説明

バッテリパックの組み立て設備

【課題】バッテリパックの製造コストおよび重量の低減が図られるバッテリパックの組み立て設備、を提供する。
【解決手段】バッテリパックの組み立て設備は、バッテリスタック50にロアケース61を組み付けるための設備である。組み立て設備は、バッテリスタック50を持ち上げるとともに、バッテリスタック50に対してロアケース61を仮保持するハンガー21と、ハンガー21に設けられ、バッテリスタック50に対してロアケース61を位置決めする位置決め機構31とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、バッテリパックの組み立て設備に関し、より特定的には、走行用の電源として車両に搭載されるバッテリパックの組み立て設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ組み立て設備に関連して、たとえば、特開2002−225570号公報には、バッテリ列を構成する複数のバッテリを効率よく固定することを目的としたバッテリ固定構造が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたバッテリ固定構造においては、複数のバッテリが厚み方向に積層されることにより、バッテリ列が構成されている。バッテリ列は、ロアケース上に載置されており、バッテリ列の両端のバッテリが、バッテリ固定部材によってロアケースに固定されている。
【0003】
また、特開2006−236826号公報には、ボルト等による組み付け工程を少なくすることにより、締結作業の効率向上を図ることを目的とした電池パックが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された電池パックにおいては、電池集合体にロアケースおよびアッパケースを組み付ける際、電池モジュールフランジ部にロアケースフランジ部およびアッパケースフランジ部を重ね合わせ、ボルトにより一括して締結固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−225570号公報
【特許文献2】特開2006−236826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示されたバッテリ固定構造においては、バッテリ固定部材をロアケースおよびバッテリ列に挿入するため、バッテリ列に対してロアケースを位置決めするための構造を設ける必要がある。しかしながら、この構造をバッテリ側に設けた場合、バッテリの製造コストや、完成後のバッテリの重量が増大する原因となる。また、位置決め構造は、バッテリの組み立て工程の後は不要となるため、バッテリにおいてその構造上、無駄な部分となる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、バッテリパックの製造コストおよび重量の低減が図られるバッテリパックの組み立て設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったバッテリパックの組み立て設備は、バッテリスタックにケース体を組み付けるための設備である。バッテリパックの組み立て設備は、バッテリスタックを持ち上げるとともに、バッテリスタックに対してケース体を仮保持するハンガーと、ハンガーに設けられ、バッテリスタックに対してケース体を位置決めする位置決め機構とを備える。
【0008】
このように構成されたバッテリパックの組み立て設備によれば、組み立て設備側のハンガーに位置決め機構が設けられるため、製品側のバッテリスタックに位置決め機構を設ける必要がなくなる。これにより、バッテリパックの製造コストを削減するとともに、組み立て完成後のバッテリパックの重量を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上に説明したように、この発明に従えば、バッテリパックの製造コストおよび重量の低減が図られるバッテリパックの組み立て設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態におけるバッテリパックの組み立て設備を示す斜視図である。
【図2】図1中の組み立て設備を用いてバッテリパックを組み立てる第1工程を示す斜視図である。
【図3】図1中の組み立て設備を用いてバッテリパックを組み立てる第2工程を示す斜視図である。
【図4】図1中の組み立て設備を用いてバッテリパックを組み立てる第3工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態におけるバッテリパックの組み立て設備を示す斜視図である。図2から図4は、図1中の組み立て設備を用いてバッテリパックを組み立てる工程を示す斜視図である。
【0013】
