説明

バー塗布方法及び装置

【課題】バー塗布において、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させずにウエブに薄膜塗布する。
【解決手段】ウエブ18に、バー受け部材22に支持されて回転する円柱状のバー20を用いて塗布液を塗布するバー塗布装置10において、バー受け部材22のバー支持面46におけるバー径方向に対応する断面形状は、バー20を受ける円弧部分48を少なくとも有する凹形状に形成され、バー20の半径をR1、バー支持面46の円弧部分48の曲率半径をR2、バー支持面46のうちバー20をホールドしているホールド角度をθ1、R2の曲率を有する仮想円形50の中心52とバー支持面46の両エッジ54、54とを結ぶ仮想直線56が成すバー支持面領域角度をθ2、仮想直線56のうちの仮想円形50の外周からエッジ54までの距離をΔとしたときに、40°≦θ1<θ2≦180°、1.01≦R2/R1≦1.20、Δ≧0.03mmを満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバー塗布方法及び装置に係り、特に直径が5mm〜15mmの細径な円柱状のバーによって、連続走行するウエブに塗布液を薄膜塗布するバー塗布方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より連続走行しているウエブに塗布液を塗布する方法として、各種の方法が提案されているが、特公昭58−4589号公報等に示されるように、操作が容易で、かつ多大なスペースを要しないバー塗布方法が広く利用されている。しかし、バーは細長いために、ウエブやバーの僅かな振動により、ウエブの走行方向において段状の塗布厚みムラ(以下、段状ムラという)が発生し易く、この対策として本出願人は、特許文献1において、ウエブとバーのラップ角度を2.5〜30°にすると共に、バー断面の最大径をRbとし、バー支持部材のバー受け部断面の円弧の曲率半径をRhとしたときに、Rb/Rhが0.9〜1.0の範囲とし、バー支持部材のバーホールド角を90°以上180°以下にするバー塗布方法を提案した。これにより、段状ムラを解決することができる。
【特許文献1】特開平9−201563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のバー塗布方法を使用しても、ウエブに塗布液が塗布された塗布膜面に、バーの1回転周期で発生するウエブの幅方向に出る横段状ムラ、塗布液の流動に起因する不連続な流動ムラ、ウエブ長手方向(搬送方向)に直線状に出る縦スジ等の塗布故障を発生する場合があるという問題がある。特に、光学補償フィルム等の光学機能性フィルムの製造における塗布のように、ウエブに塗布される湿潤膜厚が15μm以下の薄膜塗布においては、塗布後のレベリング効果が得られにくいために、これらの塗布故障が顕在化し易く問題になる。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、バー塗布において、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブに薄膜塗布することができるので、例えば光学機能性フィルムの製造に好適なバー塗布方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者はバー塗布における横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障の発生原因として次の知見を得た。即ち、バー塗布におけるバーは、両端が軸受に回転自在に支持されると共に、バーに撓みが発生しにくいようにバーはバー受け部材の断面凹形状なバー支持面に支持されている。しかしながら、連続走行するウエブにバーで塗布液を塗布する場合、バーは軸芯を中心に完全な円形を描いて回転するのではなく、バーにラップして走行するウエブの振動やバー自体の振動、バーの僅かな撓み等によりバーの振れ回り(揺れながら回転する)が発生する。特に、薄膜塗布を行うためにバー径を5〜15mmと細くした場合には、バーの振れ回りが発生し易い。この振れ回りや、振れ回りによりバーがバー支持面のエッジに当たることに起因して、上記の塗布故障が発生することが分かった。そして、これらの塗布故障を発生させないためには、バー受け部材のバー支持面をバーに対して特定の関係を有する形状にすることで、バーのバー支持面に対するホールド性を確保すると共に、振れ回りによりバーがバー支持面のエッジに当たり難くすることで解決できることが分かった。本発明はかかる知見に基づいて成されたものである。
【0006】
本発明の請求項1のバー塗布装置は、前記目的を達成するために、連続走行しているウエブに、バー受け部材に支持されて回転する円柱状のバーを用いて塗布液を塗布するバー塗布装置において、前記バー受け部材の前記バーを支持するバー支持面におけるバー径方向に対応する断面形状は、前記バーを受ける円弧部分を少なくとも有する凹形状に形成され、前記バーを回転していない状態で前記バー支持面に支持させたときに、前記バーの半径をR1、前記バー支持面の前記円弧部分の曲率半径をR2、前記バー支持面のうち前記バーをホールドしているホールド角度をθ1、前記R2の曲率を有する仮想円形の中心と前記バー支持面の両エッジとを結ぶ仮想直線が成すバー支持面領域角度をθ2、前記仮想直線のうちの前記仮想円形の外周から前記エッジまでの距離をΔとしたときに、40°≦θ1<θ2≦180° …式1、1.01≦R2/R1≦1.20…式2、Δ≧0.03mm…式3を全て満足するように前記バー支持面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、ホールド角度θ1とは、バー支持面の円弧部分のうち、R2の曲率半径で形成される仮想円形の中心からバーとバー支持面とが接触する接触円弧部分の両端に下ろした直線同士が成す角度を言う。即ち、バーがバー支持面に接触してホールド(抱かれている)されている部分の角度を言う。また、エッジとは、バー支持面の中央位置(円弧部分の中央位置)からバー支持面の端に向かって順番に接線を引いていったときに、前記中央位置での水平な接線が次第に立ち上がっていき、寝る方向に切り変わったときの切り変わり位置を言う。即ち接線の立ち上がりから寝る方向に切り変わることにより凸状のエッジが形成される。
