説明

ノズルの洗浄方法

【課題】基板に向けてノズルから流動性材料を連続的に吐出して塗布する塗布装置のノズルの目詰まりを確実に防止する。
【解決手段】塗布装置のノズルの洗浄では、界面活性剤を含む洗浄液にノズルが浸漬されて洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル表面から異物が除去される。続いて、ノズルが純水に浸漬されて純水に超音波振動が付与されることにより、ノズル表面から界面活性剤が除去される。次に、ノズルがアルコールに浸漬されてアルコールに超音波振動が付与されることにより、ノズル表面の純水がアルコールに置換される。そして、流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液にノズルが浸漬され、洗浄液に超音波振動が付与されることにより、ノズル表面のアルコールが流動性材料の主溶媒に置換される。その結果、ノズルを使用して行う流動性材料の塗布において、ノズルの目詰まりを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから基板に向けて流動性材料を連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板上にレジスト液等の流動性材料を塗布する装置として、ノズルから基板に向けて流動性材料を吐出する塗布装置が知られている。このような吐出装置では、塗布作業の中断時にノズルが大気中に放置されると、ノズル先端部において流動性材料が乾燥してしまい、流動性材料の粘性が所定の粘度よりも高くなったり流動性材料が硬化してしまうことがある。そして、塗布作業が再開された際に、高粘度となった(あるいは、硬化した)流動性材料が基板上に吐出され、基板上に形成された塗布膜にムラ等が生じてしまう恐れがある。そこで、ノズル先端部の乾燥を防止するために、例えば、特許文献1の塗布装置では、塗布作業の中断時に流動性材料の溶媒をノズル先端部に継続的に吹き付けることが行われている。
【0003】
ところで、近年、有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の開発が行われている。高分子有機EL材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置の製造では、ガラス基板(以下、単に「基板」という。)に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成、隔壁の形成、正孔輸送材料を含む流動性材料の塗布、加熱処理による正孔輸送層の形成、有機EL材料を含む流動性材料の塗布、加熱処理による有機EL層の形成、陰極の形成、および、絶縁膜の形成による封止が順次行われる。
【0004】
このような有機EL表示装置の製造においても、正孔輸送材料や有機EL材料を含む流動性材料を塗布する塗布装置では、塗布作業が中断された後に再開された際に、塗布の質が低下することを防止する技術が提案されている。例えば、特許文献2の塗布装置では、塗布作業が中断された際にノズル先端部が挿入される待機ポッドが設けられる。当該塗布装置では、待機ポッドの内部空間を流動性材料に応じた溶媒雰囲気とすることにより、ノズルに付着した流動性材料やノズル内部の流動性材料の固化が防止される。また、塗布作業の再開時に待機ポッドの内部空間を減圧することにより、ノズル内部の流動性材料を速やかに吐出する技術も開示されている。
【0005】
一方、特許文献3では、有機EL塗布装置のノズル内部にフィルタを設けることにより、ノズルの目詰まりを防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−20936号公報
【特許文献2】特開2003−10756号公報
【特許文献3】特開2004−41943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、正孔輸送材料や有機EL材料を含む流動性材料を塗布する塗布装置では、塗布される流動性材料のパターンが非常に微細であるため、流動性材料を吐出するノズルの開口も非常に小さい。このため、仮に使用前のノズル内部に異物が付着していたとすると、その異物が空気中に浮遊しているような微小なパーティクルであったとしても、流動性材料の吐出時にノズルの開口に詰まってしまう可能性がある。しかしながら、このような塗布装置では、装置の製造の際にはノズルの洗浄等が行われるが、装置の納品先において使用前のノズルを洗浄することは行われていないため、製造時の洗浄後にノズルに付着した異物によりノズルの開口が詰まってしまう恐れがある。
【0007】
また、装置のメンテナンス時等のように塗布作業を長時間に亘って中断する場合や、使用後のノズルを保管する場合、ノズルをそのまま放置しておくと、ノズルの内部および外部に付着した流動性材料が硬化してしまい、ノズルを再使用する際に正常な吐出が行われなくなってしまう。また、硬化した流動性材料がノズルから剥離してノズルが詰まってしまったり、基板上に落下して塗布の質が低下してしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルの目詰まりを確実に防止することを主な目的としており、また、使用後のノズルに付着した流動性材料を確実に除去することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、正孔輸送材料または有機EL材料を含む流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、a)界面活性剤を含む洗浄液に塗布装置に装着前のノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、b)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、c)流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノズルの洗浄方法であって、前記a)工程と前記b)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、正孔輸送材料または有機EL材料を含む流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、a)塗布装置からノズルを取り外す工程と、b)流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、c)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、d)界面活性剤を含む洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、e)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程とを備える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のノズルの洗浄方法であって、前記d)工程と前記e)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備える。