バイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びセンサと検出方法
バイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びセンサ並びに検出方法。
平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)は、基板(8、28、28、48)と、前記基板(8、28、38、48)上に堆積された少なくとも1つの層(1、2、3)を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)と、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板(21、31、41、51)と、を備える。前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段(9)をさらに有し、横モードをサポートするように設計されている。平面型光学導波路干渉計を備えるチップ、センサ及び検出方法が提供される。
平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)は、基板(8、28、28、48)と、前記基板(8、28、38、48)上に堆積された少なくとも1つの層(1、2、3)を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)と、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板(21、31、41、51)と、を備える。前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段(9)をさらに有し、横モードをサポートするように設計されている。平面型光学導波路干渉計を備えるチップ、センサ及び検出方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学導波路に基づく干渉計及びセンサに関し、特に、バイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ブドウ糖等の分子や分子間の結合を検出することは一般的な課題である。試薬の量や溶液中の分子の濃度は低いことがあり、分子の検出には高感度機器が必要とされる。検出は様々な方法や技術を用いて行うことができる。例えば、マッハツェンダ干渉計、表面プラズモン共鳴、ヤング干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、スラブ干渉計等の様々なナノ機構光学機器が存在する。マッハツェンダ干渉計及びヤング干渉計は光学導波路に基づく小型機器であり、ずっと昔に導入され、よく研究されている。強固な平面構造の単純さが比較的単純な固定化手法の利点を与えるため、今日、これらの技術は分子検出の分野において最も感度のよいものと考えられている。開発された方法やプロトコルは、ラベリング(標識化)せずに分子を結合させることを可能にする。ラベリングは、実結果に干渉し、誤りの原因になるため、これは、実験をより楽に、かつ繰り返し可能にする。一般に、干渉計は2つの分岐路(ブランチ)を有し、一方は、干渉計が検出装置としての機能を果たす時に、センサ板が設けられ、他方は基準(リファレンス)である。センサ板を流れる試薬は、窓内の導波路において予め固定されている分子と相互作用する。これは導波路のクラッド層の屈折率を変化させ、続いて、この導波路に沿った光伝播の速度を変化させる。結果として、2つの分岐路を伝播する光波の間には位相シフトが存在する。これらの波の合成は干渉計のタイプに応じて異なる結果を生み出し、ヤング干渉計の場合は干渉パターンであり、マッハツェンダ干渉計の場合は出力チャネル信号の変化である。
【0003】
しかし、2つの分岐路を有する干渉計には、光を正確に分割することが困難であるという欠点がある。うまく組み立てられていない場合、Y字路の重大な対称性は、干渉計を、変調度が低減され、検出感度を損失したものとする傾向がある。
【0004】
また、高い検出感度は、比較的薄い導波路でのみ得られる。検出感度は、導波路に接合された検体、すなわち導波路に接触している検体への、導波路のエバネセント場の侵入深さによって決まる。導波路の厚みが減少した場合、侵入深さは著しく増える。これは、薄い導波路の導波路伝播モードの強度分布と従来の光源の強度分布との間の不一致により、光結合が困難になる。
【0005】
2つの分岐路の干渉光の間の初期位相シフト調整は、さらなる技術的で工学的な努力を必要とする。
【0006】
上述した問題は、バイモーダル導波路干渉計を用いることで部分的に解決することができる。2つの伝播モードの干渉を用いて動作する装置の一例が、特開2004−145246号に示されている。この装置は、バイモーダル導波路が後続する単一モード導波路からなり、その次には別の単一モード導波路が後続する。
【0007】
特開2004−145246号に記載された構造の動作原理は、平面型バイモーダル導波路における2つの伝播モードの干渉に基づく。図5はこのような導波路を示す。物理的構造は3次元であるが、特性の観点からすると構造は2次元である。光伝播の方向である縦方向(図5ではX軸)において、構造体は、縦軸に沿った厚みの変化を決定する段又はリブ500を有する。横断方向(図5ではY軸)において、導波路材料の特性(すなわち屈折率)が変化する。横方向(図5ではZ軸)において、この横方向に沿って特性が変化しないため、導波路構造は一様である。従って、構造体は2次元である(伝播の観点からすると、前後面及びそれとは別の左右面を有する)。
【0008】
しかし、特開2004−145246号の装置の寸法は、クラッド層の屈折率の極めて小さい変化を検出可能な細長い干渉計の製造を阻む。
【0009】
伝播モードの干渉を用いて動作する装置の別の例は、G.Coppola et al.“Temperature Optical Sensor Based on all Silicon Bimodal Waveguide”に示されており、干渉パターンの生成に横モードが含まれる。この装置は、従来のフォトリソグラフィを用いて作製することができる。
【0010】
それにもかかわらず、装置の精密な実装には、横方向における干渉計形状の正確な制御が強く求められる。装置の横方向形状の制御は、従来のマイクロエレクトロニクス技術を用いた複雑なものである。
【0011】
実際、特開2004−145246号やG.Coppola et al.における装置の構造は、モード励起や干渉信号の読み取りのために設計された連続導波路構造を示す。これは装置の検出感度や汎用性に制約をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−145246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、構造が変化する時に、2つの伝播モード間の異なる相対位相遅延を累積するバイモーダル導波路構造をもたらす。また、本発明は、伝播モード分布がモード次数感度であるバイモーダル導波路を有する光学導波路干渉計に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、基板と、前記基板上に堆積された少なくとも1つの層を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路と、前記バイモーダル導波路の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板と、を備える平面型光学導波路干渉計に関する。前記バイモーダル導波路は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段を有し、横モードをサポートするように設計されている。
【0015】
前記干渉計は、光を前記バイモーダル導波路に導く電磁放射源を備えることが好ましい。この電磁放射源はレーザであることがさらに好ましい。
【0016】
前記電磁放射源は基板の構造に集積されていてもよい。
【0017】
特定の実施形態においては、前記干渉計は、偏光手段を備える。
【0018】
前記干渉計は、焦点調節手段を備えていてもよい。特定の実施形態においては、前記焦点調節手段はレンズである。この場合、前記レンズの中心軸はバイモーダル導波路の縦方向対称軸に対して横断方向にずれており、光源からの光が前記レンズを介してバイモーダル導波路に対して直接焦点調節される時に、第1及び第2の横断伝播モードはバイモーダル導波路内に励起される。
【0019】
特定の実施形態においては、前記干渉計は、前記バイモーダル導波路の一端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする入力導波路と、前記バイモーダル導波路の他端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする出力導波路と、を備える。前記入力導波路及び出力導波路の各々の厚さは、前記バイモーダル導波路より薄く、前記入力導波路及び前記バイモーダル導波路の接合箇所における構造の非対称性により、前記単一モードが前記第1及び第2の横断伝播モードに分岐する。前記干渉計は、電磁放射を前記バイモーダル導波路に結合する手段を備えていてもよく、当該手段はエンドファイヤ、ダイレクト焦点調節、プリズム結合及び回折格子結合から選択される。出力導波路に結合される光の量は、バイモーダル導波路と出力導波路との間の接合箇所に存在する強度分布に依存する。
【0020】
別の実施形態では、前記干渉計は、前記バイモーダル導波路を、異なる入射角を有する光の1次モード及び2次モードに結合する結合手段を備える。前記結合手段は、前記バイモーダル導波路の入力に結合された回折格子であってもよい。
【0021】
前記バイモーダル導波路は、少なくとも2つの層を有することが好ましい。この場合、各層は異なる屈折率を有する。第2の層の屈折率は第1の層の屈折率より低い。
【0022】
0次モードの有効屈折率及び1次モードの有効屈折率は大きく異なる。横断伝播モードの異なる散乱は前記導波路のパラメータの伝播速度に依存する。
【0023】
前記干渉計は、前記導波路の出力において前記入力刺激による放射強度の変化を測定する検出手段を備えていてもよい。特定の実施形態においては、前記検出手段は2次元フォトディテクタである。
【0024】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの上述した平面型光学導波路干渉計を備えるチップに言及する。
【0025】
本発明の別の態様は、上述した平面型光学導波路干渉計を備えるセンサに言及する。
【0026】
最後に、本発明は、(a)光学導波路干渉計のバイモーダル導波路の決定領域にセンサ板を規定する工程と、(b)前記センサ板に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激を与える工程と、(c)前記センサ板に変化を導入又は引き起こす工程と、(d)電磁放射の0次モード及び別の1次モードがバイモーダル導波路で規定されるセンサ板を通過する時に、これら両モードが前記刺激における変化に依存する位相遅延を受けるように、両モードを前記バイモーダル導波路に結合する工程と、(d)電磁放射の前記0次モードおよび1次モードを前記バイモーダル導波路に結合し、これにより両モードが前記バイモーダル導波路で規定される前記センサ板を通過するときに、前記刺激における変化に依存する位相遅延が生じ、(e)前記導波路の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程と、(f)両モードの前記相対応答を前記刺激における変化に対して関連付ける工程と、を備える検出方法に関連する。
【0027】
前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程は、干渉縞のパターンを生成する工程と、干渉パターンの変位を測定する工程と、を有することが好ましい。さらに、前記両モードの前記相対応答を前記刺激における変化に対して関連付ける工程は、干渉パターンにおける変位を決定された前記刺激における変化の存在に関連付ける工程を有する。
【0028】
提案された発明の利点は後に続く説明で明らかになるであろう。
【0029】
説明を完成させ、本発明をより理解するために、一連の図面が備えられている。図面は説明に不可欠であり、本発明の好ましい実施形態を示し、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでなく、本発明をどのように具現化するかの一例に過ぎない。図面は以下の図を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1b】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1c】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1d】本発明による光学導波路干渉計における横断方向の伝播モードの強度分布の一例を示す図である。
【図2a】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図2b】図2aの実装例を示す図である。
【図3】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図4】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図5】2次元平面導波路の従来技術を示す図である。
