説明

パイプ形成体

【課題】。格段に全体重量を軽減可能なパイプ形成体を提供すること。
【解決手段】薄肉筒状に形成したパイプ形成本片の外周面両端部にそれぞれ連結片を設け、両連結片間に複数の線状の補強体を介設すると共に、これらの補強体はパイプ形成本片の周方向に間隔を開けて配置し、各補強体は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片と、同補強体本片の端部に一体成形したアンカー片とを具備し、連結片は、パイプ形成本片の端部に接続可能とした内側筒部と、同内側筒部の外周に一定間隔を開けて配置した外側筒部と、両筒部の端面同士を接続したリング状の端壁部と、同端壁部の外周縁部より外方へ張り出し状に延設して形成した接続用フランジ部とを具備し、内側筒部と外側筒部の間に補強体のアンカー片を挿入して、両内・外側筒部間に横断状に架設した係止片にアンカー片を係止させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大深度掘削用パイプ(いわゆる、ライザーパイプやドリルパイプ)を形成するためのパイプ形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、海底油田等の掘削用のライザーパイプやドリルパイプは、高張力鋼などの鉄パイプ製である。2,500mレベルの深海掘削を対象とする場合、和田一育氏(海洋科学技術センター海洋技術研究部)の技術紹介(統合国際深海掘削計画を可能にする高度な掘削技術)によれば、比引張強度が102Mpa(引張強度σu=800Mpa,比重ρ=7.85)クラスの高張力鋼製パイプ(外径Ф55.5cm、内径Ф50cm)のライザーパイプの空中重量は、約900tに達するので、浮力材を設けて、水中重量を軽減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、より深い海底掘削を行う場合、この方式では長尺化するにしたがってさらに重量が増し、円滑な現場作業を阻害するという不具合がある。
【0005】
そこで、本発明では、次のようなパイプ方式を提案する。
(1)比引張強度が1,333Mpa(引張強度σu=2,400〜4,800Mpa,比重ρ=1.8)で、高い接合能を具備したSCFロッドを補強材とする超軽量のパイプを開発する。ここで、SCFロッドとは、先に発明者が発明した長繊維強化プラスチック補強体(特許第3947038号に開示されている。;以下「SCF」ともいう。)である。なお、パイプの内側には、泥水等の作業用流体による磨耗を考慮して既製の薄肉鋼管を配置する。
(2)接合法としては従来方式を踏襲し、SCFロッド群と接合可能な鋼製ジョイントを採用する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1記載の本発明に係るパイプ形成体は、薄肉筒状に形成したパイプ形成本片の外周面両端部にそれぞれ連結片を設け、両連結片間に複数の線状の補強体を介設すると共に、これらの補強体はパイプ形成本片の周方向に間隔を開けて配置し、各補強体は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片と、同補強体本片の端部に一体成形したアンカー片とを具備し、連結片は、パイプ形成本片の端部に接続可能とした内側筒部と、同内側筒部の外周に一定間隔を開けて配置した外側筒部と、両筒部の端面同士を接続したリング状の端壁部と、同端壁部の外周縁部より外方へ張り出し状に延設して形成した接続用フランジ部とを具備し、内側筒部と外側筒部の間に補強体のアンカー片を挿入して、両内・外側筒部間に横断状に架設した係止片にアンカー片を係止させたことを特徴とする。
