説明

ハニカム構造体の製造方法、及び、ハニカム焼成体用原料組成物

【課題】 圧力損失が低く、高い強度を有するハニカムを製造することができるハニカム構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、上記原料組成物は、上記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と上記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、上記添加材として、金属酸化物粉末を含み、上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法、及び、ハニカム焼成体用原料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
そこで、排ガス中のパティキュレートを捕集して、排ガスを浄化するフィルタとして多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが種々提案されている。
そして、ハニカム構造体としては、高温耐熱性に優れるとの点から炭化ケイ素からなるハニカム構造体が提案されている。
【0003】
炭化ケイ素からなるハニカム焼成体を製造する方法としては、例えば、特許文献1に開示された方法が知られている。
具体的には、Al元素、B元素及びFe元素の含有率の合計が1重量%以下で、遊離炭素の含有率が5重量%以下の炭化ケイ素粉末を出発材料として成形しハニカム状成形体を得る第1工程、上記ハニカム状成形体の所定の貫通孔の端部を所定の栓材で目封じする第2工程、及び、上記目封じしたハニカム状成形体を非酸化性雰囲気中で焼結せしめる第3工程を行う方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−258715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法を用いてハニカム焼成体を製造した場合、ハニカム焼成体の圧力損失が大きくなってしまったり、ハニカム焼成体の強度が不充分となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ハニカム成形体を作製する原料組成物中に、平均粒子径(D50)が異なる2種類の炭化ケイ素粉末と、所定の配合量の金属酸化物粉末とを配合することにより、炭化ケイ素の焼結を確実に進行させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記原料組成物は、上記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と上記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、上記添加材として、金属酸化物粉末を含み、
上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中の配合量は、0.8〜1.2重量%であることが望ましい。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記金属酸化物粉末は、Fe、Fe、FeO、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO及びYのうちの少なくとも1種からなるものであることが望ましく、Fe、Fe及びFeOのうちの少なくとも1種からなるものであることがより望ましい。
【0009】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmであることが望ましい。
また、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一、又は、それよりも小さいことが望ましい。
また、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmであることが望ましい。
【0010】
本発明のハニカム焼成体用原料組成物は、炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含むハニカム焼成体用原料組成物であって、
上記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と上記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、上記添加材として、金属酸化物粉末を含み、
上記金属酸化物粉末の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とする。
【0011】
本発明のハニカム焼成体用原料組成物において、上記金属酸化物粉末の配合量は、0.8〜1.2重量%であることが望ましい。
また、本発明のハニカム焼成体用原料組成物において、上記金属酸化物粉末は、Fe、Fe、FeO、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO及びYのうちの少なくとも1種からなるものであることが望ましく、Fe、Fe及びFeOのうちの少なくとも1種からなるものであることがより望ましい。
【0012】
また、本発明のハニカム焼成体用原料組成物において、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmであることが望ましい。
また、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一、又は、それよりも小さいことが望ましい。
