説明

バイオマス処理のためのシステムおよび方法

装置を含むシステムが、バイオマス混合物中の高固体のバイオマスの乾燥重量でバイオマス処理の成功を可能にするバイオマスの処理を目的として提示される。本システムの設計では、反応体が注入ランスを通して導入される時、バイオマスがバッフル(18)を用いて回転される間にバイオマス全体にわたり反応体を分散させることにより、反応体の広範な分布がもたらされる。バイオマスを上下させるためのバッフル(18)およびバイオマス上に落ちる摩擦媒体(19)を用いて反応体がバイオマスに広範囲に吸収され、処理方法を促進するための装置システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年4月12日出願の米国仮特許出願第60/670437号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
政府の権利に関する声明
本発明は、エネルギー省によって授与された契約番号04−03−CA−70224の下で米国政府後援でなされたものであった。政府は本発明における特定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
バイオマス処理から誘導される発酵性糖を用いて標的化学物質を生産するための方法が提供される。詳細には、高固体濃度および低アンモニア濃度の条件下でのバイオマスの前処理、それに続く糖化によって得られる糖類が、標的化学物質を生産する生体触媒による発酵において用いられる。
【背景技術】
【0004】
農業残渣、木材廃棄物、林業廃棄物、製紙汚泥、ならびに都市および産業固体廃棄物などのセルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、化学物質、プラスチック、燃料および飼料を生産することを目的とした、潜在性が大きい再生可能なバイオマス供給原料を提供する。セルロース、ヘミセルロース、グルカンおよびリグニンを含んでなる炭水化物ポリマーよりなるセルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、一般に種々の化学的、機械的および酵素的手段によって処理されることで、主にヘキソースおよびペントース糖類を放出し、それらは次いで有用な生産物へ発酵されうる。これらの処理は、複雑性および効率において変化する。さらに、新しい商用的に堅牢な方法を特定するため、かつ既知の方法を最適化してセルロース系およびリグノセルロース系供給原料から有用な発酵生産物を生産するため、現在多大な努力が払われている。
【0005】
経済的に競争力のある方法であるように、再生可能な資源バイオマスから発酵性糖を生産するための商用方法では、少量の化学物質を使用して高濃度で高収率の糖類を提供し、糖類を付加価値のある化学物質および燃料に変換する発酵生物に対する毒性が低い発酵性糖のソースを生産するのに、リグノセルロース系バイオマス中での炭水化物の加水分解が必要とされる。
【0006】
これらの方法を実施するため、バイオマスの異なるタイプ、ならびに、小規模方法の開発および一部大規模な生産設備を含む異なる処理を対象として、種々の装置が利用されている。利用されている一部の装置タイプとして、バッチ式撹拌反応器(非特許文献1)、連続流撹拌反応器(特許文献1)、アトリションリアクター(attrition reactor)(非特許文献2)、押し出し反応器(特許文献2)、NRELシュリンキングベッドリアクター(shrinking bed reactor)(非特許文献3)、ならびに電磁場により誘導される激しい攪拌を伴う反応器(非特許文献4)が挙げられる。
【0007】
特に、効率的なバイオマスの前処理および/または混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時の糖化のための手段を提供可能な反応器が必要とされる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,257,818号明細書
【特許文献2】米国特許第6,176,176号明細書
【非特許文献1】グザコフ(Gusakov)およびシニチン(Sinitsyn)、(1985年)Enz.Microb.Technol.7:346−352頁
【非特許文献2】リュ(Ryu)およびリー(Lee)(1983年)Biotechnol.Bioeng.25:53−65頁
【非特許文献3】リー(Lee)ら(2001年)Appl.Biochem.Biotech.91−93:331−340頁
【非特許文献4】グザコフ(Gusakov)ら(1996年)Appl.Biochem.Biotechnol.、56:141−153頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
商用的に大規模な運転を模倣するサンプリングにおける機構を備えた、方法条件の試験において小規模形式で利用可能な、バイオマス処理方法における使用にとって単純であっても有効な装置に対し、依然として需要が存在する。さらに、バイオマス混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時の、糖化を含むかかる方法を実施するための商用的に堅牢な方法および機器に対し、満たされていない需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明は、
a)i)少なくとも1つの端部上に開口部を有する筒状反応容器と、
ii)前記容器の内部に取り付けられた1つもしくはそれ以上のバッフルと、
iii)反応容器の内部に制限なく浮遊するペレットを含んでなる摩擦媒体と、
iv)1つもしくはそれ以上のポートを含んでなる前記容器開口端用カバーと、
v)反応容器の長さを延ばしかつiv)のカバー内の第1のポートに接続する注入ランスである、処理反応体を送達するための手段を含んでなる注入ランスと、
を含んでなる装置と、
b)容器のバッフルを回転させるための手段と、
を含んでなるバイオマスをバッチ処理するための装置を含むシステムを提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、
a)バイオマスを請求項1に記載の装置の反応容器に導入する工程と、
b)処理反応体を反応容器に導入する工程と、
c)前記処理反応体を前記バイオマスに反応容器のバッフルを回転することによって吸収させ、それによりバッフルが摩擦媒体を上下させる工程と、
を含んでなるバイオマスの処理方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、
a)請求項1に記載の装置の反応容器内でバイオマスを前処理し、前処理されたバイオマスを生産する工程と、
b)反応容器内で(a)の前処理されたバイオマスの温度およびpHを調節する工程と、
c)反応容器内で(b)の調節された前処理されたバイオマスを糖化する工程と、
を含んでなるバイオマスの処理方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、
a)バイオマスを請求項1に記載の装置の反応容器に導入する工程と、
b)反応容器内で処理条件を変化させる工程と、
c)処理されたバイオマスを、前記変化させた処理条件下で前記1つもしくはそれ以上のポートを介してサンプリングする工程と、
d)前記試料を試験してバイオマスを処理するための最適な処理条件を決定する工程と、
を含んでなる処理方法を最適化するための方法を提供する。
【0014】
出願人らは、本開示中にすべての引用文献の内容全体を具体的に援用する。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、ある範囲、好ましい範囲、またはより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストとして与えられる場合、これは、任意のより高い範囲限界または好ましい値と任意のより低い範囲限界または好ましい値との任意のペアから形成されるあらゆる範囲を、範囲が別々に開示されるか否かにかかわりなく具体的に開示するものとして理解されるべきである。本明細書中で数値の範囲が挙げられる場合、特に指定のない限り、同範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むように意図されている。本発明の範囲が範囲を規定する場合に挙げられる特定の値に限定されるようには意図されていない。
【0015】
本発明は、バイオマス処理方法にて使用される装置を含むシステム、ならびに装置内で実施されるバイオマス処理用方法および処理方法を最適化するための方法を提供する。システムの設計では、反応体が導入されるかまたは反応器が作動される時、バイオマス全体にわたり反応体を分散させることにより、反応体の広範な分布がもたらされる。システムが導入された反応体がバイオマスに広範囲に吸収されるように機能することで、処理方法が促進される。これらの特徴は、バイオマス混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時の処理を可能にする。
【0016】
定義
本開示では多数の用語が用いられる。以下の定義が提供される。
【0017】
「発酵可能な糖」という用語は、発酵方法中の微生物による炭素源として使用可能なオリゴ糖および単糖を示す。
【0018】
「リグノセルロース系」という用語は、リグニンとセルロースの双方を含んでなる組成物を示す。リグノセルロース系材料は、ヘミセルロースを含んでなる場合もある。
【0019】
「セルロース系」という用語は、セルロースを含んでなる組成物を示す。
【0020】
バイオマスの「乾燥重量」は、すべてまたは本質的にすべての水分が除去されたバイオマスの重量を意味する。乾燥重量は、典型的にはアメリカン・ソサエティー・フォー・テスティング・アンド・マテリアルズ(American Society for Testing and Materials)(ASTM)基準E1756−01(Standard Test Method for Determination of Total Solids in Biomass)またはテクニカル・アソシエーション・オブ・ザ・パルプ・アンド・ペイパー・インダストリー(Technical Association of the Pulp and Paper Industry,Inc.)(TAPPI)基準T−412 om−02(Moisture in Pulp,Paper and Paperboard)に従って測定される。
【0021】
「糖化」という用語は、多糖からの発酵性糖の生産を示す。
【0022】
「前処理されたバイオマス」という用語は、糖化に先立ち前処理を受けているバイオマスを示す。
【0023】
