説明

ハイブリッド車

【課題】内燃機関を始動する際の車両の振動を抑制すると共に内燃機関の始動完了までに要する時間の短縮を図る。
【解決手段】エンジンの始動が指示されたときには、エンジンの始動時に想定される第2のモータの駆動点を用いて、エンジンの始動時に正弦波制御モードで第2のインバータを制御する(制振制御を実行する)ことになる駆動電圧系の電圧としての始動時正弦波制御電圧VHsinを設定し(S410)、駆動電圧系の電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsinより低いときには(S430)、駆動電圧系の電圧VHを始動時正弦波制御電圧VHsin以上に上昇させた後に(エンジンの始動が指示されてから待機時間twtが経過したときに)(S480)、正弦波制御モードで第2のインバータを制御しながら第1のモータによってエンジンをモータリングして始動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、走行用の動力を出力可能な内燃機関と、内燃機関の出力軸に動力を入出力可能な第1の電動機と、第1の電動機を駆動するための第1のインバータと、走行用の動力を入出力可能な第2の電動機と、第2の電動機を駆動するための第2のインバータと、二次電池と、第1のインバータおよび第2のインバータが接続された駆動電圧系と二次電池が接続された電池電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を調節可能な昇圧コンバータと、駆動電圧系の電圧を調節しながら走行用の要求トルクに基づくトルクによって走行するよう内燃機関と第1のインバータと第2のインバータと昇圧コンバータとを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、エンジンと、エンジンに連結された第1のモータジェネレータと、第1のモータジェネレータを駆動するための第1のインバータと、駆動輪を駆動するための第2のモータジェネレータと、第2のモータジェネレータを駆動するための第2のインバータと、バッテリと、バッテリからの電力を昇圧して第1,第2のインバータに供給可能な昇圧コンバータとを備え、エンジンの始動が指示されたときには、第1,第2のモータジェネレータの回転数やトルクとは無関係に最大電圧を目標電圧として設定し、出力電圧が目標電圧となるよう昇圧コンバータを駆動制御し、出力電圧が最大電圧に到達すると、第1のモータジェネレータによってエンジンをモータリングして始動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、こうした制御により、出力電圧を昇圧するために必要なパワーが最大となるタイミングと、第1のモータジェネレータを駆動するために必要なパワーが最大となるタイミングとをずらして、バッテリから過大な電力が持ち出されるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/081395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車では、エンジンの始動が指示されたときには、出力電圧を最大電圧とした後に第1のモータジェネレータによるエンジンのモータリングを開始するから、エンジンの始動に必要以上の時間を要することになる場合がある。また、こうしたハイブリッド車では、エンジンを始動する際の車両の振動を抑制するために、このためのトルクを第2のモータジェネレータから出力しながら第1のモータジェネレータによってエンジンをモータリングして始動することが考えられている。このため、出力電圧をどの程度まで昇圧した後に第1のモータジェネレータによるエンジンのモータリングを開始してエンジンを始動するのがよいのかが課題となる。
【0005】
本発明のハイブリッド車は、内燃機関を始動する際の車両の振動を抑制すると共に内燃機関の始動完了までに要する時間の短縮を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関の出力軸に動力を入出力可能な第1の電動機と、前記第1の電動機を駆動するための第1のインバータと、走行用の動力を入出力可能な第2の電動機と、前記第2の電動機を駆動するための第2のインバータと、二次電池と、前記第1のインバータおよび前記第2のインバータが接続された駆動電圧系と前記二次電池が接続された電池電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を調節可能な昇圧コンバータと、前記駆動電圧系の電圧を調節しながら走行用の要求トルクに基づくトルクによって走行するよう前記内燃機関と前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータとを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車において、
前記制御手段は、前記第2の電動機による制振制御を実行する制御モードである制振制御モードと該第2の電動機による制振制御を実行しない制御モードである非制振制御モードとを含む前記第2のインバータの制御モードと前記駆動電圧系の電圧と前記第2の電動機のトルクおよび回転数との関係である制御対応関係に前記駆動電圧系の電圧と前記第2の電動機から出力すべき駆動目標トルクと前記第2の電動機の回転数とを適用して前記第2のインバータの制御モードを選択し、前記制振制御モードを選択したときには前記駆動目標トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが前記第2の電動機から出力されるよう前記第2のインバータを制御し、前記非制振制御モードを選択したときには前記駆動目標トルクが前記第2の電動機から出力されるよう前記第2のインバータを制御する手段であり、
更に、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記内燃機関の始動時に想定される前記第2の電動機のトルクおよび回転数を前記制御対応関係に適用して、前記内燃機関の始動時に前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御することになる前記駆動電圧系の電圧である始動時制振制御電圧を設定し、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧より低いときには、前記駆動電圧系の電圧を前記始動時制振制御電圧以上に上昇させた後に、前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータとを制御する手段である、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド車では、駆動電圧系の電圧を調節しながら走行用の要求トルクに基づくトルクによって走行するよう内燃機関と第1のインバータと第2のインバータと昇圧コンバータとを制御し、第2のインバータについては、第2の電動機による制振制御を実行する制御モードである制振制御モードと第2の電動機による制振制御を実行しない制御モードである非制振制御モードとを含む第2のインバータの制御モードと駆動電圧系の電圧と第2の電動機のトルクおよび回転数との関係である制御対応関係に駆動電圧系の電圧と第2の電動機から出力すべき駆動目標トルクと第2の電動機の回転数とを適用して第2のインバータの制御モードを選択し、制振制御モードを選択したときには駆動目標トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが第2の電動機から出力されるよう第2のインバータを制御し、非制振制御モードを選択したときには駆動目標トルクが第2の電動機から出力されるよう第2のインバータを制御する。そして、内燃機関の始動が指示されたときには、内燃機関の始動時に想定される第2の電動機のトルクおよび回転数を制御対応関係に適用して、内燃機関の始動時に制振制御モードで第2のインバータを制御することになる駆動電圧系の電圧である始動時制振制御電圧を設定し、駆動電圧系の電圧が始動時制振制御電圧より低いときには、駆動電圧系の電圧を始動時制振制御電圧以上に上昇させた後に、制振制御モードで第2のインバータを制御しながら第1の電動機によって内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1のインバータと第2のインバータと昇圧コンバータとを制御する。これにより、内燃機関を始動する際の車両の振動を抑制することができる。しかも、内燃機関の始動時に、駆動電圧系の電圧を最大許容電圧まで一律に上昇させてから第1の電動機による内燃機関のモータリングを開始するものに比して、内燃機関の始動が指示されてから第1の電動機による内燃機関のモータリングを開始するまでの時間の短縮を図ることができるから、内燃機関の始動が指示されてから始動完了までに要する時間の短縮を図ることができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記内燃機関の始動時に想定される前記第2の電動機のトルクおよび回転数と前記制御対応関係とにより、前記駆動電圧系の最大許容電圧以下の範囲内に前記始動時制振制御電圧がないとき(前記内燃機関の始動時には前記駆動電圧系の電圧に拘わらず前記非制振制御モードで前記第2のインバータを制御することになるとき)には、直ちに、前記非制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、駆動電圧系の電圧を最大許容電圧まで上昇させたとしても制振制御モードで第2のインバータを制御しないときに、内燃機関の始動が指示されてから始動完了までに要する時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧以上のときには、直ちに、前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう制御する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧より低いときには、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧以上に上昇するのに要する時間が経過したときに前記第1の電動機による前記内燃機関のモータリングを開始する手段である、ものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明のハイブリッド車において、前記制振制御モードは、パルス幅変調による擬似的三相交流電圧を前記電動機に供給する正弦波制御モードであり、前記非制振制御モードは、矩形波電圧を前記電動機に供給する矩形波制御モードまたは擬似的三相交流電圧と矩形波電圧との中間の過変調電圧を前記電動機に供給する過変調制御モードである、ものとすることもできる。