【図6】本発明による“横断”と“横”の意味が説明される導波路を示す図である。
【図7】本発明による“横断”と“横”の意味が説明される導波路を示す図である。
【図8】本発明の干渉計の出力において検出される信号の2つのシミュレーションを示す図である。
【図9】クラッド層の屈折率が本発明による2つのモードの伝播定数にどのように影響するかを表すシミュレーションを示す図である。
【図10】本発明による検出感度とクラッド層の屈折率の対比を示す図である。
【図11】本発明によるセンサの組み立て例の概略図である。
【図12a】異なる状況における図11のセンサの応答を示す図である。
【図12b】異なる状況における図11のセンサの応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明においては図面が考慮される。
【0032】
図6に示されるように、電磁放射の光ビームの“横断(transverse)モード”は、光ビームの伝播方向に対して直角を成す平面(平面1又はYOZ面)と、導波路構造に対して直角を成し伝播方向に沿った平面(平面2又はXOY面)とによって形成される線に沿って測定される放射の決定された強度パターンである。本発明の文脈では、“垂直(vertical)”という用語は、“横断(transverse)”の同義語とみなす。
【0033】
図7に示されるように、電磁放射の光ビームの“横(lateral)モード”は、光ビームの伝播方向及び平面(平面3又はXOZ面)に対して直角を成し、導波路構造に対しても直角を成す平面(平面1又はYOZ面)によって形成され、伝播方向に沿った線に沿って測定される放射の一定の強度パターンである。本発明では、“水平(horizontal)”という用語は、“横(lateral)”の同義語とみなす。
【0034】
横断モード及び横モードはTE(transverse electric)モード及びTM(transverse magnetic)モードに分けられる。TEモードは伝播方向に電場を持たず、一方、TMモードは伝播方向に磁場を持たない。
【0035】
導波モードの“分散”は、導波路及び周囲の層のパラメータに対する前記モードの伝播速度の依存度である。
【0036】
“検体”は、本発明の干渉計及びセンサにより検出される物質を含有する溶液である。
【0037】
本発明は以下のようにして実行できる。
【0038】
図1aは、本発明の2つのモードをサポートする単一光学導波路10の概略を示す。導波路10がサポートできる2つのモードは横断モード(TE又はTM)、すなわち、基本TEモード又は基本TMモード及び1次TEモード又は1次TMモードである。2つの横モードを選択できるが、2つの横モードに限定する構造によってもたらされる上述の欠点を克服するために、2つの横断モードに限定する構造が選択、設計される。
【0039】
この光学導波路10は干渉計の機能を果たす。光学導波路10は、基板8上に薄層状に堆積された少なくとも1つの光透過性材料の層2を有する。導波路10は、基板8上に薄層状に堆積された光透過性材料の複数の層1、2、3を有することが好ましい。層2は、隣接する層1、3よりも屈折率が高い。従って、この場合、光学導波路10は光学スラブ導波路である。導波路は単一層を持ち得る。後述するように、(唯一の層になり得る)上層の上方に堆積された検体が導波路10上に位置する層(カバー層)を形成するため、基板上方の1つの層1で十分である。従って、異なる屈折率の領域を有する構造を光が通過することによる干渉計の動作原理が実行され、前記2つの領域は、(基板8に支持された)単分子層導波路10と、その上に堆積された検体又はカバー層である。複数の層1、2、3は構造を最適化するために用いられる。
【0040】
導波路10は、横方向に光を閉じこめることができる閉じこめ手段を有する。この閉じこめ手段9により、導波路は少なくとも1つの横モードをサポートできる。
【0041】
完全な導波路を持つ理想的な状況では、横断方向の閉じこめが備えられ、比較的幅広い(例えば約1mm)横分布の光ビームがほぼ分岐せずに伝播することが分かる。これは、横断方向に数mm伝播した後、光ビームが約1mmの同じ幅を維持することを意味する。この場合、リブ(rib)やリッジ(ridge)は必要ない。しかし、幅広い光ビームは、1つの同じチップ上に多くの導波路を集積して配置するという意味で、導波路を大きく非実用的なものとする。これらの導波路を伝播する幅の狭い(約100μm未満の幅の)光ビームは大きく発散する、すなわち、横断方向に数ミリメートル伝播した後、光ビームは分岐し、横方向に数ミリメートル拡がる。これは、装置を非実用的にする。言い換えれば、実際には、単純な平面構造を用いる場合、横方向の単一モード動作は極めて困難である。同様に、導波路を長くするほど、横方向の単一動作モードを維持することが困難になる。このような理由で、例えばリブやガイド等の閉じこめ手段が必要になる。
【0042】
また、横方向の単一モード動作は、センサとして働く時に干渉計のモデリングを容易にし、その振る舞いを予測可能にする。
【0043】
閉じこめ手段9の限定されない例は、リブ、リッジ又は傾斜である。従って、適切な導波路は、リブ、リッジ、傾斜又は他の導波路構造である。従って、導波路10は、入射電磁放射が、導波路10の長さにより示される方向、すなわち光源4から出ている矢印によって示される方向に伝播することを可能にする。導波路10は、モードが横方向及び横断方向に閉じこめられるように、長方形の導波路であることが好ましい。導波路が長方形であるという事実は、伝播方向に対して直角を成す平面において導波路が必ず長方形の断面を有するということを意味しない。一方、導波路断面は、リブ導波路構造を形成する小さい段(ステップ)を有してもよい。
【0044】
特定の実施形態において、導波路10はリブ型導波路である。これは図1aに示され、導波路は、(図5の図解によれば)横方向にリブ9を有する。このリブ9は、導波路10の厚みが前記横方向に沿って変化することを示す。図1bは、別の視点からの、リブ9を有する同じ導波路10を示す。図1cの参照番号19は別のタイプの導波路10を示す。図1bでは、縦方向(光伝播方向)のX、横断方向のY及び横方向のZ、の3つの伝播方向が示されている。
【0045】
図に示すように、本発明の構造は光伝播方向に関して一様であり、一方、特開2004−145246号に開示されている構造は横方向に一様又は均一である。
【0046】
図1a〜1cに示されていないが、その構造は、通常のフォトリソグラフィ及びウェットエッチングを用いて、導波路の表面の上方に形成されたセンサ板又は領域も有する。このセンサ板は図2〜4に示されている。
【0047】
この2D構造の利点の1つは、導波路が単一モード光を、光分岐無しに横方向に数センチメートル閉じこめる(従って光を伝播できる)ことである。以下の理由により、横方向の単一モード動作が求められる。第1に、導波路が干渉計又はセンサとして使用されるとき、導波路の端部において生成される干渉パターンの制御における曖昧さを避けるのに役立つ。第2に、2次元構造(すなわちリブ、リッジ等)によってのみ実装できる細い導波路が、センサ領域をミリメートル四方のごく一部に配列することを可能にする。センサ領域は約0.05mm2から約1mm2まで変わることができる。一例として、長さ15mm、幅0.01mmの導波路は、0.15mm2の面積を有する。
【0048】
本発明の装置において、検出感度は極めて重要である。検出感度はセンサ板もしくは領域の長さ、又はバイモーダル導波路の長さに比例するため、その構造は、導波路干渉計としての機能を果たすために、十分長い必要がある。従って、その構造の長さは、0.5cmと5cmとの間くらいの範囲が好ましい。
【0049】
図1cは、設置された導波路により形成された導波路10が設置によりどのように設計されたかを示す。参照番号18は、導波路19が埋め込まれる領域を示す。この領域18では屈折率が変化する。前記導波路は、横断方向及び横方向の屈折率について空間的変化がある一方で、幾何学的には平面スラブ構造を維持する。
【0050】
光源4からの光は、層2を照射するように導波路10の入力端へ伝送される。光源4は、可視領域又は近赤外領域に含まれる波長を持つ光を供給することが好適であり、前記範囲は約400nmから1600nmの間である。光源4はレーザが好ましい。
【0051】
2つの横断方向伝播モードは等しく励起され、導波路10の長さを通過し、異なる位相遅延を累積する。導波路10の出力端6では、光は端部表面からスクリーン又は計測装置7へ放射される。強度分布は累積された相対位相遅延を示す。計測装置の限定されない例は、1つ以上のフォトダイオードなどの検出器である。2つ以上のフォトダイオードが用いられる場合は、例えば2次元フォトダイオードアレイ又はCCDカメラなどのように、フォトダイオードはアレイ状に配置される。
【0052】
既に説明され、図1aに示された要素は平面光学導波路干渉計15を形成する。
【0053】
2つの横断モードは、入射電磁放射の波長又は局所的環境における変化に対する測定可能な相対応答を呈示することができる。層1の屈折率が変化した場合、異なる相対位相遅延が累積し、それに応じて強度分布が修正される。光学導波路横断モードは、層1、2、3間に分布し、場合によっては導波路構造10の基板8を貫いて分布する電界を有する。層1、2、3に含まれる電力の相対量は、導波モードの“有効屈折率”を決定する。同様に、モードの有効屈折率は、そのモードの伝播速度を決定し、それゆえ、モードが導波路10を通過するにつれて累積される位相遅延の範囲を決定する。層1、2、3の屈折率が変化した場合、電界分布も変化し、その結果、有効屈折率に変化が起きる。モードの散乱特性が異なる場合、有効屈折率の変化はかなり大きくなる。基本モード及び1次モードの伝播定数は、上層又はカバー層の屈折率に依存する。既に説明したように、光学導波路が干渉計の機能を果たし、検体が上層1の上方に堆積された場合、検体はカバー層として働く。言い換えれば、各モードで散乱(すなわち、伝播定数の屈折率への依存性)が異なることが必要である。導波路の端部における両モードの干渉パターンは、組み合わされた層の屈折率に依存し、それゆえ、検体溶液屈折率に依存する。
【0054】
図1dは、横断方向における伝播モードの強度分布の一例を示す。横断方向の距離はX軸にnmで示される。電界の正規化された強度(大きさは応答や形ほど重要でない)はY軸に示される。図1dにおいて、参照番号11は基本モードの強度の分布を示す。参照番号12及び13は、1次モードの強度の分布を示す。図1dから分かるように、分散効果は、両モードの著しく異なる電力分布によるものである。
【0055】
光学干渉計を形成する光学導波路構造10は、従来の材料を適切に組み合わせたものを用いて好適に製造することができる。従来の製造方法の例は、プラズマ支援化学気相成長(PECVD)や低圧化学気相成長(LPCVD)などの化学気相成長(CVD)に基づくものである。
【0056】
化学気相成長(CVD)は、例えば薄膜等の、高純度で高性能な固形物を作り出すために用いられる化学的方法である。典型的なCVDプロセスでは、ウェーハ(基板)は、所望の堆積物を作り出すために基板表面にて反応及び/又は分解する1つ以上の揮発性前駆体に曝される。微細加工プロセスは、単結晶、多結晶、非結晶及びエピタキシャル形態を含む様々な形態で材料を堆積するために、CVDを幅広く使用する。これらの材料は、シリコン、カーボンファイバ、フィラメント、カーボンナノチューブ、SiO2、シリコンゲルマニウム、タングステン、炭化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン及び様々な高誘電率(high−k)誘電体を含む。
【0057】
例えば、厚さが一定(典型的には0.3ミクロンと0.5ミクロンとの間の範囲)の酸窒化シリコン光学導波路の屈折率は、1.457と2.00との間の範囲のどのレベルでも選択可能である。
【0058】
好ましくは、第1及び第2導波モードは、決定された物理的、生化学的及び/又は化学的刺激における変化の導入によりもたらされる局所的環境の変化に対する測定可能な相対応答を示すことができる。この応答は、モードが局所的環境に及ぶに伴い、モードのエバネセント場によりもたらされる。刺激の変化の導入の一例は、周囲に置かれた物質(例えば検体)の屈折率の変化である。一連の変化として、第1及び第2モードが異なる相対位相遅延を累積し、それにより、測定可能な相対応答をもたらす。
【0059】
これは、局所的環境に導入された検体の物理的、生化学的及び/又は化学的刺激における変化の存在を検出するために平面光学導波路干渉計15が好適に用いられることを意味する。従って、光学導波路干渉計は、化学センサ導波路干渉計又は光学導波路に基づくセンサになる。導波モードに伴う刺激の相互作用の限定されない例は、結合相互作用、吸光度相互作用、その他の相互作用である。例えば、化学的刺激を有する気相又は液相の検体は、光学導波路干渉計の局所的環境に導入し得る。また、前記環境において化学反応が起こり、化学的刺激の性質の変化がその場で起こり、前記環境における変化がもたらされる。
【0060】
センサ層又はセンサ板とも称される局所的環境は、光学導波路10の上層1の領域又は表面であることが好ましい(図1a〜1cには示されていない)。このセンサ層は、吸収剤又は生物活性材料を有してもよい。限定しない吸収剤の例は、ポリシロキサン又はインプリントポリマー等のポリマー材料である。吸収剤は、特定の化学的刺激を含む気体、液体または蒸気を吸収可能である。限定しない生物活性材料の例は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、酵素、DNA断片、RNA、アプタマー、PNA、機能タンパク質、全細胞等を含むものである。生物活性材料は、液相又は気相における検出に適している。