(2)請求項2記載の本発明に係るパイプ形成体は、薄肉筒状に形成したパイプ形成本片の外周面両端部にそれぞれ連結片を設け、両連結片間に複数の線状の補強体を介設すると共に、これらの補強体はパイプ形成本片の周方向に間隔を開けて配置し、各補強体は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片と、同補強体本片の端部に一体成形したアンカー片とを具備し、連結片は、パイプ形成本片の端部を延設して内側筒部となし、同内側筒部の外周面には放射方向に雌ネジ形成筒部を突設すると共に、同内側筒部の外周に一定間隔を開けて外側筒部を配置し、同外側筒部に形成した雄ネジ挿通孔と上記雌ネジ形成筒部の開口部とを符合させて形成し、隣接する外側筒部の外周面に接続用筒部を重合状態に嵌合すると共に、同接続用筒部に形成した雄ネジ挿通孔を外側筒部に形成した雄ネジ挿通孔に符合させて、これら雄ネジ挿通孔と雌ネジ形成筒部に雄ネジを螺着することで接続可能としたことを特徴とする。
(3)請求項3記載の本発明に係るパイプ形成体は、請求項1又は2記載のパイプ形成体であって、パイプ形成本片の周方向に隣接する補強体の少なくとも補強体本片間には合成樹脂を充填し、補強本片の外周を耐衝撃材で被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るパイプ形成体を接続することで、例えば、超軽量なライザーパイプを形成することができる。そして、かかるライザーパイプは、従来の高張力鋼製のものに比べて以下のメリットがある。
(1)格段に全体重量を軽減できる(水深2,500m級で1/4.3)。
(2)製造コストを安くすることができる(水深2,500m級で58%)。
(3)設計自由度が大きく、より深い海底の掘削に対応できる。
(4)浮力材が不要となり、潮流による2次負荷応力が軽減される。
(5)輸送・設置・収納等の作業の省エネ化・迅速化を促進し、安全性が向上する。
(6)本発明に係る構造コンセプトは、ライザーパイプだけでなく、ドリルパイプにも応用でき、その組み合わせは、格段に軽量な掘削構造を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る大深度掘削用パイプの使用状態説明図。
【図2】大深度掘削用パイプとしてのライザーパイプ側面断面説明図。
【図3】図2のI-I線断面説明図。
【図4】大深度掘削用パイプとしてのドリルパイプ側面断面説明図。
【図5】図4のII-II線断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は掘削船1の掘削説明図である。掘削船1はライザー掘削システムを備えてライザー掘削法により海底地殻2を掘削する。掘削船1には海中に下方に伸びるライザーパイプAを設け、同ライザーパイプA内にはドリルパイプBを挿通している。同ドリルパイプBは、その上端を掘削船1上に設けた回転駆動機構であるパワースイベル3に接続し、下端部に噴出防止装置4を設けて、下端にドリルビット(図示せず)を設けている。5は船底に設けた複数の推進装置(スラスター)、6はケーシングパイプ、7は海面、8は海底面である。
【0011】
このようにして、パワースイベル3により、ドリルパイプBを介してドリルビットを回転させることにより、海底地殻2が海底面8から掘削され、それに伴ってドリルパイプBの下端は海底地殻2内に侵入して下降するようにしている。この際、ドリルビットには、ライザーパイプA内におけるドリルパイプBを介して、泥水や海水などからなる作業用流体が供給される。また、噴出防止装置4の下部に設けられた、長さの異なる複数のケーシングパイプ6が掘削深度に応じて挿入され、これにより、掘削孔における壁面の崩落が防止される。噴出防止装置4には多数の圧力放出用安全弁を設けて、これらの圧力放出用安全弁により掘削孔内の圧力を制御して、高圧の炭化水素ガスや地殻内間隙水などの急激な噴出を制御することで、安全な掘削工程を確保している。
【0012】
次に、ライザーパイプAの構造を、図2及び図3を参照しながら説明する。すなわち、ライザーパイプAは、図2及び図3に示すように、所要個数のパイプ形成体10を軸線方向に連続的に接続することで所要長さに形成している。
【0013】
パイプ形成体10は、薄肉円筒状に形成したパイプ形成本片11の外周面両端部にそれぞれ連結片12,12を取り付け、両連結片12,12間に複数の線状の補強体としてのSCFロッド13を介設すると共に、これらのSCFロッド13はパイプ形成本片の円周方向に略均等に間隔を開けて配置している。ここで、SCFロッド13は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片としてのロッド本片13aと、同ロッド本片13aの端部に一体成形したリング状のアンカー片13bとを具備している。
