説明

ネットワークノード、ネットワークシステムおよびネットワークノードにおける終端抵抗設定方法

【課題】 ネットワーク、特にフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現する。
【解決手段】 終端抵抗設定方法は、ADコンバータが通信用ICから送信中フラグを受信すると(S100にてYES)、ADコンバータが通信用トランスの1次側の電圧値をAD変換して測定回路に出力するステップ(S200)と、測定回路が通信用ICから送信開始フラグを受信すると(S300にてYES)、測定回路がプリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値±αの範囲内にあるか否かを判断するステップ(S400)と、プリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値±αの範囲内にないと(S400にてNO)、測定回路がプリアンブルの電圧値が基準電圧値に近くなるように調整用終端抵抗の抵抗値を変更するステップ(S500)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端抵抗を要するネットワークに関し、特に、通信品質を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置の高速化が進み、ネットワーク配線(バス型)の両端には、終端抵抗器を接続するのが普通である。終端抵抗器には、バス配線の特性インピーダンスと同値の抵抗器が使用される。終端抵抗器を接続しない場合、出力した信号がバス配線の両端で反射してしまい、反射した信号と出力した信号との重ね合わせにより信号の波形歪みが発生する。この波形歪みは、バスの伝送速度が速くなるほど大きくなり、場合によっては正常な信号伝送ができなくなる。
【0003】
以下に示す公報に、この終端抵抗器に関する技術が開示されている。
【0004】
特開平1−228347号公報(特許文献1)は、共通バスの両端に終端装置を設けても、ノード数が可変の場合に各ノードの入力容量の影響で伝送路の特性インピーダンスが変化すると終端装置における終端値が適合しなくなることを回避する共通バス終端方式を開示する。この共通バス終端方式は、終端装置を有する共通バスに複数のノードが接続されるノード接続情報バスと、各ノードは共通バスへの接続状態をノード接続情報バスへ送出する接続情報送出回路を有し、終端装置はノード接続情報バスと接続し共通バスに接続されているノード数量を検出するノード接続数検出回路と、このノード接続数検出回路で検出したノード接続数に応じて終端値を制御する終端制御回路とを含む。
【0005】
この共通バス終端方式によると、共通バスに接続されるノードから接続情報を送出し、この接続情報を基にノード接続数を検出してその接続数に応じて自動的に終端値を最適値に変更することにより、接続ノードを増設したり切り離したりまたはシステム設置の状況により接続ノード数が大幅に違ったりしても、終端値を人手で調整することなく最適な信号終端が可能になる。このため、反射による波形歪がなくなりデータの伝送誤りを回避できる。
【0006】
特開平11−284549号公報(特許文献2)は、線路インピーダンスが変動する終端回路において、ロジック波形の立ち上がり、立ち下がりで線路インピーダンスが変動することによる反射によるノイズを防ぎ、信号品質の低下を防止する終端抵抗値調整方法を開示する。この終端抵抗値調整方法は、整合終端すべき信号(以下、被終端信号という)が存在し、整合終端値が変化する回路の終端値を調整する終端抵抗調整方法であって、被終端信号が立ち上がるときと、立ち下がるときとで、それぞれに最適な終端値をもつように終端抵抗値を切り替える。
【0007】
この終端抵抗値調整方法によると、適切な整合終端値が変化する回路において、線路インピーダンスが変化してもその時々の最適な終端値を設定可能とし、さらにロジック波の立ち上がり、立ち下がりを監視して、立ち上がり、立ち下がりの各々のインピーダンス整合がとれた終端値に設定できるようにして反射によるノイズを減らし信号の品質の低下を防止することができる。
【0008】
特開平10−198473号公報(特許文献3)は、バス配線に接続される機能回路の数や種別が変更されても、バス配線の両端での反射による波形歪みが抑制されるバスシステムを開示する。このバスシステムは、バス配線の特性インピーダンスに対する影響度が互いに等しい複数の回路基板が挿抜されるバスシステムであって、バス配線と、バス配線の端に接続された終端用可変抵抗器と、終端用可変抵抗器の抵抗値を、当該バスシステムに装着された回路基板の数に応じて変更する制御回路とを備える。
【0009】