【0061】
干渉パターンは、電磁放射が導波路10に沿って伝播した時に、(干渉計として機能する)バイモーダル導波路10の内側に生成される。局所的環境又はセンサ板に位置する刺激の既に説明した変化、又は波長の変化、は干渉パターンの相対位相シフトから算出できる。前記変化に対する測定可能な感度は、干渉パターンの縞の変位により表される。干渉計内の放射の相対位相シフトは、縞模様における前記変位を測定することで、算出できる。導波路10の出力6において、電磁放射は自由空間に連結される。従って、干渉パターンは、(例えば、放射強度の変化を測定する単一の検出器7を使用したり、このような検出器7を複数使用して、複数の縞又は干渉パターン全体において発生する変化を観測するといった)従来の手法により記録できる。このような検出器7は、1つ以上の光検知器であることが好ましく、2つ以上の光検知器を用いる場合は、2次元フォトダイオードアレイのように、アレイ状に配置することが好ましい。
【0062】
図1aに示すように、光源4からの光は、導波路10の入力端5において焦点が合わせられ、電磁放射の形態で伝播し、異なる方法で第1及び第2導波モードに結合される。
【0063】
特定の実施形態では、導波路10の面5の端部により、放射は導波路10に単純に連結される。これは“エンドファイア型手段”ともいう。この場合、光源(例えばレーザ)は、共通の基板8上において、積層構造1、2、3と統合される。基板8の限定しない例は、リン酸インジウム及びシリコン基板である。
【0064】
また、干渉計15は、入射電磁放射を導波路10の第1(基本)導波モード及び第2(1次)導波モードに結像するその他の結合手段を有する。両方のモードのこの結合は、ほぼ同時に行われる。エンドファイアとは別の、結合手段の限定しない例は、(例えばHeNeレーザによる)ダイレクト焦点調節、プリズム結合、回折格子結合又はミラー結合である。
【0065】
入射光又は入射電磁放射は、適当な偏光手段を用いて、所望の通りに配向させてもよい(例えば直線偏光)。偏光手段の限定しない例は、偏光キューブビームスプリッタ、直線偏光子及びワイヤグリッド偏光子である。
【0066】
入射光又は入射電磁放射は、焦点調節手段を用いて焦点を合わせてもよい。このような手段の限定しない例は、レンズ、マイクロレンズ及び一連のレンズを有する光学システムである。
【0067】
出力された電磁放射パターンは、投影手段により上述した検出器に対して投影される。投影手段の限定しない例は、対物レンズ、レンズ及びマルチセクション光検知器への直接投影である。
【0068】
次に、バイモーダル光導波路に基づく干渉計及び干渉計に基づくセンサの例を説明する。
【0069】
図2は、図1a、1b及び1cに示されるような1つ以上の層により形成されたバイモーダル導波路20を有する干渉計25の一例を示す。導波路20は、上面に、検体を堆積できるセンサ板21を有する。導波モード(基本モード及び1次モード)は、レーザ源(図2には示されない)からの光の対物レンズ22によるダイレクト焦点調節を用いて、導波路20において励起される。構造の横断方向における屈折率の分布が構造の対称軸に対して対称でない場合、構造は横断方向に非対称と考えられる。構造の対称軸は、光伝播の方向に進み、横断基本モードの電磁場分布の最大強度が位置する場所で光伝播方向に直交する平面と交差する軸である。従って、図5の構造は非対称である。構造が対称でないため、導波層の対称軸に対して、横断方向における対物レンズの中心軸が位置ずれし、0次(基本)モード及び1次モードの両方が励起される。2つの横断モードは異なる速度で伝播し、センサ板21を通過する。導波路20の出力端16で形成される干渉パターンは、対物レンズ29を投影手段及び増幅手段として用いて、2分割フォトディテクタ(TSP)27に投影される。干渉パターンの最大の位置は、励起された波の初期位相及びセンサ板21を通過する検体の屈折率により、屈折率、各層の厚さ、導波路の長さ及び導波路の幅等の他のパラメータ内で規定される。従って、導波路表面に生じた化学的若しくは生化学的反応、又は検体溶液の変化により引き起こされる、(センサ板にて測定される)カバー層の屈折率における変化が現れる。
【0070】
ブロック28は、検体の流れ及び交換を与えるために導波路20に接続可能なマイクロ流体セルの壁である。それらは、本発明の一部ではない。
【0071】
図2bは、図2aの例の実装を示す。導波路断面における光強度の分布が図2中に差し込みで図示されており、図2bに示すように、横断方向における干渉パターンは、導波路の下部又は上部に最大値が位置するように分布される。分布は屈折率2.0(窒化シリコン)、厚さ400nmの導波路に合わせて設計されている。モード間の位相差は、一方の曲線から他方の曲線までにπラジアン変動する。所定の状況では、フォトディテクタの上部に集められるエネルギーと下部に集められるエネルギーとの間の差分は、−17dBに達し得る。出力強度は、入力部において導波路に結合する光の量に比例する。導波路での吸収が一定の場合、出口における光のパワーの合計は、出力ファセットからの反射による変化を除く入力において結合されるパワーに比例し、シミュレーションによれば、干渉パターンの動きに伴いわずかに変化する。反射率変化の作用が知られている場合、結合効率の変動による曖昧さを減少可能である。2分割フォトディテクタ(TSP)を用いた監視は、バイモーダル導波路(BiMW)を励起する光の分布における総パワー及びシフトを同時に登録するためである。
【0072】
図3は、図1a、1b及び1cに示されるような1つ以上の層から形成された、バイモーダル導波路30を有する干渉計35の一例を示す。バイモーダル導波路30は、その上面に、検体が堆積可能なセンサ板31を有する。干渉計35は、前記導波路30の両端に、単一モード導波路31、32を有する。入力導波路31及び出力導波路32は共に、横断方向及び横方向において単一モードである。単一モード箇所31、32とバイモーダル箇所30とで唯一異なるパラメータは厚さである。これは、これら2つの導波路31、32の厚さが、バイモーダル導波路30の厚さ未満であることを意味する。光は、エンドファイア、ダイレクト焦点調節、プリズム結合、回折格子結合等の従来の結合手段により、入力導波路32に結合される。図3の干渉計35において使用される特有の結合手段は、焦点調節レンズ34によるダイレクト焦点調節である。入力導波路32−バイモーダル導波路30の接合点では構造が非対称であるため、基本モード(入力導波路32を伝播する唯一のモード)はバイモーダル導波路30において2つのモード、基本モード及び1次モード、に分岐する。モード増幅間の比率は、構造の形状、より詳細には導波路32、30、31の厚さ、により決定される。波長厚さの最適化は、従来のモデリング方法に基づいて解決される工学的課題である。出力導波路33に結合される光の量は、バイモーダル導波路30−出力導波路33の接合点における強度分布に依存する。この例では、フォトダイオードなどの従来の光検知器37により、出力導波路33からの出力信号の読み取りが行われる。出力干渉パターンは、投影手段として対物レンズ39を用いて、前記光検知器37に投影される。
【0073】
図4は、基板48上に堆積されたバイモーダル導波路40を有する干渉計45の一例を示す。バイモーダル導波路40は、その上面に、検体が堆積可能なセンサ板41を有する。光は、バイモーダル導波路40上に載置又は統合された回折格子結合器42によりバイモーダル導波路40に結合される。基本モード及び1次モードは、(図4には示されない)単一光源からの光ビーム(例えばレーザ)により励起され、各モードの位相整合条件に対応した異なる入射角θ0、θ1で回折格子結合器42に向かう。両モードは回折格子結合器42により回折され、バイモーダル導波路を伝播する。
【0074】
既に説明したように、検出感度はセンサ板の長さ又はバイモーダル導波路の長さに正比例する。次に、図2bの装置の検出感度の分析を行う。
【0075】
転送行列アプローチが用いられる場合、シリカ基板(屈折率1.46)上の屈折率2.0(窒化シリコン)及びクラッド層の可変屈折率と共に、導波路の各モードについての光強度の分布が生成される。そして、導波路出口における干渉パターンの分布及び光検知器部分により生成される対応信号が、モード間の位相シフトの関数として算出される。光検知器部分により生成される信号は、以下の式により、出力信号の相対変化Srに再計算される。
【数1】
Uup、Udownはそれぞれ光検知器の上部、下部により生成される信号である。図8にシミュレーション(Srに対する位相シフト)の結果を示す。全ての計算は波長632.8nmに対して行われた。モードの振幅は統一のため予め正規化された。厚さ400nmの導波路についての曲線(実線)は、厚さ300nmの導波路についての曲線(破線)より少し急峻である。なぜなら、薄い導波路に対して、導波モードの非対称分布が強くなるためである。しかし、厚さ300nmの導波路の4/πと厚さ400nmの導波路の4.3/πとで、曲線傾斜間の差は目立つものではない。
【0076】
距離Lに到達するまで伝播するモードを伴う一様なバイモーダル導波路及び導波路の出口を考慮すると、装置の検出感度、すなわち出力信号に発生する変化とクラッド層の屈折率に発生する変化との関係、は以下の式で表される。
【数2】
nclはクラッド層の屈折率を示し、φは両モードの位相差である。
【0077】
距離L以降のクラッド層の屈折率の変化による位相差は以下のように表される。
【数3】
Lはセンサ板の長さ、λは波長、Δn0eff、Δn1effは、クラッド層の屈折率の変化による、0次モード、1次モードそれぞれの有効屈折率の変化である。式(2)に式(3)を代入すると、装置の検出感度を表す以下の式が得られる。
【数4】
【0078】
クラッド層の屈折率は、基本モードの伝播定数n0eff及び1次モードの伝播定数n1effに異なって影響する。微分係数∂n1eff/∂ncl、∂n0eff/∂nclは、図9において、クラッド層の屈折率の関数として示されている。破線は基本モードに対応し、実線は1次モードに対応する。導波路の厚さは、□が300nm、○が350nm、Δが420nm、∇が470nmに対応する。導波モードがクラッド層により深く侵入するほど、両モードに対する有効屈折率の変調がより大きくなることが明らかである。モードの侵入は導波路の厚さに反比例し、nclに正比例する。図9に示される両モードについての微分係数は、クラッド層の屈折率の増加に伴い、増加する。しかし、1次モードの伝播定数は、クラッディング屈折率の変化に強く影響を受ける。微分係数間の差は特に重要であり、その結果、薄い導波路において検出感度はより高くなる。例えば、厚さ300nmの導波路では、検出感度が、厚さ470nmの導波路の3倍になり得る。
【0079】
単位屈折率あたりの位相シフトの観点から表される検出感度は、図9及び式(3)に示される。従って、厚さ300nm、長さ10mmの導波路において、nclが約1.34の時、クラッド層の屈折率が6×10−34RIU(Reflactive Index Unit:屈折率単位)変化した場合、2πの位相変化に到達し得る。
【0080】
図10では、式(4)により算出された検出感度Sensが、4つの異なる導波路の厚さに対応したクラッド層の屈折率に対してプロットされ、□が300nm、○が420nm、△が420nm、▽が470nmを示す。検出感度は、クラッド層の単位屈折率変化当たりの出力信号における変化である。長さ10mmの導波路を仮定して計算が行われた。このパラメータは、干渉パターンにおける変化を区別するために検出回路に許容されるノイズレベルを規定する。厚さ400nm未満の導波路を用いる場合、出力信号の読み取りには1%の精度で十分であることが観察できる。提案された装置の検出感度は、シリコン技術によって製造された統合MZIの検出感度と同程度である。
【0081】
準備の一例を以下に示す。一面が研磨されたシリコンウェーハは高温酸化に曝される。このプロセスにより、ウェーハの両面(素子が配置され導波路を形成する面と、裏面)に厚さ約2μmのシリコン酸化物の層が形成される。LPCVD技術により、素子面及び裏面の両方に厚さ約400nmのシリコン窒化物の層が形成される。ウェーハの表面に、PECVDシリコン酸化物の層が堆積される。従来のフォトリソグラフィ及び緩衝フッ酸(HF)におけるウェットエッチングを用いて、表面で導波路がパターン加工される。酸化プラズマを用いてフォトレジストが除去される。シリコン酸化物マスクを除去し、同時にシリコン窒化物上にリブを形成するのに十分な時間、ウェーハがHF溶液に浸漬される。選択的エッチングが使用される(PECVD酸化物の厚さがリブ高さに比例して選択される)。(シリコン窒化物の)エッチングの選択性は、(濃度10%のHFに類似した)SiOエッチング溶液を用いてエッチングした場合、約1000/14である。この技術は、高さ約4nm、幅約4μmのリブ導波路の製造を可能にする。この結果得られる導波路は2つの横断モードをサポートする。従って、それは基本モード及び1次モードを有するバイモーダルである。そして、シリコン酸化物の層が保護層として素子面に堆積される。標準的なフォトリソグラフィ及びSiOエッチング溶液におけるウェットエッチングにより、導波路の表面にセンサ板が形成される。
【0082】
現在の実験では、横方向に単一モードをサポートする幅3μmの導波路が用いられた。ウェーハは、チップにダイスカットされ、導波路の端面を研磨するためにチップが研磨される。チップはアルミニウム基部に搭載され、導波路を流れる検体を提供するためにチャネルを有するポリメチルメタクリレート(PMMA)マイクロ流体ヘッダに覆われる。センサ板の長さLは3mmである。
