説明

ハンドル装置

【課題】操作部の組み付けを容易にしつつ、操作部が本体部からはずれないようにしたロック機能を有するハンドル装置を提供する。
【解決手段】本体部20は、ボードの取付孔に取り付けられる。操作部40は、本体部20の表面側から操作可能に本体部20に回動自在に軸支される。ロック部50は、ボードを車両の荷室の被ロック体にロックし、操作部40の回動によってロック解除可能である。カバー部は、本体部20の裏面を覆うように構成される。本体部20は、対向する一対の軸孔がそれぞれ形成された一対の側壁部と、一対の側壁部の間に位置し、ロック部を移動可能に挟持する一対の弾性爪体を有する基部と、両端が側壁部に連結する前縁と、基部と前縁との間に配置される貫通孔を有する。操作部40は、一対の軸孔にそれぞれ挿入される軸突起を有する。カバー部は、弾性爪体の拡開方向への動きを抑止する拡開抑止部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック部を備えるハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部に設けられた荷室には、荷室の下に設けたスペアタイヤや小物入れの収容庫のふたとして、および荷室の床として平板形状のボードが設置される。このボードは車両の振動で開いてしまったり、横方向にずれたりしないように車体にロックされる。
【0003】
特許文献1から特許文献5には、ボディに回動可能に連結されたハンドルと、ハンドルの回動によって進退するロック部とを有し、ハンドルを回動するとロック部を後退させてロック解除する車両用ボードのハンドル装置が開示されている。
【0004】
特許文献1のハンドル装置においては、ボディとハンドルの軸受孔を同軸に配置し、棒状のシャフトを軸受孔に挿入することでボディとハンドルが連結される。特許文献2から特許文献5のハンドル装置においては、ハンドルに一体に形成した軸部をボディの軸受孔に挿入することでボディとハンドルが連結される。
【0005】
なお、特許文献6には、ボディに回動可能に連結されたハンドルを有する車両用ボードのハンドル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−160957号公報
【特許文献2】米国特許第6109669号明細書
【特許文献3】米国特許第6626472号明細書
【特許文献4】米国特許第6719332号明細書
【特許文献5】米国特許第7083205号明細書
【特許文献6】特開2010−120584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、シャフトが金属で形成されるため、コストがかかり、棒状のシャフトをボディの軸受孔とハンドルの軸受孔に挿入する組み付け作業は煩瑣である。
【0008】
一方、特許文献2から特許文献5に記載の技術では、軸部がハンドルに一体に形成されており、その軸部をボディの表面側からボディの軸受孔に挿入する組み付け作業を行う。これらのハンドル装置を使用するとき、つまりハンドルに手を掛けて引くときは、ハンドルの軸部が軸受孔から表面側に引っ張られる。つまり、ハンドルの軸部が組み付け時の経路と同じ経路をたどるように引っ張られるため、軸受孔から外れるおそれがある。そのため、ハンドルの軸部が軸受孔から外れないように軸受孔およびその周囲を構成すると、組み付け時における軸部の軸受孔への挿入に大きな力が必要となり、作業効率が低下する。
【0009】
車両用ボードを持ち上げる際にハンドルに大きな力が加わるため、ハンドルがボディから外れないようにすることは非常に重要な課題である。そこで、組み付けやすく外れにくいハンドルの提供を目的として、特許文献6にはハンドルを基体に形成された切欠口を介して基体の裏側から挿入して組み付けるようにしたハンドル装置が記載されているが、この構造ではロック部を基体に支持することができない。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部の組み付けを容易にしつつ、操作部が本体部からはずれないようにしたロック機能を有するハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車両の荷室に配設されるボードに取り付けられるハンドル装置であって、ボードの取付孔に取り付けられる本体部と、本体部の表面側から操作可能に本体部に回動自在に軸支される操作部と、ボードを車両の荷室の被ロック体にロックし、操作部の回動によってロック解除可能なロック部と、本体部の裏面を覆うように構成されたカバー部と、を備える。本体部は、対向する一対の軸孔がそれぞれ形成された一対の側壁部と、一対の側壁部の間に位置し、ロック部を移動可能に挟持する一対の弾性爪体を有する基部と、両端が側壁部に連結する前縁と、基部と前縁との間に配置される貫通孔と、を有する。操作部は、一対の軸孔にそれぞれ挿入される軸突起を有する。このようなハンドル装置においてカバー部は、弾性爪体の拡開方向への動きを抑止する拡開抑止部を有する。