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のノズルの洗浄方法であって、前記e)工程よりも後に、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程をさらに備え、前記ノズルが乾燥する前に前記ノズルを使用した前記次の流動性材料の塗布が行われる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、正孔輸送材料を含むとともに純水を主溶媒とする流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、a)塗布装置からノズルを取り外す工程と、b)純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程と、c)界面活性剤を含む洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、d)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程とを備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のノズルの洗浄方法であって、前記c)工程と前記d)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載のノズルの洗浄方法であって、前記d)工程よりも後に、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程をさらに備え、前記ノズルが乾燥する前に前記ノズルを使用した前記次の流動性材料の塗布が行われる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載のノズルの洗浄方法であって、前記ノズルが分解された状態で洗浄が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ノズルの目詰まりを確実に防止することができる。請求項2,4および7の発明では、ノズルから界面活性剤を確実に除去することができる。請求項3および6の発明では、ノズルに付着した流動性材料を確実に除去することができる。請求項5および7の発明では、次の流動性材料に不純物が混入することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るノズルの洗浄方法により洗浄されるノズルを備える塗布装置1の構成を示す平面図であり、図2は塗布装置1の正面図である。塗布装置1は、正孔輸送材料または有機EL材料を含む流動性材料を有機EL表示装置用の基板9に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する装置である。ここで、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0020】
図2に示すように、塗布装置1は、基板9を保持する基板保持部11、および、基板保持部11を所定の移動方向(すなわち、図1中における上下方向)に水平移動するとともに垂直方向に向く軸を中心として回転する基板移動機構12を備える。基板保持部11は、内部にヒータによる加熱機構(図示省略)を備える。
【0021】
塗布装置1は、また、図1および図2に示すように、基板9上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するアライメントマーク検出部13、基板保持部11上の基板9に向けて流動性材料を吐出して塗布する塗布ヘッド14、塗布ヘッド14を基板保持部11の移動方向とは垂直な水平方向(すなわち、図1中における左右方向)に移動するヘッド移動機構15、塗布ヘッド14の移動方向に関して基板保持部11の両側に設けられるとともに塗布ヘッド14からの流動性材料を受ける2つの受液部16、塗布ヘッド14に流動性材料を供給する流動性材料供給部18、および、これらの構成を制御する制御部を備える。
【0022】
塗布ヘッド14は、流動性材料をそれぞれ吐出する3本のノズル17a,17b,17cを備える。ノズル17a〜17cは、図1中における左右方向(すなわち、塗布ヘッド14の移動方向であり、以下、ノズル17a〜17cの「主走査方向」という。)に略直線状に配列されるとともに図1中における上下方向(すなわち、基板9の移動方向であり、以下、「副走査方向」という。)に僅かにずれて配置される。図1中における上下方向(すなわち、副走査方向)に関し、ノズル17aとノズル17bとの間の距離、および、ノズル17bとノズル17cとの間の距離は、基板9上に予め形成されている図1中の左右方向(すなわち、主走査方向)に伸びる隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)と等しくされる。
【0023】
流動性材料供給部18は、流動性材料を貯溜する貯溜タンク、貯溜タンクから流動性材料を吸引するポンプ、および、流動性材料の流量を検出する流量計を3組備え、ノズル17a〜17cのそれぞれに各1つの貯溜タンク、ポンプおよび流量計が接続される。塗布装置1では、流量計からの出力に基づいてポンプが制御部により制御されることにより、流動性材料が予め設定された設定流量にてノズル17a〜17cに供給されて基板9に向けて吐出される。
【0024】
