説明

ハンダ付け用基板搬送治具

【課題】回路基板の予備加熱温度を上げた場合でも、回路基板上の着色樹脂部品を損傷させず、予備加熱を効率的に行って、回路基板組立体の生産性を高める。
【解決手段】上下のパレット3,4の間に回路基板2と各部品5〜10とを保持するように構成し、回路基板上の着色樹脂部品5〜10に対向して上パレット4に予備加熱用の光源16を遮る部分17〜21を形成し、着色樹脂部品を除く回路基板側に対向して上パレット4に、光源を照射させる開口22〜24を設けたハンダ付け用基板搬送治具1を採用する。回路基板2にハンダ接続する端子12,13に対向して開口22〜24を設けた。少なくとも開口内の端面22a〜c,23a〜c,24a〜b,24’a〜bを、光源16からの光を回路基板側に向けて斜め下方に反射する材料で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板や部品をハンダ接続するために加熱工程に送るハンダ付け用基板搬送治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来の回路基板ハンダ付け工程の一形態を示し、図5(b)は同じくハンダ付け用基板搬送治具の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
図5(a)のハンダ付け工程(装置)は、チェンコンベア51上に等ピッチで配置された複数の回路基板52と、チェンコンベア51の上下において、回路基板52の送り方向Bに順に配置された予備加熱用の遠赤外線ヒータ53と、恒温加熱用の遠赤外線ヒータ54と、急加熱(ハンダリフロー)用の近赤外線ヒータ55と、冷却ファン56とを備えたものである。回路基板52の前後の端部が図5(b)の搬送治具57の上に配置され、搬送治具57がチェンコンベア上に配置されている。
【0004】
予備加熱(53)で回路基板52が常温から加熱され、恒温加熱(54)で回路基板52の温度が一定に維持され、急加熱(55)で回路基板52が200°C以上に加熱されて、プリント回路(ランド)上のクリームハンダ(図示せず)が溶融され、回路基板上の部品58がプリント回路52にハンダ接続され、ファン56で冷却される。
【特許文献1】特開昭62−144876号公報(第3〜4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6(a)〜(c)は、回路基板ハンダ付け工程の他の形態を示すものである。
【0006】
このハンダ付け工程(装置)は、上パレット31と下パレット3とで成る合成樹脂製の搬送治具32を用いて、回路基板2と回路基板上の各部品5〜8を保持した状態で、図6(a)の如く、回路基板2の下面2aにフラックス33をスプレー式に塗布し、次いで図6(b)の如く、回路基板2を上下から予備加熱(プリヒート)16,34し、次いで図6(c)の如く、回路基板2の下面2aをフローハンダ槽35に浸漬して、溶融ハンダを噴流圧35aでプリント回路の端子接続部(ランドやスルーホール)に付着させて、回路基板2の回路と各部品5〜8の端子11等とをハンダ接続(11a)させるものである。
【0007】
図6(a)の搬送治具32において、回路基板2は下パレット3の上に配置され、上パレット31を回路基板2の上から被せるように下パレット3に装着して、上パレット31の押さえ部15のばね力で各部品6〜8を押さえて回路基板2に固定し、図6(c)のフローハンダ35の噴流圧35aに対抗させる。
【0008】
下パレット3には回路基板2を露出させる大きな開口26が設けられ、開口内でハンダの噴流35aが行われる。上パレット31には軽量化のための開口37が複数設けられている。上下のパレット3,31は例えば係止部(図示せず)のスナップ嵌合で相互に固定される。
【0009】
図6(a)のフラックス33は回路基板2の回路部と部品5〜8の端子部11,13とのハンダ接合面の酸化被膜を除去するための溶剤である。図6(b)で回路基板面2aのフラックス33が活性化する温度(100〜120°C程度)まで回路基板2を予備加熱する。予備加熱の目的はハンダ上がりやハンダのぬれ性を促進するためでもある。
【0010】
図6(b)の回路基板2の上面2b側の予備加熱は光源16(400°C程度)の照射で行い、下面2a側の予備加熱は温風34の吹き付けで行っている。回路基板2は搬送治具32ごとコンベア等の搬送手段で図6(a)〜(c)の各工程に送られる。回路基板2に各部品5〜8がハンダ接続されて回路基板組立体38が構成される。
【0011】
