説明

ハイブリッド車両用駆動装置

【課題】複数のオイルパンを独立して設ける構成であって各オイルパンに収集されたオイルを適切に循環させることができると共に、そのような循環のためのオイルポンプの駆動機構の構成が比較的簡素なハイブリッド車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】トルクコンバータTCよりも入力部材I側に配置されたオイル供給対象である入力側被供給部Sと、変速機構TMから出たオイルが収集される第一オイルパン51と、第一オイルパン51とは独立して設けられ、入力側被供給部Sから出たオイルが収集される第二オイルパン52と、第二オイルパン52に収集されたオイルを第一オイルパン51へ送る回送用オイルポンプOP2と、を備え、回送用オイルポンプOP2を駆動するポンプ駆動ギヤ31がトルクコンバータTCの外周部に設けられていると共に、回送用オイルポンプOP2がポンプ駆動ギヤ31に噛み合う従動ギヤ32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、前記内燃機関と共に車両の駆動力源として機能する回転電機と、トルクコンバータと、変速機構と、を備えたハイブリッド車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機と、トルクコンバータと、変速機構と、を備えたハイブリッド車両用駆動装置が既に知られている。このようなハイブリッド車両用駆動装置では、トルクコンバータよりも入力部材側(内燃機関側)に配置された回転電機やクラッチ等に潤滑や冷却のためのオイルを供給することが必要となる場合がある。例えば、下記の特許文献1には、このような場合において、回転電機やクラッチ等のオイル供給対象に供給されたオイルが、これらのオイル供給対象の潤滑や冷却に用いられた後、自重によりケース内部に設けられたオイルの通路を通って流れ、オイルパンに回収される構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−001127号公報(段落0050−0052、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、入力部材と、回転電機と、トルクコンバータと、変速機構とが、同軸上に直列配置される構成等のように、装置全体が軸方向に長く、回転電機やクラッチ等のオイル供給対象がトルクコンバータよりも入力部材側に配置されている構成では、車両の運動によるオイルの偏りを抑制するため等の理由により、オイルパンを複数に分割して設けることが考えられる。具体的には、例えば、従来の自動変速装置と同様に変速機構の下方に第一オイルパンを設けると共に、当該第一オイルパンとは別に、トルクコンバータより入力部材側のオイル供給対象の下方に第二オイルパンを設けることが考えられる。このような構成とした場合には、第一オイルパンのオイルを循環させるための第一のオイルポンプとは別に、第二オイルパンのオイルを循環させるための第二のオイルポンプが必要となる。しかし、このような第二のオイルポンプを駆動するための駆動機構が大掛かりなものになると、装置全体の重量増加や大型化の要因となる可能性がある。
【0005】
そこで、複数のオイルパンを独立して設ける構成であって各オイルパンに収集されたオイルを適切に循環させることができると共に、そのような循環のためのオイルポンプの駆動機構の構成が比較的簡素なハイブリッド車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、内燃機関に駆動連結される入力部材と、前記内燃機関と共に車両の駆動力源として機能する回転電機と、トルクコンバータと、変速機構と、を備えたハイブリッド車両用駆動装置の特徴構成は、前記トルクコンバータよりも前記入力部材側に配置されたオイル供給対象である入力側被供給部と、前記変速機構から出たオイルが収集される第一オイルパンと、前記第一オイルパンとは独立して設けられ、前記入力側被供給部から出たオイルが収集される第二オイルパンと、前記第二オイルパンに収集されたオイルを前記第一オイルパンへ送る回送用オイルポンプと、を備え、前記回送用オイルポンプを駆動するポンプ駆動ギヤが前記トルクコンバータの外周部に設けられていると共に、前記回送用オイルポンプが前記ポンプ駆動ギヤに噛み合う従動ギヤを備えている点にある。
【0007】
なお、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0008】
この特徴構成によれば、第二オイルパンに収集されたオイルを第一オイルパンへ送る回送用オイルポンプを備えることにより、第一オイルパンに係るオイル循環機構を用いて、第二オイルパンに収集されたオイルを適切に循環させることができる。この際、ポンプ駆動ギヤがトルクコンバータの外周部に設けられていると共に、回送用オイルポンプがポンプ駆動ギヤに噛み合う従動ギヤを備えているので、当該ポンプ駆動ギヤと従動ギヤとによる比較的簡素な構成により、回送用オイルポンプを適切に駆動することができる。また、この特徴構成によれば、比較的大径となるトルクコンバータの外周部に回送用オイルポンプを駆動するためのポンプ駆動ギヤを設けているため、ハイブリッド車両用駆動装置の径方向中央領域から径方向外側に駆動力を伝達するためのギヤ列やチェーン等の機構を別途備えることなく、径方向外側領域に回送用オイルポンプを配置することが可能となる。また、比較的大径となるトルクコンバータの外周部に設けられるポンプ駆動ギヤは歯数を多くすることが容易であり、トルクコンバータの回転を増速して回送用オイルポンプの従動ギヤに伝達することができる。よって、回送用オイルポンプの高回転化により吐出量を確保しつつポンプ本体を小型化することが容易となる。従って、回送用オイルポンプを設けるためにハイブリッド車両用駆動装置が大型化し、重量が増加することを抑制できる。更に、このような回送用オイルポンプは、単に第二オイルパンのオイルを第一オイルパンへ送るだけであり、高精度の油圧管理を必要としないので、比較的簡易な構造のポンプを用いることができる利点もある。
【0009】
ここで、前記回送用オイルポンプが、前記トルクコンバータに対して径方向外側であって、前記トルクコンバータの径方向に見て前記トルクコンバータと重複する部分を有する位置に配置されていると好適である。
【0010】
なお、本願において、2つの部材の配置に関して、「ある方向に見て重複する部分を有する」とは、当該方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0011】
この構成によれば、回送用オイルポンプをトルクコンバータと軸方向に直列に配置する場合に比べて、ハイブリッド車両用駆動装置が軸方向に長くなることを抑制できる。
【0012】
また、前記回送用オイルポンプの回転軸が、前記トルクコンバータの回転軸に対して交差する方向となるように配置されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、回送用オイルポンプの回転軸がトルクコンバータの回転軸に平行であって回送用オイルポンプのロータの径方向がトルクコンバータの回転軸に直交する場合と比べて、回送用オイルポンプがハイブリッド車両用駆動装置の径方向に突出する量を少なく抑えることができる。よって、車両への搭載が容易な外形とすることができると共に、装置全体の大型化も抑制することができる。
【0014】
また、前記トルクコンバータは、当該トルクコンバータのポンプインペラと一体回転するハウジングを備え、前記ポンプ駆動ギヤは、前記ハウジングの外周部に一体的に設けられていると好適である。
【0015】
この構成によれば、トルクコンバータのポンプインペラと一体回転するハウジングを利用して、容易かつ簡素な構成でトルクコンバータの外周部にポンプ駆動ギヤを設けることができる。
【0016】
以上に説明した構成は、前記回転電機と前記トルクコンバータと前記変速機構とが同軸上に配置されていると共に、前記内燃機関側から軸方向に沿ってこの順に配列されている場合に特に好適である。このような構成では、装置全体が軸方向に長くなり易く、車両の運動によるオイルの偏りを抑制するため等の理由により、オイルパンを複数に分割して設ける必要性が高いからである。
【0017】
