説明

ハードコート膜付基材およびハードコート膜形成用塗布液

【課題】干渉縞が生成することがなく、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性を有するハードコート膜付基材および該ハードコート膜の形成に用いる塗布液を提供する。
【解決手段】基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、該ハードコート膜が有機樹脂系マトリックス成分とシリカ系複合酸化物粒子とを含んでなり、基材の屈折率が1.45〜1.55の範囲にあるハードコート膜付基材。前記シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にある。マトリックス形成成分とシリカ系複合酸化物粒子と分散媒とを含んでなるハードコート膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、干渉縞が生成することがなく、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性を有するハードコート膜付基材および該ハードコート膜の形成に用いる塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ、樹脂フィルム、表示装置前面板等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、ハードコート膜付の樹脂基材を表示装置前面板等に貼り付けて使用される場合があるが、この時、接着剤との接着性を向上させるためにハードコート膜付基材をアルカリ処理してハードコート膜の反対側の基材表面の平滑性を低下させて表面に粗さを設けることが行われていた。しかしながら、従来のシリカ等の無機酸化物粒子を含むハードコート膜では少なくともこの無機酸化物粒子の一部がアルカリに溶解し、ハードコート機能が低下したり、透明性が低下して白化する等の問題があった。
【0004】
このようなハードコート膜のアルカリによる浸食を防ぐためにハードコート膜上に耐アルカリ性の保護薄膜を形成することが行われているが、保護膜を形成する工程およびこれを剥離する工程を必要とし経済性が問題となることから耐アルカリ性を有するハードコート膜の開発が求められていた。
【0005】
また、ハードコート膜に五酸化アンチモン、ジルコニア、ITO、ATO等の無機酸化物粒子を用いる場合、耐アルカリ性はある程度改良されるものの、粒子の屈折率が高く、このためハードコート膜の屈折率も高くなるため、屈折率の低い基材を用いる場合は干渉縞を生じる場合があった。
【0006】
また、本願出願人は、基材上に有機樹脂のみからなるハードコート膜を形成し、その上に表面を酸化アンチモンで被覆した多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子を含む反射防止・帯電防止膜を有する透明被膜付基材を開示している(特開2005−119909号公報、特許文献1)。しかしながら特許文献1で得られる基材は、ハードコート機能(耐擦傷性、膜強度等)が必ずしも充分ではなかった。
【特許文献1】特開2005−119909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、干渉縞が生成することがなく、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性を有するハードコート膜付基材および該ハードコート膜形成用塗布液の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況の下、本発明者は、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果、ハードコート膜中にシリカを主成分とする複合酸化物微粒子を配合すれば、屈折率を調節できる
とともに耐アルカリ性が向上することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の構成要件は以下の通りである。
[1]基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が有機樹脂系マトリックス成分とシリカ系複合酸化物粒子とを含んでなり、基材の屈折率が1.45〜1.55の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
[2]前記シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にある[1]のハードコート膜付基材。
[3]前記シリカ系複合酸化物粒子の屈折率が1.15〜1.55の範囲にある[1]または[2]のハードコート膜付基材。
[4]前記ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3以下である[1]〜[3]のハ
ードコート膜付基材。
[5]前記シリカ系複合酸化物粒子がシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チ
タニア、シリカ・酸化アンチモン、シリカ・ボリアから選ばれる1種以上である[1]〜[4]のハードコート膜付基材。
[6]前記シリカ系複合酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理
されている[1]〜[5]のハードコート膜付基材。
【0010】
n−SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
[7]前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)である[1]〜[6]のハードコート膜付基
材。
[8]前記基材のハードコート膜が形成されていない面上に接着剤層が設けられてなる[1]〜[7]のハードコート膜付基材。
[9]マトリックス形成成分とシリカ系複合酸化物粒子と分散媒とを含んでなるハードコー
ト膜形成用塗布液。
[10]前記シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にある[9]のハード
コート膜形成用塗布液。
[11]前記シリカ系複合酸化物粒子の屈折率が1.15〜1.55の範囲にある[9]または[10]のハードコート膜形成用塗布液。
[12]前記シリカ系複合酸化物粒子がシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモン、シリカ・ボリアから選ばれる1種以上である[9]〜[11]のハードコート膜形成用塗布液。
[13]前記シリカ系複合酸化物粒子が前記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されている[9]〜[12]のハードコート膜形成用塗布液。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、基材表面に設けられたハードコート膜が耐アルカリ性を有するシリカ系複合酸化物粒子を含んでいるために、ハードコート膜の反対側に密着性に優れた接着層を設けるためのアルカリ処理に耐えることができ、このためハードコート膜状に耐アルカリ保護膜を形成する必要が無く、且つ、シリカ系複合酸化物粒子の屈折率が低いために低屈折率の基材を用いても基材と同程度の屈折率差の小さいハードコート膜が得られ、干渉縞等が生成することがなく、基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度、ヘーズ等に優れたハードコート膜付基材および該ハードコート膜形成用塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、まず、本発明に係るハードコート膜付基材について説明する。
[ハードコート膜付基材]
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなる。
