説明

ネジ部付二層構造蓋の製造装置及び製造方法

【課題】係止構造を具備しなくても内層及び外層が互いに回転することがなく、かつ抜け落ちることもないネジ部付二層構造蓋の製造装置及び製造方法の開発。
【解決手段】公転軸3aを軸中心とする回転盤3と該回転盤3に対面して設置された固定盤6を備えた射出成形機2と、前記回転盤の前面上であって、回転盤3を軸回転させることにより互いの位置が入れ替わり可能に設置された複数のネジ金型7と、前記固定盤の後面上であって、該ネジ金型7と嵌合可能に設置された内金型8及び外金型9と、モーター21の回転運動を伝達する回転伝達部22を備えるネジ抜取り機構20とから構成され、前記ネジ金型7は側面にネジ構造が形成された凸部7aを有し、ネジ抜取り機構20が回転盤3に接続され、前記モーター21が駆動することによりネジ金型7の凸部7aの中心を自転軸として軸回転可能とすることによってネジ部付二層構造蓋を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容液等の保存に用いられる容器用蓋の製造装置及び製造方法に関するものであって、特に二層の樹脂構造及び、ネジ部を備えた蓋の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容液等の保存に用いられる容器用の蓋は、美容液等の商品価値を高めるために高級感のある質感を備えることが求められている。例えば着色された樹脂による内層の外側を透明な樹脂による外層が嵌合して形成された二層構造を備えた蓋を備える容器とすることによって高級感のある質感を商品の購入者に感じさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−236940
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし二層構造を有する蓋を、樹脂を用いて形成する場合には、内層と外層とをあらかじめ別体で射出成形した後、互いに嵌合することにより製造していた。そのため、内層及び外層が互いに回転する、または抜け落ちることを防止するための係止構造を、蓋の内層と外層との境界部分に形成することが必要であった。
【0005】
また、射出成形で形成するため、金型のパート面(合わせ面)を蓋の底面にあわせることが望ましいことから、突出部を含む係止構造も蓋の底面部分に形成する必要があった。
【0006】
しかし前記係止構造は、外層が透明な樹脂からなる場合には蓋の側面方向から外層を通して見えるため、店頭に陳列された商品の高級感を損なう要因となっていた。さらに、上記の事情により蓋の底面部分に形成された係止構造は、蓋を裏返すと底面方向からも係止構造が見えてしまうため、商品を使用するために容器から蓋を取った際にも係止構造が目立ち、これも商品の高級感を損なう要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本願発明は、内層及び外層を連続的に形成することによって、係止構造を具備しなくても内層及び外層が互いに回転することがなく、かつ抜け落ちることもないネジ部付二層構造蓋の製造装置及び製造方法を開発したものである。
【0008】
ここで、射出成形された樹脂は冷却されて固化する際に熱収縮して体積の変化を生ずる。したがって、組成の異なる樹脂を用いて、外層の形成後に内層の形成を連続的に行うこととすると、後に形成された樹脂は熱収縮し、内層が外層から一部剥離する異常が生じる。
【0009】
一方、内層及び外層を連続的に形成するためには、先に形成された部分を次工程の金型まで移動する必要がある。しかし外層を先に形成し、当該外層を次工程の金型まで移動して内層を形成することは、上記の剥離異常の発生を避けるため実施できない。
【0010】
ところが本願発明に係る内層の内側面にはネジ部が形成されるため、内層の離型には該ネジ部を破壊せずに離型するための機構を備えることが必要となる。そのため、内層を先に形成し、該内層を次工程の金型まで移動させる機構と、内層を離型するための機構とを同時に具備することは困難であった。
【0011】
しかし本願発明においては、下記の課題を解決するための手段を講じることにより、先に形成した内層を移動させ、連続的に外層を形成した後に完成した二層構造蓋のネジ部を破壊せずに離型可能とし、内層と外層間に剥離異常が発生せず、また、係止構造を具備しなくても内層及び外層が互いに回転することがなく、かつ抜け落ちることもないネジ部付二層構造蓋を製造することに成功した。
【0012】
