説明

ハイブリッド車両の駆動装置及びハイブリッド車両

【課題】既存の変速機にモータジェネレータを追加したハイブリッド車両において停車時にも発電をできるようにする。
【解決手段】ハイブリッド車両1の駆動装置は、自動変速機(AMT)20と、自動変速機20の出力軸22から出力された動力を駆動輪55,56が連結されている駆動軸53,54に伝達するディファレンシャル装置50と、入力軸21から出力軸22を経由して駆動軸53,54に至る動力の伝達経路の途中に動力を授受可能に配置され前記伝達経路に動力を出力する力行と前記伝達経路により伝達されるエンジン2の動力による発電とを行うモータジェネレータ73と、前記伝達経路におけるエンジン2の動力をモータジェネレータ73に伝達する経路に対して駆動軸53,54から駆動輪55,56に動力を伝達する経路を切断可能にする駆動軸断続用クラッチ61とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータジェネレータとを駆動源として備えたハイブリッド車両に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の駆動装置としては、AT(Automatic Transmission)、CVT(Continuously Variable Transmission)、DCT(Dual Clutch Transmission)等があるが、いずれも高価である。
一方、MT(Manual Transmission)構造のAMT(Automated Manual Transmission)はコストが圧倒的に安い。しかし、AMTでは、変速時にクラッチを切ることで一時的なトルク切れが起き、これが快適性を失わせる恐れがある。
【0003】
これに対して、AMTをベースとしたハイブリッド車両には、ディファレンシャルギヤ等のエンジンの動力の伝達経路上にモータジェネレータを取り付けることで、変速時にモータジェネレータから動力を補給してトルク切れを防止するものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−186740号公報
【特許文献2】特開2006−36165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような技術では、発電時にエンジンを回転させてモータジェネレータを回転させるため、エンジンの動力の伝達経路上にあるディファレンシャルギヤ等も動作してしまうことになる。
そのため、このような技術を採用したハイブリッド車両では、停車時には、車両が動かないようにするため発電をすることができないといった課題がある。
本発明の目的は、AMTを含め、既存の変速機を小変更してモータジェネレータを追加したハイブリッド車両において停車時にも発電をできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本実施態様によれば、第1クラッチを介してエンジンの動力が入力される入力軸、前記入力軸に対向して配置され動力を駆動輪側に出力する出力軸、前記入力軸の動力を異なる変速比により変速して前記出力軸に伝達する変速機構とを有する変速機と、前記出力軸から出力された動力を駆動輪が連結されている駆動軸に伝達するディファレンシャル装置と、前記入力軸から前記出力軸を経由して前記駆動軸に至る前記動力の伝達経路の途中に動力を授受可能に配置され前記伝達経路に動力を出力する力行と前記伝達経路を通して伝達される前記エンジンの動力による発電とを行うモータジェネレータとを有するハイブリッド車両の駆動装置において、前記伝達経路における前記エンジンの動力を前記モータジェネレータに伝達する経路に対して前記駆動軸から前記駆動輪に動力を伝達する経路を切断可能にする第2クラッチを有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置を提供できる。
【0007】
ここで、変速機はAT、AMT、CVT、DCT等を対象としている。
また、本実施態様において、前記モータジェネレータは、前記出力軸から出力された動力が伝達される前記ディファレンシャル装置のリングギヤに噛合するギヤを介して動力が授受可能になっており、前記第2クラッチは、前記駆動軸上に配置されている。
【0008】
また、本実施態様において、前記モータジェネレータは、前記出力軸に固定されるギヤであって動力を前記ディファレンシャル装置へ出力する出力ギヤとは別のギヤを介して前記伝達経路と動力が授受可能になっており、前記第2クラッチは、前記出力軸上において前記出力ギヤと前記別のギヤとの間に配置されている。
