説明

バッテリ充電装置

【課題】メインバッテリとサブバッテリとを充電するバッテリ充電装置において、サブバッテリが消耗したときにメインバッテリが消耗して回復できなくなるのを防止する。
【解決手段】エンジンにより駆動される交流発電機1の出力を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を出力端子2a,2b間に出力する電圧調整機能付きの整流電源回路2を備えたバッテリ充電装置に主出力端子2cと補助出力端子2dを設け、主出力端子2cと出力端子2aとの間に発電機1が出力を発生しているときにオン状態になる第1のMOSFET F1を設ける。また補助出力端子2dと出力端子2aとの間に整流電源回路の出力電圧が設定値以上のときにオン状態になる第2のMOSFET F2を設け、主出力端子2cと整流電源回路の負極側出力端子2bとの間及び補助出力端子2dと負極側出力端子2bとの間にそれぞれメインバッテリ3及びサブバッテリ4を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにより駆動される交流発電機の整流出力でバッテリを充電するバッテリ充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより駆動される車両に搭載されるバッテリ充電装置は、エンジンにより駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と、正極側及び負極側の出力端子と、入力端子に与えられた交流電圧を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を上記正極側出力端子と負極側出力端子との間に出力する電圧調整機能付きの整流電源回路とを備えていて、整流電源回路の出力電圧でバッテリを充電するようにしている。
【0003】
最近のエンジン駆動車両においては、バッテリにより駆動される電装品負荷が多くなっているため、エンジン始動用電動機を駆動するメインバッテリの外にサブバッテリを設けて、電装品負荷の増大に対処し得るようにしている。この種の車両に搭載するバッテリ充電装置は、メインバッテリとサブバッテリとの双方を充電することが要求される。
【0004】
メインバッテリとサブバッテリとを充電し得るようにしたバッテリ充電装置としては、特許文献1及び特許文献2に示されたものが知られている。これらの特許文献に示されたバッテリ充電装置では、メインバッテリの正極端子と発電機の出力端子との間及びサブバッテリの正極端子と発電機の出力端子との間にそれぞれカソードをバッテリ側に向けた別個のダイオードを接続して、メインバッテリとサブバッテリとを分離していた。
【0005】
この種のバッテリ充電装置では、何らかの原因でサブバッテリが過放電状態になったときに、充電電流の大部分がサブバッテリ側に流れるため、メインバッテリの充電がほとんど行なわれなくなる。このような状態になると、メインバッテリが徐々に消耗してその機能が失われるため、エンジンを始動することができなくなることがある。
【0006】
また特許文献3に示されているように、メインバッテリとサブバッテリとの間を分離することなく、メインバッテリの電圧でサブバッテリを充電する回路を設けたバッテリ充電装置も知られているが、このバッテリ充電装置においても、サブバッテリが過放電状態になったときには、メインバッテリの充電がほとんど行なわれなくなるため、メインバッテリが消耗してその機能が失われることになる。
【特許文献1】特開平2−276428号公報
【特許文献2】特開平9−46919号公報
【特許文献3】特開2004−260903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来のバッテリ充電装置においては、サブバッテリが過放電状態になったときにメインバッテリを十分に充電することができなくなって、メインバッテリが消耗し、エンジンを始動することができなくなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、メインバッテリの消耗によりエンジンを始動することができなくなったり、メインバッテリの負荷を駆動することができなくなったりするのを防ぐことができるようにしたバッテリ充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンにより駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と正極側及び負極側の出力端子と入力端子に与えられた交流電圧を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を正極側出力端子と負極側出力端子との間に出力する回路とを有する電圧調整機能付きの整流電源回路を備えて、整流電源回路の出力でメインバッテリとサブバッテリとを充電するバッテリ充電装置に適用される。
