バルブシート形成用レーザ肉盛り装置及びレーザ肉盛り方法
【課題】 シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができるバルブシート形成用レーザ肉盛り装置を提供する。
【解決手段】 移載ロボット62により、支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を挿入し、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10を支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38から抜き出し、次にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38が挿入されるようにシリンダヘッド10を支持装置30から離間して移動させる。
【解決手段】 移載ロボット62により、支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を挿入し、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10を支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38から抜き出し、次にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38が挿入されるようにシリンダヘッド10を支持装置30から離間して移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置及びレーザ肉盛り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドに直線状に配列して設けた複数のバルブシート部のそれぞれのレーザ肉盛り加工による被形成面を実質的に水平となるよう支持するシリンダヘッド支持台及び、シリンダヘッドを、形成すべきバルブシート部の軸線を中心にシリンダヘッド支持台と共に、レーザ肉盛り加工時に回転させる回転駆動機構をそれぞれ備えた支持部と、シリンダヘッド支持台に対し係脱可能とする連結部を備え、かつこの連結部をシリンダヘッド支持台に対して連結した状態でシリンダヘッドを、バルブシート部の配列方向にシリンダヘッド支持台と共に、形成すべきバルブシート部の軸線に回転駆動機構の回転軸線が整合した状態となるようスライド移動させて移動位置決めする位置決め部とを有するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
尚、従来から前記形成すべきバルブシート部、すなわち肉盛り部のシリンダヘッドの母材料と肉盛り部にできあがった組織との材料的な品質の向上及び安定のために、シリンダヘッド全体を常温よりも高い一定の温度にするように、一定の温度の予熱を掛けることが実施されている。
【特許文献1】特許第3641904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、比較的高温のレーザ光による肉盛り加工により、シリンダヘッドに熱変形が生じてバルブシート部の位置が変位することがある。従って、シリンダヘッドをスライド移動させて移動位置決めしてするレーザ肉盛り加工はバルブシート部の位置に対して位置精度が低い加工となる場合がある。
【0005】
そこで、シリンダヘッドの熱変形の影響を除去するために、シリンダヘッドのレーザ肉盛り加工前に、シリンダヘッド全体を常温よりも高い一定の温度にしてレーザ光による熱影響を受ける肉盛り部とシリンダヘッド全体の温度との差温を小さくするように、材料的な品質の向上及び安定を兼ねた、位置精度的な品質の向上及び安定のための一定の温度の予熱を均一に掛けて予め熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測することが考えられる。
【0006】
しかし、予熱温度にばらつきがある場合には、熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測することが困難になる。また、シリンダヘッドに掛ける予熱はシリンダヘッド全体が均一の温度になることによって、熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測する精度が高まるが、シリンダヘッド全体が均一の温度になるのには時間が掛かるという問題がある。
【0007】
本発明は、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができるバルブシート形成用レーザ肉盛り装置及びレーザ肉盛り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置であって、 前記シリンダヘッドを支持する支持手段と、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段と、 前記位置決め手段で位置決めされた前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転手段と、前記位置決め手段により位置決めされた前記バルブシート部に金属粉末を供給する金属粉末供給手段と、前記金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射して前記回転手段で回転される前記バルブシート部にリング状の肉盛り部を形成するレーザ光照射手段と、前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入し、前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次に前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移載ロボットとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、移載ロボットにより、支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンにレーザ光照射手段により肉盛り部が形成されるシリンダヘッドのバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴を挿入し、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドを支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次にレーザ光照射手段により肉盛り部が形成されるシリンダヘッドのバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンが挿入されるようにシリンダヘッドを支持手段から離間して移動させる。このため、支持手段に挿入されたシリンダヘッドがレーザ光照射手段により加熱されて肉盛り部が形成され、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドが支持手段から抜き出され、次にレーザ光照射手段によりバルブシート部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッドが支持手段から離間されて移動されるので、シリンダヘッドが冷却されてシリンダヘッドの熱変形の影響を小さくすることができる。また、移載ロボットにより、支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンで位置決めされたシリンダヘッドが、シリンダヘッドの肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴の軸線回りに回転されて、金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部にリング状の肉盛り部が形成される。従って、移載ロボットにより、支持手段にシリンダヘッドの挿入及び支持手段からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0010】
本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り方法であって、前記シリンダヘッドを支持する支持手段、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段、及び前記シリンダヘッドを移動させる移載ロボットを有し、移載ロボットにより前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入する挿入工程と、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に金属粉末を供給すると共に、該金属粉末にレーザ光を照射して前記バルブシート部に肉盛り部を形成するレーザ光照射工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、バルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴を基準としてシリンダヘッドを移載ロボットにより位置決めするため支持手段に挿入する。そして、挿入されたシリンダヘッドのバルブシート部に金属粉末を供給すると共に、この金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部に肉盛り部を形成する。従って、移載ロボットにより支持手段にシリンダヘッドを挿入することにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0012】