塗布装置1により有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される場合、塗布ヘッド14では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が3本のノズル17a〜17cに供給される。また、正孔輸送材料を含む流動性材料(以下、「正孔輸送液」という。)が塗布される場合、3本のノズル17a〜17cには同一種類の正孔輸送液が供給される。なお、塗布ヘッド14では、3本のノズル17a〜17cに同色(すなわち、同一種類)の有機EL液が供給されてもよい。この場合、隣接する2本のノズルの間の距離は、隔壁ピッチの3倍と等しくされる。
【0025】
図3は、ノズル17aの構成を示す縦断面図であり、図4は、ノズル17aの分解図である。以下、図3および図4を参照しつつ塗布装置1において使用されるノズル17aの構造について説明する。ノズル17b,17cの構造はノズル17aと同様であるため、説明を省略する。
【0026】
図3および図4に示すように、ノズル17aは、下方に向けて開口する略有底円筒状のノズル本体171を備え、ノズル本体171の上底部(すなわち、図3中の上側の底部)には、ノズル本体171の内部空間170に連通する貫通穴170aが形成されている。ノズル17aは、また、略円筒状のスペーサ172,174、円形のシート状のフィルタ173、中心に微小な吐出口175aが形成された円板状のオリフィス部材175、および、蓋部材176を備える。
【0027】
ノズル17aは、図3に示すように、ノズル本体171の内部空間170にスペーサ172、フィルタ173、スペーサ174およびオリフィス部材175が順に挿入された状態で、蓋部材176がノズル本体171の下端部に設けられたネジ山に螺合することにより形成される。フィルタ173は、フッ素系樹脂(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂)により形成されており、スペーサ172,174により上下から外周部を挟まれることにより内部空間170において所定の位置に保持される。なお、フィルタ173とフィルタ173を内部空間170において保持する構造(本実施の形態では、スペーサ172,174)とは、後述するノズル17aの洗浄において、フィルタ部として一体的に取り扱われてもよい。
【0028】
ノズル17aでは、流動性材料供給部18からの流動性材料が、貫通穴170aを介してノズル本体171の内部空間170に供給され、フィルタ173を透過することにより異物が除去された後、オリフィス部材175の吐出口175aから吐出される。
【0029】
次に、塗布装置1による流動性材料の塗布の流れについて説明する。塗布装置1により流動性材料の塗布が行われる際には、まず、基板9が基板保持部11に載置されて保持され、アライメントマーク検出部13からの出力に基づいて基板移動機構12が駆動されて基板9が図1中に実線にて示す塗布開始位置に位置する。塗布ヘッド14は予め図1および図2中に実線にて示す待機位置(すなわち、図1および図2中の左側の受液部16の上方)に位置している。
【0030】
続いて、流動性材料供給部18が制御されてノズル17a〜17cから流動性材料の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構15が駆動されて塗布ヘッド14(すなわち、ノズル17a〜17c)の主走査方向における移動が開始される。塗布装置1では、塗布ヘッド14の3本のノズル17a〜17cから流動性材料を基板9に向けて連続的に吐出しつつ、ノズル17a〜17cを基板9に対して図1中の左側から右側へと相対的に移動することにより、流動性材料が基板9上にストライプ状に塗布される。基板9上の塗布領域には上述のように複数の隔壁が予め形成されており、ノズル17a〜17cからの流動性材料は隔壁間の隣接する3つの溝部に塗布される。また、塗布領域の周囲の非塗布領域は、図示省略のマスク部により覆われているため、流動性材料は塗布されない。
【0031】
塗布ヘッド14が図1および図2中に二点鎖線にて示す待機位置(すなわち、図1および図2中の右側の受液部16の上方)まで移動すると、基板移動機構12が駆動され、基板9が基板保持部11と共に図1中の上側に隔壁ピッチの3倍の距離だけ移動する。このとき、塗布ヘッド14では、ノズル17a〜17cから受液部16に向けて流動性材料が連続的に吐出されている。基板9の副走査方向における移動が終了すると、塗布ヘッド14が流動性材料を吐出しつつ図1中において右側から左側へと移動することにより、流動性材料が基板9上にストライプ状に塗布される。
【0032】
塗布装置1では、基板9に対するノズル17a〜17cの主走査および副走査が高速に繰り返される。そして、基板9が図1中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動すると、ノズル17a〜17cからの流動性材料の吐出が停止されて基板9に対する流動性材料の塗布が終了する。
【0033】
次に、塗布装置1の使用において様々な場面で行われるノズル17aの洗浄について説明する。ノズル17b,17cの洗浄方法および洗浄に用いられる装置は、ノズル17aの洗浄と同様であるため説明を省略する。図5は、ノズル17aの洗浄に用いられる洗浄装置2の構成を示す図である。図5に示すように、洗浄装置2は、ノズル17aが浸漬される洗浄液が貯溜される貯溜槽21、および、貯溜槽21を介して貯溜槽21内の洗浄液に超音波振動を付与する超音波発生機構22を備える。
【0034】
ノズル17aの洗浄では、ノズル17aが図4に示す複数の構成品(すなわち、ノズル本体171、スペーサ172,174、フィルタ173、オリフィス部材175、および、蓋部材176)に分解された状態で貯溜槽21内の洗浄液に浸漬される。そして、超音波振動が所定の時間だけ洗浄液に付与されることにより、ノズル17aの各構成品に付着した異物や流動性材料が構成品の表面から除去される(すなわち、ノズル17aの洗浄が行われる。)。
【0035】
本実施の形態では、洗浄液に付与される超音波振動の振動数は約40kHzとされ、洗浄液に対する超音波振動の付与時間はおよそ1〜10分間とされる。なお、洗浄液に付与される超音波振動の振動数および付与時間は、ノズル17aから除去すべき異物の種類等に合わせて適宜変更されてよい。
【0036】