【0012】
この態様によると、貫通孔が形成されているため、操作部を本体部の裏側から貫通孔に挿入して本体部に組み付けることが可能である。さらに続けて、カバー部を本体部の裏面に取り付けるが、このとき拡開抑止部が弾性爪体の動きを抑止することで、ロック部の挟持がはずれることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロック機能を有したハンドル装置を、操作部の組み付けを容易にしつつ、操作部が本体部からはずれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るボードが車両に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るハンドル装置の表面側の斜視図である。
【図3】実施形態に係るハンドル装置の裏面側の斜視図である。
【図4】実施形態に係るハンドル装置のカバー部を取り除いた状態の斜視図である。
【図5】図3に示すハンドル装置のA−A断面図である。
【図6】実施形態に係る本体部の表面側の斜視図である。
【図7】実施形態に係る本体部の裏面側の斜視図である。
【図8】実施形態に係る操作部の表面側の斜視図である。
【図9】実施形態に係る操作部の裏面側の斜視図である。
【図10】図10(a)は、実施形態に係るロック部の表面側の斜視図であり、図10(b)は、ロック部の裏面側の斜視図である。
【図11】実施形態に係るカバー部の表面側の斜視図を示す図である。
【図12】(a)から(c)は、実施形態に係るロック部の本体部への組み付けを説明する図である。
【図13】(a)および(b)は実施形態に係るロック部、弾性爪体および拡開抑止部の位置関係を示す図である。
【図14】実施形態に係るロック部の変形例を示す図である。
【図15】実施形態に係る操作部と突出部との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態に係るボード1が車両に取り付けられた状態を示す斜視図である。荷室の後方にはバックドアによって開閉される後部開口2が形成されており、この後部開口2を通じて荷室に荷物が搬入される。荷室にはボード1が配設されている。ボード1の下には収納箱が設けられている。
【0016】
ハンドル装置10は車両の運転時に生じる振動でボード1が開いたり、ずれたりしないように固定するロック機能を有する。ハンドル装置10は車両に設けられた被ロック体(不図示)にボード1を固定する。ボード1は、車両の荷室に配設され、ハンドル装置10の取付孔(不図示)を有する。
【0017】
図2は、実施形態に係るハンドル装置10の表面側の斜視図である。また、図3は、実施形態に係るハンドル装置10の裏面側の斜視図である。また、図4は、実施形態に係るハンドル装置10のカバー部60を取り除いた状態の裏面側の斜視図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0018】
ハンドル装置10は、本体部20、操作部40、ロック部50、カバー部60およびコイルバネ70を備える。表面側に本体部20および操作部40が位置し、裏面側にカバー部60が位置する。図3に示すように、カバー部60は、本体部20の裏面を覆うように構成されている。
【0019】
ロック部50は、本体部20およびカバー部60の出入口から所定間隔以上に突出することで、ボード1を荷室の被ロック体にロックする。ハンドル装置10において、ロック部50が出る方向を前方向とし、ロック部50が退く方向を後方向とする。
【0020】
図5は、図3に示すハンドル装置10のA−A断面図である。カバー部60と本体部20との固定にはねじ80が用いられている。ボード1の取付孔4の縁に本体部20の周縁部26とカバー部60の周縁部64とが挟むようにして固定されている。本体部20の裏面全体がカバー部60に覆われている。
【0021】
