される。従来技術においては摩擦に依存していたということは、摩擦による力の成分84’と力の成分76’とのそれぞれの相対的な大きさを比較することにより明らかである。以上のことから、渦巻の一部分に対する接線に直交する線は、長軸からドライバーにより加えられた力がトルクとして留め具に伝達されるときの程度の代表的な接点までの間に延びる半径と、ある角度をもって交差することが判る。本出願人による発明においては、このような角度は、17°以上であって、好ましくは実質的には17°を超えるべきである。本発明の重要な目的の中には、ネジの頭部に塑性変形や破壊を起こさせることなく、かつ、摩擦特性に大きく依存することなく大きなトルクがドライバーから留め具に伝達できるような駆動システムを提供することがある。
【0029】
図8Aから図8Eには、本発明を具現化しており、かつ、2つから6つの翼22Aから翼22Eを含む凹部付頭部を有する留め具が概念的に図示されている。これらの実施態様においては、取外し側の輪郭(取外すときに力が加わる部分の輪郭)を渦巻の形にして、取付けるときの方向よりも取外すときの方向の場合においてより大きなトルクが加わることができるようにその形状が決められている。これらの概念的な説明図においては、取付け側の壁は、実質的に平坦なものとして図示されているが、このような取付け側の壁は、本発明に従って渦巻状の形状等を含めて、望ましいものであればどのような形状も採用できる。
【0030】
図9Aから図9Dにおいては、取外すときの場合の方向と取付けるときの場合の方向との双方において実質的に同一のトルクを発生させるようになった双方向型の渦巻状駆動システムに本発明を使用したところが図示されている。これらの実施態様においては、1つ以上の翼の中の取外し側の壁と取付け側の壁とはそれぞれに相互に反対の方向に向いた渦巻状の輪郭が具備されていて、取付けるときの方向と取外すときの方向との両方において、渦巻状の輪郭を有する壁であって駆動力が伝達される壁に特有の特徴が得られるようになっている。図9Aから図9Dに図示された実施態様においては、翼の取付け側の壁と取外し側の壁とは、実質的に相互の鏡像であることもある。
【0031】
図10Aと図10Bには、複数の翼を有する駆動システムが図示されており、この中では、翼(この場合、説明のために3つのものが図示されている)は、取付けるときの方向と取外すときの方向の双方のために駆動力を伝達する渦巻状の壁を有するが、この場合、それぞれの翼の中の駆動力を伝達する壁の1つは、その他のものよりもより大きなトルク能力を有するものとなっている。図10Aと図10Bに図示された実施態様により、取外すときの方向により大きなトルク能力が得られるが、この理由は、取外すときに駆動力を伝達する壁の場合は、取付けるときに駆動力を伝達する壁の場合よりも弧の長さがより長くなり、それに対応する領域もより大きくなるからである。取外すときの方向においては、より大きな表面領域に亘って力が加えられるので、そのような方向により大きなトルクが加えられることになる。
【0032】
本発明は、上述のように一定ギャップ渦巻になった場合において最も効率的に実施できるのであるが、従来技術によるものよりも顕著な長所を提供しつつもギャップが実質的に一定の渦巻であるような最も好ましいものから多少変化した渦巻を具備するシステムも提供可能である。図11Aと図11Bとは、このような凹部とドライバー34Fの一例を図示したものであって、この場合には、この凹部には4つの翼22Fが含まれており、それらの各々がギャップ幅の一定な渦巻を有するようになった取外すときに駆動力を伝達する壁26Fと、ドライバーから凹部に伝達される力の大部分のものをトルクが発生する方向に向かわせるように配向された形状であって異なる渦巻形状を有する取付けるときに駆動力が伝達される壁24Fとを有する。ドライバーの翼と凹部の翼のそれぞれの取付け側の面と取外し側の面との過渡領域90、90’、92、92’は弧状の形を有するように形成することもできる。これらのいずれの実施態様においても、駆動力が伝達されるドライバーの表面と凹部のそれとの間において、特定の用途に適した充分に余裕のあるクリアランスが提供されることが好ましい。ドライバーの表面により画成された輪郭と凹部の内側の輪郭との間の大きなクリアランスにより、点接触又は線接触する箇所に大きな応力集中が起こることが助長される従来技術によるシステムとは異なり、本発明においては、このような余裕のあるクリアランスによっても実質的に影響を受けないのであるが、その理由はドライバーの渦巻状になった表面が、クリアランス角度θ分だけ回転させられて、それに対応して噛み合う凹部の渦巻状の表面と係合するときに、このクリアランスは均一的に吸収されるからである。一例として、ドライバーの外側の輪郭と凹部の内側の輪郭との間においてその全周に亘って存在する0.002インチ(0.005cm)から約0.004インチ(約0.01cm)のオーダーのクリアランス用ギャップは、このシステムのトルク能力に顕著な悪影響を及ぼさないはずである。
【0033】
