説明

バキュームブレーカ及びそれを備えた給水弁装置、水洗大便器

信頼性をより向上させたバキュームブレーカを提供する。
本発明のバキュームブレーカは、入水口(26、41)、出水口(34、48)及びそれらを連通させる水流路(30、44)、並びに、この水流路と大気とを連通させる第1大気導入口(36、50)及び第2大気導入口(37、49)を備えた本体部と、第1弁体(28、42)と、第1弁体の下流側に配置された第2弁体(32、46)と、を有し、第1弁体は、通水時において入水口と、第1弁体と第2弁体の間の水流路とを連通させる位置と、非通水時において、第1大気導入口と、第1弁体と第2弁体の間の水流路とを連通させる位置との間で移動可能であり、第2弁体は、通水時において、第1弁体と第2弁体の間の水流路と、出水口とを連通させる位置と、非通水時において、第2大気導入口と出水口を連通させる位置との間で移動可能であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バキュームブレーカ及びそれを備えた給水弁装置、水洗大便器に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、水道管に直結され、洗浄水が水道から直接供給されるタイプの水洗大便器が普及している。これらの水洗大便器では、洗浄水をボール部に供給する管路と水道管が、給水弁を介して直結されているため、断水等、何らかの原因で水道管の中に負圧が発生すると、水洗大便器側から水道管の中へ洗浄水が逆流することが考えられる。このため、このような水洗大便器には、逆流を阻止するためのバキュームブレーカが取り付けられている。特開2001−182122号公報には、このような逆流を阻止するための、給水弁の下流側に設けられたバキュームブレーカを備えた洗浄水供給装置が記載されている。このバキュームブレーカは、通水時においては、給水弁と、水洗大便器に洗浄水を供給する配管とを連通させ、非通水時には、水洗大便器に洗浄水を供給する配管を大気に開放するものである。このようなバキュームブレーカでは、非通水時に洗浄水の配管を大気に開放することにより、万一、水道管の内部に負圧が発生した場合、水道管には大気が吸い込まれるので、配管内の水が水道管に逆流することはない。
【0003】
【特許文献1】:特開2001−182122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆流を回避するために設けられているバキュームブレーカは、使用実績も十分であり故障や誤動作の可能性は、ほぼ無いものと考えられる。しかしながら、昨今はリスク管理の重要性が高まりつつあり、万が一の想定されるリスクに関しても対処しておく必要性が出てきている。このような考えからバキュームブレーカに関してもより一層の信頼性向上策を考える必要がある。
従って、本発明は、信頼性をより向上させたバキュームブレーカ及びそれを備えた給水弁装置、水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明のバキュームブレーカは、入水口、出水口及びそれらを連通させる水流路、並びに、この水流路と大気とを連通させる第1大気導入口及び第2大気導入口を備えた本体部と、この本体部の中に配置された第1弁体と、本体部の中の、第1弁体の下流側に配置された第2弁体と、を有し、第1弁体は、通水時において、第1大気導入口を閉鎖し、入水口を開放して、入水口と、第1弁体と第2弁体の間の水流路とを連通させる第1の位置と、非通水時において、入水口を閉鎖し、第1大気導入口を開放して、第1大気導入口と、第1弁体と第2弁体の間の水流路とを連通させる第2の位置との間で移動可能であり、第2弁体は、通水時において、第2大気導入口を閉鎖し、第1弁体と第2弁体の間の水流路を開放して、第1弁体と第2弁体の間の水流路と、出水口とを連通させる第1の位置と、非通水時において、第1弁体と第2弁体の間の水流路を閉鎖し、第2大気導入口を開放して、第2大気導入口と出水口を連通させる第2の位置との間で移動可能であることを特徴としている。
【0006】
このように構成された本発明においては、通水時において、第1弁体は第1大気導入口を閉鎖し、第2弁体は第2大気導入口を閉鎖し、入水口と出水口が連通され、入水口から出水口に水が流れる。また、非通水時においては、第1弁体は入水口を閉鎖し、第2弁体は第1弁体と第2弁体の間の水流路を閉鎖し、第1弁体と第2弁体の間の水流路は第1大気導入口と連通され、出水口は第2大気導入口と連通される。このように、非通水時において、入水口が閉鎖され、また、第1大気導入口が開放されているため、入水口の上流側で負圧が発生した場合にも、出水口の下流側の水が入水口の上流側に吸い込まれ、水が逆流するのを防止することができる。また、万一、第1弁体が誤動作して、非通水時に入水口が開放され、第1大気導入口が閉鎖されたままになったとしても、第2弁体が、第1弁体と第2弁体の間の水流路を閉鎖し、第2大気導入口を開放しているので、逆流を防止することができる。
【0007】
このように構成された本発明によれば、第1弁体又は第2弁体の何れかが誤動作した場合でも、逆流を防止することができるので、バキュームブレーカの信頼性を向上させることができる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、第1弁体と、第2弁体は異なる作動形式を有する。
このように構成された本発明においては、第1弁体と第2弁体が異なる作動形式を有するので、第1弁体と第2弁体が同一の原因で同時に誤動作する確率を極めて低くできるので、信頼性をより向上させることができる。
また、本発明において、好ましくは、第1弁体又は第2弁体は、その何れか一方が直動式の弁体であり、他方がスイング式の弁体である。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、さらに、第1大気導入口から溢れ出た水を受ける水受け部材と、第2大気導入口から溢れ出た水を水受け部材に流入させる移送管路と、を有する。
また、本発明において、好ましくは、さらに、第2大気導入口から溢れ出た水を受ける水受け部材と、第1大気導入口から溢れ出た水を水受け部材に流入させる移送管路と、を有する。
【0010】
このように構成された本発明においては、第1大気導入口から溢れ出た水は水受け部材に流入し、第2大気導入口から溢れ出た水は移送管路を通って水受け部材に流入する。