操作部40は、本体部20の表面側から操作可能に、本体部20に回動自在に軸支される。ユーザは手を挿入して把持部41を指先で引き上げて少し回動させると、把持部41が本体部20から引き出されるので、手を把持部41にしっかり掛けることができ、操作部40を上向きに引っ張って、ロック解除する。さらに、ユーザは把持部41をつかんだままボード1を持ち上げることができる。
【0022】
また、図4に示すように、カバー部60以外の操作部40、ロック部50およびコイルバネ70は、本体部20に組み付けられる。これにより図5に示すカバー部60の周縁部64と底部63との間隔、すなわち周壁部61の高さを調整することで、他の部材はそのままであっても厚さが異なる別仕様のボードに用いることができる。
図2〜図5について適宜参照しつつ、各部材について具体的に説明する。
【0023】
図6は、実施形態に係る本体部20の表面側の斜視図である。また、図7は、実施形態に係る本体部20の裏面側の斜視図である。本体部20は、第1側壁部21aおよび第2側壁部21b(これらを区別しない場合は「側壁部21」という)と基部22と前縁31と貫通孔24とフランジ形状の周縁部26とを有する。
【0024】
第1側壁部21aおよび第2側壁部21bは対向して配置される。第1側壁部21aには第1軸孔25aおよび第1テーパ部29aが形成され、第2側壁部21bには第2軸孔25bおよび第2テーパ部29bが形成される。第1軸孔25aおよび第1テーパ部29aと、第2軸孔25bおよび第2テーパ部29bは対向して配置される。第1テーパ部29aおよび第2テーパ部29b(これらを区別しない場合は「テーパ部29」という)は、対向する間隔がそれぞれ第1軸孔25aおよび第2軸孔25bから裏端部37に向かうにしたがって広くなる。またテーパ部29の厚さは軸孔25からカバー部60の底部63に離れるにしたがって薄くなる。軸孔25の周囲を形成する表側壁部82a、82bは裏側のテーパ部29よりも厚く、テーパ部29よりも大きく内側に突出している。これにより、操作部40を上向きに引っ張った際に操作部40の軸突起が軸孔25から外れることを防ぐことができる。
【0025】
前縁31は両端が側壁部21に連結する。前縁31からロック部50が出入りする。
【0026】
基部22は、第1側壁部21aおよび第2側壁部21bの間に位置する。基部22は、ロック部50を移動可能に挟持する一対の第2弾性爪体30a、30b(これらを区別しない場合は「第2弾性爪体30」という)と、U字形状に形成された操作ガイド部27と、操作ガイド部27に連結する中央突部28と、を有する。基部22からネジボス38aおよびネジボス38bが立設している。
【0027】
第1弾性爪体23a、23b(これらを区別しない場合は「第1弾性爪体23」という)は前縁31に立設し、第2弾性爪体30は基部22に立設し、これらの先端の高さはいずれも同じである。第1弾性爪体23と第2弾性爪体30とが貫通孔24を挟んで貫通孔24の前後の孔縁に位置する。第1弾性爪体23および第2弾性爪体30によりロック部50を前後で摺動可能に支持することで、安定して支持することができる。第1弾性爪体23a、23bは、立設する第1柱部23a2、23b2、および第1柱部23a2、23b2から突出する第1爪部23a1、23b1を有する。また第2弾性爪体30a、30bは、立設する第2柱部30a2、30b2、および第2柱部30a2、30b2から突出する第2爪部30a1、30b1を有する。第1爪部23a1、23b1および第2爪部30a1、30b1(これらを区別しない場合は「爪部」という)は対向する方向(内向き)に突出している。一対の爪部の最短間隔はロック部50の幅より狭い。ロック部50の幅とはロック部50の側面と側面の間隔をいう。
【0028】
中央突部28は、操作部40の開口部42に収まり、周縁部26と操作部40とあいまってハンドル装置10の表面を平らに保つ。中央突部28の裏面側には、壁形状の第1突出部34aおよび第2突出部34bが形成される。基部22にはバネ受け部32が形成され、コイルバネ70の一端が保持される。
【0029】
第1突出部34aおよび第2突出部34bは、側壁部21に直交し、貫通孔24に隣接し、前縁31に対向して配置される。第1壁部36aおよび第2壁部36bは、第1突出部34aおよび第2突出部34bに直交して前縁31に向かって延びるように連結する。
【0030】
貫通孔24は、基部22と前縁31との間に配置され、一対の軸孔25の間に配置される。貫通孔24は、操作部40を組み付けるときの挿入孔として機能する。貫通孔24と、それに関連して貫通孔24の周りに孔縁24bを設ける。なお、操作部40は本体部20の裏面側から貫通孔24に挿入して組み付けられる。
