説明

ハニカム型水素製造装置、それを用いた燃料電池発電装置、電気自動車、潜水船及び水素供給システム、並びに水素製造セル用反応管

【課題】低温で水素を含むガスを製造することができ、しかも、小型化が可能な水素製造装置を提供するとともに、その水素製造装置を用いた燃料電池発電装置、電気自動車、潜水船及び水素供給システム、並びにその水素製造装置に使用する反応管を提供する。
【解決手段】有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、筒状の隔膜(11)を有し筒状の隔膜(11)の内外側面のうち一方の側面に燃料極(12)及び他方の側面に酸化極(14)を設けた反応管をハニカム状に多数組み合わせた水素製造セル(10)、燃料極(12)に有機物と水を含む燃料を供給する手段(16)、酸化極(14)に酸化剤を供給する手段(17)、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段(23)を備えてなり、かつ、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む燃料を低温で分解し水素を含むガスを製造するための水素製造装置、その水素製造装置を用いた燃料電池発電装置、電気自動車、潜水船及び水素供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機物を含む燃料を低温で分解し水素を含むガスを製造する技術として、電気化学的反応により水素を発生させる方法及び装置が知られており、また、そのような電気化学的方法により発生した水素を利用した燃料電池が知られている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特許第3328993号公報
【特許文献2】特許第3360349号公報
【特許文献3】米国特許第6,299,744号明細書、米国特許第6,368,492号明細書、米国特許第6,432,284号明細書、米国特許第6,533,919号明細書、米国特許公開2003/0226763号公報
【特許文献4】特開2001−297779号公報
【0003】
特許文献1には、「陽イオン交換膜の対向する両面に1対の電極を設け、一方に設けられた触媒を含む電極に、メタノールと水を少なくとも含む燃料を接触させ、前記1対の電極に電圧を印加して前記電極から電子を取出すことによって前記電極上で前記メタノールおよび水から水素イオンを発生させる反応を進行させ、発生させた前記水素イオンを、前記陽イオン交換膜の対向する1対の面の他方に設けられた電極において、電子の供給により水素分子に変換することを特徴とする、水素発生方法。」(請求項1)の発明が記載され、また、燃料用電極に燃料であるメタノールとともに水または水蒸気を供給し、外部回路を通じて、燃料用電極から電子を引き抜くように電圧を印加することにより、燃料用電極で、CH3OH+2H2O→CO2+6e-+6H+の反応を進行させ、このようにして発生した水素イオンを、陽イオン交換膜を通過させ、対向電極側で、6H++6e-→3H2により、水素を選択的に生成させることが示されており(段落[0033]〜[0038])、さらに、特許文献2には、このような方法で発生させた水素を利用する燃料電池の発明が記載されている(段落[0052]〜[0056])。
特許文献1及び2に記載された発明によれば、低温度で水素を発生させることができる(特許文献1の段落[0042]、特許文献2の段落[0080])が、水素を発生させるためには、電圧を印加する必要があり、また、水素が発生するのは燃料用電極(燃料極)の対向電極側であり、対向電極に酸化剤を供給するものではないから、本発明のハニカム型水素製造装置とは明らかに異なる。
【0004】
特許文献3に記載された発明も、特許文献1及び2に記載された発明と同様に、燃料極であるアノード112で生成したプロトンが隔膜110を透過して、対極であるカソード114で水素が発生するものであるが、燃料極をアノードとし対極をカソードとして直流電源120から電圧を印加し、メタノール等の有機物燃料をアノード(燃料極)112に供給して電気分解するものであり、また、水素が発生するのは燃料極の対極側であり、対極に酸化剤を供給するものではないから、本発明のハニカム型水素製造装置とは明らかに異なる。
【0005】
特許文献4には、燃料電池システムにおいて、水素を発生する水素発生極を設けること(請求項1)が記載されているが、「多孔質電極(燃料極)1にアルコールと水を含む液体燃料を供給し、反対側のガス拡散電極(酸化剤極)2に空気を供給し、多孔質電極1の端子とガス拡散電極2の端子との間に負荷をつなぐと、通常の燃料電池の機能を有するMEA2の正極であるガス拡散電極2から負荷を介して多孔質電極1に正の電位が印加されるような電気的つながりができる。その結果、アルコールは水と反応して炭酸ガスと水素イオンが生成し、生成した水素イオンは電解質層5を経由して、中央のガス拡散電極6で水素ガスとして発生する。ガス拡散電極6では、もう一つの電解質層7との界面で電極反応が起こり、再び水素イオンとなって電解質層7中を移動し、ガス拡散電極2に到達する。ガス拡散電極2では、空気中の酸素と反応して水が生成する。」(段落[0007])と記載されているから、燃料電池によって発生させた電気エネルギーを用いて水素発生極(ガス拡散電極6)で水素を発生させ、これを燃料電池に供給するものであり、また、水素が発生するのは燃料極の対極側であるという点では、特許文献1〜3と同じである。
【0006】
また、プロトン伝導膜(イオン伝導体)を介してアノード(電極A)とカソード(電極B)とが形成された隔膜を備えた反応装置を用いて、電圧を印加し、若しくは印加しないで、又は電気エネルギーを取り出しながら、アルコール(メタノール)を酸化する方法の発明(特許文献5及び6参照)も知られているが、いずれも、アルコールを電気化学セルを用いて酸化させるプロセス(生成物は、炭酸ジエステル、ホルマリン、蟻酸メチル、ジメトキシメタン等)に関するものであり、アルコールからみて還元物である水素を発生させるプロセスではない。
【特許文献5】特開平6−73582号公報(請求項1〜3、段落[0050])
【特許文献6】特開平6−73583号公報(請求項1、8、段落[0006]、[0019])
【0007】
そして、上記いずれの技術も、隔膜と電極は平板状のものであるために、装置の小型化に限界があった。
一方、液体燃料直接供給形燃料電池(直接メタノール型燃料電池)については、隔膜(プロトン導電性固体高分子膜)を筒状(チューブ状)とし、その内外側面に燃料極及び空気極を設けたものが公知である(例えば、特許文献7〜9参照)。
【特許文献7】特許公開2001−313046号公報
【特許文献8】特許公開2002−222656号公報
【特許文献9】特許公開2003−297372号公報
【0008】
特許文献7〜9に記載された発明によれば、小型化が容易で携帯用電子機器の電源に利用できる直接メタノール型燃料電池が得られるが、いずれも、燃料電池に関するもので、水素製造装置に適用することを示唆するものではない。
【0009】
さらに、直接メタノール型燃料電池(DMFC)に関して、開回路で酸素欠乏状態の場合に、単一セル内で、電池反応と電解反応が共存し、酸化極でCH3OH+H2O→CO2+6H++6e-の反応、燃料極で6H++6e-→3H2の反応が生じ、燃料極側から水素が発生することが非特許文献1及び2には示されているが、非特許文献1の論文は、「水素の発生は、運転中のセルにおける電力のアウトプットを減少させるばかりでなく、開回路状態で燃料を連続的に消費するので、DMFCが運転中及び待機中のいずれの時でも、カソードに酸素を十分かつ一定に供給し続けることが重要である」と結論付け、非特許文献2の論文も、「大きなMEA面積を有するDMFCについては、システムのシャットダウン及びスタートアップによって引き起こされる水素の蓄積に注意する必要がある」と結論付けているから、いずれも、水素の製造を意図するものではない。
【非特許文献1】Electrochemical and Solid-State Letters,8(1)A52-A54(2005)
【非特許文献2】Electrochemical and Solid-State Letters,8(4)A211-A214(2005)
【0010】
また、燃料電池を組み入れた発電装置(電源装置)が提案されており、この燃料電池発電装置を移動用電源あるいはオンサイト用電源として使用する場合に、その搬送および据え付け作業を容易にするために、発電装置を構成する各機器を単一の金属製パッケージ中に一体化して収納するパッケージ型型燃料電池発電装置が用いられている。例えば、この種の燃料電池発電装置で、原燃料として都市ガス等の炭化水素系燃料が用いられる場合は、水素を主体とした燃料に改質するための燃料改質装置が単一のパッケージ(ユニットケース)内に内蔵される。パッケージ(ユニットケース)内には、この他に燃料電池本体、燃料電池で発生した直流電力を電源出力仕様に変換する電力変換装置、全体の制御を行う制御装置、燃料電池に関連して設けられるポンプやファン等の補機類が内蔵される(例えば、特許文献10〜14参照)。
【特許文献10】特開平5−290868号公報
【特許文献11】特開平10−284105号公報
【特許文献12】特開2002−170591号公報
【特許文献13】特開2003−217635号公報
【特許文献14】特開2003−297409号公報
【0011】
燃料改質装置は通常、改質器、CO変成器、CO除去器とから構成され、これらの機器内にはそれぞれ所定の触媒が充填されており、これらの触媒はいずれも高温で作用するため加熱する必要がある。このため、改質器にはバーナが併設され、起動時にはこのバーナで原燃料を燃焼させ、改質器内の触媒を約650〜700℃に昇温する。又、改質器の昇温に伴ってCO変成器、CO除去器の触媒も徐々に昇温するが、起動時の改質ガスは不安定であるため、直ちに燃料電池に供給せずにPGバーナに送り込んで燃焼する(特許文献14段落[0003])。
【0012】
一方、制御装置は多数の電子部品から構成されているから、燃料改質装置の発する高熱から保護しなければならない。このため、特許文献10や12のように燃料改質装置と制御装置との間に断熱隔壁を設ける技術、特許文献10や11のようにパッケージ内をブロア又は換気ファンにより強制換気して制御装置等を冷却する技術、特許文献13や14のように燃料改質装置の熱の影響が及ばないように制御装置を配置する技術等が開発されている。
このように、従来の燃料改質装置を使用した場合には、その熱影響を防止するために、種々の工夫をしなければならないという問題があった。
【0013】
高温の燃料改質装置を使用しないパッケージ型燃料電池発電装置としては、水素吸蔵合金を充填したボンベ(水素吸蔵ボンベ)と燃料電池を一体化したものが公知である(例えば、特許文献15及び16参照)。
【特許文献15】特開平6−60894号公報
【特許文献16】特開平10−92456号公報
【0014】
特許文献15及び16の燃料電池発電装置は、従来の燃料改質装置を使用する場合のような熱影響を防止するための手段を必要としないものであるが、水素吸蔵合金の水素の放出過程は吸熱反応であるから、水素燃料を供給する際に水素吸蔵合金の温度が低下し、温度の低下に伴い水素吸蔵合金の水素放出能力が低下するため、十分な水素の流量を確保するためには燃料電池本体での発生熱を水素吸蔵ボンベに導いて水素吸蔵合金を加熱する必要があり、また、ボンベを使用するものであるから、発電時間に限りがあるという問題があった。
【0015】
また、駆動力を得るための電源として燃料電池を備えた電気自動車に関して、原燃料としてメタノール等を積載し、さらに、この原燃料を改質して水素を含むガスを生成する改質反応を行う改質器を搭載するものが知られている(例えば、特許文献17〜20参照)。このように原燃料と改質器とを搭載する電気自動車は、特に原燃料としてメタノールなどの液体燃料を用いる場合には、一回の燃料補給で電気自動車が走行可能な距離が気体燃料を積載する場合に比べて長くなるという長所を有する。さらに、メタノール、炭化水素などの原燃料は、水素ガスに比べて輸送などの際の取り扱いが容易で安全であるという利点を有する。
【特許文献17】特開2000−149974号公報
【特許文献18】特開2001−113960号公報
【特許文献19】特開2001−202980号公報
【特許文献20】特開2001−298807号公報
【0016】
しかしながら、原燃料としてメタノール、ジメチルエーテル(DME)、エタノール、天然ガス、プロパンやガソリン等を電気自動車に積載する場合の改質器については、これらの中では改質温度の最も低いメタノール改質器の開発が最も進んでおり、現在、その改質方法としては、水蒸気改質、部分酸化改質、両者を併用した併用改質の3つが採用されている(非特許文献3参照)が、いずれの改質方法を採用しても、水素を含むガスを製造するためには、200℃以上という高温度で改質を行わなければならず、改質触媒の被毒、改質されたガス(水素を含むガス)に含まれるCOの除去、部分酸化改質や併用改質における改質されたガス中への空気中の窒素の混入等の問題があった。
【非特許文献3】「固体高分子型燃料電池の開発と実用化」第141頁〜第166頁、1999年5月28日、(株)技術情報協会発行