凹部の深さは、ネジの頭部とシャンクの形状と寸法、留め具を作るときの材料、更には、凹部の他の部分の寸法に左右されることもある。この深さは、ネジの頭部の強度が充分に維持されるように選択しなければならなく、このことは特に、100°の平坦頭部を有するネジ71の場合においては、比較的奥行きの小さな平坦な頭部となっているために、頭部とシャンクとの間の境界領域の強度が弱体化する前まで凹部が入り込むだけの材料が殆ど残らないのが典型的である。凹部の深さが浅くても、ドライバーと凹部との間の広い表面領域における接触の結果得られる増大したトルク能力を提供するために本発明が使用されたような場合には、このような平坦な頭部を有するネジの場合であっても、そのネジの頭部の強度を弱体化することなく大きな前進回転トルクが達成できることがある。
【0034】
本発明のドライバーと凹部とは、従来の2段階式鍛造型の頭部作成機により製造することができる。このときのパンチ具は、図2に図示されているように、本体部とドライバーの形状にほぼ一致して対応する尖端部とが含まれるように形成するのが典型的である。完全に垂直な壁を有する凹部を製造するときの潜在的な困難のために、正確に垂直な壁を作ろうと目論んでも、凹部の壁には正の値となる抜きしろ角が多少の角度、多分1°のオーダーの角度で発生することがある。このようなわずかなテーパにより、渦巻状の形状を有する駆動システムの性能が顕著に影響されるようなことはないはずである。更に、凹部が、これよりも大きな正の値の抜きしろ角を意図的に有するようにすることも望ましく、例えば、本発明の利点を大幅に減少させることなく、壁の抜きしろ角を約5°から約6°まで増大させることも可能である。パンチ具は、例えば、ホビング・ダイス(hobbing dies)を使用するなどのパンチ具製造用の従来技術に従って形成することができる。本発明に従ったドライバーも、従来の技術、例えば、1つ以上の形の整えられたダイスでもって、未加工のドライバーを鍛造して望ましい形状をした翼部を形成する方法とか、特別な形状をしたフライスを使用してドライバーの先を切削加工する方法等により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、頭部が平坦になったネジであって、本発明に従った凹部を有するネジを一例として図示したものである。
【図2】図2は、本発明に従ったドライバーであって、図1に図示されたネジの凹部と係合することができるようなドライバーを一例として図示したものである。
【図3】図3は、ネジの頭部であって、説明を簡便にするために、本発明に従ったもので、耳たぶのようになった単純な渦巻状の凹部を1つだけ有する頭部が、その凹部の中に入ったドライバーの断面が図示されたものと一緒になっているようなネジ頭部の上面図である。
【図4】図4は、図3と同様な説明用の図であって、この図では、ドライバーがネジに対して回転されてこのドライバーの渦巻状の面とこの凹部の渦巻状の面とが係合するようになっている。
【図5】図5は、本発明に従って、相互に係合することのできるドライバーの壁と凹部の壁との最も好ましい形状を画成する一定ギャップ渦巻を極座標を用いて概念的に図示した図である。
【図6】図6は、挿入されたドライバーにより留め具にトルクが加えられたときに、本発明のドライバーと凹部との間に発生する力のバランスを図示する力線図である。
【図7】図7は、図6と同様な力線図であって、本システムの設計がドライバーと凹部との間に発生する摩擦による係合に依存しているような従来技術によるドライバーと凹部との間に発生する力を分解した力線を示す図である。
【図8】図8Aから図8Eまでの図は、翼状の凹部を複数有する留め具頭部を概念的に示す上面図であって、これらの図の場合には、渦巻状の輪郭を有する凹部の壁は反時計回りに回転させられたドライバーにより係合できるようになっている。
【図9】図9Aから図9Dまでの図は、渦巻の形を有する凹部の形状であって取付けるときに力が加わる壁と取外すときに力が加わる壁とを有する翼を複数有して、このような壁の各々が渦巻状の形状を有しているような凹部の形状を概念的に示す図である。
【図10】図10Aは、本発明に従った凹部を有するネジを概念的に示す上面図であって、この図の場合には、ネジの翼は時計回りの(取付けるときの)方向の場合よりも反時計回りの(取外すときの)方向の場合の方がより大きなトルクを発生させるようになった渦巻状の壁であって、この場合にはその形状が非対称になっている取付け用の渦巻状の壁と取外し用の渦巻状の壁とが具備されており、更に、ドライバーは、その断面だけが図示されている。図10Bは、図10Aのネジとドライバーを図示したものであり、この図の場合には、ドライバーは反時計回りであって、取外す方向に回転されており、ドライバーと凹部との取外し用の渦巻状の壁の双方が係合しているところを示している。
【図11】図11Aは、翼を複数有する凹部の具備されたネジと翼を複数有するドライバーとを概念的に示す上面図であり、この図の場合には、1つの方向に回転するときのネジとドライバーとの係合可能な面は、一定の幅のギャップを有する渦巻状の形状に形成されて、この場合に想定される駆動するときの面はこれとは異なる渦巻状の形状となり、この図は更に、取付けるときのドライバーの壁が回転させられて凹部の取付け側の壁と係合したところを図示している。図11Bは、図11Aと同様な説明図であるが、この場合には、ドライバーはネジ山付留め具の頭部に対して反時計回りに回転させられて、ドライバーと凹部との間に一定の幅のギャップを形成させる渦巻状の双方の表面を相互に噛み合わせたところが図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部付頭部を有する留め具を駆動させるためのドライバーであって、該ドライバーが、