このように構成された本発明によれば、2つの大気導入口から溢れ出た水を一箇所に集めて排水することができる。
【0011】
また、本発明のバキュームブレーカは、入水口、出水口及びそれらを連通させる水流路を備え且つこの水流路と大気とを連通させる大気導入口を備えた本体部と、この本体部内に配置され、通水時において大気導入口を閉鎖し、入水口を開放して入水口と出水口を連通させる第1の位置と、非通水時において入水口を閉鎖し、大気導入口を開放して大気導入口と出水口を連通させる第2の位置との間で移動可能な弁体と、この弁体の作動状態を検出する作動検出手段と、この作動検出手段が弁体の誤作動を検出したとき、警報を発生させ、又は水道管との連通を遮断させる制御手段と、を有することを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明においては、通水時において、弁体は大気導入口を閉鎖し、入水口と出水口が連通され、入水口から出水口に水が流れる。また、非通水時においては、弁体は入水口を閉鎖し、大気導入口と大気導入口は連通される。このように、非通水時において、入水口が閉鎖され、また、大気導入口が開放されているため、入水口の上流側で負圧が発生した場合にも、出水口の下流側の水が入水口の上流側に吸い込まれ、水が逆流するのを防止することができる。また、作動検出手段は、弁体の作動状態を検出する。制御手段は、作動検出手段によって誤作動が検出されると、警報を発生させ、又は水道管との連通を遮断させる。
【0013】
このように、構成された本発明によれば、作動検出手段が弁体の作動状態を検出しているので、使用者は弁体の異常に素早く対処することができ、また、水道管との連通が遮断されるので、負圧が発生した場合にも水が逆流するのを防止することができる。
【0014】
また、本発明の給水弁装置は、上記何れかのバキュームブレーカと、水道管とバキュームブレーカの入水口とを連通させ、又は、水道管とバキュームブレーカの入水口とを遮断させる主弁体と、バキュームブレーカの出水口に接続された吐水管路と、を有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、水道管直結式の水洗大便器に洗浄水を供給する給水弁装置であって、水洗大便器のリム部に洗浄水を吐水させるリム吐水管路と、このリム吐水管路に出水口が接続された、上記何れかのリム側のバキュームブレーカと、水洗大便器のジェットノズルに洗浄水を吐水させるジェット吐水管路と、このジェット吐水管路に出水口が接続された、上記何れかのジェット側のバキュームブレーカと、水道管に接続され、止水状態と、吐水状態とを切り替える主弁体と、水道管から供給され、主弁体を通過した洗浄水を、第1バキュームブレーカの入水口、又は第2バキュームブレーカの入水口に導く切り替え弁と、を有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の水洗大便器は、ボール部と、このボール部の上方に形成されたリム部と、ボール部の底部に設けられたジェットノズルと、を備えた水洗大便器本体と、上記の給水弁装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバキュームブレーカ及びそれを備えた給水弁装置、水洗大便器によれば、その信頼性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。図1は本実施形態による水洗大便器の上面図を示し、図2は側面断面図を示す。また、図3は本実施形態による水洗大便器に使用されている給水弁装置の上面図、図4は正面図、図5は側面図、図6は全断面図を示す。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の後部に配置された給水弁装置4と、を有する。水洗大便器本体2は、ボール部6と、このボール部6の上端部に形成されたリム部8と、ボール部6の底部に配置されたジェットノズル10と、ボール部6の底部から斜め上方に延び、下方に折り曲げられて排水配管Dに接続されるトラップ管路12と、を有する。また、給水弁装置4は、水道管(図示せず)から供給された水道水を洗浄水としてリム部8及びジェットノズル10に供給するように構成されている。給水弁装置4からの洗浄水は、ジェット吐水管路14及びリム吐水管路16を通ってジェットノズル10及びにリム部8に夫々供給される。給水弁装置4は、水道管(図示せず)から供給された水道水を、リム部8→ジェットノズル10→リム部8の順に所定時間ずつ吐水させる。
【0020】
図3乃至図6に示すように、給水弁装置4は、水道管に接続される給水弁装置入口18と、この給水弁装置入口18から流入した水道水である洗浄水の吐水、止水を切り替える主弁体20と、この主弁体が着座する弁座22と、この弁座22を通って流入した洗浄水をリム部8又はジェットノズル10に差し向ける切り替え弁であるローター24と、を有する。
【0021】
また、給水弁装置4は、ローター24によってリム部8の方に差し向けられた洗浄水が流入するリム側入水口26と、このリム側入水口26を開閉するリム側第1弁体28と、このリム側第1弁体28を通過した洗浄水が流入するリム側水流路30と、リム側第1弁体28の下流側に設けられたリム側第2弁体32と、このリム側第2弁体32を通過した洗浄水が流出するリム側出水口34と、を有する。さらに、リム側第1弁体28の上方には円筒状のリム側第1大気導入口36が形成され、リム側第2弁体32の上方にはリム側第2大気導入口37が形成されている。また、リム側第1大気導入口36の周囲にはリム側第1大気導入口36を取り囲むように水受け部材38が形成され、リム側第1大気導入口36の上方にはリム側第1大気導入口36を覆うリム側蓋39が配置されている。さらに、リム側第2大気導入口37の上方には、L字型のパイプであるリム側移送管路40が接続されている。これらのリム側入水口26、リム側第1弁体28、リム側水流路30、リム側第2弁体32、リム側出水口34、リム側第1大気導入口36、リム側第2大気導入口37、水受け部材38、リム側蓋39、及びリム側移送管路40は、リム側バキュームブレーカを構成する。また、リム側入水口26、リム側出水口34、リム側水流路30、リム側第1大気導入口36、及びリム側第2大気導入口37を構成している部材は、リム側バキュームブレーカの本体部を構成する。
【0022】