また、本実施態様において、車両が停車している場合、前記第2クラッチを切断する。
また、本実施態様によれば、そのようなハイブリッド車両の駆動装置を有することを特徴とするハイブリッド車両を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本実施態様によれば、AMTを含め、AT、CVT,DCT等を小変更した変速機を搭載したハイブリッド車両において、停車時に第2クラッチを切断状態にすることで、停車時にエンジンの動力をモータジェネレータに伝達して発電を行いつつ、そのエンジンの動力が駆動輪に伝達されるのを防止できる。
また、本実施態様によれば、第2クラッチを備えるといった簡単な構成によりそのように停車時に発電を行いつつエンジンの動力が駆動輪に伝達されるのを防止できる。
【0010】
また、本実施態様によれば、モータジェネレータが、出力軸から出力された動力が入力されるディファレンシャル装置のリングギヤに噛合するギヤを介して動力が授受可能になっている構成においても、第2クラッチを駆動軸上に配置するといった簡単な構成により、停車時に発電を行いつつエンジンの動力が駆動輪に伝達されるのを防止できる。
また、本実施態様によれば、ディファレンシャル装置周囲の空間にモータジェネレータを配置することで既存の変速機を利用しつつも、車両の停車時に発電を行うことができる。
【0011】
また、本実施態様によれば、モータジェネレータが、出力軸に固定されるギヤであって、ディファレンシャル装置に動力を伝達する出力ギヤとは別のギヤを介して伝達経路と動力が授受可能になっている構成においても、出力軸上において出力ギヤと別のギヤとの間に第2クラッチを配置するといった簡単な構成により、車両の停車時に発電を行いつつエンジンの動力が駆動輪に伝達されるのを防止できる。
【0012】
また、本実施態様によれば、出力軸周囲の空間にモータジェネレータを配置することで既存の変速機を利用しつつも、車両の停車時に発電を行うことができる。
また、本実施態様によれば、発電時に、ディファレンシャル装置が回転しないために、駆動損失を低減できる。
また、本実施態様によれば、車両が停車している場合、第2クラッチを切断することで、モータジェネレータにエンジンの動力が伝達されている最中に車両が動いてしまうのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のハイブリッド車両の駆動系の構成例を示す図である。
【図2】駆動軸断続用クラッチの構成及び動作を示す図である。
【図3】パワーコントロールユニット及びクラッチ制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の変形例のハイブリッド車両の駆動系の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、ハイブリッド車両である。
図1は、ハイブリッド車両1の駆動系の構成例を示す。
図1に示すように、この車両は、大別して、エンジン2、自動変速機(AMT)20、ディファレンシャル装置50、及びモータジェネレータ73等を含むモータ駆動部70を有している。また、この車両は、スケルトン図として示されるように、エンジン2のクランク軸3と自動変速機20の入力軸21との間に設けられクランク軸3と入力軸21とを断続可能にする第1クラッチ4を有している。
【0015】
第1クラッチ4は、例えば、クランク軸3の端部に連結されたフライホイールにプレッシャプレートを設け、フライホイール及びプレッシャプレート間にクラッチディスクを配設している。そして、第1クラッチ4は、クラッチ用アクチュエータ5により断続動作がなされる。ここで、クラッチ用アクチュエータ5は、AMT制御部45によりその断続動作が制御される。
【0016】
自動変速機20は、第1クラッチ4を介してエンジン2の動力が入力される入力軸21と、この入力軸21に平行に配置されて変速後の動力を駆動輪55,56に出力するための出力軸22とを有している。入力軸21は、入力端を第1クラッチ4のクラッチディスクに連結している。
そして、自動変速機20は、入力軸21の動力を異なる変速比により変速して出力軸22に伝達する変速機構として、1速ギヤ列23、2速ギヤ列24、3速ギヤ列25、及び4速ギヤ列26を有している。この自動変速機20では、入力軸21の入力端側(エンジン2側)から、1速ギヤ列23、2速ギヤ列24、3速ギヤ列25、及び4速ギヤ列26の順番で配置されている。
【0017】