また、前記トルクコンバータと同軸上に、前記第一オイルパンから吸引したオイルを少なくとも前記変速機構及び前記入力側被供給部に供給する供給用オイルポンプを更に備える構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、供給用オイルポンプと回送用オイルポンプとの双方を用いて、第一オイルパン及び第二オイルパンのそれぞれに収集されたオイルを適切に循環させることができる。
【0019】
また、入力側被供給部には、例えば回転電機が含まれる。また、入力側被供給部には、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素が含まれる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置におけるオイルの循環経路を示す模式図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.第一の実施形態
まず、本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1(以下、単に駆動装置1という。)は、図1に示すように、車両の駆動力源として機能する内燃機関IEに駆動連結される入力軸Iと、当該内燃機関IEと共に車両の駆動力源として機能する回転電機MGと、を備えている。本実施形態では、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当する。更に、この駆動装置1は、内燃機関IE及び回転電機MGの一方又は双方からの駆動力を車輪Wに伝達するためのトルクコンバータTC及び変速機構TMを備えている。これらの入力軸I、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速機構TMは、ケース2に収容されている。そして、図2及び図3に示すように、ケース2の下部には、変速機構TMから出たオイルが収集される第一オイルパン51と、第一オイルパン51とは独立して設けられた第二オイルパン52と、を備えている。第二オイルパン52には、トルクコンバータTCよりも入力軸I側に配置されたオイル供給対象である入力側被供給部Sから出たオイルが収集される。本実施形態では、回転電機MGが入力側被供給部Sに含まれる。
【0022】
このような構成において、本実施形態に係る駆動装置1は、回送用オイルポンプOP2を備える点、及び当該回送用オイルポンプOP2の駆動機構の構成に特徴を有している。すなわち、図1〜図3に示すように、この駆動装置1は、第二オイルパン52に収集されたオイルを第一オイルパン51へ送る回送用オイルポンプOP2を備えており、第一オイルパン51に係るオイル循環機構を用いて、第二オイルパン52に収集されたオイルを循環させる構成となっている。そして、この回送用オイルポンプOP2の駆動機構として、ポンプ駆動ギヤ31がトルクコンバータTCの外周部13aに設けられていると共に、回送用オイルポンプOP2がポンプ駆動ギヤ31に噛み合う従動ギヤ32を備えている点に特徴を有している。以下、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
【0023】
1−1.駆動装置の全体構成
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。この駆動装置1では、回転電機MGとトルクコンバータTCと変速機構TMとが同軸上に配置されていると共に、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配列されている。更に本実施形態では、入力軸I及び出力軸Oも、これと同軸上に配置されている。ここでは、これらの同軸上に配置された駆動装置1の各部材の軸心を装置軸心X1とする。また、実施形態の説明において、単に軸方向、径方向、周方向という場合には、この装置軸心X1を基準とした方向を指すものとする。この駆動装置1は、入力軸Iが内燃機関IEの出力軸に駆動連結される。図示は省略するが、入力軸Iが、振動吸収機構としてのダンパを介して内燃機関IEに駆動連結される構成としても好適である。内燃機関IEは、燃料の燃焼による動力を出力する原動機であり、例えば、ガソリンエンジン等の火花点火機関やディーゼルエンジン等の圧縮着火機関などを用いることができる。入力軸Iは、入力クラッチC1を介して回転電機MG及びトルクコンバータTCの入力側部材であるポンプインペラ11に選択的に駆動連結される。すなわち、入力クラッチC1の係合状態では、内燃機関IE及び入力軸Iが回転電機MG及びトルクコンバータTCのポンプインペラ11と一体回転するように駆動連結され、入力クラッチC1の解放状態では、これらが分離される。
【0024】
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、バッテリは、蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関IE又は車輪Wから伝達される駆動力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、トルクコンバータTCのポンプインペラ11と一体回転するように駆動連結されている。
【0025】
トルクコンバータTCは、内燃機関IE及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを変速機構TMに伝達する流体継手である。トルクコンバータTCは、回転電機MGのロータRoと一体回転するように駆動連結されたポンプインペラ11と、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されたタービンランナ12と、これらの間に設けられたステータ14と、を備えて構成されている。そして、トルクコンバータTCは、ハウジング13の内部に充填されたオイルを介して、駆動側のポンプインペラ11と従動側のタービンランナ12との間のトルクの伝達を行うことが可能である。また、トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチC2を備えている。このロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ11とタービンランナ12とを係合してトルクコンバータTCをロックアップするための係合装置である。すなわち、ポンプインペラ11とタービンランナ12とは、ロックアップクラッチC2を介して選択的に一体回転するように駆動連結される。
【0026】
また、駆動装置1は、トルクコンバータTCのポンプインペラ11及び回転電機MGのロータRoと一体回転する部材により駆動される2つのオイルポンプ、具体的には、供給用オイルポンプOP1及び回送用オイルポンプOP2を備えている。図3に示すように、供給用オイルポンプOP1は、第一オイルパン51から吸引したオイルを少なくとも変速機構TMや回転電機MG等、駆動装置1の各部に供給するオイルポンプである。回送用オイルポンプOP2は、第二オイルパン52に収集されたオイルを第一オイルパン51へ送るオイルポンプである。これらの供給用オイルポンプOP1及び回送用オイルポンプOP2については、後で詳細に説明する。
【0027】
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して出力軸Oへ伝達する装置である。このような変速機構TMとしては、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備える自動又は手動式の有段変速装置や、変速比を無段階に変更可能な自動の無段変速装置等を用いることができる。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速機構TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車機構DFを介して左右二つの車輪Wに分配されて伝達される。なお、本実施形態においては、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0028】