【0013】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができるが、なかでも屈折率が低く耐アルカリ性を要求されるトリアセチルセルロース(TAC)基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリエーテルスルフォン系樹脂機材等が好適に用いられる。
【0014】
これらの基材は表示装置前面板等に貼り付けて使用する際にアルカリ処理をすることによって接着性よく貼り付けることができる。
なかでも、TACは透明性高く、機械的強度に優れ、且つ、温度、湿度等の変化に対する寸法安定性がよく、また、屈折率が低く汎用性の高い基材であるので好ましい。
【0015】
このような基材は、屈折率が1.45〜1.55、さらには1.48〜1.52の範囲にあることが好ましい。
ハードコート膜
ハードコート膜は、マトリックス成分とシリカ系複合酸化物粒子とを含んでなる。
(i)シリカ系複合酸化物粒子
本発明に用いるシリカ系複合酸化物粒子は、シリカを主成分とし、他の酸化物としてアルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化アンチモン、ボリア等を含むシリカ系複合酸化物粒子が挙げられる。
【0016】
なかでも、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモンから選ばれる1種以上のシリカ系複合酸化物粒子は耐アルカリ性(アルカリ不溶性)が高く、球状のコロイド粒子を得やすいことから好適に採用される。
【0017】
シリカ系複合酸化物粒子中のシリカ以外の酸化物の含有量は、酸化物の種類、屈折率によっても異なるが、概ね0.1〜50重量%、さらには0.2〜10重量%の範囲にあることが好ましい。かかる含有量が少ないと、耐アルカリ性を向上させる効果が不充分であり、かかる含有量が多すぎると、粒子の屈折率が高く、これを用いてハードコート膜を形成してもハードコート膜の屈折率が高くなり、基材の屈折率よりハードコート膜の屈折率が高くなりすぎて干渉縞を生じることがある。
【0018】
なお、本発明に用いるシリカ系複合酸化物粒子は、シリカ以外の酸化物の種類、該酸化物の含有量、後述する屈折率、平均粒子径等を満足する粒子であれば、シリカ粒子の表面をシリカ以外の酸化物で被覆した、いわゆるコアシェル構造を有するシリカ系複合酸化物粒子も好適に用いることができる。
【0019】
つぎに、シリカ系複合酸化物粒子の屈折率は1.15〜1.55、さらには1.15〜1.50の範囲にあることが好ましい。
シリカ系複合酸化物粒子の屈折率は1.15未満の粒子は得ることが困難であり、1.55を越えると、これを用いてハードコート膜を形成してもハードコート膜の屈折率が高くなり、基材の屈折率よりハードコート膜の屈折率が高くなりすぎて干渉縞を生じることがある。
【0020】
なお、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の屈折率は、後述する標準屈折率法によって測定することができる。
本発明のシリカ系複合酸化物粒子としては、特にシリカを主成分とし、内部に空洞を有する中空粒子は屈折率が低く好適に用いることができる。このような中空粒子としては本願出願人の出願による特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報等に開示した内部に空洞を有するシリカ系粒子は屈折率が低く好適に用いることができる。
【0021】
さらに、特開2005−119909号公報に開示した、反射防止・帯電防止膜に用いた表面を酸化アンチモンで被覆した多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子は好適に採用することができる。
【0022】
また、本発明に用いるシリカ系複合酸化物粒子は、シリカ系複合酸化物粒子の比表面積(S(m2/g))、平均粒子径(DP(nm))、真比重(SG)が下記式で表される関係にあるこ
とが好ましい。
S=m/DXSG
この式において、mは比例定数であり、通常6000〜7000である。比例定数mが6000のとき、粒子が無孔質である。比例定数が6000より大きくなると粒子に多孔性が増してくることを意味する。すなわち、本発明に用いるシリカ系複合酸化物粒子は比例定数が6000〜7000の範囲にある無孔質かあるいは多孔性の低い粒子であることが好ましい。
【0023】
比例定数mが7000を越えると粒子の多孔性が増すために耐アルカリ性が不充分となる傾向がある。比例定数のより好ましい範囲は6000〜6500である。
上記比表面積(S)はBET法により測定される。また平均粒子径(DP)はレーザー
光散乱法粒度分布測定法により測定される。また、真比重(SG)はシリカ系複合酸化物粒子水分散液を調製し、JIS Z 8804-1960法に準じて分散液の比重を測定し、粒子濃度から
換算して求める。
【0024】
シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径は5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が前記範囲の下限より小さいものは得ることが困難であり、得られたとしても耐アルカリ性が不充分となることがある。シリカ系複合酸化物粒子が大きすぎると、ハードコート膜のヘーズが悪化する傾向にある。
【0025】
本発明に用いるシリカ系複合酸化物粒子は下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることが好ましい。
n−SiX4-n (1)
式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
Rとして具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペ
ンチル基、シクロヘキシル基、シクロへキシルエチル基などのアルキル基、ビニル基、プロピニル基、ブチニル基、へキシル基、ペンチル基、オクチル基などのアルキニル基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基などの非置換炭化水素基、さらにこれらの非置換炭化水素基が、フッ素、塩素などのハロゲン原子、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、エポキシシキロヘキシル基、グリシドキシ基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、ウレタン基などの置換基を有する置換炭化水素基であってもよい。
【0026】
このような式(1)で表される有機珪素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエト
キシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプ
ロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0027】
これらのうち、式(1)中のnが1〜3、特にnが2〜3の有機珪素化合物を用いると、
シリカ系複合酸化物粒子のマトリックス成分への分散性を高め、耐アルカリ性を向上させることができる。
【0028】
さらに、前記炭化水素基(R)は炭素数が2〜10、特に3〜10の範囲にあるものが望ましく、このような有機珪素化合物を用いると、有機樹脂系マトリックス成分への分散性を高め、さらに耐アルカリ性を向上させることができる。
【0029】
シリカ系複合酸化物粒子の表面処理は従来公知の方法を採用することができ、シリカ系複合酸化物粒子のアルコール分散液に前記有機ケイ素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機ケイ素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加え、有機ケイ素化合物を加水分解する。この時の有機ケイ素化合物の使用量はRn−SiO(4-n)/2としてシリカ系複合酸化物粒子の概ね2〜50重量%、さらには5〜20重量%の範囲
にあることが好ましい。
【0030】