「バイオマス」は、任意のセルロース系またはリグノセルロース系材料を示し、セルロースを含んでなる、かつ場合によりヘミセルロース、リグニン、澱粉、オリゴ糖および/または単糖をさらに含んでなる材料を含む。バイオマスは、タンパク質および/または脂質などの追加成分を含んでなる場合もある。本発明によると、バイオマスは単一のソースから誘導されうるか、またはバイオマスは2つ以上のソースから誘導される混合物を含んでなる可能性がある。すなわち、例えばバイオマスであれば、トウモロコシ穂軸とコーンストーバーの混合物、または草と葉の混合物を含んでなる可能性がある。バイオマスは、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、製紙汚泥、工場廃棄物、木材および林業廃棄物を含むがこれらに限定されない。バイオマスの例として、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮などの作物残渣、コーンストーバー、草、小麦、小麦のわら、大麦、大麦のわら、まぐさ、稲わら、スイッチグラス、紙くず、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀物の加工から得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花ならびに動物糞尿が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、本発明にとって有用なバイオマスは、比較的高い炭水化物値を有し、比較的密度が高く、かつ/または回収、運搬、保存および/または処理を行うのが比較的容易であるバイオマスを含む。本発明の一実施形態では、有用なバイオマスは、トウモロコシ穂軸、コーンストーバーおよびサトウキビバガスを含む。
【0024】
「アンモニアを含んでなる水溶液」は、水性培地内でのアンモニアガス(NH)、水酸化アンモニウムまたはアンモニウムサルフェートなどのアンモニウムイオン(NH)を含んでなる化合物、尿素など、分解時にアンモニアを放出する化合物、およびこれらの組み合わせの使用を示す。
【0025】
「処理」という用語は、ある材料に対して作用する反応体の方法を示し、ここでは材料の物理的かつ/または化学的特性が変更される。
【0026】
「反応体」という用語は、処理方法で使用される条件下で標的材料の物理的かつ/または化学的特性を変更可能である組成物を示す。
【0027】
糖化のための「酵素共同体」は、バイオマス混合物上に作用することで発酵性糖を生産可能である酵素の組み合わせである。典型的には、糖化酵素共同体は、1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを含んでなる場合があり、ここでグリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼよりなる群から選択されうる。糖化酵素共同体における他の酵素は、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよびフェルロイルエステラーゼを含みうる。
【0028】
バイオマス処理システム
本バイオマス処理システムは、図1中の概略図を参照することにより最も理解されうるものであり、システムの一実施形態を示す。システムの装置は、1つの閉鎖端(11)および1つの開口端(12)を有する筒状反応容器(10)を含んでなる。取り外し可能なカバー(13)は、開口端上部にかみ合い、容器の開口端にしっかりと締め付けられうる。カバー内には少なくとも1つのポートが存在する。注入ランス(14)は、カバー(15)の中央にあるポートを通って反応容器に延在する。注入ランスは、ポートから筒状反応容器の縦中央を通って延在するチューブである。ポート(16)から遠位にある注入ランスの端部は密封される。注入ランスはその全長に沿って穴を有し、それらはV形状(17)に整列されている。これらの穴により、注入ランス内部から約10時および2時の上方にある反応容器への内容物の脱出が可能になる。さらに、ランスが接続されるポートを通して真空源が適用されることで、容器内部に真空が創出されうる。反応容器内の空間に延在するバッフル(18)が容器の内部表面に取り付けられ、それらは注入ランスに接触することはない。反応容器の内部には、浮遊性摩擦媒体(19)が存在する。装置は、バイオマス処理システム内の反応容器を回転するのに使用されるローラー(20)上に水平に設けられる。
【0029】
バイオマス処理の間、装置は水平位置に維持され、反応容器の縦軸周囲にある容器のバッフルを回転するための手段が適用されることで、バイオマスの処理システムが形成される。バッフルが反応容器壁の内部表面に取り付けられる場合があり、その場合には容器全体が回転される。あるいは、バッフルが反応容器の内側でスリーブタイプの表面に取り付けられる場合があり、その場合にはスリーブが回転しながら容器自体は静止する。容器またはスリーブの回転は、回転をもたらす任意の方法によって行われうる。例えば、容器を回転させるため、それは外部ローラー、ベルト、ホイール、トラニオンベアリング、または他の回転運動を誘発するプラットフォームの上に設けられうる。装置が容器に回転を与える反応器内に収容される場合もあれば、回転機構が装置と融合されうる。回転を適用するための容器壁またはスリーブに取り付けられる、容器を通って延在する駆動シャフトが考えられうる。回転速度は、使用中の特定の処理方法および装置の大きさに依存して変化しうる。以下の本明細書中に記載のように、回転速度は摩擦媒体のカスケーディングを促進するのに十分であり、当業者により容易に決定されうる。
【0030】
反応容器の開口端用のカバーは、スクリュー、クランプ、バー、ドッグ、または他のファスナーを用いるなど、当該技術分野で既知の手段により容器に固定されうる。反応容器は、各端部におけるカバーを用い、両端部で開放しうる。カバー(またはもし各端部に1つずつある場合には両方のカバー)内の1つもしくはそれ以上のポートは、反応容器の内部に接近するための開口部である。ポートは、ランスなどの内部器具および/または真空もしくはガス注入装置などの外部器具を取り付けるための部位でありうる。外部器具の取り付けは、処理方法の間の必要な時に限られる一時的なものか、または永久的なものでありうる。したがって、ポートは、コネクタとともに使用されない場合にポートを閉鎖するためのカバーを有する場合がある。従来のコネクタは、カバー内のポートへの接続用に使用され、分岐コネクタおよび回転ジョイントを含む。ポートはまた、試料の採取または圧力の解放を行うためなど、内部への接近を可能にするためのカバー内の開口部である場合があり、それ自体がカバーを有しうる。
【0031】
バイオマス処理においては、装置の温度は所望の温度に誘導されかつ制御される。装置温度の制御は、加熱ジャケットの適用、注入ランスもしくは別のポートを通した高温ガスの注入、可燃性ガスの発火、またはボイラーからの燃焼排ガス熱の使用など、熱が加えられる任意の方法によってなされうる。あるいは、装置は、装置に熱をもたらすオーブン内、油浴内または他のタイプの反応器内に収容されうる。装置内部の温度は、熱電対などの温度測定装置を、注入ランスに接続されるカバー内のポートを通し、注入ランスの下方に挿入することによって評価されうる。反応容器のほぼ中央での温度は、温度測定装置を注入ランス下方の途中に挿入することによって測定可能である。冷却ジャケット内への氷または別のクーラントの適用などの方法によって容器の冷却を施すことで、冷却ガスが注入ランスを通過するか、冷却槽内に反応器が設けられるか、または反応容器が入る外部ボックスが冷却(冷蔵)されうる。これは、外部機構または装置の機構によって実施されうる。
【0032】
注入ランスは、反応容器の全長に沿って溶液または気体を導入しかつ分布させるための手段を提供する。例えば、窒素、CO、蒸気、処理反応体、およびpHを調節する溶液は、注入ランスを通して導入されうる。注入ランスを通して導入される処理反応体は、注入に先立ち、当業者に既知の任意の方法を用いて予備加熱されうる。例えば、処理反応体を、カバー内の中央ポートを通る注入ランスに接続される加熱コイルを通過させることにより、反応体の加熱が行われうる。加熱コイルは、加熱した水槽内に浸漬され、処理反応体の加熱にとって望ましい温度で維持される。
【0033】
真空が、カバー内のポートを通して装置の反応容器に適用されうる。真空源がカバー内のポート、典型的には注入ランスに接続されるポートに接続されうる。分岐コネクタまたは回転ジョイントは、真空と反応体の注入ランスへの接近の両方における接続を提供する。真空を用いることで、反応容器内での処理反応体のバイオマスへの浸透が促進されうる。バイオマスを含有する容器に真空を適用することにより、バイオマスからの空気の排出が可能になり、処理反応体が添加される場合での反応体の浸透がより良好に実現される。反応器内の空気はまた、Nまたはアルゴンなどの不活性雰囲気と交換されうる。真空の適用により、蒸発冷却に従う方法が用いられる場合には、反応容器の内容物が冷却されやすいという可能性がある。バイオマス処理方法の間に生産される気体が、真空の適用およびベントコンデンサの使用により回収されうる。真空源およびベントコンデンサは、蒸気がポートを通過してコンデンサに入るようにカバー内のポートに取り付けられうる。アンモニアなどの濃縮され回収された処理反応体は、後続するバイオマス処理方法において再利用されうる。アンモニアが前処理加工にて用いられる場合、その除去によって前処理されたバイオマスのpHが低下することから、前処理されたバイオマスを酵素糖化および生体触媒発酵に最適なpHに中和させるのに必要な化学物質が節約される。さらに化学物質の使用が低下すると、微生物と接触した塩負荷の低下により、後続する発酵が改善され、それ故に収率および生産性が改善される。
【0034】
装置の反応容器はまた、カバー内のポートによる注入により加圧されうる。例えば、COソースは注入ランスに接続されるカバー内のポートに接続される場合があり、 COを注入することで、例えば反応容器内部の真空が解放され、pHが低下し、かつ/またはそれ以外でもバイオマス処理方法が促進される。分岐コネクタは、COソース、真空源の接続、および反応体における常に同じポートを通る注入ランスへの接近手段として機能しうる。
【0035】
反応容器内の内部表面に取り付けられるバッフルは、摩擦媒体(本明細書中、下記に記載)の存在下では、処理反応体のバイオマスへの吸収を促進する任意の形態、数および配置でありうる。摩擦媒体およびバイオマスは、バッフルが容器の底部周囲を回転する時にバッフルにより上昇され、次いでバッフルが容器の上部周囲を回転する時にバッフルから滑り落ちる。バッフルは、内部表面に垂直な方向に延在するか、あるいは、媒体の上昇とそれに続く滑落または落下を可能にする角度で傾斜する場合がある。バッフルは途切れることなく反応容器の全長にわたるか、あるいは長さが反応器の一部にわたるバッフルは線状に設けられるかまたは互いにオフセット配置をなすがある。バッフルは、容器内部に延在し、摩擦媒体を上昇させるには十分に広く、かつバッフルの容器上部への移動時に摩擦媒体が容易に滑落するには十分に狭い表面を形成している。当業者には、バッフルが回転して処理反応体のバイオマスへの吸収を促進する時に、種々のバッフルの形態、位置付けおよび数が摩擦媒体およびバイオマスの落下において有効となり、かつ異なるサイズの反応容器においては異なる配置が最適になることが理解されるであろう。
【0036】