1−2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の各部の構成について、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2には、駆動装置1における変速機構TMより内燃機関IE側であって装置軸心X1より下側の部分の断面を示している。上記のとおり、駆動装置1は、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、入力クラッチC1、ロックアップクラッチC2、入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oを備えている。本実施形態では、入力クラッチC1は回転電機MGの径方向内側に配置されており、ロックアップクラッチC2は、トルクコンバータTCのハウジング13内に配置されている。そして、内燃機関IE側から軸方向に沿って、回転電機MG及び入力クラッチC1、トルクコンバータTC、変速機構TMの順に配置されている。また、入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oについては、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配置されている。これらの各部品は、非回転部材としてのケース2内に収容されている。以下、この駆動装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0029】
1−2−1.ケース
図2に示すように、ケース2は、概略円筒状に形成されており、内部に回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速機構TMを含む駆動装置1の構成を収容している。本実施形態では、ケース2は、主にトルクコンバータTC及び変速機構TMを収容する第一ケース21と、この第一ケース21に対して内燃機関IE側に連結され、主に回転電機MG及び入力軸Iを収容する第二ケース22とを有して構成されている。第一ケース21は、概略円筒状の第一周壁21aと、軸方向におけるトルクコンバータTCと変速機構TMとの間に設けられた中間隔壁21bと、を有している。第二ケース22は、概略円筒状の第二周壁22aと、軸方向における回転電機MGより内燃機関IE側(図2における左側)に設けられた端部隔壁22bと、を有している。よって、ケース2内における端部隔壁22bと中間隔壁21bとの間の空間に、回転電機MG、入力クラッチC1、及びトルクコンバータTCが収容され、中間隔壁21bより出力軸O側(図2における右側)の空間に変速機構TMが収容されている。なお、第一ケース21の下部に第一オイルパン51が設けられ、第二ケース22の下部に第二オイルパン52が設けられている。これらについては、後で説明する。
【0030】
端部隔壁22bは、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、端部隔壁22bの径方向中心部には、軸方向にトルクコンバータTC側へ突出する筒状突出部22cが設けられている。本例では、筒状突出部22cは、端部隔壁22bの径方向内側端部からトルクコンバータTC側へ突出する円筒状のボス部とされている。筒状突出部22cの径方向中心部には、軸方向に関する貫通孔が形成され、この貫通孔に入力軸Iが挿通されている。端部隔壁22b及び筒状突出部22cの内部には、入力クラッチC1等へのオイルの供給路が形成されている。
【0031】
中間隔壁21bは、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、本実施形態では、中間隔壁21bは、第一周壁21aとは別部材として構成されており、ボルト等の締結部材により第一周壁21aの内周面に形成された段差部に締結固定されている。そして、中間隔壁21bに供給用オイルポンプOP1が設けられている。ここでは、中間隔壁21bのトルクコンバータTC側の面に供給用ポンプカバー41が取り付けられている。そして、中間隔壁21bと供給用ポンプカバー41との間に、供給用ポンプロータ42を収容する供給用ポンプ室43が形成されている。これらの供給用ポンプロータ42及び供給用ポンプ室43により供給用オイルポンプOP1が構成されている。供給用ポンプカバー41は、中間隔壁21bに対してトルクコンバータTC側から当接した状態で、ボルト等の締結部材により中間隔壁21bに締結固定されている。中間隔壁21b及び供給用ポンプカバー41の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。また、この貫通孔には、供給用ポンプ駆動軸46及びステータ支持軸16も挿通されている。供給用ポンプ駆動軸46は、トルクコンバータTCのハウジング13と一体回転する円筒状の軸部であって、中間軸Mの径方向外側に配置され、供給用ポンプロータ42に駆動連結されている。ステータ支持軸16は、中間隔壁21bに固定されてトルクコンバータTCのステータ14を支持する円筒状の軸部であって、径方向における中間軸Mと供給用ポンプ駆動軸46との間に配置されている。また、中間隔壁21b及び供給用ポンプカバー41には、供給用オイルポンプOP1の吸入油路である第一吸入油路L1及び吐出油路である第一吐出油路L2(図3参照)が形成されている。
【0032】
供給用オイルポンプOP1の供給用ポンプロータ42は、スプライン係合等により供給用ポンプ駆動軸46に駆動連結されている。よって、供給用ポンプロータ42は、トルクコンバータTCのポンプインペラ11及び回転電機MGのロータRoと一体回転するように構成されている。本実施形態においては、供給用オイルポンプOP1は、供給用ポンプロータ42としてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。また、供給用オイルポンプOP1は、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速機構TMと同軸上に配置されており、インナロータがその径方向中心部でトルクコンバータTCのポンプインペラ11と一体回転するように連結されている。従って、ポンプインペラ11の回転に伴い、供給用オイルポンプOP1はオイルを吐出し、少なくとも変速機構TM及び入力側被供給部Sとしての回転電機MGを含む駆動装置1の各部にオイルを供給するための油圧を発生させる。
【0033】
図3に示すように、供給用オイルポンプOP1は、第一オイルパン51から第一ストレーナ53及び第一吸入油路L1を介してオイルを吸引し、吐出したオイルを第一吐出油路L2を介して油圧制御装置VBへ供給する。そして、油圧制御装置VBにおいて所定の油圧に調整されたオイルが、駆動装置1の各部に供給される。本実施形態では、供給用オイルポンプOP1からのオイルは、油圧制御装置VBを介して、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、入力クラッチC1、ロックアップクラッチC2、各部の軸受等に供給される。ここで、回転電機MGに供給されたオイルは、回転電機MGの潤滑及び冷却、並びに、回転電機MGのロータRoを支持する第一軸受61(図2参照)の潤滑及び冷却に用いられる。入力クラッチC1に供給されたオイルは、入力クラッチC1の作動、並びに潤滑及び冷却に用いられる。トルクコンバータTCに供給されたオイルは、トルクコンバータTC内の動力伝達用のオイルとして用いられると共に、ロックアップクラッチC2の作動、並びに潤滑及び冷却に用いられる。変速機構TMに供給されたオイルは、変速機構TMが備える複数の係合要素E1、E2、・・・の作動に用いられると共に、変速機構TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却にも用いられる。図2に一部が示されているように、駆動装置1のケース2や各軸の内部には、このようなオイルの供給のための油路が設けられている。
【0034】
1−2−2.回転電機
図2に示すように、回転電機MGは、トルクコンバータTCよりも入力軸I側(内燃機関IE側)に配置されている。本実施形態では、回転電機MGは、軸方向における端部隔壁22bとトルクコンバータTCとの間に配置されている。また、回転電機MGは、入力軸I及び入力クラッチC1に対して径方向外側に配置されている。回転電機MGのステータStは、ケース2に固定されている。ロータRoは、回転可能な状態でケース2に支持されている。また、ロータRoは、ロータ支持部材62を介してトルクコンバータTCのポンプインペラ11及びハウジング13と一体回転するように連結されている。ロータ支持部材62は、少なくとも径方向に延びてロータRoを支持するように設けられた部材である。本実施形態では、ロータ支持部材62の径方向内側端部に円筒状のボス部62aが設けられており、当該ボス部62aの内周面とケース2の筒状突出部22cとの間に第一軸受61が配置されている。ロータRo及びロータ支持部材62は、この第一軸受61により、ケース2に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第一軸受61としてボールベアリングを用いている。また、軸方向におけるロータ支持部材62と端部隔壁22bとの間であって、ボス部62aの径方向外側に、回転センサ63が配置されている。この回転センサ63は、回転電機MGのロータRoの回転位置を検出するセンサであり、レゾルバ等を好適に用いることができる。ここでは、端部隔壁22bに回転センサ63のセンサステータ63aが固定され、ロータ支持部材62のボス部62aに回転センサ63のセンサロータ63bが固定されている。