1速ギヤ列23は、入力軸21に回転自在に支持された1速入力ギヤ31と、この1速入力ギヤ31に噛合し出力軸22に固定された1速出力ギヤ32とからなる。2速ギヤ列24は、入力軸21に回転自在に支持された2速入力ギヤ33と、この2速入力ギヤ33に噛合し出力軸22に固定された2速出力ギヤ34とからなる。3速ギヤ列25は、入力軸21に回転自在に支持された3速入力ギヤ35と、この3速入力ギヤ35に噛合し出力軸22に固定された3速出力ギヤ36とからなる。4速ギヤ列26は、入力軸21に回転自在に支持された4速入力ギヤ37と、この4速入力ギヤ37に噛合し出力軸22に固定された4速出力ギヤ38とからなる。そして、出力軸22の出力端には出力ギヤ(終減速駆動ギヤ)39が固定されている。
【0018】
また、自動変速機20は、これらの変速ギヤ列23,24,25,26を切り換える装置として、入力軸21上の1速入力ギヤ31と2速入力ギヤ33との間に1速入力ギヤ31と2速入力ギヤ33とを切り換える第1同期装置41を有し、入力軸21上の3速入力ギヤ35と4速入力ギヤ37との間に3速入力ギヤ35と4速入力ギヤ37とを切り換える第2同期装置42とを有している。さらに、このような構成に対応して、自動変速機20は、第1同期装置41に1速と2速との切換動作をさせる第1同期装置用アクチュエータ43と、第2同期装置42に3速と4速との切換動作をさせる第2同期装置用アクチュエータ44と、第1及び第2同期装置用アクチュエータ43,44並びにクラッチ用アクチュエータ5の駆動を制御するAMT制御部45とを有している。
【0019】
なお、自動変速機20の構成は、このような構成に限定されず、公知の自動変速機(AT、CVT、DCT等)の構成を採用しても良い。また、第1クラッチ41は、摩擦クラッチ以外にトルクコンバータ等の流体クラッチ等であっても良い。
また、この車両1は、ディファレンシャル装置50のギヤケース51に固定されているリングギヤ52が出力軸22の出力ギヤ39に噛合している。ディファレンシャル装置50では、ギヤケース51内の図示しない差動ギヤに左右の駆動軸53,54の一端側が連結されている。この駆動軸53,54の他端側には駆動輪55,56が連結されている。
【0020】
そして、この車両1は、第2クラッチとして駆動軸53の途中に位置されて該駆動軸53を断続する駆動軸断続用クラッチ61と、駆動軸断続用クラッチ61を断続動作させるクラッチ用アクチュエータ63と、クラッチ用アクチュエータ63の駆動を制御するクラッチ制御部65とを有している。
図2は、駆動軸断続用クラッチ61の構成例を示す。
【0021】
図2に示すように、駆動軸断続用クラッチ61は、分断された駆動軸53の各端部53a,53bに取り付けられて互いに対向する2つの外歯ギヤ61a,61bと、駆動軸53の軸方向に移動自在に支持されたスリーブ(その内側面に内歯ギヤ、又はスプライン溝が形成されている)61cとを有している。
このような構成により、駆動軸断続用クラッチ61は、クラッチ用アクチュエータ63によりスリーブ61cが駆動軸53の軸方向で移動させられることで、図2(a)のように2つの外歯ギヤ61a,61bそれぞれとスリーブ61cとが噛合して駆動軸53を接続状態にし、又は、図2(b)のように2つの外歯ギヤ61a,61bに対して同時にスリーブ61cが噛合しないことで駆動軸53を切断状態にする。
【0022】
なお、駆動軸断続用クラッチ61はこの構成例に限定されないことは言うまでもない。すなわち、駆動軸断続用クラッチ61は駆動軸53を断続可能な構成であれば他の構成であっても良い。例えば、2つのスプラインをスライダーにより連結するクラッチ、ドグクラッチ、湿式又は乾式クラッチ、同期機構を有するギヤ構造のクラッチ、2wayクラッチ等を駆動軸断続用クラッチ61として採用しても良い。
【0023】
図1に戻り、また、この車両は、モータ駆動部70として、ディファレンシャル装置50のリングギヤ52に噛合するモータ側ギヤ71と、モータ側ギヤ71が回転軸72に取り付けられたモータジェネレータ73と、モータジェネレータ73を駆動するパワーコントロールユニット74と、パワーコントロールユニット74を介してモータジェネレータ73に対して充放電するバッテリ75とを有している。
【0024】
パワーコントロールユニット74は、昇圧コンバータ、インバータ及びモータジェネレータECU(Electronic Control Unit)等で構成されている。このパワーコントロールユニット74には、バッテリ75の充放電状態(SOC(State Of Charging))を検出するバッテリ状態検出センサ81からの検出信号、車速センサ82からの検出信号、車体のフードの開閉状態を検出するフード開閉状態検出センサ83からの検出信号、ブレーキ操作検出センサ84からの検出信号、アクセルペダル操作状態検出センサ85からの検出信号がそれぞれ入力される。