また、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、平均粒子径(D50)の異なる2種類の炭化ケイ素粉末と、所定の配合量の金属酸化物粉末とが配合された原料組成物を使用してハニカム構造体を製造するため、炭化ケイ素の焼結が確実に進行し、圧力損失が低く、高い強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
【0014】
本発明のハニカム焼成体用原料組成物は、平均粒子径(D50)の異なる2種類の炭化ケイ素粉末と、所定の配合量の金属酸化物粉末とを含むため、このハニカム焼成体用原料組成物を用いることにより、圧力損失が低く、高い強度を有するハニカム焼成体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について工程順に説明する。
本発明のハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記原料組成物は、上記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と上記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、上記添加材として、金属酸化物粉末を含み、
上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とする。
なお、以下、本明細書において、単に炭化ケイ素粉末と表記した場合には、炭化ケイ素粗粉末及び炭化ケイ素微粉末の両者を指すこととする。
なお、本発明において、「柱状」には、円柱状や多角柱状等の任意の柱の形状を含むこととする。
【0016】
ここでは、まず、図1、2に示したような、ハニカム焼成体110がシール材層(接着材層)101を介して複数個結束されてハニカムブロック103を構成し、さらに、このハニカムブロック103の外周にシール材層(コート層)102が形成されたハニカム構造体を製造する場合を例に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
ただし、本発明の製造方法で製造するハニカム構造体は、このような構成のハニカム構造体に限定されるわけではない。
【0017】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
【0018】
ハニカム構造体100では、図1に示すようにハニカム焼成体110がシール材層(接着材層)101を介して複数個結束されてハニカムブロック103を構成し、さらに、このハニカムブロック103の外周にシール材層(コート層)102が形成されている。
また、ハニカム焼成体110は、図2(a)、(b)に示すように、長手方向(図2(a)中、矢印aの方向)に多数のセル111が並設され、セル111同士を隔てるセル壁113がフィルタとして機能するようになっている。
【0019】
即ち、ハニカム焼成体110に形成されたセル111は、図2(b)に示すように、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封止材112により目封じされ、一のセル111に流入した排ガスは、必ずセル111を隔てるセル壁113を通過した後、他のセル111から流出するようになっており、排ガスがこのセル壁113を通過する際、パティキュレートがセル壁113部分で捕捉され、排ガスが浄化される。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、まず、炭化ケイ素粗粉末、上記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末、バインダ及び添加材を含む原料組成物を調製する。
【0021】
上記原料組成物は、上記添加材として金属酸化物粉末を含んでいる。
上記金属酸化物粉末としては、例えば、酸化鉄(Fe、Fe、FeO)、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO、Y、CeO、Ce、MnO、Sb、SnO、PbO、BeO、SrO、CuO、ZnO、NaO、KO、LiO等からなる粉末が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらを含む複合体であってもよい。
これらのなかでは、酸化鉄(Fe、Fe、FeO)、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO、Yからなる粉末が望ましく、酸化鉄(Fe、Fe、FeO)からなる粉末が特に望ましい。
上記酸化鉄粉末が望ましいのは、安価な材料であり、カーボンを除去することができ、ハニカム焼成体中に残留した際に腐食性がないからである。
【0022】
また、酸化鉄粉末と、シリカ粉末とを併用することもより望ましい。
この場合、上記シリカは、結晶質シリカであってもよいし、非晶質シリカであってもよいが、非晶質シリカが望ましい。
非晶質シリカのほうが、結晶質シリカに比べて融点が低いからである。
また、シリカを配合する場合、その配合量は、炭化ケイ素粉末の量に対して1.0〜5.0重量%が望ましい。
上記シリカとしては、特に、非晶質シリカであるフュームドシリカ(fumed silica)が望ましい。この理由は、高い比表面積を有しており、反応性に富むからである。
【0023】
原料組成物がこのような金属酸化物粉末を含んでいると、後の焼成処理において、ハニカム脱脂体中のカーボンが除去され、炭化ケイ素の焼結が確実に進行することとなる。
これについて、以下に説明する。
【0024】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、原料組成物を押出成形することによりハニカム成形体を作製した後、ハニカム成形体に脱脂処理を施すこととなる。