装置は、一般に、バイオマス処理方法にて一般に用いられる圧力、温度、および処理反応体に耐える非腐食性材料で作られている。非腐食性材料の例として、ステンレス鋼、ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)、セラミック、インコネル(Inconel)(登録商標)、二相ステンレス鋼、ジルコニウムおよび炭素鋼が挙げられる。異なるバイオマス処理方法は、−10℃〜約220℃の範囲の温度で実施され、ここで典型的な温度は4℃〜170℃の範囲である。さらにバイオマス処理方法は、室温(約25℃)〜約170℃の範囲の温度で実施されうる。バイオマス処理方法で用いられる圧力は、一般に大気圧〜約1200kPaの範囲であり、ここで典型的な圧力は大気圧〜約310kPa、およびより典型的には約大気圧〜138kPaの範囲である。装置の特定の実施形態で用いられる材料は、当業者に周知であるように、用いられるべき特定のバイオマス処理方法の条件に耐えるものである。一実施形態では、反応容器に特に適する材料は、大気圧〜約310kPaの圧力、および最大約145℃の温度で使用可能な計画された10の厚みのステンレス鋼である。あるいは、装置は、より高い温度および圧力に耐える他の材料、ならびに強酸などの腐食性の高い方法反応体で作られうる。これらのより厳しいバイオマス処理条件として、圧力が最大約1216kPaの場合での最大約220℃の温度、および硫酸などの強酸反応体が挙げられる。これらの方法条件を用いる場合、ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)およびジルコニウムなどの材料であれば有効となる。
【0037】
反応容器の直径は、容器が注入ランスおよびバッフルを包含可能であり、かつバッフルの回転時に摩擦媒体の自由落下を可能にする程度に十分に大きい。反応容器は、約10cmの内径を有する場合があるが、典型的な内径は少なくとも約15cmであり、かつ商用サイズを含めると、さらに拡大される場合がある。
【0038】
摩擦媒体が装置に導入され、それは反応容器内に浮遊している。反応容器の容積の約10%未満が摩擦媒体によって占められるように摩擦媒体が添加される。典型的には、摩擦媒体は反応容器の容積の約3%〜約7%を占める。摩擦媒体は異なる形状およびサイズを有する場合があり、かつ反応容器のサイズに応じて異なる数で使用される。装置の特定の実施形態で使用されるサイズ、形状、数、および構成に適する摩擦媒体は、当業者によって決定されうる。特に有用なものは、耐食性を示す、硬く非多孔質で耐チップ性の表面を有する重い高密度材料から作られるシリンダーなどのペレットである。摩擦媒体は、例えばE.R.アドバンスド・セラミックス(E.R.Advanced Ceramics)(イーストパレスタイン(East Palestine)、オハイオ州)から市販されている。バッフルが回転すると、摩擦媒体はバッフルにより上昇され、次いでバイオマス上に落ちる。バッフルが回転する速度は、媒体が被るのが極めて低速で生じる容器壁からの滑落ではなくこの落下運動であるか、または極めて高速で生じる容器壁付近での滞留であるように調節される。理論に縛られることを望まないが、バイオマス上に着地している摩擦媒体が絞り圧をもたらし、それにより処理反応体と可溶化されたバイオマス成分との混合物を含む液体の発散が生じると考えられる。次いで、バルク液体が使用済みの発散液体に置き換わる。バッフルが回転すると、バイオマスからの摩擦媒体の重量の増加により、処理反応混合体がバイオマス中に浸透することでバイオマスが拡大しうる。バイオマスからのこの絞りや、処理反応混合体のバイオマス中への浸透の繰り返しにより、ポンピング作用が生じる。バイオマスに出入りする反応混合体のポンピングは、反応体のバイオマスへの吸収の促進によりバイオマス処理方法を促進する、特定のタイプの機械的混合方法である。この液体の交換では、より高濃度の反応体がバイオマスの気孔内で既に反応している使い切った液体と気孔内で交換されうる。
【0039】
本装置の一実施形態における以下の説明は、限定することを意図しておらず、1つの特に適切な装置構造を提供することを意味する。一実施形態では、図2に示されるように、装置は、15cmの内径で51cmの長さの反応容器(10)内に約9Lの容積を有する。それは304ステンレス鋼製のパイプおよび備品から組み立てられている。容器(11)の開口端の直径は10cmであり、4つの等間隔のカバーの取り付け部位(12)の各々は開口部から外側に2.54cm延在している。カバー(13)は直径が15.2cmの環状プレートである。カバー内には2つのポート、すなわち中央の第1のポート(14)および中央と一端部との間の第2のポート(15)が設けられ、各々の直径は1.9cmである。注入ランス(16)は、カバー内の中央ポートまで延在し、回転ジョイント(17)に接続されている。回転ジョイントには分岐コネクタ(18)が取り付けられている。注入ランスは、直径0.64cmのステンレス鋼製のチューブで作られている。ランス(19)の穴は、直径が0.165cmであり、Vパターンで2.54cmの間隔で配置されている。穴のライン間の角度は約120°である。穴のラインは2本あり、ここで1本のライン内の穴は5.1cm離して配置され、2本のライン内の穴は2.54cm分相殺されており、また極めて有効なことに、ランスの交互の側面上には2.54cmごとに穴が設けられる。カバー内の第2のポートは、カバーを取り除くことなく試料を採取しかつ試薬を添加するための接近手段を提供する。4つのバッフル(20)が設けられ、各バッフルはそれらが取り付けられる反応容器壁の全長にわたり、かつバッフルは内部容器壁からその表面に垂直に3.8cm延在している。22個の3.2cm×3.2cmの摩擦媒体シリンダー(21)は、(E.R.アドバンスド・セラミックス(E.R.Advanced Ceramics)、イーストパレスタイン(East Palestine)、オハイオ州から購入した)ジルコニアまたはアルミナ製であり、容器容積の約5.5%を占める反応容器に添加される。装置をローラー支持体(22;ベルコ・セル・プロダクション・ローラー・アパラタス(Bellco Cell Production Roller Apparatus)(ベルコ・テクノロジー(Bellco Technology)、ヴァインランド(Vineland)、ニュージャージー州、米国)上に設けることにより、装置は処理方法の間に約19rpmで回転され、バイオマス処理システムが形成される。ローラー支持体および装置は、温度制御のためのインキュベータ室(23)内部に設置される。
【0040】
外部機器を図2の装置に取り付け、以下の例のようなシステムが形成される。前処理反応体の導入においては、10342kPaのゲージ圧で約800ml/分の流速の性能を有するHPLCポンプが、カバー内の分岐した注入ランスのポート用回転コネクタに接続される。HPLCポンプは、8Lのパール(Parr)反応容器内で水中に浸漬される0.32cmのステンレス鋼製のチューブから構築された加熱コイルを通して接続される。パール(Parr)反応器用ヒーターコントローラーを、3kWのヒーター入力によりゴールデン(Golden)、コロラド州での水の沸点(約93℃)より高く設定することで、速やかな沸騰が維持される。カバー内の分岐した注入ランスのポート用回転コネクタに真空源が取り付けられる。真空源は、約1.5℃で運転中の冷却した水槽に接続されたベントコンデンサに接続される場合がある。ベントコンデンサは、氷−水槽内に浸漬されかつ約85kPaまで排気された真空マニホールドに接続された、テフロン(Teflon)(商標)でコーティングした2Lのフラスコを含む。CO源もまた、分岐された注入ランスのポート用回転コネクタに接続される場合がある。
【0041】
装置を含むシステムが本明細書に記載の特徴および原理に基づいて拡張可能であることは理解されるであろう。直径が約3〜4メートルでかつ長さが約15〜18メートルの反応容器を有する装置は、商用規模のバイオマス処理に特に適する。図2に記載の反応容器に対して中間サイズおよびこの商用規模サイズの反応容器を備えた装置は、本装置の実施形態でもある。
【0042】
バイオマス処理における装置の使用方法
本システムは、異なる方法を用いる異なるタイプの処理を含む、バイオマスの処理を目的に設計される。一実施形態では、システムはバイオマスの前処理方法において用いられる。別の実施形態では、システムはバイオマスの糖化方法において用いられる。これら2つのタイプのバイオマス処理は、同じバイオマス試料に対して連続的にまたは異なるバイオマス試料に対して個別に実施されうる。バイオマス試料は、別の装置にて前処理され、かつ本システムの装置にて糖化される場合がある。バイオマス試料は、本装置にて前処理され、次いで別の装置にて糖化される場合がある。
【0043】
装置を含む本システムは、バイオマス−反応混合体中のバイオマスの乾燥重量が大きい時の、特にバイオマスの処理、および特にバイオマスの糖化に適する。初期バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−反応混合体の重量の最大約80%でありうる。より適切には、バイオマスの乾燥重量はバイオマス−反応混合体の重量の最大約60%である。好ましくは、初期バイオマス濃度はバイオマス−反応混合体の重量の約15%〜約50%である。反応体の注入ランスによる導入および摩擦媒体およびバッフルの機能により、高いバイオマス濃度での処理が有効であるように反応体のバイオマスへの吸収が可能になる。セルラーゼおよびヘミセルラーゼなどの酵素がバイオマスを加水分解して発酵性糖を生産する糖化との関連で、容器のバッフルの回転によるバイオマスおよび摩擦媒体の落下により、酵素が混合物中のバイオマスに吸収される。バイオマス上へ落ちる媒体の作用により、バイオマス混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時でのバイオマスの処理が可能になる。
【0044】
前処理方法では、バイオマスは、反応容器の開口端を通して本装置に導入される。バイオマスの装置への導入に先立ち、例えばクラッシング、ミリング、粉砕、破砕、チョッピング、ディスクリファイニング(disk refining)、超音波、およびマイクロ波によってエネルギーをバイオマスに適用することで、大きさが減少しかつ/または暴露される表面積が拡大する可能性がある。導入されるバイオマスの量は、反応容器の大きさおよび用いられるべき特定の処理方法に依存し、当業者により決定されうる。装置は、所望の加工温度に予備加熱されうる。
【0045】
処理反応体は、固定された容器カバー内のポートおよび注入ランスを通して反応容器に注入される。一実施形態では、反応体は、予備加熱され、注入ランスの上面内の穴を通してスプレーすることにより導入される間、バッフルは反応体がスプレーの上を通過する際にバイオマスに接触するように回転する。処理反応体は、バイオマスの前処理方法にて使用されかつ装置を構築する材料に適合する任意の組成物でありうる。典型的な前処理反応体は、酸化剤、変性剤、洗浄剤、有機溶媒、および塩基(これらのリストは米国特許第2004/0231060号明細書に提供される)、ならびに酸を含む。一部の適切な反応体として、過酢酸(テイキセイラ(Teixeira)ら(1999年) Appl.Biochem. and Biotech.77−79:19−34頁)、過酸化水素(ゴウルド(Gould)(1983年) Biotech.and Bioeng.26:46−52頁)、水酸化ナトリウムおよび過酸化水素(クレリ(Curreli)ら(2002年) Process Biochem.37:937−941頁)、水性アンモニア(キム(Kim)およびリー(Lee)(2005年) Bioresource Tech.96:2007−2013頁)、ならびに液体無水アンモニア(テイモウリ(Teymouri)ら(2005年) Bioresource Tech.96:2014−2018頁)が挙げられる。本装置におけるバイオマスの前処理に特に適する処理反応体は水性アンモニアである。同時係属中の米国特許出願第CL2825号明細書に記載のように、バイオマス−水性アンモニア混合物中に使用されるアンモニアを含んでなる水溶液が最も好ましく、ここでアンモニアはバイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリ性pHを維持するための少なくとも十分な濃度で存在するが、アンモニアはバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満で存在する。