【0025】
例えば、ブレーキ操作検出センサ84は、ブレーキペダル操作によるブレーキ状態を検出しても良く、パーキングブレーキ(パーキングのシフト位置)によるブレーキ状態を検出しても良い。
以上のような構成において、自動変速機20では、車速やアクセルペダルの操作量、シフトレバーのシフト位置等の種々の情報を基に、AMT制御部45により第1及び第2同期装置用アクチュエータ43,44並びにクラッチ用アクチュエータ5の駆動が制御されて、車速やアクセルペダルの操作量、シフトレバーのシフト位置等に応じた変速位置になる。具体的には、変速時には、クラッチ用アクチュエータ5により第1クラッチ4が切断状態になるとともに、第1及び第2同期装置用アクチュエータ43,44により同期装置41,42が動作して所望の変速ギヤ列が選択される。そして、その選択後、クラッチ用アクチュエータ5によりクラッチ4が接続状態となる。これにより、入力軸21に入力されたエンジン2からの動力が、選択された変速ギヤ列を介して出力軸22に伝達されるようになる。
【0026】
さらに、パワーコントロールユニット74は、バッテリ状態検出センサ81からの検出信号等を基に、バッテリ75に充放電させるとともにモータジェネレータ73を力行制御又は発電制御する。具体的には、パワーコントロールユニット74は、エンジン2の駆動力にモータジェネレータ73の駆動力を付加する力行制御を行ったり、モータジェネレータ73単独で駆動力を付与する力行制御を行ったりする。
【0027】
例えば、パワーコントロールユニット74は、通常時にはエンジン2の駆動力により車両を走行させて、加速時等の大きい駆動力が必要となるときにモータジェネレータ73の駆動力を付加する力行制御を行う。また、パワーコントロールユニット74は、発進時にモータジェネレータ73単独で駆動力を付与する力行制御を行う。
さらに、本実施形態では、パワーコントロールユニット74は、自動変速機20が変速時に一時的にクラッチ4を切断している間、モータジェネレータ73を力行制御して、トルク切れを運転者が感じないようにモータジェネレータ73により駆動力を付与する。
【0028】
そして、本実施形態では、パワーコントロールユニット74は、停車中、必要に応じて、自動変速機20を介してエンジン2と連結状態にあるモータジェネレータ73、すなわち、エンジン2の動力により回転されるモータジェネレータ73を発電制御してバッテリ75への充電を行う。
図3は、そのときのパワーコントロールユニット74及びクラッチ制御部65の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、先ずステップS1において、パワーコントロールユニット74は、各種センサからの各種信号を取得する。
続くステップS2において、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得したバッテリ状態検出センサ81からの検出信号を基にSOC値が低下しているか否かを判定する。例えば、パワーコントロールユニット74は、その検出信号が、予め設定したバッテリ充電を行うためのしきい値よりも小さくなったとき、SOC値が低下しているとの判定を行う。パワーコントロールユニット74は、SOC値が低下していると判定すると、ステップS3に進む。また、パワーコントロールユニット74は、SOC値が低下していないと判定すると、該図3に示す処理を終了する。
【0030】
ステップS3では、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得した車速センサ82からの検出信号を基に停車しているか否かを判定する。パワーコントロールユニット74は、停車していると判定すると、ステップS4に進む。また、パワーコントロールユニット74は、停車していないと判定すると、該図3に示す処理を終了する。
なお、このステップS3では、ニュートラルのシフト位置を検出したときに停車していると判定しても良い。
【0031】
ステップS4では、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得したフード開閉状態検出センサ83からの検出信号を基に車体のフードが閉じているか否かを判定する。パワーコントロールユニット74は、車体のフードが閉じていると判定すると、ステップS5に進む。また、パワーコントロールユニット74は、車体のフードが閉じていないと判定すると、該図3に示す処理を終了する。