この脱脂処理では、バインダや分散媒液等が分解、除去されることとなる。しかしながら、この脱脂処理において、脱脂処理を完全に進行させ、ハニカム成形体中の有機成分を完全に分解、除去してしまうと、脱脂処理されたハニカム成形体(ハニカム脱脂体)は、強度が低下し、自身の形状を保持することができなくなってしまい、焼成処理して得たハニカム焼成体にピンホールやクラック等が生じる原因となってしまう。
そのため、ハニカム脱脂体中には、バインダ等由来の炭素が残留していることが必要となる。
【0025】
一方、ハニカム脱脂体に焼成処理を施して、ハニカム焼成体を作製する際には、ハニカム脱脂体中に炭素が残留していると、この炭素が、炭化ケイ素粉末間に介在して炭化ケイ素粉末同士の接触を阻害し、その結果、炭化ケイ素の焼結を阻害することとなる。
しかしながら、本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記原料組成物に金属酸化物粉末が配合されているため、焼成処理において、ハニカム脱脂体中のカーボンが除去されることとなる。
【0026】
具体的には、例えば、上記金属酸化物粉末が酸化鉄(Feで、Fe又はFeO)粉末である場合には、下記反応式(1)〜(3)に示す反応が右側に進行してハニカム脱脂体中のカーボンが除去されることとなる。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
【数3】

【0030】
また、上記金属酸化物粉末が酸化鉄粉末以外の場合も、上記反応式(1)〜(3)に示したカーボンと酸化鉄粉末との反応と同様、金属酸化物粉末とカーボンとの反応が進行してハニカム脱脂体中のカーボンが除去されることとなると考えられる。
具体的には、金属酸化物粉末が、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等である場合には、それぞれ、カーボンとの間で下記反応式(4)〜(8)に示す反応が右側に進行すると考えられる。
【0031】
【数4】

【0032】
【数5】

【0033】
【数6】

【0034】
【数7】

【0035】
【数8】

【0036】
このように原料組成物に金属酸化物粉末が配合されていると、焼成処理においてハニカム脱脂体中のカーボンが除去されることとなるため、炭化ケイ素の焼結が確実に進行し、所望のハニカム焼成体を得ることができる。
【0037】
上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中における配合量は、下限が0.8重量%で、上限が4.0重量%である。
上記金属酸化物粉末の配合量が、0.8重量%未満では、原料組成物中に含まれる金属酸化物粉末の配合量が少なすぎ、焼成処理において、ハニカム脱脂体中のカーボンを除去し、炭化ケイ素の焼結を確実に進行させるという本発明の効果を享受することができず、気孔径のバラツキが大きく、ハニカム構造体の強度が低下するとともに、圧力損失が大きくなってしまう。一方、4.0重量%を超えると、ハニカム焼成体の気孔径が大きくなりすぎ、ハニカム構造体の強度が低下することとなる。
【0038】
また、上記金属酸化物粉末の上記原料組成物中における配合量の望ましい上限は、1.2重量%である。
上記金属酸化物粉末の配合量を、0.8〜1.2重量%とすることにより、特に強度に優れたハニカム構造体とすることができるからである。
【0039】
また、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmであることが望ましい。
上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)が0.1μm未満では、ハニカム脱脂体の焼結が進行しすぎて、得られたハニカム焼成体の平均気孔径が大きくなり、その結果、ハニカム焼成体の強度が低くなる場合があるからである。また、上記平均粒子径(D50)が0.1μm未満の上記金属酸化物粉末は、作製が難しく、入手が困難な場合がある。
一方、金属酸化物粉末の上記平均粒子径(D50)が1.0μmを超えると、製造したハニカム構造体において、気孔径のバラツキが大きくなったり、強度が低くなったり、圧力損失が大きくなったりする場合がある。これは、原料組成物中における分散性に劣り、焼成処理において、ハニカム脱脂体中に残留したカーボンを除去する上記反応式(1)〜(8)に示した反応の進行が局在化し、ハニカム脱脂体全体カーボンを除去する反応が進行しにくくなるからであると考えられる。
なお、上記金属酸化物粉末が、酸化鉄(Fe、Fe、FeO)粉末である場合には、その平均気孔径が上記範囲にあることが特に望ましい。
なお、本明細書において、平均粒子径(D50)とは、体積基準のメジアン径のことをいう。
ここで、粒子径の具体的な測定法について簡単に説明する。粒子の大きさ(粒子径)は、一般的に、多数の測定結果を積算することにより、粒子径ごとの存在比率の分布として表される。この粒子径ごとの存在比率の分布を粒度分布という。粒度分布の測定法としては、例えば、体積基準での測定を原理とするレーザー回折・散乱法等を採用することができる。なお、このような方法では、粒子の形状を球状と仮定して粒度分布を測定する。そして、測定した粒度分布を累積分布に変換して、上記メジアン径(粉体の集合をある粒子径を中心に2つの群に分けたとき、粒子径が大きい側の群に存在する粒子の量と粒子径が小さい側に存在する粒子の量とが等量になる径)が算出される。
【0040】
さらに、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、後に詳述する炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一か、又は、それよりも小さいことが望ましい。
