説明

ハイブリッド車両の制御装置および制御方法

【課題】蓄電器の充電状態の低下時に、蓄電器の充電状態を効率良く回復させることができ、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】エンジン3およびモータ4と、バッテリ52と、入力された動力を複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な変速機構とを有するハイブリッド車両Vにおいて、バッテリ52の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも小さくなったときに、充電状態SOCを回復させるために、エンジン3の燃料消費率が最小になるBSFCボトムトルクでエンジン3を運転し、モータ4による回生を行う充電優先走行を実行する。また、ハイブリッド車両Vの総合効率TEを変速段ごとに算出し、充電優先走行を実行するに際し、複数の変速段から、総合効率TEが最も大きな変速段を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関および発電可能な電動機を有するハイブリッド車両の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このハイブリッド車両の走行モードには、動力源として、内燃機関のみを用いるENG走行モードと、電動機のみを用いるEV走行モードと、内燃機関および電動機の両方を用いるHEV走行モードが含まれる。また、ハイブリッド車両は、1速段、3速段および5速段の変速段を有する第1変速機構と、2速段、4速段および6速段の変速段を有する第2変速機構を備えている。内燃機関の動力(以下「エンジン動力」という)は、第1または第2変速機構により1速段〜6速段のうちの1つの変速段で変速され、駆動輪に伝達されるとともに、電動機の動力(以下「モータ動力」という)は、第2変速機構により2速段、4速段および6速段のうちの1つで変速され、駆動輪に伝達される。
【0003】
また、車速が所定値以下のときには、ENG走行モードが選択され、エンジン動力の変速段として2速段または1速段が選択され、モータ動力の変速段として2速段が選択される。また、選択された内燃機関の変速段と駆動輪の回転数で定まる内燃機関の回転数に基づき、内燃機関の燃料消費率が最も低くなる最小燃費トルク(機関トルク)を、所定のマップを検索することによって算出する。そして、算出された最小燃費トルクが得られるように内燃機関を運転するとともに、要求トルクに対する最小燃費トルクの余剰分を、電動機によって電力に変換し、その電力がバッテリに充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリに充電された電力は、EV走行モードおよびHEV走行モードにおいて、電動機の動力に変換され、ハイブリッド車両の駆動力として用いられる。このため、ハイブリッド車両の燃費を向上させるためには、バッテリの充電状態を保ち、EV走行モードなどを適宜、選択できるようにすることが望ましい。また、バッテリの充電効率は、変速段ごとに異なる。これに対して、従来の制御装置では、ENG走行モードにおいてバッテリを充電するときに、エンジン動力の変速段を1速段または2速段に設定するとともに、モータ動力の変速段を2速段に設定しているにすぎない。このため、上述したように、内燃機関を最小燃費トルクで運転しながら、電動機によるバッテリの充電を行っても、充電効率が低いために、バッテリの充電状態を効率良く回復できないおそれがあり、ハイブリッド車両の良好な燃費を得ることができない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、蓄電器の充電状態の低下時に、蓄電器の充電状態を効率良く回復させることができ、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、動力源としての内燃機関3および発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、入力された動力を複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DW,DWに伝達可能な変速機構71とを有するハイブリッド車両の制御装置1において、蓄電器の充電状態SOCが所定の第1下限値SOCL1よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態SOCを回復させるために、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに、内燃機関3の動力の一部を用いた電動機4による回生を行う充電優先走行を実行する充電優先走行実行手段(ECU2)と、ハイブリッド車両Vの総合効率TEを変速段ごとに算出する総合効率算出手段(ECU2、図3のステップ9)と、充電優先走行を実行するに際し、複数の変速段から、算出された総合効率TEが最も大きな変速段を選択する変速段選択手段(ECU2、図3のステップ10)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このハイブリッド車両の制御装置によれば、内燃機関の動力や電動機の動力が、変速機構により、複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で駆動輪に伝達される。また、蓄電器の充電状態が所定の第1下限値よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態を回復させるために、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費線近傍で内燃機関を運転するとともに、内燃機関の動力の一部を用いた電動機による回生を行う充電優先走行を実行する。
【0009】
このように、内燃機関を最適燃費線近傍で運転するので、内燃機関の燃費を向上させることができる。また、充電優先走行を実行することによって、内燃機関に要求されている出力と発生している出力との差が、電動機による回生に用いられ、回生により発生した電力が蓄電器に充電される。したがって、第1下限値を下回った蓄電器の充電状態を確実に回復させることができる。
【0010】
ここで、電動機による回生によって蓄電器に充電された電力は、将来的に電動機の動力に変換され、ハイブリッド車両を駆動するのに用いられる。このため、ハイブリッド車両の燃費を向上させるためには、その時点における内燃機関の効率だけではなく、電動機の発電効率および蓄電器の充電効率などを含む、ハイブリッド車両全体としての効率である総合効率を高める必要がある。また、これらの電動機の発電効率や蓄電器の充電効率は、変速段ごとに異なる。
【0011】
本発明では、充電優先走行を実行するに際し、ハイブリッド車両の総合効率を変速段ごとに算出し、これらの複数の変速段から、算出された総合効率が最も大きな変速段を選択する。したがって、ハイブリッド車両の総合効率を最大にすることができ、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0012】
前記目的を達成するために、請求項2に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(実施形態における(以下、本項において同じ)クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御装置1において、蓄電器の充電状態SOCが所定の第1下限値SOCL1よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態SOCを回復させるために、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに、内燃機関3の動力の一部を用いた電動機4による回生を行う充電優先走行を実行する充電優先走行実行手段(ECU2、図3のステップ4)と、ハイブリッド車両Vの総合効率TEを変速段ごとに算出する総合効率算出手段(ECU2、図4のステップ17)と、充電優先走行を実行するに際し、複数の変速段から、算出された総合効率TEが最も大きな変速段を選択する変速段選択手段(ECU2、図4のステップ18)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このハイブリッド車両の制御装置によれば、内燃機関の機関出力軸と第1変速機構の第1入力軸が第1クラッチによって互いに係合するとともに、機関出力軸と第2変速機構の第2入力軸との係合が第2クラッチで解放されているときには、内燃機関の動力は、第1変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。また、機関出力軸と第1入力軸との係合が第1クラッチで解放されるとともに、機関出力軸と第2入力軸が第2クラッチによって互いに係合しているときには、内燃機関の動力は、第2変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。また、電動機の動力は、第2変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。