図6は、ノズル17aを初めて使用する場合や使用後に洗浄されて保管されていたノズル17aを再度使用する場合等、流動性材料が付着していないノズル17aを使用するに際して、塗布装置1による流動性材料の塗布が行われる前に実施されるノズル17aの洗浄の流れを示す図である。図6に示すノズル17aの洗浄では、4つの洗浄装置(以下、それぞれを区別するために「第1の洗浄装置」ないし「第4の洗浄装置」という。)2が用いられる。
【0037】
使用前のノズル17aに対して図6に示す洗浄が行われる際には、まず、第1の洗浄装置2の貯溜槽21に貯溜された界面活性剤を含む洗浄液に、塗布装置1に装着される前のノズル17aが分解された状態で浸漬される(ステップS11)。本実施の形態では、洗浄液は界面活性剤を純水により希釈して生成されたものであり、洗浄液中の界面活性剤の体積濃度は約3%〜10%とされる。続いて、超音波発生機構22により貯溜槽21内の洗浄液に対して超音波振動が約10分間だけ付与されることにより、ノズル17a(の各構成品)の表面に付着しているパーティクル等の異物や油脂成分が除去される(ステップS12)。このとき、界面活性剤によりノズル17aの静電気が除去される(または、静電気による帯電状態が緩和される)ため、洗浄液中に浮遊するパーティクル等がノズル17aに引き寄せられて付着することが防止される。
【0038】
界面活性剤を含む洗浄液による超音波洗浄(以下、「界面活性剤洗浄」という。)が終了すると、ノズル17aが第1の洗浄装置2から取り出され、第2の洗浄装置2の貯溜槽21に貯溜された純水に分解された状態で浸漬される(ステップS13)。そして、超音波発生機構22により貯溜槽21内の純水に対して超音波振動がおよそ1〜10分間だけ付与されることにより、ノズル17aの表面に付着している界面活性剤を含む洗浄液が除去される(ステップS14)。ステップS13,S14に示す純水による超音波洗浄工程(いわゆる、リンス工程)では、ノズル17aから界面活性剤を確実に除去することができるだけでなく、ステップS11,S12における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等も除去される。
【0039】
純水による超音波洗浄(以下、「純水洗浄」という。)が終了すると、ノズル17aが第2の洗浄装置2から取り出され、第3の洗浄装置2の貯溜槽21に貯溜されたアルコール(両親媒性を示す低分子アルコールであり、本実施の形態ではエタノール)を主成分とする洗浄液に分解された状態で浸漬され(ステップS15)、超音波発生機構22により貯溜槽21内の洗浄液に対して超音波振動が約10分間だけ付与される(ステップS16)。これにより、ノズル17aの表面に付着している純水がアルコールに置換されるとともに、ステップS11〜S14における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。また、フィルタ173(図4参照)が疎水性である場合には、フィルタ173に対する親水処理も行われる。なお、洗浄液の主成分であるアルコールとしては、取り扱いが容易であり安全なエタノールが用いられることが好ましいが、IPA(イソプロピルアルコール)等の他のアルコールが用いられてもよい。
【0040】
アルコールを主成分とする洗浄液による超音波洗浄(以下、「アルコール洗浄」という。)が終了すると、ノズル17aが第3の洗浄装置2から取り出され、第4の洗浄装置2の貯溜槽21に貯溜された洗浄液に分解された状態で浸漬される(ステップS17)。第4の洗浄装置2で用いられる洗浄液は、第4の洗浄装置2による洗浄後のノズル17aを用いて塗布される(すなわち、洗浄後のノズル17aが取り付けられた塗布装置1により塗布される)予定の流動性材料の主溶媒を主成分とする。具体的には、洗浄後のノズル17aを用いて有機EL液が塗布される場合には、有機EL液の主溶媒(例えば、メシチレン)が洗浄液の主成分とされ、正孔輸送液が塗布される場合には、正孔輸送液の主溶媒が洗浄液の主成分とされる。例えば、水溶性PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)を正孔輸送材料として含む正孔輸送液が塗布される場合には洗浄液は純水とされ、有機溶媒可溶性のPEDOTを正孔輸送材料として含む正孔輸送液が塗布される場合には洗浄液は有機溶媒を主成分とするものとされる。
【0041】
第4の洗浄装置2では、超音波発生機構22により貯溜槽21内の洗浄液に対して超音波振動がおよそ1〜10分間だけ付与されることにより、ノズル17aの表面に付着しているアルコールが流動性材料の主溶媒に置換されるとともに、ステップS11〜S16における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される(ステップS18)。図6に示す洗浄方法では、流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液による超音波洗浄(以下、「溶媒洗浄」という。)に先立ち、ステップS15,S16に示すアルコール洗浄により、純水洗浄(ステップS13,S14)においてノズル17aの表面に付着した純水が両親媒性の(すなわち、分子内に親水基と疎水基とを併せ持ち、親水性および親油性の双方を示す)アルコールに置換される。このため、溶媒洗浄において、流動性材料の主溶媒の性質(すなわち、主溶媒が水性であるか油性であるか)に関わらず、ノズル17aの表面全体に流動性材料の主溶媒を速やかに行き渡らせることができる。
【0042】
溶媒洗浄が終了すると、第4の洗浄装置2から取り出されたノズル17aの各構成品は、表面に付着した流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液が蒸発する前に(すなわち、ノズル17aが乾燥する前に)組み立てられ、同様に洗浄されて組み立てられたノズル17b,17cと共に塗布装置1に装着される。そして、ノズル17a〜17cが乾燥する前にノズル17a〜17cを使用した塗布装置1による流動性材料の塗布が行われる。このとき、塗布装置1では、流動性材料の塗布が開始されるまでノズル17a〜17cの表面がウェットな状態とされているため、大気中に浮遊しているパーティクル等の異物が静電気等によりノズル17a〜17cに付着することを抑制することができる。また、ノズル17a〜17cの表面に付着している洗浄液が流動性材料の主溶媒を主成分とするため、ノズル17a〜17cから吐出される流動性材料にアルコールや界面活性剤等の不純物が混入することを防止することができる。
【0043】