同様に、給水弁装置4は、ローター24によってジェットノズル10の方に差し向けられた洗浄水が流入するジェット側入水口41と、このジェット側入水口41を開閉するジェット側第1弁体42と、このジェット側第1弁体42を通過した洗浄水が流入するジェット側水流路44と、ジェット側第1弁体42の下流側に設けられたジェット側第2弁体46と、このジェット側第2弁体46を通過した洗浄水が流出するジェット側出水口48と、を有する。さらに、ジェット側第1弁体42の上方には円筒状のジェット側第1大気導入口50が形成され、ジェット側第2弁体46の上方にはジェット側第2大気導入口49が形成されている。また、水受け部材38は、ジェット側第1大気導入口50の周囲を取り囲んでおり、ジェット側第1大気導入口50の上方にはジェット側第1大気導入口50を覆うジェット側蓋51が配置されている。さらに、ジェット側第2大気導入口49の上方には、L字型のパイプであるジェット側移送管路52が接続されている。これらのジェット側入水口41、ジェット側第1弁体42、ジェット側水流路44、ジェット側第2弁体46、ジェット側出水口48、ジェット側第1大気導入口50、ジェット側第2大気導入口49、水受け部材38、ジェット側蓋51、及びジェット側移送管路52は、ジェット側バキュームブレーカを構成する。また、ジェット側入水口41、ジェット側出水口48、ジェット側水流路44、ジェット側第1大気導入口50、及びジェット側第2大気導入口49を構成している部材は、ジェット側バキュームブレーカの本体部を構成する。
【0023】
さらに、給水弁装置4は、手動用主弁体54と、この手動用主弁体54が着座する弁座56と、この弁座56から連なる管路56aに設けられた回動板60と、を有する。また、給水弁装置4は、手動用主弁体54の圧力室54a及び主弁体20の圧力室20a内の圧力を操作するための手動操作部58を有する。
【0024】
水道管に接続される給水弁装置入口18には、定流量弁18aが配置されており、給水弁装置4に所定流量の水道水が流入するようになっている。定流量弁18aの下流側の管路は弁座22に連通しており、この弁座22に隣接して主弁体20が配置されている。主弁体20が弁座22から離座している吐水状態においては、給水弁装置入口18から流入し、定流量弁18aを通った洗浄水は、弁座22を通って弁座22から連なる鉛直の管路22aの中に流入する。弁座22とは反対の側の、主弁体20の背面側には圧力室20aが形成されている。この圧力室20aは水道管と連通されており、止水状態においては、圧力室20a内には水道水圧である一次圧が作用している。圧力室20a内に一次圧が作用している状態においては、主弁体20は圧力室20a内の圧力によって上方に押され、主弁体20は弁座22に着座されて、止水状態となる。この圧力室20aには、電磁弁(図示せず)が設けられており、この電磁弁を閉鎖することにより圧力室20a内に一次圧を作用させ、また、開放することにより圧力室20a内の圧力を低下させることができる。電磁弁を開放することにより圧力室20a内の圧力が低下すると、主弁体20は弁座22から離れ、吐水状態となる。
【0025】
ローター24は、弁座22の下流側に配置され、弁座22を通って管路22aに流入した洗浄水を、リム側又はジェット側に導くように構成されている。ローター24は、扇形の部材によって構成され、この部材が中心軸24aを中心に回動することによって、管路22aをリム側入水口26、又は、ジェット側入水口41に連通させる。
【0026】
リム側第1弁体28は、直動式の弁体であり、その下面及び上面にはパッキン28a及び28bが取り付けられている。止水状態においては、リム側第1弁体28は、その自重により、パッキン28aがリム側入水口26に形成されたシート面26aに着座して、リム側入水口26を閉鎖している。このとき、リム側第1弁体28とリム側第2弁体32の間の水流路であるリム側水流路30とリム側第1大気導入口36は連通されている。また、吐水状態においては、リム側第1弁体28は、流入する洗浄水の水勢により上方に押し上げられ、リム側第1弁体28のパッキン28bは、リム側第1大気導入口36の下端に形成されているシート面36aに着座してリム側第1大気導入口36が閉鎖される。このとき、リム側入水口26とリム側水流路30は連通される。
【0027】
また、リム側第1大気導入口36は、リム側入水口26等の流路断面積と同程度の断面積となるように構成されている。このため、水道管内に負圧が発生したとき、十分に大きな流量で大気を導入することができるので、リム側第1大気導入口36の下流側にある洗浄水を吸い込む力を著しく弱めることができる。
【0028】
リム側第2弁体32は、回動軸32aを中心に回動するスイング式の弁体であり、その前面及び後面にはパッキン32b及び32cが取り付けられている。止水状態においては、リム側第2弁体32は、その自重により、パッキン32bがリム側水流路30に形成されたシート面30aに着座して、リム側水流路30を閉鎖している。このとき、リム側出水口34とリム側第2大気導入口37は連通されている。また、吐水状態においては、リム側第2弁体32は、流入する洗浄水の水勢により上方に回動され、リム側第2弁体32のパッキン32cは、リム側第2大気導入口37の下端に形成されているシート面37aに着座してリム側第2大気導入口37が閉鎖される。このとき、リム側水流路30とリム側出水口34は連通される。また、リム側水流路30に形成されたシート面30aは、鉛直よりも約5乃至10°上方に向くように傾けて形成されているので、止水状態において、リム側第2弁体32は、その自重により回動してシート面30aに確実に着座する。
【0029】
また、リム側第2大気導入口37は、リム側水流路30等の流路断面積と同程度の断面積となるように構成されている。このため、水道管内に負圧が発生したとき、十分に大きな流量で大気を導入することができるので、リム側第2大気導入口37の下流側にある洗浄水を吸い込む力を著しく弱めることができる。
【0030】
水受け部材38は、リム側第1大気導入口36及びジェット側第1大気導入口50の出口部分を取り囲むように形成された直方体状の水槽である。この水受け部材38は、リム側第1弁体28及びジェット側第1弁体42が、各第1大気導入口36、50を閉鎖する際等に、各第1大気導入口36、50から溢れ出た洗浄水を受け入れるように構成されている。また、各第1大気導入口36、50の上方には、リム側蓋39及びジェット側蓋51が夫々配置されており、各第1大気導入口36、50から溢れ出た洗浄水が、水受け部材38の外へ飛散しないように、各第1大気導入口36、50をカバーしている。また、水受け部材38の底部には、水抜き穴38aが形成されており、この水抜き穴38aは、排水チューブ(図示せず)によりリム吐水管路16に連通する水路に接続されている。これにより、各第1大気導入口36、50から溢れ出た洗浄水は、水受け部材38に入り、水抜き穴38aを通ってリム吐水管路16から排水される。