【0046】
添加される方法反応体の量ひいてはバイオマス濃度は、用いられる前処理方法に依存して変化しうる。本装置では、バイオマスの乾燥重量がバイオマス−水性アンモニア混合物の重量に対して少なくとも約15重量パーセントの初期濃度にある場合の高濃度のバイオマスにおける前処理が特に適する。高いバイオマス濃度は前処理された材料の総容量を減少させ、それにより方法がより経済的なものになる。さらに、高いバイオマス濃度の場合、前処理されたバイオマスの糖化後における糖類の濃度が発酵における高い滴定濃度を可能にするものであるという要求は最低限である。上記の本装置における機械的混合の絞りおよび浸透モードは、バイオマス混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時のバイオマス処理方法に特に適する。
【0047】
バイオマスの本装置への負荷に先立ち、反応容器中の雰囲気は、窒素または任意の他の選択された気体でフラッシュされうる。例えば、真空を引き、Nをポートを通して導入することで、空気が交換される。これを実質的に空気を交換するのに必要な多数回繰り返すことが可能である。
【0048】
バイオマスおよび前処理反応体を含有する装置は、本明細書中、上記のように温度制御される。反応容器のバッフルは、本明細書中、上記のように回転される。前処理方法を可能にする時間は、使用中の特定の方法に依存し、典型的には約5分〜約8時間の間で変化する。反応が作動される時、装置のカバー内のポートから試料を採取可能である。これらの試料を分析することで、前処理反応の完全性を評価することが可能である。使用中の前処理方法に応じ、例えば、近赤外(NIR)分光学、完全化学分析または試料に対する小糖化の実行といった様々な分析法の利用が可能である。
【0049】
前処理条件下で蒸気を形成する反応体を使用する場合、反応体における蒸気は、本明細書中、上記のようにベントコンデンサに取り付けられた真空源の適用により回収されうる。典型的には、前処理方法の完了後、反応体における蒸気は、再利用可能なように回収および凝縮される。例として、液体アンモニアを反応体として使用する場合のアンモニア蒸気の回収が挙げられる。回収されたアンモニア蒸気は、液化され、追加のバイオマスを前処理するための方法反応体中に使用されうる。
【0050】
前処理されたバイオマスが装置から取り出される場合もあれば、前処理されたバイオマスを取り出すことなく第2のタイプのバイオマス処理である糖化が行われる場合もある。あるいは、別々の装置内で前処理されているバイオマス試料が糖化処理のために本装置に導入される場合がある。添加される糖化反応体の量ひいてはバイオマス濃度は、用いられる糖化方法に応じて変化しうる。糖化反応体は、典型的には本装置の注入ランスを使用して反応容器内に直接注入される。糖化反応体の注入ランスによる導入ならびに摩擦媒体およびバッフルの機能により、高いバイオマス濃度での糖化が有効であるように反応体のバイオマスへの吸収が促進される。糖化反応体は、カバー内のポートを通して導入されるか、または乾燥形態でカバーを開放した状態で容器内に導入される場合がある。
【0051】
糖化の間でのバイオマスの乾燥重量は、バイオマス−反応混合体の重量の最大約80%でありうる。より適切には、バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−反応混合体の重量の最大約60%である。好ましくは、初期バイオマス濃度はバイオマス−反応混合体の重量の約15%〜約40%である。高いバイオマス濃度により、糖化された材料の総容量が減少し、方法がより経済的なものになる。それは、不純物、出発基質および生産物の濃度が希釈されない場合、様々な阻害および非活性化方法が起こりうる場合、高いバイオマス含有量の下での糖化酵素共同体の有効性を実証している。典型的には糖化において用いられる低いバイオマス濃度では、潜在的な阻害および非活性化方法は、高い希釈係数に起因して有意に失われるかまたは存在しない。さらに、高いバイオマス濃度の場合、糖化後における糖類の濃度が発酵における高い滴定濃度をもたらすものであるという要求は最小になる。上記の本装置における機械的混合の絞りおよび浸透モードは、バイオマス混合物中のバイオマスの乾燥重量が大きい時の糖化に特に適する。
【0052】
糖化処理反応体は、前処理されたバイオマスを加水分解してオリゴ糖および/または単糖を放出可能な酵素を含んでなる。糖化酵素および糖化酵素によるバイオマスの処理方法は、リンドL.R.(Lynd L.R.)ら(Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002年) 66:506−577頁)においてレビューされている。
【0053】
一般に糖化酵素共同体が使用され、これは、主に、二糖、オリゴ糖、および多糖のエーテル結合を加水分解する群「グリコシダーゼ」より選択される(がこれらに限定されない)1つもしくはそれ以上の酵素を含んでなり、酵素分類として、一般群「加水分解酵素」(EC3.)のEC3.2.1.x(Enzyme Nomenclature 1992年、アカデミック・プレス(Academic Press)、サンディエゴ(San Diego)、カルフォルニア州に加え、Supplement 1(1993年)、Supplement 2(1994年)、Supplement 3(1995)、Supplement 4(1997年)およびSupplement 5[各々、Eur.J.Biochem.(1994年)223:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1995年)232:1−6頁、Eur.J.Biochem.(1996年)237:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1997年)250:1−6頁、およびEur.J.Biochem.(1999年)264:610−650頁])において見出される。本方法において有用なグリコシダーゼを、それらが加水分解するバイオマス成分によって分類してもよい。本方法において有用なグリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ)、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、キシラナーゼ、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノキシラナーゼ、マンナーゼ、ガラクターゼ、ペクチナーゼ、グルクロニダーゼ)、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼ(例えば、アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ)を含む。さらに、ペプチダーゼ(EC3.4.x.y)、リパーゼ(EC3.1.1.xおよび3.1.4.x)、リグニナーゼ(EC1.11.1.x)、ならびにフェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)などの糖化酵素共同体に他の活性を付加することで多糖のバイオマスの他の成分からの放出を促進することは有用でありうる。多糖を加水分解する酵素を生産する微生物が、異なる基質特異性を有する数種の酵素または酵素群によって触媒される、セルロース分解などの活性を示すことが多いことは当該技術分野で周知である。したがって、微生物由来の「セルラーゼ」は、酵素群を含んでなる場合があり、それらのすべてはセルロース分解活性に寄与しうる。セルラーゼなどの商用または非商用の酵素製剤は、酵素を得るのに用いられる精製スキームに依存し、極めて多数の酵素を含んでなる場合がある。したがって、本方法の糖化酵素共同体は「セルラーゼ」などの酵素活性を含んでなる場合があるが、この活性は2種以上の酵素によって触媒されうると理解されている。糖化酵素は、スペザイム(Spezyme)(登録商標)CPセルラーゼ(ジェネンコア・インターナショナル(Genencor International)、ロチェスター(Rochester)、ニューヨーク州)およびマルチフェクト(Multifect)(登録商標)キシラナーゼ(ジェネンコア(Genencor))など、商用的に入手可能である。
【0054】
当業者は、共同体中で使用するための酵素の有効量の決定方法を知り、かつ最適な酵素活性のための条件を調節するであろう。当業者であれば、共同体中に必要とされる酵素活性のクラスを最適化することで、選択された条件下で所定の前処理されたバイオマスの最適な糖化を得る方法も知るであろう。
【0055】
本装置内でバイオマスを前処理し、次いで糖化する場合、糖化処理に先立ち、本装置内の前処理されたバイオマスのpHおよび温度が、糖化酵素の活性が使用に適するように調節される。酸または塩基で前処理する場合、前処理されたバイオマスのpHは、pHを調節する溶液または固体の反応容器への導入により、それぞれ上昇または低下されうる。前処理されたバイオマス中でpHを調節する溶液の良好な分布を得るため、それは反応容器内のバッフルが回転している間にランスを通して注入される。溶液は、典型的には糖化酵素共同体に適する温度、例えば約50℃まで予熱されうる。あるいは、pHを調節する溶液はカバー内のポートを通して導入されうる。容器のバッフルを回転させた上で、pHを調節する溶液のバイオマスへの吸収が促進摩擦媒体およびバッフルによって提供可能であり、かつpH試験において所望のpHが得られるまで試料を試料ポートを通して除去することでバイオマスを周期的に試験することが可能である。当業者に既知のように異なる酵素が異なるpH最適値を示しうることから、糖化において使用中の酵素に応じて目的のpHは約2〜11である。より典型的には所望のpHは約4〜10であり、最も典型的にはpHは約5.5である。
【0056】
当業者に既知のように異なる酵素が異なる温度の最適値を示しうることから、糖化における温度は、一般に約15℃〜約100℃の範囲内であり、糖化にて使用中の酵素にも依存する。典型的には、温度は約20℃〜約100℃である。糖化は、反応容器のバッフルが回転する間に行われる。本明細書中、上記の本装置内で反応体をバイオマス中に吸収させる絞りおよび浸透モードは、糖化反応体のバイオマスへの接近を促進し、それにより高度に有効な糖化方法を提供する。この方法は、約数分〜約120時間、好ましくは約数時間〜約72時間かけて行われる。反応にかかる時間は、酵素濃度および比活性、ならびに使用される基質および温度やpHなどの環境条件に依存することになる。当業者は、特定のバイオマス基質および糖化酵素共同体とともに用いられるべき温度、pHおよび時間の最適な条件を容易に決定できる。
【0057】