しかしながら、上記図6の回路基板2のハンダ付け工程においては、例えば生産性を高めるために、予備加熱時間を短縮し、且つ予備加熱温度を高めた(上側の光源16の出力を上げた)場合に、図6(b)の予備加熱工程において、光源16からの下向きの光16aが上パレット31の軽量化用の各開口37を通って回路基板2上のコネクタハウジング5〜7やリレー等(図示せず)といった光熱吸収性の良い着色樹脂部品に照射された際に、これら着色樹脂部品が損傷してしまうという懸念があった。
【0012】
本発明は、上記した点に鑑み、例えば回路基板の予備加熱温度を上げた場合でも、回路基板上の着色樹脂部品を損傷することがなく、予備加熱を効率的に行って、回路基板組立体の生産性を高めることのできるハンダ付け用基板搬送治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハンダ付け用基板搬送治具は、上下のパレットの間に回路基板と各部品とを保持するように構成され、該回路基板上の着色樹脂部品に対向して上パレットに予備加熱用の光源を遮る部分が形成され、該着色樹脂部品を除く回路基板側に対向して該上パレットに、該光源を照射させる開口が設けられたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、回路基板上の着色樹脂部品が上パレットで部分的に覆われて光源の光熱から保護され、着色樹脂部品の傷みや変形が防止される。また、着色樹脂部品を除く回路基板側が上パレットの開口で露出され、光源からの光熱が開口から回路基板側に直接的に照射されることで、各部品と回路基板とのハンダ接続がスムーズ且つ確実に行われる。「回路基板側」とは回路基板や回路基板上の端子等を含むものである。「部品」とは着色樹脂部品や光熱吸収性の弱い樹脂部品や端子等を含むものである。
【0015】
請求項2に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項1記載のハンダ付け用基板搬送治具において、前記回路基板にハンダ接続される端子に対向して前記上パレットに前記開口が設けられたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、回路基板上の端子が上パレットの開口で外部に露出され、光源の光が開口から端子に直接的に照射されることで、端子が加熱され、端子の回路基板接続部が加熱されて、端子と回路基板とのハンダ接続がスムーズ且つ確実に行われる。開口は、必ずしも端子の回路基板接続部に対向して位置する(開口の下に回路基板が露出して位置する)ものばかりではなく、端子の回路基板接続部から一体に離れた端子本体部に対向して位置してもよい(この場合、開口の下には回路基板が露出していないこともある)。
【0017】
請求項3に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項2記載のハンダ付け用基板搬送治具において、前記着色樹脂部品であるコネクタハウジングから導出された前記端子に対向して前記開口が設けられたことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、コネクタハウジングから導出された端子が端子近傍の回路基板部分と共に光源の光熱で直接加熱され、端子と回路基板とのハンダ接続がスムーズ且つ確実に行われる。端子はL字状に屈曲形成される。コネクタハウジングは上パレットで覆われて光源から保護される。
【0019】
請求項4に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項2又は3記載のハンダ付け用基板搬送治具において、電気部品接続用の前記端子に対向して前記開口が設けられ、該端子と一体のバスバー部が前記回路基板にハンダ接続されることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、電気部品接続用の端子が開口で露出され、光源の光が開口から電気部品接続用の端子を直接加熱し、端子のバスバー部が伝熱で加熱されて、バスバー部と回路基板とのハンダ接続がスムーズ且つ確実に行われる。
【0021】
請求項5に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項4記載のハンダ付け用基板搬送治具において、前記バスバー部に対向して前記開口が設けられたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、端子のバスバー部が開口で露出され、光源の光が開口からバスバー部を直接加熱することで、バスバー部と回路基板とのハンダ接続が一層スムーズ且つ確実に行われる。