【0031】
リム側移送管路40は、L字型に曲げられたパイプであり、リム側第2大気導入口37の上方に取り付けられ、水受け部材38の上方まで延びている。このリム側移送管路40は、リム側第2大気導入口37がリム側第2弁体32によって閉鎖される際等に、リム側第2大気導入口37から溢れ出た洗浄水を水受け部材38に導くように構成されている。
【0032】
ジェット側第1弁体42は、直動式の弁体であり、その下面及び上面にはパッキン42a及び42bが取り付けられている。止水状態においては、ジェット側第1弁体42は、その自重により、パッキン42bがジェット側入水口41に形成されたシート面41aに着座して、ジェット側入水口41を閉鎖している。このとき、ジェット側第1弁体42とジェット側第2弁体46の間の水流路であるジェット側水流路44と、ジェット側第1大気導入口50は連通されている。また、吐水状態においては、ジェット側第1弁体42は、流入する洗浄水の水勢により上方に押し上げられ、ジェット側第1弁体42のパッキン42aは、ジェット側第1大気導入口50の下端に形成されているシート面50aに着座してジェット側第1大気導入口50が閉鎖される。このとき、ジェット側入水口41とジェット側水流路44は連通される。
【0033】
また、ジェット側第1大気導入口50は、ジェット側入水口41等の流路断面積と同程度の断面積となるように構成されている。このため、水道管内に負圧が発生したとき、十分に大きな流量で大気を導入することができるので、ジェット側第1大気導入口50の下流側にある洗浄水を吸い込む力を著しく弱めることができる。
【0034】
ジェット側第2弁体46は、回動軸46aを中心に回動するスイング式の弁体であり、その前面及び後面にはパッキン46b及び46cが取り付けられている。止水状態においては、ジェット側第2弁体46は、その自重により、パッキン46bがジェット側水流路44に形成されたシート面44aに着座して、ジェット側水流路44を閉鎖している。このとき、ジェット側出水口48とジェット側第2大気導入口49は連通されている。また、吐水状態においては、ジェット側第2弁体46は、流入する洗浄水の水勢により上方に回動され、ジェット側第2弁体46のパッキン46cは、ジェット側第2大気導入口49の下端に形成されているシート面49aに着座してジェット側第2大気導入口49が閉鎖される。このとき、ジェット側水流路44とジェット側出水口48は連通される。また、ジェット側水流路44に形成されたシート面44aは、鉛直よりも約5乃至10°上方に向くように傾けて形成されているので、止水状態において、ジェット側第2弁体46は、その自重により回動してシート面44aに確実に着座する。
【0035】
また、ジェット側第2大気導入口49は、ジェット側水流路44等の流路断面積と同程度の断面積となるように構成されている。このため、水道管内に負圧が発生したとき、十分に大きな流量で大気を導入することができるので、ジェット側第2大気導入口49の下流側にある洗浄水を吸い込む力を著しく弱めることができる。
【0036】
ジェット側移送管路52は、L字型に曲げられたパイプであり、ジェット側第2大気導入口49の上方に取り付けられ、水受け部材38の上方まで延びている。このジェット側移送管路52は、ジェット側第2大気導入口49がジェット側第2弁体46によって閉鎖される際等に、ジェット側第2大気導入口49から溢れ出た洗浄水を水受け部材38に導くように構成されている。
【0037】
手動用主弁体54は、主弁体20の側方に配置され、弁座56に着座されている。弁座56の周囲には給水弁装置入口18から供給された水道水が充満しているが、通常使用時には手動用主弁体54は常に閉鎖されており、この水道水が弁座56の中に流入することはない。また、手動用主弁体54の背面側には、圧力室54aが形成されており、この圧力室54a内の水道水の一次圧により、手動用主弁体54を弁座56に押し付けている。通常使用時においては、圧力室54a内の圧力は常に一次圧に保持されている。
【0038】
回動板60は、管路56aの上端部に回動可能に取り付けられ、洗浄水が弁座56を通って管路56a内に流入したときは、ローター24からジェット側入水口41に至る流路を閉鎖し、洗浄水がローター24から流入したときは管路56aを閉鎖するように構成されている。また、手動操作部58は、停電等により電磁弁(図示せず)が作動しないとき、使用者が操作して、手動で圧力室20a及び54aの圧力を操作できるように構成されている。
【0039】
次に、図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用を説明する。
まず、水洗大便器1の使用者が洗浄操作を行う前の待機状態においては、圧力室20a及び54aは閉鎖された状態にあり、これらの圧力室内には、水道の一次圧が作用している。このため、主弁体20及び手動用主弁体54は、各圧力室内の圧力により弁座22及び56に夫々押し付けられ、止水状態になっている。また、ローター24は、管路22aとリム側入水口26を連通させ、管路22aとジェット側入水口41の間を遮断する位置にある。さらに、リム側第1弁体28はその自重によりシート面26aに着座され、リム側入水口26を閉鎖し、ジェット側第1弁体42は、その自重によりシート面41aに着座され、ジェット側入水口41を閉鎖している。また、リム側第2弁体32は、その自重により最も下方に回動され、シート面30aに着座して、リム側水流路30を閉鎖している。同様に、ジェット側第2弁体46は、その自重により最も下方に回動され、シート面44aに着座して、ジェット側水流路44を閉鎖している。この状態においては、リム側第1大気導入口36、リム側第2大気導入口37、ジェット側第1大気導入口50、及びジェット側第2大気導入口49は、夫々開放されている。
【0040】