すなわち、本願発明に係るネジ部付二層構造蓋の製造装置は、公転軸を軸中心として軸回転可能な回転盤、及び該回転盤に対面して設置された固定盤を備えた射出成形機と、前記回転盤の前面上であって、回転盤を軸回転させることにより互いの位置が入れ替わり可能に設置された複数のネジ金型と、前記固定盤の後面上であって、回転盤と固定盤が近接することによりネジ金型と嵌合可能に設置された内金型及び外金型と、前記ネジ金型に着脱自在に接続され、モーター及びモーターの回転運動を伝達する回転伝達部を備えるネジ抜取り機構とから形成され、前記ネジ金型は、側面にネジ構造が形成された凸部を有し、ネジ抜取り機構が回転盤に接続され、前記モーターが駆動することによりネジ金型の凸部が該凸部の中心を自転軸として軸回転可能であることを特徴とする。
【0013】
また、上記ネジ部付二層構造蓋は、軸回転可能な回転盤、及び該回転盤に対面して設置された固定盤を備えた射出成形機を用いたネジ部付二層構造蓋の製造方法であって、回転盤に設置した凸部を備えるネジ金型に、内金型を嵌合させる工程と、前記ネジ金型と内金型間に形成された第一隙間空間に、第一樹脂を加熱溶融して注入する工程と、第一樹脂を冷却し、内層を形成する工程と、前記内層をネジ金型に付属させた状態で内金型を離型する工程と、回転盤の軸回転により内層を搬送する工程と、内層が付属したネジ金型に外金型を嵌合させる工程と、内層と外金型間に形成された第二隙間空間に、第一樹脂よりも融点の低い第二樹脂を加熱溶融して注入する工程と、第二樹脂を冷却し、外層を形成する工程と、内層及び外層からなる二層構造蓋をネジ金型に付属させたまま外金型を離型し、ネジ金型の凸部を軸回転させることによって、ネジ金型を二層構造蓋から離型する工程とからなる方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、係止構造を具備しなくても内層及び外層が互いに回転することがなく、かつ抜け落ちることもないネジ部付二層構造蓋の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内層12を形成するためにネジ金型7と内金型8を嵌合した様子を示す概略図である。
【図2】内層12の形成後、並進盤4と共に回転盤3を後方へ移動させた様子を示す図である。
【図3】外層17を形成するためにネジ金型7と外金型9を嵌合した様子を示す概略図である。
【図4】外層17が形成されてネジ部付二層構造蓋23がネジ金型7に付属した状態を示す概略図である。
【図5】工程が完了し、ネジ金型7を回転させてネジ部付二層構造蓋23を取り出す様子を示す概略図である。
【図6】本願発明によって作製されたネジ部付二層構造蓋23の正面図(a)及び底面図(b)と従来の二層構造を有する蓋の正面図(c)及び底面図(d)を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について詳しく説明する。
【0017】
図1から図5は、請求項1に係るネジ部付二層構造蓋の製造装置1の構成及びその機能を説明する図である。射出成形機2には金型が取り付け可能な回転盤3及び固定盤4が設置されている。
【0018】
回転盤3は、図示しない回転駆動源によって、前後面の中心を公転軸3aとして軸回転可能に設置されている。また、回転盤3の前方(図1から図5において右方向)には、回転盤3の前面と固定盤4の後面が対面して設置されている。
【0019】
また、回転盤3の後面には並進盤4が設置されている。並進盤4の外縁部にはタイバー5が左右方向に挿通されており、回転盤3及び並進盤4は図示しない並進駆動源を駆動することによって、左右に並進可能である。固定盤4に取付けられた金型に対して回転盤3に取付けられた金型を嵌合および離型はこの並進運動により行われる。
【0020】
回転盤3の前面には一対のネジ金型7が設置されており、一対のネジ金型7は回転盤3を半回転させることにより互いの位置を入れ替えることができる。
【0021】
一方、固定盤3の後面には内金型8と外金型9が前記一対のネジ金型7に対応する位置にそれぞれ設置されている。従って内金型8と外金型9は、回転盤3を並進盤4と共に前方へ併進させて回転盤3と固定板4とを近接させることにより、内金型8と外金型9が一対のネジ金型7のそれぞれと同時に嵌合することができる。
【0022】
ネジ金型7は、回転盤3に設置された場合に前方に向かって凸形状を有する金型であり、凸部7a、凸部7aの周縁部に設置された底部7b及び、凸部7aの後部に設置された回転受部7cより構成されている。該凸部7aの側面にネジ部付二層構造蓋23のネジ部を形成するためのネジ構造が螺旋状に形成されている。凸部7aの側面は回転盤3の前面に対して垂直に形成されていることが好ましい。
【0023】