【0083】
次に、本発明によるバイモーダル光学導波路に基づくバイオセンサを説明する。検体屈折率変化の検知の実験は、グリセリン水溶液をチャネルへ注入することにより行われる。実験設備の概略図を図11に示す。流れは蠕動ポンプにより供給される。光はHe−Neレーザ4’から対物レンズ52を介して焦点調節されて導波路20’に照射される。この場合、レーザは10mWのHeNeレーザであり、ビーム拡大器を有する。導波路に対する対象物の縦方向におけるわずかな配置のずれは、両モードを同時に励起することを許容する。光はもう1つの対物レンズ29’に集められ、導波路ファセットの像はTSP27’に投影された。純水がセンサ板51を通過する間、信号は安定化された。バルブ53は、流れを、検体と共に又は検体無しに、センサ板51によりマイクロ流体セル内を通過するチャネルへ向けるために使用される。そして、異なる3つの密度を持ち、屈折率1.3356、1.337及び1.39を持つ溶液がチャネルへ注入された。図12a及び図12bでは、出力信号の時間変化が示される。実験は異なるサンプルで異なる回数行われ、振幅変調及び検出感度は実験によって異なる。グリセリンの高濃度溶液(44%、屈折率1.39)の注入は、強い位相変化及び18π振動をもたらす(図12a参照)。グリセリンの低濃度溶液(2.2%又は3.3%、それぞれ対応する屈折率が1.3356、1.337)の注入は、弱い位相変化及びそれぞれほぼπ及び2πの振動をもたらした(図12b参照)。
【0084】
実験結果を分析し、純水の屈折率を1.333と仮定すると、0.006クラッドRIU変化当たりの約2πの位相変化が観察される。最も感度の高い場所での曲線傾斜は10−4RIU当たり約0.06である。その後、10−6RIUの値の変動を検出するために、出力信号の絶対値の測定において6×10−4(0.06%)の精度が要求される。出力信号の安定度は大きさと同程度である。センサ板の長さを10mmと仮定すると、検出感度は10−6RIU変化当たり0.002である。理論的に予測される検出感度と実験で証明された検出感度との間には違いがあるが、それは実験で用いられる結合技術によるものであり、励起されたモード間の適切な大きさの比率を保障できない。言い換えれば、この違いは技術的限界の結果である。
【0085】
本発明は、さらに、局所環境における所定の化学的、生化学的又は物理的刺激の変化の導入(言い換えれば刺激の量又は濃度)を検出する方法を提供する。方法は図1a、1b及び1cに示されるバイモーダル光学導波路において実行される以下のステップを有する。
【0086】
(a)導波路10、20、30、40の上部の局所的環境におけるセンサ板21、31、41を決定する
(b)前記センサ板21、31、41上に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激又は検体を配置する
(c)前記センサ板21、31、41上において化学的、生化学的若しくは物理的な刺激の変化を導入又は引き起こす
(d)電磁放射の基本モード及び1次モードが導波路により規定されるセンサ板21、31、41を通過する時に、前記化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に依存する、例えば位相遅延等の特性の変化を受けるように、両モードを前記光学導波路10、20、30、40に結合する
(e)前記導波路の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記基本モードの応答を測定する
(f)両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける。
【0087】
ステップ(e)は
(e1)干渉縞のパターンを生成する
(e2)干渉パターン内の変位を測定する
を有することが好ましい。
【0088】
ステップ(f)は、
(f1)干渉パターンにおける変位を決定された化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化の存在に関連付ける
を有することが好ましい。
【0089】
結果として、単純な設計のバイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びバイオセンサが提供される。
【0090】
この文章では、“有する(comprise)”という言葉及びその派生語(例えば“comprising”)は、意味を除外するものとして理解すべきでない、すなわち、これらの言葉は、記載及び定義されたものがさらなる要素、工程等を含む可能性を除外するものとして解釈すべきでない。
【0091】
本発明の内容において、大体(around)、約(about)、およそ(approximately)及びほぼ(substantially)並びに同類の言葉(例えば“approximate”)は、前述の言葉が付随する値に極めて近い値を示すものと理解されるべきである。すなわち、厳密な値から妥当な限界に含まれるずれが認められるべきである。なぜなら、当該技術の専門家は、示された値からのそのようなずれは、測定誤差により不可避なものと理解するからである。
【0092】
一方、本発明は、ここで述べた特定の実施形態に限定されないことは明らかであり、添付された請求の範囲に定義された本発明の一般的範囲内で、当業者により考えられる変形例(例えば材料、寸法、構成要素、構造等の選択)にまで及ぶ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学導波路に基づく干渉計及びセンサに関し、特に、バイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ブドウ糖等の分子や分子間の結合を検出することは一般的な課題である。試薬の量や溶液中の分子の濃度は低いことがあり、分子の検出には高感度機器が必要とされる。検出は様々な方法や技術を用いて行うことができる。例えば、マッハツェンダ干渉計、表面プラズモン共鳴、ヤング干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、スラブ干渉計等の様々なナノ機構光学機器が存在する。マッハツェンダ干渉計及びヤング干渉計は光学導波路に基づく小型機器であり、ずっと昔に導入され、よく研究されている。強固な平面構造の単純さが比較的単純な固定化手法の利点を与えるため、今日、これらの技術は分子検出の分野において最も感度のよいものと考えられている。開発された方法やプロトコルは、ラベリング(標識化)せずに分子を結合させることを可能にする。ラベリングは、実結果に干渉し、誤りの原因になるため、これは、実験をより楽に、かつ繰り返し可能にする。一般に、干渉計は2つの分岐路(ブランチ)を有し、一方は、干渉計が検出装置としての機能を果たす時に、センサ板が設けられ、他方は基準(リファレンス)である。センサ板を流れる試薬は、窓内の導波路において予め固定されている分子と相互作用する。これは導波路のクラッド層の屈折率を変化させ、続いて、この導波路に沿った光伝播の速度を変化させる。結果として、2つの分岐路を伝播する光波の間には位相シフトが存在する。これらの波の合成は干渉計のタイプに応じて異なる結果を生み出し、ヤング干渉計の場合は干渉パターンであり、マッハツェンダ干渉計の場合は出力チャネル信号の変化である。
【0003】
しかし、2つの分岐路を有する干渉計には、光を正確に分割することが困難であるという欠点がある。うまく組み立てられていない場合、Y字路の重大な対称性は、干渉計を、変調度が低減され、検出感度を損失したものとする傾向がある。
【0004】
また、高い検出感度は、比較的薄い導波路でのみ得られる。検出感度は、導波路に接合された検体、すなわち導波路に接触している検体への、導波路のエバネセント場の侵入深さによって決まる。導波路の厚みが減少した場合、侵入深さは著しく増える。これは、薄い導波路の導波路伝播モードの強度分布と従来の光源の強度分布との間の不一致により、光結合が困難になる。
【0005】
2つの分岐路の干渉光の間の初期位相シフト調整は、さらなる技術的で工学的な努力を必要とする。
【0006】
上述した問題は、バイモーダル導波路干渉計を用いることで部分的に解決することができる。2つの伝播モードの干渉を用いて動作する装置の一例が、特開2004−145246号に示されている。この装置は、バイモーダル導波路が後続する単一モード導波路からなり、その次には別の単一モード導波路が後続する。
【0007】
特開2004−145246号に記載された構造の動作原理は、平面型バイモーダル導波路における2つの伝播モードの干渉に基づく。図5はこのような導波路を示す。物理的構造は3次元であるが、特性の観点からすると構造は2次元である。光伝播の方向である縦方向(図5ではX軸)において、構造体は、縦軸に沿った厚みの変化を決定する段又はリブ500を有する。横断方向(図5ではY軸)において、導波路材料の特性(すなわち屈折率)が変化する。横方向(図5ではZ軸)において、この横方向に沿って特性が変化しないため、導波路構造は一様である。従って、構造体は2次元である(伝播の観点からすると、前後面及びそれとは別の左右面を有する)。
【0008】
しかし、特開2004−145246号の装置の寸法は、クラッド層の屈折率の極めて小さい変化を検出可能な細長い干渉計の製造を阻む。
【0009】
伝播モードの干渉を用いて動作する装置の別の例は、G.Coppola et al.“Temperature Optical Sensor Based on all Silicon Bimodal Waveguide”に示されており、干渉パターンの生成に横モードが含まれる。この装置は、従来のフォトリソグラフィを用いて作製することができる。
【0010】
それにもかかわらず、装置の精密な実装には、横方向における干渉計形状の正確な制御が強く求められる。装置の横方向形状の制御は、従来のマイクロエレクトロニクス技術を用いた複雑なものである。
【0011】
実際、特開2004−145246号やG.Coppola et al.における装置の構造は、モード励起や干渉信号の読み取りのために設計された連続導波路構造を示す。これは装置の検出感度や汎用性に制約をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−145246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、構造が変化する時に、2つの伝播モード間の異なる相対位相遅延を累積するバイモーダル導波路構造をもたらす。また、本発明は、伝播モード分布がモード次数感度であるバイモーダル導波路を有する光学導波路干渉計に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、基板と、前記基板上に堆積された少なくとも1つの層を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路と、前記バイモーダル導波路の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板と、を備える平面型光学導波路干渉計に関する。前記バイモーダル導波路は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段を有し、横モードをサポートするように設計されている。
【0015】
前記干渉計は、光を前記バイモーダル導波路に導く電磁放射源を備えることが好ましい。この電磁放射源はレーザであることがさらに好ましい。
【0016】
前記電磁放射源は基板の構造に集積されていてもよい。
【0017】
特定の実施形態においては、前記干渉計は、偏光手段を備える。
【0018】
前記干渉計は、焦点調節手段を備えていてもよい。特定の実施形態においては、前記焦点調節手段はレンズである。この場合、前記レンズの中心軸はバイモーダル導波路の縦方向対称軸に対して横断方向にずれており、光源からの光が前記レンズを介してバイモーダル導波路に対して直接焦点調節される時に、第1及び第2の横断伝播モードはバイモーダル導波路内に励起される。
【0019】
特定の実施形態においては、前記干渉計は、前記バイモーダル導波路の一端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする入力導波路と、前記バイモーダル導波路の他端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする出力導波路と、を備える。前記入力導波路及び出力導波路の各々の厚さは、前記バイモーダル導波路より薄く、前記入力導波路及び前記バイモーダル導波路の接合箇所における構造の非対称性により、前記単一モードが前記第1及び第2の横断伝播モードに分岐する。前記干渉計は、電磁放射を前記バイモーダル導波路に結合する手段を備えていてもよく、当該手段はエンドファイヤ、ダイレクト焦点調節、プリズム結合及び回折格子結合から選択される。出力導波路に結合される光の量は、バイモーダル導波路と出力導波路との間の接合箇所に存在する強度分布に依存する。
【0020】
別の実施形態では、前記干渉計は、前記バイモーダル導波路を、異なる入射角を有する光の1次モード及び2次モードに結合する結合手段を備える。前記結合手段は、前記バイモーダル導波路の入力に結合された回折格子であってもよい。
【0021】
前記バイモーダル導波路は、少なくとも2つの層を有することが好ましい。この場合、各層は異なる屈折率を有する。第2の層の屈折率は第1の層の屈折率より低い。
【0022】
0次モードの有効屈折率及び1次モードの有効屈折率は大きく異なる。横断伝播モードの異なる散乱は前記導波路のパラメータの伝播速度に依存する。
