説明

ハロゲンフリー樹脂組成物、絶縁電線及びワイヤハーネス

【課題】無機系難燃剤を添加しても耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物、絶縁電線及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリー樹脂組成物、該ハロゲンフリー樹脂組成物で導体を被覆した絶縁電線及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内に配索される絶縁電線は、銅線等の導体を、ポリ塩化ビニル樹脂をベースとした樹脂組成物(以下、本明細書中では「PCV樹脂組成物」という)で被覆したものが多く用いられてきた。ポリ塩化ビニル樹脂は、自己消火性材料であるので難燃性が高い、可塑剤の添加によって硬度を自由に調節可能である、耐摩耗性が高い等の優れた材料特性を有しているが、焼却処分や車両火災等の燃焼時にハロゲン系ガス等の有害ガスが発生するので環境問題となっていた。
【0003】
このような問題を解決するために、近年、ポリオレフィン系樹脂をベースとしたハロゲンフリー樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1ないし3参照)。このようなハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤として金属水和物等の無機系難燃剤を添加することによって、ハロゲンフリー性を維持したまま難燃性を向上させている。
【特許文献1】特開2003−313377号公報
【特許文献2】特開2007−56204号公報
【特許文献3】特開2007−63343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無機系難燃剤によって所望の難燃性を得るためには無機系難燃剤を多量に添加する必要があるので、これによってハロゲンフリー樹脂組成物の耐摩耗性等の機械特性や、柔軟性、耐熱性等が著しく低下してしまうといった問題があった。
【0005】
また、近年、ハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された絶縁電線が主流になりつつあるが、現状のワイヤハーネスはこのようなハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された絶縁電線と従来のPCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線とが混在した状態で結束されて構成されることも多く、これら絶縁電線が結束された状態で長期間放置すると、PCV樹脂組成物に添加された可塑剤がハロゲンフリー樹脂組成物に移行してハロゲンフリー樹脂組成物の長期耐熱性が低下してしまうといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、無機系難燃剤を添加しても耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物、絶縁電線及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有することを特徴としたハロゲンフリー樹脂組成物である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、サリチル酸系金属捕捉剤0.1〜1.0重量部、ヒドラジン系金属捕捉剤3〜5重量部、及び、金属酸化物1〜10重量部、を含有することを特徴としたハロゲンフリー樹脂組成物である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、導体と該導体を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線において、前記絶縁体が請求項1または請求項2に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されていることを特徴とする絶縁電線である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、複数の絶縁電線を備えたワイヤハーネスにおいて、少なくとも一本の前記絶縁電線が請求項3に記載された絶縁電線で構成されていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有するので、耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、サリチル酸系金属捕捉剤0.1〜1.0重量部、ヒドラジン系金属捕捉剤3〜5重量部、及び、金属酸化物1〜10重量部、を含有するので、耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させるとともに、PCV樹脂組成物と長期間接触しても長期耐熱性を維持することができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、導体と該導体を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線の絶縁体が請求項1または請求項2に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させた絶縁電線を得ることができる。