【0023】
請求項6に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項1〜5の何れかに記載のハンダ付け用基板搬送治具において、少なくとも前記開口内の端面が前記光源からの光を前記回路基板側に向けて斜め下方に反射する材料で形成されたことを特徴とする。
【0024】
上記構成により、回路基板や端子が光源からの直射光で予備加熱されることに加えて、開口内の端面からの反射光で回路基板や端子が加熱されることで、予備加熱に要する時間が短縮される。
【0025】
請求項7に係るハンダ付け用基板搬送治具は、請求項6記載のハンダ付け用基板搬送治具において、前記上パレット全体が光を反射する材料で形成されたことを特徴とする。
【0026】
上記構成により、開口の端面を含む上パレットの形成が容易化・低コスト化される。光を反射する材料としてはアルミ等が好ましい。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、回路基板上の着色樹脂部品が上パレットで覆われて光源の光熱から保護されて、着色樹脂部品の損傷が防止されるから、光源の温度(出力)を従来よりも高めて、回路基板を短時間で確実に予備加熱することができる。また、着色樹脂部品を除く回路基板側を光源で直接予備加熱することで、回路基板への各部品のハンダ接続をスムーズ且つ確実に行わせることができる。これらにより、回路基板への各部品のハンダ接続性すなわち回路基板組立体の生産性を高めることができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、回路基板上の端子を光源で直接予備加熱することで、回路基板の端子接続部を直接的ないし間接的に確実に予備加熱することができ、請求項1記載の発明の効果が促進される。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、コネクタハウジングから導出された端子を光源で直接加熱することで、回路基板にスムーズ且つ確実にハンダ接続させることができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、端子を光源で直接加熱し、端子のバスバー部を伝熱で加熱することで、バスバー部を回路基板にスムーズ且つ確実にハンダ接続させることができる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、端子のバスバー部を光源で直接加熱することで、バスバー部を回路基板に一層スムーズ且つ確実にハンダ接続させることができる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、光源からの直射光と開口端面の反射光とによって、回路基板の予備加熱に要する時間が短縮されることで、回路基板組立体の生産性が一層高められる。
【0033】
請求項7記載の発明によれば、開口内の端面を特別に加工等する必要がないから、上パレットを容易に且つ低コストで作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1〜図2は、本発明に係るハンダ付け用基板搬送治具とそれを用いた予備加熱方法の一実施形態を示すものである。
【0035】
図1の如く、このハンダ付け用基板搬送治具1は、回路基板2を配置する合成樹脂製の板状の下パレット3と、回路基板上の各部品5〜10を回路基板2にばね付勢で押し付ける押し部15を有する合成樹脂製の板状の上パレット4とで構成され、図2の如く、上パレット4が、各着色樹脂部品5,6,7,9,10を覆って予備加熱用の光源16(図1)から保護する部分(光源16を遮る部分)17〜20を有すると共に、光源16を回路基板上の導電金属製の各端子12,13や、回路基板接続部14aを含むバスバー部14に照射させる複数の開口22〜24を有するものである。
【0036】
図1の下パレット3は図6の既存の基板搬送治具の下パレットと同じものであり、フローハンダの噴流を回路基板2の下面(ハンダ面)2aに当てるための大きな開口26を有している。図2の上パレット4は図6の基板搬送治具の上パレットと較べて開口22〜25の位置や数や大きさが異なっている。上下のパレット3,4は回路基板2と各部品5〜14を保持した状態で係止部(図示せず)のスナップ嵌合等で相互に係止される。
【0037】