【0010】
本発明においては、主出力端子及び補助出力端子と、整流電源回路の正極側出力端子と主出力端子との間及び整流電源回路の正極側出力端子と補助出力端子との間にそれぞれ設けられた第1及び第2の充電制御用スイッチと、整流電源回路の入力端子間に交流電圧が与えられているときに第1の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第1の充電制御用スイッチをオン状態にする第1の充電制御用スイッチ駆動回路と、整流電源回路の正極側出力端子と負極側出力端子との間の電圧が設定値以上になっているときに第2の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第2の充電制御用スイッチをオン状態にする第2の充電制御用スイッチ駆動回路と、主出力端子側にアノードを向けて第1の充電制御用スイッチに対して並列に設けられた第1のダイオードと、補助出力端子側にアノードを向けて充電制御用スイッチに対して並列に設けられた第2のダイオードとが設けられて、主出力端子と整流電源回路の負極側出力端子との間にメインバッテリが接続され、補助出力端子と整流電源回路の負極側出力端子との間にサブバッテリが接続される。
【0011】
上記のように構成すると、交流発電機が出力を発生しているときに、整流電源回路の出力でメインバッテリを充電することができ、整流電源回路の両端の電圧(メインバッテリの両端の電圧)が設定値以上になっているときにサブバッテリを充電することができる。またメインバッテリが消耗して設定値よりも低くなったときには、サブバッテリを充電することなく、発電機の出力で整流電源回路を通してメインバッテリを充電してメインバッテリの電圧を回復させることができる。
【0012】
本出願人は先に、特願2004−283721号において、整流電源回路の正極側出力端子と補助出力端子との間に充電制御用スイッチを接続するとともに、アノードを補助出力端子側に向けたダイオードを充電制御用スイッチに対して並列に接続することにより、メインバッテリが消耗したときにサブバッテリの電圧でメインバッテリを充電するようにしたバッテリ充電装置を提案した。このバッテリ充電装置によれば、メインバッテリが消耗したときにサブバッテリの電圧でメインバッテリを充電してメインバッテリの電圧を回復させることができるが、何らかの原因でサブバッテリが過放電状態になってその機能を失ったときには、整流電源回路の出力がほとんどサブバッテリに食われてしまうため、メインバッテリの充電を行なうことができなくなって、メインバッテリが徐々に消耗し、その機能を失うおそれがある。
【0013】
これに対し、本発明においては、あくまでもメインバッテリを主のバッテリとして、発電機の出力で優先的に充電し、メインバッテリの両端の電圧が設定値以上のときにのみサブバッテリを充電するため、メインバッテリが消耗してエンジンを始動させることができなくなったり、メインバッテリの負荷を駆動することができなくなったりするのを防ぐことができる。
【0014】
本発明の好ましい態様では、整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記主出力端子に接続されたNチャンネル型の第1のMOSFETにより上記第1の充電制御用スイッチが構成され、整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記補助出力端子に接続されたNチャンネル型の第2のMOSFETにより上記第2の充電制御用スイッチが構成される。また第1及び第2のMOSFETの寄生ダイオードがそれぞれ第1及び第2のダイオードとして用いられる。
【0015】
このように、第1及び第2の充電制御用スイッチとしてMOSFETを用いると、それぞれのドレインソース間に形成されている寄生ダイオードを第1及び第2のダイオードとして用いることができるため、構成を簡単にすることができる。
【0016】