【0035】
図2に二点鎖線の矢印A1として示すように、回転電機MGに対しては、ケース2の筒状突出部22cからオイルが供給される。このため、筒状突出部22cにオイル供給口22dが設けられていると共に、ロータ支持部材62のボス部62aにオイル流通孔62bが設けられている。オイル供給口22dへは、端部隔壁22b及び筒状突出部22cの内部に設けられたオイル供給路L5を介して、油圧制御装置VBからのオイルが供給される。オイル供給口22dから出たオイルは、オイル流通孔62bを通過して径方向外側へ流れ、回転電機MGのロータRo及びステータStに供給される。このオイルにより回転電機MGのロータRo及びステータStの潤滑及び冷却が行われる。また、オイル供給口22dから出たオイルの一部は第一軸受61へ供給され、当該第一軸受61の潤滑及び冷却を行う。このような役割を終えて回転電機MG及び第一軸受61から流れ出たオイルは、重力によって下方へ流れ、回転電機MGの下方に配置された第二オイルパン52に回収される。よって、本実施形態では、回転電機MG及び第一軸受61が、トルクコンバータTCよりも入力軸I側に配置されたオイル供給対象である入力側被供給部Sに相当する。
【0036】
1−2−3.入力クラッチ
図2に示すように、入力クラッチC1は、回転電機MGの径方向内側であって、回転電機MGの径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。また、入力クラッチC1は、ロータ支持部材62に対して軸方向でトルクコンバータTC側に配置されている。入力クラッチC1は、入力軸Iと回転電機MG及びトルクコンバータTCのポンプインペラ11とを選択的に駆動連結するための係合装置である。本実施形態では、入力クラッチC1は、摩擦係合装置とされている。入力クラッチC1の入力側部材である入力クラッチハブ71は、入力軸Iと一体的に設けられている。具体的には、入力クラッチハブ71は、入力軸Iと一体的に形成され、当該入力軸Iの変速機構TM側端部から径方向外側に延びる円板状部材とされている。また、入力クラッチC1の出力側部材である入力クラッチドラム72は、トルクコンバータTCのハウジング13及び回転電機MGのロータ支持部材62と一体的に回転するように連結されている。具体的には、入力クラッチドラム72は、ロータ支持部材62のボス部62aの内周面に接合されているとともに、トルクコンバータTCのハウジング13における径方向中間部分に形成された段差部13bの外周面に接合されている。入力クラッチドラム72は、入力クラッチC1のハウジングを兼ねており、内側に入力クラッチハブ71、ピストン、摩擦板等を収容している。そして、入力クラッチドラム72は、内部のオイルが外に漏れないように他の部材との接合部が密閉され、内部を油密状態としている。
【0037】
1−2−4.トルクコンバータ
図2に示すように、トルクコンバータTCは、軸方向における回転電機MGと変速機構TMとの間に配置されている。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ11、タービンランナ12、ステータ14、及びこれらを収容するハウジング13を備えている。また、本実施形態では、ハウジング13内に、ロックアップクラッチC2及びダンパ15も収容されている。ハウジング13は、ポンプインペラ11と一体回転するように構成されている。ここでは、ポンプインペラ11は、ハウジング13の内側に一体的に設けられている。そして、トルクコンバータTCの外周部でもあるハウジング13の外周部13aには、ポンプ駆動ギヤ31が一体的に設けられている。この点については後述する。
【0038】
本実施形態では、ハウジング13は、回転電機MG側の第一ハウジング部材81と、変速機構TM側の第二ハウジング部材82とを接合して構成されている。第一ハウジング部材81は、トルクコンバータTCの回転電機MG側を覆うように形成された円筒状部材であり、本例では径方向中間部分に段差部13bが形成された段付円筒状部材とされている。この段差部13bの外周面には入力クラッチドラム72の内周面が接合されており、これによりハウジング13が入力クラッチC1の入力クラッチドラム72と一体的に回転するように連結されている。また、段差部13bの径方向内側にはロックアップクラッチC2が収容されている。第二ハウジング部材82は、トルクコンバータTCの変速機構TM側を覆うように形成されたカバー部材であり、本例では、径方向中間部分が変速機構TM側に向かって膨出した円弧状の断面形状を有する環状部材とされている。第二ハウジング部材82の径方向内側の端部には、軸方向に変速機構TM側へ延びる供給用ポンプ駆動軸46が一体的に設けられている。供給用ポンプ駆動軸46は、トルクコンバータTCのハウジング13と一体回転する円筒状の軸部であって、中間軸Mと同軸に中間軸Mの径方向外側に配置されている。供給用ポンプ駆動軸46の外周面と供給用ポンプカバー41の貫通孔の内周面との間に第二軸受64が配置されている。供給用ポンプ駆動軸46及びトルクコンバータTCのハウジング13は、この第二軸受64により、ケース2に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第二軸受64としてニードルベアリングを用いている。供給用ポンプ駆動軸46の変速機構TM側の端部は、供給用オイルポンプOP1の供給用ポンプロータ42と一体回転するように連結されている。供給用ポンプ駆動軸46と供給用ポンプロータ42との連結は、ここではスプライン係合により行われている。
【0039】
第一ハウジング部材81と第二ハウジング部材82とは、溶接等により一体的に接合されている。また、駆動装置1全体として見れば、一体的に回転する回転電機MGのロータRo、トルクコンバータTCのハウジング13、及び入力クラッチC1の入力クラッチドラム72は、入力軸I側において第一軸受61を介してケース2に回転可能に支持され、変速機構TM側において第二軸受64を介してケース2に回転可能に支持されている。
【0040】
トルクコンバータTCのタービンランナ12は、ハウジング13の内部におけるポンプインペラ11の回転電機MG側に、ポンプインペラ11と対向して配置されている。このタービンランナ12は、中間軸Mと一体回転するように連結されており、ここでは、タービンランナ12の径方向内側端部が、中間軸Mとスプライン係合されている。トルクコンバータTCのステータ14は、軸方向におけるポンプインペラ11とタービンランナ12との間に配置されている。このステータ14は、一方向クラッチを介してステータ支持軸16に支持されている。上記のように、ステータ支持軸16は、円筒状の軸部であって変速機構TM側においてケース2の中間隔壁21bに固定されている。このトルクコンバータTCは、ハウジング13の内部に充填されたオイルを介して、駆動側のポンプインペラ11と従動側のタービンランナ12との間のトルクの伝達を行うことが可能となっている。
【0041】
図2に示すように、ロックアップクラッチC2は、ハウジング13の段差部13bの径方向内側であって、タービンランナ12に対して軸方向で回転電機MG側に配置されている。ロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ11とタービンランナ12とを係合することにより、オイルを介した駆動力の伝達を止めてこれらを直結状態(ロックアップ状態)とするための係合装置である。本実施形態では、ロックアップクラッチC2は、摩擦係合装置とされている。ロックアップクラッチC2の入力側部材であるロックアップクラッチハブ73は、ハウジング13と一体回転するように設けられている。具体的には、ロックアップクラッチハブ73は、径方向内側においてハウジング13の第一ハウジング部材81が有するボス部にスプライン係合して連結されている。また、ロックアップクラッチC2の出力側部材であるロックアップクラッチドラム74は、ダンパ15を介してタービンランナ12及び中間軸Mに駆動連結されている。具体的には、ロックアップクラッチドラム74は、ダンパ15の入力側部材15aと一体的に形成されている。なお、ロックアップクラッチC2のピストン及び摩擦板等も、段差部13bの径方向内側の空間に収容されている。また、本実施形態では、ロックアップクラッチC2は、第一ハウジング部材81を挟んで入力クラッチC1と軸方向に隣接して配置されている。