既存例の図6(b)では回路基板2の下面側の予備加熱を熱風で行ったが、図1において、回路基板2の大きさや着色樹脂部品5〜7,9,10の配置等によっては下側の予備加熱を省略して上側の光源16による予備加熱のみとすることも可能である。押し部15や回路基板2や回路基板上の各部品は図6の既存例のものと同じである。
【0038】
図1は図2(平面図)の矢視A正面図であり、図3に図2の上パレットを除いた回路基板の平面図を示している。矢視A側を前として説明する。
【0039】
図1の如く、水平な回路基板2の上面2bの前部中央に、複数のピン状端子11を一列に垂直に立ち上げて絶縁性の着色樹脂部品である薄型で横長のコネクタハウジング5内に収容して成るコネクタ(符号5で代用)が起立配置され、コネクタハウジング5はねじ止め等で回路基板2に固定され、ピン状端子11の下端11aは回路基板2のスルーホール(図示せず)を貫通して回路基板2の下面側に少し突出している。スルーホールの内面には、基板下面2bのプリント回路(図示せず)ないし基板厚み中間層のメタルコア(図示せず)に続く導電膜が被着形成されている。
【0040】
コネクタハウジング5の上面5aは上パレット4の覆い部(光源を遮る部分)17で近接して覆われて光源16から保護されている。各ピン状端子11は回路基板2へのハンダ接続を要するので、上パレット4の左右の二つの開口22,23がコネクタハウジング5の直前まで延長されて(各開口22,23の前端22a,23aがコネクタハウジング5の後端に接近して位置して)、コネクタハウジング5の近傍の回路基板部分を光源16で予備加熱することで、各ピン状端子11の予備加熱効果を高めている。図6(b)の下側の温風による予備加熱を加えれば一層の予備加熱温度が得られる。上パレット4の覆い部17〜21とは水平な上パレット自体の板状の壁部であり、特に付設したものではない。
【0041】
また、回路基板2の左右の両端側に絶縁性の着色樹脂部品である横長で低背なコネクタハウジング6,7が配置され、各コネクタハウジング内にピン状ないしタブ状のL字状に屈曲した複数の端子12の一方の水平な電気接触部(図示せず)が並列に且つ上下二段に収容配置され、複数の端子12の他方の垂直な基板接続部12aが下向きに回路基板2のスルーホールを貫通して回路基板2の下面2aから少し突出している。
【0042】
着色樹脂部品である左右の両コネクタハウジング6,7は上パレット4の左右の覆い部(光源を遮る部分)18,19で覆われて光源16から保護されている。これにより(前側のコネクタハウジング5においても同様であるが)、光源16の温度を従来(図6)よりも高めて予備加熱時間を短縮させることが可能となる。コネクタハウジング6,7はねじ止め等で回路基板2の上面2bに固定されている。
【0043】
左右の各コネクタハウジング6,7から突出した各端子12は上パレット4の左右の開口22,23の下方で回路基板2と共に露出して、光源16による予備加熱を直接受けるようになっており、回路基板2への端子12の接続部12aがその近傍の回路基板部分2bと共に光源16で予備加熱されて、回路基板2への各端子12のハンダ接続性が高められる。
【0044】
左右のコネクタハウジング6,7の相手コネクタ嵌合端6a,7aに沿って上パレット4の左右端に横長の開口25が切欠形成されている。各開口25が各コネクタハウジング6,7すなわち回路基板2に近接しているので、光源16による回路基板2の予備加熱が極力促進される。
【0045】
また、回路基板2の後端側において、絶縁性の着色樹脂部品である横長矩形状のブロック部8が配置され、ブロック部8の上面にヒューズ(電気部品)接続用の複数の水平な挟持端子(端子ないし端子本体部)13が狭ピッチで近接して並列に配置され、各挟持端子13の基端は下向きの第一の垂直部13aに一体に続き、第一の垂直部13aがブロック部8内を貫通して、あるいはブロック部8の垂直面に沿って水平な長めのバスバー部14に一体に続き、バスバー部14は、着色樹脂部品であるリレー10や左右の端子12の水平部(符号12で代用)の上を通過して基端側で下向きに屈曲して第二の垂直部であるピン状の基板接続部14aに一体に続き、基板接続部14aが回路基板2のスルーホールを貫通して回路基板2の下面2aから少し突出している。
【0046】
挟持端子13は左右一対の挟持片13bを有するものであり、ブロック部8に上下二段に配置され、下段の挟持端子13はL字状に屈曲形成され、その垂直なピン状の基板接続部(図示せず)がブロック部8を貫通して回路基板2のスルーホールに挿入されている。上下一対の挟持端子13でブレード型のヒューズ(図示しない電気部品)の上下一対のタブ端子が挟持接続される。