また、絶縁電線が請求項2に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されている場合は、PCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線と混在した状態で結束されても長期耐熱性を維持することができ、長期間安定して使用することができる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、複数の絶縁電線を備えたワイヤハーネスの少なくとも一本の前記絶縁電線が請求項3に記載された絶縁電線で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させたワイヤハーネスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物について説明する。本発明の第一の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有する。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、延伸性や耐摩耗性等の機械特性や耐薬品性が高い。
【0017】
プロピレン−αオレフィン共重合体を構成するαオレフィンとしては、炭素数4〜12のαオレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらは単独でもよく、二種以上であってもよい。また、αオレフィンは、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のαオレフィンであってもよい。
【0018】
そして、プロピレン−αオレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、プロピレン−αオレフィン共重合体は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のプロピレン−αオレフィン共重合体であってもよい。
【0019】
低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンがランダムに分岐を持って結合したポリエチレンである。低密度ポリエチレン樹脂としては、密度が0.910以上〜0.930未満のものが用いられる。低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンが略直鎖状に結合した高密度ポリエチレン樹脂と比較して硬度が低い。
【0020】
ベース樹脂は、前述したポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%とからなる。ポリプロピレン系樹脂が50重量%未満であると十分な耐摩耗性が得られず(後述する実施例の比較例A−1等)、75重量%を超えると柔軟性が低下する(比較例A−20)。なお、ポリプロピレン系樹脂が50重量%未満であると、プロピレン−αオレフィン共重合体と低密度ポリエチレン樹脂とのうちいずれかが必ず規定範囲外の重量%となってしまう。また、プロピレン−αオレフィン共重合体が20重量%未満であると十分な柔軟性が得られず(比較例A−21等)、40重量%を超えると耐摩耗性が低下する(比較例A−22等)。また、低密度ポリエチレン樹脂が5重量%未満であると耐摩耗性が低下し(比較例A−23等)、10重量%を超えると柔軟性が低下する(比較例A−24等)。
【0021】
金属水和物は、難燃剤として添加される。金属水和物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸亜鉛等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、金属水和物は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外の金属水和物であってもよい。
【0022】
金属水和物は、ベース樹脂100重量部に対して50〜100重量部となるように添加される。金属水和物が50重量部未満であると十分な難燃性が得られず(後述する実施例の比較例A−25)、100重量部を超えても添加量の増加に伴う難燃性の向上はほとんどなく、延伸性(引張伸び)や長期耐熱性が低下する(比較例A−26)。
【0023】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)(ケミノックス1129)、2,2’−ブチリデン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、トコフェロール類。トコフェロール類としては、具体的にはα−トコフェロール(5,7,8−トリメチルトコール)、β−トコフェロール(5,8−ジメチルトコール)、γ−トコフェロール(7,8−ジメチルトコール)、δ−トコフェロール(8−メチルトコール)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、フェノール系酸化防止剤は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のフェノール系酸化防止剤であってもよい。
【0024】
フェノール系酸化防止剤は、ベース樹脂100重量部に対して3〜5重量部となるように添加される。フェノール系酸化防止剤が3重量部未満であると十分な長期耐熱性が得られず(後述する実施例の比較例A−27)、5重量部を超えても添加量の増加に伴う長期耐熱性の向上はほとんどなく、樹脂組成物の表面にブリードが生じてしまう(比較例A−28)。