【0042】
ダンパ15は、軸方向におけるロックアップクラッチC2とタービンランナ12との間に配置されている。このダンパ15は、ロックアップクラッチC2の係合状態で、ポンプインペラ11とタービンランナ12との間で伝達される駆動力の振動を吸収するために設けられている。本実施形態では、ダンパ15は、周方向に相対移動可能に構成された入力側部材15a及び出力側部材15bと、これら入力側部材15aと出力側部材15bとの間に設けられた振動吸収用のばね等を有している。そして、ダンパ15の入力側部材15aはロックアップクラッチC2のロックアップクラッチドラム74と一体回転するように連結されている。また、ダンパ15の出力側部材15bはタービンランナ12及び中間軸Mと一体回転するように連結されている。
【0043】
1−2−5.変速機構、油圧制御装置、及び第一オイルパン
図2では省略しているが、中間隔壁21bの出力軸O側、すなわち中間隔壁21bを挟んでトルクコンバータTCとは反対側(図2における右側)に、変速機構TMが配置されている。この変速機構TMとしては、有段変速機構や無段変速機構等であって、公知の各種形式の自動変速機構を用いることができる。そして、変速機構TMの下方には、油圧制御装置VBが配置されている。油圧制御装置VBは、駆動装置1が備えるクラッチやブレーキ等の係合要素の動作制御及び各部へ供給するオイルの圧力制御等のための複数の油圧制御弁を備えると共に、各部へ供給するオイルの流路が形成されている。そして、この油圧制御装置VBを覆うように第一オイルパン51が設けられている。すなわち、第一オイルパン51は、変速機構TMの下方に設けられている。ここでは、第一オイルパン51は、変速機構TMの下面のほぼ全体を覆うように設けられている。また、第一オイルパン51の内部に収集されたオイルが外部に漏れ出すことを防止するために、第一オイルパン51の上面とケース2(第一ケース21)の下面との接合面には、シール部材が介装されている。上記のように、油圧制御装置VBから変速機構TMに供給されたオイルは、変速機構TMが備える複数の係合要素E1、E2、・・・の作動に用いられると共に、変速機構TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却にも用いられる。そして、このような役割を終えて変速機構TMから流れ出たオイルは、重力によって下方へ流れ、変速機構TMの下方に配置された第一オイルパン51に回収される。
【0044】
1−2−6.第二オイルパン
図2に示すように、第二オイルパン52は、第一オイルパン51とは独立して設けられ、入力側被供給部Sとしての回転電機MGから出たオイルが収集される。そのため、第二オイルパン52は、回転電機MGの下方に設けられている。ここでは、第二オイルパン52は、回転電機MGに対して径方向外側であって、径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。すなわち、第二オイルパン52は、駆動装置1の下方から見て回転電機MGと重複する部分を有するように配置されている。より詳しくは、径方向を視線方向として軸方向及び周方向に視点を移動させた場合に、第二オイルパン52と回転電機MGとが重なって見える視点が、回転電機MGの下方の一部の領域に存在する。ケース2の下部(本実施形態では第二ケース22)における第二周壁22aの下部には、ケース2内のオイルを第二オイルパン52へ流すための開口部22fが設けられている。この開口部22fは、第二周壁22aを貫通して第二ケース22の内部と、第二オイルパン52の内部とを連通するように形成されている。
【0045】
第二オイルパン52は、ボルト等の締結部材によりケース2の下面に取り付けられている。また、第二オイルパン52の内部に収集されたオイルが外部に漏れ出すことを防止するために、第二オイルパン52の上面とケース2の下面との接合面には、シール部材55が介装されている。上記のように、油圧制御装置VBから回転電機MGに供給されたオイルは、回転電機MGの潤滑及び冷却に用いられる。また、本実施形態では、回転電機MGのロータRoを支持する第一軸受61にもオイルが供給され、当該第一軸受61の潤滑及び冷却に用いられる。そして、このような役割を終えて回転電機MGから出たオイルは、重力によって下方へ流れ、第二オイルパン52に回収される。第二オイルパン52の中には、第二ストレーナ54、オイル吸入部材56が設けられている。このオイル吸入部材56は、第二オイルパン52からオイルを吸入する油路を構成する部材である。言い換えると、オイル吸入部材56は、第二オイルパン52から回送用オイルポンプOP2へ向う第二吸入油路L3の上流側部分を構成する部材である。また、オイル吸入部材56は、第二ストレーナ54を保持する保持部56aを有している。この保持部56a内にスポンジ等で構成される第二ストレーナ54が収容されて保持されている。
【0046】
1−2−7.回送用オイルポンプ
図2及び図3に示すように、回送用オイルポンプOP2は、第二オイルパン52に収集されたオイルを第一オイルパン51へ送るオイルポンプである。本実施形態では、回送用オイルポンプOP2は、トルクコンバータTCに対して径方向外側であって、径方向に見てトルクコンバータTCと重複する部分を有する位置に配置されている。また、回送用オイルポンプOP2は、第二オイルパン52及び第一オイルパン51の配置に合わせて、駆動装置1の下部、すなわちトルクコンバータTCの下方に配置されている。よって、回送用オイルポンプOP2は、駆動装置1の下方から見て、トルクコンバータTCと重複する部分を有するように配置されている。より詳しくは、径方向を視線方向として軸方向及び周方向に視点を移動させた場合に、回送用オイルポンプOP2とトルクコンバータTCとが重なって見える視点が、トルクコンバータTCの下方の一部の領域に存在する。図2に示す例では、回送用オイルポンプOP2の全体が、径方向に見てトルクコンバータTCと重複するように配置されている。
【0047】
また、本実施形態では、ケース2の周壁部に回送用オイルポンプOP2が設けられている。より詳しくは、第一ケース21の第一周壁21aの下部に回送用オイルポンプOP2が設けられている。ここでは、第一周壁21aの下面に回送用ポンプカバー34が取り付けられている。そして、第一周壁21aの下面と回送用ポンプカバー34との間に、回送用ポンプロータ35を収容する回送用ポンプ室36が形成されている。ここでは、第一周壁21aの下面に回送用ポンプ室36を構成する凹部が形成されている。そして、回送用ポンプ室36内に回送用ポンプロータ35が配置されている。回送用ポンプカバー34は、第一周壁21aの下面に対して下方側から当接した状態で、ボルト等の締結部材により第一周壁21aに締結固定されている。これらの回送用ポンプロータ35及び回送用ポンプ室36により回送用オイルポンプOP2が構成されている。本実施形態においては、回送用オイルポンプOP2は、回送用ポンプロータ35としてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。
【0048】