【0008】
請求項1によれば、上記した式1〜式3の全てを満足するように、バーに対してバー支持面が形成されているので、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブに薄膜塗布することができる。即ち、式1及び式2を満足することで、バーのバー支持面へのホールド性を良好に確保しながら、バー支持面のエッジをバー周面から外側に逃がすことができる。このときのエッジの逃がし距離、即ちΔを0.03mm以上にすることで、振れ回りによりバーがバー支持面のエッジに当たるのを防止できる。
【0009】
請求項2は請求項1において、前記バーの直径が5〜15mmの範囲の太さであることを特徴とする。このように細いバーは撓み易いために振れ回りし易く、本発明の効果が一層発揮されるからである。
【0010】
請求項3は請求項1又は2において、前記バー支持面における前記円弧部分の端から連続して前記エッジまでを直線で形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3は、請求項1の3つの式を満足するようにバー支持面を形成する好ましい一例であり、バーのバー支持面へのホールド性を高めながら、バー周面に対してバー支持面のエッジを外側に有効に逃がすためのバー支持面の形状として、バー支持面における円弧部分の端から連続してエッジまでを直線で形成するようにしたものである。
【0012】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記バーは芯金にワイヤーを巻回したワイヤーバーであることを特徴とする。
【0013】
バー塗布装置で使用するバーの種類としては、フラットバー、ワイヤーバー、溝切りバーの3種類があるが、こられの中ではワイヤーバーが塗布量を一番精度良く制御し易く、薄膜塗布に好適だからである。
【0014】
請求項5は請求項4において、前記ワイヤーバーに巻回されるワイヤーの径は、0.06mm〜0.4mmであることを特徴とする。
【0015】
ワイヤー径が0.4mmで約15μm厚みの塗布膜が形成され、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障は、このような薄膜塗布する際に顕在化し易く、本発明の効果が一層発揮されるからである。ワイヤー径が0.06mm〜0.2mmにおいて本発明の効果が更に発揮される。
【0016】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記バー支持面における長手方向の真直度は、バー1m当たり0.2mm以下であることを特徴とする。
【0017】
バー支持面の長手方向の真直度をバー1m当たり0.2mm以下することで、バーの振れ回りを小さくでき、且つバーのバー支持面へのホールド性も向上するので、バーの回転時にバーがバー支持面に局所的に当たるのを防止する。
【0018】
請求項7のバー塗布方法は前記目的を達成するために、請求項1〜6の何れか1のバー塗布装置でウエブに塗布液を塗布することを特徴とする。
【0019】
これにより、バー塗布において、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブに薄膜塗布することができる。
【0020】
請求項8は請求項7において、前記バー塗布装置で前記ウエブに湿潤厚みで15μm以下の塗布厚みになるように塗布液を塗布することを特徴とする。
【0021】
横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障は、ウエブに湿潤厚みで15μm以下の塗布厚みになるように薄膜塗布する際に顕在化し易く、このような薄膜塗布において本発明の効果が一層発揮されるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のバー塗布方法及び装置によれば、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブに薄膜塗布することができる。従って、本発明は、例えば光学機能性フィルムの製造のように薄膜塗布における塗布膜面の表面性を改善する上で極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って、本発明に係るバー塗布方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は本発明の実施態様を示すバー塗布装置の側面断面図であり、図2はバー塗布ヘッドの一部を断面で示した斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、バー塗布装置10は、バー塗布ヘッド12を挟んでウエブ走行方向の上流側と下流側とに設けられた一対外のガイドローラ14,16によりウエブ18がバー塗布ヘッド12のバー20にラップされた状態で塗布液が塗布される。
【0026】
バー塗布ヘッド12は、主として、両端が図示しない軸受により回転自在に支持されたバー20と、そのバー20の全長にわたって設けられ、バー20に撓みが生ずるのを防止すると共にバー20へ塗布液を供給する給液器としての機能を備えたバー受け部材22と、バー受け部材22との間に塗布液の給液路24、26を形成する上流側堰部材28と下流側堰部材30とで構成される。給液路24、26は、マニホールド32とスロット34とで構成され、マニホールド32に給液された塗布液がスロット34を介してウエブ18の幅方向に均一に押し出される。これにより、バー20に対してウエブ18の搬送方向の上流側(以下、1次側という)には1次側ビード36が形成され、下流側(以下、2次側という)には2次側ビード38が形成される。この2次側ビード38はバー20とバー受け部材22との間に空気を巻き込まないように作用する。これら1次側と2次側のビード36,38を形成する塗布液が回転するバー20によってピックアップされることにより、バー20にラップして連続走行するウエブ18に塗布される。また、給液路24、26から1次側と2次側のビード36,38に供給された塗布液のうち余剰の塗布液は堰部材28、30の外側28A、30Aを流下する。