【0013】
加えて、本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構を備え、前記第2の電動機は、前記駆動軸に接続されてなり、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記要求トルクと、前記内燃機関を始動する際に前記第1の電動機から出力されて前記遊星歯車機構を介して前記駆動軸に作用する最大トルクを打ち消すためのトルクと、の和のトルクと前記第2の電動機の回転数とを前記制御対応関係に適用して前記始動時制振制御電圧を設定する手段である、ものとすることもできる。
【0014】
また、本発明のハイブリッド車において、前記制御対応関係は、前記駆動電圧系の電圧が高いほど前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御する前記第2の電動機のトルクおよび回転数の領域が広くなるよう定めた前記駆動電圧系の電圧と前記第2の電動機のトルクおよび回転数と前記第2のインバータの制御モードとの関係である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
【図3】HVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図5】モータECU40により実行されるモータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】制御対応関係の一例を示す説明図である。
【図7】始動時駆動制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】モータリングトルク設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】モータMG1によってエンジン22をモータリングする際のプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図9に示す。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2はモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、駆動電圧系電力ライン54aという)とバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ライン54bという)とに接続されて駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを調節すると共に駆動電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、インバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に昇圧コンバータ55を制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
【0018】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサからの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサからの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブや排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサからのカムポジションθca,スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットルポジションSP,吸気管に取り付けられたエアフローメータからの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサからの吸気温Ta,排気系に取り付けられた空燃比センサからの空燃比AF,同じく排気系に取り付けられた酸素センサからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されており、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁への駆動信号やスロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号,吸気バルブの開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0019】
モータMG1,MG2は、いずれも、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、図2に示すように、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26と、により構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれ駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ41,42に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を調節することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。インバータ41,42は、駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とを共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。駆動電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ57が接続されている。
【0020】
昇圧コンバータ55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ駆動電圧系電力ライン54aの正極母線,駆動電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線に接続されており、トランジスタT31,T32の接続点と電池電圧系電力ライン54bの正極母線とにリアクトルLが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフすることにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して駆動電圧系電力ライン54aに供給したり、駆動電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。電池電圧系電力ライン54bの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ58が接続されている。
【0021】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(駆動電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VLなどが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2を演算したり、モータMG2の回転角速度ωm2に基づいてモータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbを演算したりしている。なお、駆動輪回転角速度ωbは、モータMG2から駆動輪38a,38bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとしたり、駆動輪38a,38bに車輪速センサを取り付けて車輪速センサからの信号に基づいて演算するものとしたりすることができる。
【0022】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0023】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0024】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードとは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
【0025】
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図3は、HVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0026】
駆動制御ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、図示しないクランクポジションセンサにより検出されたクランクポジションθcrに基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHは、電圧センサ57aにより検出されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。