シリカ系複合酸化物粒子が前記範囲で表面処理されていると有機樹脂系マトリックス成分への分散性に優れるとともに前記炭化水素基がシリカ系複合酸化物粒子の表面を覆うためにアルカリ溶解性を抑制することができ、このため耐アルカリ性が向上し好適に用いることができる。
【0031】
ハードコート膜中のシリカ系複合酸化物粒子の含有量は5〜80重量%、さらには10〜60重量%の範囲にあることが好ましい。シリカ系複合酸化物粒子の含有量が少ないと、ハードコート膜の硬度が不充分であったり、耐擦傷性が不充分となることがある。シリカ系複合酸化物粒子の含有量が多すぎると、得られる膜のヘーズが高くなったり、マトリックス成分が少ないために基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れたハードコート膜を得ることが困難となる。
【0032】
マトリックス成分
ハードコート膜に含まれているマトリックス成分としては、有機樹脂系のマトリックスが用いられる。
【0033】
有機樹脂系マトリックス成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0034】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0035】
ハードコート膜の厚さは0.1〜30μm、さらには0.2〜20μm、特に0.2〜1
0μmの範囲にあることが好ましい。
ハードコート膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、ハードコート機能が不充分となる。
【0036】
ハードコート膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるのでカーリング(ハードコート膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
【0037】
このようなハードコート膜の屈折率は基材の屈折率との差が0.3以下、さらには0.2以下であることが好ましい。
ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3を越えると干渉縞を生じる問題がある。
接着剤層
さらに、本発明に係るハードコート膜付基材は、基材のハードコート膜が形成された面の他の表面上に接着剤層が設けられていてもよい。
【0038】
接着剤層の接着剤としては透明性の良好なものであれば特に制限はなく従来公知の接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系、ゴム系、ポリビニルエーテル系、シリコーン系等の接着剤が挙げられる。接着剤層を設けるには、前記接着剤を、必要に応じて架橋剤を添加し、溶剤を用いて所望の濃度、粘度になるように調節後、ハードコート膜を設けた反対側に塗布し、ついで、加熱、乾燥等により溶剤を除去する。また、別の方法としては、接着剤層を有する剥離紙の接着剤層の面を貼り付けることによっても設けることができる。
【0039】
このようなハードコート膜は、後述する本発明に係るハードコート膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化することによって形成することができる。
また、本発明のハードコート膜付基材には、ハードコート膜の他に、プライマー膜、高屈折率膜、導電性膜、低屈折率反射防止膜等が設けられていてもよい。
[ハードコート膜形成用塗布液]
本発明に係るハードコート膜形成用塗布液は、マトリックス形成成分とシリカ系複合酸化物粒子と分散媒とを含んでなることを特徴としている。
シリカ系複合酸化物粒子
シリカ系複合酸化物粒子としては前記したシリカ系複合酸化物粒子が用いられる。
【0040】
ハードコート膜形成用塗布液中のシリカ系複合酸化物粒子の濃度は、ハードコート膜中のシリカ系複合酸化物粒子の含有量が前記したように5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%となるように用いるが、通常、固形分として0.1〜36重量%、さらには0.5〜32重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記した有機樹脂系マトリックス成分が用いられる。熱硬化性樹脂をマトリックス形成成分として用いる場合、硬化(重合)前のものが使用され、さらに硬化触媒を含んでいてもよい。
【0041】
ハードコート膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、樹脂を固形分として1〜40重量%、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分の濃度が少ないと、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性の点で望ましくない。またマトリックス形成成分の濃度が多すぎると、得られるハードコート膜の厚さが不均一になる傾向がある。
分散媒
分散媒としては水分散媒であってもアルコールなどの有機溶媒であってもよく、適宜選択して用いることができる。
【0042】
また、塗布液には、マトリックス形成成分を溶解するとともに、容易に揮発しうる溶剤が含まれていてもよく、マトリックス形成成分が熱硬化性樹脂の場合は、必要に応じて硬化剤が配合されていてもよい。さらに、塗布液には分散性、安定性を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0043】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによってハードコート膜を形成することができる。
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
シリカ系複合酸化物粒子(1)の調製
平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混
合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2とし
て1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al23一次粒子分散液を調製した。
【0044】
この一次粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5重量%の硫酸アンモニウム53,200gを添加し、ついでSiO2として濃度1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液3,000gとAl23としての濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9,000gを添加してシリカ系複合酸化物
粒子(1)の分散液を得た。
【0045】
この分散液を、限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮した。
シリカ系系複合酸化物粒子(1)のメタノール分散液100gにメタクリル系シランカッ
プリング剤(信越化学(株)製:KBM-503、式(1)におけるn=3で、Rはγ-メタクリロ
キシプロピル基、Xはメトキシ基)0.73gを加え、50℃で15時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理したシリカ系複合酸化物粒子(1)分散液を調製した。
【0046】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(1)のイソプロピルアルコール分散液とした。
得られた粒子中のシリカ系複合酸化物粒子(1)の組成、平均粒子径および屈折率を表1
に示した。平均粒子径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
粒子の屈折率の測定方法
(1)複合酸化物分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒
:イソプロピルアルコール)をイソプロピルアルコールで希釈して樹脂濃度30重量%のハードコート膜形成用樹脂成分(1)を調製した。
【0047】