【0027】
バー20の回転は、ウエブ18の走行によって従動回転する場合、駆動源を設けて回転駆動する場合の何れでも良く、また回転駆動する方向はウエブ18の走行方向と同方法への回転でも、逆方向への回転でもよい。バー20の種類としては、ワイヤーバー、溝切りバーを好適に使用することができ、特に光学補償フィルム等の光学機能性フィルムの製造のようにウエブ18に塗布する湿潤膜厚が15μm以下の薄膜塗布には、ワイヤーバー20が塗布量を精度良く制御し易く薄膜塗布に好適である。ワイヤーバー20は、図3に示すように、円柱状の芯金40の表面にワイヤー42を巻回してワイヤ列44を形成することで作成される。ワイヤーバー20は、図4に示すように、ワイヤー42の太さを変えることで、ワイヤ列44のワイヤー42同士の間に保持する塗布液量を変えることができ、これにより所望厚みの塗布膜を精度良く塗布することができる。
【0028】
図5に示すように、バー受け部材22のバー20を支持するバー支持面46におけるバー径方向に対応する断面形状は、バー20を受ける円弧部分48を少なくとも有する凹形状に形成され、バー20が回転していない状態でバー支持面46に支持させたときに、バー20の半径をR1、バー支持面46の円弧部分48の曲率半径をR2、バー支持面46のうちバー20をホールドしているホールド角度をθ1、R2の曲率を有する仮想円形50の中心52とバー支持面46の両エッジ54,54とを結ぶ仮想直線56,56が成すバー支持面領域角度をθ2、仮想直線56,56のうちの仮想円形50の外周からエッジ54,54までの距離をΔとしたときに、
40°≦θ1<θ2≦180° …式1、
1.01≦R2/R1≦1.20…式2、
Δ≧0.03mm …式3を全て満足するようにバー20に対してバー支持面46が形成される。
【0029】
ここで、ホールド角度θ1とは、バー支持面46の円弧部分48のうち、R2の曲率半径で形成される仮想円形50の中心52からバー20とバー支持面46とが接触する接触円弧部分の両端に下ろした直線58,58同士が成す角度を言う。即ち、バー20がバー支持面46に接触してホールド(抱かれている)されている部分の角度を言う。また、エッジ54とは、バー支持面46の中央位置60(円弧部分の中央位置)からバー支持面46の端に向かって順番に接線を引いていったときに、中央位置60での水平な接線が次第に立ち上がっていき、寝る方向に切り変わったときの切り変わり位置を言う。即ち接線の立ち上がりから寝る方向に切り変わることにより凸状のエッジが形成される。このエッジ54の定義については図6及び図7で詳しく説明する。尚、符号62は、バー20の中心である。
【0030】
図6は上記した式1〜式3の3つの式を満足するようにバー支持面46を形成する好ましい一例であり、バー支持面46における円弧部分48の両端から連続してエッジ54までを長さLの直線部分64で形成するようにしたものである。このように、バー支持面46を円弧部分48と直線部分64とで形成することにより、円弧部分48によってバー20をバー支持面46にホールドするホールド角度θ1を大きくでき、しかも円弧部分48に連続する直線部分64によってバー20の外周20Aに対してエッジ54を外側に逃がし易くできる。直線の長さLは、Δを0.03mm以上にすることができる長さである。また、円弧部分48と直線部分64との境目66は、ホールド角度θ1の領域よりもエッジ54側に位置させることが好ましい。これにより、円弧部分48と直線部分64との境目66にバー20に接触する鈍角な角部(エッジ)が形成されない。
【0031】
また、円弧部分48と直線部分64とでバー支持面46を形成した場合には、図6に示すように、接線1〜5までは接線が次第に立ち上がる方向で推移し、接線5が直線部分Lと重なる。そして、エッジ面に接する接線6で立ち上がりから寝る方向に切り替わる。従って、接線5と接線6の交点がバー支持面46の右側(図6の右側)のエッジ54になる。バー支持面46の左側(図6の右側)のエッジ54も同様に接線の立ち上がる方向から寝る方向に切り替わる位置である。
【0032】
また、バー支持面46における長手方向の真直度は、バー1m当たり0.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以下である。
【0033】
次に、上記の如く構成されたバー塗布装置10によりウエブ18に塗布液を塗布する塗布方法を説明する。
【0034】
塗布液は塗布ヘッド12の給液路24,26内に供給されて1次側と2次側のビード36,38を形成し、回転するバー20によってピックアップされウエブ18に塗布される。この際、ウエブ18とバー20との接触部において塗布液の計量がおこなわれて所望の塗布量のみがウエブ18に塗布され、他は堰部材28,30の外側面に沿って流下する。即ち、バー塗布においては、塗布液はビード36,38を介してウエブ18に塗布されることになる。
【0035】
塗布液はビード36,38を形成し適切に維持してゆくためには、バー20によりピックアップされる塗布液量Q1 がウエブ18に塗布される塗布液量Q2 と等しいか、或いはこれより大であることが要求される。一般にQ1 >Q2 であれば、1次側ビード36への塗布液のインプットがアウトプットより大となるから、1次側ビード36の大きさを一定に保つ場合は、この過剰の塗布液が1次側ビード36外へ流出する。即ち、バー20により掻き落された過剰の塗布液の一部は堰部材28を越えて溢れ、堰部材28の外側面に沿って流下する。こうして溢れ流下した塗布液は回収され、再び塗布液として再使用されることになる。
【0036】
また、バー20の回転があまり大きくなると、塗布液の種類によっては、バー20とウエブ18の下流側接触部近傍に泡が停留して塗布故障を発生したりすることがある。この泡はバー20とバー受け部材22との間に存在する空気がバー20の回転により巻き込まれて発生するものと考えられるので、これを防止するために、図1に示す如くバー20の下流側においても、バー20に向けて塗布液を供給し、堰部材30よりオーバフローさせて、泡防止用の2次側ビード38を形成させて、空気が上流側へ巻き込まれないようにすることが好ましい。
【0037】