【0027】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定すると共に(ステップS110)、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数など)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算し(ステップS112)、計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を計算する(ステップS114)。ここで、要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。
【0028】
続いて、エンジン22が運転中であるか運転停止中であるかを判定し(ステップS120)、エンジン22が運転中であると判定されたときには、エンジン22の要求パワーPe*をエンジン22を運転停止した方がよい要求パワーPe*の範囲の上限としての停止用閾値Pstopと比較する(ステップS130)。
【0029】
エンジン22の要求パワーPe*が停止用閾値Pstopより大きいときには、エンジン22の運転を継続する(エンジン運転モードでの走行を継続する)と判断し、要求パワーPe*をエンジン22から効率よく出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ラインに要求パワーPe*を適用してエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し(ステップS140)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2とプラネタリギヤ30のギヤ比ρ(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)とを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共にエンジン22の目標トルクTe*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとモータMG1の目標回転数Nm1*および回転数Nm1とを用いて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を計算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、プラネタリギヤ30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤの回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリアの回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2である駆動軸36の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルク(−Tm1/ρ)と、モータMG2から駆動軸36に出力されるトルクTm2とを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1の回転数Nm1が目標回転数Nm1*となるようにするためのフィードバック制御の関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0030】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0031】
続いて、次式(3)により要求トルクTr*にモータMG1のトルク指令Tm1*をプラネタリギヤ30のギヤ比ρで除したものを加えてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値としての仮トルクTm2tmpを計算し(ステップS160)、式(4)および式(5)によりバッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG1のトルク指令Tm1*に回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で除してモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS162)、式(6)により仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm2*を設定する(ステップS164)。ここで、式(3)は、図4の共線図から容易に導くことができる。
【0032】
Tm2tmp=Tr*+Tm1*/ρ (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0033】
そして、走行用パワーPdrv*に応じた電圧である走行用パワー起因電圧VHpdを駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定する(ステップS170)。ここで、走行用パワー起因電圧VHpdは、実施例では、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で、モータMG1,MG2の駆動によって走行用パワーPdrv*を駆動軸36に出力可能な範囲内で比較的低い電圧を用いるものとした。これは、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用パワーPdrv*を駆動軸36に出力できるようにすると共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを高くすることによる昇圧コンバータ55での損失を抑制するためである。この走行用パワー起因電圧VHpdは、走行用パワーPdrv*が大きいほど直線的や曲線的に大きくなる傾向に定めるものとしてもよいし、段階的(例えば、50Vや100V毎など)に大きくなる傾向に定めるものとしてもよい。なお、最大許容電圧VHmaxは、コンデンサ57の耐圧より若干低い電圧などを用いることができる。
【0034】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*についてはエンジンECU24に送信し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagについてはモータECU40に送信して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる運転ポイント(目標運転ポイント)で運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを受信したモータECU40は、図5のモータ制御ルーチンにより、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なうと共に駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに基づいて昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。以下、図3の駆動制御ルーチンの説明を一旦中断し、図5のモータ制御ルーチンについて説明する。図5のモータ制御ルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0035】
モータ制御ルーチンが実行されると、モータECU40は、まず、モータMG2のトルク指令Tm2*や回転数Nm2,モータMG2の回転角速度ωm2,モータMG2の回転軸に換算した駆動輪38a,38bの回転角速度である駆動輪回転角速度ωb,電圧センサ57aからの駆動電圧系電力ライン54aの電圧VH,駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS300)。ここで、モータMG2のトルク指令Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagは、図3の駆動制御ルーチンにより設定されたものをHVECU70から通信により入力するものとした。また、モータMG2の回転数Nm2や回転角速度ωm2,駆動輪回転角速度ωbは、回転位置検出センサ44からのモータMG2の回転子の回転位置θm2に基づいて演算されたものを入力するものとした。
【0036】
こうしてデータを入力すると、入力した駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG1のトルク指令Tm1*および回転数Nm1とに基づいてインバータ41の制御モードCm1を設定すると共に(ステップS310)、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2のトルク指令Tm2*および回転数Nm2とに基づいてインバータ42の制御モードCm2を設定する(ステップS320)。ここでは、インバータ42の制御モードCm2の設定を例として説明する。インバータ42の制御モードCm2は、実施例では、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2のトルク指令Tm2*および回転数Nm2とに応じて、モータMG2の電圧指令と三角波電圧との比較によってトランジスタT21〜T26のオン時間の割合を調節するパルス幅変調(PWM)制御において三角波電圧の振幅以下の振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる擬似的三相交流電圧をモータMG2に供給する正弦波制御モード,パルス幅変調制御において三角波電圧の振幅より大きな振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる過変調電圧をモータMG2に供給する過変調制御モード,矩形波電圧をモータMG2に供給する矩形波制御モードから1つを選択して設定するものとした。具体的には、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2のトルクTmおよび回転数Nm2と制御モードCm2との関係を予め定めて制御対応関係として図示しないROMに記憶しておき、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとモータMG2のトルク指令Tm2*および回転数Nm2とが与えられると記憶した制御対応関係から対応する制御モードCm2を導出して設定するものとした。