また、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、前記レーザ光照射工程では、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転工程を同時に実施することが好ましい。
【0013】
この好ましい形態によれば、レーザ光照射工程では、支持手段に挿入されたシリンダヘッドをバルブステムのガイド穴の軸線回りに同時に回転されるので、バルブシート部にリング状の肉盛り部が形成され、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0014】
また、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、移載ロボットにより前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出す抜出工程と、移載ロボットにより次に前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移動工程とを備えることが好ましい。
【0015】
この好ましい形態によれば、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドが支持手段から抜き出され、次にレーザ光照射手段によりバルブシート部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッドが支持手段から離間されて移動される。このため、シリンダヘッドが冷却されてシリンダヘッドの熱変形の影響を小さくすることができる。従って、移載ロボットにより支持手段にシリンダヘッドの挿入及び支持手段からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドの部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に適用されるシリンダヘッドを示す斜視図である。シリンダヘッド10は、直方体状に形成されている。シリンダヘッド10には、複数のシリンダに対応するシリンダヘッド凹部12が形成されている。シリンダヘッド凹部12には、シリンダに給気するため又はシリンダから排気するための一方のポート14と他方のポート15が形成されている。また、シリンダヘッド10には、シリンダに給気するため又はシリンダから排気するための通路で一方のポート14又は他方のポート15と連通しているマニホールド16が形成されている。一方のポート14及び他方のポート15の内周面には、バルブが当接するバルブシート部18が形成されている。
【0017】
シリンダヘッド10は、パレット20に4箇所のクランプアーム21で固定されている。パレット20は、下端に2対の基準面22,24を有すると共に上端に有するこの水平な基準面26を有する。シリンダヘッド10は、パレット20の上端に水平な基準面26に固定されている。パレット20の下端に2対の基準面22,24は、1対の基準面22が、パレット20の左側の2本の脚22a,22bの下面に形成され、他の1対の基準面24が、パレット20の右側の2本の脚24a,24bの下面に形成されている。
【0018】
図2、図6は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置を説明するための図である。バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置30は、パレット20、位置決め機構32、シリンダヘッド回転機構34、チルト機構35、及び支持台42から概略構成されている。尚、パレット20を有していない構成を単に支持装置30とする。
【0019】
位置決め機構32は、シリンダ36及び位置決めピン38から構成されている。位置決めピン38は、シリンダヘッド10の後述するレーザ肉盛り加工がされるバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に嵌合するように挿入されてシリンダヘッド10を位置決めする。位置決め機構32の位置決めピン38はシリンダ36で進退されるように構成されている。
【0020】
前述のシリンダに吸気するため又はシリンダから排気するためのバルブは、この軸線を中心に径方向に対照である。この軸線に延在するバルブステムは、シリンダヘッドに設けられたバルブステムのガイド穴40を摺接して、バルブを支えている。バルブステムが摺動しつつバルブが開閉しながら、バルブが開状態のときに、バルブシート部にバルブが当接する訳である。バルブステムのガイド穴40の軸線に当該バルブシート部は、対象形状をしている。
【0021】
パレット20は、下端に設けられている1対の基準面22又は他の1対の基準面24が支持台42により支持されると共に、支持台42に設けられているクランパ44により固定される。
【0022】
支持台42は、シリンダヘッド10、パレット20、位置決め機構32、シリンダヘッド回転機構34、及びチルト機構35を支持する。位置決め機構32は、シリンダ36が支持台42に固定されることで支持台42に支持されている。シリンダヘッド回転機構34は、例えば、位置決め機構32と同軸である支持台42の回転テーブルに固定されているウォームホイールを、支持台42に固定され駆動源に連結されているウォームにより回転する機構から構成される。チルト機構35は、支持台42を左右方向に回転させる機構である。
【0023】
パレット20と支持台42との間には、パレット20を介してシリンダヘッド10を加熱する加熱部46が設けられている。加熱部46の温度は、例えば、温度測定手段によって測定されたバルブシート部18の近傍の温度に基づいて、シリンダヘッド10を所定温度に維持するように制御される。
【0024】
図3は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるレーザ光照射装置と金属粉末供給装置を示す図である。レーザ光照射装置52は、レーザ肉盛り加工をする。レーザ肉盛り加工は、金属粉末供給装置54による金属粉末及びアルゴンガス供給装置によるアルゴンガスを供給しながら金属粉末にレーザ光を照射して、シリンダヘッド回転機構34で回転されるバルブシート部18にリング状の肉盛り部を形成する。
【0025】
また、レーザ肉盛り加工は、金属粉末を溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成する。従って、レーザ肉盛り加工に際しては、溶融した金属粉末を冷却するように、シリンダヘッド10のマニホールド16を介してバルブシート部18に対してガスを供給するか、又はマニホールド16を介してバルブシート部18近傍の大気を吸引する。
【0026】
尚、金属粉末としては、耐熱性及び耐摩耗性に優れた例えば銅合金の金属粉末が挙げられる。肉盛り層形成後は、機械加工によって平滑なバルブシート面が形成される。
【0027】
また、図3は、支持装置30並びに、レーザ光照射装置52及び金属粉末供給装置54を駆動させる駆動源を示している。支持装置30は、X軸方向(図中斜め上下方向)に第1の駆動源55で駆動される。また、支持装置30は、Y軸方向(図中斜め左右方向)に第2の駆動源56で駆動される。また、支持装置30は、C軸回り(図中斜め上下方向)に第3の駆動源57で回転駆動される。また、支持装置30は、B軸回り(位置決めピン38の軸回り)に駆動源で回転駆動される。また、レーザ光照射装置52及び金属粉末供給装置54は、Z軸方向(図中上下方向)に第4の駆動源58で駆動される。
【0028】
図4は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置を示す図である。バルブシート形成用レーザ肉盛り装置60は、パレット20、支持装置30、シリンダヘッド回転機構34、支持台42、レーザ光照射装置52、金属粉末供給装置54、及び移載ロボット62から概略構成されている。
【0029】
移載ロボット62は、前工程から搬送されたシリンダヘッド10を、図10に示すように移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、図11に示すようにパレット20に固定する。また、移載ロボット62は、パレット20に固定されたシリンダヘッド10を移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、図12に示すように位置決め機構32で位置決めされるように支持装置30に挿入する。
【0030】
図5は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず、移載ロボット62により、前工程から搬送された搬送部に載置されているシリンダヘッド10を、移載ロボット62のロボットハンド64により把持してパレット20に固定する(ST100)。
【0032】