【0023】
前記干渉計は、前記導波路の出力において前記入力刺激による放射強度の変化を測定する検出手段を備えていてもよい。特定の実施形態においては、前記検出手段は2次元フォトディテクタである。
【0024】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの上述した平面型光学導波路干渉計を備えるチップに言及する。
【0025】
本発明の別の態様は、上述した平面型光学導波路干渉計を備えるセンサに言及する。
【0026】
最後に、本発明は、(a)光学導波路干渉計のバイモーダル導波路の決定領域にセンサ板を規定する工程と、(b)前記センサ板に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激を与える工程と、(c)前記センサ板に変化を導入又は引き起こす工程と、(d)電磁放射の0次モード及び別の1次モードがバイモーダル導波路で規定されるセンサ板を通過する時に、これら両モードが前記刺激における変化に依存する位相遅延を受けるように、両モードを前記バイモーダル導波路に結合する工程と、(d)電磁放射の前記0次モードおよび1次モードを前記バイモーダル導波路に結合し、これにより両モードが前記バイモーダル導波路で規定される前記センサ板を通過するときに、前記刺激における変化に依存する位相遅延が生じ、(e)前記導波路の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程と、(f)両モードの前記相対応答を前記刺激における変化に対して関連付ける工程と、を備える検出方法に関連する。
【0027】
前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程は、干渉縞のパターンを生成する工程と、干渉パターンの変位を測定する工程と、を有することが好ましい。さらに、前記両モードの前記相対応答を前記刺激における変化に対して関連付ける工程は、干渉パターンにおける変位を決定された前記刺激における変化の存在に関連付ける工程を有する。
【0028】
提案された発明の利点は後に続く説明で明らかになるであろう。
【0029】
説明を完成させ、本発明をより理解するために、一連の図面が備えられている。図面は説明に不可欠であり、本発明の好ましい実施形態を示し、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでなく、本発明をどのように具現化するかの一例に過ぎない。図面は以下の図を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1b】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1c】本発明による光学導波路干渉計の概略図である。
【図1d】本発明による光学導波路干渉計における横断方向の伝播モードの強度分布の一例を示す図である。
【図2a】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図2b】図2aの実装例を示す図である。
【図3】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図4】本発明による干渉計及びセンサの一例を示す図である。
【図5】2次元平面導波路の従来技術を示す図である。
【図6】本発明による“横断”と“横”の意味が説明される導波路を示す図である。
【図7】本発明による“横断”と“横”の意味が説明される導波路を示す図である。
【図8】本発明の干渉計の出力において検出される信号の2つのシミュレーションを示す図である。
【図9】クラッド層の屈折率が本発明による2つのモードの伝播定数にどのように影響するかを表すシミュレーションを示す図である。
【図10】本発明による検出感度とクラッド層の屈折率の対比を示す図である。
【図11】本発明によるセンサの組み立て例の概略図である。
【図12a】異なる状況における図11のセンサの応答を示す図である。
【図12b】異なる状況における図11のセンサの応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明においては図面が考慮される。
【0032】
図6に示されるように、電磁放射の光ビームの“横断(transverse)モード”は、光ビームの伝播方向に対して直角を成す平面(平面1又はYOZ面)と、導波路構造に対して直角を成し伝播方向に沿った平面(平面2又はXOY面)とによって形成される線に沿って測定される放射の決定された強度パターンである。本発明の文脈では、“垂直(vertical)”という用語は、“横断(transverse)”の同義語とみなす。
【0033】
図7に示されるように、電磁放射の光ビームの“横(lateral)モード”は、光ビームの伝播方向及び平面(平面3又はXOZ面)に対して直角を成し、導波路構造に対しても直角を成す平面(平面1又はYOZ面)によって形成され、伝播方向に沿った線に沿って測定される放射の一定の強度パターンである。本発明では、“水平(horizontal)”という用語は、“横(lateral)”の同義語とみなす。
【0034】
横断モード及び横モードはTE(transverse electric)モード及びTM(transverse magnetic)モードに分けられる。TEモードは伝播方向に電場を持たず、一方、TMモードは伝播方向に磁場を持たない。
【0035】
導波モードの“分散”は、導波路及び周囲の層のパラメータに対する前記モードの伝播速度の依存度である。
【0036】
“検体”は、本発明の干渉計及びセンサにより検出される物質を含有する溶液である。
【0037】
本発明は以下のようにして実行できる。
【0038】
図1aは、本発明の2つのモードをサポートする単一光学導波路10の概略を示す。導波路10がサポートできる2つのモードは横断モード(TE又はTM)、すなわち、基本TEモード又は基本TMモード及び1次TEモード又は1次TMモードである。2つの横モードを選択できるが、2つの横モードに限定する構造によってもたらされる上述の欠点を克服するために、2つの横断モードに限定する構造が選択、設計される。
【0039】
この光学導波路10は干渉計の機能を果たす。光学導波路10は、基板8上に薄層状に堆積された少なくとも1つの光透過性材料の層2を有する。導波路10は、基板8上に薄層状に堆積された光透過性材料の複数の層1、2、3を有することが好ましい。層2は、隣接する層1、3よりも屈折率が高い。従って、この場合、光学導波路10は光学スラブ導波路である。導波路は単一層を持ち得る。後述するように、(唯一の層になり得る)上層の上方に堆積された検体が導波路10上に位置する層(カバー層)を形成するため、基板上方の1つの層1で十分である。従って、異なる屈折率の領域を有する構造を光が通過することによる干渉計の動作原理が実行され、前記2つの領域は、(基板8に支持された)単分子層導波路10と、その上に堆積された検体又はカバー層である。複数の層1、2、3は構造を最適化するために用いられる。
【0040】
導波路10は、横方向に光を閉じこめることができる閉じこめ手段を有する。この閉じこめ手段9により、導波路は少なくとも1つの横モードをサポートできる。
【0041】
完全な導波路を持つ理想的な状況では、横断方向の閉じこめが備えられ、比較的幅広い(例えば約1mm)横分布の光ビームがほぼ分岐せずに伝播することが分かる。これは、横断方向に数mm伝播した後、光ビームが約1mmの同じ幅を維持することを意味する。この場合、リブ(rib)やリッジ(ridge)は必要ない。しかし、幅広い光ビームは、1つの同じチップ上に多くの導波路を集積して配置するという意味で、導波路を大きく非実用的なものとする。これらの導波路を伝播する幅の狭い(約100μm未満の幅の)光ビームは大きく発散する、すなわち、横断方向に数ミリメートル伝播した後、光ビームは分岐し、横方向に数ミリメートル拡がる。これは、装置を非実用的にする。言い換えれば、実際には、単純な平面構造を用いる場合、横方向の単一モード動作は極めて困難である。同様に、導波路を長くするほど、横方向の単一動作モードを維持することが困難になる。このような理由で、例えばリブやガイド等の閉じこめ手段が必要になる。
【0042】
また、横方向の単一モード動作は、センサとして働く時に干渉計のモデリングを容易にし、その振る舞いを予測可能にする。
【0043】
閉じこめ手段9の限定されない例は、リブ、リッジ又は傾斜である。従って、適切な導波路は、リブ、リッジ、傾斜又は他の導波路構造である。従って、導波路10は、入射電磁放射が、導波路10の長さにより示される方向、すなわち光源4から出ている矢印によって示される方向に伝播することを可能にする。導波路10は、モードが横方向及び横断方向に閉じこめられるように、長方形の導波路であることが好ましい。導波路が長方形であるという事実は、伝播方向に対して直角を成す平面において導波路が必ず長方形の断面を有するということを意味しない。一方、導波路断面は、リブ導波路構造を形成する小さい段(ステップ)を有してもよい。
【0044】
特定の実施形態において、導波路10はリブ型導波路である。これは図1aに示され、導波路は、(図5の図解によれば)横方向にリブ9を有する。このリブ9は、導波路10の厚みが前記横方向に沿って変化することを示す。図1bは、別の視点からの、リブ9を有する同じ導波路10を示す。図1cの参照番号19は別のタイプの導波路10を示す。図1bでは、縦方向(光伝播方向)のX、横断方向のY及び横方向のZ、の3つの伝播方向が示されている。
【0045】
図に示すように、本発明の構造は光伝播方向に関して一様であり、一方、特開2004−145246号に開示されている構造は横方向に一様又は均一である。
【0046】
図1a〜1cに示されていないが、その構造は、通常のフォトリソグラフィ及びウェットエッチングを用いて、導波路の表面の上方に形成されたセンサ板又は領域も有する。このセンサ板は図2〜4に示されている。
【0047】
この2D構造の利点の1つは、導波路が単一モード光を、光分岐無しに横方向に数センチメートル閉じこめる(従って光を伝播できる)ことである。以下の理由により、横方向の単一モード動作が求められる。第1に、導波路が干渉計又はセンサとして使用されるとき、導波路の端部において生成される干渉パターンの制御における曖昧さを避けるのに役立つ。第2に、2次元構造(すなわちリブ、リッジ等)によってのみ実装できる細い導波路が、センサ領域をミリメートル四方のごく一部に配列することを可能にする。センサ領域は約0.05mm2から約1mm2まで変わることができる。一例として、長さ15mm、幅0.01mmの導波路は、0.15mm2の面積を有する。
【0048】
本発明の装置において、検出感度は極めて重要である。検出感度はセンサ板もしくは領域の長さ、又はバイモーダル導波路の長さに比例するため、その構造は、導波路干渉計としての機能を果たすために、十分長い必要がある。従って、その構造の長さは、0.5cmと5cmとの間くらいの範囲が好ましい。
【0049】
図1cは、設置された導波路により形成された導波路10が設置によりどのように設計されたかを示す。参照番号18は、導波路19が埋め込まれる領域を示す。この領域18では屈折率が変化する。前記導波路は、横断方向及び横方向の屈折率について空間的変化がある一方で、幾何学的には平面スラブ構造を維持する。
【0050】
光源4からの光は、層2を照射するように導波路10の入力端へ伝送される。光源4は、可視領域又は近赤外領域に含まれる波長を持つ光を供給することが好適であり、前記範囲は約400nmから1600nmの間である。光源4はレーザが好ましい。
【0051】
2つの横断方向伝播モードは等しく励起され、導波路10の長さを通過し、異なる位相遅延を累積する。導波路10の出力端6では、光は端部表面からスクリーン又は計測装置7へ放射される。強度分布は累積された相対位相遅延を示す。計測装置の限定されない例は、1つ以上のフォトダイオードなどの検出器である。2つ以上のフォトダイオードが用いられる場合は、例えば2次元フォトダイオードアレイ又はCCDカメラなどのように、フォトダイオードはアレイ状に配置される。
【0052】
既に説明され、図1aに示された要素は平面光学導波路干渉計15を形成する。
【0053】
2つの横断モードは、入射電磁放射の波長又は局所的環境における変化に対する測定可能な相対応答を呈示することができる。層1の屈折率が変化した場合、異なる相対位相遅延が累積し、それに応じて強度分布が修正される。光学導波路横断モードは、層1、2、3間に分布し、場合によっては導波路構造10の基板8を貫いて分布する電界を有する。層1、2、3に含まれる電力の相対量は、導波モードの“有効屈折率”を決定する。同様に、モードの有効屈折率は、そのモードの伝播速度を決定し、それゆえ、モードが導波路10を通過するにつれて累積される位相遅延の範囲を決定する。層1、2、3の屈折率が変化した場合、電界分布も変化し、その結果、有効屈折率に変化が起きる。モードの散乱特性が異なる場合、有効屈折率の変化はかなり大きくなる。基本モード及び1次モードの伝播定数は、上層又はカバー層の屈折率に依存する。既に説明したように、光学導波路が干渉計の機能を果たし、検体が上層1の上方に堆積された場合、検体はカバー層として働く。言い換えれば、各モードで散乱(すなわち、伝播定数の屈折率への依存性)が異なることが必要である。導波路の端部における両モードの干渉パターンは、組み合わされた層の屈折率に依存し、それゆえ、検体溶液屈折率に依存する。
【0054】