図6に示す洗浄方法では、ノズル17a〜17cに対して、界面活性剤洗浄、純水洗浄、アルコール洗浄および溶媒洗浄を順次行うことにより、ノズル17a〜17cに付着している異物や油脂成分等を確実に除去することができる。そして、塗布装置1による流動性材料の塗布が行われる前に当該洗浄方法によりノズル17a〜17cを洗浄することにより、ノズル17a〜17cを使用して行う流動性材料の塗布において、ノズル17a〜17cの目詰まり(すなわち、図3に示すノズル17aの吐出口175aに異物等が詰まってしまうこと)を確実に防止することができる。その結果、ノズル17a〜17cからの流動性材料の安定した吐出が実現され、膜厚の均一性を向上しつつ流動性材料を塗布することができる。また、ノズル17a〜17cの目詰まりに起因する塗布装置1の停止を防止し、CoO(Cost of Ownership)を削減することもできる。
【0044】
図6に示す洗浄方法では、ノズル17a〜17cが分解された状態で洗浄されることにより、ノズル17a〜17cの内壁に付着している異物等をより確実に除去することができ、ノズル17a〜17cの目詰まりをより確実に防止することができる。
【0045】
なお、上述の洗浄方法では、4つの洗浄装置2を用いてノズル17a〜17cの洗浄が行われるが、例えば、ステップS17,S18に示す溶媒洗浄において洗浄液が純水である場合には、溶媒洗浄は、ステップS13,S14に示す純水洗浄が行われた第2の洗浄装置2により行われてもよい。また、洗浄液を順次入れ替えることにより、1つの洗浄装置2においてステップS11〜S18に示す各洗浄が行われてもよい。
【0046】
図7.Aおよび図7.Bは、塗布装置1による流動性材料の塗布が行われた後に実施される、流動性材料の塗布に使用されたノズル17aの洗浄の流れを示す図である。図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄は、流動性材料の塗布作業中に何らかの異常等によりノズル17aが詰まってしまった場合、一の流動性材料の塗布に使用したノズル17aを異なる種類の流動性材料の塗布に使用する場合、または、使用後のノズル17aを保管する場合等、流動性材料が付着している使用途中または使用後のノズル17aに対して行われる。
【0047】
図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄では、図6に示す洗浄工程(ステップS11〜S18)よりも前に、溶媒洗浄およびアルコール洗浄がさらに行われる。また、使用後のノズル17aを保管する場合には、図6中のステップS17,S18に示す溶媒洗浄が省略される。図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄にも、図6に示す洗浄にて使用される洗浄装置2が用いられる(後述の図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄においても同様)。
【0048】
具体的には、まず、流動性材料の塗布が停止された塗布装置1からノズル17aが取り外され、図4に示す複数の構成品に分解される(ステップS21)。続いて、当該流動性材料(すなわち、ノズル17aがその塗布に使用されていた流動性材料)の主溶媒を主成分とする洗浄液にノズル17aが分解された状態で浸漬され(ステップS22)、当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることによりノズル17aに対する1回目の溶媒洗浄が行われる(ステップS23)。これにより、ノズル17aの表面に付着している流動性材料が洗浄液中に溶け出して除去されるとともにノズル17aの表面に付着しているパーティクル等の異物も除去される。
【0049】
1回目の溶媒洗浄が終了すると、ノズル17aがアルコールを主成分とする洗浄液に浸漬されて当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する1回目のアルコール洗浄が行われる(ステップS24,S25)。これにより、ノズル17aの表面に付着している流動性材料の主溶媒がアルコールに置換されるとともに、ステップS22,S23における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。
【0050】
1回目のアルコール洗浄が終了すると、界面活性剤を含む洗浄液にノズル17aが浸漬されて当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する界面活性剤洗浄が行われる(ステップS26,S27)。これにより、ステップS22〜S25における洗浄により除去されずにノズル17aの表面に付着しているパーティクル等の異物や油脂成分が除去され、さらに、ノズル17aが除電されることにより、洗浄液中に浮遊するパーティクル等がノズル17aに付着することが防止される。
【0051】
図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法では、界面活性剤洗浄の直前にステップS24,S25に示すアルコール洗浄が行われるため、1回目の溶媒洗浄(ステップS22,S23)において用いられる洗浄液の性質(すなわち、流動性材料の主溶媒の性質)に関わらず、ノズル17aの表面全体に界面活性剤を含む洗浄液を速やかに行き渡らせることができ、界面活性剤洗浄を効率的に行うことができる。
【0052】
界面活性剤洗浄が終了すると、ノズル17aが純水に浸漬されて当該純水に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する純水洗浄が行われる(ステップS28,S29)。これにより、ノズル17aの表面から界面活性剤を確実に除去することができる。また、ステップS22〜S27における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等も除去される。
【0053】
純水洗浄が終了すると、ノズル17aがアルコールを主成分とする洗浄液に浸漬されて当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する2回目のアルコール洗浄が行われる(ステップS30,S31)。これにより、ノズル17aの表面に付着している純水が両親媒性のアルコールに置換されるとともに、ステップS22〜S29における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。