制御対応関係の一例を図6に示す。図6中、点A〜点Dは、モータMG2のトルク指令Tm2*および回転数Nm2からなる目標駆動点(駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHには依存しない)を示す。インバータ42の制御モードCm2は、図6に示すように、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VH毎に、モータMG2のトルク指令Tm2*や回転数Nm2が小さい側から順に正弦波制御モード,過変調制御モード,矩形波制御モードとなるよう定められていると共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが高いほど正弦波制御モードと過変調制御モードとの境界や過変調制御モードと矩形波制御モードとの境界が高回転高トルク側となるよう定められている。図6から分かるように、モータMG2の目標駆動点が点Aのときには駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが電圧VH1〜VH3のいずれの場合でも正弦波制御モードをインバータ42の制御モードCm2として設定することになるが、モータMG2の目標駆動点が点B〜Dのときには駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHに応じて正弦波制御モード,過変調制御モード,矩形波制御モードからインバータ42の制御モードCm2を設定することになる。ここでは、インバータ42の制御モードCm2の設定について説明したが、インバータ41の制御モードCm1の設定についても同様に行なうことができる。モータMG1,MG2やインバータ41,42の特性として、矩形波制御モード,過変調制御モード,正弦波制御モードの順で、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性がよくなり、出力可能なトルクが小さくなり、インバータ41,42のスイッチング損失などが大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、正弦波制御モードでインバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2の出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルク領域では、矩形波制御モードを用いてインバータ41,42を制御することによって大きなトルクを出力可能とすると共にインバータ41,42のスイッチング損失などを低減することができる。
【0037】
続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*を実行用トルクT1*として設定し(ステップS330)、インバータ42の制御モードが正弦波制御モードであるか否かを判定し(ステップS340)、インバータ42の制御モードが正弦波制御モードであると判定されたときには、次式(7)により駆動輪回転角速度ωbとモータMG2の回転角速度ωm2との差に制御ゲインkvを乗じて制振トルクTvの仮の値としての仮制振トルクTvtmpを設定し(ステップ350)、式(8)により仮制振トルクTvtmpを制限トルクTlim,−Tlimで制限して制振トルクTvを設定し(ステップS352)、モータMG2のトルク指令Tm2*と制振トルクTvとの和をモータMG2の実行用トルクT2*として設定し(ステップS354)、設定した実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御モードCm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なう(ステップS370)。ここで、制限トルクTlim,−Tlimは、車両の振動を抑制することができる程度で且つモータMG2から出力する実行トルクT2*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutを超えない程度に制振トルクTvの大きさ(正側および負側の大きさ)を制限するために用いられるものであり、実験などによって定めることができる。こうしたインバータ42の制御により、車両に生じる振動を抑制することができる。以下、制振トルクTvがモータMG2から出力されるよう制御することを制振制御という。
【0038】
Tvtmp=kv・(ωb-ωm2) (7)
Tv=max(min(Tvtmp,Tlim),-Tlim) (8)
【0039】
そして、次式(9)により駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを前回の実行用電圧(前回VH*)に変化許容値ΔVHを加えた値(前回VH*+ΔVH)および前回の実行用電圧(前回VH*)から変化許容値ΔVHを減じた値(前回VH*−ΔVH)で制限して駆動電圧系電力ライン54aの実行用電圧VH*を設定すると共に(ステップS380)、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが実行用電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS390)、本ルーチンを終了する。ここで、変化許容値ΔVHは、本ルーチンの実行間隔での駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHの変化の許容値を定めるものであり、モータMG1,MG2のトルク変動を抑制可能な値などとして実験や解析などによって定めることができる。こうした昇圧コンバータ55の制御により、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHと目標電圧VHtagとの乖離が大きいときには、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて変化許容値ΔVHずつ近づけていく(変化許容値ΔVHをレート値として用いてレート処理を行なう)ことになる。
【0040】
VH*=max(min(VHtag,前回VH*+ΔVH),前回VH*-ΔVH) (9)
【0041】
ステップS340でインバータ42の制御モードが正弦波制御モードでない、即ち、過変調制御モードまたは矩形波制御モードであると判定されたときには、モータMG2のトルク指令Tm2*をモータMG2の実行用トルクT2*として設定し(ステップS360)、設定した実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御モードCm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行ない(ステップS370)、上述の式(9)により駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを値(前回VH*+ΔVH),(前回VH*−ΔVH)で制限して駆動電圧系電力ライン54aの実行用電圧VH*を設定すると共に(ステップS380)、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが実行用電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS390)、本ルーチンを終了する。過変調制御モードや矩形波制御モードでインバータ42を制御するときには、正弦波制御モードでインバータ42を制御するときに比してモータMG2の制御性がよくないことから、モータMG2による制振制御を適正に行なうことができない可能性がある。したがって、実施例では、過変調制御モードや矩形波制御モードでインバータ42を制御するときには、モータMG2による制振制御を実行しないものとした。
【0042】
以上、図5のモータ制御ルーチンについて説明した。図3の駆動制御ルーチンの説明に戻る。ステップS130でエンジン22の要求パワーPe*が停止用閾値Pstop以下であると判定されると、エンジン運転モードからモータ運転モードに移行すると判断し、エンジン22の運転を停止し(ステップS190)、モータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に(ステップS210)、モータMG2から出力すべきトルクの仮の値としての仮トルクTm2tmpに要求トルクTr*を設定し(ステップS220)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutをモータMG2の回転数Nm2で除してモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS222)、上述の式(6)により仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm2*を設定し(ステップS224)、上述のステップS170の処理と同様に走行用パワー起因電圧VHpd(走行用パワーPdrv*に応じた電圧)を駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定し(ステップS230)、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagをモータECU40に送信して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを受信したモータECU40は、上述の図5のモータ制御ルーチンにより、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づく実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御モードCm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なうと共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに基づく実行用電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。