また、本実施形態では、回送用オイルポンプOP2の回転軸であるポンプ軸心X2が、トルクコンバータTCの回転軸でもある装置軸心X1に対して交差する方向、ここでは直交する方向となるように配置されている。なお、回送用オイルポンプOP2の回転軸とは、回送用ポンプロータ35の回転軸である。この回送用ポンプロータ35は、回送用ポンプ軸33により回転駆動される。従って、回送用ポンプ軸33の軸心はポンプ軸心X2に一致している。ここでは、ポンプ軸心X2に沿って第一周壁21aに貫通孔が形成され、この貫通孔に回送用ポンプ軸33が挿通されている。回送用ポンプ軸33は、一端が回送用ポンプロータ35に駆動連結され、他端が従動ギヤ32に駆動連結されている。より詳しくは、回送用ポンプ軸33の下端に回送用ポンプロータ35が連結され、回送用ポンプ軸33の上端に従動ギヤ32が連結されている。これらの連結には、例えばスプライン係合やキー係合等が用いられる。従動ギヤ32は、後述するポンプ駆動ギヤ31に噛み合うギヤであり、歯部32aと、ディスク部32bと、ボス部32cと、を有している。本実施形態では、従動ギヤ32としてフェースギヤを用いている。ボス部32cは、ポンプ軸心X2に平行な軸を有する円筒状部であり、回送用ポンプ軸33の端部に連結されている。図示の例では、ボス部32cは、回送用ポンプ軸33にキー係合されて相対回転が規制されていると共に、スナップリングにより軸方向の相対移動が規制されている。ディスク部32bは、ボス部32cからポンプ軸心X2の径方向外側に向って延出する円板状部又は複数本の腕部である。歯部32aは、ディスク部32bの外縁部からポンプ軸心X2に平行な方向にトルクコンバータTC側へ立ち上がるように設けられ、先端にはポンプ駆動ギヤ31に噛み合う歯が形成されている。歯部32aの歯は、後述するポンプ駆動ギヤ31の歯の形状に合わせて平歯又は斜歯とされる。これにより、歯部32aは、歯車のピッチ円がポンプ軸心X2に直交する平面に平行となるように配置される。
【0049】
このように、本実施形態に係る駆動装置1は、ポンプ軸心X2を装置軸心X1に対して直交する方向に配置したことにより、回送用ポンプロータ35及び従動ギヤ32がケース2の周壁に沿って配置される構成となっている。従って、回送用オイルポンプOP2を構成する各部材が駆動装置1の径方向、ここでは下方に突出する量を少なく抑えることができる。よって、車両への搭載が容易な駆動装置1の外形とすることができると共に、駆動装置1全体の大型化も抑制することができる。
【0050】
そして、回送用オイルポンプOP2を駆動するポンプ駆動ギヤ31がトルクコンバータTCの外周部に設けられている。本実施形態では、ポンプ駆動ギヤ31は、トルクコンバータTCのハウジング13の外周部13aに一体的に設けられている。ポンプ駆動ギヤ31は、従動ギヤ32に噛み合うギヤであり、歯部31aと、当該歯部31aを支持する支持部31bと、を有している。本実施形態では、ポンプ駆動ギヤ31には、上述したようにフェースギヤとされている従動ギヤ32に噛み合う平歯車又ははすば歯車を用いる。よって、歯部31aは、支持部31bから装置軸心X1に直交する平面に沿ってトルクコンバータTCの径方向外側へ立ち上がるように設けられ、その先端となる外周縁には従動ギヤ32に噛み合う歯が形成されている。これにより、歯部31aは、歯車のピッチ円が装置軸心X1に直交する平面に平行となるように配置される。支持部31bは、トルクコンバータTCのハウジング13に一体的に取り付けられ、歯部31aをハウジング13の外周部13aに位置させるように支持する部材である。図示の例では、支持部31bは、断面がL字状の円環状部材とされており、溶接等によりトルクコンバータTCのハウジング13に一体的に固定されている。このように、比較的大径となるトルクコンバータTCの外周部にポンプ駆動ギヤ31を設けたことにより、ポンプ駆動ギヤ31の歯数を多くすることが容易となっている。そのため、ポンプ駆動ギヤ31と従動ギヤ32とのギヤ比を大きくすることが容易であり、例えば、ポンプ駆動ギヤ31から従動ギヤ32に伝達される回転速度を2〜4倍程度、より好ましくは3倍程度に増速することができる。これにより、回送用オイルポンプOP2の回転速度を高め、吐出量を確保しつつポンプ本体を小型化することが容易となっている。なお、図示は省略するが、ポンプ駆動ギヤ31及び従動ギヤ32として、かさ歯車を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0051】
以上のような構成を備えることにより、回送用オイルポンプOP2の回送用ポンプロータ35は、ポンプ駆動ギヤ31、従動ギヤ32、及び回送用ポンプ軸33を介して、トルクコンバータTCのポンプインペラ11の回転及び駆動力が伝達されて回転する。従って、ポンプインペラ11の回転に伴い、回送用オイルポンプOP2は駆動され、第二オイルパン52からオイルを吸引して第一オイルパン51に回送するための油圧を発生させる。この回送用オイルポンプOP2は、単に第二オイルパン52のオイルを第一オイルパン51へ送るだけであり、供給用オイルポンプOP1とは違って高精度の油圧管理を必要としない。そのため、回送用ポンプロータ35と回送用ポンプ室36との隙間や回送用ポンプ軸33と第一周壁21aの貫通孔との隙間を厳密に設定する必要性が低い。よって、回送用オイルポンプOP2は、比較的簡易な構造で安価なものとすることができる。
【0052】
ケース2には、回送用オイルポンプOP2の吸入油路及び吐出油路である第二吸入油路L3及び第二吐出油路L4が形成されている。ここで、第二吸入油路L3は、第二オイルパン52から回送用オイルポンプOP2の吸入口までをつなぐオイルの経路であり、図示の例では、第二ケース22の第二周壁22aと第一ケース21の第一周壁21aとにまたがって形成されている。そして、第二吸入油路L3の上流側端部は、第二オイルパン52内に設けられたオイル吸入部材56に連通するように接続されている。第二吐出油路L4は、回送用オイルポンプOP2の吐出口から第一オイルパン51までをつなぐオイルの経路であり、図示の例では、第一ケース21の第一周壁21aに形成されている。より詳しくは、図2に示すように、第二吐出油路L4は、第一周壁21aの形状に沿って、2回屈曲する経路として形成されており、下流側端部は、第一オイルパン51の内部に向けて開口する回送排出口23となっている。ここでは、回送排出口23は、第一オイルパン51の上方で開口するように、第一オイルパン51が取り付けられている部分の第一周壁21aに形成されている。よって、回送排出口23から排出されたオイルは、重力により下方へ流れて第一オイルパン51の内部に回収される。
【0053】
以上のような構成を備えることにより、回送用オイルポンプOP2は、第二オイルパン52から第二ストレーナ54及び第二吸入油路L3を介してオイルを吸引し、吐出したオイルを第二吐出油路L4を介して第一オイルパン51へ供給する。そして、図3に示すように、第一オイルパン51へ供給されたオイルは、上記のとおり、供給用オイルポンプOP1により吸引されて油圧制御装置VBへ送られ、当該油圧制御装置VBにおいて所定の油圧に調整されてから、駆動装置1の各部へ供給される。したがって、本実施形態の構成によれば、第二オイルパン52に収集されたオイルを第一オイルパン51へ送る回送用オイルポンプOP2を備えることにより、第一オイルパン51に係るオイル循環機構を用いて、第二オイルパン52に収集されたオイルを駆動装置1の各部へ適切に循環させることができる。また、比較的大径となるトルクコンバータTCのハウジング13の外周部13aにポンプ駆動ギヤ31を設けているため、装置軸心X1付近から径方向外側に駆動力を伝達するためのギヤ列やチェーン等の機構を別途備えることなく、駆動装置1の径方向外側領域に回送用オイルポンプOP2を配置することが可能となっている。従って、回送用オイルポンプOP2の駆動機構を設けるために駆動装置1の全体が大型化し、重量が増加することを抑制できる。
【0054】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に係る駆動装置1は、回送用オイルポンプOP2及びそこにつながる油路の構成が上記第一の実施形態と異なっている。その他の構成は、基本的には上記第一の実施形態と同様である。以下では、本実施形態に係る駆動装置1について、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態においても、回送用オイルポンプOP2は、トルクコンバータTCに対して径方向外側(ここでは下方)であって、径方向に見てトルクコンバータTCと重複する部分を有する位置に配置されている。図示の例では、回送用オイルポンプOP2の全体が、径方向に見てトルクコンバータTCと重複するように配置されている。そして、この回送用オイルポンプOP2は、ケース2の周壁部に沿って設けられている。但し、本実施形態では、回送用オイルポンプOP2は、ケース2の内部に配置されている。より詳しくは、回送用オイルポンプOP2は、第二ケース22の内面に取り付けられた回送用ポンプケース37を備え、当該回送用ポンプケース37と第二ケース22の内面との間に形成される回送用ポンプ室36に回送用ポンプロータ35を収容して構成されている。図示の例では、第二ケース22が、装置軸心X1に直交する平面に沿って第二周壁22aから突出するように形成された突出壁部22eを備えている。ここでは、突出壁部22eは、第一ケース21との接合部において第二周壁22aから下方へ突出するように形成されている。回送用ポンプケース37は、突出壁部22eの変速機構TM側(第一ケース21側)の面に取り付けられる。以下では、この突出壁部22eの変速機構TM側の面を突出壁部22eの内面といい、それとは反対側の面を外面という。そして、突出壁部22eの内面と回送用ポンプケース37との間に、回送用ポンプロータ35を収容する回送用ポンプ室36が形成されている。ここでは、回送用ポンプケース37の当接面に回送用ポンプ室36を構成する凹部が形成されている。そして、回送用ポンプ室36内に回送用ポンプロータ35が配置されている。回送用ポンプケース37は、突出壁部22eの内面に対して変速機構TM側から当接した状態で、図示しないボルト等の締結部材により突出壁部22eに締結固定されている。