このバスシステムによると、バス配線に接続される機能回路の数や種別が変更されても、それに合わせて終端抵抗を最適化がされるため、従来の装置と比較して、バスを流れる信号の波形歪みが著しく減少する。また、信号の波形歪を抑制できれば、データ転送を高速に行えるバスシステムの提供が可能となる。
【特許文献1】特開平1−228347号公報
【特許文献2】特開平11−284549号公報
【特許文献3】特開平10−198473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した公報に開示されたネットワークのワイヤリングはバス型であって、全てのデバイスがメインバスに接続されていなければならないという制約を有する。この制約のため、状況に応じてネットワークを分岐させたりスター型ワイヤリングを採用したりすることができないため、設置に時間がかかり、コストも上昇する。このような制約を避けるネットワークの形態としてフリートポロジーネットワークがあり、このネットワークにおいてはワイヤリングに対するトポロジーの制約がほとんどなくなる。
【0011】
このフリートポロジーネットワークには、スター型トポロジー、ループ型トポロジー、混合型トポロジーなどがあり、バス型トポロジーも含まれる。これらのフリートポロジーネットワークにおいては、終端抵抗は、(両終端バス型を除いて)1つだけでよく、しかもそれはフリートポロジーセグメントのどこに設置しても構わないとされている。
【0012】
しかしながら、フリートポロジーネットワークに1つの終端抵抗と複数のノードとを配置した場合において、終端抵抗から(距離的に)遠いノードにおいては、その通信が不安定になりやすいという現象が発生する。これは、配線抵抗や接点抵抗などに起因すると考えられる。この現象を回避するために、上述の特許文献に開示された技術を適用しようとしても、バス型でないものを含むフリートポロジーネットワークにおけるこのような問題を解決し得ない。
【0013】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ネットワーク、特にフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できる、ネットワークノード、ネットワークシステムおよびネットワークノードにおける終端抵抗設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明に係るネットワークノードは、伝送媒体を共有するネットワークに接続されるネットワークノードであって、抵抗値を変更可能な終端抵抗回路と、自己からの送信時の送信信号の状態を検知する検知回路と、検知回路により検知された状態に基づいて、線路インピーダンスが適正値になるような抵抗値に変更するように、終端抵抗回路を制御する制御回路とを含む。
【0015】
第1の発明によると、ネットワークノードが通信データを送信する際に送信信号の状態(出力電圧値)を検知して、その状態が基準状態から大きく離れていると基準状態(他のネットワークノードと同じ基準状態)にして、線路インピーダンスが適正値になるように終端抵抗回路の抵抗値を変更する。このようにすると、固定終端抵抗から距離的に遠いノードにおける通信は不安定になりやすい現象を、他のノードと同様の基準状態にすることができるので、安定化させることができる。その結果、ネットワーク、特にフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できるネットワークノードを提供することができる。
【0016】
第2の発明に係るネットワークノードにおいては、第1の発明の構成に加えて、ネットワークには、複数のネットワークノードが接続され、制御回路は、複数のネットワークノードにおいて同一の線路インピーダンスになるような抵抗値に変更するように、終端抵抗回路を制御する回路を含む。
【0017】
第2の発明によると、複数のネットワークノードにおいて、同一の線路インピーダンスになるように終端抵抗回路の抵抗値が変更されるので、複数のネットワークノードの全てにおいて通信を安定化させることができる。
【0018】
第3の発明に係るネットワークノードにおいては、第1の発明の構成に加えて、検知回路は、出力電圧値を検知する回路を含み、制御回路は、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるような抵抗値に変更するように、終端抵抗回路を制御する回路を含む。
【0019】
第3の発明によると、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値または最小値の電圧値から大きく離れていると、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるような抵抗値に変更する。このため、複数のネットワークノードにおいて、同一の線路インピーダンスになるように終端抵抗回路の抵抗値が変更されるので、複数のネットワークノードの全てにおいて通信を安定化させることができる。
