説明

ノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラム

【課題】指紋を撮像した画像のノイズを効率的に除去可能なノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラムを提供する。
【解決手段】指紋を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出手段と、指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割手段と、分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出手段と、検出手段により検出された画素の位置を用いて、指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定手段と、導出手段により導出された周波数成分のうち、特定手段により特定されたノイズ領域に対応する周波数成分を、ノイズ領域であることを示す値に変更することにより周波数成分を無効化する無効化手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラムに係り、特に、指紋画像のノイズを除去するノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋認証を行うシステムでは、指紋画像を取得するために、エリア(面)センサまたはラインセンサのいずれかを用いる。
【0003】
ラインセンサは、バー状のセンサであり、センサの上で指を滑らせることで指紋画像を取得する。一方、エリアセンサは指より大きい面のセンサ部分に指を置いて、あるタイミングで置かれた指の画像を取得する。センサの種類は、光学式や電界式などがある。光学式は面のセンサ部分から光を照射し、指紋の凹凸の反射を利用して指紋画像を取得する。
【0004】
周波数解析法により認証を行う指紋認証装置は、エリアセンサで撮像されることで取得された指紋画像データ指紋画像データに対して、周波数変換の単位である矩形領域と変換範囲である周波数データ化対象領域を決定し、周波数変換を行い、各矩形領域の周波数データを作成する。周波数データは周波数データ化対象領域内の矩形領域数分作成される。認証は、装置に登録済みの周波数データと入力された指紋画像データから新たに作成された周波数成分データとを比較し、その類似度によって同じ指であるか判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−77149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学式のエリアセンサを用いた場合、図7に示されるように、エリアセンサは、指より大きい面で指紋画像を撮像するようになっている。従って、取得した指紋画像に、指紋以外の画像であるノイズが入るという問題点がある。指紋画像にノイズが発生する様子を図8に示す。ノイズは指が置かれていない部分に発生しているグラデーション部分である。このノイズは指に近づくにつれて徐々に白くなり、その変化は指紋部分に比べ緩やかであるという特徴がある。
【0007】
このノイズは、正面から見て指が丸いことにより、接地面に近づくにつれて徐々にセンサの照射する光の反射が大きくなることにより発生するため、指紋の形状に関わらず一様となる。
【0008】
このノイズが入っている指紋画像を周波数解析法による指紋認証処理に利用すると、指紋のみならずノイズのグラデーションについても周波数データに変換してしまう。ノイズは指紋に関わらず一様に発生するため、認証の際、異なる指であっても、ノイズ部分の周波数データが一致することで同じ指紋であると判定され、誤って認証が成功してしまうという問題点があった。また、特許文献1に記載されているように、検出したノイズに対応する画素単位でノイズの除去を行なった場合、一つずつの画素に対して処理を行なうため、時間を要するという問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、指紋画像のノイズを効率的に除去可能なノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、指紋を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出手段と、前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割手段と、前記分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出手段と、前記検出手段により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定手段と、前記導出手段により導出された周波数成分のうち、前記特定手段により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化手段と、を有する。
【0011】