【0014】
また、上述した請求項1の発明と同様、蓄電器の充電状態が所定の下限値よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態を回復させるために、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費線近傍で内燃機関を運転するとともに、内燃機関の動力の一部を用いた電動機による回生を行う充電優先走行を実行する。したがって、内燃機関の燃費を向上できるとともに、下限値を下回った蓄電器の充電状態を確実に回復させることができる。
【0015】
また、充電優先走行を実行するに際し、ハイブリッド車両の総合効率を変速段ごとに算出し、これらの複数の変速段から、算出された総合効率が最も大きな変速段を選択する。したがって、ハイブリッド車両の総合効率を最大にすることができ、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、蓄電器の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態SOCを所定時間Tref以内に所定の目標充電状態SOCMまで回復させるのに必要な必要電力EPreqを算出する必要電力算出手段(ECU2、図4のステップ13)と、複数の変速段から、電動機4による回生を行ったときに算出された必要電力EPreqを発電可能な複数の変速段を予備的に選択する予備選択手段(ECU2、図4のステップ15)と、をさらに備え、変速段選択手段は、選択された複数の変速段から、総合効率TEが最も大きな変速段を最終的に選択する(図4のステップ18)ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1下限値を下回った蓄電器の充電状態を所定時間以内に所定の目標充電状態まで回復させるのに必要な必要電力を算出するとともに、複数の変速段から、電動機による回生を行ったときに算出された必要電力を発電可能な複数の変速段を予備的に選択する。そして、選択された複数の変速段から、ハイブリッド車両の総合効率が最も大きな変速段を最終的に選択する。以上のように変速段の選択を行うことによって、蓄電器の充電状態を所定時間以内に目標充電状態まで回復させるとともに、その条件を満たす中で最大の総合効率を得ることができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、第1クラッチC1が解放され、かつ第2クラッチC2が接続されている状態において、第2入力軸32の動力が、第2変速機構31および第1変速機構11を介して、第1入力軸13に伝達されるように構成されており、変速段選択手段は、充電優先走行中、蓄電器の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも低い所定の第2下限値SOCL2よりも低くなったときに、第2変速機構31により内燃機関3の動力を変速した状態でハイブリッド車両Vが走行しているときに、第2変速機構31の変速段を1段、高速側にシフトするとともに、第1変速機構11の複数の変速段から、電動機4による回生を行ったときの蓄電器の充電効率(充電量EP)が最も大きな変速段を選択することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第2変速機構により内燃機関の動力を変速した状態でハイブリッド車両が走行しているときに、内燃機関の回転が、第1変速機構および第2変速機構で変速された後に、第1入力軸に伝達される。このため、第1入力軸の回転数は、第2変速機構の変速段が高速側にあるほど、より高くなる。したがって、充電優先走行中、蓄電器の充電状態が第1下限値SOCL1よりも低い所定の第2下限値よりも低くなったときに、第2変速機構の変速段を1段、高速側にシフトすることによって、第1入力軸の回転数を高めることができる。
【0020】
また、内燃機関の動力を第2変速機構で変速している場合には、第1変速機構で変速している場合と異なり、電動機側の第1変速機構の変速段を任意に選択することが可能である。本発明によれば、充電優先走行中、蓄電器の充電状態が第2下限値よりも低くなったときに、第1変速機構の変速段として、蓄電器の充電効率が最も大きな変速段を選択する。これにより、最も高い充電効率で、第2下限値を下回った蓄電器の充電状態を早期に回復させることができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、ハイブリッド車両V,V’には、ハイブリッド車両V,V’が走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステム66が設けられており、カーナビゲーションシステム66に記憶されたデータに基づき、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測する予測手段(ECU2)をさらに備え、予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、変速段の選択が行われることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ハイブリッド車両の走行状況が、ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータに基づき、予測手段によって予測されるとともに、予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、変速段の選択が行われる。これにより、ハイブリッド車両の走行状況に適した変速段を選択することができる。例えば、ハイブリッド車両が下り坂を走行すると予想されるときには、蓄電器の充電状態が増加することを見越して、より大きな内燃機関の動力が得られる変速段を選択したり、上り坂を走行すると予想されるときには、蓄電器の充電状態が低下することを見越して、より高い蓄電器の充電効率が得られる変速段を選択したりすることができる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、アクセルペダルの開度の変化量が所定値よりも大きいときに、充電優先走行に代えて、内燃機関3の動力を優先した動力優先走行が実行されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、アクセルペダルの開度の変化量が所定値よりも大きいとき、すなわち、運転者による加速要求が高いときには、充電優先走行に代えて、内燃機関の動力を優先した動力優先走行が実行される。これにより、運転者の加速要求に見合ったより大きなトルクを駆動輪に伝達することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、蓄電器の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも低いときに、内燃機関3の停止が禁止されることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、蓄電器の充電状態が第1下限値よりも低いとき、すなわち充電優先走行を行うときには、内燃機関の停止が禁止される。これにより、電動機による回生を確実に行い、蓄電器の充電状態を回復させることができる。
【0027】
請求項8に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、内燃機関3が停止した状態で電動機4の動力によって走行するEV走行中において、蓄電器の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも低くなったときに、電動機4の動力によって内燃機関3を始動させることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、EV走行中において、蓄電器の充電状態が下限値よりも低くなったときに、電動機の動力によって内燃機関を始動させる。このように、内燃機関を強制的に始動させることによって、始動した内燃機関の動力を用いて電動機による回生を確実に行えるようにすることで、蓄電器の充電状態を回復させることができる。
【0029】
