説明

ハイドロプレーニングを自動的に防止する方法

本発明は、走行区間において自動車の走行作動中にハイドロプレーニングを自動的に防止する方法に関し、本発明によれば、
a)ハイドロプレーニングの危険に関して区間部分に関係する情報が自動車に準備され、
b)ぬれた車道を検出する少なくとも1つのセンサ装置が設けられ、
c)ハイドロプレーニングの危険を持つ走行区間の区間部分が存在し、かつぬれた車道が検出されると、ハイドロプレーニングを防止する援助機能が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行区間において自動車の走行作動中にハイドロプレーニングを自動的に防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロック防止システム(ABS)又は走行運動制御(EPS,ESC)のような既存のシステムの欠点は、ハイドロプレーニングの出現の際、ハイドロプレーニングの状態が目前に差し迫っているか又は既に始まった時に初めて反応することである。
【0003】
例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10060333号明細書から、ハイドロプレーニングの出現の危険を認識する方法が公知であり、車両の走行運動量及び状態データから間接に、ハイドロプレーニングの存在が推論される。このため機関及び動力伝達系の作動状態に基いて予想される車両の推進を記述する第1の推進量を求める第1の手段、及び車両に作用する縦加速度に基いて現れて車両の走行作動中に存在する推進を記述する第2の推進量を求める第2の手段を含む装置が提案され、第1の推進量と第2の推進量との間に存在する偏差に関係して、ハイドロプレーニングの存在が推論される。
【0004】
更にこのドイツ連邦共和国特許出願公開第10060333号明細書には、ハイドロプレーニングの危険を認識すると、例えば摩擦損失の相対限度の表示により運転者に警告するか、又は例えば速度減少のため機関介入及び/又は制動機介入を行うため、車両運動を記述する量に影響を及ぼす装置例えばESPへこの情報を供給することが提案される。
【0005】
更にハイドロプレーニングの出現の際車両を安定化する方法が、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102008034908号明細書から公知である。これによれば、車両の目標挙動が求められ、車両の実際挙動が目標挙動に近づけられるように、車両の横揺れモーメントが発生される。
【0006】
最後に例えば走行区間に関係する交通情報及び天候情報を車両の間で交換するため、いわゆる車両対車両通信(C2C)も公知である。例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10139668号明細書は、天候情報及び道路状態データの準備を扱っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、ハイドロプレーニングの危険の出現の早期検出を可能にし、同時にハイドロプレーニングの出現又は危険をできるだけ予防的に阻止又は減少して、前記の欠点を回避する、最初にあげた種類の方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を持つ方法によって解決される。
【0009】
これによれば、走行区間において自動車の走行作動中にハイドロプレーニングを自動的に防止する方法において、本発明によれば、
a)ハイドロプレーニングの危険に関して区間部分に関係する情報が自動車に準備され、
b)ぬれた車道を検出する少なくとも1つのセンサ装置が設けられ、
c)ハイドロプレーニングの危険を持つ走行区間の区間部分が存在し、かつぬれた車道が 検出されると、ハイドロプレーニングを防止する補助機能が実施される。
【0010】
その際なるべくハイドロプレーニングを表示する交通標識の交通標識認識により、区間部分に関係する情報が方法段階a)によりかつ/又はテレマティク機能により準備される。
【0011】
例えば速度超過の際運転者に警告するため、ますます多くの車両が、電子交通標識認識システムを含む最近の運転者援助システムを備えているので、付加的な費用なしに、危険標識として等級分けされた交通標識“ぬれているか又は汚れている場合横滑りの危険”を検出し、ハイドロプレーニングの危険について区間部分に関する情報として準備することが可能である。
【0012】
交通標識の認識は一般にカメラにより行われ、このカメラが車両の前の周囲を記録し、適当な画像データを車載計算機へ供給し、この計算機がアルゴリズムにより画像データを分析し、これから交通標識を確認する。
【0013】
このような方法は例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19852631号明細書から公知である。
【0014】
ハイドロプレーニングの危険の存在に関して区間部分に関する情報は、テレマティク機能により準備することができる。それは、例えば複数の車両が道路上で例えばV2V(車両対車両)又はC2C(カー対カー)のような設けられるインフラストラクチャを介して互いに通信し、車両に存在するデータ特にハイドロプレーニングを示唆するデータを検出して、場合によっては中央計算機を介して交換することを意味する。これらのデータにより、例えば雨が降っているか否か、即ちハイドロプレーニングの危険があるか否か、又はちょうどよどみが形成されているか否かを確認することができる。
【0015】