【0017】
一方、水素ガスや水素貯蔵合金の形態の水素を貯蔵した容器を搭載した電気自動車(燃料電池自動車)が開発されているが、その普及にあたっての大きな課題は、水素供給インフラの整備である。すなわち、自由に走行する燃料電池自動車に対して、いかに広域の水素供給インフラを整備するかといった課題がある。そこで、水素供給ステーションにて都市ガスないし液体燃料(脱硫ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、メタノール等)を改質装置により水蒸気改質して水素を製造し、これを水素貯蔵タンクに貯蔵しておき、この水素を燃料電池自動車に搭載した水素貯蔵容器に供給するシステムが、都市ガス配管網、給油スタンド等の既設インフラを最大限利用できるというメリットがあるために、最も多く開発されている(例えば、特許文献21〜24参照)。
しかしながら、上記の水素供給システムは、改質装置が高価であり、また、装置サイズが大きく、あるいは、装置の保守・運転が複雑で高度の技術を必要とする、等の問題がある。
【特許文献21】特開2002−315111号公報
【特許文献22】特開2002−337999号公報
【特許文献23】特開2003−118548号公報
【特許文献24】特開2004−79262号公報
【0018】
上記のように有機物を含む燃料を改質する代わりに、水を電気分解して水素を製造し、これを水素貯蔵タンクに貯蔵しておき、この水素を燃料電池自動車に搭載した水素貯蔵容器に供給するシステムも開発されている(例えば、特許文献25及び26参照)。
このシステムによれば、有機物を含む燃料を改質するような高温度とする必要はないものの、大量の電力を必要とするという問題がある。
【特許文献25】特開2002−161998号公報
【特許文献26】特開2002−363779号公報
【0019】
また、駆動力を得るための電源として燃料電池を備えた従来の潜水船では、高圧水素ガスで貯蔵し、この水素を燃料電池に供給する方式が一般的に行われている(例えば、特許文献27〜29参照)。この方式では、ガス容器を耐圧構造としなければならず容器の質量が大きくなるが、潜水船では、重量が重くなると、それに応じた浮力材が必要になり、必然的にその浮力材を装備するため潜水船が大きくなるという問題があった。また、水素を高圧ガスで保有するため、安全性に注意をはらう必要があり、取り扱いが困難であるという問題もあった。
【特許文献27】特開平10−100990号公報
【特許文献28】特開平10−144327号公報
【特許文献29】特開平10−181685号公報
【0020】
上記の問題を解決するために、「潜水機(潜水船も含む)の動力源に用いる燃料電池等の水素供給発生装置のうち、金属水素化物(錯金属水素化物も含む)に水素発生促進剤と接触させて水素を発生させる水素発生装置において、金属水素化物若しく水素発生促進剤の少なくとも一が液状態にあり、該液状態が貯留されている容器が機内に配置され、機外の水圧にほぼ均圧させたことを特徴とする潜水機用水素発生装置。」(特許文献30参照)が開発された。この水素発生装置で使用する金属水素化物は、高圧水素ガスと比べれば、取り扱い性は良いものの、有機物を含む燃料を水素原料とするものと異なり反応性が大きく、反応前に、水素発生促進剤である水若しくはアルコールとの接触を防ぐための工夫が必要であり、また、反応の制御が難しいという問題があった。
【特許文献30】特開2002−187595号公報
【0021】
炭化水素燃料を改質して水素を製造する改質器を潜水機種に搭載し、改質器により製造された水素を燃料電池に供給することも公知である(例えば、特許文献31参照)が、この場合には、上記の電気自動車と同様の問題があった。
【特許文献31】特開平8−17456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記のような問題を解決するものであり、低温で水素を含むガスを製造することができ、しかも、小型化が可能な水素製造装置を提供するとともに、その水素製造装置を用いた燃料電池発電装置、電気自動車、潜水船及び水素供給システム、並びにその水素製造装置に使用する反応管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明においては、以下の手段を採用する。
(1)有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、筒状の隔膜を有し前記筒状の隔膜の内外側面のうち一方の側面に燃料極及び他方の側面に酸化極を設けた反応管をハニカム状に多数組み合わせた水素製造セル、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするハニカム型水素製造装置。
(2)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化剤を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いないで設けたことを特徴とする前記(1)のハニカム型水素製造装置。
(3)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層に設けたことを特徴とする前記(1)又は(2)のハニカム型水素製造装置。
(4)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記(3)のハニカム型水素製造装置。
(5)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記(1)又は(2)のハニカム型水素製造装置。
(6)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(7)前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(8)前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(9)前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする前記(4)〜(8)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(10)前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする前記(4)〜(9)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(11)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする前記(3)のハニカム型水素製造装置。
(12)前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする前記(11)のハニカム型水素製造装置。
(13)前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする前記(11)又は(12)のハニカム型水素製造装置。
(14)水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(15)前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(16)前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(17)前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が400〜600mVであることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(18)前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(17)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(19)前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(18)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(20)運転温度が100℃以下であることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(21)前記燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(22)前記アルコールがメタノールであることを特徴とする前記(21)のハニカム型水素製造装置。
(23)前記酸化極に供給する前記酸化剤が酸素を含む気体又は酸素であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(24)前記隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする前記(1)〜(23)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(25)前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする前記(24)のハニカム型水素製造装置。
(26)前記燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(27)前記酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(26)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(28)前記有機物を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする前記(1)〜(27)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(29)前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする前記(1)〜(28)のいずれか一のハニカム型水素製造装置。
(30)前記(1)〜(29)のいずれか一のハニカム型水素製造装置に燃料電池を接続して、前記ハニカム型水素製造装置を運転するための補機に供給する電気エネルギーを前記燃料電池から得ることを特徴とするハニカム型水素製造装置。
(31)前記(1)〜(30)のいずれか一のハニカム型水素製造装置を燃料電池と接続して、前記燃料電池に前記ハニカム型水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することを特徴とする燃料電池発電装置。
(32)燃料電池発電装置が、燃料電池、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する前記ハニカム型水素製造装置、前記燃料電池で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置、発電装置全体の制御を行う制御装置を少なくともパッケージに内蔵したものであることを特徴とする前記(31)の燃料電池発電装置。
(33)前記ハニカム型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを冷却せずに前記燃料電池に供給することを特徴とする前記(31)又は(32)の燃料電池発電装置。
(34)前記水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であるハニカム型水素製造装置、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有するハニカム型水素製造装置並びに前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有するハニカム型水素製造装置の群から選ばれる2以上のハニカム型水素製造装置を組み合わせて使用することを特徴とする前記(31)〜(33)のいずれか一の燃料電池発電装置。
(35)前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が前記燃料電池又は他の前記ハニカム型水素製造装置から排出される排空気又は未反応酸素を含む気体(酸素オフガス)であることを特徴とする前記(31)〜(34)のいずれか一の燃料電池発電装置。
(36)前記ハニカム型水素製造装置の発生する熱を遮断するための断熱材が設けられていないことを特徴とする前記(31)〜(35)のいずれか一の燃料電池発電装置。
(37)前記(31)〜(36)のいずれか一の燃料電池発電装置を搭載したことを特徴とする電気自動車。
(38)前記(31)〜(36)のいずれか一の燃料電池発電装置を搭載したことを特徴とする潜水船。
(39)前記(1)〜(30)のいずれか一のハニカム型水素製造装置を水素貯蔵手段と接続して、前記水素貯蔵手段に前記ハニカム型水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することを特徴とする水素供給システム。