上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)をこのような大きさにすることにより、金属酸化物粉末を原料組成物中に高分散させることができ、その結果、焼成処理において、より確実にハニカム脱脂体中のカーボンを除去することができるからである。
【0041】
上記原料組成物は、炭化ケイ素粗粉末及び炭化ケイ素微粉末を含んでいる。
上記炭化ケイ素粗粉末、及び、上記炭化ケイ素微粉末のそれぞれの平均粒子径(D50)は、上記炭化ケイ素粗粉末の平均粒子径(D50)が、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)より大きければ特に限定されないが、上記炭化ケイ素粗粉末の平均粒子径(D50)は0.3〜50μmが望ましく、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)は0.1〜1.0μmが望ましい。
ハニカム構造体の気孔径等を調整するためには、焼成温度を調整する必要があるが、炭化ケイ素粉末の粒子径を調整することによっても、気孔径を調整することができる。
また、上記炭化ケイ素粗粉末及び上記炭化ケイ素微粉末の配合量は特に限定されず、炭化ケイ素粗粉末100重量部に対して、炭化ケイ素微粉末5〜65重量部配合することが望ましい。
【0042】
また、上記炭化ケイ素粉末(上記炭化ケイ素粗粉末及び上記炭化ケイ素微粉末)の純度は、96〜99.5重量%であることが望ましい。
上記炭化ケイ素粉末の純度が上記範囲にあれば、炭化ケイ素焼結体を製造する際に焼結性に優れるのに対し、その純度が96重量%未満では、炭化ケイ素の焼結の進行が不純物により阻害されることがあり、99.5重量%を超えると、焼結性向上の効果はほとんど得られないにも関わらず、このような高純度の炭化ケイ素粉末とするには高コストを要するからである。
【0043】
なお、本明細書において、炭化ケイ素粉末の純度とは、炭化ケイ素粉末中に炭化ケイ素分が占める重量%をいう。
通常、炭化ケイ素粉末と称しても、その粉末中には、炭化ケイ素粉末を製造する工程や保管する工程で、不可避的に粉末中に混在する不純物(不可避的不純物)が含まれることとなるからである。
【0044】
また、上記炭化ケイ素粉末は、α型炭化ケイ素粉末であってもよいし、β型炭化ケイ素粉末であってもよいし、α型炭化ケイ素粉末とβ型炭化ケイ素粉末との混合物であってもよいが、α型炭化ケイ素粉末が望ましい。
α型炭化ケイ素粉末は、β型炭化ケイ素粉末に比べて安価であり、また、α型炭化ケイ素粉末を使用した場合のほうが、気孔径の制御がしやすく、均一な気孔径を有する炭化ケイ素焼結体を製造するのに適しているからである。
【0045】
上記原料組成物は、バインダを含んでいる。
上記バインダはとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
これらのなかでは、メチルセルロースが望ましい。
上記バインダの配合量は、通常、炭化ケイ素粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0046】
上記原料組成物は、添加材として、金属酸化物粉末以外に、さらに可塑剤、潤滑剤、造孔剤等を含んでいてもよい。
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、上記潤滑剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。上記潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
上記造孔剤としては、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられる。
【0047】
上記原料組成物の具体的な調製方法としては、例えば、まず、上記炭化ケイ素微粉末と、上記金属酸化物粉末とを均一に混合しておき、ここに、上記炭化ケイ素粗粉末と上記バインダとを乾式混合することにより、混合粉末を調製し、これとは別に可塑剤、潤滑剤、水等を混合して混合液体を調製し、続いて、上記混合粉末と上記混合液体とを湿式混合機を用いて混合する方法等を用いることできる。
【0048】
ここで、上記炭化ケイ素微粉末と上記金属酸化物粉末との混合は、湿式混合であってもよいし、乾式混合であってもよいが、湿式混合であることが望ましい。両者を互いに高分散させ、均一に混合するのに適しているからである。
また、上記炭化ケイ素微粉末と上記金属酸化物粉末とを混合する場合、予め所定の平均粒子径(D50)を有するものを混合してもよいし、湿式粉砕混合等により、平均粒子径(D50)を調整しつつ、両者を混合してもよい。
【0049】
また、ここで調製した原料組成物は、その温度が28℃以下であることが望ましい。温度が高すぎると、バインダがゲル化してしまうことがあるからである。
また、上記原料組成物中の水分の含有量は8〜20重量%であることが望ましい。
【0050】
次に、この原料組成物を押出成形法等により押出成形する。そして、押出成形により得られた成形体を切断機で切断することにより、図2(a)に示した柱状のハニカム焼成体110と同形状で、その端部が目封じされていない形状のハニカム成形体を作製する。
【0051】
次に、上記ハニカム成形体に、必要に応じて、各セルのいずれか一方の端部に封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。
具体的には、セラミックフィルタとして機能するハニカム構造体を製造する場合には、各セルのいずれか一方の端部を目封じする。
また、上記ハニカム成形体を目封じする前には、必要に応じて、乾燥処理を施してもよく、この場合、上記乾燥処理は、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機、誘電乾燥機、凍結乾燥機等を用いて行えばよい。
【0052】