【0031】
図8は、実施形態に係る操作部40の表面側の斜視図である。また、図9は、実施形態に係る操作部40の裏面側の斜視図である。操作部40は、把持部41、開口部42、軸突起43および軸突起連結部44を有する。ユーザは開口部42に手を挿入して把持部41をつかむ。把持部41と軸突起連結部44とは開口部42を挟んで並行に対向して配置される。
【0032】
第1軸突起43aおよび第2軸突起43b(これらを区別しない場合は「軸突起43」という)は、互いに離れる方向に突出し、一対の軸孔25にそれぞれ挿入される。
第1軸突起43aの先端と第2軸突起43bの先端と間隔は、第1テーパ部29aの端(裏端部37)と第2テーパ部29bの端(裏端部37)との間隔より短くてよい。これにより軸突起43を軸孔25にスムーズに挿入することができる。軸突起43の間には軸突起連結部44が設けられ、軸突起43を強固に連結する。
【0033】
軸突起連結部44の裏面側の中央には、ロック作用片45が突出するように形成される。ロック作用片45は、操作部40の回動によりロック部50を後方向に移動させる。また、軸突起連結部44の裏面側にロック作用片45を挟んで、第1ストッパ46aおよび第2ストッパ46b(これらを区別しない場合は「ストッパ46」という)が突出するように形成される。図5に示すようにストッパ46は、操作部40をロック解除する方向に回動させた場合に本体部20の第1突出部34aおよび第2突出部34bに当接して、操作部40のそれ以上の回動を規制する。
【0034】
図10(a)は、実施形態に係るロック部50の表面側の斜視図であり、図10(b)は、ロック部50の裏面側の斜視図である。ロック部50は、長方形状に形成される。ロック部50の先端部51は被ロック体に出入りする。ロック部50の後端部55にはバネ支持部57が形成され、コイルバネ70の一端を支持する。
【0035】
ロック部50の表面53には、表面53から凹んだ操作受け部52が形成される。操作部40がロック解除方向に操作された場合に、操作受け部52がロック作用片45から後方向の力を受けて、ロック部50が後方向に移動する。
【0036】
側面58a、58bの裏面側の角には、第1窪み部56aおよび第2窪み部56b(これらを区別しない場合は「窪み部56」という)が移動方向に沿って窪んで延在するように形成される。窪み部56は、裏面54より一段下がった面である。図4に示すように、窪み部56には第1弾性爪体23および第2弾性爪体30の爪部が張り出す。なお、爪部は組み付け後に窪み部56に常に接触していてもよいし、常に接触していなくてもよい。これにより、ロック部50のカバー部60側への動きを制限できる。一対の爪部の最短間隔は、裏面54の幅より長く、側面58aと側面58bの間隔より短い。ロック部50の裏面の前方の端部は先端に向かって厚さが薄くなる前端テーパ84が形成されている。前端テーパ84が下方から力を受けた場合、ロック部50に対してコイルバネ70に抗して本体部20内に収容する方向の力を与える。
【0037】
図11は、実施形態に係るカバー部60の表面側の斜視図を示す。カバー部60は、底部63と、底部63の周りから立設する周壁部61を有する。前側の周壁部61にはロック部50が突き出る出入口62が形成される。周壁部61の端部にはフランジ状の周縁部64が形成される。
【0038】
出入口62から後方向に延在する第1拡開抑止部65aおよび第2拡開抑止部65b(これらを区別しない場合「拡開抑止部65」という)が形成される。拡開抑止部65は、底部63から壁形状に突出する。組み付け後には、第1拡開抑止部65aおよび第2拡開抑止部65bの間にロック部50が収まる。このとき拡開抑止部65は、第1弾性爪体23および第2弾性爪体30の外側に当接または近接対峙する。これにより、車両の振動がロック部50に加わった場合に、拡開抑止部65は弾性爪体の拡開方向への動きを抑止することができる。拡開方向とは、第1弾性爪体23aおよび第2弾性爪体30aについては第1側壁部21aに向かう方向であり、第1弾性爪体23bおよび第2弾性爪体30bについては第2側壁部21bに向かう方向である。なお、拡開抑止部65は組み付け後に第1弾性爪体23および第2弾性爪体30に常に接触してもよいし、常に接触していなくてもよい。すなわち、第1拡開抑止部65aと第2拡開抑止部65bとの間隔は、第1弾性爪体23の拡開抑止部65と対向する面の間隔より長くてよい。
【0039】