【0047】
上段の挟持端子13に対応して上パレット4の後部に前後一対の横長の開口24,24’が隣接して設けられ、前後の開口24,24’の間に端子13やブロック部8を押す押し部15を備えた板部21が上パレット4に形成され、前後の開口24,24’の真下に各挟持端子13が露出されている。後側の開口24’は上パレット4の後端側に切欠形成されている。下段の挟持端子13は後側の開口24’によって露出されて光源16からの光熱16aを受けることができる。
【0048】
ブロック部8の上面は上側の各挟持端子13で覆われているので、上パレット4に覆い部を設ける必要は殆どないが、横長板状の覆い部(光源を遮る部分)21でブロック部8の中央部が覆われたことで、光源16に対する保護も兼ねられている。
【0049】
中央を除く左右の挟持端子13に続く水平なバスバー部14の基板接続部14a側の部分は上パレット4の左右の開口22,23の真下に位置して左右のコネクタ6,7の端子12やその近傍の回路基板部分2bと共に露出されている。中央のバスバー部14は、リレー等の着色樹脂部品9,10(正確にはリレー等の外側の絶縁ケースが着色樹脂部品である)を光源16から保護するために、上パレット4の左右の開口22,23の間の中央の覆い部(光源を遮る部分)20で覆われている。
【0050】
複数の挟持端子13が開口24,24’によって外部に露出されたことで、各挟持端子13が光源16の照射で予備加熱され、各挟持端子13に続くバスバー部14とその基板接続部14aが伝熱で予備加熱される。これにより、中央のバスバー部14が上パレット4の覆い部20で覆われていても予備加熱は間接的に行われる。予備加熱の完全を期すためには下段の挟持端子13と共に下側の熱風による予備加熱を行うのが好ましい。
【0051】
左右のバスバー部14とその基板接続部14aは上パレット4の左右の開口22,23で回路基板部分2bと共に露出されているので、光源16による予備加熱がバスバー部14とその基板接続部14aに直接的に行われ、回路基板2の予備加熱が効率良く行われて、回路基板2へのハンダ接続性(スルーホールへのハンダ上がりやハンダのぬれ性等)が高まる。
【0052】
図4は、本発明に係るハンダ付け用基板搬送治具とそれを用いた予備加熱方法の他の実施形態を示すものである。回路基板2や各部品5〜14等は図1,図2におけるものと同じであるので、図1,図2と同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
この基板搬送治具1’は上記図1〜図2におけるものと同じ形状をしているが、特に上パレット4’の材質を合成樹脂ではなくアルミ板等の光源16を反射する金属材料で形成して、上パレット4’の各開口22〜24(図2参照)の端面(内面)22a〜c,23a〜c,24a〜bで光源16からの光熱(斜めの光熱)16aを矢印16bの如く斜め下向きに反射して、その反射光16bを回路基板2の要部に照射して、回路基板2の予備加熱を促進させるものである。
【0054】
各開口22〜24からは垂直な矢印16aのように上記図1と同様に回路基板2に光源16からの光熱が直接照射される(光源からの斜めの光も開口内に照射される)から、これら光源16からの直接的な照射光16aと、開口端面22a〜c,23a〜c,24a〜bで反射した間接的な斜めの照射光16bとを受けて回路基板2の予備加熱が図1におけるよりも短時間で効率的に行われる。図1と同じ単位時間で光源16を照射すれば、図4の回路基板2の予備加熱温度は高まる(温度上昇が速くなる)。予備加熱目標温度は図1におけると同じである。
【0055】
開口端面22a〜c,23a〜c,24a〜bからの反射光16bを照射する部分は、回路基板2における左右の端子12(図2参照)やその垂直なピン状の基板接続部12aないしその近傍の回路基板部分2bや、後側の挟持端子13(図2)や、バスバー部14(図2)であることが好ましい。前記実施形態の図2と本実施形態とは上パレット4,4’の材質が異なるのみであるので、各部品等の説明は図2を引用して行うこととする。
【0056】
上パレット4’の左右の開口22,23の左右の端面22b,23bや前後の端面22a,22c,23a,23cで光源16からの斜めの光16aを逆方向の斜め下向きに反射して、左右の端子12やバスバー部14やそれらの基板接続部12a,14aやその近傍の回路基板部分2bを照射する。また、上パレット4’の後部の各開口24,24’の前後左右の各端面24a〜b,24’a〜bで光源16からの斜めの光16aを逆方向の斜め下向きに反射して、挟持端子13やその近傍の回路基板部分2bを照射する。