【0043】
こうしてエンジン22の運転を停止すると、ステップ120でエンジン22が運転停止中であると判定され、エンジン22の要求パワーPe*をエンジン22を運転した方がよい要求パワーPe*の範囲の下限としての始動用閾値Pstartと比較する(ステップS200)。ここで、始動用閾値Pstartは、エンジン22の始動と停止とが頻繁に生じないようにヒステリシスを持たせるために、停止用閾値Pstopより所定のマージンだけ大きな値を用いるものとした。
【0044】
エンジン22の要求パワーPe*が始動用閾値Pstart未満のときには、エンジン22の運転停止を継続する(モータ運転モードでの走行を継続する)と判断し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定してモータECU40に送信して(ステップS210〜S240)、本ルーチンを終了する。一方、エンジン22の要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上のときには、モータ運転モードからエンジン運転モードに移行すると判断し、走行しながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動するために、図7の始動時駆動制御を実行して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。こうしてエンジン22の始動が完了すると(後述の始動完了フラグFsに値1が設定されると)、ステップS120でエンジン22が運転中であると判定され、ステップS130以降の処理を実行する。
【0045】
図7の始動時駆動制御では、まず、エンジン22の運転停止中にエンジン22の要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上に至ってから(エンジン22の始動が指示されてから)本ルーチンを初めて実行するときであるか否かを判定し(ステップS400)、エンジン22の始動が指示されてから本ルーチンを初めて実行するときであると判定されたときには、エンジン22の始動時に想定されるモータMG2の駆動点(トルクTm2および回転数Nm2)である始動時駆動点と上述の制御対応関係とを用いて、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で、エンジン22の始動時に正弦波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行する)ことになる駆動電圧系電力ライン54aの電圧としての始動時正弦波制御電圧VHsinを設定する処理を実行し(ステップS410)、この処理によって始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できたか否か(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがあるか否か)を判定し(ステップS420)、始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できたときには、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHと始動時正弦波制御電圧VHsinとを比較する(ステップS430)。ステップS410における始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できなかったときとしては、始動時駆動点でモータMG2を駆動する場合に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHに拘わらず過変調制御モードまたは矩形波制御モードでインバータ42を制御することになる(駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxまで上昇させたとしても正弦波制御モードでインバータ42を制御しない)ときを考えることができる。なお、始動時正弦波制御電圧VHsinの設定の詳細については後述する。
【0046】
ステップS420で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できた(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがある)と判定され且つステップS430で駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsinより低いときには、設定した始動時正弦波制御電圧VHsinを駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定すると共に(ステップS440)、エンジン22の始動が指示されてからエンジン22の始動を開始する(モータMG1によるエンジン22のモータリングを開始する)までの時間としての待機時間twtに、エンジン22の始動が指示されてから駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsin以上に至るまでに要する時間を設定する(ステップS450)。ここで、待機時間twtは、例えば、始動時正弦波制御電圧VHsinと駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHとの差分を上述の変化許容値ΔVHで除して得られる時間やそれより若干長い時間などを用いることができる。
【0047】
ステップS420で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できた(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがある)と判定され且つステップS430で駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsin以上のときには、エンジン22の始動を開始する前に駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを上昇させなくてもエンジン22の始動時には正弦波制御モードでインバータ42を制御することになると判断し、図3の駆動制御ルーチンのステップS170の処理と同様に、走行用パワー起因電圧VHpd(走行用パワーPdrv*に応じた電圧)を駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定すると共に(ステップS460)、始動時待機時間twtに値0を設定する(ステップS470)。
【0048】
ステップS420で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できなかった(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがない)と判定されたときには、始動時駆動点でモータMG2を駆動する場合に駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHに拘わらず過変調制御モードまたは矩形波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行しない)ことになると判断し、走行用パワー起因電圧VHpd(走行用パワーPdrv*に応じた電圧)を駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定すると共に(ステップS460)、始動時待機時間twtに値0を設定する(ステップS470)。
【0049】
ステップS400でエンジン22の始動が指示されてから本ルーチンを初めて実行するときではないと判定されたときには、駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに前回の目標電圧(前回VHtag)を設定する(ステップS475)。
【0050】
こうしてステップS440,S460で駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定すると共にステップS450,S470で待機時間twtを設定するか、ステップS475で駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定すると、エンジン22の始動が指示されてから待機時間twtが経過したか否かを判定し(ステップS480)、待機時間twtが経過していないと判定されたときには、図3の駆動制御ルーチンのステップS210〜S224,S240の処理と同様に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagをモータECU40に送信して(ステップS490〜S510)、本ルーチンを終了する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを受信したモータECU40は、上述の図5のモータ制御ルーチンにより、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づく実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御モードCm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なうと共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに基づく実行用電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。この場合、モータMG1によるエンジン22のモータリングを開始せずに、モータ運転モードによる走行を継続することになる。
【0051】
ステップS480で待機時間twtが経過したと判定されたとき(待機時間twtが値0のときを含む)には、図8のモータリングトルク設定ルーチンによって設定されるエンジン22をモータリングするためのモータリングトルクTcrをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定する(ステップS520)。以下、図7の始動時駆動制御の説明を一旦中断し、図8のモータリングトルク設定ルーチンについて説明する。なお、図8のルーチンは、エンジン22の始動が指示されてから待機時間twtが経過したときに実行が開始される。