拡開抑止部65の根元にはロック部制限部66が、ロック部50の窪み部56の形状に応じて段状に形成される。組み付け後には、凸段状のロック部制限部66に凹段状の窪み部56が収まる。ロック部制限部66は、ロック部50のカバー部側への動きを制限する。またロック部制限部66はロック部50の側壁部21に向かう方向への動きを制限する。これにより、ロック部50に車両の振動が加わった場合において、ロック部50の動きを制限でき、ロック部50が外れることを防ぐことができる。ロック部制限部66は組み付け後にロック部50に常に接触していなくてよく、対向するロック部制限部66の最短距離は、ロック部50の裏面54の幅より長くてよい。これによりロック部50が滑らかにスライドする。
【0040】
変形抑止部67は、周壁部61の内側に突形状に形成される。実施形態では、変形抑止部67は3本のリブとして形成されている。変形抑止部67は、組み付け後にテーパ部29の外側に配置され、テーパ部29の外側と近接対峙する。変形抑止部67は、テーパ部の外向きの変形を抑止するので、第1軸孔25aと第2軸孔25bとの間隔が広がることを防止することができる。これにより、軸突起43が軸孔25からはずれる可能性を低減することができる。変形抑止部67は組み付け後にテーパ部29に常に接触していなくてよいが、逆に押し当たるようにテーパ部29に常に接触してもよい。組み付け後に変形抑止部67をテーパ部29に当接させることで、テーパ部29の剛性を高め、軸突起43が軸孔25からはずれる可能性を低減することができる。
【0041】
ハンドル装置10を使用してボード1を持ち上げる際、把持部41が引っ張られると、軸突起43を介して、テーパ部29に負荷がかかる。テーパ部29が周囲の壁より薄肉に形成されると、負荷がかかったときに変形する可能性がある。とくにテーパ部29およびその近傍の側壁部21が外向きに変形してしまうと、操作部40の軸突起43が軸孔25から抜ける可能性がある。実施形態では、テーパ部29の外向きの変形が変形抑止部67により抑止されているため、軸突起43が軸孔25から抜ける可能性を低減することができる。
【0042】
図12は、実施形態に係るロック部50の本体部20への組み付け工程を説明する図である。本図では第1弾性爪体23の態様を示しているが、第2弾性爪体30も同様である。図12(a)に示すようにロック部50が第1弾性爪体23aと第1弾性爪体23bの間に向かって動かす。たとえば、ユーザがロック部50を掴んで第1弾性爪体23aと第1弾性爪体23bの間に押し込む。
【0043】
図12(b)に示すように一対の第1弾性爪体23は、ロック部50の組み付け時に初期姿勢から拡開する。具体的には、ロック部50の側面が第1弾性爪体23の爪部に当接して、爪部を拡開方向に押圧し、第1弾性爪体23が拡開する。そして図12(c)に示すように第1弾性爪体23はロック部50を受け入れ、受け入れ後は初期姿勢に弾性復帰する。このように第1弾性爪体23同士の間隔が広がるので、ロック部50を容易に組み付けることができる。組み付け後、ロック部50が外れる方向に移動しようとした場合、第1弾性爪体23の爪部がロック部50に引っかかり、ロック部50の動きを規制することができる。
【0044】
図13は、実施形態に係るロック部50、弾性爪体および拡開抑止部65の位置関係を示す。図13(a)は、ロック部50を裏面側から見た図であり、図13(b)は図13(a)に示すB−B断面図である。
【0045】
図13(b)に示すように、第1弾性爪体23の第1柱部23a2、23b2はロック部50の側面に沿って立設しており、第1弾性爪体23の第1爪部23a1、23b1は、窪み部56により形成された空間に入り込み、窪み部56に近接対峙している。なお第2弾性爪体30も同様である。ロック部制限部66は点線で示している。
【0046】
図13(a)に示すように、第1弾性爪体23a、23bおよび第2弾性爪体30a、30bがロック部50の側面に近接して4箇所配置されている。ロック部50は、矢印85に示すロックする方向に付勢され、操作を加えてない場合に本体部20およびボード1から突き出た状態となる。ロック部50が前後方向に移動する場合には、第1弾性爪体23および第2弾性爪体30が前後方向に直交する左右方向にロック部50が移動しないよう抑えつつ、前後方向の移動をガイドする。
【0047】
ところで、操作部40を掴んでボード1を降ろして車両後部の収納箱を閉じる場合、ロック部50は本体部20内に収容されているため、ロック部50に大きな荷重や衝撃が加わることはない。一方、操作部40を操作しないでロック部50が本体部20から突き出た状態でボード1が自然落下で収納箱を閉じようとした場合、ロック部50の前端テーパ84が収納箱の縁に衝突する。