次に、使用者が水洗大便器1の洗浄操作を行うと、電磁弁(図示せず)が開放され、圧力室20a内の圧力が低下する。圧力室20a内の圧力が低下すると、主弁体20を弁座22に着座させている圧力が減少し、主弁体20が弁座22から離れ、吐水状態となる。主弁体20が開くと、給水弁装置入口18から流入した洗浄水は、定流量弁18aを経て弁座22から管路22aに流入する。前述した通り、ローター24は管路22aとリム側入水口26を連通させる状態にあるので、管路22aに流入した洗浄水は、リム側入水口26に到達する。リム側入水口26に到達した洗浄水は、その水勢によりリム側第1弁体28を押し上げ、リム側入水口26を開く。吐水状態となった後、十分な時間が経過すると、リム側第1弁体28は、リム側第1大気導入口36下端のシート面36aに当接し、リム側第1大気導入口36は閉鎖されるが、リム側第1弁体28が上方に移動する過渡状態においては、リム側入水口26及びリム側第1大気導入口36が両方とも開放された状態となる。この間にリム側第1大気導入口36の上端から溢れ出た洗浄水は、その一部がリム側蓋39に当たって水受け部材38の中に落下し、残りは再びリム側第1大気導入口36の中に落ちる。
【0041】
リム側入水口26を通ってリム側水流路30に流入した洗浄水は、その水勢によりリム側第2弁体32を回動させ、リム側水流路30を開いてリム側出水口34に到達する。吐水状態となった後、十分な時間が経過すると、リム側第2弁体32は、リム側第2大気導入口37下端のシート面37aに当接し、リム側第2大気導入口37は閉鎖されるが、リム側第2弁体32が上方に向かって回動する過渡状態においては、リム側水流路30及びリム側第2大気導入口37が両方とも開放された状態となる。この間にリム側第2大気導入口37の上端から溢れ出た洗浄水は、その一部がリム側移送管路40を通って水受け部材38の中に落下し、残りは再びリム側第2大気導入口37の中に落ちる。水受け部材38の中に流入した洗浄水は、水抜き穴38a、及び排水チューブ(図示せず)を通って、リム吐水管路16から排出される。
【0042】
リム側出水口34から流出した洗浄水は、リム吐水管路16を通ってリム部8に供給され、ボール部6の中を旋回しながら下方に流れ、ボール部6の内壁面を洗浄する。リム部8に所定時間洗浄水を給水した後、ローター24が回動し、管路22aとジェット側入水口41を連通させ、管路22aとリム側入水口26の間を遮断する位置に移動する。本実施形態では、大洗浄の場合において、20L/minの流量で約5秒間リム部8に給水した後、小洗浄の場合において、20L/minの流量で約3秒間リム部8に給水した後、ジェット給水に切り替えられる。
【0043】
ローター24が管路22aとジェット側入水口41を連通させた状態においては、管路22aに流入した洗浄水はジェット側入水口41に到達する。ジェット側入水口41に到達した洗浄水は、その水勢によりジェット側第1弁体42を押し上げ、ジェット側入水口41を開く。ジェット給水に切り替えられた後、十分な時間が経過すると、ジェット側第1弁体42は、ジェット側第1大気導入口50下端のシート面50aに当接し、ジェット側第1大気導入口50は閉鎖されるが、ジェット側第1弁体42が上方に移動する過渡状態においては、ジェット側入水口41及びジェット側第1大気導入口50が両方とも開放された状態となる。この間にジェット側第1大気導入口50の上端から溢れ出た洗浄水は、その一部がジェット側蓋51に当たって水受け部材38の中に落下し、残りは再びジェット側第1大気導入口50の中に落ちる。
【0044】
ジェット側入水口41を通ってジェット側水流路44に流入した洗浄水は、その水勢によりジェット側第2弁体46を回動させ、ジェット側水流路44を開いてジェット側出水口48に到達する。ジェット給水に切り替えられた後、十分な時間が経過すると、ジェット側第2弁体46は、ジェット側第2大気導入口49下端のシート面49aに当接し、ジェット側第2大気導入口49は閉鎖されるが、ジェット側第2弁体46が上方に向かって回動する過渡状態においては、ジェット側水流路44及びジェット側第2大気導入口49が両方とも開放された状態となる。この間にジェット側第2大気導入口49の上端から溢れ出た洗浄水は、その一部がジェット側移送管路52を通って水受け部材38の中に落下し、残りは再びジェット側第2大気導入口49の中に落ちる。
【0045】
ジェット側出水口48から流出した洗浄水は、ジェット吐水管路14を通ってジェットノズル10に供給され、トラップ管路12内に洗浄水を充填させてサイホン作用を発生させる。このサイホン作用により、ボール部6内の洗浄水及び汚物がトラップ管路12の中に吸引され、洗浄水及び汚物を排水配管Dに排出する。ジェットノズル10に所定時間洗浄水を給水した後、再びローター24が回動し、管路22aとリム側入水口26を連通させ、管路22aとジェット側入水口41の間を遮断する位置に移動する。本実施形態では、大洗浄の場合において、20L/minの流量で約5秒間ジェットノズル10に給水した後、小洗浄の場合において、20L/minの流量で約4秒間ジェットノズル10に給水した後、リム給水に切り替えられる。
【0046】
リム給水に切り替えられた後、再び所定時間リム給水が行われ、ボール部6内の水位が規定溜水面まで回復される。所定時間のリム給水を行った後、電磁弁(図示せず)が閉鎖され、これにより圧力室20a内の圧力が水道の一次圧に復帰し、主弁体20が着座されて止水状態となる。本実施形態では、大洗浄、小洗浄の場合とも、20L/minの流量で約4秒間リム部8に給水した後、リム給水を終了する。止水状態になると、水勢により開放されていたリム側第1弁体28、ジェット側第1弁体42、リム側第2弁体32、及びジェット側第2弁体46は、それらの自重により下方に移動されて待機状態の位置に復帰し、1回の洗浄作用が終了する。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態の水洗大便器1の手動による洗浄作用を説明する。この手動による洗浄操作は、停電等により電磁弁(図示せず)が作動しなくなった場合に行われるものである。まず、使用者が手動操作部58を回転操作すると、カム機構(図示せず)により圧力室20a内の圧力が開放され、主弁体20が弁座22から離れて、洗浄水がリム部8から吐水される。リム部8から所定時間吐水を行った後、使用者が手動操作部58を逆方向に回転操作すると、今度は、カム機構(図示せず)により圧力室54a内の圧力が開放され、手動用主弁体54が弁座56から離れて、洗浄水が弁座56から管路56aに流入する。管路56aに流入した洗浄水は、その水勢により回動板60を押し上げ、管路56aとジェット側入水口41を連通させる。ジェット側入水口41に流入した洗浄水はジェットノズル10から吐水される。ジェットノズル10から所定時間吐水させた後、使用者が再び手動操作部58を最初の操作と同じ方向に回転操作すると、再びリム部8から吐水が行われる。このように、使用者が手動操作部58を操作することにより、水洗便器の洗浄を行うことができる。