図1dは、横断方向における伝播モードの強度分布の一例を示す。横断方向の距離はX軸にnmで示される。電界の正規化された強度(大きさは応答や形ほど重要でない)はY軸に示される。図1dにおいて、参照番号11は基本モードの強度の分布を示す。参照番号12及び13は、1次モードの強度の分布を示す。図1dから分かるように、分散効果は、両モードの著しく異なる電力分布によるものである。
【0055】
光学干渉計を形成する光学導波路構造10は、従来の材料を適切に組み合わせたものを用いて好適に製造することができる。従来の製造方法の例は、プラズマ支援化学気相成長(PECVD)や低圧化学気相成長(LPCVD)などの化学気相成長(CVD)に基づくものである。
【0056】
化学気相成長(CVD)は、例えば薄膜等の、高純度で高性能な固形物を作り出すために用いられる化学的方法である。典型的なCVDプロセスでは、ウェーハ(基板)は、所望の堆積物を作り出すために基板表面にて反応及び/又は分解する1つ以上の揮発性前駆体に曝される。微細加工プロセスは、単結晶、多結晶、非結晶及びエピタキシャル形態を含む様々な形態で材料を堆積するために、CVDを幅広く使用する。これらの材料は、シリコン、カーボンファイバ、フィラメント、カーボンナノチューブ、SiO2、シリコンゲルマニウム、タングステン、炭化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン及び様々な高誘電率(high−k)誘電体を含む。
【0057】
例えば、厚さが一定(典型的には0.3ミクロンと0.5ミクロンとの間の範囲)の酸窒化シリコン光学導波路の屈折率は、1.457と2.00との間の範囲のどのレベルでも選択可能である。
【0058】
好ましくは、第1及び第2導波モードは、決定された物理的、生化学的及び/又は化学的刺激における変化の導入によりもたらされる局所的環境の変化に対する測定可能な相対応答を示すことができる。この応答は、モードが局所的環境に及ぶに伴い、モードのエバネセント場によりもたらされる。刺激の変化の導入の一例は、周囲に置かれた物質(例えば検体)の屈折率の変化である。一連の変化として、第1及び第2モードが異なる相対位相遅延を累積し、それにより、測定可能な相対応答をもたらす。
【0059】
これは、局所的環境に導入された検体の物理的、生化学的及び/又は化学的刺激における変化の存在を検出するために平面光学導波路干渉計15が好適に用いられることを意味する。従って、光学導波路干渉計は、化学センサ導波路干渉計又は光学導波路に基づくセンサになる。導波モードに伴う刺激の相互作用の限定されない例は、結合相互作用、吸光度相互作用、その他の相互作用である。例えば、化学的刺激を有する気相又は液相の検体は、光学導波路干渉計の局所的環境に導入し得る。また、前記環境において化学反応が起こり、化学的刺激の性質の変化がその場で起こり、前記環境における変化がもたらされる。
【0060】
センサ層又はセンサ板とも称される局所的環境は、光学導波路10の上層1の領域又は表面であることが好ましい(図1a〜1cには示されていない)。このセンサ層は、吸収剤又は生物活性材料を有してもよい。限定しない吸収剤の例は、ポリシロキサン又はインプリントポリマー等のポリマー材料である。吸収剤は、特定の化学的刺激を含む気体、液体または蒸気を吸収可能である。限定しない生物活性材料の例は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、酵素、DNA断片、RNA、アプタマー、PNA、機能タンパク質、全細胞等を含むものである。生物活性材料は、液相又は気相における検出に適している。
【0061】
干渉パターンは、電磁放射が導波路10に沿って伝播した時に、(干渉計として機能する)バイモーダル導波路10の内側に生成される。局所的環境又はセンサ板に位置する刺激の既に説明した変化、又は波長の変化、は干渉パターンの相対位相シフトから算出できる。前記変化に対する測定可能な感度は、干渉パターンの縞の変位により表される。干渉計内の放射の相対位相シフトは、縞模様における前記変位を測定することで、算出できる。導波路10の出力6において、電磁放射は自由空間に連結される。従って、干渉パターンは、(例えば、放射強度の変化を測定する単一の検出器7を使用したり、このような検出器7を複数使用して、複数の縞又は干渉パターン全体において発生する変化を観測するといった)従来の手法により記録できる。このような検出器7は、1つ以上の光検知器であることが好ましく、2つ以上の光検知器を用いる場合は、2次元フォトダイオードアレイのように、アレイ状に配置することが好ましい。
【0062】
図1aに示すように、光源4からの光は、導波路10の入力端5において焦点が合わせられ、電磁放射の形態で伝播し、異なる方法で第1及び第2導波モードに結合される。
【0063】
特定の実施形態では、導波路10の面5の端部により、放射は導波路10に単純に連結される。これは“エンドファイア型手段”ともいう。この場合、光源(例えばレーザ)は、共通の基板8上において、積層構造1、2、3と統合される。基板8の限定しない例は、リン酸インジウム及びシリコン基板である。
【0064】
また、干渉計15は、入射電磁放射を導波路10の第1(基本)導波モード及び第2(1次)導波モードに結像するその他の結合手段を有する。両方のモードのこの結合は、ほぼ同時に行われる。エンドファイアとは別の、結合手段の限定しない例は、(例えばHeNeレーザによる)ダイレクト焦点調節、プリズム結合、回折格子結合又はミラー結合である。
【0065】
入射光又は入射電磁放射は、適当な偏光手段を用いて、所望の通りに配向させてもよい(例えば直線偏光)。偏光手段の限定しない例は、偏光キューブビームスプリッタ、直線偏光子及びワイヤグリッド偏光子である。
【0066】
入射光又は入射電磁放射は、焦点調節手段を用いて焦点を合わせてもよい。このような手段の限定しない例は、レンズ、マイクロレンズ及び一連のレンズを有する光学システムである。
【0067】
出力された電磁放射パターンは、投影手段により上述した検出器に対して投影される。投影手段の限定しない例は、対物レンズ、レンズ及びマルチセクション光検知器への直接投影である。
【0068】
次に、バイモーダル光導波路に基づく干渉計及び干渉計に基づくセンサの例を説明する。
【0069】
図2は、図1a、1b及び1cに示されるような1つ以上の層により形成されたバイモーダル導波路20を有する干渉計25の一例を示す。導波路20は、上面に、検体を堆積できるセンサ板21を有する。導波モード(基本モード及び1次モード)は、レーザ源(図2には示されない)からの光の対物レンズ22によるダイレクト焦点調節を用いて、導波路20において励起される。構造の横断方向における屈折率の分布が構造の対称軸に対して対称でない場合、構造は横断方向に非対称と考えられる。構造の対称軸は、光伝播の方向に進み、横断基本モードの電磁場分布の最大強度が位置する場所で光伝播方向に直交する平面と交差する軸である。従って、図5の構造は非対称である。構造が対称でないため、導波層の対称軸に対して、横断方向における対物レンズの中心軸が位置ずれし、0次(基本)モード及び1次モードの両方が励起される。2つの横断モードは異なる速度で伝播し、センサ板21を通過する。導波路20の出力端16で形成される干渉パターンは、対物レンズ29を投影手段及び増幅手段として用いて、2分割フォトディテクタ(TSP)27に投影される。干渉パターンの最大の位置は、励起された波の初期位相及びセンサ板21を通過する検体の屈折率により、屈折率、各層の厚さ、導波路の長さ及び導波路の幅等の他のパラメータ内で規定される。従って、導波路表面に生じた化学的若しくは生化学的反応、又は検体溶液の変化により引き起こされる、(センサ板にて測定される)カバー層の屈折率における変化が現れる。
【0070】
ブロック28は、検体の流れ及び交換を与えるために導波路20に接続可能なマイクロ流体セルの壁である。それらは、本発明の一部ではない。
【0071】
図2bは、図2aの例の実装を示す。導波路断面における光強度の分布が図2中に差し込みで図示されており、図2bに示すように、横断方向における干渉パターンは、導波路の下部又は上部に最大値が位置するように分布される。分布は屈折率2.0(窒化シリコン)、厚さ400nmの導波路に合わせて設計されている。モード間の位相差は、一方の曲線から他方の曲線までにπラジアン変動する。所定の状況では、フォトディテクタの上部に集められるエネルギーと下部に集められるエネルギーとの間の差分は、−17dBに達し得る。出力強度は、入力部において導波路に結合する光の量に比例する。導波路での吸収が一定の場合、出口における光のパワーの合計は、出力ファセットからの反射による変化を除く入力において結合されるパワーに比例し、シミュレーションによれば、干渉パターンの動きに伴いわずかに変化する。反射率変化の作用が知られている場合、結合効率の変動による曖昧さを減少可能である。2分割フォトディテクタ(TSP)を用いた監視は、バイモーダル導波路(BiMW)を励起する光の分布における総パワー及びシフトを同時に登録するためである。
【0072】
図3は、図1a、1b及び1cに示されるような1つ以上の層から形成された、バイモーダル導波路30を有する干渉計35の一例を示す。バイモーダル導波路30は、その上面に、検体が堆積可能なセンサ板31を有する。干渉計35は、前記導波路30の両端に、単一モード導波路31、32を有する。入力導波路31及び出力導波路32は共に、横断方向及び横方向において単一モードである。単一モード箇所31、32とバイモーダル箇所30とで唯一異なるパラメータは厚さである。これは、これら2つの導波路31、32の厚さが、バイモーダル導波路30の厚さ未満であることを意味する。光は、エンドファイア、ダイレクト焦点調節、プリズム結合、回折格子結合等の従来の結合手段により、入力導波路32に結合される。図3の干渉計35において使用される特有の結合手段は、焦点調節レンズ34によるダイレクト焦点調節である。入力導波路32−バイモーダル導波路30の接合点では構造が非対称であるため、基本モード(入力導波路32を伝播する唯一のモード)はバイモーダル導波路30において2つのモード、基本モード及び1次モード、に分岐する。モード増幅間の比率は、構造の形状、より詳細には導波路32、30、31の厚さ、により決定される。波長厚さの最適化は、従来のモデリング方法に基づいて解決される工学的課題である。出力導波路33に結合される光の量は、バイモーダル導波路30−出力導波路33の接合点における強度分布に依存する。この例では、フォトダイオードなどの従来の光検知器37により、出力導波路33からの出力信号の読み取りが行われる。出力干渉パターンは、投影手段として対物レンズ39を用いて、前記光検知器37に投影される。
【0073】
図4は、基板48上に堆積されたバイモーダル導波路40を有する干渉計45の一例を示す。バイモーダル導波路40は、その上面に、検体が堆積可能なセンサ板41を有する。光は、バイモーダル導波路40上に載置又は統合された回折格子結合器42によりバイモーダル導波路40に結合される。基本モード及び1次モードは、(図4には示されない)単一光源からの光ビーム(例えばレーザ)により励起され、各モードの位相整合条件に対応した異なる入射角θ0、θ1で回折格子結合器42に向かう。両モードは回折格子結合器42により回折され、バイモーダル導波路を伝播する。
【0074】
既に説明したように、検出感度はセンサ板の長さ又はバイモーダル導波路の長さに正比例する。次に、図2bの装置の検出感度の分析を行う。
【0075】
転送行列アプローチが用いられる場合、シリカ基板(屈折率1.46)上の屈折率2.0(窒化シリコン)及びクラッド層の可変屈折率と共に、導波路の各モードについての光強度の分布が生成される。そして、導波路出口における干渉パターンの分布及び光検知器部分により生成される対応信号が、モード間の位相シフトの関数として算出される。光検知器部分により生成される信号は、以下の式により、出力信号の相対変化Srに再計算される。
【数1】
Uup、Udownはそれぞれ光検知器の上部、下部により生成される信号である。図8にシミュレーション(Srに対する位相シフト)の結果を示す。全ての計算は波長632.8nmに対して行われた。モードの振幅は統一のため予め正規化された。厚さ400nmの導波路についての曲線(実線)は、厚さ300nmの導波路についての曲線(破線)より少し急峻である。なぜなら、薄い導波路に対して、導波モードの非対称分布が強くなるためである。しかし、厚さ300nmの導波路の4/πと厚さ400nmの導波路の4.3/πとで、曲線傾斜間の差は目立つものではない。
【0076】
距離Lに到達するまで伝播するモードを伴う一様なバイモーダル導波路及び導波路の出口を考慮すると、装置の検出感度、すなわち出力信号に発生する変化とクラッド層の屈折率に発生する変化との関係、は以下の式で表される。
【数2】
nclはクラッド層の屈折率を示し、φは両モードの位相差である。
【0077】
距離L以降のクラッド層の屈折率の変化による位相差は以下のように表される。
【数3】
Lはセンサ板の長さ、λは波長、Δn0eff、Δn1effは、クラッド層の屈折率の変化による、0次モード、1次モードそれぞれの有効屈折率の変化である。式(2)に式(3)を代入すると、装置の検出感度を表す以下の式が得られる。
【数4】
【0078】
クラッド層の屈折率は、基本モードの伝播定数n0eff及び1次モードの伝播定数n1effに異なって影響する。微分係数∂n1eff/∂ncl、∂n0eff/∂nclは、図9において、クラッド層の屈折率の関数として示されている。破線は基本モードに対応し、実線は1次モードに対応する。導波路の厚さは、□が300nm、○が350nm、Δが420nm、∇が470nmに対応する。導波モードがクラッド層により深く侵入するほど、両モードに対する有効屈折率の変調がより大きくなることが明らかである。モードの侵入は導波路の厚さに反比例し、nclに正比例する。図9に示される両モードについての微分係数は、クラッド層の屈折率の増加に伴い、増加する。しかし、1次モードの伝播定数は、クラッディング屈折率の変化に強く影響を受ける。微分係数間の差は特に重要であり、その結果、薄い導波路において検出感度はより高くなる。例えば、厚さ300nmの導波路では、検出感度が、厚さ470nmの導波路の3倍になり得る。