このハードコート膜形成用樹脂成分(1)100gに、シリカ系複合酸化物粒子(1)分散液80gを混合してハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
ハードコート膜付基材(1)の製造
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚
さ:0.8mm、屈折率:1.50)にバーコーター法(#8)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(1)を
製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0048】
得られたハードコート膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し、また干渉縞の有無を観察し、結果を表1に示した。さらに、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価し、結果を表1に示した。
【0049】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を
目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
【0050】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
耐アルカリ性の評価(1)
ハードコート膜付基材(1)の透明被膜上に、2NのNaOH水溶液を滴下し、3分間放
置した後拭き取り、全光線透過率を測定し、結果を表に示した。
【0051】
耐アルカリ性の評価(2)
ハードコート膜付基材(1)の透明被膜上に、2NのNaOH水溶液を滴下し、3分間放
置した後拭き取り、上記と同様の耐擦傷性の測定を行い、同様の基準で評価し、結果を表に示した。
【0052】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
[実施例2]
シリカ系複合酸化物粒子(2)の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI-45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)100gにAl23としての濃度0.9重量%のアルミン
酸ナトリウム水溶液12.5gを添加した混合物を80℃に加温して7時間保持した。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)30gを用い80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、これに90gの純水を添加し固形分濃度20重量%固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(2)の水分散液を得た。この分散液を、限外濾過膜を用いてメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮した。
【0053】
ついで、シリカ系系複合酸化物粒子(2)のメタノール分散液100gにメタクリル系シ
ランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM-503、式(1)におけるn=3)0.73gを加え、50℃で15時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理したシリカ系複合酸化物粒子(2)分散液を調製した。
【0054】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(2)のイソプロピルアルコール分散液とした。
ハードコート膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(2)のイソプロピルアル
コール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0055】
ハードコート膜付基材(2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗料(2)を用いた以外は同様にしてハードコ
ート膜付基材(2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0056】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例3]
シリカ系複合酸化物粒子(3)の調製
実施例1と同様にしてシリカ系複合酸化物粒子(1)の分散液を得た。この分散液100
gと純水3900gの混合物を98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2とし
て濃度1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液405gとAl23としての濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液405gを添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液
を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。(平均粒子径28nm)
ついで、SiO2として濃度1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液3250gとAl23としての濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1100gを添加してSiO2・Al23二次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。(平均粒子径45nm)
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になったSiO2・Al23二次
粒子分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5重量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10
Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20重量%の内部に空洞を有するシリカ系微粒子の水分散液を得た。
アンチモン酸水溶液の調製
別途、純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)57gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(住友金属鉱山(株)製:KN 純度98.5重量%)111gを
懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35重量%)32.8gを純水110.7gで希釈した水溶液を9時間で添加(0.1mole/hr)し、三酸化アンチモンを溶解し、その後11時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:pk-216)に通して脱イオン処理をして固形分濃度1重量%のアンチモン酸水溶液を調製した。このときのpHは2.1、電導度は2.4mS/cmであった。
【0057】
ついで、上記で調製した固形分濃度20重量%の内部に空洞を有するシリカ系微粒子分散液を固形分濃度1重量%に希釈した分散液400gに固形分濃度1重量%のアンチモン酸40gを加え、70℃で10時間撹拌し、限外濾過膜で濃縮し、固形分濃度20重量%の内部に空洞を有するシリカ系微粒子の表面を酸化アンチモンで被覆したシリカ系複合酸化物粒子(3)分散液を調製した。
【0058】
ついで、酸化アンチモン被覆シリカ系複合酸化物粒子(3)分散液100gに純水300
