説明

バリア材料及びその製造方法

【課題】食品の包装、容器、カップ等の製造に使用する基材を被覆するための、酸素バリア特性を有する材料、および、この材料を使用した酸素バリア機能を有する基材の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性のガスバリア材料のバリア特性は、その材料を10〜250ナノメートルの寸法を有する炭酸カルシウムナノ粒子とブレンドする場合に向上される。このバリア材料は、基材にガスバリア特性を提供するために、基材上におかれる。このバリア材料の曝露表面には、ヒートシール可能な材料の層を施用してもよい。このバリア被覆基材を製造するための方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の分野は包装材料である。より具体的には、食品の包装材又は容器やカップに形成することができ、酸素バリア特性を有する、包装用の紙、段ボール原紙又は厚紙であり、また、バリア被覆された包装用の紙又は厚紙を製造する方法である。
【0002】
紙、段ボール原紙及び厚紙において、酸素バリアに対する必要性はよく知られている。酸素が製品に接触すると、製品の貯蔵寿命は低減されてしまう。酸素移動の量と速度は、使用されるバリア層(単数又は複数)のタイプに依存することになる。酸素バリア層は、厚紙上に積層されるか、押出されるか、同時押出され、板に酸素バリア特性が提供される。酸素は、そのバリアが試験されるガスであるが、酸素のバリアは他のガスについても有用であり、一般にガスバリアと呼ばれる。
【0003】
最も有効で最も費用のかかる酸素バリアは、アルミニウムホイルバリアであった。チップスなどの食品は、ホイル又はプラスチック小袋に入れられてきた。また、アルミニウムホイルはジュース容器にも使用されてきた。更に、ナイロンなどのプラスチック材料もバリア材料として使用されてきた。バリア材料のコストを低減させるために、他の多くの材料も提案され、使用されてきた。これらの材料はそれぞれ、属性と欠点を有している。通常、異なる材料から構成される数多くの層が提供され、各層が特別な機能を有している。これらの機能は、取り付けの容易性、一定のガスに対するバリア、含有される液体中の一定の化学物質に対するバリア、二つの層を付着させる能力、容器をシールする能力などである。これらの層はそれぞれ、材料コスト及び製造コストのいずれにおいても容器に対してコストを付加する。
【0004】
最適なバリア構造は、含有される材料が乾燥生成物であるか又は液体であるかにも依存することになる。
【0005】
効果的な酸素バリアは、標準温度及び標準圧力(STP)で50%の相対湿度(%RH)にて、30cc/m/日未満の酸素移動速度(OTR)を有するであろう。ポリビニルアルコールなどの水溶性又は水分散性の酸素バリア材料は、効果的であるために1mあたり大量の材料を必要とする。これは、通常、サイズプレスなどの被覆施用において製造の困難がなく施用することができるよりも多い材料である。水溶性又は水分散性酸素バリア材料の酸素移動速度は、炭酸カルシウムナノ粒子をバリア材料とブレンドした場合に、低下させることができる。
【0006】
一の態様において、水溶性又は水分散性酸素バリア層を、炭酸カルシウムナノ粒子とブレンドして、向上させる。別の態様において、厚紙は酸素バリア特性を有し、最小限の数の押出又は積層された複数の層を使用する。別の態様において、バリア層は、厚紙上に積層又は押出する必要がなく、複数の層を積層又は押出する必要性は最小限である。別の態様において、溶液中の水溶性酸素バリア材料又は水分散性酸素バリア層エマルジョンは、サイズプレスなどの被覆施用において有効量で施用することができる。別の態様において、溶液中の水溶性バリア材料又は水分散性バリア材料エマルジョンを基材に施用することにより、効果的なOTR構造を形成する。別の態様において、溶液中の水溶性バリア材料又は水分散性バリア材料エマルジョンを基材に施用し、バリア材料を熱及び圧力により平らにすることにより、効果的なOTR構造を形成する。別の態様において、溶液中の水溶性バリア材料又は水分散性バリア材料エマルジョンを基材に施用し、次いで、基材及びバリア材料の上にプラスチックフィルムを押出又は積層することにより、効果的なOTR構造を形成する。
【0007】
図1〜11は、バリア構造の断面図である。
【0008】
図12は、バリア被覆を施用するための装置の図である。
【0009】
図1〜11のそれぞれにおいて、10は基材である。本発明の目的のために、「基材」は、16〜500g/mの重量を有する、紙、段ボール原紙又は厚紙と定義される。紙又は段ボール原紙は、16〜340g/mの重量を有するであろう。板紙は、250〜500g/mの重量を有するであろう。
【0010】
図1は、本発明の一態様の図であり、一表面上にバリア層又は被覆12を有する基材10を示す。紙構造は、ポテトチップ用の袋などの食品用小袋に使用できるであろう。段ボール原紙構造は、乾燥食品用の容器に使用できるであろう。バリア層12は、袋又は容器の内層か又は外層のいずれでもよい。