前記目的を達成するために、請求項9に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(実施形態における(以下、本項において同じ)クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両Vの制御方法において、蓄電器の充電状態SOCが所定の第1下限値SOCL1よりも低くなったときに、蓄電器の充電状態SOCを回復させるために、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに、内燃機関3の動力の一部を用いた電動機4による回生を行う充電優先走行を実行し(図3のステップ10)、ハイブリッド車両Vの総合効率を変速段ごとに算出し(図3のステップ9)、蓄電器の充電状態SOCを所定時間Tref以内に所定の目標充電状態SOCMまで回復させるのに必要な必要電力(必要電力EPcmd)を算出し(図3のステップ3)、複数の変速段から、電動機による回生を行ったときに算出された必要電力を発電可能な複数の変速段を予備的に選択し(図3のステップ6)、充電優先走行を実行するに際し、選択された複数の変速段から、算出された総合効率が最も大きな変速段を最終的に選択する(図3のステップ10)ことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、前述した請求項2および3と同様の作用が得られる。したがって、内燃機関の燃費を向上できるとともに、第1下限値を下回った蓄電器の充電状態を確実に回復させることができる。さらに、蓄電器の充電状態を所定時間以内に目標充電状態まで回復させることができるとともに、その条件を満たす中で最大の総合効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態による制御装置を適用したハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態による制御装置のECUなどを示すブロック図である。
【図3】ハイブリッド車両の制御処理を示すフローチャートである。
【図4】充電優先走行制御処理を示すフローチャートである。
【図5】充電量マップの一例である。
【図6】本発明による制御装置を適用した、図1とは異なるハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施形態により限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが、含まれる。図1に示すハイブリッド車両Vは、一対の駆動輪DW(一方のみ図示)および一対の従動輪(図示せず)などから成る四輪車両であり、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3および発電可能な電動機(以下「モータ」という)4を備えている。エンジン3は、複数の気筒を有するガソリンエンジンであり、クランク軸3aを有している。エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期などは、図2に示す制御装置1のECU2によって制御される。
【0033】
モータ4は、いわゆるモータジェネレータである、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、固定されたステータ4aと、回転自在のロータ4bを有している。このステータ4aは、回転磁界を発生させるためのものであり、鉄心や三相コイルで構成されている。また、ステータ4aは、ハイブリッド車両Vに固定されたケーシングCAに取り付けられるとともに、パワードライブユニット(以下「PDU」という)51を介して、充電および放電可能なバッテリ52に電気的に接続されている。このPDU51は、インバータなどの電気回路によって構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。上記のロータ4bは、磁石などで構成されており、ステータ4aに対向するように配置されている。
【0034】
以上の構成のモータ4では、ECU2によるPDU51の制御によって、バッテリ52からPDU51を介してステータ4aに電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ4bが回転する。この場合、ステータ4aに供給される電力が制御されることによって、ロータ4bの動力が制御される。
【0035】
また、ステータ4aへの電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ4bが回転しているときに、ECU2によるPDU51の制御によって、回転磁界が発生し、それに伴い、ロータ4bに入力された動力が電力に変換され、発電が行われるとともに、発電した電力がバッテリ52に充電される。また、ステータ4aを適宜、制御することによって、ロータ4bに伝達される動力が制御される。以下、モータ4で発電するとともに、発電した電力をバッテリ52に充電することを適宜、「回生」という。
【0036】
さらに、ハイブリッド車両Vは、エンジン3およびモータ4の動力をハイブリッド車両Vの駆動輪DWに伝達するための駆動力伝達装置を備えており、この駆動力伝達装置は、第1変速機構11および第2変速機構31などから成るデュアルクラッチトランスミッションを有している。
【0037】
第1変速機構11は、入力された動力を、1速段、3速段、5速段および7速段の1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの1速段〜7速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第1変速機構11は、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置された第1クラッチC1、遊星歯車装置12、第1入力軸13、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16を有している。
【0038】
第1クラッチC1は、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC1aと、第1入力軸13の一端部に一体に取り付けられたインナーC1bなどで構成されている。第1クラッチC1は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第1入力軸13を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者13、3aの間を遮断する。
【0039】
遊星歯車装置12は、シングルプラネタリ式のものであり、サンギヤ12aと、このサンギヤ12aの外周に回転自在に設けられた、サンギヤ12aよりも歯数の多いリングギヤ12bと、両ギヤ12a、12bに噛み合う複数(例えば3つ)のプラネタリギヤ12c(2つのみ図示)と、プラネタリギヤ12cを回転自在に支持する回転自在のキャリア12dとを有している。
【0040】
サンギヤ12aは、第1入力軸13の他端部に一体に取り付けられている。第1入力軸13の他端部にはさらに、前述したモータ4のロータ4bが一体に取り付けられており、第1入力軸13は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。以上の構成により、第1入力軸13、サンギヤ12aおよびロータ4bは、互いに一体に回転する。
【0041】
また、リングギヤ12bには、ロック機構BRが設けられている。このロック機構BRは、電磁式のものであり、ECU2によりON/OFFされ、ON状態のときに、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、OFF状態のときに、リングギヤ12bの回転を許容する。なお、ロック機構BRとして、シンクロクラッチを用いてもよい。
【0042】
キャリア12dは、中空の回転軸17に一体に取り付けられている。回転軸17は、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0043】
3速ギヤ14は、回転軸17に一体に取り付けられており、回転軸17およびキャリア12dと一体に回転自在である。また、5速ギヤ15および7速ギヤ16は、第1入力軸13に回転自在に設けられている。さらに、これらの3速ギヤ14、7速ギヤ16、および5速ギヤ15は、遊星歯車装置12と第1クラッチC1の間に、この順で並んでいる。
【0044】