図1から図4を参照して、本実施の形態における組み立て設備10によって組み立てられるバッテリパックは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリ(2次電池)から電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車に搭載される。組み立て設備10は、このハイブリッド自動車の製造工場に設置されている。
【0014】
図2を参照して、まず、組み立て設備10によって組み立てられるバッテリパックの構造について簡単に説明すると、バッテリパックは、複数のバッテリセル51を有する。各バッテリセル51は、リチウムイオン電池からなる。複数のバッテリセル51は、矢印101に示す一方向(以下、バッテリセル51の積層方向という)に積層されている。複数のバッテリセル51は、その端子間が図示しないバスバーによって接続されることにより、互いに電気的に直列に接続されている。
【0015】
積層されたバッテリセル51の底面には、後述するロアケース61の締結用のボルト71(図3を参照のこと)が挿入されるボルト用挿入孔59が形成されている。
【0016】
バッテリパックは、エンドプレート57mおよびエンドプレート57n(以下、特に区別しない場合には、エンドプレート57という)と、拘束バー56とをさらに有する。
【0017】
エンドプレート57mおよびエンドプレート57nは、それぞれ、積層された複数のバッテリセル51の両端に配置されている。複数のバッテリセル51は、エンドプレート57mとエンドプレート57nとの間に挟持されている。エンドプレート57には、凹部58が形成されている。凹部58は、エンドプレート57が複数のバッテリセル51の両端に配置された状態において外側に面する側面に形成されている。
【0018】
拘束バー56は、エンドプレート57mとエンドプレート57nとの間を連結している。拘束バー56は、積層された複数のバッテリセル51の対向する側面(上側面、下側面)上にそれぞれ設けられている。
【0019】
このような構成により、エンドプレート57mおよびエンドプレート57nは、バッテリセル51にその積層方向の締め付け力を作用させ、複数のバッテリセル51を一体に拘束している。本実施の形態においては、積層された複数のバッテリセル51と、複数のバッテリセル51を一体に拘束するためのエンドプレート57m,57nおよび拘束バー56とを含むアッセンブリにより、バッテリスタック50が構成されている。
【0020】
バッテリパックは、ケース体としてのロアケース61をさらに有する。ロアケース61は、バッテリスタック50が載置される受け皿形状を有する。
【0021】
ロアケース61には、締結用のボルト71が挿入されるボルト用挿入孔62が形成されている。ボルト用挿入孔62は、ボルト用挿入孔59に対応する位置に形成されている。ロアケース61は、ボルト用挿入孔62およびボルト用挿入孔59に挿入される、締結部材としてのボルト71によって、バッテリスタック50に締結される。ロアケース61には、後述する位置決めピン32が挿入される位置決め用孔63がさらに形成されている。位置決め用孔63は、略矩形の平面形状を有するロアケース61の対角の位置にそれぞれ形成されている。
【0022】
続いて、組み立て設備10の基本的な構造について説明すると、図1から図4を参照して、組み立て設備10は、バッテリスタック50にロアケース61を組み付けるための設備である。組み立て設備10は、バッテリスタック50を持ち上げるとともに、バッテリスタック50に対してロアケース61を仮保持するハンガー21と、ハンガー21に設けられ、バッテリスタック50に対してロアケース61を位置決めする位置決め機構31とを有する。
【0023】
さらに組み立て設備10の構造について詳細に説明する。組み立て設備10は、ハンガー21Aおよびハンガー21B(以下、特に区別しない場合は、ハンガー21という)と、位置決め機構31とを有して構成されている。
【0024】
ハンガー21Aとハンガー21Bとは、所定の間隔(バッテリセル51の積層方向におけるバッテリスタック50の長さ程度の間隔)を設けて、互いに向い合うように配設されている。ハンガー21Aとハンガー21Bとは、互いに同一構造を有する。
【0025】
ハンガー21は、バッテリパックの組み立てラインにおいて、バッテリスタック50を持ち上げ、所定の姿勢に保持する機能を有する。
【0026】
上記機能を発揮するために、ハンガー21は、スタック係止部22を有する。ハンガー21Aのスタック係止部22は、ハンガー21Bに向けて折れ曲がる鉤型形状を有し、ハンガー21Bのスタック係止部22は、ハンガー21Aに向けて折れ曲がる鉤型形状を有する。スタック係止部22は、回動可能なように設けられている。スタック係止部22を回動させ、ハンガー21Aのスタック係止部22をエンドプレート57mの凹部58に配置し、ハンガー21Bのスタック係止部22をエンドプレート57nの凹部58に配置することによって、バッテリスタック50が持ち上げられ、組み立て作業者の作業し易い姿勢に保持される。