かかるバー塗布において、本発明では、上記した式1〜式3の全てを満足するように、バー20に対してバー支持面46が形成されているので、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブ18に薄膜塗布することができる。即ち、式1により、40°≦θ1<θ2≦180°を満足することが必要である。これは、ホールド角度θ1よりもバー支持面領域角度θ2を大きくすることでバー支持面46の形状がバー周面とエッジ54との距離を確保できるようにし、且つホールド角度θ1を40°を超えて大きく、且つ180°を超えないようにしたものである。ホールド角度θ1が40°未満ではバー20のバー支持面46へのホールド性が悪くなり、バー20が振れ回り易くなる。逆に、ホールド角度θ1が180°を超えると、バー支持面46のエッジ54がバー周面方向に近づくことになり距離Δを確保しづらくなるので、バー20の振れ回りによりバー20がエッジ54に当たり易くなる。
【0038】
また、式2により、1.01≦R2/R1≦1.20を満足することが必要である。これは、バー20がバー支持面46に支持され且つバー周面とエッジとの距離Δを確保するには、R2/R1が1.01倍以上で大きいことが必要であり、R2/R1が1.20を超えて大きくなり過ぎると、Δは大きくし易くなるが、バー20のバー支持面46に対するホールド性は悪くなる。この結果、バー20の振れ回りのときにバー20がバー支持面46を登ってエッジ54に当たり易くなる。
【0039】
また、式3により、Δ≧0.03mmを満足する必要がある。このΔ=0.03mmは、上記式1と式2により、バー20のバー支持面46へのホールド性の確保した上でのバー20の振れ回りの際に、バー20がエッジ54に当たらないために最低限必要な距離である。
【0040】
具体的な一例としては、図6のように、バー20をホールドする下に凸な円弧部分48に連続する直線部分64を形成することにより、バー20のバー支持面に対する良好なホールド性を確保でき、且つバー外周とエッジ54との間に0.03mm以上の距離Δを確保してエッジ54を外側に逃がしてやることができる。これにより、バー塗布において、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブ18に薄膜塗布することができる。
【0041】
更に、上記式1〜式3を満足するバー支持面46を形成すると、バー支持面46の両端部にはバー20との間に楔形の空間72が形成されることも上記の塗布故障を防止する一因と考えられる。即ち、この楔形の空間72により、ビード36,38の塗布液がバー20とバー支持面46との間に流れ込み易くなり、バー20とバー支持面46との間に潤滑膜を形成する。この潤滑膜により、バー20の回転がスムーズに行われ、振れ回りが小さくなることが推察される。
【0042】
また、バー支持面46の真直度をバー1m当たり0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下にすることにより、回転するバー20がバー支持面46に局所的に当たるのを和らげることができ、これにより塗布故障の発生を一層抑制できる。また、この真直度と上記した潤滑膜との複合的な効果も期待できる。
【0043】
本発明において、使用される塗布液はとくに限定されるものではなく、高分子化合物の水又は有機溶媒液,顔料水分散液,コロイド溶液等が利用しうる。また塗布液の物性も特に限定されるものではないが、粘度は低い方が適しており、100cp以下、とくに50cp以下の塗布液が適している。表面張力も特に限定されないが、50dyne/cm以下で特に好ましい結果が得られる。
【0044】
また、本発明に使用されるウエブ18としては、紙,プラスチックフイルム,レジンコーティッド紙,合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、たとえば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン等のビニル重合体、6,6−ナイロン,6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ヘルローストリアセテート,セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。またレジンコーティッド紙に用いる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必しもこれに限定されない。ウエブの厚みも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取扱い,汎用性より見て有利である。
【0045】
本発明において使用されるバー20は、ワイヤーバー、溝切りバーの何れでもよい。本発明においてワイヤーバーを使用する場合、バー20の直径は5mm〜15mm、好ましくは5mm〜10mmである。本発明で使用されるバー20の直径は5〜15mmの範囲の細径のものが対象であり、長さが2m以内のものが使用される。これは、バー20が細長いが故に、バー20の回転時に撓みに起因する振れ回りが発生し易いからである。また、バー20の直径が5mm未満のものは、製作上において困難を生じてしまう。ワイヤー42の径は0.06〜0.4mm、好ましくは0.06〜0.2mmが適当である。これより大きいときは塗布量が多くなりすぎ、高速薄膜塗布に有効なバー塗布法の使用法として適切でなく、これより小さいときはワイヤー42を巻いて高精度なワイヤーバーを製作することが困難になると共に強度的にも問題が出てくる。ワイヤー42の材質としては金属が用いられるが、耐蝕性,耐摩耗性,強度等の観点からステンレス鋼が最も適している。このワイヤー42には更に耐摩耗性を向上させるため、表面にメッキを施すことも出来る。とくにハードクロムメッキが適している。
【0046】
このように、バー径5mm〜15mm、ワイヤー径0.06〜0.4mmのワイヤーバーで粘度2cPの塗布液をウエブ18に塗布することで、湿潤厚みが5〜15μmの薄膜な塗布膜を得ることができる。
【0047】