【0032】
ステップS5では、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得したブレーキ操作検出センサ84からの検出信号を基にブレーキがONか否かを判定する。パワーコントロールユニット74は、ブレーキがONであると判定すると、ステップS6に進む。また、パワーコントロールユニット74は、ブレーキがOFFであると判定すると、該図3に示す処理を終了する。
【0033】
ステップS6では、クラッチ制御部65は、クラッチ用アクチュエータ63を駆動制御して駆動軸断続用クラッチ61を動作させて駆動軸53を切断状態にする。
続くステップS7において、パワーコントロールユニット74は、自動変速機20を介してエンジン2に連結されているモータジェネレータ73を発電制御してバッテリ75への充電を開始する。
【0034】
例えば、パワーコントロールユニット74は、充電を行うためにモータジェネレータ73に発電信号を出力するが、前記ステップS6では、クラッチ制御部65は、その発電信号を検出することで駆動軸53を切断状態にするようにしても良い。
続くステップS8において、パワーコントロールユニット74は、充電が完了したか否かを判定する。具体的には、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得したバッテリ状態検出センサ81からの検出信号を基に充電が完了したか否かを判定する。例えば、パワーコントロールユニット74は、その検出信号が、予め設定した充電完了を判定するしきい値よりも大きくなったとき、充電が完了しているとの判定を行う。パワーコントロールユニット74は、充電が完了していると判定すると、ステップS10に進む。また、パワーコントロールユニット74は、充電が完了していないと判定すると、ステップS9に進む。
【0035】
ステップS9では、パワーコントロールユニット74は、前記ステップS1で取得したアクセルペダル操作状態検出センサ85からの検出信号を基にアクセルペダルがON(アクセルペダルが踏まれている又はアクセルスロットが開)か否かを判定する。パワーコントロールユニット74は、アクセルペダルがOFF(アクセルペダルが踏まれていない又はアクセルスロットが閉)であると判定すると、前記ステップS8から再び処理を開始する。また、パワーコントロールユニット74は、アクセルペダルがON(アクセルペダルが踏まれている又はアクセルスロットが開)であると判定すると、ステップS10に進む。
【0036】
ステップS10では、パワーコントロールユニット74は、バッテリ75への充電を終了する。
続くステップS11において、クラッチ制御部65は、クラッチ用アクチュエータ63を駆動制御して駆動軸断続用クラッチ61を動作させて駆動軸53を接続状態にする。
例えば、ステップS11では、クラッチ制御部65は、前記ステップS10におけるバッテリ75への充電を終了する際のパワーコントロールユニット74からの発電信号を検出することで駆動軸53を接続状態にするようにしても良い。
【0037】
以上のような図3に示す処理により、SOC値が低下し、車両が停車し、車体のフードが閉じており、かつブレーキがONであるとき(ステップS1乃至ステップS5)、クラッチ制御部65は、駆動軸断続用クラッチ61を動作させて駆動軸53を切断状態にする(ステップS6)。そして、パワーコントロールユニット74は、自動変速機20を介してエンジン2に連結されているモータジェネレータ73を発電制御してバッテリ75への充電を開始する(ステップS7)。
【0038】
その後、充電が完了したとき(ステップS8)、又はアクセルペダルがONになったとき(ステップS9)、パワーコントロールユニット74は、バッテリ75への充電を終了する(ステップS10)。そして、クラッチ制御部65は、駆動軸断続用クラッチ61を動作させて駆動軸53を接続状態にする(ステップS11)。
これにより、ハイブリッド車両1では、停車時に、エンジン2により回転されるモータジェネレータ73により発電を行っている期間中、駆動軸断続用クラッチ61により駆動軸53を切断状態にしている。
【0039】
以上のようにして、本実施形態では、AMTを適用したハイブリッド車両において、入力軸21から出力軸22を経由して駆動軸53に至る動力の伝達経路におけるエンジン2の動力をモータジェネレータ73に伝達する経路に対して駆動軸53から駆動輪55に動力を伝達する経路を駆動軸断続用クラッチ61により切断可能にしている。
