説明

ハイブリッド自動車の制御装置

【課題】パラレル型ハイブリッド自動車において、エンジンのトルクとモータのトルクとを選択的に用いて様々な駆動モードでPTO装置を作動させうるようにすると共に、駆動モードの切替を速やか且つ円滑に行なえるようにする。
【解決手段】エンジン1と、エンジン1に第1クラッチ3Aを介して第1歯車機構21Aを、第2クラッチ3Bを介して第2歯車機構22Aを接続されるデュアルクラッチ式変速機2と、第2歯車機構22Aの入力軸22に装備されたモータ4と、をそなえ、第1歯車機構21AにPTO装置10が接続され、バッテリ充電量に基づき選択されるPTO駆動モードにかかわらず、第1クラッチ3Aを接続状態に第2クラッチ3Bを切断状態に制御すると共に、第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとを接続する動力接続機構28を接続状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチ式の自動変速機とパワーテイクオフ装置(PTO)とをそなえたハイブリッド自動車の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン(内燃機関)及びモータ(電動発電機)の駆動力を任意に駆動輪に伝達可能なパラレル型ハイブリッド自動車が実用化されている。この種のハイブリッド自動車では、エンジンの出力軸にクラッチを介して変速機の入力軸を接続し、変速機の入力軸の外周にモータを装備して、変速機の出力軸に差動装置を介して左右の駆動輪を接続してパワートレインを構成しているものがある。
【0003】
さらに、このようなハイブリッド自動車の変速機に、例えば特許文献1に記載されているような所謂デュアルクラッチ式変速機が適用される場合もある。特許文献1に記載のデュアルクラッチ式変速機は、第1入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第1歯車機構を設けると共に、第2入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第2歯車機構を設け、エンジンからの駆動力を、第1クラッチを介して第1入力軸に伝達可能とする一方、第2クラッチを介して第2入力軸にも伝達可能としている。この技術の場合、第1入力軸と第2入力軸とを内外2重に配設される構造としており、モータを装備可能な変速機の外側の入力軸(アウタシャフト)にモータを装備している。
【0004】
また、清掃車やコンクリートポンプ車両やタンクローリ車両などのように作業装置を搭載した車両においては、作業装置の作動のために変速機から動力を取り出して作業装置に伝達するようにしたPTO(Power take-off)装置を搭載することが知られている。エンジンの駆動力と電動機の駆動力とをそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能とした、いわゆるパラレル型ハイブリッド自動車においても、このPTO装置を搭載する場合がある。
【0005】
例えば特許文献2には、エンジン及び電動機から変速機を介してそれぞれ車両の駆動輪に駆動力を伝達可能なハイブリッド自動車において、変速機から取り出した動力を作業装置に伝達可能なPTO装置を備えたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126318号公報
【特許文献2】特開2007−261491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば図6に示すように、上記のような所謂デュアルクラッチ式変速機が適用されたパラレル型ハイブリッド自動車に、PTO装置10を搭載することが考えられる。図6に示すように、変速機2は、エンジン1と第1クラッチ3Aを介して接続する第1歯車機構21Aと、エンジン1と第2クラッチ3Bを介して接続する第2歯車機構22Aと、をそなえて構成される。なお、変速機2の出力トルクは、プロペラシャフト5に伝達され、デファレンシャル6を介して駆動輪7に伝達される。
【0008】
このようなデュアルクラッチ式の変速機2に、PTO装置10を搭載する場合、モータ4は、第1歯車機構21Aの入力軸(第1入力軸)21と第2歯車機構22Aの入力軸(第2入力軸)22との何れかの外周に装備することになる。第1入力軸21と第2入力軸22とを同軸に配置する場合、例えば、第1入力軸21をインナ軸に第2入力軸22をアウタ軸に配置することができる。この場合、モータ4は、アウタ軸である第2入力軸22の外周に装備することになる。
【0009】
一方、PTO装置10は、第1歯車機構21A及び第2歯車機構22Aの構成上の制約で、モータ4が接続されない第1歯車機構21Aの側から動力を取り出さなければならない場合もある。
このような場合、PTO装置10は、第1歯車機構21Aにはモータ4のトルクが直接入力されないので、モータ4のトルクによってPTO装置10を作動させるには何らかの工夫が必要になる。
【0010】
ハイブリッド自動車にPTO装置10を搭載するメリットは、エンジン1に替えてモータ4を用いて静かで排気のない状態で動力の取り出すことや、或いは、モータ4のトルクでエンジン1のトルクをアシストして静かで排気を低減すると共に燃費の低減を図った動力の取り出すことが行なえる点にある。
【0011】