【0052】
図8のモータリングトルク設定ルーチンでは、HVECU70は、まず、モータリングトルクTcrに値0を設定する(ステップS600)。そして、モータリングトルクTcrが予め定められた最大トルクTcrpeakに至るまでモータリングトルクTcrを上昇レートTupずつ増加させる処理を実行し(ステップS610,S620)、モータリングトルクTcrが最大トルクTcrpeakに至ると、エンジン22の回転数Neがエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数として定められた所定回転数Nst(例えば、1000rpmや120rpmなど)以上に至るのを待つ(ステップS630,S640)。そして、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nst以上に至ると、モータリングトルクTcrが値0以下に至るまでモータリングトルクTcrを下降レートTdownずつ減少させる処理を実行しながら(ステップS650)、エンジン22が完爆するのを待って(ステップS660)、モータリングトルク設定ルーチンを終了する。ここで、上昇レートTupや下降レートTdownは、それぞれトルク指令Tm1*の上昇の程度,下降の程度を定めるレート値であり、モータリングトルクTcrを上昇レートTupずつ増加させる処理,モータリングトルクTcrを下降レートTdownずつ減少させる処理を繰り返す時間間隔によって定められる。
【0053】
以上、図8のモータリングトルク設定ルーチンについて説明した。図7の始動時駆動制御の説明に戻る。ステップS520でモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると、図3の駆動制御ルーチンのステップS160〜S164の処理と同様にモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS530〜S534)、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagをモータECU40に送信し(ステップS540)、エンジン22の回転数Neを上述の所定回転数Nstと比較し(ステップS550)、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nst未満のときには、そのまま本ルーチンを終了する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを受信したモータECU40は、上述の図5のモータ制御ルーチンにより、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づく実行用トルクT1*,T2*でモータMG1,MG2が駆動されるよう制御モードCm1,Cm2でインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なうと共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに基づく実行用電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。
【0054】
ステップS550でエンジン22の回転数Neが所定回転数Nst以上のときには、燃料噴射制御や点火制御の実行を指示するための制御信号をエンジンECU24に送信し(ステップS560)、エンジン22が完爆に至ったか否かを判定し(ステップS570)、エンジン22が完爆に至っていないと判定されたときにはそのまま本ルーチンを終了し、エンジン22が完縛に至ったと判定されたときにはエンジン22の始動が完了したことを示す始動完了フラグFsに値1を設定して(ステップS580)、本ルーチンを終了する。モータMG1によってエンジン22をモータリングする際のプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図9に示す。このようにエンジン22を始動することにより、ステップS410の処理で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できた(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがある)ときには、待機時間twt(値0を含む)が経過したときに、正弦波制御モードでインバータ42を制御しながら(モータMG2による制振制御を実行しながら)モータMG1によってエンジン22をモータリングして始動することになり、ステップS410の処理で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できなかった(最大許容電圧VHmax以下の範囲内に始動時正弦波制御電圧VHsinがない)ときには、値0が設定された待機時間twtが経過したときに、即ち、直ちに、過変調制御モードまたは矩形波制御モードでインバータ42を制御しながら(モータMG2による制振制御を実行せずに)モータMG1によってエンジン22をモータリングして始動することになる。こうして始動完了フラグFsに値1が設定されると、図3の駆動制御ルーチンのステップS120でエンジン22が運転中であると判定され、ステップS130以降の処理を実行する。
【0055】
次に、この始動時駆動制御のステップS410の処理、即ち、始動時正弦波制御電圧VHsinを設定する処理について説明する。始動時正弦波制御電圧VHsinは、実施例では、駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*とモータリングトルクTcrの最大値として予め定められた最大トルクTcrpeakとを用いてエンジン22の始動時におけるモータMG2のトルク指令Tm2*の最大値である始動時最大トルクTm2peakを上述の式(3)の「Tm2tmp」,「Tm1*」を「Tm2peak」,「Tcrpeak」に置き換えて計算し、上述の制御対応関係(図6参照)に始動時最大トルクTm2peakとモータMG2の回転数Nm2と(からなる始動時駆動点)を適用して、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定可能であれば、正弦波制御モードでインバータ42を制御することになる範囲内で比較的低い電圧を始動時正弦波制御電圧VHsinとして設定するものとした。なお、モータMG2の始動時駆動点におけるトルクは、図9の共線図や上述の式(3)から分かるように、モータMG1のトルクTm1(モータリングトルクTcr)に応じて変化する。このため、エンジン22の始動が指示されたときやモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するときのモータMG2のトルク(要求トルクTr*)を始動時駆動点のトルクとして用いることも考えられるが、図6から分かるように、モータMG2のトルクTm2が大きいほど始動時正弦波制御電圧VHsinが高くなる傾向があることから、実施例では、モータMG1によるエンジン22のモータリング開始からエンジン22の始動完了までに亘って正弦波制御モードでインバータ42を制御できるようにするために、始動時最大トルクTm2peakを始動時駆動点のトルクとして用いるものとした。また、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定可能なときに、正弦波制御モードでインバータ42を制御することにになる範囲内で比較的低い電圧を始動時正弦波制御電圧VHsinに設定するのは、昇圧コンバータ55での損失を抑制すると共に、エンジン22の始動が指示されてからモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するまでの時間(待機時間twt)を短縮するためである。
【0056】
以下、図6を用いて具体例を説明する。いま、図6において、最大許容電圧VHmaxが電圧VH3であり、エンジン22の始動が指示されたときの走行用パワー起因電圧VHpdおよび駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが電圧VH1であり、エンジン22の始動が指示されたときに、電圧VH1〜VH3のいずれかを駆動電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定する場合を考える。なお、図6から分かるように、モータMG2のトルクTm2が大きく回転数Nm2が大きいほど始動時正弦波制御電圧VHsinは高くなる傾向があり、高回転数領域では、モータMG2のトルクTm2に拘わらず過変調制御モードまたは矩形波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行しない)ことになる。
【0057】
始動時最大トルクTm2peakと回転数Nm2とからなる始動時駆動点が点Aのときには、電圧VH1〜VH3のいずれを用いたとしても正弦波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行する)ことになるから、待機時間twtをより短くしてエンジン22の始動を迅速に行なうために、走行用パワー起因電圧VHpd(電圧VH1)を目標電圧VHtagに設定すると共に待機時間twtに値0を設定する(ステップS460,S470)。また、始動時駆動点が点B,点Cのときにはそれぞれ正弦波制御モードでインバータ42を制御することになる駆動電圧系電力ライン54aの電圧(複数ある場合には最小値)VH2,VH3を目標電圧VHtagに設定すると共に設定した目標電圧VHtagに応じて待機時間twtを設定する(ステップS440,S450)。これらの場合、エンジン22の始動が指示されてから駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag以上に至るのに要する時間(値0を含む)が経過したときに、モータMG1によるエンジン22のモータリングを開始して、正弦波制御モードでインバータ42を制御しながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動するから、エンジン22の始動時に車両に振動が生じるのを抑制することができると共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを一律に最大許容電圧VHmaxまで上昇させた後にエンジン22を始動するものに比してエンジン22の始動が指示されてから始動完了までに要する時間の短縮を図ることができる。