【0048】
このロック部50の前端テーパ84は収納箱の縁に衝突して上向きの力を受け、回転モーメントが生じてロック部50の後方が下向きに回転しようとする。ロック部50の後方に位置する第2弾性爪体30の第2爪部30a1、30b1はロック部50により下方に押され、第2柱部30a2、30b2を拡開させようとするが、第2柱部30a2、30b2が拡開方向に動くと拡開抑止部65a、65bに当接して、拡開方向の動きが強固に抑止される。これにより第2爪部30a1、30b1の拡開方向への動きも抑止され、ロック部50が外れることを抑えることができる。また、ロック部50の後方が第2爪部30a1、30b1を拡開方向に動かして下方に移動しようとしても、窪み部56がロック部制限部66の水平面66aに当接して、ロック部50の移動が制限される。つまり、ロック部制限部66は、第1弾性爪体23および第2弾性爪体30の爪体が将来的に摩耗した場合や激しい振動を与えられた場合など、非常時において、ロック部50の下方への移動を制限し、およびロック部50の前後方向への移動をガイドする。
【0049】
ロック部制限部66の水平面66aの高さは、ロック部50に対して所定の寸法公差を有している。さらにボード1の厚さ、本体部20のネジボス38a、38bの高さや基部22の厚さ、カバー部60の厚さなどのバラツキを加えると、ロック部50に対するロック部制限部66の位置関係は大きくばらつくので、ロック部制限部66が常にロック部50に接触しないように水平面66aの高さを設定し、ロック部50に大きな荷重が与えられた場合や大きく移動しようとした場合にのみ当接するように設定することが好ましい。
【0050】
図14は、実施形態に係るロック部50の変形例を示す。図14(a)はロック部50を裏面側から見た図であり、図14(b)はロック部50の後側から見た図である。また図14では、ロック状態における第1弾性爪体23および第2弾性爪体30を示す。
【0051】
変形例のロック部50は、後端部55に鉤部59を有する。鉤部59はロック状態において第2弾性爪体30に引っかかり、後端部55から第2弾性爪体30の外側、すなわち拡開側に位置するように延びている。第2弾性爪体30の外側に位置する鉤部59は、第2弾性爪体30に近接対峙し、第2弾性爪体30の拡開方向への動きを抑止する。これにより、車両の振動によりロック部50が第2弾性爪体30から外れることを抑えることができる。
【0052】
図14(b)に示すように、第2弾性爪体30の先端および爪部は、裏面54を越えて裏面側に突出しないように形成されている。仮に、窪み部56がなければ、第2弾性爪体30の爪部が裏面54に張り出すことになる。そうすると、少なくとも爪部の高さの分だけ、カバー部60とロック部50を離間させる必要が生じる。つまり、窪み部56を形成したことで、ロック部50の裏面54とカバー部60を近接させることが可能となり、ロック部50の動きを制限することが可能となる。また、ロック部50の裏面54がカバー部60に近接するように厚く形成することができ、ロック部50の強度を十分に確保することができる。
【0053】
図15は、実施形態に係る操作部40と突出部34との関係を示す図である。操作時には、図15に示す反時計回り方向の操作力90が加えられる。操作部40は軸突起43を軸として回動し、その回動はストッパ46が突出部34に当接することで停止される。このとき、軸突起43に裏端部37に真っ直ぐ向かう方向の力94が加えられると、テーパ部29により軸突起43が外れるおそれがある。なお、力94はテーパ部29の厚さが薄くなる方向と同じ向きである。そこで、ストッパ46が突出部34に当接しているときに、軸突起43が軸孔25に付与する軸付与力92を、力94とは異なる向きになるように設定する。この軸付与力92は少なくとも、ストッパ46と突出部34の接触点46cの位置と、軸孔25の位置との関係により設定される。なお、ストッパ46と突出部34の接触が面接触である場合は、接触面の中心を接触点46cとする。軸付与力92は、力94の向きに対して、すなわちテーパ部29の厚さが薄くなる向きに対して20度以上回転した向きに設定されてよい。これにより、軸突起43が外れる可能性を低減することができる
【0054】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0055】