次いで、移載ロボット62により、パレット20に固定されたシリンダヘッド10を移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、レーザ肉盛り加工をする一方のポート14又は他方のポート15のバルブヘッド部18が位置決め機構32で位置決めされるように支持装置30に挿入する(ST101)。
【0033】
そして、パレット20と支持台42との間に設けられている加熱部46により、パレット20を介してシリンダヘッド10が加熱された温度を測定する(ST102)。加熱部46の温度は、例えば、支持装置30の近傍に配置されたロボット66に搭載されているシリンダヘッド10の表面温度を非接触で測定する温度測定器で測定され、シリンダヘッド10を所定温度に維持するように制御される。
【0034】
その後、加熱部46により加熱されたシリンダヘッド10の温度が所定の温度であるか否かを判定する(ST103)。ST103の判定結果がNOの場合、シリンダヘッド10の温度が所定の温度になるまで待機する。
【0035】
ST103の判定結果がYESの場合、パレット20に固定され支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10を支持装置30と共に、図3に示すX軸上の+方向(図中下方向)に移動させて、レーザ光照射装置52によりレーザ肉盛り加工をする(ST104)。
【0036】
次いで、パレット20に固定され支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10を支持装置30と共に、図3に示すX軸上の−方向(図中上方向)に移動させて、レーザ光照射装置52によるレーザ肉盛り加工で残留した金属粉末を除去する(ST105)。レーザ肉盛り加工で残留した金属粉末の除去は、例えば、支持装置30の近傍に配置されたロボット66に搭載されている粉末吸引器で除去される。
【0037】
そして、シリンダヘッド10の一方のポート14及び他方のポート15の数(n)が、ST101〜ST105までの処理を実行した回数(m)と同じであるか否かを判定する(ST106)。
【0038】
ST106の判定結果がNOの場合、移載ロボット62によりパレット20に固定されているシリンダ10を支持装置30から抜き出して、次にレーザ肉盛り加工がされる一方のポート14又は他方のポート15のバルブヘッド部18が位置決め機構32で位置決めされるように、移載ロボット62によりパレット20に固定されているシリンダ10を移動する(ST107)。その後ST101に戻る。
【0039】
一方、ST106の判定結果がYESの場合、パレット20に固定されたシリンダヘッド10のパレット20に対する固定を解除し、移載ロボット62のロボットハンド64でシリンダ10を把持して、シリンダヘッド10を次の工程に搬送する搬送部に排出する(ST108)。
【0040】
次に、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置30の動作について説明する。
【0041】
図6は、バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置の動作について説明するための図である。
【0042】
まず、図6(b)に示すように、移載ロボット62により、パレット20に固定されたシリンダヘッド10のレーザ肉盛り加工がされる一方のポート14のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に、垂直状態の位置決めピン38を挿入する。これにより、パレット20に固定されているシリンダヘッド10が支持装置30に挿入される。
【0043】
次いで、図6(a)に示すように、図3に示す第3の駆動源57により支持装置30のチルト機構35を駆動して左側に傾けると共に、バルブシート部18の被加工面が実質的に水平となるように支持装置30を略45°にする。そして、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させてレーザ肉盛り加工をする。その後、再び図6(b)のように戻して更に、図6(c)に示すように、移載ロボット62により、シリンダヘッド10を位置決めピン38から抜いてパレット20に固定されているシリンダヘッド10を位置決めピン38の上方に移動する。
【0044】
そして、図6(d)に示すように、移載ロボット62により、図6(a)でレーザ肉盛り加工された一方のポート14と対となる他方のポート15のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40が、支持装置30の位置決めピン38の真下となるようにシリンダヘッドが固定されたパレット20を回転する。
【0045】
その後、図6(e)に示すように、移載ロボット62により、図6(d)の他方のポート15のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に位置決めピン38を挿入してシリンダヘッド10を位置決めする。
【0046】
そして、前記図6(a)での肉盛り加工と同様の位置関係で図6(d)の他方のポート15のバルブシート部18の被加工面にレーザ肉盛り加工ができるように、図6(f)に示すように、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させる。その後、図6(g)に示すように、図6(a)と同様に、図3に示す第3の駆動源57により支持装置30のチルト機構35を駆動して左側に傾けると共に、バルブシート部18の被加工面が実質的に水平となるように支持装置30を略45°にする。そして、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させてレーザ肉盛り加工をする。
【0047】
その後、再び図6(f)のように戻して、図6(c)と同様に、シリンダヘッド10を位置決めピン38から抜き出す。これにより、パレット20に固定されているシリンダヘッド10が支持装置30から抜き出される。
【0048】
尚、図6(a)及び図6(g)のレーザ肉盛り加工時には、シリンダヘッド10の、肉盛り部が形成されるべきバブルシート部18に対応するバブルステムのガイド穴40を、位置決め手段の位置決めピン38により、直接的に支承する。ところで、当該バルブシート部18は、シリンダヘッド10が暖められると、該シリンダヘッド10の長手方向の端部からの位置が大きく変位することがある。比較的高温のレーザ光による肉盛り加工によれば、シリンダヘッド10に熱膨張が生じる。しかしながら、シリンダヘッド10の、肉盛り部が形成されるべきバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を、位置決め手段の位置決めピンにより、直接的に支承するので、比較的高温のレーザ光による肉盛り加工により、シリンダヘッド10に熱変形が生じたとしても、当該肉盛り部が形成されるべきバルブシート部18は、バルブステムのガイド穴40の軸線に対して対象形状をしているから、バルブシート部18の被加工面と、照射するレーザ光の位置とは、比較的ズレず許容できる範囲に収まる。また、シリンダヘッド回転機構34に付設した図示しない金属粉末を冷却するための、マニホールド16を介してバルブシート部18近傍の大気を吸引する吸引手段や又はマニホールド16を介してのガスの供給手段が、シリンダヘッド10をも冷却するので、バルブシート部18の被加工面と、照射するレーザ光の位置とは、よりズレずに許容できる範囲に収まり易い。
【0049】
尚、図7は、図6(a)及び図6(g)の拡大図である。
【0050】
図8は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置に固定されるシリンダヘッドが固定されたパレットを示す図である。
【0051】
図8(a)は、最右部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0052】
最右部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44c,44d,44e,44fの4箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0053】
図8(b)は、中央部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0054】
中央部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44a,44b,44c,44d,44e,44fの6箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0055】
図8(c)は、最左部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0056】
最左部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44a,44b,44c,44dの4箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0057】
