説明

ハイブリッド車両の冷却システム

【課題】ハイブリッド車両において、コールドスタート時の燃費向上を図るとともに、正常走行時には、室内暖房性能の低下を最小限にとどめつつ、モータと変速機構の熱を円滑に冷却させるハイブリッド車両の冷却システムを提供する。
【解決手段】本発明のハイブリッド車両の冷却システムは、エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の冷却システムであって、前記エンジンの冷却水により室内暖房を図るヒーターコアと、前記エンジンからの冷却水を分岐して前記ヒーターコアとともに供給を受けるように前記ヒーターコアと並列に設けられ、前記モータと変速機構を冷却させたATFが通過するように構成され、前記エンジンからの冷却水と前記ATFが熱交換するように構成された熱交換器と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の冷却システムに係り、より詳しくは、エンジンとモータの動力を駆動力として使用し、エンジンから変速機に連結される動力伝達経路上に従来のトルクコンバータを使用しない形式のハイブリッド車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、内燃機関であるエンジンからの動力と電気で駆動されるモータからの動力を共に利用して車両が駆動されるように構成されたものであり、エンジンとモータおよび変速機は、動力を発生させて駆動輪に持続的に供給する過程で熱が発生するため、冷却させるための冷却システムが必要である。
ハイブリッド車両は色々な種類のパワートレインによって構成され、エンジンからの動力とモータからの動力を従来の自動変速機と類似するメカニズムを通じて駆動輪に引き出すことができるようにするものである。この中でも、従来の自動変速機の構成において、比較的多くのエネルギを消耗し、発熱量の多いトルクコンバータを排除した変速機構がある。
【0003】
図1は、エンジン500からの動力をクラッチ502を介して変速機構504に伝達できるように構成されたもので、変速機構504にはクラッチ502と変速機との間に位置するモータ506からの動力も伝達できるように構成されている。変速機構504は、従来の自動変速機の構成からトルクコンバータを排除し、残りの歯車列と摩擦要素および油圧制御装置などに該当する構成だけからなっている。
【0004】
上記のようなパワートレインを搭載したハイブリッド車両における冷却対策は、エンジン500に従来と同様エンジン500の内部を循環する冷却水による水冷方式を適用し、ウォーターポンプ508が冷却水を循環させることで、冷却水がエンジン500を通過しながらエンジン500を冷却し、その熱でヒーターコア510を通過しながら室内暖房を図り、また一部はETC(Electronic Throttle Control:512)装置を通過しながらスロットルボディーの凍結が防止でき、エンジン用ラジエータ514を通過しながら冷却水を冷却させるようになっている。
【0005】
一方、モータ506と変速機構504も冷却が必要であり、従来は、図示したように、エンジン用ラジエータ514内にオイルクーラー516を取り付け、モータ506と変速機構504を循環するATF(Automatic Transmission Fluid)をオイルクーラー516に循環させることによって冷却がなされている。
【0006】
しかし、上記のような構成では、車両のコールドスタート時にATFの温度が迅速に正常レベルに上昇し難く、この場合、ATFの粘性が大きいため、動力損失が大きいので燃費に不利な側面がある。
図1の右側には、モータ506を駆動するための電気動力部品518およびISG(Integrated Starter Generator:520)を冷却するための電装用ラジエータ522とウォーターポンプ524が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−216791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するように構成されたハイブリッド車両において、コールドスタート時には、ATFを迅速に正常レベルの温度に上昇させるようにして摩擦損失の低減による燃費向上を図るようにし、正常走行時には、車両の室内暖房性能の低下を最小化しつつ、モータと変速機構の熱を円滑に冷却させるようにしたハイブリッド車両の冷却システムを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の冷却システムであって、エンジンの冷却水により室内暖房を図るヒーターコアと、エンジンからの冷却水を分岐してヒーターコアとともに供給を受けるようにヒーターコアと並列に設けられ、モータと変速機構を冷却させたATFが通過するように構成され、エンジンからの冷却水とATFが熱交換するように構成された熱交換器と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0010】
ヒーターコアはエンジンと冷却水連結管によって連結され、熱交換器は冷却水連結管から分岐した分岐連結管に連結され、分岐連結管は冷却水連結管より小さい直径を有すること、を特徴とする。
【0011】
分岐連結管は、冷却水連結管の直径の20〜60%の範囲の直径を有することを特徴とする。
【0012】
エンジンの冷却水を冷却するためのエンジン用ラジエータと、冷却水をポンピングするように備えられたウォーターポンプと、冷却水の温度に応じて冷却水をエンジン用ラジエータに供給する状態を転換するサーモスタットと、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
ヒーターコアとは並列に、熱交換器と直列に連結され、熱交換器を通過する冷却水が通過するように設けられたETCをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するように構成されたハイブリッド車両において、コールドスタート時には、ATFを迅速に正常レベルの温度に上昇させて摩擦損失の低減による燃費向上を図り、正常走行時には、車両の室内暖房性能の低下を最小限にとどめ、モータと変速機構の熱を円滑に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術によるハイブリッド車両の冷却システムを説明する図である。