また、第1入力軸13には、第1シンクロクラッチS1および第2シンクロクラッチS2が設けられている。第1シンクロクラッチS1は、スリーブS1a、シフトフォークおよびアクチュエータ(いずれも図示せず)を有している。第1シンクロクラッチS1は、ECU2による制御により、スリーブS1aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、3速ギヤ14または7速ギヤ16を、第1入力軸13に選択的に係合させる。
【0045】
第2シンクロクラッチS2は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されており、ECU2による制御により、スリーブS2aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、5速ギヤ15を第1入力軸13に係合させる。
【0046】
また、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16には、第1受動ギヤ18、第2受動ギヤ19および第3受動ギヤ20がそれぞれ噛み合っており、これらの第1〜第3受動ギヤ18〜20は、出力軸21に一体に取り付けられている。出力軸21は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第1入力軸13と平行に配置されている。また、出力軸21には、ギヤ21aが一体に取り付けられており、このギヤ21aは、差動装置を有するファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸21は、これらのギヤ21aやファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに連結されている。
【0047】
以上の構成の第1変速機構11では、遊星歯車装置12、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18によって1速段および3速段のギヤ段が構成され、5速ギヤ15および第2受動ギヤ19によって5速段のギヤ段が、7速ギヤ16および第3受動ギヤ20によって7速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第1入力軸13に入力された動力は、これらの1速段、3速段、5速段および7速段の1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0048】
前述した第2変速機構31は、入力された動力を、2速段、4速段および6速段の1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの2速段〜6速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第2変速機構31は、第2クラッチC2、第2入力軸32、第2入力中間軸33、2速ギヤ34、4速ギヤ35、および6速ギヤ36を有しており、第2クラッチC2および第2入力軸32は、クランク軸3aと同軸状に配置されている。
【0049】
第2クラッチC2は、第1クラッチC1と同様、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC2aと、第2入力軸32の一端部に一体に取り付けられたインナーC2bで構成されている。第2クラッチC2は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第2入力軸32を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者32と3aとの間を遮断する。
【0050】
第2入力軸32は、中空状に形成され、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。また、第2入力軸32の他端部には、ギヤ32aが一体に取り付けられている。
【0051】
第2入力中間軸33は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第2入力軸32および前述した出力軸21と平行に配置されている。第2入力中間軸33には、ギヤ33aが一体に取り付けられており、ギヤ33aには、アイドラギヤ37が噛み合っている。アイドラギヤ37は、第2入力軸32のギヤ32aに噛み合っている。なお、図1では、図示の便宜上、アイドラギヤ37は、ギヤ32aから離れた位置に描かれている。第2入力中間軸33は、これらのギヤ33a、アイドラギヤ37およびギヤ32aを介して、第2入力軸32に連結されている。
【0052】
2速ギヤ34、6速ギヤ36、および4速ギヤ35は、第2入力中間軸33に回転自在に設けられ、この順で並んでおり、前述した第1受動ギヤ18、第3受動ギヤ20および第2受動ギヤ19にそれぞれ噛み合っている。さらに、第2入力中間軸33には、第3シンクロクラッチS3および第4シンクロクラッチS4が設けられている。両シンクロクラッチS3およびS4は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されている。
【0053】
第3シンクロクラッチS3は、ECU2による制御により、そのスリーブS3aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、2速ギヤ34または6速ギヤ36を、第2入力中間軸33に選択的に係合させる。第4シンクロクラッチS4は、ECU2による制御により、そのスリーブS4aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、4速ギヤ35を第2入力中間軸33に係合させる。
【0054】
以上の構成の第2変速機構31では、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18によって2速段のギヤ段が構成され、4速ギヤ35および第2受動ギヤ19によって4速段のギヤ段が、6速ギヤ36および第3受動ギヤ20によって6速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第2入力軸32に入力された動力は、ギヤ32a、アイドラギヤ37およびギヤ33aを介して第2入力中間軸33に伝達され、第2入力中間軸33に伝達された動力は、これらの2速段、4速段および6速段の1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0055】
以上のように、第1および第2変速機構11、31では、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されている。
【0056】
また、駆動力伝達装置には、リバース機構41が設けられており、リバース機構41は、リバース軸42、リバースギヤ43および第5シンクロクラッチS5を有している。リバース軸42は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第1入力軸13と並行に配置されている。リバース軸42には、ギヤ42aが一体に取り付けられており、ギヤ42aは、前述したアイドラギヤ37に噛み合っている。なお、図1では、図示の便宜上、ギヤ42aは、アイドラギヤ37から離れた位置に描かれている。
【0057】
リバースギヤ43は、リバース軸42に回転自在に設けられている。第5シンクロクラッチS5は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されており、ECU2による制御により、そのスリーブS5aをリバース軸42の軸線方向に移動させることによって、リバースギヤ43をリバース軸42に係合させる。
【0058】
さらに、図2に示すように、ECU2には、クランク角センサ61から、CRK信号が入力される。このCRK信号は、エンジン3のクランク軸3aの回転に伴い、所定のクランク角ごとに出力されるパルス信号である。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン回転数NEを算出する。また、ECU2には、電流電圧センサ62から、バッテリ52に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、入力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ52の充電状態SOCを算出する。
【0059】
さらに、ECU2には、バッテリ温度センサ63から、バッテリ52の温度TBを表す検出信号が入力される。また、ECU2には、アクセル開度センサ64からハイブリッド車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、車速センサ65から車速VPを表す検出信号が、入力される。また、ECU2には、カーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報を表すデータが適宜、入力される。