本装置は、バイオマス処理方法を最適化するのに特に有用である。バイオマス処理方法では、それが前処理または糖化方法のいずれであっても、変動しうる処理条件は多数存在する。様々な条件は、pH、温度、処理反応体のタイプおよび処理反応体の濃度、バイオマス−反応混合体中のバイオマスの乾燥重量の百分率、反応体を添加するための供給方法、圧力、不活性雰囲気のタイプ、使用されるバイオマスの形態およびタイプ、ならびに方法時間を含むがこれらに限定されない。本明細書、上記の一実施形態に記載のように、本装置は小規模に構築される場合があり(図2に示される)、それは特に処理条件を最適化するのに適している。条件は、実験の統計的設計(statistical design)を用いて独立または並行に変動する場合があり、試料は、方法が作動する間に試料ポートから採取されうる。糖化方法、または複合された前処理/糖化方法では、試料中の糖類を直接分析することが可能である。前処理方法単独では、試料は糖化され、次いで糖化生産物における糖の含量ならびに酢酸、フルフラールおよび塩などの他の目的の成分が分析される。ヘミセルロースなどの場合、他の方法も分析に利用可能である。最適化は、糖単量体の収率、放出された糖全体の収率、酵素の使用頻度の低さ、少量の酢酸、少量のフルフラール、形成された少量の不純物を含む多数の基準、またはこれらの変数のいくつかに基づく大域的最適化に基づく場合がある。例えば、評価中の処理方法において放出される、出発時のバイオマス中に理論上存在するグルコースおよびキシロースの百分率が測定される。50%に近いかそれを超える糖単量体の収率は良好な結果を示すとともに、さらに高めの収率が好ましい。少なくとも70%の放出されたオリゴマーを含む糖全体の収率は良好な結果を示す。HPLCによるなど、糖類を分析するための方法は、当業者に周知である。さらに、生産物の質の評価においては、酢酸、フルフラール、または乳酸など、他の処理されたバイオマス試料成分についての分析もHPLCにより可能である。
【0058】
同時係属中の米国特許出願第CL3435号明細書および米国特許出願第CL3436号明細書などの記載のように、バイオマスから放出される発酵性糖を生体触媒である適切な微生物で用いることで、標的化学物質を生産してもよい。
【実施例】
【0059】
一般的方法および材料
以下の略語が用いられる。
「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィー、「C」は摂氏、「kPa」はキロパスカル、「m」はメートル、「mm」はミリメートル、「kW」はキロワット、「μm」はマイクロメートル、「μL」はマイクロリットル、「mL」はミリリットル、「L」はリットル、「min」は分、「mM」はミリモル、「cm」はセンチメートル、「g」はグラム、「kg」はキログラム、「wt」は重量、「hr」は時間、「temp」または「T」は温度、「theoret」は理論、「pretreat」は前処理、「DWB」はバイオマスの乾燥重量である。硫酸、水酸化アンモニウム、酢酸、アセトアミド、酵母抽出物、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カリウムリン酸塩、グルコース、キシロース、トリプトン、塩化ナトリウムおよびクエン酸を、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(セントルイス(St.Louis)、ミズーリ州)から入手した。
【0060】
前処理および酵素加水分解反応器(PEHR)
図2に示すような寸法および特徴を有しかつ本明細書中、上記のバイオマス処理装置はPEHReactorと称されるものであり、以下の実施例にてそれを使用した。つまり、9LのPEHReactor(NREL、ゴールデン(Golden)、コロラド州にて構築)は、処理反応体を導入するための注入ランスを具備する約15cm×51cmのステンレス鋼製の反応容器を有する。注入ランスは、容器の一端部上でカバー内のポートに回転ジョイントを用いて接続され、それは容器に接近するための追加ポートを有する。4つのバッフルが容器壁の全長にわたり、壁に垂直に取り付けられる。バッフルおよび容器内で浮遊している3.2cm×3.2cmの22個のセラミック製の摩擦媒体シリンダー(E.R.アドバンスド・セラミックス(E.R.Advanced Ceramics)、イーストパレスタイン(East Palestine)、オハイオ州)は、容器回転時でのバイオマスと反応体との機械的混合を適用したものであり、それにより反応体のバイオマスへの吸収が促進される。PEHReactorは回転のための機構を提供するベルコ・セル−プロダクション・ローラー・アパラタス(Bellco Cell−Production Roller Apparatus)(ベルコ・テクノロジー(Bellco Technology)、ヴァインランド(Vineland)、ニュージャージー州)上に設けられ、ローラー装置を具備する反応器は熱を供給する温度制御チャンバー内に収容される。温度制御チャンバーは、ベルコ・セル・プロダクション・アパラタス(Bellco Cell Production Apparatus)を囲むコルク製の絶縁パッドを支持するためのアルミニウムフレームよりなり、それにPEHR反応器内の注入ランスの中央を通して挿入される熱電対により制御されるヒーターが取り付けられる。真空および圧力を、カバー内でランスに接続されたポートに外部ソースを取り付けることにより、反応容器に適用可能である。
【0061】
スチームガン反応器のバッチ式消化システム
4リットルのスチームガン反応器(オートクレーブ・エンジニアーズ(Autoclave Engineers)、エリー(Erie)、ペンシルバニア州)は、2つのボール弁によって閉鎖される長さ102mmで計画された80ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)パイプより構成される蒸気ジャケット付き反応器である。追加の電気ヒーターを、反応器のジャケットが付いていない露出された全表面上に設け、かつ前処理の定値温度に制御する。バイオマスを最高の前処理温度まで速やかに誘導するため、直接蒸気注入も用いられる。蒸気圧を調節および制御し、所望の前処理温度を維持する。反応器の底部を51mmにネックダウンする。すべての前処理した材料を、反応器の底部で交換可能なダイを通して排出させ、厚肉のジャケット付き冷却フラッシュタンク内部で支持された0.21mのナイロン(ホットフィル(Hotfill)(登録商標))製バッグ内に回収する。
【0062】
分析法
糖、アセトアミド、乳酸および酢酸含有量の測定
糖化液中の可溶性糖(グルコース、セロビオース、キシロース、ガラクトース、アラビノースおよびマンノース)、アセトアミド、乳酸ならびに酢酸を、適切なガードカラムを有するバイオ・ラッド(Bio−Rad)HPX−87Pおよびバイオ・ラッド(Bio−Rad)HPX−87Hカラム(バイオ・ラッドラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories)、ハーキュリーズ(Hercules)、カリフォルニア州)を用い、HPLC(アジレント(Agilent)モデル1100、アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)、パロアルト(Palo Alto)、カリフォルニア州)によって測定した。試料のpHを測定し、必要に応じ硫酸を用いて5〜6に調節した。次いで、試料を直接に0.2μmのシリンジフィルターを通してHPLCバイアルに通過させた。HPLCの稼動条件は以下の通りであった。
HPX−87P(炭水化物用):
注入容量:10〜50μL、濃度および検出器の限界に依存
移動相:HPLCグレードの水、0.2μmに濾過および脱気
流速:0.6mL/分
カラム温度:80〜85℃、ガードカラム温度<60℃
検出器温度:可能な限り主カラム温度に近い
検出器:屈折率
実行時間:35分間のデータ収集に加え、実行後の15分間(後の溶出化合物のために可能な調節を行う)
バイオ・ラッド(Biorad)アミネックス(Aminex)HPX−87
H(炭水化物、アセトアミド、乳酸、および酢酸を対象)
注入容量:5〜10μL、濃度および検出器の限界に依存
移動相:0.01N硫酸、0.2μmに濾過および脱気
流速:0.6mL/分
カラム温度:55℃
検出器温度:可能な限りカラム温度に近い
検出器:屈折率
実行時間:25〜75分間のデータ収集
【0063】
実行後、試料中の濃度を各化合物における標準曲線から判定した。
【0064】
実施例1
PEHReactor内の高いバイオマス濃度でのバガスの前処理;低濃度での糖化に対する比較
摩擦媒体を全く有しないPEHReactor(「一般的方法」に記載)に1.27cmに粉砕したバガス(370g、乾燥重量を基準)を負荷した。このサトウキビバガスは、元々ハワイ・シュガー・プランターズ・アソシエーション(Hawaii Sugar Planters Association)、クニア(Kunia)支局、オアフ(Oahu)、ハワイ州から入手したサトウキビクローンH65−7052由来のNIST参照材料RM8491であった。それを、ワイリー(Wiley)製ミルで粉砕し、2mmのスクリーンを通過させ、その際に微粉(+74メッシュ)を除去した。反応容器を、外表面上で氷と接触状態で回転することにより4℃に冷却した。真空を反応容器に適用し、冷室内で4℃で予備冷却しかつ氷水槽内に浸漬したチュービングを通過させた希釈水酸化アンモニウム溶液を注入することで、4g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度および45g/バイオマス−水性アンモニア混合物全体100gの濃度にあるバイオマスの乾燥重量が得られた。アンモニアおよびバガスを負荷した反応容器を、氷を回転する反応容器の表面に適用して4℃に冷却し、4℃で30分間回転させた。この時点で、内容物を「一般的方法」に記載のスチームガン反応器に移した。一旦スチームガン反応器にアンモニア−バガス混合物を負荷し、温度を145℃に上昇させ、混合物の温度を20分間保持した。前処理時間の最後に、バガスをスチームガン反応器から2.54センチの環状ダイを通してフラッシュタンクに排出した。次いで、前処理したバガスの試料を振盪フラスコ内で糖化し、別の試料(約163gの乾燥重量)をPEHReactor内で糖化した。振盪フラスコでの糖化を、前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して5乾燥重量%のバイオマスにて行う一方、PEHReactorでの糖化を、前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して30乾燥重量%のバイオマスにて行った。50mMクエン酸緩衝液を添加して、糖化の間pHは5.5に制御され、温度を50℃で維持した。
【0065】
PEHReactorでの糖化においては、約476g(約163gの乾燥重量)の前処理したバイオマスおよび22個のセラミック製の摩擦シリンダーを反応容器に添加した。pHを固体クエン酸を用いて5.0〜5.5に調節した。反応容器を50℃に制御したインキュベータ室内部で保持し、19rpmで軸回転させた。前処理されていないバガスも、振盪フラスコ内で、前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して5乾燥重量%のバイオマスにて糖化した。あらゆる糖化を、28.4mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(登録商標)セルラーゼおよび28.4mg/gのセルロース、マルチフェクト(Multifect)(登録商標)キシラナーゼを用い、50℃およびpH5.5で96時間かけて行った。下記の表1に示す収率は、理論収率の百分率として公表されたものである。
【0066】
【表1】

【0067】
結果は、極めて少量のアンモニアを用いたバガスの前処理により、前処理されていない対照と比較した場合に大量の糖の放出が可能になり、かつPEHReactor内での高い固体濃度での糖化が糖類を放出する場合に極めて有効であることを示す。