上記のように、第1の充電制御用スイッチ及び第2の充電制御用スイッチをそれぞれ第1のMOSFET及び第2のMOSFETにより構成する場合には、第1のMOSFETのゲートとドレインとの間に接続された第1の抵抗器と、第1のMOSFETのゲートに一端が接続された第2の抵抗器と、第2の抵抗器の他端と整流電源回路の負極側出力端子との間に接続されて、交流発電機が出力を発生したときにオン状態になるように制御される第1のFET駆動用スイッチとにより、第1の充電制御用スイッチ駆動回路を構成することができる。また第2のMOSFETのゲートと整流電源回路の正極側出力端子との間に接続された第3の抵抗器と、第2のMOSFETのゲートに第4の抵抗器を通して一端が接続されると共に他端が第2の抵抗器の他端に接続されて整流電源回路の出力電圧が設定値を超えたときにオン状態になるように制御される第2のFET駆動用スイッチとにより第2の充電制御用スイッチ駆動回路を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、交流発電機が出力を発生しているときに、整流電源回路の出力でメインバッテリを充電することができ、整流電源回路の両端の電圧(メインバッテリの両端の電圧)が設定値以上になっているときにサブバッテリを充電することができる。またメインバッテリが消耗して設定値よりも低くなったときには、サブバッテリを充電することなく、発電機の出力で整流電源回路を通してメインバッテリを充電してメインバッテリの電圧を回復させることができる。また万一サブバッテリが過放電状体になったとしても、メインバッテリの両端の電圧が設定値以上になっていないとサブバッテリへの充電電流の供給は行なわれないため、発電機の出力がサブバッテリに食われてメインバッテリの充電が行なわれないといった事態が生じるのを防ぐことができる。
【0018】
このように、本発明においては、あくまでもメインバッテリを主のバッテリとして発電機の出力で優先的に充電し、メインバッテリの両端の電圧が設定値以上のときにのみサブバッテリを充電するようにしたため、メインバッテリが消耗してエンジンを始動させることができなくなったり、メインバッテリの負荷を駆動することができなくなったり、サブバッテリが過放電状態になったときにメインバッテリの充電が行なわれなくなって該メインバッテリが消耗したりするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係わるバッテリ充電装置の好ましい構成例を示したもので、同図において1は図示しないエンジンにより駆動される磁石式交流発電機、2は交流発電機1の出力が入力される入力端子2u,2v及び2wと、正極側及び負極側の出力端子2a及び2bと、入力端子2u〜2wに与えられた交流電圧を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を正極側出力端子2aと負極側出力端子2bとの間に出力する回路とを有する電圧調整機能付きの整流電源回路、3はメインバッテリ、4はサブバッテリである。
【0020】
メインバッテリ3には電源スイッチ5を通してメイン負荷6が接続され、サブバッテリ4には電源スイッチ7を通してサブ負荷8が接続されている。メイン負荷6には、エンジン始動用電動機の外、エンジンを点火する点火装置、エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置、点火装置や燃料噴射装置を制御する電子式制御ユニット(ECU)など、エンジンを運転するために駆動することが必須の電装品負荷が含まれている。サブ負荷8には、適宜の負荷、例えば、オプションで車両に取り付けられる各種の負荷が含まれている。
【0021】
整流電源回路2は、カソードが共通接続されたダイオードDu,Dv及びDwと、ダイオードDu,Dv及びDwのアノードにカソードがそれぞれ接続され、アノードが共通接続されたダイオードDx,Dy及びDzとからなるダイオードブリッジ全波整流回路2Aと、この整流回路のブリッジの下辺を構成するダイオードDx,Dy及びDzにそれぞれ逆並列接続された出力短絡用サイリスタTh1,Th2及びTh3と、サイリスタTh1〜Th3を制御する制御回路2Bとからなっている。
【0022】
整流回路2Aを構成するダイオードDu,Dv及びDwのそれぞれのアノードとダイオードDx,Dy及びDzのそれぞれのカソードとの接続点から整流電源回路2の入力端子2u,2v及び2wが引き出され、ダイオードDu,Dv及びDwのカソードの共通接続点及びダイオードDx,Dy及びDzのアノードの共通接続点からそれぞれ整流電源回路2の正極側出力端子2a及び負極側出力端子2bが引き出されている。入力端子2u,2v及び2wは、磁石式交流発電機1に設けられて星形結線された3相の電機子コイルLu,Lv及びLwの非中性点側の端子に接続されている。
【0023】
制御回路2Bは出力端子2a,2b間の電圧が設定値を超えないようにサイリスタTh1ないしTh3を制御する回路で、図示の制御回路2Bは、正極側出力端子2aにエミッタが接続され、コレクタが抵抗器Ra1ないしRa3を通してサイリスタTh1ないしTh3のゲートにそれぞれ接続されたPNPトランジスタTRaと、サイリスタTh1ないしTh3のゲートカソード間にそれぞれ並列接続された抵抗器Rb1ないしRb3と、トランジスタTRaのエミッタベース間に接続された抵抗器Rcと、トランジスタTRaのベースにカソードが接続されたツェナーダイオードZD1と、ツェナーダイオードZD1のアノードと負極側出力端子2bとの間に接続された抵抗器Rdとからなっている。