また、本発明において溝切りバーを使用する場合も、バーの直径は5mm〜15mm、好ましくは5mm〜10mmである。溝のピッチは0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.3mmが適当であり、断面形状としては正弦曲線に近似したものがとくに適している。しかしながら、必ずしもこの様な断面形状に限定されることなく、他の断面形状のものも使用することが出来る。一般に溝切りバーとワイヤーバーとは一定の対応関係があり、それぞれ断面における凸部の頂を結んだ線より下方にある室間の単位長さ当りの面積が等しい場合に、同一条件下における同一塗布量の塗布に適しているとされている。したがってこのような対応関係に基き、ワイヤーバーにおける知見より適切な薄切りバーを選定することができる。バー20の材質としては、耐蝕性,強度の面より金属が好ましく、とくにステンレス鋼が適している。また溝切りバーの材質としては、耐蝕性,強度,耐摩耗性の面より金属とくにステンレス鋼が適している。
【0048】
バー受け部材22はバー20が高速で回転するため、バー(ワイヤーバーにあってはワイヤー)20との間の摩擦抵抗が小さい材質のものが選択されなければならない。本発明に好ましく用いられるバー受け部材22の材質としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができ、これらのうちでもテフロン(米国DuPont社商品名)の名で知られるポリテトラフルオルエチレン、デルリン(米国DuPont社商品名)の名で知られるポリアセタール樹脂が摩擦係数,強度の点で特に好適である。更に、これらのプラスチック材料にグラスファイバー、グラファイト、二硫化モルブデン等の充填剤を添加したものも用いることができる。更には、バー受け部材22を金属材料で製作した後、その表面に前述の如きプラスチック材料をコーティングしたり、貼り付けたりして、バー20との間の摩擦係数を小さくさせてもよい。あるいは、各種金属材料に前述の如きプラスチック材料を含浸させたもの、例えば、アルミニウムにポリテトラフルオルエチレンを含浸させたものをバー支持部材に用いることも出来る。
【0049】
本発明において、適当なビード36,38の大きさは各条件により適当な大きさを異にするが、これは塗布液の粘度等の物性,バー20の構造と回転速度,ウエブ18の走行速度等により変化するので、ビード36,38の大きさ自身を規定することはさしたる意義はなく、むしろコントロールしうるこれらのパラメータをいかに選ぶかを検討するのが現実的である。これらの条件をいかに選択すべきかは、複数のパラメータが複雑にからみ合っているため、結局のところ実験により決定すべきであるが、一般的に述べると、バー20の回転周速度Vbとウエブ18の走行速度Vwの相対比Vb/Vwは1であることがおおく、この相対比を1とした場合、塗布におけるVwの限界速度は塗布液の粘度が小なる程、またバー径が小なる程、大きくなる傾向にあるが、粘度を下げることを目的とした塗布液の密度低下や、バーの小径化は乾燥ムラの悪化やバーの振れ回りを発生させるため、塗布液の粘度やバー径の最適化な組み合わせが必要である。
【0050】
図7は、本発明のバー塗布装置10を組み込んだ光学補償シートの製造ライン80である。
【0051】
光学機能フィルムの製造ライン80は、図7に示されるように、送出機82から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ18が送り出される。次に、ウエブ18はガイドローラ84によってガイドされてラビング処理装置86に送りこまれ、ラビングローラ88は、ポリマー層にラビング処理が施される。ラビングローラ88の下流には除塵機90が設けられており、ウエブ18の表面に付着した塵を取り除く。除塵機90の下流には本発明のバー塗布ヘッド12が設けられており、ディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ18に塗布される。塗布ヘッド12の下流には、乾燥ゾーン92、加熱ゾーン94が順次設けられており、ウエブ18上の塗布液が乾燥・加熱されて液晶層が形成される。更に、この下流には紫外線ランプ96が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーを形成する。これにより、光学補償フィルムが製造され、製造された光学補償フィルムは巻取機98に巻き取られる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
図7に示した本発明のバー塗布装置10を組み込んだ光学補償フィルムの製造ライン80により光学補償フィルムを以下の条件で製造した。
【0053】
ウエブ18は、厚さ100 μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フィルム(株)製)の表面に長鎖アルキル変性ポバールの2重量%溶液をフィルム1m2 当たり25mlになるように塗布後、60°Cで1 分間乾燥させて配向膜用樹脂層を形成したものを使用した。このウエブ18を、送出機82から送り出すと共に50m/分で搬送しながらラビング処理装置86によって配向膜用樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成した。ラビング処理におけるラビングローラ88の押し付け圧力を、配向膜樹脂層の1cm2 あたり10kgf/cm2 にすると共に、回転周速を5.0m/秒にした。
【0054】
そして、配向膜用樹脂層をラビング処理して得られた配向膜上に、本発明のバー塗布装置10を使用して塗布液を塗布した。塗布液は、下記に示すディスコティック化合物TE−8のR(1)とR(2)の重量比で4 :1 の混合物に対し、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V♯360、大阪有機科学(株)製)を10重量%、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)を0.6重量%、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を3重量%、増感剤(カヤキュアーDET−X、日本化薬(株)製)を1重量%、添加し、最終的にその混合物の32重量%メチルエチルケトン溶液とした。その液晶性化合物を含む液に、さらにフッ素系界面活性剤(フルオロ脂肪族基含有共重合体、メガファックF780、大日本インキ(株)製)を0.3重量%添加し、塗布液として使用した。