【0027】
ハンガー21は、ロアケース61がバッテリスタック50に締結される前に、ロアケース61をバッテリスタック50に対して仮保持する機能をさらに有する。
【0028】
上記機能を発揮するために、ハンガー21は、ケース係止部26を有する。ケース係止部26は、スタック係止部22と同様の鉤型形状を有する。バッテリスタック50の底面にロアケース61が宛がわれた状態において、ハンガー21Aのケース係止部26がエンドプレート57m側からロアケース61の周縁に引っ掛けられ、ハンガー21Bのケース係止部26がエンドプレート57n側からロアケース61の周縁に引っ掛けられることによって、ロアケース61が仮保持される。
【0029】
ケース係止部26は、その先端がロアケース61の周縁に引っ掛けられる位置から後退するように、揺動自在に設けられている。
【0030】
位置決め機構31は、ハンガー21に設けられている。より具体的には、位置決め機構31は、スタック係止部22から分岐して延びる腕部23の先端に設けられている。
【0031】
位置決め機構31は、棒状部材としての位置決めピン32と、アクチュエータとしてのエアシリンダ33とから構成されている。バッテリスタック50の底面にロアケース61が宛がわれた状態において、位置決めピン32がロアケース61の位置決め用孔63に挿入されることによって、バッテリスタック50に対してロアケース61が位置決めされる。エアシリンダ33は、位置決めピン32をその軸方向に往復運動させるアクチュエータとして設けられている。位置決めピン32を駆動するアクチュエータは、エアシリンダに限られず、適宜選択される。
【0032】
続いて、図1中の組み立て設備10を用いてバッテリパックを組み立てる工程について説明する。
【0033】
図2を参照して、まず、前工程において、バッテリスタック50を完成させる。次に、ハンガー21によってバッテリスタック50を持ち上げ、所定の姿勢に保持する。バッテリスタック50の底面にロアケース61を宛がう。この際、位置決めピン32をロアケース61の位置決め用孔63に挿入することによって、ボルト用挿入孔59とボルト用挿入孔62との位置合わせを行なう。ケース係止部26を揺動させることにより、位置決めされたロアケース61の仮保持を行なう。
【0034】
図3を参照して、次に、ボルト71をボルト用挿入孔62およびボルト用挿入孔59に挿入することにより、ロアケース61をバッテリスタック50に対して締結する。図4を参照して、ロアケース61の締結後の後工程において、エアシリンダ33によって位置決めピン32を駆動させ、位置決め用孔63から引き抜いた状態とする。
【0035】
このように構成された、この発明の実施の形態におけるバッテリパックの組み立て設備10によれば、組み立て設備側のハンガー21に位置決め機構31が設けられるため、製品側のバッテリスタック50に位置決め機構を設ける必要がなくなる。これにより、バッテリパックが簡易な構成となるため、バッテリパックの製造コストおよび重量を低減することができる。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、主に、バッテリから電力供給されるモータを動力源として備える車両の組み立て工場で使用される。
【符号の説明】
【0038】
10 組み立て設備、21,21A,21B ハンガー、22 スタック係止部、23 腕部、26 ケース係止部、31 位置決め機構、32 位置決めピン、33 エアシリンダ、50 バッテリスタック、51 バッテリセル、56 拘束バー、57,57m,57n エンドプレート、58 凹部、59,62 ボルト用挿入孔、61 ロアケース、63 位置決め用孔、71 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリスタックにケース体を組み付けるための、バッテリパックの組み立て設備であって、
バッテリスタックを持ち上げるとともに、バッテリスタックに対してケース体を仮保持するハンガーと、
前記ハンガーに設けられ、バッテリスタックに対してケース体を位置決めする位置決め機構とを備える、バッテリパックの組み立て設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−225435(P2010−225435A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71929(P2009−71929)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】