【0054】
ノズル17aが洗浄後すぐに次の流動性材料の塗布に使用されない場合には(ステップS32)、2回目のアルコール洗浄後のノズル17aが乾燥されて所定の保管場所に保管される(ステップS321)。
【0055】
また、ノズル17aが洗浄後すぐに次の流動性材料の塗布に使用される場合には(ステップS32)、2回目のアルコール洗浄後のノズル17aが、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に浸漬され、当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する2回目の溶媒洗浄が行われる(ステップS33,S34)。これにより、ノズル17aの表面に付着しているアルコールが次の流動性材料の主溶媒に置換されるとともに、ステップS22〜S31における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。
【0056】
図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法においても、図6に示す洗浄方法と同様に、2回目の溶媒洗浄の直前に2回目のアルコール洗浄が行われるため、次の流動性材料の主溶媒の性質に関わらず、ノズル17aの表面全体に次の流動性材料の主溶媒を速やかに行き渡らせることができる。なお、次の流動性材料は、図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄が行われる前にノズル17aにより吐出されていた流動性材料と同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
【0057】
2回目の溶媒洗浄が終了すると、ノズル17aの各構成品が組み立てらてノズル17b,17cと共に塗布装置1に装着され、ノズル17a〜17cが乾燥する前にノズル17a〜17cを使用した塗布装置1による次の流動性材料の塗布が行われる。この場合も、上述のように、次の流動性材料の塗布が開始されるまでノズル17a〜17cの表面がウェットな状態とされているため、大気中に浮遊しているパーティクル等の異物がノズル17a〜17cに付着することを抑制することができる。また、ノズル17a〜17cの表面に付着している洗浄液が次の流動性材料の主溶媒を主成分とするため、ノズル17a〜17cから吐出される次の流動性材料にアルコールや界面活性剤等の不純物が混入することを防止することができる。
【0058】
図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法では、洗浄後のノズル17a〜17cを保管する場合、ノズル17a〜17cに対して1回目の溶媒洗浄、1回目のアルコール洗浄、界面活性剤洗浄、純水洗浄および2回目のアルコール洗浄が順次行われることにより、ノズル17a〜17cに付着している流動性材料や異物、油脂成分等を確実に除去することができ、ノズル17a〜17cを清浄な状態で保管することができる。さらには、保管されたノズル17a〜17cを再使用する場合、上述のように、図6に示す洗浄方法により洗浄するのみでよく、ノズル17a〜17cを速やかに再使用することができるとともにノズル17a〜17cの目詰まりを確実に防止することができる。
【0059】
また、洗浄後のノズル17a〜17cをすぐに次の流動性材料の塗布に使用する場合、1回目の溶媒洗浄、1回目のアルコール洗浄、界面活性剤洗浄、純水洗浄および2回目のアルコール洗浄に加えて、2回目の溶媒洗浄(すなわち、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液による洗浄)が行われることにより、ノズル17a〜17cに付着している流動性材料や異物、油脂成分等を確実に除去してノズル17a〜17cの目詰まりを確実に防止することができるとともに次の流動性材料にアルコールや界面活性剤等の不純物が混入することを防止することができる。
【0060】
図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法でも、図6に示す洗浄方法と同様に、ノズル17a〜17cが分解された状態で洗浄されることにより、ノズル17a〜17cの内壁に付着している流動性材料や異物等をより確実に除去することができ、ノズル17a〜17cの目詰まりをより確実に防止することができる。
【0061】
図8.Aおよび図8.Bは、水溶性の正孔輸送材料(例えば、水溶性PEDOT)を含むとともに純水を主溶媒とする流動性材料(すなわち、正孔輸送液)の塗布に使用されたノズル17aに対して行われる洗浄の流れを示す図である。図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄は、図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄と同様に、塗布装置1による流動性材料の塗布が行われた後に行われるノズル17aの洗浄であるが、図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄では、流動性材料の主溶媒が純水であるため、図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法からステップS24,S25に示す1回目のアルコール洗浄工程を省略される。
【0062】
使用途中または使用後のノズル17aに対して図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄が行われる際には、まず、塗布装置1からノズル17aが取り外されて分解される(ステップS41)。続いて、ノズル17aが、使用されていた流動性材料の主溶媒である純水に分解された状態で浸漬され(ステップS42)、当該純水に対して超音波振動が付与されることによりノズル17aに対する1回目の溶媒洗浄(純水洗浄ともいえる。)が行われる(ステップS43)。これにより、ノズル17aの表面に付着している流動性材料が主溶媒である純水中に溶け出して除去されるとともにノズル17aの表面に付着しているパーティクル等の異物も除去される。
【0063】