上記封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て形成される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、上記原料組成物と同様のものを用いることができる。
【0053】
上記封止材ペーストの充填は、必要に応じて行えばよく、上記封止材ペーストを充填した場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体をセラミックフィルタとして、好適に使用することができ、上記封止材ペーストを充填しなかった場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
【0054】
次に、必要に応じて封止材ペーストが充填されたハニカム成形体に、所定の条件(例えば、200〜500℃で2〜4時間)で脱脂処理を施す。
【0055】
次に、脱脂処理されたハニカム成形体に所定の条件(例えば、1400〜2300℃)焼成処理を施すことにより、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、上記セルのいずれか一方の端部が封止された柱状のハニカム焼成体を製造する。
なお、上記ハニカム成形体の脱脂条件や焼成条件は、従来から多孔質セラミックからなるフィルタを製造する際に用いられている条件を適用することができる。
【0056】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、既に説明したように、原料組成物中に金属酸化物粉末が配合されているため、例えば、上記反応式(1)〜(8)に示すようなカーボンを酸化する反応が右側に進行してハニカム脱脂体中のカーボンが除去されるとともに、上記金属酸化物粉末が、炭化ケイ素の焼結を進行させる触媒として作用するため、炭化ケイ素の焼結が確実に進行し、圧力損失がひくく、高い強度を有するハニカム焼成体を作製することができる。
【0057】
次に、ハニカム焼成体の側面に、シール材層(接着材層)となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布し、このシール材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、所定の大きさのハニカム焼成体の集合体を作製する。
【0058】
上記シール材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等が挙げられる。
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0059】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0060】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバ等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0061】
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0062】
さらに、上記シール材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0063】
次に、このハニカム焼成体の集合体を加熱してシール材ペーストを乾燥、固化させてシール材層(接着材層)とする。
次に、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体がシール材層(接着材層)を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、円柱形状のハニカムブロックを作製する。
【0064】
そして、ハニカムブロックの外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層(コート層)を形成することで、ハニカム焼成体がシール材層(接着材層)を介して複数個接着された円柱形状のハニカムブロックの外周部にシール材層(コート層)が設けられたハニカム構造体を製造することができる。
なお、本発明の製造方法で製造するハニカム構造体の形状は、円柱形状に限定されず、角柱形状、楕円柱形状等、任意の柱状体であればよい。
【0065】
その後、必要に応じて、ハニカム構造体に触媒を担持させる。上記触媒の担持は集合体を作製する前のハニカム焼成体に行ってもよい。
触媒を担持させる場合には、ハニカム構造体の表面に高い比表面積のアルミナ膜を形成し、このアルミナ膜の表面に助触媒、及び、白金等の触媒を付与することが望ましい。
【0066】
上記ハニカム構造体の表面にアルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に助触媒を付与する方法としては、例えば、Ce(NO等の希土類元素等を含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に触媒を付与する方法としては、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO、白金濃度4.53重量%)等をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
また、予め、アルミナ粒子に触媒を付与して、触媒が付与されたアルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法で触媒を付与してもよい。
【0067】
また、ここまで説明したハニカム構造体の製造方法は、集合型ハニカム構造体の製造方法であるが、本発明の製造方法により製造するハニカム構造体は、柱形状のハニカムブロックが1つのハニカム焼成体から構成されているハニカム構造体(一体型ハニカム構造体)であってもよい。