【0024】
図示の整流電源回路2においては、出力短絡用サイリスタTh1ないしTh3と制御回路2Bとにより出力短絡式のレギュレータが構成されている。この整流電源回路2の動作は次の通りである。
【0025】
ダイオードDuないしDw及びDxないしDzからなる整流回路2Aは、発電機1が出力する交流電圧を直流電圧に変換して出力端子2a,2b間から出力する。出力端子2a,2b間の電圧が設定値を超えると、ツェナーダイオードZD1がオン状態になるため、トランジスタTRaにベース電流が流れて該トランジスタTRaがオン状態になる。トランジスタTRaがオン状態になると出力端子2a側からトランジスタTRaと抵抗器Ra1ないしRa3とを通してサイリスタTh1ないしTh3のゲートにトリガ信号が与えられるため、これらのサイリスタのうち、アノードの電位がカソードの電位よりも高くなっているものがオン状態になり、オン状態になっているサイリスタと整流回路のブリッジの下辺を構成するダイオードDxないしDzのいずれかとを通して発電機1の出力が短絡される。これにより発電機1の出力電圧が低下させられ、出力端子2a,2b間の電圧が低下させられる。出力端子2a,2b間の電圧が前記設定電圧よりも低くなるとトランジスタTRaがオフ状態になるため、サイリスタTh1ないしTh3へのトリガ信号の供給が停止する。サイリスタTh1ないしTh3は、それぞれのアノード電流が保持電流未満になった時点でオフ状態になり、発電機1の出力の短絡が解除される。これにより発電機1の出力電圧が上昇し、出力端子2a,2b間の電圧が上昇する。これらの動作の繰り返しにより、出力端子2a,2b間の電圧が設定値を超えないように制御され、発電機1の出力電圧が設定値を超えている状態では、出力端子2a,2b間の電圧がほぼ設定値付近に保たれる。
【0026】
本発明においては、メインバッテリを接続するための主出力端子2cと、サブバッテリを接続するための補助出力端子2dとが設けられ、整流電源回路の正極側出力端子2aと主出力端子2cとの間、及び整流電源回路の正極側出力端子2aと補助出力端子2dとの間にそれぞれ第1の充電制御用スイッチ11及び第2の充電制御用スイッチ12が接続されている。
【0027】
図示の例では、整流電源回路の正極側出力端子2aにドレインが接続され、ソースが主出力端子2cに接続されたNチャンネル型の第1のMOSFET F1により第1の充電制御用スイッチ11が構成され、整流電源回路の正極側出力端子2aにドレインが接続され、ソースが補助出力端子2dに接続されたNチャンネル型の第2のMOSFET F2により第2の充電制御用スイッチ12が構成されている。この例では、第1のMOSFET F1のドレインソース間に形成されている寄生ダイオードDp1が、アノードを主出力端子2c側に向けた状態で第1の充電制御用スイッチ11に対して並列に設けられる第1のダイオードとして用いられ、MOSFET F2のドレインソース間に形成されている寄生ダイオードDp2が、アノードを補助出力端子2d側に向けた状態で第2の充電制御用スイッチ11に対して並列に設けられる第2のダイオードとして用いられている。
【0028】
また第1のMOSFET F1のゲートとドレインとの間に接続された第1の抵抗器R1と、第1のMOSFETのゲートに一端が接続された第2の抵抗器R2と、第2の抵抗器R2の他端と整流電源回路の負極側出力端子2bとの間に接続された第1のFET駆動用スイッチ13と、交流発電機1が出力を発生したときに第1のFET駆動用スイッチ13をオン状態にするように制御する第1のFET駆動用スイッチ制御回路15とにより、第1の充電制御用スイッチ駆動回路が構成されている。
【0029】
図示の例では、エミッタが整流電源回路の負極側出力端子2bに接続され、コレクタが第2の抵抗器R2の他端に接続されたNPNトランジスタTR1により第1のFET駆動用スイッチ13が構成され、アノードが交流発電機の3相の出力端子に接続され、カソードがトランジスタTR1のベースに共通接続されたダイオードD1ないしD3と、トランジスタTR1のベースと整流電源回路の負極端子2bとの間に接続されたコンデンサC1とにより、第1のFET駆動用スイッチ制御回路15が構成されている。
【0030】