最後に自動車に設けられているナビゲーションシステムの範囲でも、ハイドロプレーニングの危険について区間部分に関する情報を持ちかつ車両がこのような区間を走行する時にこれらの情報を利用可能にするディジタルカードを使用することができる。
【0016】
ハイドロプレーニングの危険の存在についての情報は、自動車のちょうど走行している車道がぬれているか否かの情報と論理結合される。このぬれ情報は、方法段階b)によるセンサ装置によって、なるべく雨センサとして使用される。
【0017】
その代わりに又はそれに加えて、ぬれた車道を検出するため、窓拭き器動作を評価するセンサ装置を設けることもできる。
【0018】
ぬれ情報を求めるセンサ装置を、走行運動の車両データ及び車両状態データを評価するハイドロプレーニングセンサ装置として構成すると、特に有利である。このために、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10060333号明細書に記載された方法が適している。
【0019】
最後にぬれた車道を検出するため、車道表面を検出する光センサなるべくカメラも使用することができる。
【0020】
ハイドロプレーニングの危険を持つ区間部分が識別され、センサ装置によってぬれた車道が検出されると、ハイドロプレーニングを阻止するか又はハイドロプレーニングの出現する危険を少なくとも減少する防止方策を実施する援助機能が自動的に開始される。
【0021】
ハイドロプレーニングの危険が例えば車両の計器群において運転者に表示されることによって、このような援助機能が、ハイドロプレーニングに対して運転者への光、音響及び/又は触覚による警告であってもよい。
【0022】
特に運転者が警告に反応しない時、別の方策は、自動車の制動ペダルの操作により開始される減速要求が、変換のため自動車の駆動機関へ転送され、その際車輪のロックが回避されるように、減速要求が変換されることであってもよい。
【0023】
援助機能は、自動車の加速ペダルの操作により生じる加速要求が、加速要求に比較して一層小さい値で一層長い期間にわたって実施されるか又は完全に抑制されることであってもよい。それにより、例えば強い加速によって実際にハイドロプレーニングが起こるのを防止される。
【0024】
更に援助機能は、自動車のシャシの緩衝の調節、特にシャシの硬い調節であってもよい。
【0025】
安全性に関して、最大値に、なるべく車両の浮上即ちハイドロプレーニングがまだ起こらない推奨速度としての80km/hに、車両速度を調節するか又は減少する援助機能が重要である。
【0026】
最後に、援助機能を運転者援助システム又は能動安全システムへ取り入れると特に有利である。
【0027】
援助機能が自動車のABSシステムの調節を行い、特にABSシステムを一層敏感に調節するのがよい。
【0028】
更にこのため走行運動制御も適しており、その調節が援助機能により引受けられ、特にこの機能を一層敏感に調節する。これにより個々の車輪のために制動出力が電子的に要求される場合にロックが回避されるように、走行運動制御がパラメータ化されると、特に有利である。
【0029】
本発明による方法の有利な構成では、ハイドロプレーニングを防止する援助機能の実施が、速度制御システム例えばCC(クルーズコントロール)システム又はACC(適合クルーズコントロール)システムの適合を含んでいる。CCシステムは、自動車の速度を自動的に所定の値に一定に保つことができる。ACCシステムでは、自動車の速度を、更に先行する車両の速度に合わせることができる。適合はなるべく能動速度制御システムにおいてのみ行われる。速度制御システムが本発明による方法の実施時点又は実施中に始動されて、自動車の速度を制御する時、このシステムは能動的である。
【0030】
自動車がハイドロプレーニングの危険のある範囲へ入ると、公知の速度制御システムでは、自動車の速度は不変に保たれる。
【0031】
本発明による方法の有利な構成では、このような状況において速度制御システムは、自動車の速度が減少されるように、合わされる。これは、ハイドロプレーニングの危険を持つ区間部分が識別され、センサ装置によりぬれた車道が検出された時に、行われるのがよい。
【0032】
速度制御システムが、特に速度限界を検出する手段を持つACCシステムである場合、ハイドロプレーニングの危険がわかると、ぬれに対して規定されかつ/又は推奨されている速度限界例えば80km/hが考慮される。現在有効な速度限界は、ACCシステム自体により又は例えばGPS、カメラ及び/又はトランスポンダに基く交通標識認識により準備することができる。
【0033】
好ましい構成では、ハイドロプレーニングの危険がわかると、速度制御システムが完全に停止される。その際停止は、自動車の運転者への特に1回又は複数回の通報により、例えば触覚、音響及び/又は光の信号によって行われる。
【0034】
本発明による方法が使用される自動車が、運転者の縦制御及び/又は横制御の課題を一部又は完全に引受ける高度に自動化されたシステムを含んでいる場合、ハイドロプレーニングの危険を知ると、システムを停止することができる。その際停止は、なるべく自動車の運転者への通報により行われる。運転者がそれに基いて走行課題を引受けないと、自動車の速度を自動的に低下し、かつ/又は自動車の制動を停止するまで行うことができる。
【0035】
最後に援助機能の実施を、自動車の運転者により各時点に停止することができる。このために適当な人間−機械インタフェースが準備される。
【0036】
安全に関する観点から、実施される方策の複数を援助機能にまとめて、これらの方策を同時に又は時間的にずらして実施するのが有利である。
【0037】