図9は、シリンダヘッドをパレットに固定又は解除する方法を示す図である。シリンダヘッド10は、パレット20に上下端の左右にそれぞれに設けられているクランプアーム21で固定されている。クランプアーム21は、側面視でパレット20を上端部にパレット20を基準面26に押し付ける爪部を有してパレット20の側方で上下方向に延びると共に、パレット20の下方で上下のクランプアーム21が隣接するように水平方向に延びている。そして、パレット20の側方で上下方向に延びている部位Aで回転可能にパレット20に支持されている。
【0058】
クランプアーム21は、爪部でパレット20を基準面26に押し付けるようにばね等の付勢部材48で付勢されている。
【0059】
シリンダヘッド10をパレット20から解除は、パレット20の下部で上下のクランプアーム21が隣接する部位をシリンダ50で押圧することでクランプアーム21の部位Aを中心に回転することによりなされる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、移載ロボット62により、支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を挿入し、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10を支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38から抜き出し、次にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38が挿入されるようにシリンダヘッド10を支持装置30から離間して移動させる。このため、支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10がレーザ光照射装置52により加熱されて肉盛り部が形成され、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10が支持装置30から抜き出され、次にレーザ光照射装置52によりバルブシート18部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッド10が支持装置30から離間されて移動されるので、シリンダヘッド10が冷却されてシリンダヘッド10の熱変形の影響を小さくすることができる。また、移載ロボット62により、支持装置30における位置決め機構32の位置決めピン38で位置決めされたシリンダヘッド10が、シリンダヘッド10の肉盛り部が形成されるバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40の軸線回りに回転されて、金属粉末供給装置54により供給された金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部18にリング状の肉盛り部が形成される。従って、移載ロボット62により、支持装置30にシリンダヘッド10の挿入及び支持装置30からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0061】
尚、本実施形態のパレット20及び支持台42、又は支持装置30が、本発明の支持手段に相当する。また、本実施形態の位置決め機構32が、本発明の位置決め手段に相当する。また、本実施形態のシリンダヘッド回転機構34が、本発明の回転手段に相当する、また、本実施形態のレーザ光照射装置52が、本発明のレーザ光照射手段に相当する。また、本実施形態の金属粉末供給装置54が、本発明の金属粉末供給手段に相当する。
【0062】
また、本実施形態のST101の処理が、本発明の挿入工程に相当する。また、本実施形態のST104の処理が、本発明のレーザ光照射工程及び回転工程に相当する。また、本実施形態のST107の処理が、本発明の抜出工程及び移動工程に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に適用されるシリンダヘッドを示す斜視図である。
【図2】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置を説明するための図である。
【図3】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるレーザ光照射装置と金属粉末供給装置を示す図である。
【図4】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置を示す図である。
【図5】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明のバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置の動作について説明する図である。
【図7】図6(a)及び図6(g)の拡大図である。
【図8】本発明のバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置に固定されるシリンダヘッドが固定されたパレットを示す図である。
【図9】シリンダヘッドをパレットに固定又は解除する方法を示す図である。
【図10】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが把持されている状態を示す図である。
【図11】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが固定されているパレットが把持されている状態を示す図である。
【図12】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが固定されているパレットを把持して位置決め機構で位置決めされるように支持装置に挿入する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10…シリンダヘッド、12…シリンダヘッド凹部、14…一方のポート、15…他方のポート、16…マニホールド、18…バルブシート部、20…パレット、22,24,26…基準面、21…クラアアンクアーム、22a,22b,24a,24b…脚、30…バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置(支持装置)、32…位置決め機構、34…シリンダヘッド回転機構、36…シリンダ、38…位置決めピン、40…ガイド穴、42…支持台、44,44a,44b,44c,44d,44e,44d…クランパ、46…加熱部、48…付勢部材、50…シリンダ、52…レーザ光照射装置、54…金属粉末供給装置、55…第1の駆動源、56…第2の駆動源、57…第3の駆動源、58…第4の駆動源、60…バルブシート形成用レーザ肉盛り装置移載、62…移載ロボット、64…ロボットハンド、66…ロボット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置及びレーザ肉盛り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドに直線状に配列して設けた複数のバルブシート部のそれぞれのレーザ肉盛り加工による被形成面を実質的に水平となるよう支持するシリンダヘッド支持台及び、シリンダヘッドを、形成すべきバルブシート部の軸線を中心にシリンダヘッド支持台と共に、レーザ肉盛り加工時に回転させる回転駆動機構をそれぞれ備えた支持部と、シリンダヘッド支持台に対し係脱可能とする連結部を備え、かつこの連結部をシリンダヘッド支持台に対して連結した状態でシリンダヘッドを、バルブシート部の配列方向にシリンダヘッド支持台と共に、形成すべきバルブシート部の軸線に回転駆動機構の回転軸線が整合した状態となるようスライド移動させて移動位置決めする位置決め部とを有するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
尚、従来から前記形成すべきバルブシート部、すなわち肉盛り部のシリンダヘッドの母材料と肉盛り部にできあがった組織との材料的な品質の向上及び安定のために、シリンダヘッド全体を常温よりも高い一定の温度にするように、一定の温度の予熱を掛けることが実施されている。
【特許文献1】特許第3641904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、比較的高温のレーザ光による肉盛り加工により、シリンダヘッドに熱変形が生じてバルブシート部の位置が変位することがある。従って、シリンダヘッドをスライド移動させて移動位置決めしてするレーザ肉盛り加工はバルブシート部の位置に対して位置精度が低い加工となる場合がある。
【0005】
そこで、シリンダヘッドの熱変形の影響を除去するために、シリンダヘッドのレーザ肉盛り加工前に、シリンダヘッド全体を常温よりも高い一定の温度にしてレーザ光による熱影響を受ける肉盛り部とシリンダヘッド全体の温度との差温を小さくするように、材料的な品質の向上及び安定を兼ねた、位置精度的な品質の向上及び安定のための一定の温度の予熱を均一に掛けて予め熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測することが考えられる。
【0006】
しかし、予熱温度にばらつきがある場合には、熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測することが困難になる。また、シリンダヘッドに掛ける予熱はシリンダヘッド全体が均一の温度になることによって、熱変形したシリンダヘッドのバルブシート部の位置を予測する精度が高まるが、シリンダヘッド全体が均一の温度になるのには時間が掛かるという問題がある。