【0020】
第4の発明に係るネットワークノードにおいては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、検知回路は、通信電文に関係のない送信信号の状態を検知する回路を含む。
【0021】
第4の発明によると、通信電文よりも時間的に早く送信される送信信号を用いて終端抵抗回路の抵抗値を変更するので、通信電文を正常に送信することができる。
【0022】
第5の発明に係るネットワークシステムは、第1〜4のいずれかの発明の構成に係るネットワークノードが複数接続されている。
【0023】
第5の発明によると、ネットワーク、特にフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できるネットワークシステムを提供することができる。
【0024】
第6の発明に係るネットワークシステムは、第5の発明の構成に加えて、固定終端抵抗を有する。
【0025】
第6の発明によると、固定終端抵抗を有するフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できるネットワークシステムを提供することができる。
【0026】
第7の発明に係るネットワークシステムは、第5または6の発明の構成に加えて、2線式フリートポロジーネットワークである。
【0027】
第7の発明によると、2線式フリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できるネットワークシステムを提供することができる。
【0028】
第8の発明に係る終端抵抗設定方法は、伝送媒体を共有するネットワークに接続されるネットワークノードにおける終端抵抗設定方法であって、自己からの送信時の送信信号の状態を検知する検知ステップと、検知された状態に基づいて、線路インピーダンスが適正値になるような終端抵抗値に変更する変更ステップとを含む。
【0029】
第8の発明によると、ネットワークノードが通信データを送信する際に送信信号の状態(出力電圧値)を検知して、その状態が基準状態から大きく離れていると基準状態(他のネットワークノードと同じ基準状態)にして、線路インピーダンスが適正値になるように終端抵抗回路の抵抗値を変更する。このようにすると、固定終端抵抗から距離的に遠いノードにおける通信は不安定になりやすい現象を、他のノードと同様の基準状態にすることができるので、安定化させることができる。その結果、ネットワーク、特にフリートポロジーネットワークにおけるノード間における通信の品質向上を実現できるネットワークノードの終端抵抗設定方法を提供することができる。
【0030】
第9の発明に係る終端抵抗設定方法においては、第8の発明の構成に加えて、ネットワークには、複数のネットワークノードが接続され、変更ステップは、複数のネットワークノードにおいて同一の線路インピーダンスになるような抵抗値に変更するステップを含む。
【0031】
第9の発明によると、複数のネットワークノードにおいて、同一の線路インピーダンスになるように終端抵抗回路の抵抗値が変更されるので、複数のネットワークノードの全てにおいて通信を安定化させることができるネットワークノードの終端抵抗設定方法を提供することができる。
【0032】
第10の発明に係る設定方法においては、第9の発明の構成に加えて、検知ステップは、出力電圧値を検知するステップを含み、変更ステップは、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値近傍または最小値近傍の電圧値になるような抵抗値に変更するステップを含む。
【0033】
第10の発明によると、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値または最小値の電圧値から大きく離れていると、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるような抵抗値に変更する。このため、複数のネットワークノードにおいて、同一の線路インピーダンスになるように終端抵抗回路の抵抗値が変更されるので、複数のネットワークノードの全てにおいて通信を安定化させることができるネットワークノードの終端抵抗設定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0035】