【0011】
図2は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12を有し、基材10の他の表面上に第二のバリア層又は被覆14を有する基材10を示す。同様に、紙構造は、ポテトチップ用の袋などの食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は、乾燥食品用の容器に使用できるであろう。
【0012】
図3は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12を有し、基材10と向かい合うバリア層の外表面上にシーリング層16を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は容器に使用できるであろう。バリア層12及びシーリング層16は、小袋又は容器の内部又は外部にあることができるであろう。小袋又は容器は乾燥製品用に使用することができる。バリア層12及びシーリング層16が小袋、カップ又は容器の内部にある場合は、小袋、カップ又は容器は液体を含有するように使用することができる。
【0013】
図4は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上にシーリング層16、基材10の他の表面上に第二のシーリング層18を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は容器又はカップに使用できるであろう。バリア被覆は、小袋、カップ又は容器構造の内部又は外部にあることができるであろう。小袋又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0014】
図5は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上にシーリング層16、基材10の他の表面上に第二のバリア層又は被覆14、基材10と向かい合うバリア層14の外表面上に第二のシーリング層18を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造はカップ又は容器に使用できるであろう。小袋、カップ又は容器は乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0015】
以下の図面のうちの幾つかは、一又はそれより多い機能的な層を有する。容器又は小袋の外部にある機能的な層の目的は、良好な印刷用表面を提供すること、又は耐磨耗性を提供することである。容器の内部にある機能的な層の目的は、容器中の液体、又はリモネンなどの容器中の液体の要素に対するバリアを提供することである。ある態様においては、機能的な層はシーリング層の下部であることができる。
【0016】
図6は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上にシーリング層16、バリア層12と向かい合うシーリング層16の外表面上に機能的層20を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は容器に使用できるであろう。バリア層は小袋又は容器の内部又は外部にあることができる。小袋又は容器は、乾燥製品用に使用することができ、バリア層及びシーリング層が小袋又は容器の内部にある場合は、液体用に使用することができる。
【0017】
図7は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上にシーリング層16、バリア層12と向かい合うシーリング層16の外表面に機能的層20、基材10の他の面上に第二のシーリング層18、基材10と向かい合う第二のシーリング層18の外表面上に第二の機能的層22を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は容器に使用できるであろう。バリア層は小袋又は容器の内部又は外部にあることができる。小袋又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0018】
図8は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上にシーリング層16、バリア層12と向かい合うシーリング層16の外表面に機能的層20、基材10の他の面上に第二のバリア層14、基材10と向かい合うバリア層14の外表面上に第二のシーリング層18、バリア層14と向かい合う第二のシーリング層18の外表面上に第二の機能的層22を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造は容器に使用できるであろう。小袋又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0019】