【0056】
また、第一ケース21は、回送用ポンプケース37及び後述する従動ギヤ32を覆うように形成されたカバー部21cを備えている。よって、回送用ポンプロータ35を収容する回送用ポンプケース37及び従動ギヤ32は、第一ケース21のカバー部21cと第二ケース22の突出壁部22eとにより囲まれる空間内に配置されている。
【0057】
そして、本実施形態では、回送用オイルポンプOP2の回転軸であるポンプ軸心X2が、トルクコンバータTCの回転軸でもある装置軸心X1に対して平行な方向となるように配置されている。ここでは、ポンプ軸心X2に沿って回送用ポンプケース37に貫通孔が形成され、この貫通孔に回送用ポンプ軸33が挿通されている。回送用ポンプ軸33は、一端が回送用ポンプロータ35に駆動連結され、他端が従動ギヤ32に駆動連結されている。より詳しくは、回送用ポンプ軸33の入力軸I側端に回送用ポンプロータ35が連結され、回送用ポンプ軸33の変速機構TM側端に従動ギヤ32が連結されている。従動ギヤ32は、ポンプ駆動ギヤ31に噛み合うギヤであり、歯部32aと、ディスク部32bと、ボス部32cと、を有している。本実施形態では、従動ギヤ32として平歯車又ははすば歯車を用いている。ボス部32cは、ポンプ軸心X2に平行な軸を有する円筒状部であり、回送用ポンプ軸33の端部に連結されている。図示の例では、ボス部32cは、回送用ポンプ軸33にキー係合されて相対回転が規制されていると共に、スナップリングにより軸方向の相対移動が規制されている。ディスク部32bは、ボス部32cからポンプ軸心X2の径方向外側に向って延出する円板状部又は複数本の腕部である。歯部32aは、ディスク部32bの外縁部から径方向外側へ立ち上がるように設けられ、ポンプ駆動ギヤ31に噛み合う歯が形成されている。これにより、歯部32aは、歯車のピッチ円が装置軸心X1及びポンプ軸心X2に直交する平面に平行となるように配置される。このように、ポンプ軸心X2が装置軸心X1に対して平行な方向となるように配置したことにより、従動ギヤ32として比較的単純な形状の円板状(ここでは平らな円板状)の歯車を用いることができる。歯部32aの歯は、後述するポンプ駆動ギヤ31の歯の形状に合わせて平歯又は斜歯とされる。
【0058】
本実施形態においても、回送用オイルポンプOP2を駆動するポンプ駆動ギヤ31は、トルクコンバータTCの外周部、ここではハウジング13の外周部13aに一体的に設けられている。ポンプ駆動ギヤ31は、歯部31aと、当該歯部31aを支持する支持部31bと、を有している。このポンプ駆動ギヤ31には、上述したように平歯車又ははすば歯車とされている従動ギヤ32に噛み合う平歯車又ははすば歯車を用いる。よって、歯部31aは、支持部31bから装置軸心X1に直交する平面に沿ってトルクコンバータTCの径方向外側へ立ち上がるように設けられ、その先端となる外周縁には従動ギヤ32に噛み合う歯が形成されている。これにより、歯部31aは、歯車のピッチ円が装置軸心X1に直交する平面に平行となるように配置される。支持部31bは、トルクコンバータTCのハウジング13に一体的に取り付けられ、歯部31aをハウジング13の外周部13aに位置させるように支持する部材である。図示の例では、支持部31bは、円筒状部材とされており、溶接等によりトルクコンバータTCのハウジング13に一体的に固定されている。
【0059】
本実施形態においても、ケース2には、回送用オイルポンプOP2のための第二吸入油路L3及び第二吐出油路L4が形成されている。図示の例では、第二吸入油路L3は、第二ケース22の第二周壁22aから突出壁部22eにかけて形成されている。そして、第二吸入油路L3の上流側端部は、第二オイルパン52内に設けられたオイル吸入部材56に連通するように接続されている。第二吐出油路L4は、第二ケース22の突出壁部22eと第一ケース21のカバー部21cから第一周壁21aとにまたがって形成されている。より詳しくは、図4に示すように、第二吐出油路L4は、第二ケース22の突出壁部22eの形状及び第一ケース21のカバー部21cから第一周壁21aにかけての形状に沿って3回屈曲する経路として形成されている。これにより、第二吐出油路L4は、回送用オイルポンプOP2及び従動ギヤ32を避け、これらの周囲を覆うケース2の壁に沿って配置されている。そして、第二吐出油路L4の下流側端部は、第一オイルパン51の内部に向けて開口する回送排出口23となっている。本実施形態においても、回送排出口23は、第一オイルパン51の上方で開口するように、第一オイルパン51が取り付けられている部分の第一周壁21aに形成されている。よって、回送排出口23から排出されたオイルは、重力により下方へ流れて第一オイルパン51の内部に回収される。
【0060】
なお、図4に示す例では、第二吐出油路L4が、回送用オイルポンプOP2及び従動ギヤ32を避けてこれらの下方を通るように配置されている。しかし、第二吐出油路L4の配置構成はこれに限定されるものではなく、例えば、第二吐出油路L4が回送用オイルポンプOP2及び従動ギヤ32の側方(図4の紙面手前側又は奥側)を通るように配置すれば、ケース2の下方への突出量を少なく抑えることができるのでより好適である。
【0061】
3.その他の実施形態
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0062】
(1)上記第一及び第二の実施形態では、回送用オイルポンプOP2の全体が、径方向に見てトルクコンバータTCと重複する位置に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、回送用オイルポンプOP2が、トルクコンバータTCに対して径方向外側であって、トルクコンバータTCの径方向に見てトルクコンバータTCと部分的に重複する位置に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、例えば、回送用オイルポンプOP2が、トルクコンバータTCに対して軸方向にずれた位置、すなわちトルクコンバータTCの径方向に見てトルクコンバータTCと重複する部分を有しない位置に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、回送用オイルポンプOP2が、トルクコンバータTCに対して径方向外側に配置された構成に限定されず、回送用オイルポンプOP2が、トルクコンバータTCの軸方向に見てトルクコンバータTCと重複する部分を有する位置に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0063】
(2)上記第一及び第二の実施形態では、第二オイルパン52が、径方向に見て入力側被供給部Sとしての回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二オイルパン52は、入力側被供給部Sから出たオイルを収集できる位置に配置されていればよい。従って、例えば、重力により下方へ流れるオイルを第二オイルパン52に収集する場合には、第二オイルパン52が入力側被供給部Sよりも下方に配置されていると共に、入力側被供給部Sから第二オイルパン52まで流れるオイルの経路が確保されていれば、駆動装置1の径方向に見て第二オイルパン52が入力側被供給部Sと重複しない位置に配置されていても好適である。
【0064】