(40)前記水素貯蔵手段が、電気自動車(燃料電池自動車)に搭載した水素貯蔵容器であることを特徴とする前記(39)の水素供給システム。
(41)筒状の隔膜を有し前記筒状の隔膜の内外側面のうち一方の側面に燃料極及び他方の側面に酸化極を設けた水素製造セル用反応管において、前記酸化極のガス拡散層に酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とする水素製造セル用反応管。
(42)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記(41)の水素製造セル用反応管。
(43)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層に設ける代わりに、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記(41)の水素製造セル用反応管。
(44)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする前記(42)の水素製造セル用反応管。
(45)前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする前記(42)〜(44)のいずれか一の水素製造セル用反応管。
(46)前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする前記(42)〜(44)のいずれか一の水素製造セル用反応管。
(47)前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする前記(42)〜(46)のいずれか一の水素製造セル用反応管。
(48)前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする前記(42)〜(47)いずれか一の水素製造セル用反応管。
(49)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする前記(41)の水素製造セル用反応管。
(50)前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする前記(49)の水素製造セル用反応管。
(51)前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする前記(49)又は(50)の水素製造セル用反応管。
【0024】
ここで、前記(1)の「酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けた」とは、酸化極側において、放電反応が抑制され、水素発生反応が起きるように酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを意味し、前記(4)、(6)、(42)及び(44)のように酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記(11)〜(13)及び(49)〜(51)のように酸化極のガス拡散層を、疎密に形成する、材質の異なるものを組み合わせる、凹凸を形成する等の手段で不均質にすることにより、酸化極のガス拡散層に酸化剤の供給の不足する領域を直接的に設けた場合(前記(3)及び(41)参照)を包含するが、これに限定されず、前記(5)及び(43)のように燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うこと等の手段により、酸化極側に酸化剤の供給の不足する領域を間接的に設けた場合も包含する。
マスキングの形状としては、前記(7)、(8)、(45)及び(46)のように帯状、斑点状を採用することができ、マスキングの材料としては、前記(9)及び(47)のように樹脂を採用することができ、マスキングの手段としては、前記(9)、(10)、(47)及び(48)のように含浸、塗布、スクリーン印刷を採用することができるが、マスキングの形状、材料、手段は、これらに限定されず、「酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域」を形成し得るものであれば、いかなる形状、材料、手段も包含するものである。
また、前記(2)の「酸化剤を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いない」とは、従来の直接メタノール型燃料電池に見られるような酸化剤(空気)を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いないことを意味する。
【0025】
さらに、前記(1)、(14)〜(16)のハニカム型水素製造装置は、水素製造セルに燃料及び酸化剤を供給する手段を有している。また、この外に、前記(15)の場合は、水素製造セルから電気エネルギーを取り出すための放電制御手段を有しており、前記(16)の場合は、水素製造セルに電気エネルギーを印加するための電解手段を有している。前記(14)の場合は、水素製造セルから電気エネルギーを取り出すための放電制御手段及び水素製造セルに電気エネルギーを印加するための電解手段を有しない開回路のものである。そして、前記(1)のハニカム型水素製造装置は、前記(14)〜(16)のハニカム型水素製造装置を包含するものである。さらに、これらの水素製造装置は、水素製造セルの電圧及び/又は水素を含むガスの発生量をモニターして、燃料及び酸化剤の供給量若しくは濃度、並びに取り出す電気エネルギー(前記(15)の場合)又は印加する電気エネルギー(前記(16)の場合)をコントロールする機能を有している。
また、本発明において、電気自動車(燃料電池自動車)とは、燃料電池のみで車両の駆動力を得るものに限定されず、他の動力源を併用するハイブリッドカーを含むものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハニカム型水素製造装置は、室温から100℃以下という従来の改質温度と比較して格段に低い温度で燃料を改質することができるので、改質に必要なエネルギーが少なくてすみ、起動に要する時間が短くできるだけでなく、その水素製造装置を用いた燃料電池発電装置、その燃料電池発電装置を搭載した電気自動車及び潜水船、その水素製造装置を用いた水素供給システムにおいて、改質装置の発生する熱を遮断するための断熱材を不要とすることもでき、さらに、水素製造装置から発生した水素を含むガスを冷却せずに燃料電池に容易に供給することができるという効果を奏する。
また、生成した水素を含むガスに空気中の窒素が混入しないか又は非常に混入量が少なく、かつ、COが含まれないので、比較的高い水素濃度のガスが得られ、CO除去工程が不要であるという効果を奏する。
さらに、反応管をハニカム状に多数組み合わせており、セパレータを用いないので、水素製造装置のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
本発明のハニカム型水素製造装置は、水素製造セルに外部から電気エネルギーを供給することなく、水素を発生させることもできるが、電気エネルギーを取り出す手段を有する場合であっても、外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合であっても、水素を発生させることができる。
電気エネルギーを取り出す手段を有する場合には、その電気エネルギーを有効に利用することができる。
外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合でも、水素製造セルに外部から少量の電気エネルギーを供給することにより、投入した電気エネルギー以上の水素を発生することができるという効果を奏する。
さらに、いずれの場合であっても、水素製造セルの電圧及び又は水素を含むガスの発生量をモニターすることによってプロセスコントロールが可能となり、水素製造装置のコンパクト化を図ることができるので、水素製造装置、燃料電池発電装置、電気自動車、潜水船及び水素供給システムのコストが低減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を例示する。
特に、本発明のハニカム型水素製造装置は、基本的に新規なものであり、以下に述べるのは、あくまでも一形態にすぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
【0028】
本発明者等は、従来の直接メタノール型燃料電池と同じ構造のセルを用いて、有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置(特願2004−367792号)を開発し、また、それを応用した独立型水素製造システム(特願2005−151125号)、燃料電池発電装置(特願2005−151124号)、電気自動車(特願2005−096955号)、水素供給システム(特願2005−096956号)及び潜水船(特願2005−096957号)を開発した。
上記の発明における水素製造装置は、いずれも、酸化剤を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いたものであったが、セパレータを用いなくても、酸化極側に酸化剤の供給の不足する領域を設けることにより、水素が発生することを知見し、水素製造装置等の発明(特願2005−164145号)を完成させたが、本発明は、その改良発明に関するものである。
【0029】
本発明のハニカム型水素製造装置(以下、「水素製造装置」と省略する。)の一例を図1(a)に示す。この水素製造装置は、反応管をハニカム状に多数組み合わせた水素製造セル(10)、及び水素製造装置を運転するための補機、水素を含むガスを取り出す手段を有するものである。
図1(a)に示す水素製造セル(10)は、図1(b)に示すような筒状の隔膜(11)の内外側面のうち一方の側面(内側面)に燃料極(12)及び他方の側面(外側面)に酸化極(14)を設けた反応管をハニカム状に多数組み合わせてセルを構成したものである。
なお、内側面と外側面を入れ替えて、筒状の隔膜の内側面に酸化極を設け、筒状の隔膜の外側面に燃料極を設けてもよい。
また、水素製造セル(10)は、前記反応管と共に、燃料極(12)に有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を供給するための流路(13)を備え、かつ、酸化極(14)に酸化剤(空気)を供給するための流路(15)を備えたものである。
【0030】
水素製造装置を運転するための補機として、燃料極(12)にメタノール水溶液を供給する燃料ポンプ(16)と酸化極(14)に空気を供給する空気ブロア(17)が設けられている。
燃料極における流路(13)は、燃料ポンプ(16)と流量調整弁(18)を介して導管で接続されており、酸化極における流路(15)は、空気ブロア(17)と流量調整弁(19)を介して導管で接続されている。
燃料(100%メタノール)は、燃料タンク(20)に貯蔵されており、そこから燃料調整槽(21)に移され、燃料調整槽(21)で水と混合され、例えば、3%程度のメタノール水溶液に調整されて燃料極(12)に供給される。
【0031】
上記のような構成の水素製造装置において、電気エネルギーを燃料ポンプ(16)と空気ブロア(17)に供給してこれを動かし、流量調整弁(18)を開放すると、燃料ポンプ(16)によってメタノール水溶液が燃料調整槽(21)から流路(13)を通り燃料極(12)に供給され、また、流量調整弁(19)を開放すると、空気ブロア(17)によって空気が流路(15)を通り酸化極(14)に供給される。
これによって、燃料極と酸化極(空気極)で後述するような反応が生じて燃料極(12)側から水素を含むガスが発生する。
【0032】
水素を含むガスの発生量は、水素製造セル(10)の電圧(開回路電圧又は運転電圧)をモニターする電圧調整器(22)を設けて、燃料及び空気の供給量若しくは濃度、並びに取り出す電気エネルギー又は印加する電気エネルギーをコントロールすることにより、調整することができる。
また、筒状の反応管をハニカム状に多数組み合わせてセルを構成した場合には、図1(c)及び(d)に示すように、燃料極(12)及び酸化極(14)から導線を引き出して電位を測定することにより、水素製造セル(10)の電圧をモニターすることが好ましい。
図1(c)に示すように、ハニカム状に組み合わせた反応管の燃料極(12)を一体化して導線を引き出してもよいし、図1(d)に示すように、ハニカム状に組み合わせた反応管の燃料極(12)から個別に導線を引き出してまとめてもよい。
発生した水素を含むガスは、水素製造セル(10)から取り出し、気液分離器(23)に通して、水素を含むガスと未反応メタノール水溶液に分離し、未反応メタノール水溶液の一部又は全部を燃料調整槽(21)に戻す導管(24)からなる循環手段によって循環させる。場合によっては系外から水を供給するようにしてもよい。
【0033】
本発明の水素製造装置における水素発生反応メカニズムは以下のように推定される。
酸化極(空気極)側に設けた酸化剤(酸素)の供給の十分な領域(以下、「放電領域」という。)では、以下の通常の燃料電池における放電反応、すなわち、図2に示すように、燃料極側で(A)の反応、空気極側で(B)の反応が起きている。なお、図2は、本発明の水素製造装置に使用する反応管の管壁における一部の領域の縦断面を示すものであり、図3及び図4も同様である。