請求項1の発明によれば、撮像手段により指紋を撮像し、検出手段により撮像手段によって撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出し、分割手段により前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割し、導出手段により分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる画素の複数の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出し、特定手段により検出手段により検出された画素の位置を用いて、指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定し、無効化手段により、導出手段により導出された周波数成分のうち、特定手段により特定されたノイズ領域に対応する周波数成分を、ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化するので、指紋を撮像した画像のノイズを効率的に除去することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記検出手段は、前記指紋画像の一端部から他端部までを結ぶ直線上に並ぶ画素の位置に対応する画素値を前記指紋画像データから取得し、前記一端部に対応する画素の画素値から順に隣り合う画素同士の画素値の差を導出していき、該差の絶対値が予め定められた値を超えたか否かを判定することで、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する。
【0013】
請求項2の発明によれば、効率よく指紋の輪郭を検出することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記導出手段は、各々の領域毎に周波数の方向成分をさらに導出し、前記無効化手段により無効化されなかった周波数成分、及び前記方向成分を用いて、指紋の認証を行なう認証手段をさらに有する。
【0015】
請求項3の発明によれば、指紋画像の指の周囲に発生するノイズにより導出される周波数成分データは認証で用いられないため、ノイズ領域を含めて認証した場合に発生する誤認識を防ぐことができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記特定手段は、前記検出手段により検出された輪郭を示す画素の位置を含む前記領域をノイズ領域としてさらに特定する。
【0017】
請求項4の発明によれば、輪郭を含む領域までをノイズ領域と特定して無効化することにより、輪郭の外側に位置するノイズまでをも含む領域を有効とする可能性を排除することができる。また、指紋認証には必ずしも指紋データの全てを必要とするわけではないので、請求項4によれば結果的にデータ量を削減できることとなる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項5の発明は、指紋を撮像する撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出段階と、前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割段階と、前記分割段階により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出段階と、前記検出段階により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定段階と、前記導出段階により導出された周波数成分のうち、前記特定段階により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化段階と、を有する。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1の発明と同様に作用するので、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記検出段階では、前記指紋画像の一端部から他端部までを結ぶ直線上に並ぶ画素の位置に対応する画素値を前記指紋画像データから取得し、前記一端部に対応する画素の画素値から順に隣り合う画素同士の画素値の差を導出していき、該差の絶対値が予め定められた値を超えたか否かを判定することで、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する。
【0021】
請求項6の発明は、請求項2の発明と同様に作用するので、請求項2の発明と同様の効果が得られる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項4又は請求項5の発明において、前記導出段階では、各々の領域毎に周波数の方向成分をさらに導出し、前記無効化段階により無効化されなかった周波数成分、及び前記方向成分を用いて、指紋の認証を行なう認証段階をさらに有する。
【0023】
請求項7の発明は、請求項3の発明と同様に作用するので、請求項3の発明と同様の効果が得られる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記特定手段は、前記検出手段により検出された輪郭を示す画素の位置を含む前記領域をノイズ領域としてさらに特定する。
【0025】
請求項8の発明は、請求項4の発明と同様に作用するので、請求項4の発明と同様の効果が得られる。
【0026】