【0058】
一方、始動時駆動点が点Dのときには、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmax(電圧VH3)まで上昇させたとしても過変調制御モードまたは区家は制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行しない)ことになるから、走行用パワー起因電圧VHpd(電圧VH1)を目標電圧VHtagに設定すると共に待機時間twtに値0を設定する(ステップS460,S470)。これにより、モータMG2による制振制御は行なわれないものの、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを一律に最大許容電圧VHmaxまで上昇させた後にエンジン22を始動するものに比してエンジン22の始動が指示されてから始動完了までに要する時間の短縮を図ることができる。
【0059】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の始動が指示されたときには、エンジン22の始動時に想定されるモータMG2の駆動点(トルクTm2および回転数Nm2)である始動時駆動点を制御対応関係に適用して、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で、エンジン22の始動時に正弦波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行する)ことになる駆動電圧系電力ライン54aの電圧としての始動時正弦波制御電圧VHsinを設定し、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsinより低いときには、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを始動時正弦波制御電圧VHsin以上に上昇させた後に(エンジン22の始動が指示されてから待機時間twtが経過したときに)、正弦波制御モードでインバータ42を制御しながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動するから、エンジン22を始動する際の車両の振動を抑制することができると共に、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxまで一律に上昇させた後にモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するものに比してエンジン22の始動が指示されてから始動完了までに要する時間の短縮を図ることができる。
【0060】
実施例のハイブリッド自動車20では、最大許容電圧VHmax以下の範囲内でエンジン22の始動時に正弦波制御モードでインバータ42を制御する電圧がない(駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHに拘わらず過変調制御モードまたは矩形波制御モードでインバータ42を制御する)ときには、走行用パワー起因電圧VHpdを目標電圧VHtagに設定するものとしたが、最大許容電圧VHmaxを目標電圧VHtagに設定するものとしてもよい。
【0061】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動が指示されて図7の始動時駆動制御を初めて実行するときに、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsinより低いときには始動時正弦波制御電圧VHsinを目標電圧VHtagに設定し、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsin以上のときや始動時正弦波制御電圧VHsinを設定できないときには走行用パワー起因電圧VHpdを目標電圧VHtagに設定し、その後に図7の始動駆動制御を実行するときには、前回の目標電圧(前回VHtag)を保持するものとしたが、図7の始動時駆動制御を初めて実行するときに走行用パワー起因電圧VHpdを目標電圧VHtagに設定するとき(待機時間twtに値0を設定するとき)には、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHの上昇を待たずにモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するから、その後、図7の始動駆動制御を実行する毎に、走行用パワー起因電圧VHpdを目標電圧VHtagに設定するものとしてもよい。
【0062】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動が指示されてから待機時間twtが経過したときにモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するものとしたが、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag以上に至ったとき(最初から電圧VHが目標電圧VHtag以上のときを含む)にモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始するものとしてもよい。
【0063】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動が指示されて図7の始動時駆動制御を初めて実行するときには、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で始動時正弦波制御電圧VHsinを設定可能なときには、要求トルクTr*と最大トルクTcrpeakとを用いて得られる始動時最大トルクTm2peakと、モータMG2の回転数Nm2とを制御対応関係(図6参照)に適用して始動時正弦波制御電圧VHsinを設定するものとしたが、エンジン22の始動が指示されたときのモータMG2の回転数Nm2に代えて、エンジン22の始動時に想定されるモータMG2の回転数Nm2の最大値を用いて始動時正弦波制御電圧VHsinを設定するものとしてもよい。エンジン22を始動するときとしては、通常、アクセルペダル83が踏み込まれていて車両の加速中であることが多く、また、モータMG2の回転数Nm2が大きいほど始動時正弦波制御電圧VHsinが高くなる(図6参照)ことから、このように始動時正弦波制御電圧VHsinを設定することにより、始動時正弦波制御電圧VHsinをより適正なものとすることができる。
【0064】
実施例のハイブリッド自動車20では、始動時駆動点におけるトルクとして始動時最大トルクTm2peakを用いて始動時正弦波制御電圧VHsinを設定するものとしたが、これに代えて、始動時駆動範囲におけるトルク範囲としてモータMG1によるエンジン22のモータリング開始からエンジン22の始動完了までに想定されるトルク範囲(Tr*〜Tr*+Tcrpeak/ρ)を用いて始動時正弦波制御電圧VHsinを設定するものとしてもよい。この場合、トルク範囲(Tr*〜Tr*+Tcrpeak/ρ)とモータMG2の回転数Nm2とによって形成されるモータMG2の駆動範囲が正弦波制御モードの範囲内となる電圧を始動時正弦波制御電圧VHsinとして設定すればよい。
【0065】
実施例のハイブリッド自動車20では、正弦波制御モードでインバータ42を制御するときにはモータMG2による制振制御を実行し、過変調制御モードや矩形波制御モードでインバータ42を制御するときにはモータMG2による制振制御を実行しないものとしたが、過変調制御モードでインバータ42を制御するときには、モータMG2による制振制御を実行するものとしてもよい。
【0066】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸36が接続された車軸(駆動輪38a,38bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪39a,39bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。この場合、モータMG2の回転角速度ωm2に基づいてモータMG2の回転軸に換算した車輪39a,39bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbを演算し、上述の式(1)により仮制振トルクTvtmpを計算すればよい。
【0067】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪38a,38bに動力を出力する駆動軸36に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン22からの動力の一部を駆動軸36に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0068】
実施例では、本発明をハイブリッド自動車20の形態として説明したが、自動車以外の車両(例えば、列車など)の形態としてもよい。
【0069】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「第1の電動機」に相当し、モータMG2が「第2の電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ55が「昇圧コンバータ」に相当し、図3の駆動制御ルーチンや図7の始動時駆動制御,図8のモータリングトルク設定ルーチンを実行するHVECU70や、エンジン22を制御するエンジンECU24,図5のモータ制御ルーチンを実行してインバータ41,42や昇圧コンバータ55を制御するモータECU40が「制御手段」に相当する。
