説明

ハードコート剤及びハードコートフィルム

【課題】 フィルムに塗布した後のタックがなく、耐擦傷性、表面硬度に優れハードコートフィルムを得る。
【解決手段】 アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーに対して、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するとともに、少なくとも1つ以上のイソシアネート基に重合性不飽和基を導入したイソシアネート化合物とコロイダルシリカとを反応させたコロイダルシリカ含有単量体を、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコート剤及びハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といった点から、自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されているが、ガラスに比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有しており、この欠点を改良するために紫外線、電子線などの放射線で硬化するハードコート剤を塗布し、ハードコート層を形成することが行われている。
【0003】
このハードコート層の形成について詳述すると、プラスチックフィルムにハードコート剤を塗布し、乾燥した後、巻き取り、二次加工後に電子線、紫外線などの放射線が照射されるため、塗布、乾燥後には塗膜にタックがないこと(タックフリー性)が要求される。
【特許文献1】特開2000−103987号公報
【特許文献2】特開2001−162732号公報
【特許文献3】特開2002−67238号公報
【特許文献4】特開2002−69333号公報
【特許文献5】特開2004−346228号公報
【特許文献6】特開2001−113649号公報
【特許文献7】特開2003−170540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タックフリー樹脂として一部のアクリルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂などが知られているが、放射線照射後の硬度が劣りスクラッチ傷を生じやすいという欠点を有していた。また、タックフリー樹脂に多官能アクリレートモノマーなどを添加することで放射線照射後の表面硬度、耐擦傷性を向上させることができるが、一般に多官能アクリレートモノマーは乾燥後にタックを有するため、十分な表面硬度、耐擦傷性を得るにはタックフリー性が失われてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1記載の発明は、アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーに対して、分子中に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を含む化合物とコロイダルシリカがウレタン結合されたコロイダルシリカ含有単量体を、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合することを特徴とするハードコート剤である。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーに対して、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するとともに、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を導入したイソシアネート化合物とコロイダルシリカがウレタン結合されたコロイダルシリカ含有単量体を、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合することを特徴とするハードコート剤である。
【0007】
更に、請求項3記載の発明は、前記イソシアネート基への重合性不飽和基の導入が、イソシアネート基と水酸基との反応によってなることを特徴とする請求項2記載のハードコート剤である。
【0008】
更にまた、請求項4記載の発明は、該ハードコート剤をプラスチックフィルムに塗布してなることを特徴とするハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハードコート剤は、プラスチックフィルムに塗布、乾燥した後のタックがなく、放射線照射後は硬度に優れたハードコート層が形成できる。また、有機材料であるアクリルアクリレート又はウレタンアクリレートなどのタックフリー樹脂と、コロイダルシリカとが分子レベルで結合されたものであるため、表面硬度、耐擦傷性などに優れたものとなる。コロイダルシリカ表面にウレタン結合を介して(メタ)アクリロイル基を導入したコロイダルシリカ含有単量体をアクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーに添加することで、表面硬度、耐擦傷性に優れたハードコート剤を得ることができる。コロイダルシリカ含有単量体を用いた場合、コロイダルシリカは分子レベルで樹脂中に固定されているため、非常に効果的に表面物性を向上させることができる。また、コロイダルシリカ含有単量体はそれ自体乾燥後にタックを有さないため、任意の割合でタックフリー樹脂と混合してもタックフリー性を失うことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
アクリレートモノマーとしてはアクリル及びメタクリレートモノマーなどが、アクリレートオリゴマーとしては、アクリルアクリレート又はウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどが挙げられ、タックフリータイプのものが好適に用いられる。
【0012】
タックフリータイプの樹脂としては一般的な市販品を使用することができ、アクリルアクリレートとしてヒタロイド7975(日立化成工業(株))、ウレタンアクリレートとしてヒタロイド7980−1、ヒタロイド7980−2、ヒタロイド7903−1(以上、日立化成工業(株))、AH−50M、AH−51M、AH−53M(以上、根上工業(株))などをあげることができる。
【0013】
本発明に用いられるコロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、平均粒子径が100nm以下で、有機溶剤を分散媒とした市販品各種を使用することができる。粒子径のより大きいコロイダルシリカを用いた場合は、貯蔵安定性が悪くなるばかりか、本発明で目的とする良好な表面硬度、耐擦傷性を同時に発現することができず、得られた硬化物が濁るなどの問題がある。好ましくは平均粒子径が5〜50nmのものがより好適である。
【0014】
本発明に用いられる(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を含む化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリル酸2−イソシアネートエチル、メタクリル酸2−イソシアネートエチル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等があげられる。
【0015】
また、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するとともに、少なくとも1つのイソシアネート基に重合性不飽和基を導入したイソシアネート化合物とは、分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ホモアリル基及びスチレン基からなる群から選択される少なくとも1個の基と、少なくとも1個のイソシアネート基とを有する化合物で、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは、単独或いは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記ポリイソシアネートの少なくとも1つ以上のイソシアネート基に導入する重合性不飽和基を有する化合物には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレノキサイド付加トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4―ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0017】