上記目的を達成するために、請求項9の発明は、コンピュータを、指紋を撮像する撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出手段と、前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割手段と、前記分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出手段と、前記検出手段により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定手段と、前記導出手段により導出された周波数成分のうち、前記特定手段により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化手段と、して機能させるためのノイズ除去プログラムである。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1の発明と同様に作用するので、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、指紋画像のノイズを効率的に除去可能なノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びノイズ除去プログラムを提供することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係るノイズ除去装置の構成例を示す図である。
【図2】ノイズ除去装置の処理概要の一例を示す模式図である。
【図3】ノイズの特徴の一例を示す図である。
【図4】指紋画像における分割領域、周波数データ化の対象領域、分割領域内の画素を示す図である。
【図5】輪郭検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】ノイズ除去処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】指とエリアセンサの位置関係を示す図である。
【図8】ノイズの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
まず、図1を用いて、本実施の形態に係るノイズ除去装置の構成について説明する。同図に示されるように、ノイズ除去装置10は、CPU(Central Processing Unit)12、ROM(Read Only Memory)14、RAM(Random Access Memory)16、HDD(Hard Disk Drive)18、取得部20、及びエリアセンサ22を含んで構成される。このうち、CPU12は、ノイズ除去装置10全体を制御するものであり、後述するフローチャートはCPU12による処理の流れを示している。
【0032】
ROM14は、ノイズ除去装置10の起動時に実行されるブートプログラム等が記憶される不揮発性の記憶装置である。RAM16は、後述するノイズ除去プログラム等の各種プログラムが展開されるなど、一時的に情報を記憶するための揮発性の記憶装置である。HDD18は、オペレーティングシステムや後述する輪郭検出処理及びノイズ除去処理を実行させるためのプログラムを記憶するための不揮発性で書き換え可能な記憶装置である。取得部20はエリアセンサ22により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データを取得する。エリアセンサ22は、指紋を撮像するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の固体撮像素子を用いて構成される。
【0033】
次に、図2を用いてノイズ除去装置10の処理概要について説明する。まず、上述したエリアセンサ22により指紋が撮像され、取得部20により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データが取得されると、その指紋画像データはRAM16に一時的に記憶される。
【0034】
その指紋画像データが示す指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割してから、分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、離散フーリエ変換により各々の領域毎に周波数データ(周波数成分、方向成分)を導出する周波数データ導出処理が行われる。以下の説明において、領域を分割領域と表現することがある。この分割領域毎に(周波数成分、方向成分)を導出するが、例えばC言語の構造体を用いて、変数のメンバとして処理するようにしても良い。この場合、例えば2次元配列cell[][]のメンバとして周波数を示すfre、方向成分を示すdirを用意することとなる。実際に周波数成分を参照するときは、cell[][].freを参照し、方向成分を参照する場合には、cell[][].dirを参照することとなる。
【0035】
一方、指紋画像データから、指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する指紋輪郭検出処理が行われる。
【0036】
そして、指紋輪郭検出処理により検出された画素の位置を用いて、指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定し、周波数データ導出処理により導出された周波数成分のうち、特定されたノイズ領域に対応する周波数成分を、ノイズ領域であることを示す値に変更することにより周波数成分を無効化するノイズ除去処理が行われる。
【0037】
このようにしてノイズが除去された周波数データは、HDD18に記録される。記録された周波数データが、複数の人の指紋を撮像することで取得された複数の指紋画像データから得られる場合には、複数の周波数データが存在することとなるため、それらを識別するために、周波数データを一意的に識別するためのIDとともに記憶するようにしても良い。
【0038】