図9〜11は、基材の一の面上に二つの異なるバリア材料が存在する態様を説明する。第二のバリア材料は24で示す。このバリア材料は、第二のガスバリア、リモネンバリアなどの他の材料についてのバリア、又は、湿気バリア若しくは液体バリアであってもよい。単一層であっても、又は多層の材料であってもよい。このバリア材料の例は、脂肪族ナイロン;芳香族ナイロン;メタロセン触媒によるナイロン;これらのナイロン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、延伸されたポリエステル、テレフタル酸塩、ポリ塩化ビニル及びポリアクリロニトリルのうち1種又はそれより多いブレンドである。
【0020】
図9〜11には、結合層も含まれる。結合層は、二つの層を結合層のいずれかの面上で付着する接着層である。典型的な結合層は、修飾ポリエチレンである、Surlyn(登録商標)又はBynel(登録商標)である。
【0021】
図9は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上に異なるバリア材料の層24、バリア層12と向かい合う層24の外表面上に結合層26、層24と向かい合う結合層26の外表面上にシーリング層16、基材10の他の表面上に第二のバリア層又は被覆14、基材10と向かい合うバリア層14の外表面上に第二のシーリング層18を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造はカップ又は容器に使用できるであろう。小袋、カップ又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0022】
図10は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上に結合層28、バリア層12と向かい合う結合層28の外表面上に異なるバリア材料の層24、第一の結合層28と向かい合う層24の外表面上に第二の結合層26、層24と向かい合う第二の結合層26の外表面上にシーリング層16、基材10の他の表面上に第二のバリア層又は被覆14、基材10と向かい合うバリア層14の外表面上に第二のシーリング層18を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造はカップ又は容器に使用できるであろう。小袋、カップ又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0023】
図11は、本発明の別の態様の図であり、基材10の一表面上にバリア層又は被覆12、基材10と向かい合うバリア層12の外表面上に機能的層30、バリア層12と向かい合うシーリング層30の外表面上に結合層28、シーリング層30と向かい合う結合層28の外表面上に異なる材料の層24、第一の結合層28と向かい合う層24の外表面上に第二の結合層26、層24と向かい合う第二の結合層26の外表面上にシーリング層16、基材10の外表面上に第二のバリア層又は被覆14、基材10と向かい合うバリア層14の外表面上に第二のシーリング層18を有する基材10を示す。同様に、紙構造は食品用小袋に使用でき、段ボール原紙構造はカップ又は容器に使用できるであろう。小袋、カップ又は容器は、乾燥製品又は液体用に使用することができる。
【0024】
図中、層16、18、20、22及び30は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及びメタロセン触媒による線状低密度ポリエチレン、ならびにこれらの材料のブレンドであってもよい。液体包装用板において、内部の層16及び20も、湿気又は液体バリア材料であり、小袋又は容器内部の液体が厚紙に侵入するのを防ぎ、また、容器の端をともに接着させる。
【0025】
バリア層12及び14は、水溶性又は水分散性バリア材料である。
【0026】
水溶性バリア材料の例は、合成により修飾された多糖;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体;キトサン;及びポリアクリルアミド(PAM)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVOH又はPVA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリアミド、ポリビニルピリジンなどの合成ポリマー;ならびに、これらの材料の任意の塩である。実施例においては、ポリビニルアルコールを使用する。
【0027】
水分散性バリア材料の例は、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及びエチレンビニルアルコールである。
【0028】