また第2のMOSFET F2のゲートと整流電源回路の正極側出力端子との間に接続された第3の抵抗器R3と、第2のMOSFETのゲートに第4の抵抗器R4を通して一端が接続されると共に他端が第2の抵抗器R2の他端に接続された第2のFET駆動用スイッチ14と、整流電源回路2の出力電圧が設定値を超えたときに第2のFET駆動用スイッチ14をオン状態にするように制御する第2のFET駆動用スイッチ制御回路16とにより、第2の充電制御用スイッチ駆動回路が構成されている。整流電源回路2の出力電圧の設定値は、ツェナーダイオードZD1が導通するときの整流電源回路の出力電圧であり、通常は、メインバッテリ3の充電完了時の電圧(例えば定格電圧が12Vの場合には14V程度)に等しく設定される。
【0031】
図示の例では、エミッタがトランジスタTR1のコレクタに接続され、コレクタが第4の抵抗器R4を通してFET F2のゲートに接続されたNPNトランジスタにより、第2のFET駆動用スイッチ14が構成され、エミッタ及びコレクタがそれぞれ整流電源回路2の正極端子2a及びトランジスタTR2のベースに接続され、ベースがツェナーダイオードZD1のカソードに接続されたPNPトランジスタTR3により、第2のFET駆動用スイッチ制御回路16が構成されている。
【0032】
本発明においては、メインバッテリ3が主出力端子2cと整流電源回路2の負極側出力端子2bとの間に接続され、サブバッテリ4が補助出力端子2dと整流電源回路の負極側出力端子2bとの間に接続される。
【0033】
上記のバッテリ充電装置において、交流発電機1が出力を発生していないときには、トランジスタTR1にベース電流が与えられないため、該トランジスタTR1がオフ状態にあり、第1のMOSFET F1がオフ状態にある。また発電機1が出力を発生していない状態では、トランジスタTR3にベース電流が流れず、該トランジスタTR3がオフ状態にあるため、トランジスタTR2がオフ状態にある。そのため第2のMOSFET F2もオフ状態にある。この状態では、メインバッテリ3とサブバッテリ4との間にダイオードDp1及びDp2が存在するため、メインバッテリ3からサブバッテリ4側に電流が流れることはなく、サブバッテリ4からメインバッテリ3側に電流が流れることもない。
【0034】
交流発電機1が出力を発生すると、トランジスタTR1にベース電流が流れるため、該トランジスタTR1がオン状態になり、第1のMOSFET F1がオン状態になる。従って、整流電源回路2から第1のMOSFET F1を通してメインバッテリ3に充電電流が流れ、メインバッテリが充電される。整流電源回路2の出力端子2a,2b間の電圧(メインバッテリ3の両端の電圧)が設定値未満のときには、ツェナーダイオードZD1が導通せず、トランジスタTR3にベース電流が流れないため、該トランジスタTR3はオフ状態にある。このときトランジスタTR2はオフ状態にあるため、第2のMOSFET F2はオフ状態にある。従ってメインバッテリ3の電圧が設定値よりも低い状態では、整流電源回路2の出力でサブバッテリ4が充電されることはなく、もっぱらメインバッテリ3が充電される。
【0035】
メインバッテリ3の充電が完了し、整流電源回路2の出力端子間の電圧が設定値以上になると、ツェナーダイオードZD1が導通してトランジスタTR3がオン状態になるため、トランジスタTR2にベース電流が流れて該トランジスタTR2がオン状態になる。これにより第2のMOSFET F2がオン状態になるため、整流電源回路2から第2のMOSFET F2を通してサブバッテリ4に充電電流が供給される。
【0036】
上記のように、本発明においては、整流電源回路の正極側出力端子と主出力端子との間及び整流電源回路の正極側出力端子と補助出力端子との間にそれぞれ第1及び第2の充電制御用スイッチと、アノードを主出力端子側に向けた第1のダイオード及びアノードを補助出力端子側に向けた第2のダイオードとを設けるとともに、整流電源回路の入力端子間に交流電圧が与えられているときに第1の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第1の充電制御用スイッチをオン状態にする第1の充電制御用スイッチ駆動回路と、整流電源回路の正極側出力端子と負極側出力端子との間の電圧が設定値以上になっているときに第2の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第2の充電制御用スイッチをオン状態にする第2の充電制御用スイッチ駆動回路とを設けたので、交流発電機が出力を発生しているときに、整流電源回路の出力でメインバッテリを優先的に充電することができ、整流電源回路の両端の電圧(メインバッテリの両端の電圧)が設定値以上になっているときにサブバッテリを充電することができる。
【0037】