図1に、本発明の実施の形態に係るネットワークシステムの全体構成を示す。なお、以下の説明ではLONWORKS(登録商標)技術を用いたフリートポロジーネットワークについて説明するが、本発明は、この技術に限定されて適用されるものではない。図1に示すネットワークは、LONWORKS(登録商標)技術を用いた2線式フリートポロジーネットワークの一例である。
【0036】
LONWORKS(登録商標)においては、2線通信とノードとの間に絶縁用トランスが設置される。このトランスの入力インピーダンスが(通信周波数において)3[kΩ]である。送信するノードが所定の電流値Iにて通信を行なう(プリアンブルおよび通信電文等からなるデータを送信する)と、終端抵抗Rと各ノードのインピーダンスとの比によって、受信側トランスに電流ITRが流れる。この電流がトランスにより電圧に変換され、その電位差に基づいて信号化される。なお、さらに詳細な説明は公知の技術であるので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0037】
このようなLONWORKS(登録商標)の場合、フリートポロジーネットワークの終端抵抗は、52.3[Ω](DCカップリイング用コンデンサ必要)である。このとき、終端抵抗と最適インピーダンスと考えている。固定終端抵抗とノードインピーダンスによるネットワーク全体のインピーダンスを最適インピーダンスの2倍の値に設定する(実際には、環境によってこの倍率が変更される必要がある)。
【0038】
図1に示すように、1つのネットワークに5台のノード100〜500(これらのノードの全ては、本発明に係るノードであって調整用終端抵抗を内蔵した調整用終端抵抗内蔵ノードである)を接続する場合、このノードのインピーダンスが600[Ω](3[kΩ]/5)になる。固定終端抵抗+ノードインピーダンスが105[Ω](52.3[Ω]の約2倍)となるようにするためには、固定終端抵抗=1/(1/105−1/600)=127[Ω]となる。このため、図1に示す固定終端抵抗1000の抵抗値は127[Ω]に設定されている。
【0039】
残りの終端抵抗を5台のノードで均等に配分すると525[Ω]になる。調整用終端抵抗内蔵ノード100〜500における調整用終端抵抗の値は、100[Ω]〜∞[Ω]の範囲に設定している。なお、ここで、最低値を100[Ω]としたのは525[Ω]よりも小さければよく、適宜設定した値である。
【0040】
また、図1に示すように、このネットワークはスター型のワイヤリングを採用しており、配線長の違いにより各ノードにおけるネットワークの配線によるインピーダンス損失がそれぞれ異なる。調整用終端抵抗内蔵ノード100のインピーダンス損失が10[Ω]、調整用終端抵抗内蔵ノード200のインピーダンス損失が6[Ω]、調整用終端抵抗内蔵ノードのインピーダンス損失300が10[Ω]、調整用終端抵抗内蔵ノード400のインピーダンス損失が3[Ω]、調整用終端抵抗内蔵ノード500のインピーダンス損失が2[Ω]である。
【0041】
なお、図1に示す調整用終端抵抗内蔵ノード100〜500は、常にランダムにデータ通信していると想定する。
【0042】
図2に、調整用終端抵抗内蔵ノード600の回路図を示す。この調整用終端抵抗内蔵ノード600は、図1の調整用終端抵抗内蔵ノード100,200,300,400,500と同じものである。
【0043】
図2に示すように、この調整用終端抵抗内蔵ノード600は、通信全般を制御する通信用IC(Integrated Circuit)610と、トランスの1次側の電圧値をAD(Analog Digital)変換するADコンバータ620と、100[Ω]〜∞[Ω]の範囲で抵抗値が可変な調整用終端抵抗640と、調整用終端抵抗640の抵抗値を調整する測定回路630とを含む。
【0044】
通信用IC610は、ADコンバータ620に送信中フラグを、測定回路630に送信開始フラグをそれぞれ送信する。ADコンバータ620は、通信用IC610から送信中フラグを受信すると、トランスの1次側の電圧値をAD変換して測定回路630に出力する。測定回路630は、通信用IC610から送信開始フラグを受信すると、所定の調整タイミングで調整用終端抵抗640の抵抗値を調整して、トランスの1次側の電圧値が所定の電圧値になるように制御する。
【0045】
図3を参照してインピーダンス調整タイミングについて説明する。CSMA(Carrier Sense Multiple Access)の場合、送信データには通信電文には関係がないプリアンブルが存在する。LONWORKS(登録商標)の場合、プリアンブルに含まれるビット同期は4ビット以上(24ビット以下)であって、バイト同期は1ビットに固定されている。ここで、ビット同期とは、送信側と受信側との同期を合わせるための信号であって、バイト同期とは、プリアンブルの最後であり、データ部(通信電文)の先頭を示す。
【0046】