(A)CH3OH+H2O→6H++6e-+CO2
(B)6H++6e-+3/2O2→3H2
【0034】
一方、ナフィオン等のプロトン導電性固体電解質膜を用いた場合にCH3OHが燃料極から空気極側へ透過するクロスオーバー現象が知られており、空気極側に設けた酸素の供給の不足する領域(以下、「水素発生領域」という。)では、(B)の反応が起きず、図3に示すように、クロスオーバーメタノールが電解酸化され、(D)の反応が起き、一方、燃料極側では、(C)の水素発生反応が起きている。
(C)6H++6e-→3H2
(D)CH3OH+H2O→6H++6e-+CO2
【0035】
本願請求項14に係る発明の水素製造装置(以下、「開回路条件」という。)の場合は、(A)及び(D)の反応により生成したe-が外部回路を通って対極に供給されないから、燃料極で(A)の反応により生成したH+とe-の空気極への移動と、空気極で(D)の反応により生成したH+とe-の燃料極への移動は見かけ上打ち消されていると考えられる。
すなわち、図4に示すように、燃料極側の放電領域で(A)の反応により生成したH+とe-が、同じ燃料極側の水素発生領域に移動して、(C)の反応が起き、水素が発生し、一方、空気極側の水素発生領域で(D)の反応により生成したH+とe-は、同じ空気極側の放電領域に移動して、(B)の反応が起きていると推定される。
燃料極上で(A)の反応と(C)の反応が進行し、酸化極上で(B)の反応と(D)の反応が進行すると仮定すると、トータルとして、以下の反応が成立する。
2CH3OH+2H2O+3/2O2→2CO2+3H2O+3H2
この反応の理論効率は、59%(水素3モルの発熱量/メタノール2モルの発熱量)となる。
【0036】
本願請求項15に係る発明の「前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有する」水素製造装置(以下、「放電条件」という。)の場合も、開回路条件での水素発生メカニズムと類似のメカニズムで水素が発生すると考えられる。但し、開回路条件の場合と異なり、放電電流相当分のH+が燃料極から空気極に移動することでセル全体の電気的中性条件を保つ必要があるため、燃料極では(C)の反応より(A)の反応が、空気極では(D)の反応より(B)の反応がより速く(多く)進行するものと考えられる。
【0037】
本願請求項16に係る発明の「前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有する」水素製造装置(以下、「充電条件」という。)の場合も、開回路条件での水素発生メカニズムと類似のメカニズムで水素が発生すると考えられる。但し、開回路条件の場合と異なり、電解電流相当分のH+が空気極から燃料極に移動することでセル全体の電気的中性条件を保つ必要があるため、燃料極では(A)の反応より(C)の反応が、空気極では(B)の反応より(D)の反応がより速く(多く)進行するものと考えられる。
【0038】
本発明の水素製造装置を製造する場合は、まず、図1(b)に示されるように、筒状の隔膜(11)を有し前記筒状の隔膜の内外側面のうち一方の側面に燃料極(12)及び他方の側面に空気極(14)を設けた反応管を作製する。
図1(b)に示されるような反応管の作製方法は限定されるものではないが、まず、電解質膜の両側に、燃料極触媒付きガス拡散層、空気極触媒付きガス拡散層をホットプレスによって接合して従来と同様の平板状MEA(膜−電極接合体)を作製した後、この平板状MEAを筒状に丸め、電解質膜の端部を重ね、この重ねた部分を熱融着し、燃料極及び空気極の一方が内側、他方が外側となった円筒状MEAを作製して、この円筒状MEAの内部を穴のあいたプラスチックチューブで補強して反応管とすることができる。
別の作製方法として、燃料極触媒層付きガス拡散層に代えて、外周面に燃料極触媒層を設けたカーボンチューブを準備し、この燃料極触媒層の表面に電解質層(隔膜)を形成し、この電解質層(隔膜)の表面に空気極触媒層を形成し、さらに空気極触媒層の表面にガス拡散層としてのカーボンフェルトを巻き付けて反応管とする方法も採用できる。
【0039】
空気極(14)に酸化剤(空気)の供給の不足する領域を設けるためには、空気極のガス拡散層(反応管のガス拡散層)の一部に、図5に示すようにマスク(14M)を設ける(マスキングを行う)ことが好ましい。
図5は、図1(b)に示す反応管の縦断面図の右側の部分に相当する反応管の管壁の縦断面図であり、以下、図6〜図9についても同様である。
また、図6に示すように、燃料極(12)のガス拡散層(MEAのガス拡散層)の一部にマスク(12M)を設けても、後述する参考例に示すように、わずかではあるが水素が発生する。これは燃料極の一部にマスキングをすることにより、マスキングをしなかった部分で電解質を介してメタノールと水の空気極側への拡散が多くなり、マスキングをした部分でメタノールと水の空気極側への拡散が少なくなり、その結果、メタノールが拡散した空気極側においてはメタノールの酸化によって酸素が消費されて空気極側で酸素が不足する領域が形成されるのに対し、メタノールが拡散しなかった空気極側においては酸素が消費されずに空気極側で酸素が十分存在する領域が形成されることになり、空気極側の一部をマスキングしたのと同じ作用効果を奏していることが考えらえる。
【0040】
燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部に、それぞれマスク(12M)及び(14M)を設けた場合は、後述する参考例、比較例に示すように、水素が発生する場合と、発生しない場合がある。
図7に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスクを同じ位置に対向するように設けた場合には、水素は発生しない。この理由は、空気極(14)のガス拡散層の一部にマスク(14M)を設けることにより水素発生領域が形成されているが、燃料極(12)の対応する領域にマスク(12M)が設けられているので、(D)の反応のためのメタノールの拡散がされず、水素生成反応(C)が起きないためと考えられる。
図8に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスクを反対位置に対向しないように設けた場合には、水素は発生しない。この理由は、燃料極(12)の放電領域にマスク(12M)が設けられており、メタノールの供給がなく、(A)の反応が起きず、H+とe-の生成がないので、H+とe-が、放電領域から水素発生領域に供給されず、水素生成反応(C)が起きないためと考えられる。
図9に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスク(12M)、(14M)を、マスク(12M)、(14M)の一部のみが対向するように半分ずらして設けた場合には、放電領域(1)、水素発生領域(2)が形成され、(1)の領域で放電反応が起き、(2)の領域で水素発生反応が起きるので、水素が発生する。
【0041】
マスキング(マスク)の形状は限定されるものではないが、図10に示すように帯状に行うことができる。マスキングを斑点状に行ってもよい。
帯状のマスクの幅、間隔、本数等、斑点状のマスクの大きさ、数等を適宜設定することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
マスキングの材料としてはエポキシ樹脂等の樹脂を使用することができる。
また、マスキングの手段としては、ガス拡散層への含浸、塗布、スクリーン印刷、シールの貼付等により簡便に行うことが可能である。
さらに、上記のようなマスキングだけではなく、ガス拡散層を疎密に形成したり、ガス拡散層を材質の異なるものを組み合わせたり、ガス拡散層の表面に凹凸を形成すること等の手段で、酸化極のガス拡散層を不均一にすることによっても、酸化極側に酸化剤の供給の不足する領域を設けることができる。
【0042】
発明の水素製造装置における反応管の隔膜(11)としては、燃料電池において高分子電解質膜として使用されているプロトン導電性固体電解質膜を用いることができる。プロトン導電性固体電解質膜としては、デュポン社のナフィオン膜等のスルホン酸基を持つパーフルオロカーボンスルホン酸系膜が好ましい。
【0043】
燃料極及び酸化極(空気極)は、導電性を有し、触媒活性を有する電極であることが好ましく、例えば、ガス拡散層に、炭素粉末等からなる担体上に担持させた触媒とPTFE樹脂等の結着剤とナフィオン溶液等のイオン導電性を付与するための物質とを含有する触媒ペーストを塗布し乾燥して作製することができる。
ガス拡散層としては、撥水処理を行ったカーボンペーパー等からなるものが好ましい。
燃料極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
空気極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
【0044】
上記のような構成の水素製造装置において、燃料極にメタノール水溶液等の有機物を含む燃料を供給し、酸化極(空気極)に空気、酸素、過酸化水素等の酸化剤を供給すると、特定の条件下で、燃料極に水素を含むガスが発生する。
【0045】
本発明の水素製造装置において、水素を含むガスの発生量は、燃料極と酸化極(空気極)との間の電圧に依存する傾向があるから、開回路条件、放電条件、充電条件のいずれの場合においても、燃料極と酸化極(空気極)との間の電圧(開回路電圧又は運転電圧)を調整することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
開回路条件の場合には、実施例に示されるように、開回路電圧が400〜600mVで水素が発生しているから、この範囲で、開回路電圧を調整することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
【0046】
開回路電圧若しくは運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量(水素生成速度)は、酸化剤(空気、酸素等)の供給量を調整すること、酸化剤の濃度を調整すること、有機物を含む燃料の供給量を調整すること、有機物を含む燃料の濃度を調整することにより調整することができる。
また、上記以外に、放電条件の場合は、外部に取り出す電気エネルギーを調整すること(外部に取り出す電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって外部に取り出す電圧を調整すること)によって、充電条件の場合は、印加する電気エネルギーを調整すること(印加する電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって印加する電圧を調整すること)によって、運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量を調整することができる。
【0047】
本発明の水素製造装置においては、有機物を含む燃料を100℃以下で分解することができるから、水素製造装置の運転温度を100℃以下にすることができる。運転温度は、30〜90℃とすることが好ましい。運転温度を30〜90℃の範囲で調整することにより、以下の実施例に示すとおり、開回路電圧若しくは運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量を調整することができる。
なお、100℃以上での運転が必要であった従来の改質技術では、水は水蒸気になり、有機物を含む燃料はガス化し、このような条件下で水素を発生させても、水素を分離する手段を別途用いる必要があるため、本発明は、この点において有利である。
しかし、有機物を含む燃料を100℃以上の温度で分解すると、上記のようなデメリットはあるが、本発明は、本発明の水素製造装置を100℃を若干超える温度で運転させることを否定するものではない。
【0048】
推定される原理から考えて、有機物を含む燃料としては、プロトン導電性の隔膜を透過し、電気化学的に酸化されてプロトンを生成する液体又は気体燃料であればよく、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールなどのアルコール、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド、蟻酸などのカルボン酸、ジエチルエーテルなどのエーテルを含む液体燃料が好ましい。有機物を含む燃料は水と共に供給されるから、アルコールと水を含む溶液、その中でも、メタノールを含む水溶液が好ましい。なお、上記した燃料の一例としてのメタノールを含む水溶液は、少なくともメタノールと水を含む溶液であり、水素を含むガスを発生する領域において、その濃度は任意に選択することができる。
【0049】
酸化剤としては、気体又は液体の酸化剤を使用することができる。気体の酸化剤としては、酸素を含む気体又は酸素が好ましい。酸素を含む気体の酸素濃度は、10%以上が特に好ましい。液体の酸化剤としては、過酸化水素を含む液体が好ましい。
【0050】
本発明においては、水素製造装置に投入した燃料が該装置内で一回で消費され、水素に分解される割合は低いので、燃料の循環手段を設けて、水素への変換率を高めることが好ましい。