gとメタノール400gを加え、これに正珪酸エチル(SiO濃度28重量%)3.57gを混合し、50℃で15時間加熱撹拌してシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系複合酸化物粒子(3)分散液を調製した。この分散液を限外濾過膜を用い、メタノ
ールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮した。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(3)のイソプロピルアルコール分散液とした。
【0059】
ついで、このシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系複合酸化物粒子(3)
のイソプロピルアルコール分散液100gにメタクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM-503、式1におけるn=3)0.73gを加え、50℃で15時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理したシリカ系複合酸化物粒子(3)分散液を調製した。
【0060】
固形分濃度20重量%に調製したシリカ系複合酸化物粒子(3)のイソプロピルアルコー
ル分散液を調製した。得られた粒子中のシリカ系複合酸化物粒子(3)の組成、平均粒子径
および屈折率を表1に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(3)のイソプロピルアル
コール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(3)を調製した。
ハードコート膜付基材(3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0061】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例4]
シリカ系複合酸化物粒子(4)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物メタクリル系シランカップリング剤(信越化学(
株)製:KBM-503、式1におけるn=3)を0.49g用いた以外は同様にして固形分濃度
20重量%に調製したシリカ系複合酸化物粒子(4)のイソプロピルアルコール分散液を調
製した。得られた粒子中のシリカ系複合酸化物粒子(4)の組成、平均粒子径および屈折率
を表に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(4)のイソプロピルアル
コール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(4)を調製した。
ハードコート膜付基材(4)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(4)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0062】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例5]
シリカ系複合酸化物粒子(5)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物メタクリル系シランカップリング剤(信越化学(
株)製:KBM-503、式(1)におけるn=3)を1.46g用いた以外は同様にして固形分
濃度20重量%に調製したシリカ系複合酸化物粒子(5)のイソプロピルアルコール分散液
を調製した。
【0063】
得られた粒子中のシリカ系複合酸化物粒子(5)の組成、平均粒子径および屈折率を表に
示した。
ハードコート膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(5)のイソプロピルアル
コール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0064】
ハードコート膜付基材(5)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(5)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0065】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例6]
ハードコート膜形成用塗布液(6)の調製
実施例3において、アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒:イソプロピルアルコール)をイソプロピルアルコールで希釈して樹脂濃度30重量%にしたもの100g、固形分濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(3)のイソプロピルアルコール分散液を30g用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0066】
ハードコート膜付基材(6)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(6)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0067】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例7]
ハードコート膜形成用塗布液(7)の調製
実施例3において、アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒:イソプロピルアルコール)をイソプロピルアルコールで希釈して樹脂濃度30重量%にしたもの100g、固形分濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(3)のイソプロピルアルコール分散液を120g用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(7)を調製した。
ハードコート膜付基材(7)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(7)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0068】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例8]
シリカ系複合酸化物粒子(8)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物としてアクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM-5103、式1におけるn=3)を0.73g用いた以外は同様にして固形分
濃度20重量%に調製したシリカ系複合酸化物粒子(8)のイソプロピルアルコール分散液
を調製した。
【0069】
得られた粒子中のシリカ系複合酸化物粒子(8)の組成、平均粒子径および屈折率を表に
示した。
ハードコート膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(8)のイソプロピルアル
コール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(8)を調製した。
ハードコート膜付基材(8)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(8)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0070】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[実施例9]
ハードコート膜形成用塗布液(9)の調製