【0068】
このような一体型ハニカム構造体を製造する場合は、まず、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、集合型ハニカム構造体を製造する場合に比べて大きい以外は、集合型ハニカム構造体を製造する場合と同様の方法を用いて、ハニカム成形体を作製する。
【0069】
次に、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、必要に応じて、乾燥処理や封止材ペーストの充填を行い、さらに、その後、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、脱脂、焼成を行うことによりハニカムブロックを製造し、必要に応じて、シール材層(コート層)の形成を行うことにより、一体型ハニカム構造体を製造することができる。また、上記一体型ハニカム構造体にも、上述した方法で触媒を担持させてもよい。
【0070】
以上、説明した本発明のハニカム構造体の製造方法では、圧力損失が低く、高い強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
また、ここまでは本発明の製造方法で製造したハニカム構造体をセラミックフィルタに用いる場合について中心に説明したが、本発明の製造方法において、封止材ペーストを充填せずにハニカム構造体を製造した場合には、このハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
【0071】
また、ここまで説明した本発明のハニカム構造体の製造方法において、最初に調製する原料組成物が、本発明のハニカム焼成体用原料組成物である。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
平均粒子径10μmのα型炭化ケイ素粉末250kgと、平均粒子径0.5μmのα型炭化ケイ素粉末100kgと、平均粒子径0.5μmのFe粉末(Rana Gruber AS社製)4.6kgと、有機バインダ(メチルセルロース)20kgとを混合し、混合粉末を調製した。
平均粒子径は、本実施例を含め全ての実施例及び比較例においてレーザー回折・散乱法を用いて測定した。
次に、別途、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)12kgと、可塑剤(グリセリン)5kgと、水65kgとを混合して液体混合物を調製し、この液体混合物と混合粉末とを湿式混合機を用いて混合し、原料組成物を調製した。
なお、原料組成物中のFe粉末の配合量は、1.0重量%である。
【0073】
次に、搬送装置を用いて、この原料組成物を押出成形機に搬送し、押出成形機の原料投入口に投入した。
そして、押出成形により、セルの端部が封止されていない以外は、図2(a)に示した形状と同様の形状のハニカム成形体を作製した。
【0074】
次に、マイクロ波と熱風とを併用した乾燥機を用いて上記ハニカム成形体を乾燥させ、次に、上記原料組成物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填した。
さらに、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、封止材ペーストが充填されたハニカム成形体を、脱脂温度350℃、雰囲気中のO濃度9%、脱脂時間3時間の条件で脱脂することにより、ハニカム脱脂体を作製した。
【0075】
続いて、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間で焼成を行うことにより、気孔率が40%、その大きさが34.3mm×34.3mm×150mm、セルの数(セル密度)が46.5個/cm、セル壁の厚さが0.25mmの炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を製造した。
【0076】
次に、平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いてハニカム焼成体を多数接着させ、さらに、120℃で乾燥させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、シール材層(接着材層)の厚さ1mmの円柱状のハニカムブロックを作製した。
【0077】
次に、無機繊維としてシリカ−アルミナファイバ(平均繊維長100μm、平均繊維径10μm)23.3重量%、無機粒子として平均粒子径0.3μmの炭化ケイ素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiOの含有率:30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
【0078】
次に、上記シール材ペーストを用いて、ハニカムブロックの外周部に厚さ0.2mmのシール材ペースト層を形成した。そして、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、外周にシール材層(コート層)が形成された直径143.8mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体を作製した。
【0079】
(実施例2〜3、参考例1〜4、比較例1、2)
Fe粉末の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
【0080】
(実施例4〜9)
金属酸化物粉末として、Fe粉末に代えて、Fe粉末(和光純薬社製 鹿1級)、FeO粉末(和光純薬社製 鹿1級)、Al粉末(昭和電工社製 AL−160SG)、SiO粉末(Degussa社製、カープレックス♯67)、TiO粉末(昭和電工社製、スーパータイタニアG−1)、ZrO粉末(東ソー社製、TZ)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