インピーダンス調整は、このプリアンブルの1ビット目(0.5ビット目)の電圧値を測定して、測定された電圧値が通信の基準電圧値の最大値(負電圧側の場合には最小値)と異なる場合には、基準電圧値の最大値(最小値)に近くなるように調整用終端抵抗を調整する。図3の時間t(1)のタイミングである。
【0047】
LONWORKS(登録商標)ネットワークのフリートポロジーの場合には、
+High=0.9[V]
+Low=0.425[V]
通常インピーダンス=52.3[Ω]
と規定されている。この状態で0.5ビットの電圧値が1.0[V]であると想定した場合、このデバイスから見たインピーダンスZは、
Z:52.3=1.0[V]:0.9[V]
Z=58.11[Ω]
となる。調整終端抵抗ZTの値は、
1/ZT+1/58.11=1/52.3[Ω]
T=523[Ω]となる。このようになるように、0.5ビット目から1.0ビット目の間に、調整用終端抵抗640の抵抗値を変更する。
【0048】
図4を参照して、調整用終端抵抗内蔵ノード600で実行される処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。
【0049】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ADコンバータ620が、通信用IC610から送信中フラグを受信したか否かを判断する。ADコンバータ620が、通信用IC610から送信中フラグを受信すると(S100にてYES)、処理はS200へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100へ戻される。
【0050】
S200にて、ADコンバータ620が、通信用トランスの1次側の電圧値をAD変換して測定回路630に出力する。
【0051】
S300にて、測定回路630が、通信用IC610から送信開始フラグを受信したか否かを判断する。測定回路630が、通信用IC610から送信開始フラグを受信すると(S300にてYES)、処理はS400へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、処理はS300へ戻される。
【0052】
S400にて、測定回路630は、プリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値±αの範囲内であるか否かを判断する。測定回路630が、プリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値±αの範囲内にあると(S400にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS500へ移される。すなわち、プリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値から±αの範囲内に入らないほどに異なっていると(大きく異なっていると)処理はS500へ移される。プリアンブルの電圧値の絶対値が基準電圧値から±αの範囲内に入る程度にしか異なっていないと(少ししか異なっていないと)処理は終了する。
【0053】
S500にて、測定回路630は、プリアンブルの電圧値が基準電圧値に近くなるように調整用終端抵抗640の抵抗値を変更する。このとき、上述の通り、ZT=523[Ω]となるように、0.5ビット目から1.0ビット目の間に、調整用終端抵抗640の抵抗値が変更される。なお、調整用終端抵抗640の抵抗値を変更については、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるように変更するようにすればよい。特に、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍になるように抵抗値を変更するほうがS/N比が良好になり通信性能が向上するが、実際には予め設定された基準電圧(の範囲)内の電圧値になるように、抵抗値を変更しても構わない。
【0054】
以上のような構造およびフローチャートに基づくネットワークシステムの動作について説明する。
【0055】
図1に示すように、調整用終端抵抗内蔵ノード100,200,300,400,500が固定終端抵抗1000とともにネットワークを形成し、各ノードが通信データをランダムに送信している。
【0056】
各ノードは、自己が通信するときに(S100にてYES)、出力電圧を測定して(S200)線路インピーダンスが適正な値になるように調整用終端抵抗640の抵抗値を変更する(S400にてNO、S500)。すなわち、送信ノードが常に適正な終端抵抗に変更することにより、各終端抵抗の値は収束して、ネットワークの安定化を実現できる。
【0057】