【0014】
連結片12は、パイプ形成本片11の端部に接続可能とした円筒形状の内側筒部12aと、同内側筒部12aの外周に一定間隔を開けて配置した円筒形状の外側筒部12bと、両筒部12a,12bの端面同士を接続したリング状の端壁部12cと、同端壁部12cの外周縁部より外方へ張り出し状に延設して形成した接続用フランジ部12dとを具備している。11aはパイプ形成本片11の端部の外周面に形成した雄ネジ部、12eは連結片12の端部の内周面に形成した雌ネジ部であり、雄ネジ部11aに雌ネジ部12eを内外周面重合状態に螺着して接続している。12fは連結片12の一方の端面に形成している凹状雌ネジ部、12gは連結片12の他方の端面に形成している凸状雄ネジ部である。そして、凹状雌ネジ部12fに凸状雄ネジ部12gを螺着して嵌合状態に接続可能としている。17は接続用フランジ部12d,12d同士を連結している連結ボルト、18は連結ナットである。
【0015】
そして、内側筒部12aと外側筒部12bの間に形成される正面視リング状の空間14内にSCFロッド13のアンカー片13bを挿入して、両内・外側筒部12a,12b間に放射線方向に横断状に架設した係止片15にアンカー片13bを係止させている。本実施形態ではボルト状の係止片15を軸線が放射線方向に向くように内・外側筒部12a,12b間に挿通している。そして、係止片15は図2に示すように外側筒部12bの円周方向に千鳥状に配置して、各係止片15に隣接させて係止されるアンカー片13b同士が干渉しないようにしている。16は空間14内に充填したコンクリート等の充填材であり、同充填材16により各係止片15を固定している。
【0016】
また、パイプ形成本片11の端部以外の露出している本体部分の外周面には、内側保護層19を形成している。この内側保護層19は薄肉層状に形成した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の表面に耐衝撃布を貼り付けて形成することができる。SCFロッド13の外周には外側保護層20を形成している。この外側保護層20は内側保護層19と同様の素材で形成することができる。そして、パイプ形成本片11の周方向に隣接するSCFロッド13のロッド本片13a間には合成樹脂21を充填している。このように、SCFロッド13のロッド本片13aの内外周を耐衝撃材である内外側保護層19,20で被覆すると共に、各ロッド本片13a間に合成樹脂21を充填しているため、各ロッド本片13aを整然と位置決めすることができると共に、各ロッド本片13aを保護して、各SCFロッド13の機能を良好に確保することができる。
【0017】
ここで、SCFロッド13の機能は次の通りである。すなわち、SCFロッド13を形成する長繊維束は、引張強度を有するため、主筋材として十分に機能させることができると共に、軽量(力学的に等価な鉄筋の重量の約40分の1)であるため、取扱性が良く、配筋作業を楽にしかも安全に行うことができる。そのため、熟練を要することなく配筋作業を行うことができて、作業効率と人件費の点から、配筋作業コストを大幅に削減することができる。さらには、SCFロッド13を形成する長繊維束が腐食しないため、ライザーパイプAのメンテナンスを不要若しくは大幅に削減することができる。
【0018】
上記のように、所要個数のパイプ形成体10を連結してライザーパイプAを形成することで、各パイプ形成体10に作用する引張力ないしは圧縮力である力は、SCFロッド13のロッド本片13a→SCFロッド13のアンカー片13b→係止片15→連結片12→連結片12の接続用フランジ部12d→隣接するパイプ形成体10の連結片12の接続用フランジ部12d→連結片12→係止片15→SCFロッド13のアンカー片13b→SCFロッド13のロッド本片13aに伝播して分散される。そのため、剛性を良好に確保したまま全体重量を格段に軽減することができて、ライザーパイプAの製造コストを安価にすることができる。
【0019】