【0051】
本発明の水素製造装置は、燃料極側から水素を含むガスを取り出す手段を備えており、水素を回収するものであるが、二酸化炭素も回収することが好ましい。100℃以下という低い温度で運転するものであるから、水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を、簡便な手段により設けることができる。
【0052】
次に、本発明の水素製造装置を応用した燃料電池発電装置の一形態であるパッケージ型燃料電池発電装置の一例について説明する。上述した水素製造装置を燃料電池と接続して、燃料電池に水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給するものである。
本発明の燃料電池発電装置の基本的な構成は、図11に示すように、水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池(30)、燃料電池(30)に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造セル(10)、燃料電池(30)で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置(36)、発電装置全体の制御を行う制御装置(37)及び燃料ポンプ(16)、空気ブロア(17)等の補機類を少なくともパッケージ(38)に内蔵したものである。
本発明の燃料電池発電装置において、水素製造装置を構成する水素製造セル(10)は低温で運転するものであるから、従来の燃料改質装置の場合と異なり、制御装置(37)を水素製造セル(10)の近くに配置することが可能である。また、水素製造セル(10)の発生する熱から制御装置(37)を保護するための断熱材も不要にすることができる。
【0053】
この図では、燃料タンク(20)及び燃料調整槽(21)をパッケージに内蔵しているが、これらを内蔵せずに、パッケージの外部から燃料(メタノール水溶液)を供給するようにしてもよいし、燃料調整槽(21)のみをパッケージに内蔵させてもよい。
また、水素製造セル(10)から発生した水素を含むガスは、燃料電池(30)に直接供給することもできるが、水素を含むガスを貯蔵する水素タンク(25)を設けて、水素タンク(25)から燃料電池(30)に供給することが好ましい。
さらに、水素を含むガスと未反応メタノール水溶液を分離する気液分離器(23)を設けて、未反応メタノール水溶液を水素製造セル(10)に循環させることが好ましい。それ以外に、排空気から生成水と未反応メタノール水溶液を分離する気液分離器(27)を設けてもよい。
なお、図示していないが、これら以外にバックアップ電池を設けることもできる。
【0054】
本発明の燃料電池発電装置に使用する水素製造装置は、図12に示すように、水素製造セル(10)、及び水素製造装置を運転するための補機を有するものである。
水素製造セル(10)の構造は、隔膜(11)の一方の面に燃料極(12)を設け、燃料極(12)に有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を供給するための流路(13)を備え、かつ、隔膜(11)の他方の面に酸化極(14)を設け、酸化極(14)に酸化剤(空気)を供給するための流路(15)を備えたものである。
【0055】
水素製造装置を運転するための補機として、燃料極(12)にメタノール水溶液を供給する燃料ポンプ(16)が設けられている。燃料極における流路(13)は、燃料ポンプ(16)と流量調整弁(18)を介して導管で接続されている。
燃料(100%メタノール)は、燃料タンク(20)に貯蔵されており、そこから燃料調整槽(21)に移され、燃料調整槽(21)で水と混合され、例えば、3%程度のメタノール水溶液に調整されて燃料極(12)に供給される。
【0056】
また、同じく補機として空気ブロア(17)を設け、酸化極(14)に空気を直接供給することもできるが、この図においては、空気ブロア(17)によって燃料電池(30)に空気を供給し、燃料電池(30)より排出される未反応空気(排空気)を利用している。
燃料電池(30)に空気ではなく、酸化剤貯蔵装置からの酸素を供給する場合には、燃料電池(30)より排出される未反応酸素(酸素オフガス)を利用する。
ここで、燃料電池(30)の空気極から排出される排空気又は酸素オフガスを水素製造セル(10)に送り込むことによって、水素製造セル(10)用の空気ブロアが不要になる。 水素製造セル(10)の酸化極(14)における流路(15)は、空気ブロア(17)と、燃料電池(30)の空気極(34)における流路(35)を介して接続されている。
さらに、この排空気又は酸素オフガスは燃料電池(30)の作動温度とほぼ同じ温度(約80℃)を有しているから、排空気又は酸素オフガスの熱を水素製造セル(10)を加温する熱源として利用することができる。
また、2以上の水素製造装置を組み合わせて使用する場合には、一方の水素製造セル(10)の酸化極(14)に供給する空気として、他方の水素製造セル(10)から排出される排空気を利用することができる。
【0057】
水素製造装置を運転するための補機である燃料ポンプ(16)や空気ブロア(17)に供給する電気エネルギーを燃料電池から得ることにより、独立型水素製造システムを構成することができる。
燃料電池としては、燃料電池(30)を利用し、燃料電池(30)から得られる電気エネルギーの一部を水素製造装置を運転するための補機に供給することができ、また、別の直接メタノール型の燃料電池を設けて、その燃料電池から得られる電気エネルギーを供給するようにしてもよい。
【0058】
上記のような構成の水素製造装置において、電気エネルギーを燃料ポンプ(16)と空気ブロア(17)に供給してこれを動かし、流量調整弁(18)を開放すると、燃料ポンプ(16)によってメタノール水溶液が燃料調整槽(21)から流路(13)を通り燃料極(12)に供給され、また、流量調整弁(19)を開放すると、空気ブロア(17)によって空気が燃料電池(30)を介して流路(15)を通り酸化極(14)に供給される。
これによって、燃料極と酸化極(空気極)で後述するような反応が生じて燃料極(12)側から水素を含むガスが発生する。
【0059】
また、水素を含むガスの発生量は、水素製造セル(10)の電圧(開回路電圧又は運転電圧)をモニターする電圧調整器(22)を設けて、燃料及び空気の供給量若しくは濃度、並びに取り出す電気エネルギー又は印加する電気エネルギーをコントロールすることにより、調整することができる。
発生した水素を含むガスは、気液分離器(23)に通して、水素を含むガスと未反応メタノール水溶液に分離され、水素を含むガスは水素タンク(25)に貯蔵される。
分離された未反応メタノール水溶液の一部又は全部は、導管(24)によって燃料調整槽(21)に戻し循環させる。場合によっては系外から水を供給するようにしてもよい。
【0060】
水素製造装置から排出された排空気には、生成水とクロスオーバー現象により燃料極から透過してきたメタノール水溶液のうち未反応のものが含まれているから、この排空気は、気液分離器(27)を通して生成水と未反応メタノール水溶液を分離し、二酸化炭素除去装置(28)によって二酸化炭素を除去した後、大気中に排出する。
分離された生成水と未反応メタノール水溶液の一部又は全部は、導管(29)によって燃料調整槽(21)に戻し循環させる。
【0061】
燃料電池(30)の水素極(32)には、水素タンク(25)に貯蔵されている水素が流量調整弁(26)を介して供給され、空気極(34)には、空気ブロア(17)から空気が流量調整弁(19)を介して供給され、水素極側では式〔1〕の反応が、空気極側では式〔2〕の反応がそれぞれ起き、燃料電池全体としては、式〔3〕の反応が起きて、水(水蒸気)が生成し、電気(直流電力)が発生する。
2→2H++2e-・・・〔1〕
2H++2e-+(1/2)O2→H2O・・・〔2〕
2+(1/2)O2→H2O・・・〔3〕
【0062】
燃料電池(30)としては、燃料が水素であれば、どのようなものでも使用できるが、100℃以下の低温で運転が可能な固体高分子型燃料電池(PEFC)が好ましい。固体高分子型燃料電池としては、周知の単セルを複数積層した燃料電池スタックを採用することができる。1つの単セルは、ナフィオン(デュポン社の商標)といった固体高分子電解質膜(31)、それを両側から挟み込む拡散電極である水素極(32)及び空気極(34)、さらにそれらを両側から挟み込む2枚のセパレータ等を備えている。セパレータの両面には、凹凸が形成されており、挟み込んだ水素極と空気極との間で、単セル内ガス流路(33)、(35)を形成している。このうち、水素極との間で形成される単セル内ガス流路(33)には、供給された水素ガスが、一方、空気極との間で形成される単セル内ガス流路(35)には、空気が、それぞれ流れている。
【0063】
燃料電池(30)の発電は発熱を伴う。上記の固体高分子型燃料電池(PEFC)の場合、高分子電解質膜は含水している状態でプロトン伝導性を示すため、燃料電池の発熱に伴い高分子電解質膜が乾燥し、含水率が低下すると燃料電池の内部抵抗が増大し発電能力が低下する。したがって、高分子電解質膜の乾燥を防ぐために燃料電池を冷却し、適正運転温度(約80℃)に保持する必要がある。一方、水素製造装置は、後述する実施例に示すように、温度が高い方が水素発生効率が高くなるから、この燃料電池の発熱を熱交換手段を設けて水素製造装置の加熱に利用することが好ましい。
【0064】
従来は、高分子電解質膜を湿潤状態に保持するため、改質ガス及び/又は反応空気を加湿してから燃料電池本体に供給していたが、本発明で使用する水素製造装置は、有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液等)を供給する燃料極側から水素を含むガスを取り出すものであり、水素は加湿されているから、加湿器は不要とすることも可能である。さらに、水素製造セル(10)から発生した水素を含むガスは、従来の改質装置で製造した改質ガスのように高温ではないから、冷却せずに燃料電池(30)に供給することができる。
また、燃料電池に供給する燃料としては、水素製造セル(10)から発生した水素のみを供給する場合と水素を含むメタノール水溶液を供給する場合が考えられる。水素を含むメタノール水溶液を供給する場合には、気液分離器(23)は不要である。
【0065】
燃料電池(30)で発電した直流電力は、電力変換装置(36)に導入され、そのDC/DCコンバータで昇圧され、又はDC/ACインバータにより交流電力に変換されて出力される。また、補機用コンバータで安定化した直流電力は、燃料ポンプ(16)、空気ブロア(17)等の補機類の駆動電源などとして使用され、交流電力は家庭内の電気機器の駆動電源として利用される。
これら一連の発電運転において、制御装置(37)は、水素製造セル(10)の電圧調整器(22)、燃料電池(30)、電力変換装置(36)、燃料ポンプ(16)、空気ブロア(17)等の補機類の動作を制御する。
【0066】
上記のような燃料電池発電装置は、電気自動車や潜水船に搭載することができる。
本発明の電気自動車の基本的な構成は、水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、前記燃料電池で発生した電気により駆動されるモータと、を備えてなるものである。
図13に、本発明の電気自動車における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す。
【0067】
本発明の潜水船の基本的な構成は、水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、前記燃料電池で発生した電気により駆動される推進装置と、を備えてなるものである。
図14に、本発明の潜水船における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す。
【0068】
本発明の電気自動車や潜水船に搭載する図10に示す燃料電池発電装置においては、上記のように、水素製造装置を構成する水素製造セル(10)は低温で運転するものであるから、従来の燃料改質装置の場合と異なり、制御装置(37)を水素製造セル(10)の近くに配置することが可能である。また、水素製造セル(10)の発生する熱から制御装置(37)を保護するための断熱材も不要とすることができる。
この図では、燃料タンク(20)及び燃料調整槽(21)を電気自動車や潜水船に搭載しているが、これらを搭載せずに、外部から燃料(メタノール水溶液)を供給するようにしてもよいし、燃料調整槽(21)のみを電気自動車や潜水船に搭載してもよい。
【0069】
電気自動車の場合は、燃料電池で発生した直流電力は、上記のようにDC/ACインバータにより交流電力に変換され、電気自動車の動力源であるモータに供給され、該モータを駆動し、その発生トルクをギアにより車軸に伝達して、車輪を駆動し、自動車を走行させる。
【0070】
潜水船の場合、推進装置としては、例えば、モータと該モータの回転軸に装着された推進用プロペラからなる周知の手段を採用することができる。燃料電池で発生した直流電力は、上記のようにDC/ACインバータにより交流電力に変換され、潜水船の動力源であるモータに供給され、該モータを駆動し、該モータの回転軸に装着された推進用プロペラを回転駆動する。