【0007】
本発明は、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができるバルブシート形成用レーザ肉盛り装置及びレーザ肉盛り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置であって、 前記シリンダヘッドを支持する支持手段と、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段と、 前記位置決め手段で位置決めされた前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転手段と、前記位置決め手段により位置決めされた前記バルブシート部に金属粉末を供給する金属粉末供給手段と、前記金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射して前記回転手段で回転される前記バルブシート部にリング状の肉盛り部を形成するレーザ光照射手段と、前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入し、前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次に前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移載ロボットとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、移載ロボットにより、支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンにレーザ光照射手段により肉盛り部が形成されるシリンダヘッドのバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴を挿入し、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドを支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次にレーザ光照射手段により肉盛り部が形成されるシリンダヘッドのバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンが挿入されるようにシリンダヘッドを支持手段から離間して移動させる。このため、支持手段に挿入されたシリンダヘッドがレーザ光照射手段により加熱されて肉盛り部が形成され、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドが支持手段から抜き出され、次にレーザ光照射手段によりバルブシート部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッドが支持手段から離間されて移動されるので、シリンダヘッドが冷却されてシリンダヘッドの熱変形の影響を小さくすることができる。また、移載ロボットにより、支持手段に設けられている位置決め手段の位置決めピンで位置決めされたシリンダヘッドが、シリンダヘッドの肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴の軸線回りに回転されて、金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部にリング状の肉盛り部が形成される。従って、移載ロボットにより、支持手段にシリンダヘッドの挿入及び支持手段からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0010】
本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り方法であって、前記シリンダヘッドを支持する支持手段、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段、及び前記シリンダヘッドを移動させる移載ロボットを有し、移載ロボットにより前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入する挿入工程と、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に金属粉末を供給すると共に、該金属粉末にレーザ光を照射して前記バルブシート部に肉盛り部を形成するレーザ光照射工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、バルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴を基準としてシリンダヘッドを移載ロボットにより位置決めするため支持手段に挿入する。そして、挿入されたシリンダヘッドのバルブシート部に金属粉末を供給すると共に、この金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部に肉盛り部を形成する。従って、移載ロボットにより支持手段にシリンダヘッドを挿入することにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0012】
また、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、前記レーザ光照射工程では、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転工程を同時に実施することが好ましい。
【0013】
この好ましい形態によれば、レーザ光照射工程では、支持手段に挿入されたシリンダヘッドをバルブステムのガイド穴の軸線回りに同時に回転されるので、バルブシート部にリング状の肉盛り部が形成され、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0014】
また、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法は、移載ロボットにより前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出す抜出工程と、移載ロボットにより次に前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移動工程とを備えることが好ましい。
【0015】
この好ましい形態によれば、レーザ光照射手段により肉盛り部が形成されたシリンダヘッドが支持手段から抜き出され、次にレーザ光照射手段によりバルブシート部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッドが支持手段から離間されて移動される。このため、シリンダヘッドが冷却されてシリンダヘッドの熱変形の影響を小さくすることができる。従って、移載ロボットにより支持手段にシリンダヘッドの挿入及び支持手段からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドの部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に適用されるシリンダヘッドを示す斜視図である。シリンダヘッド10は、直方体状に形成されている。シリンダヘッド10には、複数のシリンダに対応するシリンダヘッド凹部12が形成されている。シリンダヘッド凹部12には、シリンダに給気するため又はシリンダから排気するための一方のポート14と他方のポート15が形成されている。また、シリンダヘッド10には、シリンダに給気するため又はシリンダから排気するための通路で一方のポート14又は他方のポート15と連通しているマニホールド16が形成されている。一方のポート14及び他方のポート15の内周面には、バルブが当接するバルブシート部18が形成されている。
【0017】
シリンダヘッド10は、パレット20に4箇所のクランプアーム21で固定されている。パレット20は、下端に2対の基準面22,24を有すると共に上端に有するこの水平な基準面26を有する。シリンダヘッド10は、パレット20の上端に水平な基準面26に固定されている。パレット20の下端に2対の基準面22,24は、1対の基準面22が、パレット20の左側の2本の脚22a,22bの下面に形成され、他の1対の基準面24が、パレット20の右側の2本の脚24a,24bの下面に形成されている。
【0018】
図2、図6は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置を説明するための図である。バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置30は、パレット20、位置決め機構32、シリンダヘッド回転機構34、チルト機構35、及び支持台42から概略構成されている。尚、パレット20を有していない構成を単に支持装置30とする。
【0019】
位置決め機構32は、シリンダ36及び位置決めピン38から構成されている。位置決めピン38は、シリンダヘッド10の後述するレーザ肉盛り加工がされるバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に嵌合するように挿入されてシリンダヘッド10を位置決めする。位置決め機構32の位置決めピン38はシリンダ36で進退されるように構成されている。