なお、上記各実施形態から把握することのできる技術思想としては、以下のものがある。
A1. 車両の荷室に配設されるボードに取り付けられるハンドル装置であって、
前記ボードの取付孔に取り付けられる本体部と、
前記本体部の表面側から操作可能に前記本体部に回動自在に軸支される操作部と、
前記ボードを車両の荷室の被ロック体にロックし、前記操作部の回動によってロック解除可能なロック部と、
前記本体部の裏面を覆うように構成されたカバー部と、を備え、
前記本体部は、対向する一対の軸孔が形成された側壁部と、前記側壁部の間に位置し、前記ロック部を移動可能に挟持する一対の弾性爪体を有する基部と、両端が前記側壁部に連結する前縁と、前記基部と前記前縁との間に配置される貫通孔と、を有し、
前記操作部は、一対の前記軸孔にそれぞれ挿入される軸突起を有し、
前記側壁部は、互いに対向し、対向する間隔が前記軸孔から前記側壁部の裏端部に向かうにしたがって長くなるテーパ部を有し、
前記カバー部は、前記テーパ部を外側に配置され、前記テーパ部の外向きの変形を抑止する変形抑止部を有することを特徴とするハンドル装置。
A2. 前記カバー部は、前記側壁部を覆う周壁部を有し、
前記変形抑止部は、前記周壁部から前記テーパ部に向かって突出することを特徴とするA1に記載されたハンドル装置。
【符号の説明】
【0056】
1 ボード、 2 後部開口、 4 取付孔、 10 ハンドル装置、 20 本体部、 21 側壁部、 22 基部、 23 第1弾性爪体、 24 貫通孔、 25 軸孔、 29 テーパ部、 30 第2弾性爪体、 31 前縁、 40 操作部、 41 把持部、 43 軸突起、 50 ロック部、 53 表面、 54 裏面、 55 後端部、 56 窪み部、 57 バネ支持部、 59 鉤部、 60 カバー部、 61 周壁部、 62 出入口、 63 底部、 64 周縁部、 65 拡開抑止部、 66 ロック部制限部、 67 変形抑止部、 70 コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に配設されるボードに取り付けられるハンドル装置であって、
前記ボードの取付孔に取り付けられる本体部と、
前記本体部の表面側から操作可能に前記本体部に回動自在に軸支される操作部と、
前記ボードを車両の荷室の被ロック体にロックし、前記操作部の回動によってロック解除可能なロック部と、
前記本体部の裏面を覆うように構成されたカバー部と、を備え、
前記本体部は、対向する一対の軸孔がそれぞれ形成された一対の側壁部と、一対の前記側壁部の間に位置し、前記ロック部を移動可能に挟持する一対の弾性爪体を有する基部と、両端が前記側壁部に連結する前縁と、前記基部と前記前縁との間に配置される貫通孔と、を有し、
前記操作部は、一対の前記軸孔にそれぞれ挿入される軸突起を有し、
前記カバー部は、前記弾性爪体の拡開方向への動きを抑止する拡開抑止部を有することを特徴とするハンドル装置。
【請求項2】
一対の前記弾性爪体は、前記ロック部の組み付け時に初期姿勢から拡開して前記ロック部を受け入れ、受け入れ後は初期姿勢に向けて弾性復帰し、
前記拡開抑止部は、前記弾性爪体に当接し、または近接対峙して前記弾性爪体の拡開方向への動きを抑止することを特徴とする請求項1に記載のハンドル装置。
【請求項3】
前記ロック部は、側面上において移動方向に沿って窪んで延在する窪み部を有し、
前記弾性爪体の爪部は、前記窪み部に張り出していることを特徴とする請求項1または2に記載のハンドル装置。
【請求項4】
前記カバー部は、前記窪み部に近接対峙して前記ロック部の前記カバー部側への動きを制限する制限部を有することを特徴とする請求項3に記載のハンドル装置。
【請求項5】
前記ロック部は、後端部に鉤部を有し、
前記鉤部は、ロック状態において前記弾性爪体に引っかかり、前記弾性爪体の拡開側に延びて前記弾性爪体に近接対峙することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハンドル装置。
【請求項6】
2つの一対の前記弾性爪体が、前記貫通孔を挟んで前記貫通孔の前後の孔縁に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−62031(P2012−62031A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210219(P2010−210219)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】