本発明による方法の重要な利点は、援助機能により、ハイドロプレーニングの出現に対する防止保護方策が自動的に開始され、間接測定のためハイドロプレーニングが事前に差し迫っているか又は既に始まった時に初めて開始されるのではないことである。これらの防止保護手段により、ハイドロプレーニングの出現する危険も著しく少なくされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行区間において自動車の走行作動中にハイドロプレーニングを自動的に防止する方法において、
a)ハイドロプレーニングの危険に関して区間部分に関係する情報が自動車に準備され、
b)ぬれた車道を検出する少なくとも1つのセンサ装置が設けられ、
c)ハイドロプレーニングの危険を持つ走行区間の区間部分が存在し、かつぬれた車道が 検出されると、ハイドロプレーニングを防止する援助機能が実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
区間部分に関係する情報が、方法段階a)により少なくとも1つの次の手段即ち
a1)ハイドロプレーニングを表示する交通標識の交通標識認識、
a2)テレマティク機能、
a3)ディジタルカード
により準備されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法段階b)によりぬれた車道を検出するため、少なくとも1つの次のセンサ装置即ち
b1)両センサ、
b2)窓拭き器動作を評価するセンサ装置、
b3)ぬれた車道を検出するため、走行運動の車両データ及び車両状態データを評価 するハイドロプレーニングセンサ装置、
b4)車道表面を検出する光センサなるべくカメラ
が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項4】
方法段階c)により援助機能が、少なくとも1つの次の方策即ち
c1)ハイドロプレーニングに対して運転者への光、音響及び/又は触覚による警告 、
c2)自動車のシャシの緩衝の調節、特にシャシの硬い調節、
c3)最大値へなるべく80km/hへの車両速度の調節又は減少、
c4)自動車のABSシステムの調節、特にABSシステムの一層敏感な調節、
c5)自動車の走行運動の制御の調節、特に走行運動制御の一層敏感な調節、
c6)能動速度制御システムの適合
を含んでいることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
速度制御システムがクルーズコントロール(CC)システム又は適合クルーズコントロール(ACC)システムであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
能動速度制御システムの適合が車両速度の減少を含んでいることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
能動速度制御システムの適合が、道路がぬれている場合規定されるか又は推奨される車両速度への車両速度の減少を含んでいることを特徴とする、請求項4〜6の1つに記載の方法。
【請求項8】
能動速度制御システムの適合が、速度制御システムの停止を含んでいることを特徴とする、請求項4〜7の1つに記載の方法。
【請求項9】
個々の車輪のために制動出力が電子的に要求される場合にロックが回避されるように、援助機能が走行運動制御をパラメータ化することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
方法段階c)による援助機能の実施が、自動車の自動縦制御及び横制御用システムの停止を含んでいることを特徴とする先行する、請求項の1つに記載の方法。
【請求項11】
それぞれのシステムの停止が、自動車の運転者の先行通報に従って行われることを特徴とする、請求項8又は10に記載の方法。
【請求項12】
運転者が横制御及び縦制御を引受けないと、自動車の速度が減少されるか、又は自動車が停止するまで制動されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
自動車の制動ペダルの操作により開始される減速要求が、方法段階c)による援助機能により、変換のため自動車の駆動機関へ転送され、その際車輪のロックが回避されるように、減速要求が変換されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
自動車の加速ペダルの操作により生じる加速要求が、方法段階c)による援助機能によって、加速要求に比較して一層小さい値で一層長い期間にわたって実施されるか又は抑制されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
方法段階c)による援助機能の実施が、自動車の運転者により各時点に停止可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。

【公表番号】特表2013−519592(P2013−519592A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555291(P2012−555291)
【出願日】平成23年1月22日(2011.1.22)
【国際出願番号】PCT/DE2011/000063
【国際公開番号】WO2011/100943
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【出願人】(509343699)コンチネンタル・テーヴエス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オツフエネハンデルスゲゼルシヤフト (9)
【Fターム(参考)】