【0020】
前述のシリンダに吸気するため又はシリンダから排気するためのバルブは、この軸線を中心に径方向に対照である。この軸線に延在するバルブステムは、シリンダヘッドに設けられたバルブステムのガイド穴40を摺接して、バルブを支えている。バルブステムが摺動しつつバルブが開閉しながら、バルブが開状態のときに、バルブシート部にバルブが当接する訳である。バルブステムのガイド穴40の軸線に当該バルブシート部は、対象形状をしている。
【0021】
パレット20は、下端に設けられている1対の基準面22又は他の1対の基準面24が支持台42により支持されると共に、支持台42に設けられているクランパ44により固定される。
【0022】
支持台42は、シリンダヘッド10、パレット20、位置決め機構32、シリンダヘッド回転機構34、及びチルト機構35を支持する。位置決め機構32は、シリンダ36が支持台42に固定されることで支持台42に支持されている。シリンダヘッド回転機構34は、例えば、位置決め機構32と同軸である支持台42の回転テーブルに固定されているウォームホイールを、支持台42に固定され駆動源に連結されているウォームにより回転する機構から構成される。チルト機構35は、支持台42を左右方向に回転させる機構である。
【0023】
パレット20と支持台42との間には、パレット20を介してシリンダヘッド10を加熱する加熱部46が設けられている。加熱部46の温度は、例えば、温度測定手段によって測定されたバルブシート部18の近傍の温度に基づいて、シリンダヘッド10を所定温度に維持するように制御される。
【0024】
図3は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるレーザ光照射装置と金属粉末供給装置を示す図である。レーザ光照射装置52は、レーザ肉盛り加工をする。レーザ肉盛り加工は、金属粉末供給装置54による金属粉末及びアルゴンガス供給装置によるアルゴンガスを供給しながら金属粉末にレーザ光を照射して、シリンダヘッド回転機構34で回転されるバルブシート部18にリング状の肉盛り部を形成する。
【0025】
また、レーザ肉盛り加工は、金属粉末を溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成する。従って、レーザ肉盛り加工に際しては、溶融した金属粉末を冷却するように、シリンダヘッド10のマニホールド16を介してバルブシート部18に対してガスを供給するか、又はマニホールド16を介してバルブシート部18近傍の大気を吸引する。
【0026】
尚、金属粉末としては、耐熱性及び耐摩耗性に優れた例えば銅合金の金属粉末が挙げられる。肉盛り層形成後は、機械加工によって平滑なバルブシート面が形成される。
【0027】
また、図3は、支持装置30並びに、レーザ光照射装置52及び金属粉末供給装置54を駆動させる駆動源を示している。支持装置30は、X軸方向(図中斜め上下方向)に第1の駆動源55で駆動される。また、支持装置30は、Y軸方向(図中斜め左右方向)に第2の駆動源56で駆動される。また、支持装置30は、C軸回り(図中斜め上下方向)に第3の駆動源57で回転駆動される。また、支持装置30は、B軸回り(位置決めピン38の軸回り)に駆動源で回転駆動される。また、レーザ光照射装置52及び金属粉末供給装置54は、Z軸方向(図中上下方向)に第4の駆動源58で駆動される。
【0028】
図4は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置を示す図である。バルブシート形成用レーザ肉盛り装置60は、パレット20、支持装置30、シリンダヘッド回転機構34、支持台42、レーザ光照射装置52、金属粉末供給装置54、及び移載ロボット62から概略構成されている。
【0029】
移載ロボット62は、前工程から搬送されたシリンダヘッド10を、図10に示すように移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、図11に示すようにパレット20に固定する。また、移載ロボット62は、パレット20に固定されたシリンダヘッド10を移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、図12に示すように位置決め機構32で位置決めされるように支持装置30に挿入する。
【0030】
図5は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず、移載ロボット62により、前工程から搬送された搬送部に載置されているシリンダヘッド10を、移載ロボット62のロボットハンド64により把持してパレット20に固定する(ST100)。
【0032】
次いで、移載ロボット62により、パレット20に固定されたシリンダヘッド10を移載ロボット62のロボットハンド64により把持して、レーザ肉盛り加工をする一方のポート14又は他方のポート15のバルブヘッド部18が位置決め機構32で位置決めされるように支持装置30に挿入する(ST101)。
【0033】
そして、パレット20と支持台42との間に設けられている加熱部46により、パレット20を介してシリンダヘッド10が加熱された温度を測定する(ST102)。加熱部46の温度は、例えば、支持装置30の近傍に配置されたロボット66に搭載されているシリンダヘッド10の表面温度を非接触で測定する温度測定器で測定され、シリンダヘッド10を所定温度に維持するように制御される。
【0034】
その後、加熱部46により加熱されたシリンダヘッド10の温度が所定の温度であるか否かを判定する(ST103)。ST103の判定結果がNOの場合、シリンダヘッド10の温度が所定の温度になるまで待機する。
【0035】
ST103の判定結果がYESの場合、パレット20に固定され支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10を支持装置30と共に、図3に示すX軸上の+方向(図中下方向)に移動させて、レーザ光照射装置52によりレーザ肉盛り加工をする(ST104)。
【0036】
次いで、パレット20に固定され支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10を支持装置30と共に、図3に示すX軸上の−方向(図中上方向)に移動させて、レーザ光照射装置52によるレーザ肉盛り加工で残留した金属粉末を除去する(ST105)。レーザ肉盛り加工で残留した金属粉末の除去は、例えば、支持装置30の近傍に配置されたロボット66に搭載されている粉末吸引器で除去される。
【0037】
そして、シリンダヘッド10の一方のポート14及び他方のポート15の数(n)が、ST101〜ST105までの処理を実行した回数(m)と同じであるか否かを判定する(ST106)。
【0038】
ST106の判定結果がNOの場合、移載ロボット62によりパレット20に固定されているシリンダ10を支持装置30から抜き出して、次にレーザ肉盛り加工がされる一方のポート14又は他方のポート15のバルブヘッド部18が位置決め機構32で位置決めされるように、移載ロボット62によりパレット20に固定されているシリンダ10を移動する(ST107)。その後ST101に戻る。
【0039】
一方、ST106の判定結果がYESの場合、パレット20に固定されたシリンダヘッド10のパレット20に対する固定を解除し、移載ロボット62のロボットハンド64でシリンダ10を把持して、シリンダヘッド10を次の工程に搬送する搬送部に排出する(ST108)。
【0040】
次に、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置30の動作について説明する。
【0041】
図6は、バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置の動作について説明するための図である。
【0042】
まず、図6(b)に示すように、移載ロボット62により、パレット20に固定されたシリンダヘッド10のレーザ肉盛り加工がされる一方のポート14のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に、垂直状態の位置決めピン38を挿入する。これにより、パレット20に固定されているシリンダヘッド10が支持装置30に挿入される。
【0043】
次いで、図6(a)に示すように、図3に示す第3の駆動源57により支持装置30のチルト機構35を駆動して左側に傾けると共に、バルブシート部18の被加工面が実質的に水平となるように支持装置30を略45°にする。そして、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させてレーザ肉盛り加工をする。その後、再び図6(b)のように戻して更に、図6(c)に示すように、移載ロボット62により、シリンダヘッド10を位置決めピン38から抜いてパレット20に固定されているシリンダヘッド10を位置決めピン38の上方に移動する。
【0044】
そして、図6(d)に示すように、移載ロボット62により、図6(a)でレーザ肉盛り加工された一方のポート14と対となる他方のポート15のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40が、支持装置30の位置決めピン38の真下となるようにシリンダヘッドが固定されたパレット20を回転する。