1回目の溶媒洗浄が終了すると、界面活性剤を含む洗浄液にノズル17aが浸漬されて当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する界面活性剤洗浄が行われる(ステップS44,S45)。これにより、ステップS42,S43における洗浄により除去されずにノズル17aの表面に付着しているパーティクル等の異物や油脂成分が除去され、さらに、ノズル17aが除電されることにより、洗浄液中に浮遊するパーティクル等がノズル17aに付着することが防止される。図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄方法では、ステップS42,S43に示すノズル17aに対する溶媒洗浄が純水により行われるため、溶媒洗浄後にノズル17aの表面に付着している流動性材料の主溶媒(すなわち、純水)をアルコールに置換することなく、ノズル17aの表面全体に界面活性剤を含む洗浄液を速やかに行き渡らせることができ、界面活性剤洗浄を効率的に行うことができる。
【0064】
界面活性剤洗浄が終了すると、ノズル17aが純水に浸漬されて当該純水に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する純水洗浄が行われる(ステップS46,S47)。これにより、ノズル17aの表面から界面活性剤を確実に除去することができる。また、ステップS42〜S45における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等も除去される。
【0065】
純水洗浄が終了すると、ノズル17aがアルコールを主成分とする洗浄液に浸漬されて当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対するアルコール洗浄が行われる(ステップS48,S49)。これにより、ノズル17aの表面に付着している純水が両親媒性のアルコールに置換されるとともに、ステップS42〜S47における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。
【0066】
ノズル17aが洗浄後すぐに次の流動性材料の塗布に使用されない場合には(ステップS50)、アルコール洗浄後のノズル17aが乾燥されて所定の保管場所に保管される(ステップS501)。
【0067】
また、ノズル17aが洗浄後すぐに次の流動性材料の塗布に使用される場合には(ステップS50)、アルコール洗浄後のノズル17aが、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に浸漬され、当該洗浄液に対して超音波振動が付与されることにより、ノズル17aに対する2回目の溶媒洗浄が行われる(ステップS51,S52)。これにより、ノズル17aの表面に付着しているアルコールが次の流動性材料の主溶媒に置換されるとともに、ステップS42〜S49における洗浄により除去されなかった異物等がノズル17aの表面に残存している場合には、当該異物等が除去される。
【0068】
図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄方法においても、図6に示す洗浄方法と同様に、2回目の溶媒洗浄の直前にアルコール洗浄が行われるため、次の流動性材料の主溶媒の性質に関わらず、ノズル17aの表面全体に次の流動性材料の主溶媒を速やかに行き渡らせることができる。なお、次の流動性材料は、図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄が行われる前にノズル17aにより吐出されていた流動性材料(すなわち、水溶性の正孔輸送材料を含むとともに純水を主溶媒とする流動性材料)と同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよい。なお、次の流動性材料の主溶媒も純水である場合(例えば、ノズル17aの洗浄の前後で塗布される流動性材料が同一の種類である場合)には、ステップS48〜S52は省略されてもよい。
【0069】
2回目の溶媒洗浄が終了すると、ノズル17aの各構成品が組み立てらてノズル17b,17cと共に塗布装置1に装着され、ノズル17a〜17cが乾燥する前にノズル17a〜17cを使用した塗布装置1による次の流動性材料の塗布が行われる。この場合も、上述のように、次の流動性材料の塗布が開始されるまでノズル17a〜17cの表面がウェットな状態とされているため、大気中に浮遊しているパーティクル等の異物がノズル17a〜17cに付着することを抑制することができる。また、ノズル17a〜17cの表面に付着している洗浄液が次の流動性材料の主溶媒を主成分とするため、ノズル17a〜17cから吐出される次の流動性材料にアルコールや界面活性剤等の不純物が混入することを防止することができる。
【0070】
図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄方法では、洗浄後のノズル17a〜17cを保管する場合、ノズル17a〜17cに対して1回目の溶媒洗浄(すなわち、純水洗浄)、界面活性剤洗浄、純水洗浄およびアルコール洗浄が順次行われることにより、ノズル17a〜17cに付着している流動性材料や異物、油脂成分等を確実に除去することができ、ノズル17a〜17cを清浄な状態で保管することができる。さらには、保管されたノズル17a〜17cを再使用する場合、図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法と同様に、ノズル17a〜17cを速やかに再使用することができるとともにノズル17a〜17cの目詰まりを確実に防止することができる。
【0071】
また、洗浄後のノズル17a〜17cをすぐに次の流動性材料の塗布に使用する場合、1回目の溶媒洗浄、界面活性剤洗浄、純水洗浄およびアルコール洗浄に加えて、2回目の溶媒洗浄(すなわち、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液による洗浄)が行われることにより、ノズル17a〜17cに付着している流動性材料や異物、油脂成分等を確実に除去してノズル17a〜17cの目詰まりを確実に防止することができるとともに次の流動性材料にアルコールや界面活性剤等の不純物が混入することを防止することができる。
【0072】