一対のネジ金型7はそれぞれ同一形状でも良いが、凸部7aの直径、高さ、もしくはネジ構造の螺旋の間隔等が互いに異なる形状であっても良い。一対のネジ金型7の形状が互いに同一形状である場合には回転盤3を半回転させるごとに同一の蓋を製造することができるのに対して、一対のネジ金型7の形状がそれぞれ異なる形状を有する場合には回転盤3を半回転させるごとに異なる構造のネジ部を有する蓋を交互に製造することができる。
【0024】
また、ネジ金型7の凸部7aは、凸部7aの中心を自転軸として軸回転可能に設置されている。一方、底部7bは回転盤3に固定されている。また、凸部7aの後部に設置される回転受部7cは、後述するネジ抜取り機構20と着脱可能に接続されており、該ネジ抜取り機構20を回転受部7cの後部に接続して軸回転させることにより凸部7aに回転運動を伝達することができる。当該軸回転により、ネジ部付二層構造蓋23の形成後、ネジ金型7とネジ部付二層構造蓋23とを離型させることができる。
【0025】
内金型8は、ネジ部付二層構造蓋23の内層12を形成するための金型であり、図1に示すようにネジ金型7と嵌合することができるものである。内金型8とネジ金型7は、互いに嵌合すると内金型8とネジ金型7との間に第一隙間空間10が形成されるように構成されている。第一隙間空間10に溶融した第一樹脂11が注入されると第一樹脂11が内層12として形成することができる。なお、第一樹脂11の注入は、固定盤4の前部に設置されたシリンダー13内で加熱溶融され、固定盤4及び内金型8内に形成されたランナー14を介して第一隙間空間10に注入される。
【0026】
外金型9は、ネジ部付二層構造蓋23の外層17を形成するための金型であり、図3に示すようにネジ金型7と嵌合することができるものである。外金型9とネジ金型7は、ネジ金型7上に内層12が形成された状態で嵌合すると該内層12と外金型9との間に第二隙間空間15を形成するように構成されている。第二隙間空間15に溶融した第二樹脂16が注入されると、第二樹脂16が第一樹脂11の外側に密着した状態で外層17を形成することができる。なお、第二樹脂16の注入は、固定盤4の前部に設置されたシリンダー18内で加熱溶融され、固定盤4及び内金型8内に形成されたランナー19を介して第二隙間空間15に注入される。
【0027】
ここで第二樹脂16は、第一樹脂11よりも融点の低い樹脂を用いることが望ましい。第二樹脂16の融点が第一樹脂11の融点よりも低いことによって、第一樹脂11によって形成された内層12が注入された第二樹脂の熱により変形することを防止することができる。
【0028】
回転盤3の後方にはネジ抜取り機構20が設置されている。ネジ抜取り機構20は、モーター21、回転伝達部22を備えて構成されるものである。回転伝達部22は、モーター21の回転を受けて回転することができる。
【0029】
回転伝達部22の前部にはネジ金型7の回転受部7cが接続されている。これにより、モーター21の回転を回転伝達部22及び回転受部7cを介して凸部7aに伝達することができ、この回転によって、図5に示すようにネジ金型7からネジ部付二層構造蓋23を取り出すことができる。
【0030】
ここで、回転伝達部22は駆動カップリングとして形成され、回転受部7cは受動カップリングとして構成され、回転伝達部22と回転受部7cとは着脱自在に接続されることが望ましい。回転盤3を回転してネジ金型7の位置を入れ替える際には、ネジ抜取り機構20が後方へ移動することにより回転伝達部22と回転受部7cとの接続が開放される。これにより、回転盤3の回転により回転伝達部22と回転受部7cとの接続が破壊されることがない。ネジ金型7の位置の入れ替えが完了するとネジ抜取り機構20が再び前方へ移動し、回転伝達部22と回転受部7cとが再接続されることとなる。
【0031】
なお、ネジ抜取り機構20は回転盤3の側方に設置されていてもよい。
【0032】
次に、請求項1に係る製造装置を用いて本願発明に係るネジ部付二層構造蓋23を製造する方法について説明する。
【0033】
図1に示すように回転盤3にネジ金型7を設置し、固定盤4の前面上に内金型8及び外金型9を設置した後、並進盤4と共に回転盤3を前方に移動させて、回転盤3と固定板4とを近接させることにより内金型8をネジ金型7に嵌合させる。
【0034】
嵌合したネジ金型7と内金型8との間には第一隙間空間10が形成される。
【0035】
形成された第一隙間空間10に溶融した第一樹脂11を、シリンダー13からランナー14を介して注入し、内層12を形成する。
【0036】
続いて内金型8の冷却により内層12を冷却し固化する。
【0037】