【0045】
その後、図6(e)に示すように、移載ロボット62により、図6(d)の他方のポート15のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に位置決めピン38を挿入してシリンダヘッド10を位置決めする。
【0046】
そして、前記図6(a)での肉盛り加工と同様の位置関係で図6(d)の他方のポート15のバルブシート部18の被加工面にレーザ肉盛り加工ができるように、図6(f)に示すように、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させる。その後、図6(g)に示すように、図6(a)と同様に、図3に示す第3の駆動源57により支持装置30のチルト機構35を駆動して左側に傾けると共に、バルブシート部18の被加工面が実質的に水平となるように支持装置30を略45°にする。そして、支持装置30のシリンダヘッド回転機構34を位置決めピン38の軸回りに回転させてレーザ肉盛り加工をする。
【0047】
その後、再び図6(f)のように戻して、図6(c)と同様に、シリンダヘッド10を位置決めピン38から抜き出す。これにより、パレット20に固定されているシリンダヘッド10が支持装置30から抜き出される。
【0048】
尚、図6(a)及び図6(g)のレーザ肉盛り加工時には、シリンダヘッド10の、肉盛り部が形成されるべきバブルシート部18に対応するバブルステムのガイド穴40を、位置決め手段の位置決めピン38により、直接的に支承する。ところで、当該バルブシート部18は、シリンダヘッド10が暖められると、該シリンダヘッド10の長手方向の端部からの位置が大きく変位することがある。比較的高温のレーザ光による肉盛り加工によれば、シリンダヘッド10に熱膨張が生じる。しかしながら、シリンダヘッド10の、肉盛り部が形成されるべきバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を、位置決め手段の位置決めピンにより、直接的に支承するので、比較的高温のレーザ光による肉盛り加工により、シリンダヘッド10に熱変形が生じたとしても、当該肉盛り部が形成されるべきバルブシート部18は、バルブステムのガイド穴40の軸線に対して対象形状をしているから、バルブシート部18の被加工面と、照射するレーザ光の位置とは、比較的ズレず許容できる範囲に収まる。また、シリンダヘッド回転機構34に付設した図示しない金属粉末を冷却するための、マニホールド16を介してバルブシート部18近傍の大気を吸引する吸引手段や又はマニホールド16を介してのガスの供給手段が、シリンダヘッド10をも冷却するので、バルブシート部18の被加工面と、照射するレーザ光の位置とは、よりズレずに許容できる範囲に収まり易い。
【0049】
尚、図7は、図6(a)及び図6(g)の拡大図である。
【0050】
図8は、本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置に固定されるシリンダヘッドが固定されたパレットを示す図である。
【0051】
図8(a)は、最右部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0052】
最右部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44c,44d,44e,44fの4箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0053】
図8(b)は、中央部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0054】
中央部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44a,44b,44c,44d,44e,44fの6箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0055】
図8(c)は、最左部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際に、支持台42に固定されるシリンダヘッド10が固定されたパレット20を示す図である。
【0056】
最左部に位置する一方のポート14又は他方のポート15のバルブシート部18を加工する際には、支持台42のクランパ44a,44b,44c,44dの4箇所でシリンダヘッド10が固定されたパレット20が固定される。
【0057】
図9は、シリンダヘッドをパレットに固定又は解除する方法を示す図である。シリンダヘッド10は、パレット20に上下端の左右にそれぞれに設けられているクランプアーム21で固定されている。クランプアーム21は、側面視でパレット20を上端部にパレット20を基準面26に押し付ける爪部を有してパレット20の側方で上下方向に延びると共に、パレット20の下方で上下のクランプアーム21が隣接するように水平方向に延びている。そして、パレット20の側方で上下方向に延びている部位Aで回転可能にパレット20に支持されている。
【0058】
クランプアーム21は、爪部でパレット20を基準面26に押し付けるようにばね等の付勢部材48で付勢されている。
【0059】
シリンダヘッド10をパレット20から解除は、パレット20の下部で上下のクランプアーム21が隣接する部位をシリンダ50で押圧することでクランプアーム21の部位Aを中心に回転することによりなされる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、移載ロボット62により、支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40を挿入し、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10を支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38から抜き出し、次にレーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されるシリンダヘッド10のバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40に支持装置30に設けられている位置決め機構32の位置決めピン38が挿入されるようにシリンダヘッド10を支持装置30から離間して移動させる。このため、支持装置30に挿入されたシリンダヘッド10がレーザ光照射装置52により加熱されて肉盛り部が形成され、レーザ光照射装置52により肉盛り部が形成されたシリンダヘッド10が支持装置30から抜き出され、次にレーザ光照射装置52によりバルブシート18部に肉盛り部を形成するためにシリンダヘッド10が支持装置30から離間されて移動されるので、シリンダヘッド10が冷却されてシリンダヘッド10の熱変形の影響を小さくすることができる。また、移載ロボット62により、支持装置30における位置決め機構32の位置決めピン38で位置決めされたシリンダヘッド10が、シリンダヘッド10の肉盛り部が形成されるバルブシート部18に対応するバルブステムのガイド穴40の軸線回りに回転されて、金属粉末供給装置54により供給された金属粉末にレーザ光を照射してバルブシート部18にリング状の肉盛り部が形成される。従って、移載ロボット62により、支持装置30にシリンダヘッド10の挿入及び支持装置30からシリンダヘッドの抜き出しを繰り返すことにより、シリンダヘッドのバルブシート部に対するレーザ肉盛り加工の位置精度を向上することができる。
【0061】
尚、本実施形態のパレット20及び支持台42、又は支持装置30が、本発明の支持手段に相当する。また、本実施形態の位置決め機構32が、本発明の位置決め手段に相当する。また、本実施形態のシリンダヘッド回転機構34が、本発明の回転手段に相当する、また、本実施形態のレーザ光照射装置52が、本発明のレーザ光照射手段に相当する。また、本実施形態の金属粉末供給装置54が、本発明の金属粉末供給手段に相当する。
【0062】
また、本実施形態のST101の処理が、本発明の挿入工程に相当する。また、本実施形態のST104の処理が、本発明のレーザ光照射工程及び回転工程に相当する。また、本実施形態のST107の処理が、本発明の抜出工程及び移動工程に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に適用されるシリンダヘッドを示す斜視図である。
【図2】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置を説明するための図である。
【図3】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置の構成要素であるレーザ光照射装置と金属粉末供給装置を示す図である。
【図4】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り装置を示す図である。
【図5】本発明のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明のバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置の動作について説明する図である。