【0025】
ヒドラジン系金属捕捉剤としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、5−t−ブチル−2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N−ジエチル−N’,N’−ジフェニルオキサミド、N,N’−ジエチル−N,N’−ジフェニルオキサミド、オキサリックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、チオジプロピオニックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、イソフタリックアシッド−ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、ビス(サリシロイルヒドラジン)、N−サリシリデン−N’−サリシロイルヒドラゾン、2’,3−ビス{[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]}プロピオノヒドラジド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、ヒドラジン系金属捕捉剤は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のヒドラジン系金属捕捉剤であってもよい。
【0026】
ヒドラジン系金属捕捉剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.5〜2重量部となるように添加される。ヒドラジン系金属捕捉剤が0.5重量部未満であると十分な長期耐熱性が得られず(後述する実施例の比較例A−29)、2重量部を超えても添加量の増加に伴う長期耐熱性の向上はほとんどなく、樹脂組成物の表面にブリードが生じてしまう(比較例A−30)。
【0027】
前述した構成のハロゲンフリー樹脂組成物は、以上のような構成で配合され、プロピレン−αオレフィン共重合体を含有することによって柔軟性が向上し、低密度ポリエチレン樹脂を含有することによって耐摩耗性が向上し、金属水和物を含有することによって難燃性が向上するとともに、フェノール系酸化防止剤及びヒドラジン系金属捕捉剤を含有することによって長期耐熱性の低下が低減される。
【0028】
なお、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物を構成する各成分はハロゲンを含有しておらず、燃焼時にハロゲン系ガスが発生することがない。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物は非架橋型であり、容易にリサイクルすることができる。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物に、さらに着色剤、滑剤、帯電防止剤、発砲剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0029】
前述したハロゲンフリー樹脂組成物は、以上のような構成で配合されて混練されるが、その方法は公知の種々の手段を用いることができる。例えば、予めヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてプリブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等公知の混練機を用いて混練する等してハロゲンフリー樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
次に、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された絶縁電線及びワイヤハーネスについて説明する。絶縁電線の種類、構造には制限がなく、例えば、単線、フラット線、シールド線等が挙げられる。絶縁電線は、導体と、該導体を被覆する絶縁体とを備え、絶縁体が本発明のハロゲンフリー樹脂組成物で構成される。導体は、銅やアルミニウム等の金属からなり、長尺線状に設けられている。導体は、一本でもよく、また複数本でもよい。なお、導体と絶縁体との間に、例えば他の絶縁体等が介在されていてもよい。
【0031】
前述した絶縁電線において、導体をハロゲンフリー樹脂組成物で被覆する方法は、公知の種々の手段を用いることができる。例えば、一般的な押出成形法を用いることができる。押出し機は、シリンダー直径Φ20〜90mm、L/D=10〜40の単軸押出機を使用し、スクリュー、ブレーカープレート、クロスヘッド、ディストリュビューター、ニップル及びダイスを有するものを使用する。そして、ハロゲンフリー樹脂組成物が十分に溶融する温度に設定された単軸押出機にハロゲンフリー樹脂組成物を投入する。ハロゲンフリー樹脂組成物はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融したハロゲンフリー樹脂組成物は、ディストリュビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより導体の円周上に被覆された状態で押出され、絶縁電線が得られる。
【0032】