実施例1〜6から分かるように、水溶解性又は水分散性バリア材料はそれ自体、効果的であるために大量に使用しなければならない。水溶解性又は水分散性バリア材料の有効性は、バリアの厚さに依存する。例えば、ポリビニルアルコールはそれ自体、通常は、効果的であるためには12〜25g/mの量で使用されるであろう。しかし、商業的なサイズプレスは、最大で12g/mしか施用することができない。ロッド又はグラビュア又はベントブレード・コーターであればより高い被覆重量を提供できるであろう。第二の問題は、水中のポリビニルアルコール(PVOH)溶液のバリア被覆を板に施用すると表面が平坦でなくなることである。平坦でない表面において、薄い領域はバリア特性が不釣合いに低減されることになる。
【0029】
ポリビニルアルコール被覆に対してごく少量の炭酸カルシウムナノ粒子(NPCC)を添加して、ポリビニルアルコールなどの水溶性又は水分散性バリア材料を改質することにより、被覆の酸素バリア特性を有意に改良することができる。例えば、PVOHに対して重量基準で20%のNPCCを添加することにより、表1の実施例4及び表3の実施例18を比較して示すように、酸素移動速度は10分の1より小さく低減されることになる。これにより、ポリビニルアルコール、あるいは他の水溶性又は水分散性バリアを、サイズプレスにより施用することができる2〜12g/mの量で使用することが可能となる。ロッド又はベントブレード・コーターを使用する場合、その量は、それぞれ40g/m及び20g/mまでであろう。
【0030】
炭酸カルシウムナノ粒子は、幾つかの物理的形態であることができる。これらは粒子、ロッド、ニードル及びフレークである。粒子は、粒子の端から端までが10〜250ナノメートルである寸法を有する。ロッド及びニードルは、同じ寸法範囲である10〜250ナノメートルの直径を有する。ロッドは1〜2ミクロンの長さを有し、ニードルは1〜3ミクロンの長さを有する。フレークは、10〜250ナノメートルの寸法範囲の厚さを有する。フレークの長さ又は幅は、1〜5ミクロンの範囲である。本発明の目的のため、「寸法」という用語は、粒子の端から端までの寸法、ロッド又はニードルの直径、及びフレークの厚さを意味する。
【0031】
一の態様において、本発明において有用な炭酸カルシウムナノ粒子は、10〜250ナノメートルの範囲の平均寸法を有する。別の態様において、本発明において有用な炭酸カルシウムナノ粒子は、15〜250ナノメートルの範囲の平均寸法を有する。別の態様において、本発明において有用な炭酸カルシウムナノ粒子は、15〜50ナノメートルの範囲の平均寸法を有する。
【0032】
一の態様において、炭酸カルシウムナノ粒子の水溶性又は水分散性バリア材料に対する重量比は、1:100〜1.5:1であることができる。別の態様において、NPCCの水溶性又は水分散可性バリア材料に対する重量比は、1:25〜1:1であることができる。バリア材料は、溶液又はエマルジョンである。
【0033】
これは、どのように炭酸カルシウムナノ粒子を水溶性又は水分散性材料とブレンドし、紙又は厚紙上に被覆することができるかを示す実施例である。
【0034】
塊になっていないNPCCを適する量の水で希釈し、次いで、水溶性又は水分散性バリア材料の濃縮溶液と混合する。表2の実施例10について、ナノマテリアルズ・テクノロジー(Nanomaterials Technology)からのNP−112炭酸カルシウムナノ粒子の48%スラリー9.3gを水178.2gと完全にブレンドした。次いで、Celvol203ポリビニルアルコールの水中24%溶液である、セラニーズCelvol24203を112.5g完全に混ぜ合わせた。次いで、この被覆を、イリノイ州シカゴのデイトン・エレクトリック・エムエフジー社(Dayton Electric Mfg. Co.)により製造された12インチ実験室用サイズプレスのローラーの間に投じた。次いで、ウェヤーハウザー社(Weyerhaeuser Co.)により製造された311g/mのSBS厚紙の8平方インチ試料を、ニップ圧力設定40、ニップ速度設定24で、サイズプレスを通して供給した。次いで、被覆した試料を、1.0ミルのDow Primacor 1410エチレン−アクリル酸コポリマーであるシーラント層と1.5ミルのDow 1059高密度ポリエチレンである外層とからなる2.5ミルの2層吹込みフィルムにより、両方の表面上で積層した。積層装置は、2分の休止時間で、300°F(149℃)、5トンの圧力にて運転する2フィート×2フィートのフラットプレスであった。
【0035】
酸素移動速度(OTR)は、標準温度及び標準圧力にて、一日に平方メートル(m)の紙又は厚紙を通って移動する酸素の立方センチメートル(cc)で与えられる。移動速度は、以下の試験により測定される。直径70mmの円形試料を積層板から切り出す。
中心に45mmの穴があり、接着剤が裏打ちされたホイルマスクを試料の両方の面に施用し、マスクした試料を100mmの円に切り取る。この試料をイリノイ・インスツルメンツ(Illinois Instruments)8000酸素移動分析器に挿入する。装置標準手順を用いて、23℃、予め設定した湿度にてOTRを測定する。