図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄方法でも、図6並びに図7.Aおよび図7.Bに示す洗浄方法と同様に、ノズル17a〜17cが分解された状態で洗浄されることにより、ノズル17a〜17cの内壁に付着している流動性材料や異物等をより確実に除去することができ、ノズル17a〜17cの目詰まりをより確実に防止することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0074】
例えば、図8.Aおよび図8.Bに示す洗浄方法は、水溶性の有機EL材料を含むとともに純水を主溶媒とする流動性材料の塗布に使用されたノズル17a〜17cの洗浄に適用されてもよい。また、上記実施の形態に係る洗浄方法では、ノズル17a〜17cは必ずしも分解された状態で洗浄される必要はなく、異物等の付着の程度が軽い場合等、状況に応じて組み立てられた状態で洗浄されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】塗布装置の平面図である。
【図2】塗布装置の正面図である。
【図3】ノズルの縦断面図である。
【図4】ノズルの分解図である。
【図5】洗浄装置の構成を示す図である。
【図6】ノズルの洗浄の流れを示す図である。
【図7.A】ノズルの洗浄の流れを示す図である。
【図7.B】ノズルの洗浄の流れを示す図である。
【図8.A】ノズルの洗浄の流れを示す図である。
【図8.B】ノズルの洗浄の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 塗布装置
9 基板
17a,17b,17c ノズル
S11〜S18,S21〜S34,S41〜S52,S321,S501 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔輸送材料または有機EL材料を含む流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、
a)界面活性剤を含む洗浄液に塗布装置に装着前のノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
b)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
c)流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
を備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルの洗浄方法であって、
前記a)工程と前記b)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項3】
正孔輸送材料または有機EL材料を含む流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、
a)塗布装置からノズルを取り外す工程と、
b)流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
c)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
d)界面活性剤を含む洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
e)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
を備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項4】
請求項3に記載のノズルの洗浄方法であって、
前記d)工程と前記e)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のノズルの洗浄方法であって、
前記e)工程よりも後に、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程をさらに備え、
前記ノズルが乾燥する前に前記ノズルを使用した前記次の流動性材料の塗布が行われることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項6】
正孔輸送材料を含むとともに純水を主溶媒とする流動性材料を有機EL表示装置用の基板に向けてノズルから連続的に吐出して塗布する塗布装置において使用されるノズルの洗浄方法であって、
a)塗布装置からノズルを取り外す工程と、
b)純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程と、
c)界面活性剤を含む洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
d)アルコールを主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程と、
を備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項7】
請求項6に記載のノズルの洗浄方法であって、
前記c)工程と前記d)工程との間に、純水に前記ノズルを浸漬して前記純水に対して超音波振動を付与する工程をさらに備えることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のノズルの洗浄方法であって、
前記d)工程よりも後に、次の流動性材料の主溶媒を主成分とする洗浄液に前記ノズルを浸漬して前記洗浄液に対して超音波振動を付与する工程をさらに備え、
前記ノズルが乾燥する前に前記ノズルを使用した前記次の流動性材料の塗布が行われることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のノズルの洗浄方法であって、
前記ノズルが分解された状態で洗浄が行われることを特徴とするノズルの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図8.A】
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【図8.B】
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【公開番号】特開2007−123038(P2007−123038A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313230(P2005−313230)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】