そして、複数の絶縁電線を結束させて、ワイヤハーネスが得られる。絶縁電線の端末には、例えば、コネクタが取り付けられる。コネクタは、板金等を折り曲げる等してなる端子金具と、合成樹脂からなるコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、導体と電気的に接続され、コネクタハウジング内に収容される。コネクタは、他の電子機器に設けられたコネクタと嵌合し、ワイヤハーネスは電子機器に電力や制御信号等を伝達する。
【0033】
本実施形態によれば、ハロゲンフリー樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有するので、耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させることができる。
【0034】
導体と該導体を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線の絶縁体が前述したハロゲンフリー樹脂組成物で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させた絶縁電線を得ることができる。
【0035】
複数の絶縁電線を備えたワイヤハーネスの少なくとも一本が前述した絶縁電線で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させたワイヤハーネスを得ることができる。
【0036】
次に、本発明の第二の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物について説明する。本発明の第二の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、サリチル酸系金属捕捉剤0.1〜1.0重量部、ヒドラジン系金属捕捉剤3〜5重量部、及び、金属酸化物1〜10重量部、を含有する。
【0037】
なお、ポリプロピレン系樹脂とプロピレン−αオレフィン共重合体と低密度ポリエチレン樹脂とからなるベース樹脂、金属水和物、フェノール系酸化防止剤については、前述した第一の実施形態と同一構成であるので、ここでは物質の説明は省略し、添加量についてのみ説明する。
【0038】
ベース樹脂は、前述したポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%とからなる。ポリプロピレン系樹脂が50重量%未満であると十分な耐摩耗性が得られず(後述する実施例の比較例B−12、16)、75重量%を超えると柔軟性が低下する(比較例B−15)。ポリプロピレン系樹脂が50重量%未満であると、プロピレン−αオレフィン共重合体と低密度ポリエチレン樹脂とのうちいずれかが必ず規定範囲外の重量%となってしまう。また、プロピレン−αオレフィン共重合体が20重量%未満であると十分な柔軟性が得られず(比較例B−17)、40重量%を超えると耐摩耗性が低下する(比較例B−18)。また、低密度ポリエチレン樹脂が5重量%未満であったり10重量%を超えたりすると耐摩耗性が低下する(比較例B−19、20)。
【0039】
金属水和物は、ベース樹脂100重量部に対して50〜100重量部となるように添加される。金属水和物が50重量部未満であると十分な難燃性が得られず(後述する実施例の比較例B−1)、100重量部を超えても添加量の増加に伴う難燃性の向上はほとんどなく、延伸性や長期耐熱性が低下する(比較例B−2)。
【0040】
フェノール系酸化防止剤は、ベース樹脂100重量部に対して3〜5重量部となるように添加される。フェノール系酸化防止剤が3重量部未満であると十分な長期耐熱性が得られず(後述する実施例の比較例B−4)、5重量部を超えても添加量の増加に伴う長期耐熱性の向上はほとんどなく、樹脂組成物の表面にブリードが生じてしまう(比較例B−5)。
【0041】
サリチル酸系金属捕捉剤としては、例えば、N,N’−ジサリチリデン−エチレンジアミン、N,N’−ジサリチリデン−1,2−プロピレンジアミン、N,N’−ジサリチリデン−N’−メチル−ジプロピレントリアミン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N’−サリチロイルヒドラジド)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、サリチル酸系金属捕捉剤は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のサリチル酸系金属捕捉剤であってもよい。
【0042】
サリチル酸系金属捕捉剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1〜1.0重量部となるように添加される。サリチル酸系金属捕捉剤が0.1重量部未満であると十分な長期耐熱性が得られず(後述する実施例の比較例B−6)、1.0重量部を超えても添加量の増加による長期耐熱性の向上はほとんどなく、延伸性が低下してしまう(比較例B−7)。
【0043】
ヒドラジン系金属捕捉剤は、前述した第一の実施形態と同一構成であるのでここでは物質の説明は省略し、添加量についてのみ説明する。ヒドラジン系金属捕捉剤は、ベース樹脂100重量部に対して3〜5重量部となるように添加される。ヒドラジン系金属捕捉剤が3重量部未満であると十分な長期耐熱性が得られず(後述する比較例B−8)、5重量部を超えても添加量の増加による長期耐熱性の向上はほとんどなく、樹脂組成物の表面にブリードが生じてしまう(比較例B−9)。