【0048】
次に、バキュームブレーカの作用を説明する。
リム給水時において、洗浄水を供給する水道の断水等、何らかの原因により、給水弁装置入口18付近の管路内に負圧が発生すると、管路22aからリム吐水管路16に至る水路に充満している洗浄水が、給水弁装置入口18の方に吸引される。洗浄水が逆流する方向に吸引されると、シート面36aに当接してリム側第1大気導入口36を閉鎖しているリム側第1弁体28が下方に引かれ、リム側第1大気導入口36が開放される。リム側第1大気導入口36が開放されると、大気がリム側第1大気導入口36を通って水流路に吸入されるようになる。これにより、リム側第1弁体28の上流側で負圧が発生しても、その負圧を打ち消すようにリム側第1大気導入口36から外気が導入されるので、リム側第1弁体28の下流側の洗浄水は、その上流側の負圧の影響を受けにくくなる。本実施形態においては、リム側第1大気導入口36の断面積を、水流路の断面積と同程度に構成しているので、大量の外気を吸入することができ、上流側の負圧の影響を十分に遮断することができる。
【0049】
また、リム側第1弁体28がシート面36aから離れた後、リム側第1弁体28が下方に移動して、リム側入水口26のシート面26aに当接すると、リム側入水口26が閉鎖されるので、リム側第1弁体28の上流側の負圧の影響は、その下流側には及ばなくなる。これにより、リム側第1弁体28の下流の洗浄水が、上流側に逆流することが防止される。
【0050】
また、経年変化等、何らかの原因で、リム側第1弁体28が正常に作動しなくなり、リム側第1弁体28がリム側第1大気導入口36を閉鎖したままになった場合には、リム側第1弁体28の上流側の負圧の影響が、リム側水流路30に及ぶことになる。この場合には、リム側水流路30内の負圧の発生により、シート面37aに当接していたリム側第2弁体32が下方に回動される。リム側第2弁体32が下方に回動され、リム側第2大気導入口37が開放される。リム側第2大気導入口37が開放されると、大気がリム側第2大気導入口37を通って水流路に吸入されるようになる。これにより、リム側第2弁体32の上流側で負圧が発生しても、その負圧を打ち消すようにリム側第2大気導入口37から外気が導入されるので、リム側第2弁体32の下流側の洗浄水は、その上流側の負圧の影響を受けにくくなる。本実施形態においては、リム側第2大気導入口37の断面積を、水流路の断面積と同程度に構成しているので、大量の外気を吸入することができ、上流側の負圧の影響を十分に遮断することができる。
【0051】
また、リム側第2弁体32がシート面37aから離れた後、リム側第2弁体32が下方に回動して、リム側水流路30のシート面30aに当接すると、リム側水流路30が閉鎖されるので、リム側第2弁体32の上流側の負圧の影響は、その下流側には及ばなくなる。これにより、リム側第1弁体28が正常に作動しなくなった場合でも、リム側第2弁体32の下流の洗浄水が、上流側に逆流することが防止される。
【0052】
同様に、ジェット給水時において、洗浄水を供給する水道の断水等、何らかの原因により、給水弁装置入口18付近の管路内に負圧が発生した場合には、ジェット側第1弁体42及びジェット側第2弁体46の作用により、洗浄水の逆流が防止される。即ち、ジェット側第1弁体42の上流側が負圧になった場合には、ジェット側第1弁体42が下方に移動してジェット側第1大気導入口50が開放されて大気が導入されると共に、ジェット側入水口41が閉鎖されて、上流側の負圧の影響が遮断される。また、ジェット側第1弁体42が正常に作動しない場合には、ジェット側第2弁体46が下方に回動してジェット側第2大気導入口49が開放されて大気が導入されると共に、ジェット側水流路44が閉鎖されて、上流側の負圧の影響が遮断される。
【0053】
リム側第1弁体28、及びリム側第2弁体32が正常に作動しなくなる原因として、弁体の摺動部にゴミ等が挟まる場合、パッキンがシート面に貼り付く場合等、種々のものが考えられる。しかしながら、リム側第1弁体28は直動式、リム側第2弁体32はスイング式の弁体であり、その作動形式が異なるため、同一の原因で同時に作動しなくなる確率は極めて低いものと考えられる。同様に、ジェット側第1弁体42及びジェット側第2弁体46が同一の原因で同時に作動しなくなる確率も極めて低いものと考えられる。
【0054】
本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、リム給水の水路、ジェット給水の水路とも、負圧の影響を遮断するための弁体が直列に2つずつ設けられているので、どちらか一方の弁体が正常に作動しないことがあったとしても、洗浄水の逆流を非常に高い信頼性をもって遮断することができる。
また、本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、リム給水の水路、ジェット給水の水路に夫々設けられている2つの弁体が、異なる作動形式を有しているため、同一の原因で故障する確率が低く、同一の作動形式の弁体を2重に設けた場合よりもより信頼性を向上させることができる。
さらに、本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、各大気導入口が水流路と同程度の大きな断面積を有しているため、上流側での負圧発生時に大量の外気を吸入することができ、効果的に負圧の影響を遮断することができる。
【0055】
上述した第1実施形態の水洗大便器は、旋回流によりボール部6の壁面を洗浄するタイプのものであったが、本発明を、ボックスリムタイプ、オープンリムタイプ等任意の形式の水洗大便器に適用することができる。また、上述した実施形態は、本発明の給水弁装置を水洗大便器に適用したものであるが、本発明の給水弁装置を他の機器に適用してもよい。さらに、上述した実施形態は、本発明のバキュームブレーカを、水洗大便器の給水弁装置に適用したものであるが、本発明のバキュームブレーカを他の給水弁装置又は他の機器に適用することもできる。
【0056】
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態の水洗大便器を説明する。本発明の第2実施形態の水洗大便器は、給水弁装置に使用されているバキュームブレーカの構成が第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0057】