【0079】
単位屈折率あたりの位相シフトの観点から表される検出感度は、図9及び式(3)に示される。従って、厚さ300nm、長さ10mmの導波路において、nclが約1.34の時、クラッド層の屈折率が6×10−34RIU(Reflactive Index Unit:屈折率単位)変化した場合、2πの位相変化に到達し得る。
【0080】
図10では、式(4)により算出された検出感度Sensが、4つの異なる導波路の厚さに対応したクラッド層の屈折率に対してプロットされ、□が300nm、○が420nm、△が420nm、▽が470nmを示す。検出感度は、クラッド層の単位屈折率変化当たりの出力信号における変化である。長さ10mmの導波路を仮定して計算が行われた。このパラメータは、干渉パターンにおける変化を区別するために検出回路に許容されるノイズレベルを規定する。厚さ400nm未満の導波路を用いる場合、出力信号の読み取りには1%の精度で十分であることが観察できる。提案された装置の検出感度は、シリコン技術によって製造された統合MZIの検出感度と同程度である。
【0081】
準備の一例を以下に示す。一面が研磨されたシリコンウェーハは高温酸化に曝される。このプロセスにより、ウェーハの両面(素子が配置され導波路を形成する面と、裏面)に厚さ約2μmのシリコン酸化物の層が形成される。LPCVD技術により、素子面及び裏面の両方に厚さ約400nmのシリコン窒化物の層が形成される。ウェーハの表面に、PECVDシリコン酸化物の層が堆積される。従来のフォトリソグラフィ及び緩衝フッ酸(HF)におけるウェットエッチングを用いて、表面で導波路がパターン加工される。酸化プラズマを用いてフォトレジストが除去される。シリコン酸化物マスクを除去し、同時にシリコン窒化物上にリブを形成するのに十分な時間、ウェーハがHF溶液に浸漬される。選択的エッチングが使用される(PECVD酸化物の厚さがリブ高さに比例して選択される)。(シリコン窒化物の)エッチングの選択性は、(濃度10%のHFに類似した)SiOエッチング溶液を用いてエッチングした場合、約1000/14である。この技術は、高さ約4nm、幅約4μmのリブ導波路の製造を可能にする。この結果得られる導波路は2つの横断モードをサポートする。従って、それは基本モード及び1次モードを有するバイモーダルである。そして、シリコン酸化物の層が保護層として素子面に堆積される。標準的なフォトリソグラフィ及びSiOエッチング溶液におけるウェットエッチングにより、導波路の表面にセンサ板が形成される。
【0082】
現在の実験では、横方向に単一モードをサポートする幅3μmの導波路が用いられた。ウェーハは、チップにダイスカットされ、導波路の端面を研磨するためにチップが研磨される。チップはアルミニウム基部に搭載され、導波路を流れる検体を提供するためにチャネルを有するポリメチルメタクリレート(PMMA)マイクロ流体ヘッダに覆われる。センサ板の長さLは3mmである。
【0083】
次に、本発明によるバイモーダル光学導波路に基づくバイオセンサを説明する。検体屈折率変化の検知の実験は、グリセリン水溶液をチャネルへ注入することにより行われる。実験設備の概略図を図11に示す。流れは蠕動ポンプにより供給される。光はHe−Neレーザ4’から対物レンズ52を介して焦点調節されて導波路20’に照射される。この場合、レーザは10mWのHeNeレーザであり、ビーム拡大器を有する。導波路に対する対象物の縦方向におけるわずかな配置のずれは、両モードを同時に励起することを許容する。光はもう1つの対物レンズ29’に集められ、導波路ファセットの像はTSP27’に投影された。純水がセンサ板51を通過する間、信号は安定化された。バルブ53は、流れを、検体と共に又は検体無しに、センサ板51によりマイクロ流体セル内を通過するチャネルへ向けるために使用される。そして、異なる3つの密度を持ち、屈折率1.3356、1.337及び1.39を持つ溶液がチャネルへ注入された。図12a及び図12bでは、出力信号の時間変化が示される。実験は異なるサンプルで異なる回数行われ、振幅変調及び検出感度は実験によって異なる。グリセリンの高濃度溶液(44%、屈折率1.39)の注入は、強い位相変化及び18π振動をもたらす(図12a参照)。グリセリンの低濃度溶液(2.2%又は3.3%、それぞれ対応する屈折率が1.3356、1.337)の注入は、弱い位相変化及びそれぞれほぼπ及び2πの振動をもたらした(図12b参照)。
【0084】
実験結果を分析し、純水の屈折率を1.333と仮定すると、0.006クラッドRIU変化当たりの約2πの位相変化が観察される。最も感度の高い場所での曲線傾斜は10−4RIU当たり約0.06である。その後、10−6RIUの値の変動を検出するために、出力信号の絶対値の測定において6×10−4(0.06%)の精度が要求される。出力信号の安定度は大きさと同程度である。センサ板の長さを10mmと仮定すると、検出感度は10−6RIU変化当たり0.002である。理論的に予測される検出感度と実験で証明された検出感度との間には違いがあるが、それは実験で用いられる結合技術によるものであり、励起されたモード間の適切な大きさの比率を保障できない。言い換えれば、この違いは技術的限界の結果である。
【0085】
本発明は、さらに、局所環境における所定の化学的、生化学的又は物理的刺激の変化の導入(言い換えれば刺激の量又は濃度)を検出する方法を提供する。方法は図1a、1b及び1cに示されるバイモーダル光学導波路において実行される以下のステップを有する。
【0086】
(a)導波路10、20、30、40の上部の局所的環境におけるセンサ板21、31、41を決定する
(b)前記センサ板21、31、41上に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激又は検体を配置する
(c)前記センサ板21、31、41上において化学的、生化学的若しくは物理的な刺激の変化を導入又は引き起こす
(d)電磁放射の基本モード及び1次モードが導波路により規定されるセンサ板21、31、41を通過する時に、前記化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に依存する、例えば位相遅延等の特性の変化を受けるように、両モードを前記光学導波路10、20、30、40に結合する
(e)前記導波路の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記基本モードの応答を測定する
(f)両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける。
【0087】
ステップ(e)は
(e1)干渉縞のパターンを生成する
(e2)干渉パターン内の変位を測定する
を有することが好ましい。
【0088】
ステップ(f)は、
(f1)干渉パターンにおける変位を決定された化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化の存在に関連付ける
を有することが好ましい。
【0089】
結果として、単純な設計のバイモーダル光学導波路に基づく干渉計及びバイオセンサが提供される。
【0090】
この文章では、“有する(comprise)”という言葉及びその派生語(例えば“comprising”)は、意味を除外するものとして理解すべきでない、すなわち、これらの言葉は、記載及び定義されたものがさらなる要素、工程等を含む可能性を除外するものとして解釈すべきでない。
【0091】
本発明の内容において、大体(around)、約(about)、およそ(approximately)及びほぼ(substantially)並びに同類の言葉(例えば“approximate”)は、前述の言葉が付随する値に極めて近い値を示すものと理解されるべきである。すなわち、厳密な値から妥当な限界に含まれるずれが認められるべきである。なぜなら、当該技術の専門家は、示された値からのそのようなずれは、測定誤差により不可避なものと理解するからである。
【0092】
一方、本発明は、ここで述べた特定の実施形態に限定されないことは明らかであり、添付された請求の範囲に定義された本発明の一般的範囲内で、当業者により考えられる変形例(例えば材料、寸法、構成要素、構造等の選択)にまで及ぶ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(8、28、28、48)と、
前記基板(8、28、38、48)上に堆積された少なくとも1つの層(1、2、3)を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)と、
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板(21、31、41、51)と、
を備え、
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段(9)をさらに有し、横モードをサポートするように設計されていることを特徴とする平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項2】
光を前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)に導く電磁放射源(4、4’)を備えることを特徴とする請求項1に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項3】
前記電磁放射源(4、4’)はレーザであることを特徴とする請求項2に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項4】
前記電磁放射源は基板(8、28、38、48)の構造に集積されることを特徴とする請求項2に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項5】
偏光手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項6】
他の焦点調節手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項7】
前記焦点調節手段はレンズ(22、52)であることを特徴とする請求項6に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25)。
【請求項8】
前記レンズ(22、52)の中心軸はバイモーダル導波路(20、20’)の縦方向対称軸に対して横断方向にずれており、光源からの光が前記レンズを介してバイモーダル導波路(20、20’)に対して直接焦点調節される時に、第1及び第2の横断伝播モードはバイモーダル導波路(20、20’)内で励起されることを特徴とする請求項7に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25)。
【請求項9】
前記バイモーダル導波路(30)の一端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする入力導波路(32)と、
前記バイモーダル導波路(30)の他端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする出力導波路(33)と、
を備え、
前記入力導波路及び出力導波路(32、33)の各々の厚さは、前記バイモーダル導波路(30)より薄く、前記入力導波路(32)及び前記バイモーダル導波路(30)の接合箇所における構造の非対称性により、前記単一モードが前記第1及び第2の横断伝播モードに分岐することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項10】
電磁放射を前記バイモーダル導波路(30)に結合する手段をさらに備え、当該手段はエンドファイア、ダイレクト焦点調節、プリズム結合及び回折格子結合からなる集合から選択されることを特徴とする請求項9に記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項11】
出力導波路(33)に結合される光の量は、バイモーダル導波路(30)と出力導波路(33)との間の接合箇所に存在する強度分布に依存することを特徴とする請求項9又は10に記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項12】
前記バイモーダル導波路(40)を、異なる入射角(θ1、θ2)を有する光の1次モード及び2次モードに結合する結合手段(42)を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(45)。
【請求項13】
前記結合手段(42)は、前記バイモーダル導波路(40)の入力に結合された回折格子であることを特徴とする請求項12に記載の平面型光学導波路干渉計(45)。
【請求項14】
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は少なくとも2つの層を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項15】