次に、ドリルパイプBの構造を、図4及び図5を参照しながら説明する。すなわち、ドリルパイプBは、図4及び図5に示すように、所要個数のパイプ形成体30を軸線方向に連続的に接続することで所要長さに形成している。
【0020】
パイプ形成体30は、薄肉円筒状に形成したパイプ形成本片31の外周面両端部にそれぞれ連結片32,32を設け、両連結片32,32間に複数の線状の補強体としてのSCFロッド13を介設すると共に、これらのSCFロッド13はパイプ形成本片31の円周方向に間隔を開けて配置している。
【0021】
連結片32は、パイプ形成本片31の端部を延設して内側筒部32aとなし、同内側筒部32aの外周面には放射線方向に軸線を向けた雌ネジ形成筒部32bを突設すると共に、同内側筒部32aの外周に一定間隔を開けて外側筒部32cを配置し、同外側筒部32cに設けたリング状の雄ネジ挿通孔部32dと上記雌ネジ形成筒部32bの開口部同士を放射線方向に符合させている。ここで、雌ネジ形成筒部32bにはSCFロッド13のアンカー片13bを係止して、雌ネジ形成筒部32bを係止片として機能させている。また、ライザーパイプAと同様に、SCFロッド13のロッド本片13aの内外周は耐衝撃材である内・外側保護層19,20で被覆すると共に、各ロッド本片13a間に合成樹脂21を充填して、各ロッド本片13aを整然と位置決めしている。そして、各ロッド本片13aを保護して、各SCFロッド13の機能を良好に確保している。
【0022】
隣接する外側筒部32c,32cの外周面に雄ネジ部32g,32gを形成する一方、接続用筒部32eの内周面に雌ネジ部32hを形成している。そして、隣接する外側筒部32c,32cの雄ネジ部32g,32gに接続用筒部32eの雌ネジ部32hを螺着している。この際、隣接する外側筒部32c,32cの外周面に接続用筒部32eの内周面を重合状態に嵌合すると共に、同接続用筒部32eに形成した雄ネジ挿通孔32fを外側筒部32cに形成した雄ネジ挿通孔部32dに符合させて、これら雄ネジ挿通孔部32dと雌ネジ形成筒部32bに雄ネジ33を螺着することで、隣接する外側筒部32c,32c同士を接続用筒部32eを介して接続可能としている。
【0023】
上記のように、所要個数のパイプ形成体30を連結してドリルパイプBを形成することで、各パイプ形成体30に作用する引張力ないしは圧縮力である力は、SCFロッド13のロッド本片13a→SCFロッド13のアンカー片13b→雌ネジ形成筒部32b→雄ネジ33→接続用筒部32e→隣接するパイプ形成体10の雄ネジ33→接続用筒部32e→SCFロッド13のアンカー片13b→SCFロッド13のロッド本片13aに伝播して分散される。そのため、剛性を良好に確保したまま全体重量を格段に軽減することができて、ドリルパイプBの製造コストを安価にすることができる。
【0024】
次に、試設計について説明する。すなわち、既存の高張力鋼ライザー管(長さ:2500mの外径:Ф555、内径:Ф500)を比較対象として、ライザーパイプAの試設計を以下に行う。
【0025】
〔ケース1(水深;1250〜2500m)〕
図3のようなライザーパイプAの断面を想定する。
Ф14のSCFロッド《断面:1.54cm2,引張強度N0=37.7t》18本を採用する。
内側の《土砂流による摩耗防止用》鋼管(肉厚3mm、内径Ф500)の応力分担を無視(安全側)すれば、水深1250mでのライザーパイプAの引張耐力Nは、
T1=18x37.7=678.6t・・・・・・(1)1
次に、提案ライザーパイプAの重量を算定する。
・1250mの鋼製パイプ《内径Ф500肉厚3mm》の重量
1=1250mx7.85xπ(25.32-252) /104=14.8t・・・・・・(2)1
・SCFロッドの重量(比重:1.8)
D1=1250mx1.8x(π1.42/4)x18/104≒6.2t・・・・・・(3)1
・樹脂部の重量 (比重:1.08)
P1=1250mx1.08xπ{ (26.92-25.52) -1.42/4x18}/104=27.4t・・・・・・(4)1
・内部CFRP層(2mm)と外CFRP(1mm)&ケプラー(1mm)の複合層の重量(比重:1.8)