【図7】図6(a)及び図6(g)の拡大図である。
【図8】本発明のバルブシート形成用シリンダヘッド支持装置に固定されるシリンダヘッドが固定されたパレットを示す図である。
【図9】シリンダヘッドをパレットに固定又は解除する方法を示す図である。
【図10】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが把持されている状態を示す図である。
【図11】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが固定されているパレットが把持されている状態を示す図である。
【図12】移載ロボットのロボットハンドにより、シリンダヘッドが固定されているパレットを把持して位置決め機構で位置決めされるように支持装置に挿入する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10…シリンダヘッド、12…シリンダヘッド凹部、14…一方のポート、15…他方のポート、16…マニホールド、18…バルブシート部、20…パレット、22,24,26…基準面、21…クラアアンクアーム、22a,22b,24a,24b…脚、30…バルブシート形成用シリンダヘッド支持装置(支持装置)、32…位置決め機構、34…シリンダヘッド回転機構、36…シリンダ、38…位置決めピン、40…ガイド穴、42…支持台、44,44a,44b,44c,44d,44e,44d…クランパ、46…加熱部、48…付勢部材、50…シリンダ、52…レーザ光照射装置、54…金属粉末供給装置、55…第1の駆動源、56…第2の駆動源、57…第3の駆動源、58…第4の駆動源、60…バルブシート形成用レーザ肉盛り装置移載、62…移載ロボット、64…ロボットハンド、66…ロボット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置であって、
前記シリンダヘッドを支持する支持手段と、
前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段と、
前記位置決め手段で位置決めされた前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転手段と、
前記位置決め手段により位置決めされた前記バルブシート部に金属粉末を供給する金属粉末供給手段と、
前記金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射して前記回転手段で回転される前記バルブシート部にリング状の肉盛り部を形成するレーザ光照射手段と、
前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入し、前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次に前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダを前記支持手段から離間して移動させる移載ロボットと
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り装置。
【請求項2】
シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り方法であって、
前記シリンダヘッドを支持する支持手段、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段、及び前記シリンダヘッドを移動させる移載ロボットを有し、
移載ロボットにより前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に金属粉末を供給すると共に、該金属粉末にレーザ光を照射して前記バルブシート部に肉盛り部を形成するレーザ光照射工程と
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【請求項3】
請求項2記載のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法において、
前記レーザ光照射工程では、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転工程を同時に実施することを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法において、
移載ロボットにより前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出す抜出工程と、
移載ロボットにより次に前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移動工程と
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【請求項1】
シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り装置であって、
前記シリンダヘッドを支持する支持手段と、
前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段と、
前記位置決め手段で位置決めされた前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転手段と、
前記位置決め手段により位置決めされた前記バルブシート部に金属粉末を供給する金属粉末供給手段と、
前記金属粉末供給手段により供給された金属粉末にレーザ光を照射して前記回転手段で回転される前記バルブシート部にリング状の肉盛り部を形成するレーザ光照射手段と、
前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入し、前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出し、次に前記レーザ光照射手段により肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダを前記支持手段から離間して移動させる移載ロボットと
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り装置。
【請求項2】
シリンダヘッドに配列された複数のバルブシート部に金属粉末を供給しながら該金属粉末にレーザ光を照射して溶融した後に固化させることにより肉盛り部を形成するバルブシート形成用レーザ肉盛り方法であって、
前記シリンダヘッドを支持する支持手段、前記支持手段に設けられ、前記シリンダヘッドの前記肉盛り部が形成されるバルブシート部に対応するバルブステムのガイド穴に挿入される位置決めピンを基準として前記シリンダヘッドを位置決めする位置決め手段、及び前記シリンダヘッドを移動させる移載ロボットを有し、
移載ロボットにより前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに前記肉盛り部が形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に金属粉末を供給すると共に、該金属粉末にレーザ光を照射して前記バルブシート部に肉盛り部を形成するレーザ光照射工程と
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【請求項3】
請求項2記載のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法において、
前記レーザ光照射工程では、前記挿入工程により前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンに挿入された前記シリンダヘッドを前記バルブステムのガイド穴の軸線回りに回転させる回転工程を同時に実施することを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載のバルブシート形成用レーザ肉盛り方法において、
移載ロボットにより前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成された前記シリンダヘッドを前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンから抜き出す抜出工程と、
移載ロボットにより次に前記レーザ光照射手段により肉盛りが形成される前記シリンダヘッドの前記バルブシート部に対応する前記バルブステムのガイド穴に前記支持手段に設けられている前記位置決め手段の位置決めピンが挿入されるように前記シリンダヘッドを前記支持手段から離間して移動させる移動工程と
を備えることを特徴とするバルブシート形成用レーザ肉盛り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−99678(P2010−99678A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271960(P2008−271960)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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