【化1】

そして、真直度がバー1m当たり0.1mmのバー支持面46に、バー径8mm及びワイヤー径0.06mmのワイヤーバー20を支持すると共に、ウエブ18を走行速度20m/分で走行させながらワイヤーバー20も同速で順回転させ、バー塗布ヘッド12から塗布液をウエブ1m2 当たり5ml(湿潤膜厚5μm)になるように配向膜上に塗布した。
【0055】
このとき、塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46は、R2/R1が1.07、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が74°、バー支持面領域角度θ2が102°、距離Δが0.09mmであった。即ち、本発明においてバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる式1〜式3の条件を全て満足した場合である。
【0056】
40°≦θ1<θ2≦180° …式1、
1.01≦R2/R1≦1.20…式2、
Δ≧0.03mm …式3
このバー受け部材22を有するバー塗布ヘッド12で塗布液が塗布されたウエブ18は、100°Cに調整された乾燥ゾーン92及び、130°Cに調整された加熱ゾーン94を通過させてネマチック相を形成した後、この配向膜及び液晶性化合物相が塗布されたウエブ18を連続搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプ96により紫外線を照射した。これにより、光学補償フィルムを製造した。
【0057】
(実施例2)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.09、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が68°、バー支持面領域角度θ2が108°、距離Δが0.14mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件を全て満足した場合である。
【0058】
(比較例1)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.00、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が74°、バー支持面領域角度θ2が74°、距離Δが0mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、θ1<θ2の規定、1.01<R2/R1<1.20の規定、及びΔ≧0.03mmを満足しない場合であり、図8のようにバー周面にバー支持面46のエッジ54が接触している場合である。
【0059】
(比較例2)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.00、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が90°、バー支持面領域角度θ2が90°、距離Δが0mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、θ1<θ2の規定、1.01<R2/R1<1.20の規定、及びΔ≧0.03mmの規定を満足しない場合であり、図8のようにバー周面にバー支持面46のエッジ54が接触している場合である。比較例1と比較例2との違いは、比較例2は比較例1よりもθ1及びθ2が大きい。
【0060】
(比較例3)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.09、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が180°、バー支持面領域角度θ2が206°、距離Δが0.20mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、40°≦θ1<θ2≦180°におけるθ2が上限の180°を超える場合であり、図9に示すように、バー支持面46のエッジ54がバー20の上半分に出るように形成されている場合である。
【0061】
(比較例4)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.09、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が30°、バー支持面領域角度θ2が60°、距離Δが0.12mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、40°≦θ1<θ2≦180°におけるθ1が下限の40°を下回る場合であり、図10に示すように、ホールド角度θ1が極めて小さい場合である。
【0062】
(実施例3)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.09、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が120°、バー支持面領域角度θ2が180°、距離Δが0.52mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件を全て満足した場合である。
【0063】
(比較例5)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.07、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が82°、バー支持面領域角度θ2が90°、距離Δが0.02mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、Δ≧0.03mmを満足しない場合であり、図11に示すように、バー支持面46の円弧部分48の端に直線部分64を形成するがΔが十分に確保されていない場合である。
【0064】