【0068】
実施例2
PEHReactor内での高いバイオマス濃度でのイエロ−ポプラおがくずの前処理;低濃度糖化に対する比較
摩擦媒体を有しないPEHReactorにイエロ−ポプラおがくず(596g、乾燥重量を基準;ソーミラー(Sawmiller Inc.)、ヘイデンヴィル(Heydenville)、オハイオ州から購入)を負荷した。反応容器に真空を適用し、希釈水酸化アンモニウム溶液を注入し、6g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度および44g/バイオマス−水性アンモニア混合物全体100gの濃度にあるバイオマスの乾燥重量が得られた。実施例1に記載のようにアンモニアおよびイエロ−ポプラおがくずを負荷した反応容器を4℃にし、4℃で30分間回転させた。この時点で、内容物をスチームガン反応器に移した。一旦スチームガン反応器にアンモニア−ポプラ混合物を負荷すると、温度を145℃に上昇させ、混合物の温度を20分間保持した。前処理時間の最後に、イエロ−ポプラおがくずをスチームガン反応器から2.54センチの環状ダイを通してフラッシュタンクに排出した。次いで、実施例1に記載のように、振盪フラスコ内で前処理したイエロ−ポプラおがくずの試料を糖化し、別の試料をPEHReactor内で糖化した。振盪フラスコでの糖化を、前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して5乾燥重量%のバイオマスにて行う一方、(約279gの乾燥重量の前処理されたおがくずを使用する)PEHReactorでの糖化を、前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して30乾燥重量にて%のバイオマス行った。前処理されていないイエロ−ポプラおがくずもまた、振盪フラスコ内で前処理されたバイオマス−糖化酵素共同体混合物の総重量に対して5乾燥重量%のバイオマスにて糖化した。あらゆる糖化を、28.4mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(登録商標)セルラーゼおよび28.4mg/gのセルロース、マルチフェクト(Multifect)(登録商標)キシラナーゼを用い、50℃およびpH5.5で96時間かけて行った。下記の表2に示す収率は、理論収率の百分率として公表されたものである。
【0069】
【表2】

【0070】
結果は、極めて少量のアンモニアを用いたイエロ−ポプラおがくずの前処理により、前処理されていない対照と比較した場合に大量の糖の放出が可能になり、かつPEHReactor内のバイオマスの乾燥重量が大きい時の糖化が糖類の放出において振盪フラスコの場合よりも有効であることを示す。
【0071】
実施例3
PEHReactor内のより高い乾燥バイオマス濃度でのトウモロコシ穂軸の前処理および糖化
全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(delumper)(1.5kWモーター、フランクリン・ミラー(Franklin Miller Inc.)、リビングストン(Livingston)、ニュージャージー州)で処理し、その後に1.9cmの米国標準スクリーンを備えたスウェコ(Sweco)スクリーンでスクリーニングした。約805gの粉砕トウモロコシ穂軸をPEHReactorに負荷した。トウモロコシ穂軸中の含水率は約7%であった。負荷に先立ち、反応容器内の雰囲気を窒素で5回フラッシュした。実験開始前、全く摩擦媒体を有しない反応器を回転させずに75℃に予備加熱した。反応容器内の温度が75℃で安定化した時、インキュベータ内の回転機構を作動させ、回転を19rpmに調節した。次いで、アンモニア6g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度および固体濃度としてバイオマスの乾燥重量50g/バイオマス−アンモニア混合物の総重量100gを得るために、適量の希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器内にポンピングした。1g/バイオマスの乾燥重量100gのエタノールもまた溶液に添加した。アンモニア溶液を加熱ループを通して、2ガルのパール(Parr)反応器を使用して作り上げた、約75℃で水槽にポンピングした。加熱された希釈水酸化アンモニウム溶液を、注入ランスを介して反応容器に注入し、反応器内で回転し転がる粉砕トウモロコシ穂軸上にスプレーした。反応器を19rpmで回転させながら75℃で2時間維持した。その時間の最後に、真空(約85kPa)を反応容器に30分間適用し、アンモニアを除去し、反応器の内容物の温度を約50℃に低下させた。次いで、二酸化炭素を反応器に注入して真空を解放し、反応器の圧力が103kPaになるまで加圧し、50℃で30分間圧力保持した。
【0072】
この後、反応器を減圧し、開放し、摩擦媒体を添加した。内容物のpHを、注入ランスを使用してpH4.8の1Mクエン酸緩衝液を注入して約5.5に調節し、クエン酸緩衝液の強度を約75mlに増加させるとともにクエン酸一水和物を添加した。クエン酸緩衝液を50℃に加熱してから反応器に注入し、次いで反応器を50℃および19rpmで1時間インキュベートすることで内容物を平衡化しておいた。反応器を回転させながら注入ランスを使用してクエン酸緩衝液を注入することにより、緩衝液の前処理されたトウモロコシ穂軸粒子上へのさらに均一なスプレーおよび分布が可能であった。反応器をインキュベータから取り出し、開放し、試料のpHを測定した。もしpHが5.5より大きい場合、さらなる固体クエン酸一水和物を添加し、反応器を混合しながら50℃でさらに1時間インキュベートした。この方法をpHが約5.5になるまで繰り返した。一旦所望のpHに達すると、12.9mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(ジェネンコア(Genencor))および5mgの活性タンパク質/gの、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼよりなるセルロース酵素共同体を反応器に負荷した。反応器を50℃および19rpmで72時間インキュベータ内で維持した。この前処理および糖化の後、単量体グルコースの収率は62.0%および単量体キシロースの収率は31.0%であった。全グルコースの収率は75.2%および全キシロース収率は80.3%であった。
【0073】
実施例4
トウモロコシ穂軸のより高いバイオマス濃度での極めて少量のアンモニアを用いた前処理および代替条件
全粒トウモロコシ穂軸をハンマーミル(10インチのハンマーミル、グレン・ミル(Glen Mills Inc.)、クリフトン(Clifton)、ニューハンプシャー州)で処理し、1.27cmのスクリーンを通過させた。約805gの粉砕トウモロコシ穂軸をPEHReactorに負荷した。トウモロコシ穂軸中の含水率は約7%であった。22個のセラミック製の摩擦シリンダー(直径3.2cm×長さ3.2cm;E.R.アドバンスド・セラミックス(E.R.Advanced Ceramics)、イーストパレスタイン(East Palestine)、オハイオ州)も反応器に添加した。実験開始前、反応器を回転させずに95℃に予備加熱した。開始前に真空(約85kPa)を反応容器に適用し、容器を密封した。反応容器内の温度が95℃で安定化した時、インキュベータ内の回転機構を作動させ、かつ回転を19rpmに調節した。次いで、アンモニア6g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度および固体濃度としてバイオマスの乾燥重量50g/バイオマス−アンモニア混合物の総重量100gを得るために、適量の希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器内にポンピングした。アンモニア溶液を加熱ループを通して、2ガルのパール(Parr)反応器を使用して作り上げた、沸騰した水槽内にポンピングした。加熱した希釈水酸化アンモニウム溶液を、注入ランスを介して反応容器に注入し、反応器内で回転し転がる粉砕トウモロコシ穂軸上にスプレーした。反応器を19rpmで回転させながら95℃で2時間維持した。その時間の最後に、真空(約85kPa)を反応容器に30分間適用し、アンモニアを除去しかつ反応器の内容物の温度を約50℃に低下させた。次いで、二酸化炭素を反応器に注入して真空を解放し、反応器をゲージ圧103kPaまで加圧し、50℃で30分間圧力保持した。
【0074】
この後、反応器を減圧し、開放し、内容物のpHを、pH4.8の1Mクエン酸緩衝液を注入することによって約5.5に調節し、その中にクエン酸一水和物を添加および溶解した。クエン酸緩衝液を50℃に加熱してから反応器に注入し、次いで反応器を50℃および19rpmで1時間インキュベートすることで内容物を平衡化しておいた。反応器をインキュベータから取り出し、開放し、試料のpHを測定した。もしpHが5.5より大きい場合、さらなる固体クエン酸一水和物を添加し、反応器を混合しながら50℃でさらに1時間インキュベートした。この方法をpHが約5.5になるまで繰り返した。一旦所望のpHに達すると、12.9mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(ジェネンコア(Genencor))および5mgの活性タンパク質/gの、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼよりなるセルロース酵素共同体を反応器に負荷した。反応器を50℃および19rpmで72時間インキュベータ内で維持した。この前処理および糖化の後、単量体グルコースの収率は50.7%および単量体キシロースの収率は35.7%であった。全グルコースおよび全キシロースの収率は、それぞれ71.7%および89.8%であった。
【0075】
実施例5
トウモロコシ穂軸の極めて少量のアンモニアおよび追加塩基を用いた前処理
全粒トウモロコシ穂軸を約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(1.5kWモーター、フランクリン・ミラー(Franklin Miller Inc.))で処理し、その後に1.9cmの米国標準スクリーンを備えたスウェコ(Sweco)スクリーンでスクリーニングした。約460gの粉砕トウモロコシ穂軸をPEHReactorに負荷した。トウモロコシ穂軸中の含水率は約7%であった。実験開始前、反応器を回転させずに95℃に予備加熱した。開始前に真空(約85kPa)を反応容器に適用し、容器を密封した。容器内の温度が95℃で再安定化した時、インキュベータ内の回転機構を作動させ、かつ回転を19rpmに調節した。次いで、固体濃度としてバイオマスの乾燥重量30g/バイオマス−アンモニア混合物の総重量100gを維持する一方、NaOH1.9g/バイオマスの乾燥重量100gの濃度を得るための、アンモニア3.2g/バイオマスおよびNaOHの乾燥重量100gのアンモニア濃度を得るための適量の水酸化アンモニウム溶液を反応器内にポンピングした。アンモニアおよび追加塩基の溶液を加熱ループを通して、2ガルのパール(Parr)反応器を使用して作り上げた、沸騰した水槽内にポンピングした。加熱した希釈水酸化アンモニウム溶液を、注入ランスを介して反応容器に注入し、反応器内で回転し転がる粉砕トウモロコシ穂軸上にスプレーした。注入後、容器における真空を大気圧に解放した。反応器を95℃で30分維持し、次いで温度を85℃に低下させ、ここではそれを4時間維持した。その時間の最後に、真空(約85kPa)を反応容器に30分間適用し、アンモニアを除去しかつ反応器の内容物の温度を約50℃に低下させた。次いで、二酸化炭素を反応器に注入して真空を解放し、反応器をゲージ圧103kPaまで加圧し、50℃で30分間圧力保持した。