なお、燃料電池で発生した電気は、前探ソナーや投光器、観測機器などへも供給される。
【0071】
電気自動車の場合でも、潜水船の場合でも、燃料電池で発生した電気を蓄電するために、電気エネルギー貯蔵装置を設けることが好ましい。燃料電池で発生した電気は、制御装置を用いることにより、モータの負荷及び電気エネルギー貯蔵装置の蓄電量に応じて、モータ及び電気エネルギー貯蔵装置に供給される。具体的には、例えば、加速時等において、モータの負荷が大きい時には、燃料電池と電気エネルギー貯蔵装置からの電気をモータへ供給する。又減速時、制動時等においては、モータから得られる回生電力を電気エネルギー貯蔵装置に供給する。電気エネルギー貯蔵装置としては、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタ等を使用することができる。
【0072】
また、本発明の水素製造装置を水素貯蔵手段と接続して、水素貯蔵手段に水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することにより、水素供給システムを構成することができる。
本発明の水素供給システムの基本的な構成は、水素貯蔵手段が電気自動車(燃料電池自動車)に搭載した水素貯蔵容器の場合には、水素貯蔵容器に水素を供給する水素供給手段と、水素供給手段に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、を備えてなるものである。
図15に、本発明の水素供給システムのシステムフローの一例を示す。
【0073】
燃料電池自動車に搭載した水素貯蔵容器に水素を供給する水素供給手段は、例えば、水素昇圧機、高圧水素貯蔵タンク、水素ディスペンサを備えたものである。
【0074】
水素昇圧機としては、水素圧縮ポンプが一般的に用いられるが、水素を昇圧できる装置であればいかなるものを用いることも可能である。水素昇圧機出口の水素ガス圧力は、容積効率の観点から高くすることが望ましく、好ましくは50気圧(5MPa)以上、より好ましくは100気圧(10MPa)以上、さらには200気圧(20MPa)以上が好ましい。また、上限については、特に限定されないが、実用上1000気圧(100MPa)以下が好ましい。
【0075】
水素昇圧工程を経た後、水素を貯蔵するために水素貯蔵タンク(高圧水素貯蔵タンク)を設けることが好ましい。高圧水素貯蔵タンクとしては、昇圧された水素に耐えるものであれば特にその形態は限定されるものではなく、公知のものを適用することが可能であり、高圧水素ガスをそのまま貯蔵する高圧水素貯蔵タンクの他、水素吸蔵合金を内蔵した高圧水素貯蔵タンクでもよい。
【0076】
水素ガスを高圧水素貯蔵タンクから水素ディスペンサに導く。また、高圧水素貯蔵タンクを通さずに直接、水素昇圧機の出口ガスを水素ディスペンサに導くこともできる。その場合には、水素昇圧機と水素ディスペンサを接続する配管を設ける。
【0077】
水素ディスペンサは、水素ガスを、水素を燃料とする燃料電池自動車の水素貯蔵容器に供給するものであり、公知のディスペンサを用いることができる。この水素貯蔵容器は、燃料電池自動車に搭載されたままの水素貯蔵容器であってもよく、この容器が燃料電池自動車から取り外し可能なものである場合は、燃料電池自動車から取り外された状態の水素貯蔵容器であってもよい。
【0078】
次に、本発明の参考例、実施例(水素製造例)を示すが、触媒、PTFE、ナフィオンの割合等、触媒層、ガス拡散層、電解質膜の厚さ等は適宜変更し得るものであり、参考例、実施例により限定されるものではない。
なお、参考例1〜4、比較例1及び2は、平板状MEA(膜−電極接合体)を用いて空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた水素製造セル(平板型のセル)により開回路条件で水素を製造する例を示すものである。
【0079】
(参考例1)
水素製造セルを以下のように作製した。
すなわち、電解質にデュポン社製プロトン導電性電解質膜(ナフィオン115)を用い、空気極にはカーボンペーパー(東レ製)を5%濃度のポリテトラフルオロエチレン分散液に浸漬したのち、360℃で焼成して撥水処理し、その片面に空気極触媒(白金担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液(アルドリッチ製)を混合して作製した空気極触媒ペーストを塗布して空気極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、空気極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は65%:15%:20%とした。このようにして作製した空気極の触媒量は白金換算で1mg/cm2であった。
【0080】
さらに同じ方法を用いてカーボンペーパーを撥水処理し、さらにその片面に燃料極触媒(白金ルテニウム担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液を混合して作製した燃料極触媒ペーストを塗布して燃料極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、燃料極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は55%:15%:30%とした。このようにして作製した燃料極の触媒量は白金−ルテニウム換算で1mg/cm2であった。
【0081】
上記、電解質膜、空気極触媒付きガス拡散層、燃料極触媒付きガス拡散層を140℃、10MPaでホットプレスによって接合してMEAを作製した。このようにして作製したMEAの有効電極面積は60.8cm2(縦80mm、横76mm)あった。作製後の空気極及び燃料極の触媒層、空気極及び燃料極のガス拡散層の厚さは、それぞれ、約30μm、および170μmでほぼ同じであった。
【0082】
上記のように作製したMEAの空気極ガス拡散層上のみにエポキシ樹脂を塗布することによって、図5及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本設けた。このようにして作成したMEAを、その空気極側に空気導入口及び空気排出口を設けた空気極側エンドプレートをシリコンゴムを介して配し、その燃料極側に燃料導入口及び燃料排出口を設けた燃料極側エンドプレートをシリコンゴムを介して配して積層、挟持し、前記燃料極の表面に燃料が供給されるように、前記空気極の表面に空気が供給されるようにスペースを設けた。さらに、燃料及び空気のリ−クを防止するために、燃料極及び空気極の周辺部にはシリコンゴム製のパッキングを設けた。また、各電極の電位を測定するために、電極に接するステンレス製の箔を前記パッキングとMEAの間に挿入した。
【0083】
このようにして作製した水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度(運転温度)50℃で、空気極側に空気を10〜50ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5.0ml/分の流量で流し、その時の燃料極と空気極の電圧差(オープン電圧)、燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
ガス発生量の測定には水中置換法を用いた。また、発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
その結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1に示されるように、空気流量を少なくすることによって、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、空気流量とセルの開回路電圧(OCV)との関係を調べると、空気流量を少なくすると、それに伴って、セルの開回路電圧が低下する傾向が認められた。
水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧400〜600mVで水素が発生することが分かった。また、水素生成速度のピークは500mV付近で観察された。
【0086】
(参考例2)
MEAの燃料極ガス拡散層上のみにエポキシ樹脂を塗布することによって、図6及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示されるように、空気流量を少なくすることによって、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から、少量の水素の発生が確認された。
【0089】
(比較例1)
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図7及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本、同じ位置に対向するように設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3に示されるように、空気流量を少なくしても、セルの燃料極側から、水素の発生は確認されなかった。
これは、前述したように、燃料極の水素発生領域がマスクされており、水素発生反応のためのメタノール拡散ができないためである。
【0092】
(比較例2)
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図8及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で、燃料極に8本、空気極に6本、反対位置に対向しないように設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
表4に示されるように、空気流量を少なくしても、セルの燃料極側から、水素の発生は確認されなかった。
これは、前述したように、燃料極の放電反応が生じるべき領域がマスクされており、放電反応のためのメタノール供給ができないためである。
【0095】
(参考例3)
別ロットで作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
表5に示されるように、参考例1よりはやや多い空気流量で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、空気流量とセルの開回路電圧との関係を調べると、空気流量を少なくすると、それに伴って、セルの開回路電圧が低下する傾向が認められた。
水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧400〜600mVで水素が発生することが分かった。また、水素生成速度のピークは470mV付近で観察された。
【0098】
(参考例4)
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図9及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本設け、マスクの一部のみが対向するように半分ずらすようにした以外は、参考例3と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表6に示す。
【0099】
【表6】

【0100】
表6に示されるように、空気流量を少なくすることによって、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。
マスクをずらした場合には、前述したように、放電領域と水素発生領域が形成され、水素が発生する。
【0101】
(参考例5)
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mmのポリイミドシート(空気遮断層)と幅10mmのカーボンペーパー(空気透過層:空気極触媒付きガス拡散層)とを、図16に示すように、交互に配すると共に、電解質膜の燃料極側には、カーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を配して、140℃、10MPaでホットプレスすることによって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。ポリイミドシートの厚さはプレス前後ともに130μm、カーボンペーパーの厚さはプレス前が280μm、プレス後が165μmであった(ポリイミドシートはプレスしても元に戻る)。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表7に示す。
【0102】
【表7】

【0103】
空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にした場合も、表7に示されるように、空気流量を少なくすることによって、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。
【0104】
(参考例6)