またメインバッテリが消耗して設定値よりも低くなったときには、サブバッテリを充電することなく、発電機の出力で整流電源回路を通してメインバッテリを充電してメインバッテリの電圧を回復させることができる。更に、サブバッテリが過放電状態になったときには、メインバッテリの両端の電圧が設定値以上になっていないとサブバッテリへの充電電流の供給は行なわれないため、発電機の出力がサブバッテリに食われてメインバッテリの充電が行なわれないといった事態が生じるのを防ぐことができる。
【0038】
このように、本発明においては、あくまでもメインバッテリを主のバッテリとして発電機の出力で優先的に充電し、メインバッテリの両端の電圧が設定値以上のときにのみサブバッテリを充電するようにしたため、メインバッテリの両端の電圧の設定値を適正な値に設定しておくことにより、メインバッテリが消耗してエンジンを始動させることができなくなったり、メインバッテリの負荷を駆動することができなくなったり、サブバッテリが過放電状態になったときにメインバッテリの充電が行なわれなくなって該メインバッテリが消耗したりするのを防ぐことができる。
【0039】
上記の実施形態では、第1及び第2の充電制御用スイッチ11及び12をMOSFETにより構成したが、トランジスタやリレーなどの他のオンオフ制御が可能なスイッチ素子によりこれらの充電制御用スイッチを構成することもできる。MOSFET以外のスイッチ素子(寄生ダイオードを有しないスイッチ素子)により第1及び第2の充電制御用スイッチを構成する場合には、主出力端子2c側にアノードを向けた第1のダイオード及び補助出力端子2d側にアノードを向けた第2のダイオードをそれぞれ第1の充電制御用スイッチ及び第2の充電制御用スイッチに対して並列に接続する。
【0040】
整流電源回路2の入力端子間に交流電圧が与えられているときに第1の充電制御用スイッチ11に駆動信号を与えて該第1の充電制御用スイッチをオン状態にする第1の充電制御用スイッチ駆動回路及び整流電源回路の正極側出力端子と負極側出力端子との間の電圧が設定値以上になっているときに前記第2の充電制御用スイッチ12に駆動信号を与えて該第2の充電制御用スイッチをオン状態にする第2の充電制御用スイッチ駆動回路の構成は、上記の例に示したものに限られるものではなく、充電制御用スイッチ11及び12を構成するスイッチ素子に応じて適宜の構成をとることができる。
【0041】
上記の実施形態では、整流電源回路2として、出力短絡式のレギュレータを備えたものを用いたが、整流電源回路は、出力電圧が設定値を超えないように制御するレギュレータ機能を備えたものであればよく、上記のものに限定されない。例えば、ダイオードとサイリスタとの混合ブリッジ回路からなる制御整流回路を設けて、該制御整流回路のサイリスタの導通角を制御することにより出力電圧が設定値を超えないように制御するようにした整流電源回路を用いることもできる。また交流発電機1として励磁式の同期発電機が用いられる場合には、発電機の出力を整流する整流回路と、整流回路の出力が設定値を超えないように、発電機の励磁電流を制御する回路とにより整流電源回路を構成することができる。
【0042】
上記の実施形態では、サブバッテリ4が1つだけ設けられているが、サブバッテリが複数個設けられる場合にも本発明を適用することができる。サブバッテリを複数個設ける場合には、サブバッテリの数だけ補助出力端子を設けて、各補助出力端子と整流電源回路の正極側出力端子との間に、第2の充電制御用スイッチを設けるとともに、アノードを各補助出力端子側に向けた第2のダイオードを各充電制御用スイッチに対して並列に接続し、各補助出力端子と整流電源回路の負極側出力端子との間に各サブバッテリを接続する。この場合充電制御用スイッチ駆動回路及び第2のダイオードは、複数の充電制御用スイッチに対して共通に設けてもよく、複数の充電制御用スイッチに対して個別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示した回路図である。
【符号の説明】
【0044】
1 交流発電機
2 整流電源回路
2c 主出力端子
2d 補助出力端子
3 メインバッテリ
4 サブバッテリ
6 メイン負荷
8 サブ負荷
11 第1の充電制御用スイッチ
12 第2の充電制御用スイッチ
F1 第1のMOSFET
F2 第2のMOSFET
Dp1 寄生ダイオード(第1のダイオード)
Dp2 寄生ダイオード(第2のダイオード)
13 第1のFET駆動用スイッチ
14 第2のFET駆動用スイッチ
15 第1のFET駆動用スイッチ制御回路
16 第2のFET駆動用スイッチ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と正極側及び負極側の出力端子と前記入力端子に与えられた交流電圧を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を前記正極側出力端子と負極側出力端子との間に出力する回路とを有する電圧調整機能付きの整流電源回路を備えて、前記整流電源回路の出力でメインバッテリとサブバッテリとを充電するバッテリ充電装置において、