【0076】
この後、反応器を減圧し、開放し、内容物のpHを、pH4.8の1Mクエン酸緩衝液約75mlを注入することによって約5.5に調節し、その中にクエン酸一水和物を添加および溶解した。クエン酸緩衝液を50℃に加熱してから反応器に注入し、次いで反応器を50℃および19rpmで1時間インキュベートすることで内容物を平衡化しておいた。反応器を回転させながら注入ランスを使用してクエン酸緩衝液を注入することにより、緩衝液の前処理されたトウモロコシ穂軸粒子上へのさらに均一なスプレーおよび分布が可能であった。反応器をインキュベータから取り出し、開放し、試料のpHを測定した。もしpHが5.5より大きい場合、さらなる固体クエン酸一水和物を添加し、反応器を混合しながら50℃でさらに1時間インキュベートした。この方法をpHが約5.5になるまで繰り返した。一旦所望のpHに達すると、28.4mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(ジェネンコア(Genencor))および28.4mg/gのセルロースのマルチフェクト(Multifect)を反応器に負荷した。反応器を50℃および19rpmで72時間インキュベータ内で維持した。この前処理および糖化の後、単量体グルコースの収率は56.1%および単量体キシロースの収率は39.5%であった。全グルコースおよび全キシロースの収率は、それぞれ82.8%および84.2%であった。これらの値は2つの実験の平均である。
【0077】
実施例6
室温でのPEHReactor内の高い乾燥バイオマスにおけるでウモロコシ穂軸の前処理および糖化
全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95センチのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(1.5kWモーター、フランクリン・ミラー(Franklin Miller Inc.))で加工した後、1.9cmの米国標準スクリーンを具備したスウェコ(Sweco)製スクリーンでスクリーニングした。約460gの粉砕トウモロコシ穂軸をPEHReactorに負荷した。トウモロコシ穂軸中の含水率は約7%であった。22個のセラミック製摩擦シリンダー(直径3.2cmx長さ3.2cm;E.R.アドバンスド・セラミックス(E.R.Advanced Ceramics)、イーストパレスタイン(East Palestine)、オハイオ州)も反応器に添加した。開始前には真空(約85kPa)を反応容器に適用し、容器を密封した。反応器内の温度が室温(22〜26℃)で再安定化した時、インキュベータ内の回転機構を作動させ、回転を19rpmに調節した。次いで、固体濃度としてバイオマスの乾燥重量30g/バイオマス−アンモニア混合物の総重量を維持する一方、アンモニア4g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度を得るための適量の希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器内にポンピングした。希釈水酸化アンモニウム溶液を、注入ランスを介して反応容器に注入し、反応器内で回転し転がる粉砕トウモロコシ穂軸上にスプレーした。注入後、各容器における真空を大気圧に解放した。反応器を室温(22〜26℃)で24時間維持した。その時間の最後に、真空(約81kPa)を反応容器に30分間適用し、アンモニアを除去した。次いで、二酸化炭素を反応器に注入して真空を解放し、反応器をCOを用いて103kPaゲージ圧に加圧し、室温で30分間圧力保持した。
【0078】
この後、反応器を減圧し、開放し、内容物のpHを、50℃に加熱してからクエン酸一水和物を添加することによって約5.5に調節し、次いで反応器を50℃および19rpmでインキュベートすることで平衡化しておいた。反応器をインキュベータから取り出し、開放し、試料のpHを測定した。もしpHが5.5より大きい場合、さらなる固体クエン酸一水和物を添加し、反応器を混合しながら50℃でインキュベートした。この方法をpHが約5.5になるまで繰り返した。一旦所望のpHに達すると、12.9mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)CP(ジェネンコア(Genencor))および5mgの活性タンパク質/gのβ−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼよりなるセルロース酵素共同体を反応器に負荷した。反応器を50℃および19rpmで72時間インキュベータ内で維持した。この前処理および糖化の後、単量体グルコースの収率は41.7%および単量体キシロースの収率は25.4%であった。全グルコースおよび全キシロースの収率は、それぞれ50.1%および53.2%であった。これらの値は2つの実験の平均である。
【0079】
実施例7
PEHReactor内でのトウモロコシ穂軸および異なる使用済み穀物試料を含有する複合バイオマスの前処理および糖化
使用済み穀物試料を次のように調製した。
1.#2黄色全粒デントコーン粒(アグウェイ(Agway)から購入)
2.イリノイ大学(University of Illinois)で開発されたクイック・ジャーム(Quick Germ)方法(シン(Singh)およびエックホフ(Eckoff)(1996年) Cereal Chem.74:462−466頁)により、トウモロコシ粒からジャームを除去した(degermed)。出発材料をイリノイ大学(University of Illinois)のヴィジャイ・シン(Vijay Singh)から入手した。
3.クイック・ファイバー(Quick Fiber)方法によるトウモロコシ粒方法により、ジャームおよび外皮繊維を除去した(米国特許第6,254,914号明細書)。出発材料をイリノイ大学(University of Illinois)のヴィジャイ・シン(Vijay Singh)から入手した。
4.ブリューワーズ・グリット(Brewers’ grits)をカーギル(Cargill)(ミネアポリス(Minneapolis)、ミネソタ州)から入手した。
【0080】
使用済み穀物は、澱粉が糖に変換される穀物加工からの残留固形物を示す。使用済み穀物を本質的に基本的なウイスキー方法により生産した。異なる出発材料を澱粉分解酵素で処理して糖類を生産し、生産されたマッシュを濾過してフィルターケーキ固形物または使用済み穀物を回収した。
【0081】
出発材料を、フォス(Foss)(ノース・アメリカンHQ(North American HQ):エデンプレーリー(Eden Prarie)、ミネソタ州)シクロテック(Cyclotec)1093試料ミル(上記の出発材料1および2)で挽いて250μmにするかまたはブレンダー(上記の出発材料3および4)で挽き、次いで2Lのジャケット付きの撹拌用ガラス反応容器内で水および200mM CaClOと結合した。混合物のpHを1N NaOHを用いて6.5に調節し、全α−アミラーゼ(スペザイム(Spezyme)HPA、ジェネンコア・インターナショナル(Genencor International)、パロ・アルト(Palo Alto)、カリフォルニア州)の半分を添加した。次いで、反応容器を95℃まで加熱し、20分後に残存するα−アミラーゼを添加した。容器を、95℃で規定時間維持した後、70℃に冷却し、混合物のpHを1M HClを用いて4.5に調節した。グルコアミラーゼ(グザイム(Gzyme)480、ジェネンコア(Genencor))を添加し、温度をさらに50℃まで低下させ、一晩保持した。この時点で、反応器を40℃未満に冷却し、内容物を、10μmの孔サイズを有するダクロン(Dacron)製フィルタークロスを通して濾過した。フィルターケーキを水で洗浄し、最終のフィルターケーキまたは使用済み穀物を105℃で一晩乾燥し、室温で前処理実験にて使用されるまで保存した。各出発材料における特定の反応条件を下記の表3に挙げる。
【0082】
【表3】

【0083】
全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(delumper)(1.5kWモーター、フランクリン・ミラー(Franklin Miller Inc.))で加工した後、1.9cmの米国標準スクリーンを具備したスウェコ(Sweco)製スクリーンでスクリーニングした。粉砕トウモロコシ穂軸を、表3に挙げる使用済み穀物の1種とともにPEHReactorに負荷した。使用済み穀物は、反応器内のバイオマスの全乾燥重量の約10%であった。乾燥バイオマスの全負荷量は約473gであった。実験開始前では、負荷した各反応器をローラーインキュベータ内で回転させずに95℃に予備加熱した。真空(約85kPaゲージ圧)を反応容器に適用し、容器を密封した。各反応容器内の温度が95℃で再安定化した時、回転を19rpmで開始させた。希釈水酸化アンモニウム溶液を添加し、アンモニア4g/バイオマスの乾燥重量100gのアンモニア濃度および固体濃度としてバイオマスの乾燥重量30g/バイオマス−アンモニア混合物の総重量100gを得た。注入後、容器における真空を大気圧に解放した。反応器を95℃で30分間維持し、次いで温度を85℃に低下させ、ここでは回転させながら4時間それを維持した。その時間の最後に、真空(約85kPaゲージ圧)を反応容器に30分間適用してアンモニアを除去し、各反応器の内容物の温度を約50℃に低下させた。次いで、二酸化炭素を各反応器に注入して真空を解放し、反応器をCOを用いて138kPaゲージ圧に加圧し、その圧力で50℃で30分間回転させた。
【0084】
この後、反応器を減圧し、開放し、75mlの1Mクエン酸緩衝液、pH4.8を注入することにより内容物のpHを約5.5に調節し、その中にクエン酸一水和物を添加および溶解した。クエン酸緩衝液を50℃に加熱してから各反応器に注入し、次いで反応器を50℃および19rpmで1時間インキュベートすることで平衡化しておいた。反応器をインキュベータから取り出し、開放し、試料のpHを測定した。もしpHが5.5より大きい場合、さらなる固体クエン酸一水和物を添加し、反応器を回転させながら50℃でさらに1時間インキュベートした。この方法を、各反応器において約5.5のpHを得るのに必要な度ごとに繰り返した。一旦所望のpHに達すると、28.4mg/gのセルロース、スペザイム(Spezyme)(登録商標)CPセルラーゼ(ジェネンコア(Genencor))および10.1mgの活性タンパク質/gのセルロース、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼを含有するダイバーサ(Diversa)製D2カクテルを反応器に負荷した。反応器を50℃および19rpmで72時間インキュベータ内で維持した。この前処理および糖化の後、糖の収率を一般的方法に記載のようにアッセイした。グルコースおよびキシロースの収率は両方の供給に関与するグルカンおよびキシランの全体を基準にしたものであり、これらを表4に示す。トウモロコシ穂軸と使用済み穀物とを複合させたバイオマス試料の収率は、トウモロコシ穂軸単独試料の収率に類似していた。