具体的には、モータジェネレータ73は、ディファレンシャル装置50のリングギヤ52に噛合するモータ側ギヤ71を介して動力が授受可能になっており、駆動軸断続用クラッチ61は、駆動軸53上に配置されている。
【0040】
これにより、本実施形態では、AMTを含め、AT、CVT,DCT等を小変更した変速機を搭載したハイブリッド車両において、停車時に、駆動軸断続用クラッチ61を切断状態にすることで、エンジン2の動力をモータジェネレータ73に伝達して発電を行いつつ、そのエンジン2の動力が駆動輪55,56に伝達されるのを防止できる。
また、本実施形態では、駆動軸断続用クラッチ61を備えるといった簡単な構成により、すなわち、既存の自動変速機の構造の設計変更を最小限にして、そのように停車時に発電を行いつつエンジン2の動力が駆動輪55,56に伝達されるのを防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、モータジェネレータ73が、ディファレンシャル装置50のリングギヤ52に噛合するモータ側ギヤ71を介して動力が授受可能になっている構成においても、駆動軸断続用クラッチ61を駆動軸53上に配置するといった簡単な構成により、停車時に発電を行いつつエンジン2の動力が駆動輪55,56に伝達されるのを防止できる。
【0042】
また、本実施形態では、ディファレンシャルギヤ50周囲の空間にモータジェネレータ73を配置することで既存の変速機を利用しつつも、停車時に発電を行うことができる。
また、本実施形態では、ブレーキがONになっていることを条件に発電を行っているため、駆動軸断続用クラッチ61に湿式クラッチを使用する場合、不用意な車両の移動を防止できる。
【0043】
例えば、発電量やSOC値によってはモータジェネレータ73の発電量を大きくするためエンジン2の回転数が大きくなり、湿式クラッチのフリクションで車両が動いてしまう可能性も考えられるが、ブレーキがONになっていることで、発電中にそのような理由で車両が動いてしまうのを防止できる。
さらには、坂道においては駆動軸断続用クラッチ61を切断すると車両が動くが、ブレーキがONになっていることで、坂道で車両が動いてしまうのを防止しつつ発電が行える。
【0044】
また、本実施形態では、車体のフードが閉じていることを条件に発電を行っている。
これにより、本実施形態では、車体のフードが開いている場合には、SOC値が低いときでも発電を行わないようにすることができる。よって、運転者が車両のフードを開けてフード内の覗き込んでいるようなときにエンジンが始動することを防止できる。
なお、本実施形態では、駆動軸断続用クラッチ61は、例えば、第2クラッチを実現している。
【0045】
なお、前述の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
すなわち、本実施形態では、駆動軸53に駆動軸断続用クラッチ61を設けることに限定されるものではない。すなわち、エンジン2の動力をモータジェネレータ73に伝達する一方で、エンジン2の動力を駆動輪55,56に伝達してしまうのを防止できるのであれば、他の位置にクラッチを設けても良い。
【0046】
図4は、そのような本実施形態の変形例の構成例を示す。
図4に示すように、この例では、ハイブリッド車両1は、出力軸22の回転によりモータジェネレータ73を回転駆動する構成になっている。すなわち、このハイブリッド車両1は、出力軸22における出力ギヤ39が設けてある端部とは反対側の端部からギヤ列46を介してモータジェネレータ73を回転駆動する構成になっている。ここで、ギヤ列46は、出力軸22の前記反対側の端部に固定されているギヤ47と、このギヤ47と噛合しモータジェネレータ73の回転軸72に設けられているモータ側ギヤ71とからなる。
【0047】
このような構成の場合には、ハイブリッド車両1は、出力軸22の出力端側(出力ギヤ39近傍)、すなわち、出力軸22におけるギヤ47と出力ギヤ39との間に第2クラッチ66を有する。そして、ハイブリッド車両1は、前述の実施形態と同様に、第2クラッチ66を断続動作させるクラッチ用アクチュエータ67と、クラッチ用アクチュエータ67の駆動を制御するクラッチ制御部65とを有している。
【0048】
これにより、ハイブリッド車両1では、前述の実施形態の処理と同様に、停車時に、エンジン2により回転されるモータジェネレータ73により発電を行う場合、第2クラッチ66を切断状態にすることで、出力軸22の回転がディファレンシャル装置50に駆動力が伝達されないようにする。