実施例3において、アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒:イソプロピルアルコール)の代わりにジヘキサエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A)21.5gと1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX−A)2.4gに光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、IPAで固形分濃度10%に溶解)9.6gおよびイソプロパノール23.1gとエチレングリコールモノブチルエーテル23.1gとを充分に混合したものを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0071】
ハードコート膜付基材(9)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(9)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0072】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[比較例1]
ハードコート膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮したものを、80g用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R1)を調製した。
ハードコート膜付基材(R1)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R1)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0073】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[比較例2]
表面処理シリカ粒子(R2)の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイドSI−45P、SiO2濃度40重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の分散液を限外濾過膜を用いて洗浄し、ついでメタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮したもの100gに有機ケイ素化合物としてメタクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM-503、式(1)におけるn=3)を0.73g、50℃で15時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理したシリカ粒子(R2)分散ゾルを調製した。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20重量%のシリカ系複合酸化物粒子(1)のイソプロピルアルコール分散液とした。
【0074】
得られた粒子の平均粒子径および屈折率を表に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、固形分濃度20重量%の表面処理したシリカ粒子(R2)分散ゾルを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R2)を調製した。
ハードコート膜付基材(R2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0075】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
[比較例3]
五酸化アンチモン粒子(R3)の調製
酸化アンチモンオルガノゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−4560、S
濃度30.5重量%、平均粒子径20nm、分散媒:イソプロピルアルコール)にイソプロピルアルコールを添加して濃度20%の五酸化アンチモン粒子(1)のイソプロ
ピルアルコール分散液とした。得られた五酸化アンチモン粒子の平均粒子径および屈折率を表に示した。
ハードコート膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、固形分濃度20重量%の五酸化アンチモン粒子(1)のイソプロピル
アルコール分散液を用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R3)を調製した。
ハードコート膜付基材(R3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0076】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、干渉縞の有無、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の一方の表面上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が有機樹脂系マトリックス成分とシリカ系複合酸化物粒子とを含んでなり、基材の屈折率が1.45〜1.55の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
【請求項2】
前記シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のハードコート膜付基材。
【請求項3】
前記シリカ系複合酸化物粒子の屈折率が1.15〜1.55の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート膜付基材。
【請求項4】
前記ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項5】
前記シリカ系複合酸化物粒子がシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモン、シリカ・ボリアから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項6】
前記シリカ系複合酸化物粒子が下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
n−SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【請求項7】
前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項8】
さらに、基材のハードコート膜が形成されていない面上に接着剤層が設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項9】
マトリックス形成成分とシリカ系複合酸化物粒子と分散媒とを含んでなることを特徴とするハードコート膜形成用塗布液。
【請求項10】
前記シリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項9に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項11】
前記シリカ系複合酸化物粒子の屈折率が1.15〜1.55の範囲にあることを特徴とする請求項9または10に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項12】
前記シリカ系複合酸化物粒子がシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモン、シリカ・ボリアから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項13】
前記シリカ系複合酸化物粒子が前記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。

【公開番号】特開2009−12375(P2009−12375A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178351(P2007−178351)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】