そこで、できるだけモータの出力トルクによりPTO装置を駆動したいが、例えばモータに電力を供給するバッテリの充電状態などの制約条件によっては、モータの出力トルクに頼れない場合があり、状況に応じたPTO装置の駆動モードの切替が必要になる。このため、PTO装置の作動中にも駆動モードの切替を速やか且つ円滑に行なえるようにして、駆動モードの切替が、PTO装置の作動に極力影響しないようにしたい。
【0012】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、デュアルクラッチ式変速機とPTO装置とを装備したパラレル型ハイブリッド自動車において、エンジンのトルクとモータのトルクとを選択的に用いてさまざまな駆動モードでPTO装置を作動させることができるようにすると共に、駆動モードの切替が、PTO装置の作動に極力影響しないようにかかる切替を速やか且つ円滑に行なえるようにした、ハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、エンジンと、電動機又は発電機として作動するモータと、前記エンジンと第1クラッチを介して接続された第1入力軸を備え、前記第1入力軸に入力された駆動トルクを複数の変速段のいずれかで変速して出力軸から駆動輪に出力する第1歯車機構と、前記エンジンと第2クラッチを介して接続されると共に前記モータと直接接続された第2入力軸を備え、前記第2入力軸に入力された駆動トルクを複数の変速段のいずれかで変速して前記出力軸から前記駆動輪に出力する第2歯車機構と、前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とを選択的に動力接続する動力断接機構とを有する変速機と、前記第1歯車機構及び前記第2歯車機構のいずれか一方に接続されるPTO装置と、前記PTO装置に作動を要求するPTO作動要求手段と、前記モータへの電力供給源となるバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量に基づき、複数のPTO駆動モードのうちいずれか一つのPTO駆動モードを選択するPTO駆動モード選択手段と、前記PTO作動要求手段による前記PTO装置への作動要求が検出されたときには、前記PTO駆動モード選択手段により選択されるPTO駆動モードにかかわらず、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチの一方を接続状態に制御し他方を切断状態に制御すると共に、前記第1クラッチを接続状態にする場合には前記動力断接機構を接続状態に制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0014】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第1閾値以上の高レベル領域にあると、前記第2歯車機構に前記モータの駆動トルクを伝達して、前記モータの駆動トルクだけで前記PTO装置を駆動するモータ単独駆動モードを選択することが好ましい。
【0015】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第2閾値以上で第1閾値未満の中レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達すると共に前記第2歯車機構に前記モータの駆動トルクを伝達して、前記エンジンと前記モータとの駆動トルクで前記PTO装置を駆動するエンジン/モータ駆動モードを選択することが好ましい。
【0016】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第3閾値以上で第2閾値未満の低レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達して、前記エンジンの駆動トルクだけで前記PTO装置を駆動するエンジン単独駆動モードを選択することが好ましい。
【0017】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第3閾値未満の極低レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達して前記PTO装置を駆動すると共に、前記モータを発電機として作動させ前記第2歯車機構を介して前記エンジンの駆動トルクで前記モータを発電機として作動させて発電した電力で前記バッテリを充電する発電駆動モードを選択することが好ましい。
【0018】
前記PTO駆動モード選択手段により選択された前記PTO駆動モードが前記エンジンの出力トルクを使用しないモードの場合には、前記エンジンの出力トルクを0とし、前記PTO駆動モード選択手段により選択された前記PTO駆動モードが前記モータの出力トルクを使用しないモードの場合には、前記モータの出力トルクを0とするトルク制御手段をそなえていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハイブリッド自動車の制御装置によれば、PTO装置への作動要求が検出されたときには、選択されるPTO駆動モードによらず、第1クラッチ及び第2クラッチの一方を接続状態に制御し他方を切断状態に制御するので、例えばバッテリの充電状態に応じてPTO駆動モードが変更される際にも、第1クラッチ及び第2クラッチの断接切替を行なうことがなく、PTO駆動モードの切替を速やか且つ円滑に行なえ、この切替のPTO装置の作動への影響も抑制される。
【0020】
また、モータ単独駆動モードと、エンジン/モータ駆動モードと、エンジン単独駆動モードと、発電駆動モードと、を選択的に実施することにより、状況に応じてエンジンのトルクとモータのトルクとを適宜用いてPTO装置を作動させることができる。