なお、このようにした結果、調整用終端抵抗内蔵ノード100の終端抵抗は215[Ω](インピーダンス52.3[Ω])、調整用終端抵抗内蔵ノード200の終端抵抗は769[Ω](インピーダンス52.3[Ω])、調整用終端抵抗内蔵ノード300の終端抵抗は215[Ω](インピーダンス52.3[Ω])、調整用終端抵抗内蔵ノード400の終端抵抗は∞[Ω](インピーダンス51.3[Ω])、調整用終端抵抗内蔵ノード500の終端抵抗は∞[Ω](インピーダンス51.6[Ω])に収束する。
【0058】
以上のようにして、本実施の形態に係るネットワークシステムによると、各ノードが抵抗値が調整可能な終端抵抗を内蔵し、自己が送信時に出力電圧を検知して線路インピーダンスが適正値(各ノードにおいて同一のインピーダンス)になるように自動調整する。この結果、送信ノードが、常に適正終端抵抗に設定されることにより、各終端抵抗の値が収束して、ネットワークの安定化を図ることができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係るネットワークシステムの全体構成を示す図である。
【図2】調整用終端抵抗内蔵ノードの回路図である。
【図3】インピーダンス調整タイミングを説明するためのタイムチャートを示す図である。
【図4】調整用終端抵抗内蔵ノードで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
100,200,300,400,500,600 調整用終端抵抗内蔵ノード、610 通信用IC、620 ADコンバータ、630 測定回路、1000 固定終端抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送媒体を共有するネットワークに接続されるネットワークノードであって、
抵抗値を変更可能な終端抵抗回路と、
自己からの送信時の送信信号の状態を検知する検知回路と、
前記検知回路により検知された状態に基づいて、線路インピーダンスが適正値になるような抵抗値に変更するように、前記終端抵抗回路を制御する制御回路とを含む、ネットワークノード。
【請求項2】
前記ネットワークには、複数のネットワークノードが接続され、
前記制御回路は、前記複数のネットワークノードにおいて同一の線路インピーダンスになるような抵抗値に変更するように、前記終端抵抗回路を制御する回路を含む、請求項1に記載のネットワークノード。
【請求項3】
前記検知回路は、出力電圧値を検知する回路を含み、
前記制御回路は、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるような抵抗値に変更するように、前記終端抵抗回路を制御する回路を含む、請求項1に記載のネットワークノード。
【請求項4】
前記検知回路は、通信電文に関係のない送信信号の状態を検知する回路を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のネットワークノード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のネットワークノードが複数接続されたネットワークシステム。
【請求項6】
固定終端抵抗を有する、請求項5に記載のネットワークシステム。
【請求項7】
2線式フリートポロジーネットワークである、請求項5または6に記載のネットワークシステム。
【請求項8】
伝送媒体を共有するネットワークに接続されるネットワークノードにおける終端抵抗設定方法であって、
自己からの送信時の送信信号の状態を検知する検知ステップと、
前記検知された状態に基づいて、線路インピーダンスが適正値になるような終端抵抗値に変更する変更ステップとを含む、終端抵抗設定方法。
【請求項9】
前記ネットワークには、複数のネットワークノードが接続され、
前記変更ステップは、前記複数のネットワークノードにおいて同一の線路インピーダンスになるような抵抗値に変更するステップを含む、請求項8に記載の終端抵抗設定方法。
【請求項10】
前記検知ステップは、出力電圧値を検知するステップを含み、
前記変更ステップは、検知した出力電圧値が、基準電圧の最大値近傍もしくは最小値近傍または基準電圧内の電圧値になるような抵抗値に変更するステップを含む、請求項8に記載の終端抵抗設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−74431(P2006−74431A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255287(P2004−255287)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(398005124)株式会社テクノ ソフト システムニクス (3)
【Fターム(参考)】