次に、図2に示すように並進盤4と共に回転盤3を後方へ移動させ、前記内層12を前記ネジ金型7に付属させたまま内金型8を離型し、回転盤3を軸回転により半回転させてネジ金型7及び内層12を搬送する。
【0038】
続けて並進盤4と共に回転盤3を前方に移動させて、回転盤3と固定板4とを近接させることによりネジ金型7に外金型9を嵌合させる。
【0039】
この時、図3に示すようにネジ金型7に付属した内層12と外金型9との間に第二隙間空間15が形成される。
【0040】
第二隙間空間15に溶融した第二樹脂16を、シリンダー18からランナー19を介して注入し、外層17を形成する。
【0041】
続いて外金型9の冷却により外層17を冷却し固化する。
【0042】
並進盤4と共に回転盤3を後方へ移動させることにより、内層12及び外層17をネジ金型7に付属させたまま外金型9を離型し(図4)、図5に示すようにネジ金型7後部の凸部7aに接続したネジ抜取り機構20によって凸部7aを軸回転させ、ネジ金型7を内層12から離型して工程を完了する。
【0043】
図6には本願発明によって作製されたネジ部付二層構造蓋23の正面図(a)及び底面図(b)、及び従来の係止爪24を有する二層構造を有する蓋の正面図(c)及び底面図(d)を示す。いずれの蓋も内層12、12aは非透明な樹脂により形成され、外層17、17aは透明な樹脂により形成されているものとして説明する。
【0044】
従来の二層構造を有する蓋においては内層12a及び外層17aの下端部の境界面において係止爪24が形成されているため、正面図(c)においては蓋の外部から係止爪24が外層17aを通して見えてしまうと共に底面図(d)においても係止爪24の存在が明確にわかり、蓋の見栄えを損なう原因となっている。
【0045】
一方、本願発明によって作製されたネジ部付二層構造蓋23には係止爪は存在しないため、正面図(a)及び底面図(b)においても蓋の二層構造が現す美感を損なうことはない。
【符号の説明】
【0046】
1 ネジ部付二層構造蓋の製造装置
2 射出成形機
3 回転盤
6 固定盤
7 ネジ金型
8 内金型
9 外金型
10 第一隙間空間
11 第一樹脂
12 内層
15 第二隙間空間
16 第二樹脂
17 外層
20 ネジ抜き取り機構
23 ネジ部付二層構造蓋
24 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸を軸中心として軸回転可能な回転盤、及び該回転盤に対面して設置された固定盤を備えた射出成形機と、
前記回転盤の前面上であって、回転盤を軸回転させることにより互いの位置が入れ替わり可能に設置された複数のネジ金型と、
前記固定盤の後面上であって、回転盤と固定盤が近接することによりネジ金型と嵌合可能に設置された内金型及び外金型と、
前記ネジ金型に着脱自在に接続され、モーター及びモーターの回転運動を伝達する回転伝達部を備えるネジ抜取り機構とから形成され、
前記ネジ金型は、側面にネジ構造が形成された凸部を有し、
ネジ抜取り機構が回転盤に接続され、前記モーターが駆動することによりネジ金型の凸部が該凸部の中心を自転軸として軸回転可能である
ことを特徴とするネジ部付二層構造蓋の製造装置。
【請求項2】
軸回転可能な回転盤、及び該回転盤に対面して設置された固定盤を備えた射出成形機を用いたネジ部付二層構造蓋の製造方法であって、
回転盤に設置した凸部を備えるネジ金型に、内金型を嵌合させる工程と、
前記ネジ金型と内金型間に形成された第一隙間空間に、第一樹脂を加熱溶融して注入する工程と、
第一樹脂を冷却し、内層を形成する工程と、
前記内層をネジ金型に付属させた状態で内金型を離型する工程と、
回転盤の軸回転により内層を搬送する工程と、
内層が付属したネジ金型に外金型を嵌合させる工程と、
内層と外金型間に形成された第二隙間空間に、第一樹脂よりも融点の低い第二樹脂を加熱溶融して注入する工程と、
第二樹脂を冷却し、外層を形成する工程と、
内層及び外層からなる二層構造蓋をネジ金型に付属させたまま外金型を離型し、ネジ金型の凸部を軸回転させることによって、ネジ金型を二層構造蓋から離型する工程
とからなることを特徴とするネジ部付二層構造蓋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−284954(P2010−284954A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142664(P2009−142664)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(390003609)株式会社クニムネ (11)
【Fターム(参考)】