第1導波路層は第1屈折率を有し、第2導波路層は第2屈折率を有し、前記第2の層の屈折率は前記第1の導波路層の屈折率より低いことを特徴とする請求項14に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項16】
前記0次モードの有効屈折率及び前記1次モードの有効屈折率は大きく異なることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項17】
前記横断伝播モードの異なる散乱は前記導波路のパラメータの伝播速度に依存することを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項18】
前記導波路の出力において前記入力刺激による放射強度の変化を測定する検出手段(27、27’、37、47)をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項19】
前記検出手段(27、27’、37、47)は2次元フォトディテクタであることを特徴とする請求項18に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項20】
少なくとも1つの、請求項1乃至19のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)を備えるチップ。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)を備えるセンサ。
【請求項22】
(a)光学導波路干渉計(15、25、35、45)のバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の特定領域にセンサ板(21、31、41、51)を規定する工程と、
(b)前記センサ板(21、31、41、51)に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激を与える工程と、
(c)前記センサ板(21、31、41、51)に配置された化学的、生化学的若しくは物理的な刺激の変化を導入又は引き起こす工程と、
(d)電磁放射の0次モード及び別の1次モードがバイモーダル導波路(10、29、20’、30、40)において決定されるセンサ板(21、31、41、51)を通過する時に、これら両モードが前記化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に依存する位相遅延を受けるように、両モードを前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)に結合する工程と、
(e)前記導波路(10、20、20’、30、40)の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程と、
(f)両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける工程と、
を備える検出方法。
【請求項23】
前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程は、
干渉縞(11、12、13)のパターンを生成する工程と、
干渉パターン(11、12、13)内の変位を測定する工程と、
を有することを特徴とする請求項22に記載の検出方法。
【請求項24】
前記両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける工程は、
干渉パターンにおける変位を決定された化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化の存在に関連付ける工程を有することを特徴とする請求項23に記載の検出方法。
【請求項1】
基板(8、28、28、48)と、
前記基板(8、28、38、48)上に堆積された少なくとも1つの層(1、2、3)を有し、異なる散乱を持つ0次横断伝播モード及び1次横断伝播モードをサポートするバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)と、
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の上側の選択領域に位置し、前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の有効屈折率を変化させることができる化学的、生化学的又は物理的入力刺激を受信するセンサ板(21、31、41、51)と、
を備え、
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は、横方向に光を閉じ込めるように設計された閉じ込め手段(9)をさらに有し、横モードをサポートするように設計されていることを特徴とする平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項2】
光を前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)に導く電磁放射源(4、4’)を備えることを特徴とする請求項1に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項3】
前記電磁放射源(4、4’)はレーザであることを特徴とする請求項2に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項4】
前記電磁放射源は基板(8、28、38、48)の構造に集積されることを特徴とする請求項2に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項5】
偏光手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項6】
他の焦点調節手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項7】
前記焦点調節手段はレンズ(22、52)であることを特徴とする請求項6に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25)。
【請求項8】
前記レンズ(22、52)の中心軸はバイモーダル導波路(20、20’)の縦方向対称軸に対して横断方向にずれており、光源からの光が前記レンズを介してバイモーダル導波路(20、20’)に対して直接焦点調節される時に、第1及び第2の横断伝播モードはバイモーダル導波路(20、20’)内で励起されることを特徴とする請求項7に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25)。
【請求項9】
前記バイモーダル導波路(30)の一端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする入力導波路(32)と、
前記バイモーダル導波路(30)の他端に接続され、横断方向及び横方向の両方において単一モードをサポートする出力導波路(33)と、
を備え、
前記入力導波路及び出力導波路(32、33)の各々の厚さは、前記バイモーダル導波路(30)より薄く、前記入力導波路(32)及び前記バイモーダル導波路(30)の接合箇所における構造の非対称性により、前記単一モードが前記第1及び第2の横断伝播モードに分岐することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項10】
電磁放射を前記バイモーダル導波路(30)に結合する手段をさらに備え、当該手段はエンドファイア、ダイレクト焦点調節、プリズム結合及び回折格子結合からなる集合から選択されることを特徴とする請求項9に記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項11】
出力導波路(33)に結合される光の量は、バイモーダル導波路(30)と出力導波路(33)との間の接合箇所に存在する強度分布に依存することを特徴とする請求項9又は10に記載の平面型光学導波路干渉計(35)。
【請求項12】
前記バイモーダル導波路(40)を、異なる入射角(θ1、θ2)を有する光の1次モード及び2次モードに結合する結合手段(42)を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(45)。
【請求項13】
前記結合手段(42)は、前記バイモーダル導波路(40)の入力に結合された回折格子であることを特徴とする請求項12に記載の平面型光学導波路干渉計(45)。
【請求項14】
前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)は少なくとも2つの層を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項15】
第1導波路層は第1屈折率を有し、第2導波路層は第2屈折率を有し、前記第2の層の屈折率は前記第1の導波路層の屈折率より低いことを特徴とする請求項14に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項16】
前記0次モードの有効屈折率及び前記1次モードの有効屈折率は大きく異なることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項17】
前記横断伝播モードの異なる散乱は前記導波路のパラメータの伝播速度に依存することを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項18】
前記導波路の出力において前記入力刺激による放射強度の変化を測定する検出手段(27、27’、37、47)をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項19】
前記検出手段(27、27’、37、47)は2次元フォトディテクタであることを特徴とする請求項18に記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)。
【請求項20】
少なくとも1つの、請求項1乃至19のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)を備えるチップ。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれかに記載の平面型光学導波路干渉計(15、25、35、45)を備えるセンサ。
【請求項22】
(a)光学導波路干渉計(15、25、35、45)のバイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)の特定領域にセンサ板(21、31、41、51)を規定する工程と、
(b)前記センサ板(21、31、41、51)に化学的、生化学的若しくは物理的な刺激を与える工程と、
(c)前記センサ板(21、31、41、51)に配置された化学的、生化学的若しくは物理的な刺激の変化を導入又は引き起こす工程と、
(d)電磁放射の0次モード及び別の1次モードがバイモーダル導波路(10、29、20’、30、40)において決定されるセンサ板(21、31、41、51)を通過する時に、これら両モードが前記化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に依存する位相遅延を受けるように、両モードを前記バイモーダル導波路(10、20、20’、30、40)に結合する工程と、
(e)前記導波路(10、20、20’、30、40)の出力部において、前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程と、
(f)両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける工程と、
を備える検出方法。
【請求項23】
前記1次モードの応答に対する前記0次モードの応答を測定する工程は、
干渉縞(11、12、13)のパターンを生成する工程と、
干渉パターン(11、12、13)内の変位を測定する工程と、
を有することを特徴とする請求項22に記載の検出方法。
【請求項24】
前記両モードの前記相対応答を化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化に対して関連付ける工程は、
干渉パターンにおける変位を決定された化学的、生化学的又は物理的な刺激における変化の存在に関連付ける工程を有することを特徴とする請求項23に記載の検出方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12a】
【図12b】
【図6】
【図7】
【図11】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12a】
【図12b】
【図6】
【図7】
【図11】
【公表番号】特表2010−533849(P2010−533849A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516528(P2010−516528)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070142
【国際公開番号】WO2009/010624
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070142
【国際公開番号】WO2009/010624
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】
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