【0060】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ61〜65からの検出信号や、カーナビゲーションシステム66からのデータに応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両Vの動作を制御する。なお、本実施形態では、ECU2は、充電優先走行実行手段、総合効率算出手段、変速段選択手段、必要電力算出手段、予備選択手段、および予測手段に相当する。
【0061】
以上の構成のハイブリッド車両Vの運転モードには、ENG走行モード、EV走行モード、アシスト走行モード、充電走行モードおよびENG始動モードが含まれる。各運転モードにおけるハイブリッド車両Vの動作は、ECU2によって制御される。以下、これらの運転モードについて順に説明する。
【0062】
[ENG走行モード]
ENG走行モードは、エンジン3のみを動力源として用いる運転モードである。ENG走行モードでは、エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御することによって、エンジン3の動力(以下「エンジン動力」という)が制御される。また、エンジン動力は、第1または第2変速機構11、31により変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0063】
まず、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段の1つでエンジン動力を変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、上記のいずれの変速段においても、第1クラッチC1を締結状態に制御することによって、第1入力軸13をクランク軸3aに係合させるとともに、第2クラッチC2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第2入力軸32の係合を解除する。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0064】
1速段の場合には、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0065】
以上により、エンジン動力は、第1クラッチC1、第1入力軸13、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、上記のようにリングギヤ12bが回転不能に保持されているため、第1入力軸13に伝達されたエンジン動力は、サンギヤ12aとリングギヤ12bとの歯数比に応じた変速比で減速された後、キャリア12dに伝達され、さらに、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比に応じた変速比で減速された後、出力軸21に伝達される。その結果、エンジン動力は、上記の2つの変速比によって定まる1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0066】
3速段の場合には、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。
【0067】
以上により、エンジン動力は、第1入力軸13から3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。この場合、上記のように3速ギヤ14が第1入力軸13に係合しているため、サンギヤ12a、キャリア12dおよびリングギヤ12bは一体に空転する。このため、3速段の場合には、1速段の場合と異なり、エンジン動力は、遊星歯車装置12で減速されることなく、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0068】
以下同様に、5速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、5速ギヤ15のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から5速ギヤ15および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ15,19の歯数比によって定まる5速段の変速比で変速される。
【0069】
7速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、7速ギヤ16のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から7速ギヤ16および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ16,20の歯数比によって定まる7速段の変速比で変速される。
【0070】
次に、エンジン動力を第2変速機構31により2速段、4速段および6速段の1つで変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1クラッチC1を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第1入力軸13の係合を解除するとともに、第2クラッチC2を締結状態に制御することによって、第2入力軸32をクランク軸3aに係合させる。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0071】
2速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、2速ギヤ34のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2クラッチC2、第2入力軸32、ギヤ32a、アイドラギヤ37、ギヤ33a、第2入力中間軸33、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、エンジン動力は、2速ギヤ34と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる2速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0072】
以下同様に、4速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、4速ギヤ35のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から4速ギヤ35および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ35,19の歯数比によって定まる4速段の変速比で変速される。
【0073】
6速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、6速ギヤ36のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から6速ギヤ36および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ36,20の歯数比に応じて定まる6速段の変速比で変速される。
【0074】
[EV走行モード]
EV走行モードは、モータ4のみを動力源として用いる運転モードである。EV走行モードでは、バッテリ51からモータ4に供給される電力を制御することによって、モータ4の動力(以下「モータ動力」という)が制御される。また、モータ動力が、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段の1つで変速され、駆動輪DWに伝達される。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1および第2クラッチC1、C2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aに対する第1および第2入力軸13、32の係合を解除する。これにより、モータ4および駆動輪DWとエンジン3との間が遮断されるので、モータ動力がエンジン3に無駄に伝達されることがない。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0075】
1速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0076】
以上により、モータ動力は、第1入力軸、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0077】