図7は、本発明の第2実施形態の水洗大便器に使用される給水弁装置のバキュームブレーカの部分を示す拡大断面図である。図7に示すように、本実施形態に使用されるバキュームブレーカ70は、リム側弁体72と、ジェット側弁体74と、リム側弁体72の上方に開口するリム側大気導入口76と、ジェット側弁体74の上方に開口するジェット側大気導入口78と、を有する。また、バキュームブレーカ70は、リム側大気導入口76及びジェット側大気導入口78を取り囲むように形成された水受け部材38と、リム側大気導入口76の上方に配置されたリム側蓋39と、ジェット側大気導入口78の上方に配置されたジェット側蓋51と、を有する。さらに、バキュームブレーカ70は、リム側弁体72及びジェット側弁体74の動きを検出する作動検出手段であるホールIC80と、このホールIC80の検出信号に基づいて給水弁装置を制御する制御手段であるコントローラ82と、を有する。
【0058】
リム側弁体72は、非通水時においては、リム側入水口26のシート面26aに当接してリム側入水口26を閉鎖し、リム側大気導入口76とリム側出水口34を連通させている。また、リム側弁体72は、通水時においては、洗浄水の水勢により上方に移動して、リム側大気導入口76のシート面76aに当接してリム側大気導入口76を閉鎖し、リム側入水口26とリム側出水口34を連通させている。
【0059】
同様に、ジェット側弁体74は、非通水時においては、ジェット側入水口41のシート面41aに当接してジェット側入水口41を閉鎖し、ジェット側大気導入口78とジェット側出水口48を連通させている。また、ジェット側弁体74は、通水時においては、洗浄水の水勢により上方に移動して、ジェット側大気導入口78のシート面78aに当接してジェット側大気導入口78を閉鎖し、ジェット側入水口41とジェット側出水口48を連通させている。
ホールIC80は、リム側入水口26とジェット側入水口41の間の壁面の中に埋め込まれている。また、リム側弁体72及びジェット側弁体74には、磁気が付与されており、それらの動きがホールIC80によって検出されるようになっている。
【0060】
コントローラ82は、ホールIC80に接続され、ホールIC80の出力信号が入力されるように構成されている。コントローラ82は、ホールIC80から送られた信号に、異常を検出すると、警報を発し、また、給水弁装置に接続された水道配管を遮断するように構成されている。
次に、本発明の第2実施形態の水洗大便器の作用を説明する。使用者の操作により、リム部及びジェットノズルから順次吐水が行われる作用は、本発明の第1実施形態の水洗大便器と同一であるので、説明を省略する。また、リム側弁体72とジェット側弁体74の作用は、第1実施形態におけるリム側第1弁体28とジェット側第1弁体42の作用と同一であるので、説明を省略する。
【0061】
ここでは、ホールIC80及びコントローラ82の作用を説明する。ホールIC80は、その近傍で磁気を帯びたものが移動すると、それを検出し、信号を発生する。本実施形態においては、リム側弁体72及びジェット側弁体74には磁気が付与されているので、リム側弁体72及びジェット側弁体74の移動がホールIC80によって検出される。バキュームブレーカが正常に作動している場合、リム側弁体72は、リム給水が行われているとき上方に移動し、リム給水が終了すると下方に移動する。また、ジェット側弁体74は、ジェット給水が行われているとき上方に移動し、ジェット給水が終了すると下方に移動する。ホールIC80は、リム側弁体72及びジェット側弁体74の移動を検出し、検出した信号をコントローラ82に送る。コントローラ82は、ホールIC80から送られた信号が、リム側弁体72及びジェット側弁体74の正常な作動を示すものであれば、特に、警報を発することはない。コントローラ82は、ホールIC80の信号が誤作動を示す場合には、警報を発してバキュームブレーカの異常を使用者に知らせる。例えば、リム給水が終了した後にも、リム側弁体72が下方に移動したことを示す信号がコントローラ82に入力されない場合には、リム側弁体72がリム側大気導入口76のシート面76aに貼り付いて、リム側大気導入口76が閉鎖されたままになっていることが想定されるので、コントローラ82は、LEDの点滅、警告音等によって警報を発する。或いは、コントローラ82が誤動作を検出した場合、コントローラ82が給水弁装置と水道管路との連通を遮断するように構成してもよい。
【0062】
本発明の第2実施形態の水洗大便器によれば、コントローラがバキュームブレーカの作動を監視し、誤動作が検出された場合には警告を発し、又は水道管との間の連通を遮断するので、バキュームブレーカの信頼性を高め、洗浄水の水道への逆流を防止することができる。
また、図8に示す構成により、洗浄水の水道への逆流を防止することもできる。図8は、給水弁装置の給水弁装置の入口付近の拡大断面図を示す。給水弁装置90は、水道に接続され、給水弁装置の中に水道水を導く入口管路91と、この入口管路91の内部の水圧を測定する圧力センサ92と、この圧力センサ92が検出した圧力に基づいて、入口管路91の上流側に接続されたバルブ96を制御するコントローラ94と、を有する。
【0063】
圧力センサ92は、水道に接続されている給水弁装置の入口管路91に取り付けられ、入口管路91内の圧力を測定する。圧力センサ92によって検出された信号は、コントローラ94に入力される。コントローラ94は、圧力センサ92が検出した圧力が所定の圧力以下になると、バルブ96に制御信号を送り、バルブ96を遮断する。
このように構成された給水弁装置によれば、入口管路91内の圧力が所定の圧力以下になり、逆流の危険が生じた際に、入口管路91の上流側に配置されたバルブ96を遮断するので、給水弁装置から水道への逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
[図1]本発明の第1実施形態による水洗大便器の上面図である。
[図2]本発明の第1実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
[図3]本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている給水弁装置の上面図である。