また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどの水酸基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、ケイヒ酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロキシプロピルヘキサヒドロゲンフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロゲンフタレ−ト等の不飽和脂肪族カルボン酸類、2−(メタ)アクリロキシプロピルフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシプロピルエチルフタレ−ト等のカルボキシル基を有する不飽和芳香族カルボン酸、ビニルオキシエチルアミン、ビニルオキシドデシルアミン、アリルオキシプロピルアミン、2−メチルアリルオキシへキシルアミン、ビニルオキシ−(2−ヒドロキシ)ブチルアミン等のアミノ基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、9,10−エポキシステアリル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等エポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0018】
これらの重合性不飽和基を有する化合物は、単独或いは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記ポリイソシアネートへの重合性不飽和基を導入するための反応、及び上記コロイダルシリカと上記イソシアネート基との反応を促進させるため、触媒を添加することもできる。たとえば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチルスズ、ビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩)オキサイド、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのウレタン化触媒を、反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いるのが好ましい。
【0020】
また、上記イソシアネート基とコロイダルシリカとの反応において、イソシアネート基の反応を赤外線吸収分光法(IR)等により確認しながら、過剰のイソシアネート基をブロックするために、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や前記のイソシアネート基と反応可能な化合物を添加してもよい。
【0021】
アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーとコロイダルシリカ含有単量体の配合比率は、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合するのが望ましく、下限に満たないと硬度が劣りやすく、上限を超えると塗布ムラを生じる、凝集物による外観欠点を生じる、無機分が増えすぎて塗膜が脆くなるなどの問題点が発生する。
【0022】
コロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂を混合したタックフリーハードコート剤に、表面硬度、耐擦傷性をさらに向上させる目的で、タックフリー性を失わない程度に多官能(メタ)アクリレートを添加してもよい。多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を分子中に少なくとも2個以上有するものであり、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。
【0023】
前記コロイダルシリカ単量体とアクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーとの共重合は溶液内で反応させることが好ましく、使用される溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル等のエーテル化合物、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤が使用できる。また、上記溶媒の混合溶媒も用いることができる。更に溶媒の替わりにラジカル重合性モノマー用いてもよい。
【0024】
共重合の重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシドなどが挙げられ、市販品としてはIrgacure184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61(以上、チバガイギー社製);LucirinLR8728(BASF社製);Darocure1116、1173(以上、メルク社製);ユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。その他、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられ、過酸化物としては、例えば過酸化ジブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロ過酸化物等、アゾビス化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
【0025】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0026】
尚、ハードコート剤との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0027】
フィルムへの塗布方法については特に制限はなく、公知の方法、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができる。塗布厚みは10〜200μmになるように塗工し、乾燥処理する。
【0028】
紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、50〜300mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。硬化阻害を防止するため、窒素ガス等の不活性ガス下で照射を行ってもよい。
【0029】
電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を照射する。
【0030】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
コロイダルシリカ含有単量体
MEK溶媒分散コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%、平均粒子径約20nm/日産化学工業(株)製)84重量部に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、固形分100%/昭和電工(株)製)11重量部、MEK15部と触媒としてビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩)オキサイドを0.16重量部加え70℃で2時間撹拌した。冷却後0.5重量部のイソプロピルアルコールを添加しイソシアネート基をすべて反応させ、残存するイソシアネート基が無いことを確認し固形分36%、シリカ含有量70%(固形分中)のコロイダルシリカ含有単量体を得た。
ハードコート剤
次いで、上記のコロイダルシリカ含有単量体100部に対し、タックフリー樹脂(固形分32%、ヒタロイド7975/日立化成工業(株)製)を48重量部加え、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルーケトンをコロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂の固形分重量に対して5%加えた後、固形分が30%となるようMEKを加えハードコート剤を得た(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
ハードコートフィルム
次いで、ハードコート剤を100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに硬化膜厚が5μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥器で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、フュージョンランプ)を用いて紫外線を積算光量約200mJ/cm照射してハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0032】