(比較例6)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.00、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が74°、バー支持面領域角度θ2が104°、距離Δが0.08mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、1.01<R2/R1<1.20の下限1.01を下回る場合である。一見、比較例5の図11に似ているが、比較例5はR2/R1が1.07であるのに対し、比較例6はR2/R1が1.00であるために、円弧部分48と直線部部分64との境目にバー20に接触する鈍角な角(エッジ)が形成されてしまう場合である。
【0065】
(比較例7)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.40、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が42°、バー支持面領域角度θ2が74°、距離Δが0.19mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、1.01<R2/R1<1.20の上限を超える場合であり、図12に示すように、R2/R1が1.40とバー支持面46の円弧部分48の曲率半径R2に対してバー20の半径R1が7割程度しかない場合である。
【0066】
(実施例4)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.07、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が60°、バー支持面領域角度θ2が102°、距離Δが0.33mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件を全て満足した場合である。
【0067】
(実施例5)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.20、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が60°、バー支持面領域角度θ2が98°、距離Δが0.20mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件を全て満足した場合である。
【0068】
(実施例6)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.01、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が74°、バー支持面領域角度θ2が76°、仮想直線のうちの仮想円形の外周からエッジまでの距離Δが0.03mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件を全て満足した場合である。
【0069】
(比較例8)
塗布ヘッド12のバー受け部材22のバー支持面46を次のように変えた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを製造した。R2/R1が1.09、バー支持面46におけるバー20のホールド角度θ1が160°、バー支持面領域角度θ2が190°、距離Δが0.12mmであった。即ち、本発明のバー受け部材22のバー支持面46に必要とされる条件のうち、40°≦θ1<θ2≦180°におけるθ2が条件の上限180°を10°だけ上回る場合であり、図9に示すように、バー支持面46のエッジ54がバー20の上半分に少しだけ出た位置に形成されている場合である。
【0070】
実施例1〜6及び比較例1〜8の結果を表1に示す。
【0071】
(評価方法)
評価項目はバー20の1回転周期でウエブ18の幅方向に発生する塗布ムラを横段状ムラ、塗布液の流動に起因する不連続なムラを流動ムラ、ウエブ18の長手方向(搬送方向)に直線状に発生するスジムラを縦スジとして、目視により評価した。
【0072】
評価レベルは、光学補償フィルムの品質評価において、製造品質レベルを十分に満たすレベルを◎、製造品質を満たすレベルを○、製造品質を満たさず不合格となるレベルを×とした3段階評価を行った。
【0073】
評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

表1の比較例1、2及び図8から分かるように、バー20の半径R1とバー支持面46の円弧部分48の曲率半径R2が同じ場合には、距離Δが無くなってバー20の円周面がバー支持面46のエッジ54に接触した状態になるので、バー20の振れ回りによりバー20がエッジ54に強く接触した部分から縦スジが発生し易くなる。
【0075】
また、比較例3及び比較例8及び図9から分かるように、バー支持面領域角度θ2が180°を超えると、エッジ54の位置がウエブ18に近づきすぎるので、流動ムラが発生し易くなる。この場合、実施例3と比較例8との対比から分かるように、θ2が180°丁度の実施例3は流動ムラが○であるのに対してθ2が190°の比較例8は流動ムラが×になることから、θ2の上限は180°である。
【0076】
また、比較例4及び図10から分かるように、ホールド角度θ1が40°未満では、バー20のバー支持面46へのホールド性が悪くなるのでバー20の振れ回りが大きくなり、横段状ムラや縦スジが発生し易くなる。この場合、実施例5と比較例4との対比から分かるように、θ1が40°丁度の実施例5は横段状ムラも縦スジも評価が○であるが、θ1が30°の比較例4は横段状ムラも縦スジも評価が×であることから、θ1の下限は40°である。
【0077】
また、比較例5及び図11から分かるように、距離Δが0.03mm未満の場合には、縦スジが発生し易くなる。この場合、比較例5と実施例6との対比から分かるように、Δが0.03mmの実施例6は縦スジの評価が○であるのに対し、Δが0.02mmの比較例5は縦スジの評価が×であることから、Δの境界値は0.03mmである。即ち、Δはバー固有の振れ回りの影響を受けるため、塗布面における良好な品質を安定的に確保するためには、最低限の距離0.03mmを確保してエッジ54にバー20が接触しないようにする必要がある。