シャンクと、前記シャンクの端に形成された尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と前記中央部から外側に放射状に延びる複数の翼とを有し、
前記翼の各々は、取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが、前記留め具の長軸から最初の半径の長さ分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
前記渦巻が、下記の式により規定されることを特徴とするドライバー。
【数1】


ここで、
θ=回転軸からRの距離にあるところで上記により規定される曲線を横切る放射状の線の回転角(ラジアンで測定した回転角)
Ri=最初の半径であって、回転軸から渦巻の始点までを測ったときのもの
R=回転角がθのところにおける渦巻の半径であって、回転軸から測定したときのもの
【請求項2】
駆動するときに力が加わる壁により画成された渦巻の一部が、前記始点から前記最初の半径の2倍の半径のところに位置する外側終点まで延びていることを更に特徴とする請求項1記載のドライバー。
【請求項3】
凹部付頭部を有する留め具を駆動させるためのドライバーであって、該ドライバーが、
シャンクと、前記シャンクの端に形成された尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と前記中央部から外側に放射状に延びる複数の翼とを有し、
前記翼の各々は、取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが、前記留め具の長軸から最初の半径の長さ分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
駆動するときに力が加わる渦巻状の壁が画成する弧の中心角が125°以下であることを特徴とするドライバー。
【請求項4】
駆動するときに力が加わる渦巻状の壁が画成する弧の中心角が90°以下であることを更に特徴とする請求項3記載のドライバー。
【請求項5】
駆動するときに力が加わる渦巻状の壁が画成する弧の中心角が45°以下であることを更に特徴とする請求項3記載のドライバー。
【請求項6】
凹部付頭部を有する留め具を駆動させるためのドライバーであって、該ドライバーが、
シャンクと、前記シャンクの端に形成された尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と前記中央部から外側に放射状に延びる複数の翼とを有し、
前記翼の各々は、取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが、前記留め具の長軸から最初の半径の長さ分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
前記取外し側の壁が前記渦巻状の形状を有することを特徴とするドライバー。
【請求項7】
凹部付頭部を有する留め具を駆動させるためのドライバーであって、該ドライバーが、
シャンクと、前記シャンクの端に形成された尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と前記中央部から外側に放射状に延びる複数の翼とを有し、
前記翼の各々は、取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが、前記留め具の長軸から最初の半径の長さ分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成、
前記取付け側の壁が前記渦巻を有するような形状となっていることを特徴とするドライバー。
【請求項8】
前記取付け側の壁と前記取外し側の壁とが共に前記渦巻状の形状を有することを更に特徴とする請求項6又は7に記載のドライバー。
【請求項9】
前記壁の内の一方が他方よりも大きなトルク能力を有するような形状となっていることを更に特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のドライバー。
【請求項10】
長手方向の軸と頭部を具備するネジ山付留め具を駆動させるためのドライバーであって、該ドライバーが、
シャンクと、前記シャンクの端に形成された尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と前記中央部から外側に放射状に延びる複数の翼とを有し、
前記翼の各々は、取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが、前記留め具の長軸から最初の半径の長さ分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成することを特徴とするドライバー。
【請求項11】