【図2】本発明によるハイブリッド車両の冷却システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両に関するものである。
本発明による実施形態は、図2に示すように、エンジン1の冷却水の伝達を受け、室内暖房を図るように設けられたヒーターコア3と、エンジン1からの冷却水をヒーターコア3と分岐して供給を受けるようにヒーターコア3と並列に設けられ、モータ5と変速機構7を冷却させたATFが通過するように構成され、エンジン1からの冷却水とATFが互いに熱交換するように構成された熱交換器9とを含んで構成される。
変速機構7は、上述したように、従来の自動変速機の構成からトルクコンバータを除いた構成となっている。
【0017】
ヒーターコア3はエンジン1と冷却水連結管11によって連結され、熱交換器9は冷却水連結管11から分岐した分岐連結管13に連結され、分岐連結管13は冷却水連結管11の直径より小さい直径を有する。
すなわち、エンジン1からの冷却水は主にヒーターコア3に流れ、熱交換器9には相対的に少ない量の冷却水が流れるようにして、ヒーターコア3の暖房性能を大きく低減させないようにしつつ、コールドスタート時には、熱交換器9でモータ5と変速機構7を流れるATFを迅速に加熱して、ATFの粘性を迅速に正常レベルに下げることによって、摩擦損失の低減による燃費向上の効果をもたらすようにし、正常運転時には、モータ5と変速機構7から発生する熱を熱交換器9によって円滑に冷却させるようにする。
【0018】
ここで、分岐連結管13に流動する相対的に少ない量の冷却水によってもモータ5と変速機構7を冷却させるATFの冷却が円滑になされるのは、パワートレインにおいて、相当な発熱があり、多くのエネルギを消耗するトルクコンバータが排除された状態で、相対的に熱の発生が少ないモータ5と変速機構7だけを冷却させるためである。
すなわち、本発明は、従来のトルクコンバータを排除したハイブリッド車両のパワートレインにおいて、ヒーターコア3の暖房性能の低下を最小限にとどめつつ、コールドスタート時にモータ5と変速機構7の迅速なウォームアップと、正常運転時の適切な冷却性能の確保ができるように最適化したものである。
分岐連結管13は、冷却水連結管11の直径を20〜60%の範囲内で縮小した直径を有することが好ましい。
【0019】
また、図2には、エンジン1の冷却水を冷却するためのエンジン用ラジエータ15と、冷却水をポンピングするように備えられたウォーターポンプ17と、冷却水の温度に応じて冷却水をエンジン用ラジエータ15に供給する状態を転換するサーモスタット19とが備えられており、エンジン用ラジエータ15の側面には電装用ラジエータ21を別途に備えて、モータ5を駆動するのに必要な電気動力部品23とISG25を冷却させるようにしている。勿論、電装用ラジエータ21からISG25と電気動力部品23に冷却水をポンピングするためのウォーターポンプ27が別に備えられている。
【0020】
一方、ヒーターコア3とは並列に、熱交換器9とは直列に連結され、熱交換器9を通過する冷却水が通過するようにETC29が設けられた構造を採り、スロットルボディーの凍結を防止できるようにしている。
勿論、ETC29も熱交換器9と直列に設けられるため、分岐連結管13を通じて供給される比較的に少ない量の冷却水が通過するようになる。
【符号の説明】
【0021】
1、500 ・・・エンジン
3、510 ・・・ヒーターコア
5、506 ・・・モータ
7、504 ・・・変速機構
9 ・・・熱交換器
11 ・・・冷却水連結管
13 ・・・分岐連結管
15、514 ・・・エンジン用ラジエータ
17、27、508,524 ・・・ウォーターポンプ
19 ・・・サーモスタット
21、522 ・・・電装用ラジエータ
23、518 ・・・電気動力部品
25、520 ・・・ISG
29、512 ・・・ETC
516・・・オイルクーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータの動力をクラッチと変速機構を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の冷却システムであって、
前記エンジンの冷却水により室内暖房を図るヒーターコアと、
前記エンジンからの冷却水を分岐して前記ヒーターコアとともに供給を受けるように前記ヒーターコアと並列に設けられ、前記モータと変速機構を冷却させたATFが通過するように構成され、前記エンジンからの冷却水と前記ATFが熱交換するように構成された熱交換器と、
を含んで構成されることを特徴とするハイブリッド車両の冷却システム。
【請求項2】
前記ヒーターコアは前記エンジンと冷却水連結管によって連結され、
前記熱交換器は前記冷却水連結管から分岐した分岐連結管に連結され、
前記分岐連結管は前記冷却水連結管より小さい直径を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却システム。
【請求項3】
前記分岐連結管は、前記冷却水連結管の直径の20〜60%の範囲の直径を有することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の冷却システム。
【請求項4】
前記エンジンの冷却水を冷却するためのエンジン用ラジエータと、
前記冷却水をポンピングするように備えられたウォーターポンプと、
前記冷却水の温度に応じて前記冷却水を前記エンジン用ラジエータに供給する状態を転換するサーモスタットと、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の冷却システム。
【請求項5】
前記ヒーターコアとは並列に、前記熱交換器と直列に連結され、前記熱交換器を通過する冷却水が通過するように設けられたETCをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−81949(P2012−81949A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188187(P2011−188187)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】