【0021】
例えば、バッテリ充電量が第1閾値以上の高レベル領域にあると、モータ単独駆動モードを選択し、エンジンを使用せずに、モータのトルクだけでPTO装置を作動させることにより、静かで排気のない状態でPTO装置を作動させることができる。
【0022】
また、バッテリ充電量が第2閾値以上第1閾値未満の中レベル領域にあると、エンジン/モータ駆動モードを選択し、モータとエンジンとの両トルクでPTO装置を作動させることにより、静かで排気を低減すると共に燃費の低減を図りながらPTO装置を作動させることができる。
【0023】
バッテリ充電量が第3閾値以上第2閾値未満の低レベル領域にあると、エンジン単独駆動モードを選択し、エンジンのトルクだけで前記PTO装置を作動させることにより、バッテリの保護を図りながらPTO装置を作動させることができる。
【0024】
そして、バッテリ充電量が第3閾値未満の極低レベル領域にあると、発電駆動モードを選択し、エンジンのトルクで、PTO装置を作動させると共にモータを発電機として作動させてバッテリを充電するので、バッテリ充電量が回復し、モータを使用可能の状態にすると共にバッテリの保護を図りながらPTO装置を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す概略構成図であり、モータ単独駆動モードを選択した場合を示している。
【図2】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す概略構成図であり、エンジン/モータ駆動モードを選択した場合を示している。
【図3】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す概略構成図であり、エンジン単独駆動モードを選択した場合を示している。
【図4】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す概略構成図であり、発電駆動モードを選択した場合を示している。
【図5】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の制御装置による制御を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の課題を説明するパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面により本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図5は本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す図であり、これらの図に基づいて説明する。なお、ここでは、図中左側である変速機2の入力側を前方(符号F)として、図中右側である変速機2の出力側を後方(符号R)として説明する。
【0027】
本実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系は、図1の概略構成図に示すように、変速機2は、エンジン1と第1クラッチ3Aを介して接続する第1歯車機構21Aと、エンジン1と第2クラッチ3Bを介して接続する第2歯車機構22Aと、をそなえて構成される。なお、変速機2の出力トルクは、プロペラシャフト5に伝達され、デファレンシャル6を介して駆動輪7に伝達される。
【0028】
このようなデュアルクラッチ式の変速機2に、PTO装置10を搭載する場合、モータ4は、第1歯車機構21Aの入力軸(第1入力軸)21と第2歯車機構22Aの入力軸(第2入力軸)22との何れかの外周に装備することになる。第1入力軸21と第2入力軸22とを同軸に配置する場合、例えば、第1入力軸21をインナ軸に第2入力軸22をアウタ軸に配置することができる。この場合、モータ4は、アウタ軸である第2入力軸22の外周に装備することになる。
【0029】
また、第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとの間には、動力断接機構としてのシンクロナイザ28が介装されており、シンクロナイザ28を接続状態にすることにより、第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとの間で動力伝達できるようになっている。
さらに、変速機2の出力軸とプロペラシャフト5との間にも、動力断接機構としてのシンクロナイザ29が介装されており、シンクロナイザ29を遮断状態にすることにより、変速機2の出力軸の回転はプロペラシャフト5に出力されないようになっている。
【0030】
そして、図1に示すように、車両の全体を制御するために、車両ECU(車両用電子制御ユニット,制御手段)100が備えられている。この車両ECU100は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。車両ECU100は、PTO作動時に、エンジン1,クラッチユニット3,変速機2,モータ4をそれぞれ制御する。
【0031】
このために、PTOの作動を指令するPTOスイッチ(PTOSW)101からの信号と、モータ4と接続された図示しないバッテリの充電量(SOC)を検出するSOC検出部(充電量検出手段)102からの信号とが、車両ECU100に入力されるようになっている。
【0032】
なお、エンジン1の制御は、エンジン制御用のエンジンECUを通じて、また、モータ4の制御は、モータ4のインバータ制御用のインバータECUを通じて、変速機2の制御は、変速機制御用の変速機ECUを通じて、それぞれ行なってもよい。