C1=1250mx1.8x{π(25.52-25.32)+π(27.12-26.92)} /104=14.8t・・・・・・(5)1
さらに、提案ライザーパイプのユニット長を15mとし、両端の鋼製ジョイントの重量(0.5t/1対:概略試算による)とすれば、1250mでは、
J=(1250/15+1)x0.5≒42t・・・・・・(6)
ゆえに 長さ1250mの本パイプの重量Wは、
T1=14.8+6.2+27.4+14.8+42=105.4t・・・・・・(7)1
浮力は(本パイプの内側の空間を除外して)
F1=1250xπ(27.12-252) /104≒42.9t・・・・・・(8)1
水深1250mでのライザーパイプの引張作用力P1は,噴出防止装置 (空中重量370tから浮力分削減した330t程度 )を加えて
P1=WT1+330−F1=392.3t・・・・・・(9)1
垂直方向の安全率は
ν1=678.6/392.3=1.73 (OK)・・・・・・(10)1
水圧25Mpaに対する円周方向応力(CFRP層ヤング率:140Gpa,SCF層ヤング率:3Gpa)
換算厚t1=0.2+0.1+0.3x (210/140)+1.4 x3/140=0.78cm
薄肉円筒理論より、内部CFRP層(2mm)の円周方向応力は、半径R1=25.4cm で
σθ1= R1/t1x25=814Mpa・・・・・・(11)1
サンドイッチされた状態にある内部CFRP層は局部座屈しにくいため、許容圧縮応力は、1500Mpaになる.
よって円周方向応力の安全率は、
νθ1=1500/814.84 (OK)・・・・・・(12)1
〔ケース2(水深;0〜1250m)〕
ケース2のSCFライザー管では、水圧が12.5Mpaと小さくなるが、逆に垂直方向の重量が増すので、SCFロッドの本数は、32本に増やす.
引張耐力NT2=32x37.7=1,206.4t・・・・・・(1)2
・1250mの鋼製パイプ《内径Ф500肉厚3mm》の重量
2=1250mx7.85xπ(25.32-252) /104=14.8t・・・・・・(2)2
・SCFロッドの重量(比重:1.8)
D2=1250mx1.8x(π1.42/4)x32/104≒11.1t・・・・・・(3)2
・樹脂部の重量WP(比重:1.08)
P 2=1250mx1.08x{π(26.82-25.42) -(π1.42/4)x32}/104=24.3t・・・・・・(4)2
CFRP層《内部CFRP層(1mm)と外CFRP層(1mm) &ケプラーの複合層(1mm)》の重量は、
C2=1250mx1.8xπ{ (25.42-25.32)+ (272-26.82)} /104=11.2t・・・・・・(5)2
ゆえに 長さ1250mの本パイプの重量Wは、
T2=14.8+11.1+24.3+11.2+42=103.4t・・・・・・(7)2
浮力は(本パイプの内側の空間を除外して)
F2=1250xπ(272-252) /104≒41t・・・・・・(8)2
水深0mでのライザーパイプの引張作用力P 2は, P1= 420tを加えて
P 2=WT2+P1 F 2=454.7t・・・・・・(9)2
水面近くの波浪の衝撃力(衝撃係数1.4)を考慮して
P 2*=1.4 P 2=636.6t・・・・・・(9)*2
垂直方向の安全率は
ν2*=1,206.4/636.6 =1.9 (OK)・・・・・・(10)*2
水圧12.5Mpaに対する円周方向応力の計算;
換算厚t2=0.1+0.1+0.3x210/140+1.4x3/140=0.68cm
薄肉円筒理論より、内部CFRP層(1mm)の円周方向応力は、半径R2=25.05cm で
σθ2= R2/t2x12.5=460 Mpa・・・・・・(11)2
SCFロッドで密にサンドイッチされた内部CFRP層は座屈しないため、その許容圧縮応力は、1500Mpaになる.
よって円周方向応力の安全率は、
νθ2=1500/460 =3.3 (OK)・・・・・・(12)2
以上からSCFライザー管の全体重量Wは、
=WT1+WT2=105.2+103.4 =208.6 t・・・・・・(13)2
一方、既存の2500mの高張力鋼ライザー管(外径:Ф555、内径:Ф500)の重量は、次の値になる.