このようにして記憶された周波数データは周波数解析法により認証するためのデータとして用いられる。具体的に認証処理は、認証するための指紋画像データを取得し、上述した指紋輪郭検出処理、周波数データ導出処理、及び無効化処理された周波数データと、HDD18に記憶されている周波数データとの類似度が、予め定められた閾値を超えた場合に、同じ指紋であると判定する処理である。
【0039】
次に、指紋輪郭検出処理の詳細について説明する。指紋の輪郭検出処理は、ノイズの特徴と指紋の輪郭の特徴を利用して、輪郭を示す画素の座標(位置)の検出を行う。ノイズの特徴について図3を用いて説明する。図3は、ノイズの特徴の一例を示すための指紋画像の横一列の画素の画素値(0〜15)の一例を示す図である。ノイズは、指紋に近づくにつれて徐々に白くなっていくため、取得した指紋画像を横1行の画素で見た場合、隣り合う画素値は、同図に示されるように、緩やかに変化する。
【0040】
一方、ノイズと指紋の境界は、指紋の近くの背景が白いのに対し指紋の輪郭が黒いため、隣り合う画素値は急激に変化する。よって、隣り合う画素値が急激に変化する部分は、指紋の輪郭であると判定し、その座標を輪郭を示す座標とする。
【0041】
なお、本実施の形態では指紋画像は図4(a)に示すように縦横10×10の分割領域に分割され、さらに分割領域は図4(b)に示すように縦横10×10の画素から構成されるものとする。また、指紋画像のうち、図4(a)に示すように中段の4×10個の分割領域を周波数データ化の対象領域とする。従って、上述した周波数データ構造体cell[][]は、4×10の2次元配列となるので、合計で40個の周波数データが1つの指紋画像データから得られることとなる。
【0042】
これを踏まえ、輪郭検出処理の流れを図5のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートでは、図4に示されるように、指紋画像横方向の画素数を一般化してxsize、縦方向の画素数を一般化してysizeとして処理している。また、フローチャートに示される変数iは縦方向の座標、変数jは横方向の座標を表し、周波数データ化対象領域の左上の画素の座標を(i、j)=(0、0)としている(図4参照)。さらに、座標(i、j)に位置する画素の画素値をd(i、j)としている。また、座標(i、j)に位置する画素を、注目画素と表現することがある。
【0043】
まず、ステップ101で、変数iを0で初期化する。次のステップ102で、i行目に位置する画素の画素値を1行分だけ読み取る。また、edge_l(i)をxsize/2−1で、edge_r(i)をxsize/2で初期化する。次のステップ103で、変数jを0で初期化する。
【0044】
ステップ104で隣り合う画素同士の差d(i、j)−d(i、j+1)の絶対値を変数sbに代入する。そして、ステップ105で変数sbが、予め定められた値THを超えているか否かを判定する。なお、値THは、実験的に設定される値であり、例えば3などを設定する。
【0045】
ステップ105で否定判定した場合には、変化量が小さいため、注目画素はノイズであると判定し、ステップ107でj>xsize/2であるか否か判定する。この判定は、注目画素が横方向の中央(図4の場合のxsize/2=50であるので、左端から横方向に数えて50番目の画素)に達したか否かの判定である。このステップ107で肯定判定した場合には、この行の0〜j−1番目(図4の場合は、0〜49番目)までには輪郭が存在しないため、ステップ109に進む。
【0046】
一方、ステップ107で否定判定した場合には、ステップ108で隣の座標(i、j+1)に位置する画素を注目画素とするために、jを1だけ増やして、ステップ104の処理に戻る。
【0047】
また、ステップ105で肯定判定した場合には、注目画素は指紋の輪郭であると判定し、ステップ106で0〜j−1番目までにおける輪郭を示す変数edge_l(i)にjを代入して、ステップ109に進む。
【0048】
以上のステップ103〜ステップ106までの処理は一端部を指紋画像の左端とし、他端部を指紋画像の横方向の中央として、その中で輪郭を検出する処理である。次のステップ109〜ステップ112までの処理は一端部を指紋画像の右端とし、他端部を指紋画像の横方向の中央として、その中で輪郭を検出する処理である。
【0049】
従って、まずステップ109でjにxsizeを代入する。次のステップ110で隣り合う画素同士の差d(i、j)−d(i、j−1)の絶対値を変数sbに代入する。そして、ステップ111で変数sbが、上記THを超えているか否かを判定する。
【0050】
ステップ111で否定判定した場合には、変化量が小さいため、注目画素はノイズであると判定し、ステップ113でj≦xsize/2であるか否か判定する。この判定は、注目画素が横方向の中央(図4の場合のxsize/2=50であるので、右端から逆に横方向に数えて51番目の画素)に達したか否かの判定である。このステップ113で肯定判定した場合には、この行のj〜xsize番目(図4の場合は、50〜100番目)までには輪郭が存在しないため、ステップ115に進む。
【0051】
一方、ステップ113で否定判定した場合には、ステップ114で隣の座標(i、j−1)に位置する画素を注目画素とするために、jを1だけ減らして、ステップ110の処理に戻る。
【0052】
また、ステップ111で肯定判定した場合には、注目画素は指紋の輪郭であると判定し、ステップ112でj〜xsize番目までにおける輪郭を示す変数edge_r(i)にjを代入して、ステップ115に進む。