前記渦巻のどのような一部分も、それの接線に垂直な線が前記長軸から前記接線の接点までを結ぶ半径と交わって形成する角度が17°未満ではないことを更に特徴とする請求項10記載のドライバー。
【請求項12】
前記渦巻が一定ギャップ渦巻を含むことを更に特徴とする請求項10記載のドライバー。
【請求項13】
前記渦巻が、下記の式により規定されることを特徴とする請求項10記載のドライバー。
【数1】

ここで、
θ=回転軸からRの距離にあるところで上記により規定される曲線を横切る放射状の線の回転角(ラジアンで測定した回転角)
Ri=最初の半径であって、回転軸から渦巻の始点までを測ったときのもの
R=回転角がθのところにおける渦巻の半径であって、回転軸から測定したときのもの
【請求項14】
凹部付頭部を有する留め具の頭部側の端を形成するためのパンチ具であって、該パンチ具が、
前記頭部の外側の輪郭を形成・画成するようになった面を有する本体と、
前記本体と一体となっており、前記面から延びる尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と該中央部から外側に向かって放射状に延びる複数の翼を有し、
前記翼の各々は取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが前記留め具の長軸から最初の半径分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
前記外側終点の半径と前記始点の半径との比が3倍以下であることを特徴とするパンチ具。
【請求項15】
前記外側終点の半径と前記始点の半径との比が2倍であることを更に特徴とする請求項14記載のパンチ具。
【請求項16】
凹部付頭部を有する留め具の頭部側の端を形成するためのパンチ具であって、該パンチ具が、
前記頭部の外側の輪郭を形成・画成するようになった面を有する本体と、
前記本体と一体となっており、前記面から延びる尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と該中央部から外側に向かって放射状に延びる複数の翼を有し、
前記翼の各々は取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが前記留め具の長軸から最初の半径分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
渦巻状の壁が画成する弧の中心角が125°以下であることを特徴とするパンチ具。
【請求項17】
渦巻状の壁が画成する弧の中心角が90°以下であることを更に特徴とする請求項16記載のパンチ具。
【請求項18】
渦巻状の壁が画成する弧の中心角が45°以下であることを更に特徴とする請求項16記載のパンチ具。
【請求項19】
凹部付頭部を有する留め具の頭部側の端を形成するためのパンチ具であって、該パンチ具が、
前記頭部の外側の輪郭を形成・画成するようになった面を有する本体と、
前記本体と一体となっており、前記面から延びる尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と該中央部から外側に向かって放射状に延びる複数の翼を有し、
前記翼の各々は取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが前記留め具の長軸から最初の半径分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
前記取付け側の壁が前記渦巻を有するような形状となっていることを特徴とするパンチ具。
【請求項20】
凹部付頭部を有する留め具の頭部側の端を形成するためのパンチ具であって、該パンチ具が、
前記頭部の外側の輪郭を形成・画成するようになった面を有する本体と、
前記本体と一体となっており、前記面から延びる尖端部とを有し、
前記尖端部は、中央部と該中央部から外側に向かって放射状に延びる複数の翼を有し、
前記翼の各々は取付け側の壁と取外し側の壁とを有し、
前記翼は、前記取付け側の壁又は前記取外し側の壁の少なくとも1つが前記留め具の長軸から最初の半径分だけ離れた始点から前記最初の半径の1倍を超え3.5倍以下の半径のところにある外側終点まで延びる渦巻の一部を画成し、
前記取付け側の壁が前記渦巻を含む形状となっていることを特徴とするパンチ具。
【請求項21】
前記取付け側の壁と前記取外し側の壁とが共に前記渦巻状の形状を有することを更に特徴とする請求項19又は20に記載のパンチ具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14000(P2013−14000A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194230(P2012−194230)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2010−132495(P2010−132495)の分割
【原出願日】平成10年10月28日(1998.10.28)
【出願人】(500154858)フィリップス・スクリュー・カンパニー (6)
【Fターム(参考)】