T0=2500mx 7.85xπ(55.52-502) /4≒893.9t
/WTo=208.6/893.9≒1/4.3・・・・・・(14)
〔製作コストの推定〕
・SCFロッド13の材料費(500万円/t)
=500万円/tx(6.2+11.1)t=8,650万円・・・・・・(15)
・合成樹脂21の材料費(100万円/t)
P=100万円/tx(27.4+24.3 )t=5,170万円・・・・・・(16)
・CFRP層(内・外側保護層19,20)の材料費(400万円/t)
=400万円/tx(14.8+11.2)t=10,400万円・・・・・・(17)
・鋼管(パイプ形成本片)の材料費(30万円/t)
S=30万円/tx(14.8 +14.8)t=888万円・・・・・・(18)
・鋼製ジョイント(連結片)の材料費(70万円/t)
S=70万円/tx84t =5,880万円・・・・・・(19)
ゆえに、長さ2,500mの提案ライザーパイプの総材料費Cは、(間接経費4割)
={8,650 +5,170+10,400+888+5,880}x1.4
=43,383万円 (約4.34億円)・・・・・・(20)
これに対して、高張力鋼製ライザーパイプ(893.9t)の場合、間接経費込みで60万円/tとし,ジョイント製作費<式(14)より、3.7CS=21,756万円>を合わせて、
TO=60万円/tx893.9t+21,756=75,390万円(約7.54億円)・・・・・・(21)
よって
/CTO≒0.58・・・・・・(22)
【符号の説明】
【0026】
A ライザーパイプ
B ドリルパイプ
10 パイプ形成体
11 パイプ形成本片
12 連結片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉筒状に形成したパイプ形成本片の外周面両端部にそれぞれ連結片を設け、両連結片間に複数の線状の補強体を介設すると共に、これらの補強体はパイプ形成本片の周方向に間隔を開けて配置し、
各補強体は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片と、同補強体本片の端部に一体成形したアンカー片とを具備し、
連結片は、パイプ形成本片の端部に接続可能とした内側筒部と、同内側筒部の外周に一定間隔を開けて配置した外側筒部と、両筒部の端面同士を接続したリング状の端壁部と、同端壁部の外周縁部より外方へ張り出し状に延設して形成した接続用フランジ部とを具備し、
内側筒部と外側筒部の間に補強体のアンカー片を挿入して、両内・外側筒部間に横断状に架設した係止片にアンカー片を係止させたことを特徴とするパイプ形成体。
【請求項2】
薄肉筒状に形成したパイプ形成本片の外周面両端部にそれぞれ連結片を設け、両連結片間に複数の線状の補強体を介設すると共に、これらの補強体はパイプ形成本片の周方向に間隔を開けて配置し、
各補強体は、長繊維束に伸延方向に沿ったプレストレスを導入することで引張強度を確保した繊維強化プラスチック製であって、一方向に伸延する補強体本片と、同補強体本片の端部に一体成形したアンカー片とを具備し、
連結片は、パイプ形成本片の端部を延設して内側筒部となし、同内側筒部の外周面には放射方向に雌ネジ形成筒部を突設すると共に、同内側筒部の外周に一定間隔を開けて外側筒部を配置し、同外側筒部に形成した雄ネジ挿通孔と上記雌ネジ形成筒部の開口部とを符合させて形成し、
隣接する外側筒部の外周面に接続用筒部を重合状態に嵌合すると共に、同接続用筒部に形成した雄ネジ挿通孔を外側筒部に形成した雄ネジ挿通孔に符合させて、これら雄ネジ挿通孔と雌ネジ形成筒部に雄ネジを螺着することで接続可能としたことを特徴とするパイプ形成体。
【請求項3】
パイプ形成本片の周方向に隣接する補強体の少なくとも補強体本片間には合成樹脂を充填し、補強本片の外周を耐衝撃材で被覆したことを特徴とする請求項1又は2記載のパイプ形成体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−47496(P2011−47496A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198402(P2009−198402)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(509243687)有限会社フロンティア技術研究所 (1)
【Fターム(参考)】