このような構成にすることで、モータジェネレータ73が、出力軸22に固定されるギヤであって出力ギヤ39とは別のギヤ47に噛合するモータ側ギヤ71を介して前記伝達経路と動力が授受可能になっている構成においても、出力軸22上において出力ギヤ39とギヤ47との間にクラッチ66を配置するといった簡単な構成により、すなわち例えば、既存の変速機構造の設計変更を最小限にして、停車時に発電を行いつつエンジン2の動力が駆動輪55,56に伝達されるのを防止できる。
【0049】
また、本実施形態の変形例では、出力軸22周囲の空間にモータジェネレータ73を配置することで既存の変速機を利用しつつも、車両の停車時に発電を行うことができる。
また、本実施形態の変形例は、前述の実施形態との比較では、発電時に、ディファレンシャルギヤ50が回転しないために駆動損失を低減できる。
また、本実施形態では、入力軸21と出力軸22との間に中間軸を追加し、入力軸21又はその中間軸に対して動力を授受可能にモータジェネレータ73が配置されても良い。
【0050】
また、本実施形態では、入力軸21、中間軸、又は出力軸22に対して動力を授受可能にモータジェネレータ73が配置されている場合に、出力軸22とディファレンシャル装置50との間の駆動経路に第2クラッチを設けても良い。
また、本実施形態では、車両の停車中に発電する際に強制的にブレーキ(ブレーキペダルによるブレーキ又はパーキングブレーキ)をONにしても良い。すなわち例えば、ハイブリッド車両1では、図3の処理において運転者の操作によりブレーキがONになっていないときでも、強制的にブレーキをON(例えばホイールシリンダをON又はパーキングブレーキギヤをロック)にして発電を開始する。そして、ハイブリッド車両1では、発電を終了したとき又はアクセルペダルがONになったとき、そのような強制的なブレーキをOFFにする。
【符号の説明】
【0051】
1 ハイブリッド車両、2 エンジン、4 第1クラッチ、20 自動変速機(AMT)、21 入力軸、22 出力軸、23,24,25,26 変速ギヤ列、39 出力ギヤ、41,42 同期装置、50 ディファレンシャル装置、52 リングギヤ、53,54 駆動軸、55,56 駆動輪、61 駆動軸断続用クラッチ(第2クラッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クラッチを介してエンジンの動力が入力される入力軸、前記入力軸に対向して配置され動力を駆動輪側に出力する出力軸、前記入力軸の動力を異なる変速比により変速して前記出力軸に伝達する変速機構とを有する変速機と、前記出力軸から出力された動力を駆動輪が連結されている駆動軸に伝達するディファレンシャル装置と、前記入力軸から前記出力軸を経由して前記駆動軸に至る前記動力の伝達経路の途中に動力を授受可能に配置され前記伝達経路に動力を出力する力行と前記伝達経路を通して伝達される前記エンジンの動力による発電とを行うモータジェネレータとを有するハイブリッド車両の駆動装置において、
前記伝達経路における前記エンジンの動力を前記モータジェネレータに伝達する経路に対して前記駆動軸から前記駆動輪に動力を伝達する経路を切断可能にする第2クラッチを有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記モータジェネレータは、前記出力軸から出力された動力が伝達される前記ディファレンシャル装置のリングギヤに噛合するギヤを介して動力が授受可能になっており、
前記第2クラッチは、前記駆動軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記モータジェネレータは、前記出力軸に固定されるギヤであって動力を前記ディファレンシャル装置へ出力する出力ギヤとは別のギヤを介して前記伝達経路と動力が授受可能になっており、
前記第2クラッチは、前記出力軸上において前記出力ギヤと前記別のギヤとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
車両が停車している場合、前記第2クラッチを切断することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置を有することを特徴とするハイブリッド車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236508(P2012−236508A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106915(P2011−106915)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】