3速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、モータ動力は、第1入力軸13から、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0078】
5速段または7速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様にして、ロック機構BR、第1および第2シンクロクラッチS1、S2を制御する。これにより、モータ動力は、5速段または7速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0079】
[アシスト走行モード]
アシスト走行モードは、エンジン3をモータ4でアシストする運転モードである。アシスト走行モードでは、基本的に、エンジン3の良好な燃費が得られるように、エンジン3のトルク(以下「エンジントルク」という)を制御する。また、運転者から駆動輪DWに要求されるトルク(以下「要求トルク」という)TRQに対するエンジントルクの不足分が、モータ4のトルク(以下「モータトルク」という)によって補われる。要求トルクTRQは、検出されたアクセル開度APに応じて算出される。
【0080】
アシスト走行モード中、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11で設定されている変速段の変速比と同じになる。一方、エンジン動力を第2変速機構31によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0081】
[充電走行モード]
充電走行モードは、エンジン動力の一部をモータ4で電力に変換し、発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ52に充電する運転モードである。充電走行モードでは、要求トルクTRQと車速VPで定まる要求駆動力に対するエンジン動力の余剰分が、電力に変換され、バッテリ52に充電される。また、第1および第2変速機構11、31の変速段に応じて、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第1〜第5シンクロクラッチS1〜S5が、エンジン走行モードやEV走行モードの場合と同様にして制御される。
【0082】
この場合、アシスト走行モードの場合と同様、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の変速段の変速比と同じになる。また、エンジン動力を第2変速機構12によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0083】
なお、充電走行モード中、エンジン動力を第2変速機構31によって駆動輪DWに伝達する場合において、モータ4と駆動輪DWとの変速比をエンジン3と駆動輪DWとの変速比と同じ値に制御するときには、第1クラッチC1により第1入力軸13をクランク軸3aに係合させる。これにより、エンジン動力の一部が、第1クラッチC1および第1入力軸13を介してモータ4のロータ4bに伝達される。
【0084】
[ENG始動モード]
ENG始動モードは、エンジン3を始動するための運転モードである。ENG始動モードにおいて、ハイブリッド車両Vの停止中にエンジン3を始動する場合には、第1クラッチC1を締結状態に制御することによって、第1入力軸13をクランク軸3aに係合させるとともに、第2クラッチC2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第2入力軸32の係合を解除する。また、第1変速機構11の変速段をすべて解除(ニュートラル)するとともに、バッテリ51からモータ4に電力を供給し、モータ動力を発生させる。
【0085】
以上により、モータ動力は、第1入力軸13および第1クラッチC1を介してクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aが回転する。その状態で、前述したCRK信号に応じ、エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御することによって、エンジン3が始動される。この場合、第1入力軸13を介してサンギヤ12aに伝達されたモータ動力は、プラネタリギヤ12cを介してリングギヤ12bに伝達されるものの、上記のようにリングギヤ12bの回転が許容されていることでリングギヤ12bが空転するので、キャリア12dなどを介して駆動輪DWに伝達されることがない。
【0086】
また、前述したEV走行モード中にエンジン3を始動する場合には、解放状態にある第1クラッチC1を締結し、第1入力軸13をクランク軸3aに係合させる。これにより、モータ動力がクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aが回転する。その状態で、CRK信号に応じ、エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御することによって、エンジン3が始動される。この場合、第1クラッチC1の締結力を漸増させることによって、モータ4から駆動輪DWに伝達されるトルクが急減することがなくなるので、良好なドライバビリティを確保することができる。
【0087】
なお、EV走行中、ハイブリッド車両Vが極低速状態にある場合や、第1クラッチC1の温度が高い場合などにおいて、エンジン3を始動するときには、第1クラッチC1を締結せずに、第2クラッチC2を締結するとともに、エンジン3を始動するために偶数段の変速段を選択することによっても、エンジン3を始動することが可能である。
【0088】
次に、図3〜図5を参照しながら、ECU2で実行されるハイブリッド車両Vの制御処理について説明する。この制御処理は、バッテリ52の充電状態SOCに応じて充電優先走行を実行するとともに、第1および第2変速機構11,31の変速段を選択するものであり、所定時間ごとに実行される。
【0089】
図3はそのメインルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、バッテリ52の充電状態SOCが、バッテリ52の充電が必要とされるような低い所定の第1下限値SOCL1よりも低いか否かを判別する。この答がNOのときには、ステップ2において、通常走行制御を実行し、本処理を終了する。
【0090】
この通常走行制御では、車速VP、要求トルクTRQおよび充電状態SOCに応じて、運転モードとして、基本的に、ENG走行モード、EV走行モードまたはアシスト走行モードのいずれかが選択されるとともに、選択された運転モードにおいて、後述する総合効率が最も高い変速段が選択される。
【0091】
一方、上記ステップ1の答がYESで、SOC<SOCL1のときには、ステップ3において、エンジン3を運転状態にした後、ステップ4に進む。具体的には、それまでの運転モードがEV走行モードで、エンジン3が停止している場合には、エンジン3を強制的に始動させる。一方、エンジン3が運転中の場合には、その停止を禁止し、エンジン3を運転状態に保持する。
【0092】
ステップ4では、充電優先走行制御を実行する。図4は、そのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ11において、最適燃費制御を実行する。この最適燃費制御では、エンジン回転数NEに応じて、エンジン3の最小の燃料消費率が得られるBSFCボトムトルクするとともに、エンジントルクを、算出されたBSFCボトムトルクに制御する。
【0093】
次に、ステップ12において、所定の目標充電状態SOCMからそのときの充電状態SOCを減算することによって、不足電力SOCshtを算出する。次に、ステップ13において、算出された不足電力SOCshtを所定時間Trefで除算することによって、バッテリ52の充電状態SOCを所定時間Trefで目標充電状態SOCMに回復させるのに必要な単位時間当たりの必要電力EPreqを算出する。
【0094】
次に、ステップ14において、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて、バッテリ52の充電量EPを算出する。この算出は、第1変速機構11の変速段と第2変速機構31の変速段との組み合わせ(以下「変速パターン」という)ごとに、図5に示すような充電量マップを用いて行われる。この充電量マップは、エンジン3およびモータ4の変速段がともに3速段である変速パターンの場合の例であり、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、バッテリ52の単位時間当たりの充電量EPを実験により予め求め、マップとして設定したものである。なお、充電量マップは、実際には、すべての変速パターンに対応する複数のマップで構成されており、これらのマップを用いて、それぞれの変速パターンごとに充電量EPが算出される。