【0078】
また、比較例6のように、バー20の半径R1に対するバー支持面46の円弧部分48の曲率半径R2の比(R2/R1)が1.01倍未満では、バー20とバー支持面46とが強く接触して縦スジが発生し易くなる。この場合、比較例6と実施例6の対比から分かるように、R2/R1が1.01の実施例6は縦スジの評価が○であるのに対し、R2/R1が1.00の比較例6は縦スジの評価が×であることから、R2/R1の下限は1.01である。逆に、比較例7及び図12から分かるように、R2/R1が1.20倍を超えて過度に大きいとバー20の回転が不安定になり横段状ムラが発生し易い。この場合、比較例7と実施例5の対比から分かるように、R2/R1が1.20の実施例5は横段状ムラの評価が○であるのに対し、R2/R1が1.40の比較例7は横段状ムラの評価が×であることから、R2/R1の上限は1.20である。
【0079】
図13は、表1には示さなかったが、従来の塗布ヘッドにおいてバー支持面の形状がV字型のものである。このタイプはバー20の回転位置を固定する効果は高いものの、バー20がバー支持面46に強く押し付けられ、バー20とバー支持面46とが接触する部分から縦スジが発生し易い。
【0080】
以上の試験結果から、バー塗布においては、バー受け部材22のバー支持面46とバー20との関係が、次の3つの式をすべて満足することにより、横段状ムラ、流動ムラ、縦スジ等の塗布故障を発生させないように塗布液をウエブ18に薄膜塗布することができる。従って、本発明は、例えば光学機能性フィルムの製造のように薄膜塗布における塗布膜面の表面性を改善する上で極めて有効である。
【0081】
40°≦θ1<θ2≦180° …式1、
1.01≦R2/R1≦1.20…式2、
Δ≧0.03mm …式3
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のバー塗布装置の側面断面図
【図2】本発明のバー塗布装置の一部を断面で示した斜視図
【図3】ワイヤーバーの説明図
【図4】ワイヤーバーにおける塗布液調整の説明図
【図5】本発明のバー塗布装置の塗布ヘッドにおけるバーとバー支持面との関係を説明する説明図
【図6】バー支持面が円弧部分と直線部分とで構成される場合のエッジを説明する説明図
【図7】本発明のバー塗布装置を組み込んだ光学補償シートの製造ラインの説明図
【図8】比較例1及び2におけるバーとバー支持面との関係を示す断面図
【図9】比較例3及び8におけるバーとバー支持面との関係を示す断面図
【図10】比較例4におけるバーとバー支持面との関係を示す断面図
【図11】比較例5におけるバーとバー支持面との関係を示す断面図
【図12】比較例7におけるバーとバー支持面との関係を示す断面図
【図13】バー支持面の形状がV字型の従来のバー塗布装置の断面図
【符号の説明】
【0083】
10…バー塗布装置、12…バー塗布ヘッド、14、16…ガイドローラ、18…ウエブ、20…バー、22…バー受け部材、24、26…給液路、28…上流側堰部材、30…下流側堰部材、32…マニホールド、34…スロット、36…1次側ビード、38…2次側ビード、40…ワイヤーバーの芯金、42…ワイヤー、44…ワイヤ列、46…バー支持面、48…バー支持面の円弧部分、50…仮想円形、52…仮想円形の中心、54…エッジ、56…仮想直線、58…直線、60…バー支持面の中央位置、62…バーの中心、64…バー支持面の直線部分、72…楔形の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行しているウエブに、バー受け部材に支持されて回転する円柱状のバーを用いて塗布液を塗布するバー塗布装置において、
前記バー受け部材の前記バーを支持するバー支持面におけるバー径方向に対応する断面形状は、前記バーを受ける円弧部分を少なくとも有する凹形状に形成され、
前記バーを回転していない状態で前記バー支持面に支持させたときに、前記バーの半径をR1、前記バー支持面の前記円弧部分の曲率半径をR2、前記バー支持面のうち前記バーをホールドしているホールド角度をθ1、前記R2の曲率を有する仮想円形の中心と前記バー支持面の両エッジとを結ぶ仮想直線が成すバー支持面領域角度をθ2、前記仮想直線のうちの前記仮想円形の外周から前記エッジまでの距離をΔとしたときに、
40°≦θ1<θ2≦180° …式1、
1.01≦R2/R1≦1.20…式2、
Δ≧0.03mm …式3を全て満足するように前記バー支持面が形成されていることを特徴とするバー塗布装置。
【請求項2】
前記バーの直径が5〜15mmの範囲の太さであることを特徴とする請求項1のバー塗布装置。
【請求項3】
前記バー支持面における前記円弧部分の端から連続して前記エッジまでを直線で形成することを特徴とする請求項1又は2のバー塗布装置。
【請求項4】
前記バーは芯金にワイヤーを巻回したワイヤーバーであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1のバー塗布装置。
【請求項5】
前記ワイヤーバーに巻回されるワイヤーの径は、0.06mm〜0.4mmであることを特徴とする請求項4のバー塗布装置。
【請求項6】
前記バー支持面における長手方向の真直度は、バー1m当たり0.2mm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1のバー塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1のバー塗布装置でウエブに塗布液を塗布することを特徴とするバー塗布方法。
【請求項8】
前記バー塗布装置で前記ウエブに湿潤厚みで15μm以下の塗布厚みになるように塗布液を塗布することを特徴とする請求項7のバー塗布方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−82059(P2006−82059A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272165(P2004−272165)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】