【0053】
次のステップ115で、i=ysizeか否か判定する。この判定は、現在処理している行が指紋画像の下端であるか否かの判定である。ステップ115で、否定判定、すなわち下端でないと判定した場合、ステップ116で、1つ下の行に対して処理を行うため変数iを1だけ増やして、ステップ102の処理に戻る。一方、ステップ115で、肯定判定、すなわち、現在処理した行が下端である場合、処理を終了する。
【0054】
このように輪郭検出処理では、指紋画像の一端部から他端部までを結ぶ直線上に並ぶ画素の位置に対応する画素値を指紋画像データから取得し、一端部に対応する画素の画素値から順に隣り合う画素同士の画素値の差を導出していき、該差の絶対値が予め定められた値を超えたか否かを判定することで、指紋の輪郭を示す画素の位置を検出するようになっている。
【0055】
次に、図6のフローチャートを用いてノイズ除去処理の流れについて説明する。図6に示されるフローチャートにおいて、図4に示した周波数データ化の対象領域内の分割領域の縦方向の個数をYSIZEとする(図4では4個)。また、周波数データ化対象領域の左上の画素の座標を(0、0)とすることは、図5と同様である。さらに変数yは、縦方向の分割領域をカウントするものであり、このyを用いて分割領域の左上の画素の縦方向の座標を示す変数lineを得るようになっている。
【0056】
まず、ステップ201で、yに0を代入し、さらにステップ202で変数lineに10yを代入する。これは1つの分割領域に含まれる縦方向の画素数が10であることによるものであり、yを10倍することで、分割領域の左上の画素の縦方向の座標が得られる。
【0057】
次のステップ203で、図5のフローチャートで求めたedge_lの和Sを求める。このステップ203に示されるΣは、k=0〜9までの総和を示している。そして、ステップ204で、和Sを10で割ることで、edge_lの平均値、すなわち輪郭の横方向の座標の平均値を求め、これをAに代入する。なお、Aを整数型変数としているので、Aに代入される値は平均値の小数点以下が切り捨てられた値となる。
【0058】
次のステップ205で、0≦x≦Aの範囲でcell[x][y].freに0を代入する。従って、ステップ204により、指紋が含まれない領域とするノイズ領域が特定され、ステップ205で、特定されたノイズ領域に対応する周波数成分を、ノイズ領域であることを示す値(本実施例では0)に変更することにより周波数成分を無効化するようになっている。
【0059】
上記ステップ202〜ステップ205までは、edge_lに関する処理であり、以下に説明するステップ206〜ステップ208まではedge_rに関する処理となる。
【0060】
ステップ206で、図5のフローチャートで求めたedge_rの和Sを求める。このステップ206に示されるΣは、k=0〜9までの総和を示している。そして、ステップ207で、和Sを10で割ることで、edge_rの平均値、すなわち輪郭の横方向の座標の平均値を求め、これをAに代入する。
【0061】
次のステップ208で、A≦x≦9の範囲でcell[x][y].freに0を代入する。従って、ステップ207により、指紋が含まれない領域とするノイズ領域が特定され、ステップ208で、特定されたノイズ領域に対応する周波数成分を、ノイズ領域であることを示す値(本実施例では0)に変更することにより周波数成分を無効化するようになっている。
【0062】
次のステップ209でy=YSIZEであるか否か判定する。この判定は、現在処理している分割領域が下端であるか判定するものである。ステップ209で否定判定、すなわち下端でないと判定された場合、1つ下の分割領域に対して処理を行うためにステップ210でyを1だけ増やして、ステップ202の処理に戻る。一方、ステップ209で肯定判定した場合、すなわち、現在処理している分割領域が下端である場合、処理を終了する。
【0063】
以上説明したフローチャートにおいて、ノイズ領域であることを示す値を0としているが、もちろんこれに限るものではない。
【0064】
このようにしてノイズが除去された周波数データを用いることで、認証処理では、周波数データの周波数成分が0であるとき、無効なデータであると判断する。無効なデータについては比較対象の母集団から削除し、有効な周波数成分データのみ比較を行う。
【0065】
すなわち、エリアセンサ22で得られた指紋画像の指の周囲に発生するノイズにより導出される周波数成分データは認証で用いられないため、ノイズ領域を含めて認証した場合に発生する誤認識を防ぐことができるという効果が得られる。
【0066】
さらに、画素単位でノイズを除去する場合と比較して、高速に処理できるので、処理時間の短縮、及び消費電力を低減することができる。
【0067】
また、上述した図6に示されるフローチャートの処理に加え、検出された輪郭を示す画素の位置を含む領域をノイズ領域としてさらに特定するようにしても良い。このように、輪郭を含む領域までをノイズ領域と特定して無効化することにより、輪郭の外側に位置するノイズまでをも含む領域を有効とする可能性を排除することができる。また、指紋認証には必ずしも指紋データの全てを必要とするわけではないので、結果的にデータ量を削減できることとなる。
【0068】
以上説明した実施の形態における図5、図6で説明したフローチャートの処理の流れは一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で処理順序を入れ替えたり、新たなステップを追加したり、不要なステップを削除したりすることができることは言うまでもない。