【0095】
次に、ステップ15において、上記の複数の変速パターンから、算出された充電量EPが必要電力EPreq以上である条件を満たす変速パターンを予備的に選択する。
【0096】
次に、ステップ16において、予備選択された変速パターンごとに、予測効率Ehatをそれぞれ算出する。この予測効率Ehatは、バッテリ52に充電された電力が将来的にモータ4での動力変換に用いられるときの効率に相当し、車速VP、要求トルクTRQおよび充電状態SOCなどに応じて算出される。
【0097】
次に、ステップ17において、予備選択された変速パターンごとに、総合効率TEをそれぞれ算出する。この総合効率TEは、ハイブリッド車両Vにおけるエネルギ源としての燃料が、最終的に走行エネルギとして用いられるまでの総合的な効率に相当する。総合効率TEには、エンジン3の効率、モータ4の効率、バッテリ52の充電効率や第1および第2変速機構11,31の効率などが含まれ、これらの効率は、車速VPおよび要求トルクTRQなどに応じて算出される。そして、総合効率TEは、算出されたこれらの効率と、ステップ16で算出された予測効率Ehatを用いて算出される。
【0098】
次に、ステップ18において、予備選択された変速パターンから、算出された総合効率TEが最も大きな変速パターンを最終的に選択し、本処理を終了する。
【0099】
以上のようにして選択された変速パターンを用いて、充電走行モードによる走行が実行され、BSFCボトムトルクと要求トルクTRQとの差が、モータ4による回生に用いられ、回生により発生した電力がバッテリ52に充電される。それにより、バッテリ52の充電状態SOCを所定時間Tref以内に目標充電状態SOCMまで回復させるとともに、その条件を満たす中で最大の総合効率TEを得ることができる。
【0100】
なお、上記の充電優先走行において、エンジン動力の変速段として第2変速機構31の2速段または4速段が選択されている状態で、充電状態SOCがさらに低下し、下限値SOCL1よりも低い所定の第2下限値SOCL2よりも低くなったときには、以下の制御を実行する。まず、第2変速機構31のエンジン動力の変速段を1段、高速側にシフトする(例えば4速段→6速段)とともに、車速VPおよび要求トルクTRQに応じ、シフト後の変速段と第1変速機構11のモータ4側の複数の変速段との組み合わせ(変速パターン)に対応する前述した充電量マップを用いて、変速パターンごとに充電量EPを検索する。そして、これらの複数の変速パターンから、検索された充電量EPが最も大きな変速パターンを選択する。これにより、第2下限値SOCL2を下回ったバッテリ52の充電状態SOCを早期に回復させることができる。
【0101】
また、ECU2は、前述したカーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報に基づいて、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測する。そして、予測されたハイブリッド車両Vの走行状況に応じて、変速パターンの選択を行う。具体的には、ハイブリッド車両Vが下り坂を走行すると予想されたときには、エンジントルクが最も大きな変速パターンを選択し、上り坂を走行すると予想されたときには、図5に示すような充電量マップを参照して、充電量EPが最も大きな変速パターンを選択する。
【0102】
また、上述した充電優先走行中にアクセル開度の変化量ΔAPが所定値よりも大きくなった場合には、エンジントルクが最も大きな変速パターンが選択される。
【0103】
以上のように、本実施形態によれば、バッテリ52の充電状態SOCが第1下限値SOCL1よりも低い状態では、エンジントルクがBSFCボトムトルクになるように制御されるので、エンジン3の燃費を向上させることができる。
【0104】
また、BSFCボトムトルクと要求トルクTRQとの差が、モータ4による回生に用いられ、回生により発生した電力がバッテリ52に充電されるので、第1下限値SOCL1を下回ったバッテリ52の充電状態SOCを確実に回復させることができる。
【0105】
また、充電優先走行を実行するに際し、第1下限値SOCLを下回ったバッテリ52の充電状態SOCを所定時間Tref以内に目標充電状態SOCMまで回復させることが可能な複数の変速パターンを予備的に選択し、予備選択された複数の変速パターンから、ハイブリッド車両Vの総合効率TEが最も大きな変速パターンを最終的に選択するので、バッテリ52の充電状態SOCを所定時間Tref以内に目標充電状態SOCMまで回復させることができるとともに、その条件を満たす中で最大の総合効率TEを得ることができる。
【0106】
さらに、充電優先走行において、エンジン動力の変速段として第2変速機構31の2速段または4速段が選択されている状態で、充電状態SOCがさらに低下し、下限値SOCL1よりも低い所定の第2下限値SOCL2よりも低くなったときには、第2変速機構31のエンジン動力の変速段を1段、高速側にシフトするとともに、シフト後の変速段に対して最も大きな充電量EPが得られる第1変速機構11のモータ4側の変速段を選択するので、第2下限値SOCL2を下回ったバッテリ52の充電状態SOCを早期に回復させることができる。
【0107】
また、カーナビゲーションシステム66で予測されたハイブリッド車両Vの走行状況に応じて、変速パターンの選択を行うので、ハイブリッド車両Vが下り坂を走行すると予想されたときには、エンジントルクが最も大きな変速パターンを選択し、上り坂を走行すると予想されたときには、充電量EPが最も大きな変速パターンを選択することができる。
【0108】
また、上述した充電優先走行中にアクセル開度の変化量ΔAPが所定値よりも大きくなった場合には、充電優先走行を終了し、前述した動力優先走行を開始するので、運転者の加速要求に見合ったより大きなトルクを駆動輪DWに伝達することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0109】
さらに、充電状態SOCが第1下限値SOCL1を下回ったときに、それまでの運転モードがEV走行モードで、エンジン3が停止している場合には、エンジン3を強制的に始動させ、エンジン3が運転中の場合には、その停止を禁止し、エンジン3を運転状態に保持するので、第1下限値SOCL1を下回ったバッテリ52の充電状態SOCを回復させることができる。
【0110】
また、本発明は、図6に示すハイブリッド車両V’にも適用可能である。同図において、図1に示すハイブリッド車両Vと同じ構成要素については、同じ符号を付している。図6に示すハイブリッド車両V’は、ハイブリッド車両Vと比較して、前述した第1および第2変速機構11、31に代えて、変速機構71を備える点が主に異なっている。
【0111】
この変速機構71は、有段式の自動変速機であり、入力軸72および出力軸73を有している。入力軸72は、クラッチCを介してクランク軸3aに連結されており、入力軸72には、モータ4のロータ4bが一体に取り付けられている。クラッチCは、第1および第2クラッチC1、C2と同様の乾式多板クラッチである。
【0112】
また、出力軸73には、ギヤ73aが一体に取り付けられており、このギヤ73aは、前述したファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸73は、これらのギヤ73aやファイナルギヤFGを介して駆動輪DW、DWに連結されている。以上の構成の変速機構71では、入力軸72には、エンジン動力およびモータ動力が入力されるとともに、入力された動力は、複数の変速段(例えば1速段〜7速段)の1つで変速され、駆動輪DW、DWに伝達される。また、変速機構71の動作は、ECU2によって制御される。
【0113】
このハイブリッド車両V’に本発明による制御装置を適用した場合にも、運転モードの選択や、変速段の選択、走行モードの選択が、上述した制御装置1の場合と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。これにより、上述した実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0114】
なお、変速機構71を、エンジン動力およびモータ動力の双方を変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成しているが、エンジン動力のみを変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成してもよい。あるいは、エンジン動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構と、モータ動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構を、それぞれ別個に設けてもよい。