【0081】
(実施例10、11、参考例5〜8)
表1に示した平均粒子径を有するFe粉末を使用するように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
【0082】
(実施例12、13)
表1に示した平均粒子径を有する炭化ケイ素微粉末、及び、Fe粉末を使用するように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
【0083】
(比較例3)
原料組成物にFe粉末を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例、参考例及び比較例において、ハニカム焼成体を作製した後、10個のハニカム焼成体について、下記の方法で3点曲げ強度試験を行った。結果を表2に示した。
即ち、JIS R 1601を参考に、インストロン5582を用い、スパン間距離:135mm、スピード1mm/minで3点曲げ試験を行い、各ハニカム焼成体の曲げ強度(MPa)を測定した。
【0086】
また、実施例、参考例及び比較例において、ハニカム焼成体を作製した後、ハニカム焼成体に形成された気孔径を下記の方法により測定した。結果を表2に示した。
即ち、JIS R 1655に準じ、水銀圧入法による細孔分布測定装置(島津製作所社製、オートポアIII 9405)を用い、ハニカム焼成体10個について、それぞれの中央部分を1cmの幅の立方体となるように切断してサンプルとし、水銀圧入法により、細孔直径0.2〜500μmの範囲で細孔分布を測定し、そのときの平均細孔径を(4V/A)として計算し、平均細孔径(平均気孔径)とその標準偏差を算出した。
【0087】
また、実施例、参考例及び比較例で製造したハニカム構造体について、その圧力損失を測定した。結果を表2に示した。なお、サンプル数は10個とした。
上記ハニカム構造体の圧力損失は、それぞれ1000N・m/hの流量で初期圧力損失を測定した。
【0088】
【表2】

【0089】
表2に示したように、本発明のハニカム構造体の製造方法では、0.8〜4.0重量%の金属酸化物粉末を添加材として含む原料組成物を用いることにより、気孔径のバラツキが小さく、ハニカム焼成体が高い曲げ強度(23Mpa以上)を有し、圧力損失の低いハニカム構造体を製造することができることが明らかとなった(実施例、参考例及び比較例、図3、4参照)。
図3は、実施例1〜3、参考例1〜4、比較例1、2における金属酸化物粉末の配合量(重量%)とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフであり、図4は、実施例1〜3、参考例1〜4、比較例1、2における金属酸化物粉末の配合量(重量%)と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【0090】
金属酸化物粉末の配合量が上記範囲を外れる場合には(比較例1、2)、曲げ強度が低くなったり、圧力損失が大きくなったりする。また、金属酸化物粉末の配合量が0.8重量%未満では、平均気孔径が小さくなる傾向にある。
また、金属酸化物粉末を添加しなかった場合には(比較例3)、製造したハニカム焼成体の曲げ強度が低くなり、さらに、圧力損失が大きくなる。また、この場合、平均気孔径が小さくなる傾向にある。
【0091】
また、この実施例及び参考例では、0.8〜1.2重量%の金属酸化物粉末を添加材として含む原料組成物を用いることが望ましいことが明らかとなった(実施例1〜3、参考例1〜4)。
金属酸化物粉末の添加量を上記範囲とすることにより、ハニカム焼成体の曲げ強度を29MPa以上と特に大きくすることができるからである。
【0092】
また、この実施例及び参考例では、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmが望ましいことが明らかとなった(実施例1、10〜13、参考例5、8、図5、6参照)。
図5は、実施例1、10〜13、参考例5、8における金属酸化物粉末の粒子径とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフであり、図6は、実施例1、10〜13、参考例5、8における金属酸化物粉末の粒子径と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【0093】
上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)が、上記範囲にあると高い曲げ強度(28MPa以上)を有するが、上記範囲を外れると製造したハニカム焼成体の曲げ強度が低くなる傾向にある。また、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)が1.0μmより大きいと、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなる傾向にある。
【0094】
また、この実施例及び参考例では、上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一か、それよりも小さいことが望ましいことが明らかとなった(実施例1、12、13、参考例6、7)
上記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)が、上記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)より大きいと、製造したハニカム焼成体の曲げ強度が小さくなる傾向にある。