【0057】
図4の実施形態においては、各開口22〜24’の端面22a〜24’bを垂直に形成しているが、例えば開口22〜24’の端面22a〜24’bをハの字(テーパ状)に形成したり、あるいは逆ハの字(逆テーパ状)に形成することも可能である。何れの場合も光源16からの光16aを回路基板2や端子12,13等の要部に反射させ得る角度で各開口22〜24’の端面22a〜24’bの傾斜角度が設定される。
【0058】
また、図4の実施形態においては、上パレット4’自体をアルミ等の鏡面金属で形成した例で説明したが、例えば上パレット4’を図1と同様に合成樹脂で形成し、各開口22〜24’の端面22a〜24’bに光反射用の金属板や金属箔(図示せず)を設けたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るハンダ付け用基板搬送治具とそれを用いた予備加熱方法の一実施形態を示す一部縦断面とした正面図である。
【図2】同じくハンダ付け用基板搬送治具と回路基板を示す平面図である。
【図3】同じく回路基板を示す平面図である。
【図4】ハンダ付け用基板搬送治具とそれを用いた予備加熱方法の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】(a)は従来の回路基板ハンダ付け工程の一形態を示す正面図、(b)は同じくハンダ付け用基板搬送治具の一形態を示す正面図である。
【図6】(a)〜(c)は既存の回路基板ハンダ付け工程の他の形態を工程順に示す一部縦断面とした正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1,1’ ハンダ付け用基板搬送治具
2 回路基板
3 下パレット
4,4’ 上パレット
5〜10 部品
5〜7 コネクタハウジング(着色樹脂部品)
9,10 リレー(着色樹脂部品)
12 ピン状の端子(端子)
13 挟持端子(端子)
14 バスバー部
16 光源
17〜21 覆い部(光源を遮る部分)
22〜24,24’開口
22a〜c,23a〜c,24a〜b,24’a〜b 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下のパレットの間に回路基板と各部品とを保持するように構成され、該回路基板上の着色樹脂部品に対向して上パレットに予備加熱用の光源を遮る部分が形成され、該着色樹脂部品を除く回路基板側に対向して該上パレットに、該光源を照射させる開口が設けられたことを特徴とするハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項2】
前記回路基板にハンダ接続される端子に対向して前記上パレットに前記開口が設けられたことを特徴とする請求項1記載のハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項3】
前記着色樹脂部品であるコネクタハウジングから導出された前記端子に対向して前記開口が設けられたことを特徴とする請求項2記載のハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項4】
電気部品接続用の前記端子に対向して前記開口が設けられ、該端子と一体のバスバー部が前記回路基板にハンダ接続されることを特徴とする請求項2又は3記載のハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項5】
前記バスバー部に対向して前記開口が設けられたことを特徴とする請求項4記載のハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項6】
少なくとも前記開口内の端面が前記光源からの光を前記回路基板側に向けて斜め下方に反射する材料で形成されたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のハンダ付け用基板搬送治具。
【請求項7】
前記上パレット全体が光を反射する材料で形成されたことを特徴とする請求項6記載のハンダ付け用基板搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−283594(P2009−283594A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132827(P2008−132827)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】