[図4]本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている給水弁装置の正面図である。
[図5]本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている給水弁装置の側面図である。
[図6]本発明の第1実施形態による水洗大便器に使用されている給水弁装置の全断面図である。
[図7]本発明の第2実施形態の水洗大便器に使用される給水弁装置のバキュームブレーカの部分を示す拡大断面図である。
[図8]給水弁装置の給水弁装置の入口付近の拡大断面図を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 水洗大便器本体
4 給水弁装置
6 ボール部
8 リム部
10 ジェットノズル
12 トラップ管路
14 ジェット吐水管路
16 リム吐水管路
18 給水弁装置入口
20 主弁体
22 弁座
24 ローター
26 リム側入水口
28 リム側第1弁体
30 リム側水流路
32 リム側第2弁体
34 リム側出水口
36 リム側第1大気導入口
37 リム側第2大気導入口
38 水受け部材
39 リム側蓋
40 リム側移送管路
41 ジェット側入水口
42 ジェット側第1弁体
44 ジェット側水流路
46 ジェット側第2弁体
48 ジェット側出水口
49 ジェット側第2大気導入口
50 ジェット側第1大気導入口
51 ジェット側蓋
52 ジェット側移送管路
54 手動用主弁体
56 弁座
58 手動操作部
60 回動板
70 本発明の第2実施形態に使用されるバキュームブレーカ
80 ホールIC
82 コントローラ
90 給水弁装置
91 入口管路
92 圧力センサ
94 コントローラ
96 バルブ
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入水口、出水口及びそれらを連通させる水流路、並びに、この水流路と大気とを連通させる第1大気導入口及び第2大気導入口を備えた本体部と、
この本体部の中に配置された第1弁体と、
上記本体部の中の、上記第1弁体の下流側に配置された第2弁体と、を有し、
上記第1弁体は、通水時において、上記第1大気導入口を閉鎖し、上記入水口を開放して、上記入水口と、上記第1弁体と上記第2弁体の間の水流路とを連通させる第1の位置と、非通水時において、上記入水口を閉鎖し、上記第1大気導入口を開放して、上記第1大気導入口と、上記第1弁体と上記第2弁体の間の水流路とを連通させる第2の位置との間で移動可能であり、
上記第2弁体は、通水時において、上記第2大気導入口を閉鎖し、上記第1弁体と上記第2弁体の間の水流路を開放して、上記第1弁体と上記第2弁体の間の水流路と、上記出水口とを連通させる第1の位置と、非通水時において、上記第1弁体と上記第2弁体の間の水流路を閉鎖し、上記第2大気導入口を開放して、上記第2大気導入口と上記出水口を連通させる第2の位置との間で移動可能であることを特徴とするバキュームブレーカ。
【請求項2】
上記第1弁体と、上記第2弁体が異なる作動形式を有する請求項1記載のバキュームブレーカ。
【請求項3】
上記第1弁体又は上記第2弁体は、その何れか一方が直動式の弁体であり、他方がスイング式の弁体である請求項2記載のバキュームブレーカ。
【請求項4】
さらに、上記第1大気導入口から溢れ出た水を受ける水受け部材と、上記第2大気導入口から溢れ出た水を上記水受け部材に流入させる移送管路と、を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載のバキュームブレーカ。
【請求項5】
さらに、上記第2大気導入口から溢れ出た水を受ける水受け部材と、上記第1大気導入口から溢れ出た水を上記水受け部材に流入させる移送管路と、を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載のバキュームブレーカ。
【請求項6】
入水口、出水口及びそれらを連通させる水流路を備え且つこの水流路と大気とを連通させる大気導入口を備えた本体部と、
この本体部内に配置され、通水時において上記大気導入口を閉鎖し、上記入水口を開放して上記入水口と上記出水口を連通させる第1の位置と、非通水時において上記入水口を閉鎖し、上記大気導入口を開放して上記大気導入口と上記出水口を連通させる第2の位置との間で移動可能な弁体と、
この弁体の作動状態を検出する作動検出手段と、
この作動検出手段が上記弁体の誤作動を検出したとき、警報を発生させ、又は水道管との連通を遮断させる制御手段と、
を有することを特徴とするバキュームブレーカ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のバキュームブレーカと、
水道管と上記バキュームブレーカの上記入水口とを連通させ、又は、水道管と上記バキュームブレーカの上記入水口とを遮断させる主弁体と、
上記バキュームブレーカの出水口に接続された吐水管路と、
を有することを特徴とする給水弁装置。
【請求項8】
水道管直結式の水洗大便器に洗浄水を供給する給水弁装置であって、
上記水洗大便器のリム部に洗浄水を吐水させるリム吐水管路と、
このリム吐水管路に上記出水口が接続された、請求項1乃至6の何れか1項に記載のリム側のバキュームブレーカと、
上記水洗大便器のジェットノズルに洗浄水を吐水させるジェット吐水管路と、
このジェット吐水管路に上記出水口が接続された、請求項1乃至6の何れか1項に記載のジェット側のバキュームブレーカと、
水道管に接続され、止水状態と、吐水状態とを切り替える主弁体と、
上記水道管から供給され、上記主弁体を通過した洗浄水を、上記第1バキュームブレーカの上記入水口、又は上記第2バキュームブレーカの上記入水口に導く切り替え弁と、
を有することを特徴とする給水弁装置。
【請求項9】
ボール部と、このボール部の上方に形成されたリム部と、上記ボール部の底部に設けられたジェットノズルと、を備えた水洗大便器本体と、
請求項8記載の給水弁装置と、
を有することを特徴とする水洗大便器。

【国際公開番号】WO2005/098152
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512267(P2005−512267)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005334
【国際出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】