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を疎密の組合せにより不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mm、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)と幅10mm、厚さ335μmの厚いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)とを交互に並べると共に、電解質膜の燃料極側には、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を配して、140℃、同じプレス圧(10MPa)でホットプレスすること(同時プレス)によって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。空気極のガス拡散層であるカーボンペーパーのプレス前後の厚さは190μm→165μm、335μm→185μmであり、ほぼ同じ厚さになっていることから、図17に示すような疎密(薄いカーボンペーパー→疎、厚いカーボンペーパー→密)が組み合わされたカーボンペーパーになっている。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、空気極側に流す空気の流量を10〜90ml/分の範囲とした以外は、参考例1と同様の条件を採用して、燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表8に示す。
【0105】
【表8】

【0106】
空気極のガス拡散層を疎密の組合せにより不均一にした場合も、表8に示されるように、空気流量を少なくすることによって、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にした参考例5の場合よりも、やや空気流量の多いところで、水素が発生した。
【0107】
(参考例7)
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を表面の凹凸により不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mm、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)を10mmの隙間を設けて並べると共に、電解質膜の燃料極側には、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を全面に配して、140℃、10MPaのプレス圧でホットプレスした後、10mmの隙間に厚さ335μmの厚いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)を並べて、140℃、10MPaのプレス圧でホットプレスすること(二段階プレス)によって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。空気極のガス拡散層であるカーボンペーパーのプレス前後の厚さは190μm→140μm、335μm→215μmであることから、図18に示すような凹凸(薄いカーボンペーパー→凹、厚いカーボンペーパー→凸)が形成されたカーボンペーパーになっている。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、空気極側に流す空気の流量を10〜90ml/分の範囲とした以外は、参考例1と同様の条件を採用して、燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表9に示す。
【0108】
【表9】

【0109】
空気極のガス拡散層を表面の凹凸により不均一にした場合も、表9に示されるように、空気流量を少なくすることによって、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。空気極のガス拡散層を疎密の組合せにより不均一にした参考例6の場合と同様に、空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にした参考例5の場合よりも、やや空気流量の多いところで、水素が発生した。
【実施例1】
【0110】
以下に、本願請求項14に係る発明の水素製造装置(開回路条件)により水素を製造する場合の例を示す。
水素製造セルを以下のように作製した。
すなわち、電解質にデュポン社製プロトン導電性電解質膜(ナフィオン115)を用い、空気極にはカーボンクロス(日本カーボン製)を5%濃度のポリテトラフルオロエチレン分散液に浸漬したのち、360℃で焼成して撥水処理し、その片面に空気極触媒(白金担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液(アルドリッチ製)を混合して作製した空気極触媒ペーストを塗布して空気極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、空気極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は65%:15%:20%とした。このようにして作製した空気極の触媒量は白金換算で1mg/cm2であった。
【0111】
さらに同じ方法を用いてカーボンクロスを撥水処理し、さらにその片面に燃料極触媒(白金ルテニウム担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液を混合して作製した燃料極触媒ペーストを塗布して燃料極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、燃料極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は55%:15%:30%とした。このようにして作製した燃料極の触媒量は白金−ルテニウム換算で1mg/cm2であった。
【0112】
上記、電解質膜、空気極触媒付きガス拡散層、燃料極触媒付きガス拡散層を140℃、10MPaでホットプレスによって接合して、電解質膜の中央部にガス拡散層が構成されるようなMEAを作製した。このようにして作製したMEAの有効電極面積は32cm2(10cm×3.2cm)であった。作製後の空気極及び燃料極の触媒層、ガス拡散層の厚さは、それぞれ、約30μm、および170μmでほぼ同じであった。
【0113】
上記のMEAから、図19に示すように水素製造セルを作製した。
まず、上記のMEAを筒状に丸め、端部の電解質膜の一部を約5mm程度重ね、この重ねた部分を熱融着し、燃料極側が内側に、空気極側が外側となった円筒状MEAを作製した。その外形寸法は外径12mm長さ120mm(長さの内、有効電極部は100mm)であった。
次に、この円筒状MEAの内部に一部に穴のあいた外形11mm長さ160mmのPPチューブを差込み、このPPチューブと円筒状MEAの上部および下部の電解質部分を熱融着もしくは接着剤によって固定し、反応管とした。この反応管の空気極ガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図5及び図10に示すように、幅2mmの帯状のマスク(14M)を2mm間隔で8本設けた。
このようにして作製した反応管をさらに空気の導入口および、排出口を設けた、内径25mm、長さ130mmのPP製外装チューブに挿入し、先の反応管のPPチューブの上部および下部がこの外装チューブに固定されるようにゴム栓で固定しセルを構成した。
【0114】
このようにして作製したセルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度(運転温度)80℃で、図20に示すように、空気極側に空気を20〜300ml/分の流量、燃料極側に1.0Mのメタノール水溶液(燃料)を8.0ml/分の流量で流し、その時の燃料極と空気極の電圧差(オープン電圧)、燃料極側で発生する水素生成量について検討を行った。ガス発生量の測定には水中置換法を用いた。
その結果を表10に示す。
【0115】
【表10】

【0116】
表10に示されるように、実施例の反応管を用いた円筒型のセルにおいても、平板型のセルである参考例の場合と同様に、開回路電圧500mV付近で、セルの燃料極側から水素の発生が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明の反応管を用いたハニカム型水素製造装置は、有機物を含む燃料を100℃以下で分解して水素を含むガスを製造することができるものであるから、燃料電池に容易に水素を供給することができる。
また、本発明のハニカム型水素製造装置を使用した燃料電池発電装置は、パッケージに内蔵した制御装置を水素製造装置の発生する熱から保護するための特別な手段を必要とせず、さらに、燃料電池も含めて装置全体としての発熱も少ないものであるから、移動用電源あるいはオンサイト用電源として使用する場合、電気自動車や潜水船に搭載する場合に極めて有利である。
さらに、本発明のハニカム型水素製造装置を使用すれば、電気自動車(燃料電池自動車)に搭載した水素貯蔵容器、燃料電池自動車に水素を供給するための水素貯蔵タンクに容易に水素を供給することができ、また、半導体装置を製造する場合の処理ガス等として水素を使用する場合にも、水素貯蔵手段を設けておき、処理場所に容易に水素を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1(a)】本発明のハニカム型水素製造装置の一例を示す概略図である。
【図1(b)】本発明の反応管の一例を示す概略斜視図及び概略縦断面図である。
【図1(c)】本発明のハニカム型水素製造装置の他の例(ハニカム状に組み合わせた反応管の燃料極を一体化して導線を引き出したもの)を示す概略図である。
【図1(d)】本発明のハニカム型水素製造装置の他の例(ハニカム状に組み合わせた反応管の燃料極から個別に導線を引き出してまとめたもの)を示す概略図である。
【図2】本発明のハニカム型水素製造装置に使用する反応管の燃料極と空気極の放電領域における反応を示す概略図である。
【図3】本発明のハニカム型水素製造装置に使用する反応管の燃料極と空気極の水素発生領域における反応を示す概略図である。
【図4】本発明のハニカム型水素製造装置に使用する反応管の燃料極と空気極におけるトータル反応を示す概略図である。
【図5】空気極の表面の一部にマスクを設けた本発明の反応管の一例を示す反応管の管壁の縦断面図である。
【図6】燃料極の表面の一部にマスクを設けた本発明の反応管の一例を示す反応管の管壁の縦断面図である。
【図7】燃料極及び空気極の表面の一部にマスクを同じ位置に対向するように設けた反応管の一例を示す反応管の管壁の縦断面図である。
【図8】燃料極及び空気極の表面の一部にマスクを反対位置に対向しないように設けた反応管の一例を示す反応管の管壁の縦断面図である。
【図9】燃料極及び空気極の表面の一部にマスクをマスクの一部のみが対向するように半分ずらして設けた本発明の反応管の一例を示す反応管の管壁の縦断面図である。
【図10】燃料極及び空気極の表面の一部に設けたマスクの幅、間隔、本数を示す概略図である。
【図11】本発明の燃料電池発電装置の構成の一例を示す概略図である。
【図12】本発明の燃料電池発電装置における水素製造装置と燃料電池の関係を示す概略図である。
【図13】本発明の電気自動車における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す図である。
【図14】本発明の潜水船における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す図である。
【図15】本発明の水素供給システムのシステムフローの一例を示す図である。
【図16】空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にした例を示す概略図である。
【図17】空気極のガス拡散層を疎密の組合せにより不均一にした例を示す概略図である。
【図18】空気極のガス拡散層を表面の凹凸により不均一にした例を示す概略図である。
【図19】本発明の実施例における水素製造セルの作製手順を示す概略図である。
【図20】本発明の実施例において水素製造セルに燃料及び空気を供給する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0119】
10 水素製造セル
11 隔膜
12 燃料極
12M 燃料極に設けたマスク
13 有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を燃料極12に供給するための流路
14 酸化極(空気極)
14M 酸化極に設けたマスク
15 酸化剤(空気)を酸化極(空気極)14に供給するための流路
16 燃料ポンプ
17 空気ブロア
18 燃料流量調整弁
19 空気流量調整弁
20 燃料タンク
21 燃料調整槽
22 電圧調整器
23 気液分離器(水素を含むガスと未反応メタノール水溶液を分離)
24 未反応メタノール水溶液を燃料調整槽21に戻すための導管
25 水素タンク
26 水素流量調整弁
27 気液分離器(排空気から生成水と未反応メタノール水溶液を分離)
28 二酸化炭素除去装置
29 未反応メタノール水溶液を燃料調整槽21に戻すための導管