【0044】
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、金属酸化物は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外の金属酸化物であってもよい。
【0045】
金属酸化物は、ベース樹脂100重量部に対して1〜10重量部となるように添加される。金属酸化物が1重量部未満であると長期耐熱性が低下し(後述する比較例B−10)、10重量部を超えても長期耐熱性が低下し、更には延伸性が低下してしまう(比較例B−11)。
【0046】
前述した構成のハロゲンフリー樹脂組成物は、以上のような構成で配合され、プロピレン−αオレフィン共重合体を含有することによって柔軟性が向上し、低密度ポリエチレン樹脂を含有することによって耐摩耗性が向上し、金属水和物を含有することによって難燃性が向上するとともに、フェノール系酸化防止剤、サリチル酸系金属捕捉剤、ヒドラジン系金属捕捉剤及び金属酸化物を含有することによって、長期耐熱性、特にPCV樹脂組成物との混在時における長期耐熱性の低下が低減される。長期耐熱性の低下の一因としては、可塑剤がPVC樹脂組成物からハロゲンフリー樹脂組成物に移行するためと考えられるが、本発明においては、ハロゲンフリー樹脂組成物内に可塑剤が移行しても前述した酸化防止剤、金属捕捉剤及び金属酸化剤等によって長期耐熱性の低下が抑制されると考えられる。
【0047】
なお、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物を構成する各成分はハロゲンを含有しておらず、燃焼時にハロゲン系ガスが発生することはない。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物は非架橋型であり、容易にリサイクルすることができる。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物に、さらに着色剤、滑剤、帯電防止剤、発砲剤、等を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0048】
本実施形態によれば、ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、サリチル酸系金属捕捉剤0.1〜1.0重量部、ヒドラジン系金属捕捉剤3〜5重量部、及び、金属酸化物1〜10重量部、を含有するので、耐摩耗性等の機械特性、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させるとともに、PCV樹脂組成物と長期間接触しても長期耐熱性を維持することができる。
【0049】
導体と該導体を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線の絶縁体が前述したハロゲンフリー樹脂組成物で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させた絶縁電線を得ることができるとともに、PCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線と混在した状態で結束されても長期耐熱性を維持することができ、長期間安定して使用することができる。
【0050】
複数の絶縁電線を備えたワイヤハーネスの少なくとも一本が前述した絶縁電線で構成されているので、耐摩耗性等の機械特性や、難燃性、柔軟性及び長期耐熱性を向上させたワイヤハーネスを得ることができるとともに、PCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線と混在した状態で結束されても長期耐熱性を維持することができ、長期間安定して使用することができる。
【0051】
(実施例)
本発明の発明者は、前述した第一及び第二の実施形態に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された被覆電線を製造して、本発明の効果を確認した。
【0052】
以下の実施例で使用した化合物の具体的な商品名、入手先等について、まとめて記す。
ポリプロピレン系樹脂:
プロピレン単独重合体、商品名 PS201A(MFR=0.5g/10min)、サンアロマー社製
プロピレン−αオレフィン共重合体:
商品名 Q200F(MFR=0.8g/10min)、サンアロマー社製
エチレン−αオレフィン共重合体:
商品名 エクセレンFX CX1001(MFR=1.0g/10min)、住友化学社製
低密度ポリエチレン樹脂:
商品名 ノバテックLD ZE41K(MFR=0.5g/10min)、日本ポリエチレン社製
金属水和物:
水酸化マグネシウム、商品名 キスマ5A(平均粒子径約0.8μm)、協和化学社製
フェノール系酸化防止剤:
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、商品名 Irganox 1010、チバスペシャルティケミカルズ社製
サリチル酸系金属捕捉剤:
3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、商品名 アデカスタブ CDA−1、ADEKA社製
ヒドラジン系金属捕捉剤:
2’,3−ビス{[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]}プロピオノヒドラジド、商品名 Iraganox MD 1024、チバスペシャルティケミカルズ社製
金属酸化物:
酸化亜鉛、商品名 酸化亜鉛二種、三井金属鉱業社製
【0053】
(実施例A)
まず、第一の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物に関する実施例Aを示す。表1中の成分欄に示す重量部にしたがって、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−αオレフィン共重合体、低密度ポリエチレン樹脂、金属水和物、フェノール系酸化防止剤及びヒドラジン系金属捕捉剤を配合してハロゲンフリー樹脂組成物を調製した。これを容量20リットルのヘンシェルミキサーで混合した後、Φ40mm同方向二軸押出機を使用してダイス温度200℃設定で混練した。その後、電線押出し機(Φ60mm、L/D=24.5、FFスクリュー)に投入し、押出スピード600mm/min、押出温度230℃にて、導体面積0.3395mm2(素線構成0.2485mm×7本撚り)の導体上に押出して、仕上がり外径1.20mmの絶縁電線を製造した。得られた絶縁電線について以下の評価試験を行い、結果を表1中の評価欄にまとめた。
【0054】
(引張伸び評価)
JIS B7721に準拠して行った。即ち、絶縁電線を150mmの長さに切り出し、導体を取り除いてハロゲンフリー樹脂組成物のみの管状試験片とした後、その中央部に50mmの間隔で標線を記した。次いで、室温下にて試験片の両端を引張試験機のチャックに取り付けた後、引張速度25〜500mm/minで引っ張り、標線間の距離を測定した。伸びが500%以上のものを合格(○)、伸びが500%未満のものを不合格(×)とした。
【0055】
(難燃性評価)
長さ600mm以上の絶縁電線を無風槽に45°の角度に傾斜させて固定し、上端から500mm±5mmの部分にブンゼンバーナーにより15秒間還元炎を当て、消炎するまでの時間を測定した。消炎までの時間が70秒以内のものを合格(○)、70秒を超えるものを不合格(×)とした。
【0056】
(耐摩耗性評価)
スクレープ摩耗試験装置を用いて行った。即ち、長さ約1mの絶縁電線をサンプルホルダーに載置し、クランプで固定する。そして、先端に直径0.45mmのピアノ線を備えるプランジを、押圧部材を用いて総荷重7Nで絶縁電線に押し当てて往復させ(往復距離14mm)、絶縁電線のハロゲンフリー樹脂組成物が摩耗してプランジのピアノ線が絶縁電線の導体に接するまでの往復回数を測定し、300回以上のものを合格(○)、300回未満のものを不合格(×)とした。
【0057】
(柔軟性評価)
長さ80mm、幅5mm、厚さ1.5mmの板状の試験片を用意し、この試験片の長手方向一端側20mmを固定台に固定し、他端側60mmを固定台から水平に突出させた。そして、前記他端から10mmの部分に20gのおもりをゆっくりと吊るし、30秒後の試験片の撓み量をスケールによって測定した。撓み量が15mm以上のものを合格(○)、15mm未満のものを不合格(×)とした。
【0058】
(ブリード評価)
絶縁電線の表面を目視によって確認し、ブリード(白い粉吹き)がないものを合格(○)、ブリードがあるものを不合格(×)とした。
【0059】
(長期耐熱性1評価)
絶縁電線を、150度で100時間放置して加熱老化させた後に、自己径巻き付けによってハロゲンフリー樹脂組成物に亀裂が生じないものを合格(○)、亀裂が生じるものを不合格(×)とした。
【0060】
【表1】

【0061】
(比較例A)
次に、実施例Aに対する比較例Aを示す。表2ないし表4中の成分欄に示す重量部にしたがって、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−αオレフィン共重合体、低密度ポリエチレン樹脂、金属水和物、フェノール系酸化防止剤及びヒドラジン系金属捕捉剤を配合してハロゲンフリー樹脂組成物を調製し、混合及び混練した。その後、得られたハロゲンフリー樹脂組成物で導体を被覆して絶縁電線を製造した。得られた絶縁電線について評価試験を行い、結果を表2ないし表4中の評価欄にまとめた。なお、ハロゲンフリー樹脂組成物の製造方法及び使用した化合物、絶縁電線の製造方法や評価試験の方法等は、前述した実施例Aと同様であるので詳細は省略する。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
本発明のハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された絶縁電線は、表1中の実施例A−1ないしA−10に示すように、引張伸び、難燃性、耐摩耗性、柔軟性、ブリード及び長期耐熱性1の全てにおいて良好な結果が得られ、十分な機械特性、難燃性、柔軟性や長期耐熱性を有していることが確認された。
【0066】
一方、比較例Aの絶縁電線は、表2ないし表4中の比較例B−1ないしB−30に示すように、引張伸び、難燃性、耐摩耗性、柔軟性、ブリード及び長期耐熱性1の少なくとも一つにおいて良好な結果が得られず、十分な機械特性、難燃性、柔軟性や長期耐熱性を有していなかった。
【0067】
(実施例B)