【0115】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、第1および第2変速機構11、31のそれぞれの複数の変速段を、奇数段および偶数段に設定しているが、これとは逆に、偶数段および奇数段に設定してもよい。さらに、実施形態では、第1および第2変速機構11、31として、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されたタイプのものを用いているが、出力軸が別個に設けられたタイプのものを用いてもよい。この場合、第1〜第4シンクロクラッチS1〜S4を、第1入力軸13および第2入力中間軸33ではなく、出力軸に設けてもよい。さらに、実施形態では、クラッチC、第1および第2クラッチC1、C2は、乾式多板クラッチであるが、湿式多板クラッチや、電磁クラッチでもよい。
【0116】
また、実施形態では、総合効率TEの算出を、エンジン3の効率、モータ4の効率、バッテリ52の充電効率および第1・第2変速機構11,31の効率に応じて行っているが、これらに加えてまたは代えて、他の適当な効率に応じて行ってもよい。
【0117】
さらに、実施形態では、本発明における電動機として、ブラシレスDCモータであるモータ4を用いているが、発電可能な他の適当な電動機、例えばACモータを用いてもよい。また、実施形態では、本発明における蓄電器は、バッテリ52であるが、充電および放電可能な他の適当な蓄電器、例えばキャパシタでもよい。さらに、実施形態では、本発明における内燃機関として、ガソリンエンジンであるエンジン3を用いているが、ディーゼルエンジンや、LPGエンジンを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0118】
V ハイブリッド車両
V’ ハイブリッド車両
1 制御装置
2 ECU(充電優先走行実行手段、総合効率算出手段、変速段選択手段、
必要電力算出手段、予備選択手段、予測手段)
3 エンジン
3a クランク軸(機関出力軸)
4 モータ
DW 駆動輪
11 第1変速機構
13 第1入力軸
31 第2変速機構
32 第2入力軸
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
52 バッテリ(蓄電器)
66 カーナビゲーションシステム
71 変速機構
SOC 充電状態
SOCL1 第1下限値
TE 総合効率
Tref 所定時間
EPreq 必要電力
EP 充電量(充電効率)
SOCL2 第2下限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としての内燃機関および発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、入力された動力を複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な変速機構とを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記蓄電器の充電状態が所定の第1下限値よりも低くなったときに、当該蓄電器の充電状態を回復させるために、前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに、前記内燃機関の動力の一部を用いた前記電動機による回生を行う充電優先走行を実行する充電優先走行実行手段と、
前記ハイブリッド車両の総合効率を前記変速段ごとに算出する総合効率算出手段と、
前記充電優先走行を実行するに際し、前記複数の変速段から、前記算出された総合効率が最も大きな変速段を選択する変速段選択手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記蓄電器の充電状態が所定の第1下限値よりも低くなったときに、当該蓄電器の充電状態を回復させるために、前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに、前記内燃機関の動力の一部を用いた前記電動機による回生を行う充電優先走行を実行する充電優先走行実行手段と、
前記ハイブリッド車両の総合効率を前記変速段ごとに算出する総合効率算出手段と、
前記充電優先走行を実行するに際し、前記複数の変速段から、前記算出された総合効率が最も大きな変速段を選択する変速段選択手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記蓄電器の充電状態が前記第1下限値よりも低くなったときに、当該蓄電器の充電状態を所定時間以内に所定の目標充電状態まで回復させるのに必要な必要電力を算出する必要電力算出手段と、
前記複数の変速段から、前記電動機による回生によって前記算出された必要電力を発電可能な複数の変速段を予備的に選択する予備選択手段と、をさらに備え、
前記変速段選択手段は、前記選択された複数の変速段から、前記総合効率が最も大きな変速段を最終的に選択することを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1クラッチが解放され、かつ前記第2クラッチが接続されている状態において、前記第2入力軸の動力が、前記第2変速機構および前記第1変速機構を介して、前記第1入力軸に伝達されるように構成されており、
前記変速段選択手段は、前記充電優先走行中、前記第2変速機構により前記内燃機関の動力を変速した状態で、前記蓄電器の充電状態が前記第1下限値よりも低い所定の第2下限値よりも低くなったときに、前記第2変速機構の変速段を1段、高速側にシフトするとともに、前記第1変速機構の複数の変速段から、前記電動機による回生を行ったときの前記蓄電器の充電効率が最も大きな変速段を選択することを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記ハイブリッド車両には、当該ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステムが設けられており、
当該カーナビゲーションシステムに記憶されたデータに基づき、前記ハイブリッド車両の走行状況を予測する予測手段をさらに備え、
前記予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、前記変速段の選択が行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
アクセルペダルの開度の変化量が所定値よりも大きいときに、前記充電優先走行に代えて、前記内燃機関の動力を優先した動力優先走行が実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記蓄電器の充電状態が前記第1下限値よりも低いときに、前記内燃機関の停止が禁止されることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記内燃機関が停止した状態で前記電動機の動力によって走行するEV走行中において、前記蓄電器の充電状態が前記第1下限値よりも低くなったときに、前記電動機の動力によって前記内燃機関を始動させることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御方法において、
前記蓄電器の充電状態が所定の第1下限値よりも低くなったときに、当該蓄電器の充電状態を回復させるために、前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに、前記内燃機関の動力の一部を用いた前記電動機による回生を行う充電優先走行を実行し、
前記ハイブリッド車両の総合効率を前記変速段ごとに算出し、
前記蓄電器の充電状態を所定時間以内に所定の目標充電状態まで回復させるのに必要な必要電力を算出し、
前記複数の変速段から、前記電動機による回生を行ったときに前記算出された必要電力を発電可能な複数の変速段を予備的に選択し、
前記充電優先走行を実行するに際し、前記選択された複数の変速段から、前記算出された総合効率が最も大きな変速段を最終的に選択することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−52802(P2013−52802A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193023(P2011−193023)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】