また、実施例、参考例及び比較例の結果より、本発明のハニカム焼成体用原料組成物が、ハニカム焼成体の作製に好適に使用することができることも明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
【図3】実施例1〜3、参考例1〜4、比較例1、2における金属酸化物粉末の配合量(重量%)とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1〜3、参考例1〜4、比較例1、2における金属酸化物粉末の配合量(重量%)と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1、10〜13、参考例5、8における金属酸化物粉末の粒子径とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1、10〜13、参考例5、8における金属酸化物粉末の粒子径と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0096】
100 ハニカム構造体
101 シール材層(接着材層)
102 シール材層(コート層)
103 ハニカムブロック
110 ハニカム焼成体
111 セル
112 封止材
113 セル壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、前記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、前記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
前記原料組成物は、前記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と前記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、前記添加材として、金属酸化物粉末を含み、
前記金属酸化物粉末の前記原料組成物中の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物粉末の前記原料組成物中の配合量は、0.8〜1.2重量%である請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物粉末は、Fe、Fe、FeO、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO及びYのうちの少なくとも1種からなるものである請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物粉末は、Fe、Fe及びFeOのうちの少なくとも1種からなるものである請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmである請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、前記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一、又は、それよりも小さい請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmである請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
炭化ケイ素粉末、バインダ及び添加材を含むハニカム焼成体用原料組成物であって、
前記炭化ケイ素粉末として、炭化ケイ素粗粉末と前記炭化ケイ素粗粉末より平均粒子径(D50)の小さい炭化ケイ素微粉末とを含むとともに、前記添加材として、金属酸化物粉末を含み、
前記金属酸化物粉末の配合量は、0.8〜4.0重量%であることを特徴とするハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物粉末の配合量は、0.8〜1.2重量%である請求項8に記載のハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項10】
前記金属酸化物粉末は、Fe、Fe、FeO、SiO、Al、CaO、B、TiO、MgO、ZrO及びYのうちの少なくとも1種からなるものである請求項8又は9に記載のハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項11】
前記金属酸化物粉末は、Fe、Fe及びFeOのうちの少なくとも1種からなるものである請求項10に記載のハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項12】
前記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmである請求項8〜11のいずれかに記載のハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項13】
前記金属酸化物粉末の平均粒子径(D50)は、前記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)と同一、又は、それよりも小さい請求項8〜12のいずれかに記載のハニカム焼成体用原料組成物。
【請求項14】
前記炭化ケイ素微粉末の平均粒子径(D50)は、0.1〜1.0μmである請求項8〜13のいずれかに記載のハニカム焼成体用原料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−113995(P2009−113995A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202117(P2007−202117)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】