次に、第二の実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物に関する実施例Bを示す。表5ないし表7中の成分欄に示す重量部にしたがって、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−αオレフィン共重合体、低密度ポリエチレン樹脂、金属水和物、フェノール系酸化防止剤、サリチル酸系金属捕捉剤、ヒドラジン系金属捕捉剤及び金属酸化物を配合してハロゲンフリー樹脂組成物を調製し、混合及び混練した。その後、得られたハロゲンフリー樹脂組成物で導体を被覆して絶縁電線を製造した。得られた絶縁電線について評価試験を行い、結果を表5ないし表7中の評価欄にまとめた。なお、ハロゲンフリー樹脂組成物の製造方法及び使用した化合物、絶縁電線の製造方法や評価試験の方法等について、前述した実施例Aとの同一部分は詳細な説明は省略する。
【0068】
(長期耐熱性2評価)
本発明の絶縁電線と、導体をPCV樹脂組成物で被覆した絶縁電線とを任意の数にて混在させた電線束の外周に、ポリ塩化ビニル系粘着テープを巻き付けたものを、150度で100時間放置して加熱老化させた後に、一本の本発明の絶縁電線を取り出し、自己径巻き付けによってハロゲンフリー樹脂組成物に亀裂が生じないものを合格(○)、亀裂が生じるものを不合格(×)とした。
【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
(比較例B)
次に、実施例Bに対する比較例Bを示す。表8ないし表10中の成分欄に示す重量部にしたがって、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−αオレフィン共重合体(またはエチレン−αオレフィン共重合体)、低密度ポリエチレン樹脂、金属水和物、フェノール系酸化防止剤、サリチル酸系金属捕捉剤、ヒドラジン系金属捕捉剤及び金属酸化物を配合してハロゲンフリー樹脂組成物を調製し、混合及び混練した。その後、得られたハロゲンフリー樹脂組成物で導体を被覆して絶縁電線を製造した。得られた絶縁電線について評価試験を行い、結果を表8及び表10中の評価欄にまとめた。なお、ハロゲンフリー樹脂組成物の製造方法及び使用した化合物、絶縁電線の製造方法や評価試験の方法等は、前述した実施例Bと同様であるので詳細は省略する。
【0073】
【表8】

【0074】
【表9】

【0075】
【表10】

【0076】
本発明のハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された実施例Bの絶縁電線は、表5ないし表7中の実施例B−1ないしB−24に示すように、引張伸び、難燃性、耐摩耗性、柔軟性、ブリード及び長期耐熱性1において良好な結果が得られ、十分な機械特性、難燃性、柔軟性や長期耐熱性を有していることが確認された。さらに、長期耐熱性2において、PCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線と接触した状態、即ちPCV樹脂組成物で被覆された絶縁電線と混在した状態で束ねられて使用されても、長期耐熱性が低下することがなかった。
【0077】
一方、比較例Bの絶縁電線は、表8ないし表10中の比較例B−1及びB−2、B−4ないしB−20に示すように、引張伸び、難燃性、耐摩耗性、ブリード及び長期耐熱性1、2のうち少なくとも一つにおいて良好な結果が得られず、十分な機械特性、難燃性、柔軟性、ブリード及び長期耐熱性を有していなかった。また、比較例B−3に示すように、十分な機械特性、難燃性や柔軟性を有していても、PCV樹脂組成物で被覆された電線と混在した状態で束ねられて使用されると長期耐熱性が低下した。また、比較例B−21及びB−22に示すように、プロピレン−αオレフィン共重合体をエチレン−α共重合体に置き換えると、十分な柔軟性を有するものの耐摩耗性が低下した。
【0078】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、及び、ヒドラジン系金属捕捉剤0.5〜2重量部、を含有することを特徴とするハロゲンフリー樹脂組成物。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂50〜75重量%と、プロピレン−αオレフィン共重合体40〜20重量%と、低密度ポリエチレン樹脂10〜5重量%と、からなるベース樹脂100重量部、金属水和物50〜100重量部、フェノール系酸化防止剤3〜5重量部、サリチル酸系金属捕捉剤0.1〜1.0重量部、ヒドラジン系金属捕捉剤3〜5重量部、及び、金属酸化物1〜10重量部、を含有することを特徴とするハロゲンフリー樹脂組成物。
【請求項3】
導体と該導体を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線において、前記絶縁体が請求項1または請求項2に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されていることを特徴とする絶縁電線。
【請求項4】
複数の絶縁電線を結束させたワイヤハーネスにおいて、少なくとも一本の前記絶縁電線が請求項3に記載された絶縁電線で構成されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【公開番号】特開2009−127040(P2009−127040A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307333(P2007−307333)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】