また、SOC検出部102としては、バッテリを制御するためのバッテリECUを適用することができる。バッテリECUでは、バッテリの充放電時の電流や電圧を監視しており、これらの監視情報からSOCを算出することができる。
【0033】
車両ECU100は、PTOスイッチ101が入力されると、第1クラッチ3A及び第2クラッチ3Bのいずれか一方を接続状態に保持し、他方を遮断状態に保持して、PTO装置10を作動させる。ここでは、第2クラッチ3B及びシンクロナイザ29を遮断状態とし、第1クラッチ3A及びシンクロナイザ28を接続状態として、モータ単独駆動モードと、エンジン・モータ駆動モードと、エンジン単独駆動モードと、発電駆動モードとを選択的に実施する機能(駆動モード選択手段)が備えられている。
【0034】
モータ単独駆動モードでは、図1に示すように、モータ4だけに出力トルクを発生させ、エンジン1は出力トルク0の状態にする。
エンジン/モータ駆動モードでは、図2に示すように、エンジン1とモータ4との両方に出力トルクを発生させる。
エンジン単独駆動モードでは、図3に示すように、エンジン1だけに出力トルクを発生させ、モータ4は出力トルク0の状態にする。
発電駆動モードでは、図4に示すように、エンジン1のトルクを増大させて、エンジン1のトルクでPTO装置10を作動させると共にエンジン1のトルクでモータ4を発電機として作動させてバッテリを充電する。
【0035】
車両ECU100は、SOC検出部102からのSOC情報に基づいて、これらの接続モードのいずれかを選択して、以下のような制御を実施する。
まず、SOCが第1閾値SOC1以上の高レベル領域にあると、モータ単独駆動モードを選択し、モータ4のトルクだけでPTO装置10を作動させる。
【0036】
SOCが第1閾値SOC1未満であるが第1閾値SOC1よりも低い第2閾値SOC2以上の中レベル領域にあると、エンジン/モータ駆動モードを選択し、モータ4とエンジン1との両トルクでPTO装置10を作動させる。
SOCが第2閾値SOC2未満であるが第2閾値SOC2よりも低い第3閾値SOC3以上の低レベル領域にあると、エンジン単独駆動モードを選択し、エンジン1のトルクだけでPTO装置10を作動させる。
さらに、SOCが第3閾値SOC3未満の極低レベル領域にあると、発電駆動モードを選択し、エンジン1のトルクを増大させて、エンジン1のトルクでPTO装置10を作動させると共にエンジン1のトルクでモータ4を発電機として作動させてバッテリを充電する。
【0037】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車の制御装置は上述のように構成されているので、例えば図5のフローチャートに示すように制御が行なわれる。
つまり、車両ECU100により、PTO作動要求があるか否かをPTOスイッチ101のオンオフ情報から判定する(ステップS10)。
【0038】
PTO作動要求があれば、SOCが第1閾値SOC1以上の高レベル領域にあるか否かを判定する(ステップS20)。SOCが高レベル領域にあれば、モータ単独駆動モードを選択し、モータ4のトルクだけでPTO装置10を作動させる(ステップS30)。これにより、静かで排気のない状態でPTO装置10を作動させることができる。
【0039】
SOCが高レベル領域になければ、SOCが第2閾値SOC2以上第1閾値SOC1未満の中レベル領域にあるか否かを判定する(ステップS40)。SOCが中レベル領域にあれば、エンジン/モータ駆動モードを選択し、モータ4とエンジン1との両トルクでPTO装置10を作動させる(ステップS50)。これにより、静かで排気を低減すると共に燃費の低減を図りながらPTO装置10を作動させることができる。
【0040】
SOCが高レベル領域にも中レベル領域にもなければ、SOCが第3閾値SOC3以上第2閾値SOC2未満の低レベル領域にあるか否かを判定する(ステップS60)。SOCが低レベル領域にあれば、エンジン単独駆動モードを選択し、エンジン1のトルクだけでPTO装置10を作動させる(ステップS70)。これにより、バッテリの保護を図りながらPTO装置10を作動させることができる。
【0041】
そして、SOCが高レベル領域にも中レベル領域にも低レベル領域にもなければ、SOCは第3閾値SOC3未満の極低レベル領域にあるので、発電駆動モードを選択し、エンジン1のトルクでPTO装置10を作動させると共にモータ4を発電機として作動させてバッテリを充電する(ステップS80)。これにより、バッテリ充電量が回復し、モータ4を使用可能の状態にすると共にバッテリの保護を図りながらPTO装置10を作動させることができる。
【0042】
PTO装置10への作動要求が検出されたときには、選択されるPTO駆動モードによらず、第1クラッチ3A及び第2クラッチ3Bの一方を接続状態に制御し他方を切断状態に保持するので、バッテリの充電状態に応じてPTO駆動モードが変更される際にも、第1クラッチ3A及び第2クラッチ3Bの断接切替を行なうことがなく、PTO駆動モードの切替を速やか且つ円滑に行なえ、この切替のPTO装置10の作動への影響も抑制される。
【0043】
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変更して実施しうるものである。
【0044】
例えば、車両ECU100は、PTOスイッチ101が入力されると、第2クラッチ3Bを遮断状態とし、第1クラッチ3Aを接続状態とする例を説明したが、第2クラッチ3Bを接続状態とし、第1クラッチ3Aを遮断状態としてもよい。この場合には、シンクロナイザ29を遮断状態とし、シンクロナイザ28については接続状態でも遮断状態でもかまわない。