ペンタエリスリトールトリアクリレート7.4重量部に3官能イソシアネート3.5重量部、MEK4.8重量部、触媒としてビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩)オキサイドを0.002重量部加え、アクリレート−イソシアネート複合モノマーを得た。このモノマーをMEK分散コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%、平均粒子径約20nm/日産化学工業(株)製)83.7重量部に添加した後、触媒としてビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸)オキサイドを0.16重量部加え70度で2時間撹拌した。冷却後0.5重量部のイソプロピルアルコールを添加しイソシアネート基をすべて反応させ、固形分36%、シリカ含有量70%(固形分中)のコロイダルシリカ含有単量体を得た。その後実施例1と同様に実施してハードコート剤、ハードコートフィルムを得た(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【実施例3】
【0033】
実施例2において、タックフリー樹脂としてヒタロイド7975(日立化成工業(株)製)に代えてP−1053(新中村化学工業(株)製)を用いた以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【実施例4】
【0034】
実施例2において、タックフリー樹脂としてヒタロイド7975(日立化成工業(株)製)に代えてAH−50M(固形分60%、根上工業(株)製)を用いた以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【実施例5】
【0035】
実施例2において、固形分中のシリカ比率が20%となるように、コロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂(ヒタロイド7975/日立化成工業(株)製)との混合比率を変更した以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量20%)。
【実施例6】
【0036】
実施例2において、固形分中のシリカ比率が50%となるように、コロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂(ヒタロイド7975/日立化成工業(株)製)との混合比率を変更した以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量50%)。
【実施例7】
【0037】
実施例2において、固形分中のシリカ比率が30%となるように、コロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂(ヒタロイド7975/日立化成工業(株)製)、多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、KAYARAD DPHA 固形分100%/日本化薬(株)製)とを混合した以外は同様に実施した。タックフリー樹脂と多官能アクリレートとは、固形分で2.7/1となるように混合した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【0038】
比較例1
実施例2において、コロイダルシリカ含有単量体を用いなかった以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量0%)。
【0039】
比較例2
実施例2において、固形分中のシリカ比率が10%となるように、コロイダルシリカ含有単量体とタックフリー樹脂(ヒタロイド7975/日立化成工業(株)製)との混合比率を変更した以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量10%)。
【0040】
比較例3
ペンタエリスリトールトリアクリレート4.6重量部に3官能イソシアネート2.2重量部、MEK2.4重量部、触媒としてビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩)オキサイドを0.001重量部加え、アクリレート−イソシアネート複合モノマーを得た。このモノマーをMEK分散コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%、平均粒子径約20nm/日産化学工業(株)製)90.2重量部に添加した後、触媒としてビス(ジ−n−ブチル錫脂肪酸)オキサイドを0.16重量部加え70度で2時間撹拌した。冷却後0.3重量部のイソプロピルアルコールを添加しイソシアネート基をすべて反応させ、固形分30%、シリカ含有量80%(固形分中)のコロイダルシリカ含有単量体を得た。
【0041】
次いで、上記のコロイダルシリカ含有単量体100部に対し、開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルーケトンを0.9重量部加加えハードコート剤を得た(固形分30%、固形分中のシリカ含有量80%)。その後実施例1と同様にハードコートフィルムを得た。
【0042】
比較例4
実施例2において、コロイダルシリカ含有単量体の代わりにMEK分散コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%/日産化学工業(株)製)を用いた以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【0043】
比較例5
実施例2において、コロイダルシリカ含有単量体の代わりにMEK分散コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%/日産化学工業(株)製)を用い、固形分中のシリカ比率が50%となるように混合を行った以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量50%)。
【0044】
比較例6
実施例2において、タックフリー樹脂(ヒタロイド7975)に代えてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA 固形分100%/日本化薬(株)製)を用いた以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。
【0045】
比較例7
実施例2において、タックフリー樹脂としてヒタロイド7975に代えてペンタエリスリトールトリアクリレート(KAYARAD PET−30 固形分100%/日本化薬(株)製)を用いた以外は同様に実施した(固形分30%、固形分中のシリカ含有量30%)。

評価結果を表1、2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
シリカ種別
A: コロイダルシリカ含有単量体
B: コロイダルシリカ(MEK−ST、固形分30%/日産化学工業(株)製)
評価結果は以下の通りとした。
1)タック;ハードコート剤を塗布、100℃で2分間乾燥後、人差し指で触れて判断。なし:粘着性が全く感じられない、あり:粘着性が感じられる。
2)鉛筆硬度:斜め45度に固定した鉛筆の真上から1kgの荷重をかけ引っ掻き試験を行った。
3)耐擦傷性:スチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)により荷重1kg重で10往復摩擦して傷がつくかどうかにより評価する。キズの付き方で5段階に分け、下記の様に評価した。
評価5:全くキズが付かない。
評価4:1から3本相当のキズが入る。
評価3:4から7本相当のキズが入る。
評価2:8から15本相当のキズが入る。
評価1:無数にキズが入る。
4)密着性:碁盤目試験(塗工面に10×10にマス目を作成し、セロハンテープを貼り、上方に引っ張り剥離状況を確認する。剥がれなかったマス目を数えた。「残存ます目数/全ます目数(100)」)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーと、分子中に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を含む化合物とコロイダルシリカがウレタン結合されたコロイダルシリカ含有単量体を、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合することを特徴とするハードコート剤。
【請求項2】
アクリレートモノマー或いはアクリレートオリゴマーと、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するとともに、少なくとも1つ以上のイソシアネート基に重合性不飽和基を導入したイソシアネート化合物とコロイダルシリカがウレタン結合されたコロイダルシリカ含有単量体を、混合後の固形分に対するシリカ比率が20〜70wt%となるよう混合することを特徴とするハードコート剤。
【請求項3】
前記イソシアネート基への重合性不飽和基の導入が、イソシアネート基と水酸基との反応によってなることを特徴とする請求項2記載のハードコート剤。
【請求項4】
該ハードコート剤をプラスチックフィルムに塗布してなることを特徴とするハードコートフィルム。


【公開番号】特開2007−91961(P2007−91961A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285753(P2005−285753)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】