(3)上記第一の実施形態では、回送用オイルポンプOP2の回転軸がトルクコンバータTCの回転軸に対して直交する方向となるように配置されている場合について説明し、上記第二の実施形態では、回送用オイルポンプOP2の回転軸がトルクコンバータTCの回転軸に対して平行な方向となるように配置されている場合について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。回送用オイルポンプOP2の回転軸が、例えば、30°、45°、60°等のように様々な角度でトルクコンバータTCの回転軸に対して交差する方向となるように配置することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0065】
(4)上記第一及び第二の実施形態では、ポンプ駆動ギヤ31がトルクコンバータTCのハウジング13の外周部13aに一体的に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。トルクコンバータTCの外周部がハウジング13以外の部材により構成されている場合には、当該部材の外周部にポンプ駆動ギヤ31が設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0066】
(5)上記第一及び第二の実施形態では、入力側被供給部Sが回転電機MG及び第一軸受61である場合を例として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。入力側被供給部Sとして、回転電機MG及び第一軸受61の一方のみが含まれる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、これらの他に、例えば、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素、差動歯車機構等の歯車、各種の転がり軸受やすべり軸受等の軸受など、ハイブリッド車両用駆動装置の内部においてオイルによる潤滑や冷却の対象となる様々な部材が、入力側被供給部Sとなり得る。
【0067】
(6)上記第一及び第二の実施形態では、供給用オイルポンプOP1がトルクコンバータTCと同軸上に配置された構成を例として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。供給用オイルポンプOP1の回転軸がトルクコンバータTCの回転軸とは異なる位置に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、供給用オイルポンプOP1の回転軸がトルクコンバータTCの回転軸と平行であってもよいし、交差する方向に配置されていてもよい。
【0068】
(7)上記第二の実施形態では、突出壁部22eが第二ケース22側に形成されている場合を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、回送用オイルポンプOP2に関する第一ケース21と第二ケース22との役割が入れ替わり、第一ケース21側に突出壁部が形成され、第二ケース22側にカバー部が形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第一ケース21の突出壁部の入力軸I側が内面となり、回送用ポンプケース37は突出壁部の内面に入力軸I側から当接した状態で取り付けられる。そして、回送用ポンプケース37及び従動ギヤ32が、第二ケース22のカバー部により入力軸I側から覆われる。
【0069】
(8)上記第一及び第二の実施形態では、回転電機MGとトルクコンバータTCと変速機構TMとが同軸上に配置されていると共に、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配列されている場合を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速機構TMが同軸上に配置される場合であっても、これらの軸方向における配列順が上記各実施形態とは異なる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。但し、この場合でも変速機構TMと入力側被供給部Sとの間にトルクコンバータTCが配置されることが望ましい。例えば、内燃機関IE側から軸方向に沿って、トルクコンバータTC、回転電機MG、変速機構TMの順に配置することも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速機構TMの何れか一つ又は全部が異なる軸上に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、前記内燃機関と共に車両の駆動力源として機能する回転電機と、トルクコンバータと、変速機構と、を備えたハイブリッド車両用駆動装置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:ハイブリッド車両用駆動装置
11:ポンプインペラ
13:ハウジング
13a:ハウジングの外周部(トルクコンバータの外周部)
31:ポンプ駆動ギヤ
32:従動ギヤ
51:第一オイルパン
52:第二オイルパン
IE:内燃機関
I:入力軸(入力部材)
MG:回転電機
TC:トルクコンバータ
TM:変速機構
S:入力側被供給部
OP1:供給用オイルポンプ
OP2:回送用オイルポンプ
X1:装置軸心(トルクコンバータの回転軸)
X2:ポンプ軸心(回送用オイルポンプの回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、前記内燃機関と共に車両の駆動力源として機能する回転電機と、トルクコンバータと、変速機構と、を備えたハイブリッド車両用駆動装置であって、
前記トルクコンバータよりも前記入力部材側に配置されたオイル供給対象である入力側被供給部と、
前記変速機構から出たオイルが収集される第一オイルパンと、
前記第一オイルパンとは独立して設けられ、前記入力側被供給部から出たオイルが収集される第二オイルパンと、
前記第二オイルパンに収集されたオイルを前記第一オイルパンへ送る回送用オイルポンプと、を備え、
前記回送用オイルポンプを駆動するポンプ駆動ギヤが前記トルクコンバータの外周部に設けられていると共に、前記回送用オイルポンプが前記ポンプ駆動ギヤに噛み合う従動ギヤを備えているハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回送用オイルポンプが、前記トルクコンバータに対して径方向外側であって、前記トルクコンバータの径方向に見て前記トルクコンバータと重複する部分を有する位置に配置されている請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回送用オイルポンプの回転軸が、前記トルクコンバータの回転軸に対して交差する方向となるように配置されている請求項1又は2に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項4】
前記トルクコンバータは、当該トルクコンバータのポンプインペラと一体回転するハウジングを備え、
前記ポンプ駆動ギヤは、前記ハウジングの外周部に一体的に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項5】
前記回転電機と前記トルクコンバータと前記変速機構とが同軸上に配置されていると共に、前記内燃機関側から軸方向に沿ってこの順に配列されている請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項6】
前記トルクコンバータと同軸上に、前記第一オイルパンから吸引したオイルを少なくとも前記変速機構及び前記入力側被供給部に供給する供給用オイルポンプを更に備える請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項7】
前記入力側被供給部は、前記回転電機を含む請求項1から6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−111366(P2012−111366A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262362(P2010−262362)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】