【0045】
また、上記実施形態では、前進6速段のデュアルクラッチ式の変速機を例示したが、変速段数はこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン(内燃機関)
2 デュアルクラッチ式変速機
3 クラッチユニット
3A 第1クラッチ
3B 第2クラッチ
4 モータ(電動発電機)
5 プロペラシャフト
6 デファレンシャル
7 駆動輪
10 PTO装置
21A 第1歯車機構
21 第1入力軸
22A 第2歯車機構
22 第2入力軸
28,29 動力断接機構としてのシンクロナイザ
100 車両ECU(制御手段)
101 PTOスイッチ(PTOSW)
102 SOC検出部(充電量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
電動機又は発電機として作動するモータと、
前記エンジンと第1クラッチを介して接続された第1入力軸を備え、前記第1入力軸に入力された駆動トルクを複数の変速段のいずれかで変速して出力軸から駆動輪に出力する第1歯車機構と、前記エンジンと第2クラッチを介して接続されると共に前記モータと直接接続された第2入力軸を備え、前記第2入力軸に入力された駆動トルクを複数の変速段のいずれかで変速して前記出力軸から前記駆動輪に出力する第2歯車機構と、前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とを選択的に動力接続する動力断接機構とを有する変速機と、
前記第1歯車機構及び前記第2歯車機構のいずれか一方に接続されるPTO装置と、
前記PTO装置に作動を要求するPTO作動要求手段と、
前記モータへの電力供給源となるバッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量に基づき、複数のPTO駆動モードのうちいずれか一つのPTO駆動モードを選択するPTO駆動モード選択手段と、
前記PTO作動要求手段による前記PTO装置への作動要求が検出されたときには、前記PTO駆動モード選択手段により選択されるPTO駆動モードにかかわらず、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチの一方を接続状態に制御し他方を切断状態に制御すると共に、前記第1クラッチを接続状態にする場合には前記動力断接機構を接続状態に制御する制御手段と、を備えている
ことを特徴とする、ハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第1閾値以上の高レベル領域にあると、前記第2歯車機構に前記モータの駆動トルクを伝達して、前記モータの駆動トルクだけで前記PTO装置を駆動するモータ単独駆動モードを選択する
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項3】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第2閾値以上で第1閾値未満の中レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達すると共に前記第2歯車機構に前記モータの駆動トルクを伝達して、前記エンジンと前記モータとの駆動トルクで前記PTO装置を駆動するエンジン/モータ駆動モードを選択する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項4】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第3閾値以上で第2閾値未満の低レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達して、前記エンジンの駆動トルクだけで前記PTO装置を駆動するエンジン単独駆動モードを選択する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項5】
前記PTO駆動モード選択手段は、前記充電量検出手段により検出された前記バッテリ充電量が第3閾値未満の極低レベル領域にあると、前記第1歯車機構に前記エンジンの駆動トルクを伝達して前記PTO装置を駆動すると共に、前記モータを発電機として作動させ前記第2歯車機構を介して前記エンジンの駆動トルクで前記モータを発電機として作動させて発電した電力で前記バッテリを充電する発電駆動モードを選択する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項6】
前記PTO駆動モード選択手段により選択された前記PTO駆動モードが前記エンジンの出力トルクを使用しないモードの場合には、前記エンジンの出力トルクを0とし、前記PTO駆動モード選択手段により選択された前記PTO駆動モードが前記モータの出力トルクを使用しないモードの場合には、前記モータの出力トルクを0とするトルク制御手段をそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95239(P2013−95239A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239031(P2011−239031)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】