【0085】
【表4】

【0086】
実施例8
PEHReactor内でのトウモロコシ穂軸、使用済み穀物、および追加成分を含有する複合バイオマスの前処理および糖化
実施例7に記載のように調整した、粉砕トウモロコシ穂軸およびウイスキーの使用済み穀物を、実施例7に記載のようにPEHReactor内で複合させた。さらに、他の穀物成分を添加した。一方の試料には、澱粉(シグマ(Sigma)S4126、ロット番号093K0033)を5g/バイオマスの全乾燥重量100gで添加した。もう一方の試料には、トウモロコシ油(シスコクラシック(Sysco Classic)製のトウモロコシ油、ロット番号4119095)を約2g/乾燥バイオマス全体100gの濃度で添加した。実施例7に記載のように、試料を前処理して糖化した。結果を表4に示す。これらの結果はまた、表3におけるトウモロコシ穂軸単独の対照データに比べて勝るとも劣らない。
【0087】
【表5】

【0088】
実施例9
PEHReactor内でのトウモロコシ穂軸およびトウモロコシ繊維を含有する複合バイオマスの前処理および糖化
粉砕トウモロコシ穂軸およびカーギル(Cargill)製のブラン80(Bran 80)(カーギル(Cargill)、ミネトンカ(Minnetonka)、ミネソタ州)トウモロコシ繊維を、繊維が乾燥バイオマス全体の約10%であるように結合させた。実施例7に記載のように、複合バイオマスを前処理して糖化した。得られた糖の収率を表5に示す。トウモロコシ穂軸とトウモロコシ繊維を複合させたバイオマスの収率は、トウモロコシ穂軸単独試料の収率に類似していた。
【0089】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】バイオマス処理システムの実施形態の略図を示す。
【図2A】バイオマス処理システムの実施形態の詳細な図面を示す。
【図2B】反応容器カバーの図面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)少なくとも1つの端部上に開口部を有する筒状反応容器と、
ii)前記容器の内部に取り付けられた1つもしくはそれ以上のバッフルと、
iii)反応容器の内部に制限なく浮遊するペレットを含んでなる摩擦媒体と、
iv)1つもしくはそれ以上のポートを含んでなる前記容器開口端用カバーと、
v)処理反応体を送達するための手段を含んでなる注入ランスであって、ここで、前記手段が、前記反応容器の長さを延ばし、かつiv)の前記カバー内の第1のポートに接続している、注入ランスと、
を含んでなる装置と、
b)容器のバッフルを回転させるための手段と、
を含んでなるバイオマスをバッチ処理するためのシステム。
【請求項2】
摩擦媒体が反応容器の容積の約10%未満を占める請求項1に記載の装置。
【請求項3】
反応容器カバー内のポートに接続された回転ジョイントをさらに含んでなる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第2のポートが、反応体を反応容器に添加するためのポートであるか、反応容器の内容物をサンプリングするためのポートであるか、または両方である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記容器が約−10℃〜約220℃の範囲の温度に耐える能力がある非腐食性材料よりなる請求項1に記載の装置。
【請求項6】
容器が約4℃〜約170℃の範囲の温度に耐える能力がある請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記材料がステンレス鋼である請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記容器が最大約1200kPaの圧力に耐える能力がある非腐食性材料よりなる請求項1に記載の装置。
【請求項9】
容器が最大約310kPaの圧力に耐える能力がある請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記バッフルが反応容器の内部表面に対して垂直な角度で取り付けられる請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記処理反応体がアンモニアを含んでなる水溶液である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記処理反応体が糖化酵素混合物である請求項1に記載の装置。
【請求項13】
温度制御のための手段をさらに含んでなる請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
温度制御のための前記手段が温度制御ジャケットまたは外付けインキュベータである請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ポートに接続される真空源をさらに含んでなる請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムが、バイオマス−反応混合体の約15重量パーセント〜約80重量パーセントの範囲の高い乾燥バイオマス濃度でバイオマスの処理を行う請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムが、バイオマス−反応混合体の約15重量パーセント〜約60重量パーセントの範囲の高い乾燥バイオマス濃度でバイオマスの処理を行う請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
回転用の前記手段が、ローラー、シャフトおよびクランク、ベルト、ホイール、またはトラニオンベアリングである請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
a)バイオマスを請求項1に記載の装置の反応容器に導入する工程と、
b)処理反応体を反応容器に導入する工程と、
c)前記処理反応体を前記バイオマスに反応容器のバッフルを回転することによって吸収させ、それによりバッフルが摩擦媒体を上下させる工程と、
を含んでなるバイオマスの処理方法。
【請求項20】
前記方法がバイオマスの前処理方法である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理反応体がアンモニアを含んでなる水溶液である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が糖化方法である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記処理反応体が糖化酵素混合物である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)請求項1に記載の装置の反応容器内でバイオマスを前処理し、前処理されたバイオマスを生産する工程と、
b)反応容器内で(a)の前処理されたバイオマスの温度およびpHを調節する工程と、
c)反応容器内で(b)の調節された前処理されたバイオマスを糖化する工程と、
を含んでなるバイオマスの処理方法。
【請求項25】
a)バイオマスを請求項1に記載の装置の反応容器に導入する工程と、
b)前記バイオマスをアンモニアを含んでなる水溶液と接触させ、反応容器内でバイオマス−水性アンモニア混合物を形成する工程であって、ここでアンモニアはバイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリ性pHを維持するための少なくとも十分な濃度で存在するが、前記アンモニアはバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満で存在し、かつさらにバイオマスの乾燥重量はバイオマス−水性アンモニア混合物の重量に対して少なくとも約15重量パーセントの高固体濃度にある工程、
を含んでなるバイオマスの前処理方法。
【請求項26】
a)場合により前処理されているバイオマスを準備して、容易に糖化可能な組成物を準備する工程と、
b)(a)のバイオマスを加水分解可能な酵素共同体を準備する工程と、
c)請求項1に記載の装置内で(b)の酵素を(a)のバイオマスに吸収させる工程と、
を含んでなる前処理されたバイオマスを高い乾燥バイオマス濃度で糖化するための方法。
【請求項27】
発酵性糖が生産される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
バイオマスの乾燥重量が、バイオマス−反応混合体の重量に対して少なくとも約15重量パーセントの高固体濃度にある請求項26に記載の方法。
【請求項29】
バイオマスが、スイッチグラス、紙くず、製紙汚泥、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮、コーンストーバー、草、小麦、小麦のわら、まぐさ、大麦、大麦のわら、稲わら、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀物の加工から得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花、ならびに動物糞尿よりなる群から選択される請求項25または26に記載の方法。
【請求項30】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシの皮、サトウキビバガス、おがくず、スイッチグラス、小麦のわら、まぐさ、稲わら、および草よりなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、おがくず、およびサトウキビバガスよりなる群から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記バイオマスが複数の供給原料由来である請求項25または26に記載の方法。
【請求項33】
a)バイオマスを請求項1に記載の装置の反応容器に導入する工程と、
b)反応容器内で処理条件を変化させる工程と、
c)処理されたバイオマスを、前記変化する処理条件下で前記1つもしくはそれ以上のポートを介してサンプリングする工程と、
d)前記試料を試験してバイオマスを処理するための最適な処理条件を決定する工程と、
を含んでなる処理方法を最適化するための方法。
【請求項34】
前記変化する条件が、pH、温度、処理反応体および処理反応体の濃度、バイオマス−反応混合体中のバイオマスの初期乾燥重量百分率、バイオマスのタイプおよび形態、不活性雰囲気のタイプ、圧力、方法反応体における供給方法、ならびに加工時間を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記処理方法が糖化方法である請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記処理方法が前処理方法である請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537682(P2008−537682A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506761(P2008−506761)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/014147
【国際公開番号】WO2006/110902
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】