【0069】
さらに、本実施の形態ではエリアセンサを用いたが、ラインセンサによって指紋画像データを取得する場合にも適用することができる。また、上述した実施の形態によれば、指紋の輪郭が検出できればノイズを除去することが可能であるので、輪郭検出処理は図5に示すフローチャートの処理に限るものではない。
【符号の説明】
【0070】
10 ノイズ除去装置
12 CPU
14 ROM
16 RAM
18 HDD
20 取得部
22 エリアセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出手段と、
前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割手段と、
前記分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出手段と、
前記検出手段により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定手段と、
前記導出手段により導出された周波数成分のうち、前記特定手段により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化手段と、
を有するノイズ除去装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記指紋画像の一端部から他端部までを結ぶ直線上に並ぶ画素の位置に対応する画素値を前記指紋画像データから取得し、前記一端部に対応する画素の画素値から順に隣り合う画素同士の画素値の差を導出していき、該差の絶対値が予め定められた値を超えたか否かを判定することで、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項3】
前記導出手段は、各々の領域毎に周波数の方向成分をさらに導出し、
前記無効化手段により無効化されなかった周波数成分、及び前記方向成分を用いて、指紋の認証を行なう認証手段をさらに有する請求項1又は請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記検出手段により検出された輪郭を示す画素の位置を含む前記領域をノイズ領域としてさらに特定する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
指紋を撮像する撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出段階と、
前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割段階と、
前記分割段階により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出段階と、
前記検出段階により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定段階と、
前記導出段階により導出された周波数成分のうち、前記特定段階により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化段階と、
を有するノイズ除去方法。
【請求項6】
前記検出段階では、前記指紋画像の一端部から他端部までを結ぶ直線上に並ぶ画素の位置に対応する画素値を前記指紋画像データから取得し、前記一端部に対応する画素の画素値から順に隣り合う画素同士の画素値の差を導出していき、該差の絶対値が予め定められた値を超えたか否かを判定することで、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する請求項5に記載のノイズ除去方法。
【請求項7】
前記導出段階では、各々の領域毎に周波数の方向成分をさらに導出し、
前記無効化段階により無効化されなかった周波数成分、及び前記方向成分を用いて、指紋の認証を行なう認証段階をさらに有する請求項5又は請求項6に記載のノイズ除去方法。
【請求項8】
前記特定段階では、前記検出段階により検出された輪郭を示す画素の位置を含む前記領域をノイズ領域としてさらに特定する請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のノイズ除去方法。
【請求項9】
コンピュータを、
指紋を撮像する撮像手段により撮像された指紋を含む指紋画像を画素値で表現した指紋画像データから、前記指紋の輪郭を示す画素の位置を検出する検出手段と、
前記指紋画像を、各々が複数の画素を含む複数の領域に分割する分割手段と、
前記分割手段により分割された複数の領域の各々に含まれる複数の画素の画素値を用いて、各々の領域毎に周波数成分を導出する導出手段と、
前記検出手段により検出された画素の位置を用いて、前記指紋が含まれない領域とするノイズ領域を特定する特定手段と、
前記導出手段により導出された周波数成分のうち、前記特定手段により特定されたノイズ領域に対応する前記周波数成分を、前記ノイズ領域であることを示す値に変更することにより前記周波数成分を無効化する無効化手段と、
して機能させるためのノイズ除去プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−138427(P2011−138427A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299119(P2009−299119)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】