【0036】
第一のセットの実施例において、図8をみると、36g/mの高密度ポリエチレン層22、24g/mのエチレン−アクリル酸コポリマー層18、ポリビニルアルコール(PVOH)層14、311g/mの厚紙基材層10、ポリビニルアルコール(PVOH)層12、24g/mのエチレン−アクリル酸コポリマー層16、及び36g/mの高密度ポリエチレン層20を有する板を、50%の相対湿度(RH)環境及び90%の相対湿度環境の両方において、酸素移動速度について試験した。PVOHの量は、表1に示すように変化させた。
【0037】
【表1】

【0038】
第二のセットの実施例において、図8をみると、36g/mの高密度ポリエチレン層22、24g/mのエチレン−アクリル酸コポリマー層18、ポリビニルアルコール(PVOH)及び炭酸カルシウムナノ粒子層14、311g/mの厚紙基材層10、ポリビニルアルコール(PVOH)及び炭酸カルシウムナノ粒子層12、24g/mのエチレン−アクリル酸コポリマー層16、及び36g/mの高密度ポリエチレン層20を有する板を、50%の相対湿度(RH)環境及び90%の相対湿度環境の両方において、酸素移動速度について試験した。PVOH及び炭酸カルシウムナノ粒子の量は、表2に示すように変化させた。これらの実施例の目的は、ポリビニルアルコールの重量を変化させ、炭酸カルシウムナノ粒子のポリビニルアルコールに対する比を維持することであった。
【0039】
【表2】

【0040】
第三のセットの実施例において、板構造は、第二のセットの実施例と同じであった。このセットにおいて、炭酸カルシウムナノ粒子及びポリビニルアルコールの比を表3に示すように変化させた。
【0041】
【表3】

【0042】
第四のセットの実施例において、ポリビニルアルコール及び炭酸カルシウムナノ粒子をデンプンとブレンドした。デンプンは、ペンフォード(Penford)により製造されたPenford Gum 290ノニオンデンプン(nonionic starch)であった。他の製紙用デンプンを使用してもよい。デンプンの重量は、層中の固体の全重量の43%に維持した。被覆の容易性に貢献することから、デンプンを追加した。一の態様において、デンプンは、層中の固体の全重量の70%までであることができる。別の態様において、デンプンは、層中の固体の全重量の50%までであることができる。デンプンの量は、酸素バリア材料の具体的な用途に依存して、0%〜70%であることができる。デンプンを使用する一つの理由は、酸素バリア材料を容易に施用するためである。
【0043】
【表4】

【0044】
材料の層は実験用試料であり、実験室条件下で製造される必要があったことから、これらの試験において使用した材料の層の数は必須であった。
【0045】
被覆された基材を商業的生産において製造する方法を図12に示す。基材10を被覆位置32へと運び、ここで炭酸カルシウムナノ粒子を含有する水溶性又は水分散性バリア材料が添加される。被覆位置における装置は、サイズプレスであることができる。プレスの延伸に依存して、基材の一面又は両面が被覆される。サイズプレスの代わりに、ロッド又はベントブレード又はグラビュア・コーターを使用できるであろう。
【0046】
抄紙機中に施用した後、被覆した基材中のバリアを、乾燥位置34においてホットドライヤー缶と接触させ、カレンダー位置36において「カレンダー」ロール又はニップと呼ばれる、加熱された平滑化ロールと接触させて、ガラス転移温度より高い温度に曝露する。175〜225N/mmのオーダーの有意な圧力をカレンダーニップにおいて施用する。カレンダーは、スチール製ロールカレンダー、被覆カレンダー(lagged calenders)、ソフトニップカレンダー、拡張ニップカレンダー又はシューカレンダーであってもよい。一の態様において、ソフトニップカレンダーの後に、拡張ソフトニップカレンダー又はシューカレンダーとする。こうした熱及び圧力の施用により、更にバリア被覆の酸素移動速度が低減されることが判明した。このバリア特性における改良は、熱及び圧力により、より均一な被覆厚さをもたらされることによるものと考えられる。本発明の目的のために、熱及び圧力により処理したこのバリア被覆を「均一バリア被覆」と呼ぶ。
【0047】
製品のなかには、押出位置38において更に押出プロセスを経験するものもあり、ここで、プラスチックが厚紙に付着するのを助ける操作において、バリア材料をオープンフレームに曝露してもよい。また、押出プロセスは、200℃〜300℃のプラスチックカーテンを板と接触させ、次いで、冷却された圧力ロールと裏打ちロールとにより形成されたニップを通過させることを包含する。これらの操作すべてにより、バリア被覆の均一性を更に改良することができる。材料の層は、図3〜11に示す層により例示される。
【0048】