【0070】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22に限定されるものではなく、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「第1の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、内燃機関の出力軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「第1のインバータ」としては、インバータ41に限定されるものではなく、第1の電動機を駆動するためのものであれば如何なるタイプのインバータであっても構わない。「第2の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、走行用の動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「第2のインバータ」としては、インバータ42に限定されるものではなく、第2の電動機を駆動するためのものであれば如何なるタイプのインバータであっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「昇圧コンバータ」としては、昇圧コンバータ55に限定されるものではなく、第1のインバータおよび第2のインバータが接続された駆動電圧系と二次電池が接続された電池電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を調節可能なものであれば如何なるタイプの昇圧コンバータとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22の始動が指示されたときには、エンジン22の始動時に想定されるモータMG2の駆動点(トルクTm2および回転数Nm2)である始動時駆動点を制御対応関係に適用して、最大許容電圧VHmax以下の範囲内で、エンジン22の始動時に正弦波制御モードでインバータ42を制御する(モータMG2による制振制御を実行する)ことになる駆動電圧系電力ライン54aの電圧としての始動時正弦波制御電圧VHsinを設定し、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHが始動時正弦波制御電圧VHsinより低いときには、駆動電圧系電力ライン54aの電圧VHを始動時正弦波制御電圧VHsin以上に上昇させた後に(エンジン22の始動が指示されてから待機時間twtが経過したときに)、正弦波制御モードでインバータ42を制御しながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動するものに限定されるものではなく、駆動電圧系の電圧を調節しながら走行用の要求トルクに基づくトルクによって走行するよう内燃機関と第1のインバータと第2のインバータと昇圧コンバータとを制御し、第2の電動機による制振制御を実行する制御モードである制振制御モードと第2の電動機による制振制御を実行しない制御モードである非制振制御モードとを含む第2のインバータの制御モードと駆動電圧系の電圧と第2の電動機のトルクおよび回転数との関係である制御対応関係に駆動電圧系の電圧と第2の電動機から出力すべき駆動目標トルクと第2の電動機の回転数とを適用して第2のインバータの制御モードを選択し、制振制御モードを選択したときには駆動目標トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが第2の電動機から出力されるよう第2のインバータを制御し、非制振制御モードを選択したときには駆動目標トルクが第2の電動機から出力されるよう第2のインバータを制御し、内燃機関の始動が指示されたときには、内燃機関の始動時に想定される第2の電動機のトルクおよび回転数を制御対応関係に適用して、内燃機関の始動時に制振制御モードで第2のインバータを制御することになる駆動電圧系の電圧である始動時制振制御電圧を設定し、駆動電圧系の電圧が始動時制振制御電圧より低いときには、駆動電圧系の電圧を始動時制振制御電圧以上に上昇させた後に、制振制御モードで第2のインバータを制御しながら第1の電動機によって内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1のインバータと第2のインバータと昇圧コンバータとを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0071】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0072】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 駆動輪、39a,39b 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関の出力軸に動力を入出力可能な第1の電動機と、前記第1の電動機を駆動するための第1のインバータと、走行用の動力を入出力可能な第2の電動機と、前記第2の電動機を駆動するための第2のインバータと、二次電池と、前記第1のインバータおよび前記第2のインバータが接続された駆動電圧系と前記二次電池が接続された電池電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を調節可能な昇圧コンバータと、前記駆動電圧系の電圧を調節しながら走行用の要求トルクに基づくトルクによって走行するよう前記内燃機関と前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータとを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車において、
前記制御手段は、前記第2の電動機による制振制御を実行する制御モードである制振制御モードと該第2の電動機による制振制御を実行しない制御モードである非制振制御モードとを含む前記第2のインバータの制御モードと前記駆動電圧系の電圧と前記第2の電動機のトルクおよび回転数との関係である制御対応関係に前記駆動電圧系の電圧と前記第2の電動機から出力すべき駆動目標トルクと前記第2の電動機の回転数とを適用して前記第2のインバータの制御モードを選択し、前記制振制御モードを選択したときには前記駆動目標トルクと車両の振動を抑制するための制振トルクとの和のトルクが前記第2の電動機から出力されるよう前記第2のインバータを制御し、前記非制振制御モードを選択したときには前記駆動目標トルクが前記第2の電動機から出力されるよう前記第2のインバータを制御する手段であり、
更に、前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記内燃機関の始動時に想定される前記第2の電動機のトルクおよび回転数を前記制御対応関係に適用して、前記内燃機関の始動時に前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御することになる前記駆動電圧系の電圧である始動時制振制御電圧を設定し、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧より低いときには、前記駆動電圧系の電圧を前記始動時制振制御電圧以上に上昇させた後に、前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータとを制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記内燃機関の始動時に想定される前記第2の電動機のトルクおよび回転数と前記制御対応関係とにより、前記駆動電圧系の最大許容電圧以下の範囲内に前記始動時制振制御電圧がないときには、直ちに、前記非制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧以上のときには、直ちに、前記制振制御モードで前記第2のインバータを制御しながら前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動するよう制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧より低いときには、前記駆動電圧系の電圧が前記始動時制振制御電圧以上に上昇するのに要する時間が経過したときに前記第1の電動機による前記内燃機関のモータリングを開始する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記制振制御モードは、パルス幅変調による擬似的三相交流電圧を前記電動機に供給する正弦波制御モードであり、
前記非制振制御モードは、矩形波電圧を前記電動機に供給する矩形波制御モードまたは擬似的三相交流電圧と矩形波電圧との中間の過変調電圧を前記電動機に供給する過変調制御モードである、
ハイブリッド車。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構を備え、
前記第2の電動機は、前記駆動軸に接続されてなり、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動が指示されたとき、前記要求トルクと、前記内燃機関を始動する際に前記第1の電動機から出力されて前記遊星歯車機構を介して前記駆動軸に作用する最大トルクを打ち消すためのトルクと、の和のトルクと前記第2の電動機の回転数とを前記制御対応関係に適用して前記始動時制振制御電圧を設定する手段である、
ハイブリッド車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−232647(P2012−232647A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101728(P2011−101728)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】