30 燃料電池
31 固体高分子電解質膜
32 水素極
33 水素を水素極32に供給するための流路
34 空気極
35 空気を空気極34に供給するための流路
36 燃料電池30で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置
37 発電装置全体の制御を行う制御装置
38 パッケージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、筒状の隔膜を有し前記筒状の隔膜の内外側面のうち一方の側面に燃料極及び他方の側面に酸化極を設けた反応管をハニカム状に多数組み合わせた水素製造セル、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするハニカム型水素製造装置。
【請求項2】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化剤を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いないで設けたことを特徴とする請求項1に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項3】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項4】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項3に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項5】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項6】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項7】
前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項8】
前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項9】
前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項10】
前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項11】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする請求項3に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項12】
前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする請求項11に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項13】
前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする請求項11又は12に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項14】
水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項15】
前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項16】
前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項17】
前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が400〜600mVであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項18】
前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項19】
前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項20】
運転温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項21】
前記燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項22】
前記アルコールがメタノールであることを特徴とする請求項21に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項23】
前記酸化極に供給する前記酸化剤が酸素を含む気体又は酸素であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項24】
前記隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項25】
前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする請求項24に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項26】
前記燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項27】
前記酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜26のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項28】
前記有機物を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする請求項1〜27のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項29】
前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする請求項1〜28のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置に燃料電池を接続して、前記ハニカム型水素製造装置を運転するための補機に供給する電気エネルギーを前記燃料電池から得ることを特徴とするハニカム型水素製造装置。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置を燃料電池と接続して、前記燃料電池に前記水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項32】
燃料電池発電装置が、燃料電池、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する前記ハニカム型水素製造装置、前記燃料電池で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置、発電装置全体の制御を行う制御装置を少なくともパッケージに内蔵したものであることを特徴とする請求項31に記載の燃料電池発電装置。
【請求項33】
前記ハニカム型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを冷却せずに前記燃料電池に供給することを特徴とする請求項31又は32に記載の燃料電池発電装置。
【請求項34】
前記水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であるハニカム型水素製造装置、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有するハニカム型水素製造装置並びに前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有するハニカム型水素製造装置の群から選ばれる2以上のハニカム型水素製造装置を組み合わせて使用することを特徴とする請求項31〜33のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項35】
前記ハニカム型水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が前記燃料電池又は他の前記ハニカム型水素製造装置から排出される排空気又は未反応酸素を含む気体であることを特徴とする請求項31〜34のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項36】
前記ハニカム型水素製造装置の発生する熱を遮断するための断熱材が設けられていないことを特徴とする請求項31〜35のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項37】
請求項31〜36のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置を搭載したことを特徴とする電気自動車。
【請求項38】
請求項31〜36のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置を搭載したことを特徴とする潜水船。
【請求項39】
請求項1〜30のいずれか一項に記載のハニカム型水素製造装置を水素貯蔵手段と接続して、前記水素貯蔵手段に前記ハニカム型水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することを特徴とする水素供給システム。
【請求項40】
前記水素貯蔵手段が、電気自動車に搭載した水素貯蔵容器であることを特徴とする請求項39に記載の水素供給システム。
【請求項41】
筒状の隔膜を有し前記筒状の隔膜の内外側面のうち一方の側面に燃料極及び他方の側面に酸化極を設けた水素製造セル用反応管において、前記酸化極のガス拡散層に酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とする水素製造セル用反応管。
【請求項42】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項41に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項43】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層に設ける代わりに、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項41に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項44】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする請求項42に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項45】
前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする請求項42〜44のいずれか一項に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項46】
前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする請求項42〜44のいずれか一項に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項47】
前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする請求項42〜46のいずれか一項に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項48】
前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする請求項42〜47いずれか一項に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項49】
前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする請求項41に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項50】
前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする請求項49に記載の水素製造セル用反応管。
【請求項51】
前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする請求項49又は50に記載の水素製造セル用反応管。


【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−45695(P2007−45695A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89999(P2006−89999)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】