これらのシートは非バリアフィルムと積層したが、押出被覆、又は、カレンダーロールからなどの単なる熱及び圧力は、熱及び圧力により処理していないものより良好なバリア材料を製造するという同じ効果も有するものとする。
【0049】
当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書中に説明した態様において種々の変更をなしうることに着目するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、バリア構造の断面図である。
【図2】図2は、バリア構造の断面図である。
【図3】図3は、バリア構造の断面図である。
【図4】図4は、バリア構造の断面図である。
【図5】図5は、バリア構造の断面図である。
【図6】図6は、バリア構造の断面図である。
【図7】図7は、バリア構造の断面図である。
【図8】図8は、バリア構造の断面図である。
【図9】図9は、バリア構造の断面図である。
【図10】図10は、バリア構造の断面図である。
【図11】図11は、バリア構造の断面図である。
【図12】図12は、バリア被覆を施用するための装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜250ナノメートルの寸法を有する炭酸カルシウムナノ粒子と、水溶性の酸素バリア材料、水分散性の酸素バリア材料、及びこれらの混合物のうち少なくとも1種とのブレンドを含む酸素バリア材料であって、炭酸カルシウムナノ粒子の前記水溶性又は水分散性酸素バリア材料に対する重量比が1:100〜1.5:1である、前記酸素バリア材料。
【請求項2】
水溶性の酸素バリア材料が、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの化合物の塩、ならびにこれらの材料のいずれかの混合物のうち少なくとも1種である、請求項1記載の酸素バリア材料。
【請求項3】
水分散性の酸素バリア材料が、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアルコール、及びこれらの材料のいずれかの混合物のうち少なくとも1種である、請求項1記載の酸素バリア材料。
【請求項4】
酸素バリア材料中の固体の全重量の70%までの量のデンプンを更に含む、請求項1記載の酸素バリア材料。
【請求項5】
紙、段ボール原紙及び厚紙のうち少なくとも1種を含む基材と
前記基材の一の面上にある請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素バリア材料と
を含む、酸素バリア特性を有する材料。
【請求項6】
酸素バリア材料が均一である、請求項5記載の酸素バリア特性を有する材料。
【請求項7】
酸素バリア材料と同じ基材面上に追加の材料層を更に含む、請求項5記載の酸素バリア特性を有する材料。
【請求項8】
追加の材料層が、異なるバリア材料、シーリング材料、ナイロン及びポリエチレンのうち少なくとも1種である、請求項7記載の酸素バリア特性を有する材料。
【請求項9】
追加の材料層が、基材と向かい合う酸素バリア材料の面上にある、請求項7記載の酸素バリア特性を有する材料。
【請求項10】
酸素バリア材料が基材上に被覆されている、請求項5記載の酸素バリア特性を有する材料。
【請求項11】
酸素バリア特性を有する材料を製造する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素バリア材料を基材に施用し、該基材が、紙、段ボール原紙及び厚紙のうち少なくとも1種を含み、そして、該酸素バリア材料に熱及び圧力を施用することを含む前記方法。
【請求項12】
熱が酸素バリア材料のガラス転移温度を超える、請求項11記載の方法。
【請求項13】
圧力が175〜225N/mmである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
酸素バリア材料が均一である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
熱及び圧力の施用の前か後のいずれかに、異なるバリア材料、シーリング材料、ナイロン及びポリエチレンのうち少なくとも1種を含む追加の材料層を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素バリア材料と同じ基材面に施用する、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−23274(P2007−23274A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−169651(P2006−169651)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(302009279)ウェヤーハウザー・カンパニー (36)
【Fターム(参考)】