主出力端子及び補助出力端子と、前記整流電源回路の正極側出力端子と前記主出力端子との間及び前記整流電源回路の正極側出力端子と前記補助出力端子との間にそれぞれ設けられた第1及び第2の充電制御用スイッチと、前記整流電源回路の入力端子間に交流電圧が与えられているときに前記第1の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第1の充電制御用スイッチをオン状態にする第1の充電制御用スイッチ駆動回路と、前記整流電源回路の正極側出力端子と負極側出力端子との間の電圧が設定値以上になっているときに前記第2の充電制御用スイッチに駆動信号を与えて該第2の充電制御用スイッチをオン状態にする第2の充電制御用スイッチ駆動回路と、前記主出力端子側にアノードを向けて前記第1の充電制御用スイッチに対して並列に設けられた第1のダイオードと、前記補助出力端子側にアノードを向けて前記充電制御用スイッチに対して並列に設けられた第2のダイオードとを具備し、
前記主出力端子と前記整流電源回路の負極側出力端子との間に前記メインバッテリが接続され、前記補助出力端子と前記整流電源回路の負極側出力端子との間に前記サブバッテリが接続されること、
を特徴とするバッテリ充電装置。
【請求項2】
前記第1の充電制御用スイッチは、前記整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記主出力端子に接続されたNチャンネル型の第1のMOSFETからなり、
前記第2の充電制御用スイッチは、前記整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記補助出力端子に接続されたNチャンネル型の第2のMOSFETからなり、
前記第1及び第2のMOSFETの寄生ダイオードがそれぞれ前記第1及び第2のダイオードを構成していること、
を特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電装置。
【請求項3】
エンジンにより駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と正極側及び負極側の出力端子と前記入力端子に与えられた交流電圧を整流して設定値を超えないように調整された直流電圧を前記正極側出力端子と負極側出力端子との間に出力する回路とを有する電圧調整機能付きの整流電源回路を備えて、前記整流電源回路の出力でメインバッテリとサブバッテリとを充電するバッテリ充電装置において、
主出力端子及び補助出力端子と、
前記整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記主出力端子に接続されたNチャンネル型の第1のMOSFETと、
前記第1のMOSFETのゲートとドレインとの間に接続された第1の抵抗器と、
前記第1のMOSFETのゲートに一端が接続された第2の抵抗器と、
前記第2の抵抗器の他端と前記整流電源回路の負極側出力端子との間に接続されて、前記交流発電機が出力を発生したときにオン状態になるように制御される第1のFET駆動用スイッチと、
前記整流電源回路の正極側出力端子にドレインが接続され、ソースが前記補助出力端子に接続されたNチャンネル型の第2のMOSFETと、
前記第2のMOSFETのゲートと前記整流電源回路の正極側出力端子との間に接続された第3の抵抗器と、
前記第2のMOSFETのゲートに第4の抵抗器を通して一端が接続されると共に他端が前記第2の抵抗器の他端に接続されて前記整流電源回路の出力電圧が設定値を超えたときにオン状態になるように制御される第2のFET駆動用スイッチと、
を具備し、
前記主出力端子と前記整流電源回路の負極側出力端子との間に前記メインバッテリが接続され、前記補助出力端子と前記整流電源回路の負極側出力端子との間に前記サブバッテリが接続されること、
を特徴とするバッテリ充電装置。
【請求項4】
前記メインバッテリは前記エンジンの始動用電動機を駆動するバッテリである請求項1,2または3に記載のバッテリ充電装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−166609(P2006−166609A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354999(P2004−354999)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】